(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
前記蓄圧器ユニットは、前記タンクの圧力が所定の低圧の範囲である低圧域内である場合に使用される第1蓄圧器と、前記タンクの圧力が前記低圧域よりも幅が狭い所定の高圧の範囲である高圧域内である場合に使用される第2蓄圧器とを備え、
前記第1蓄圧器は、鋼製容器であり、
前記第2蓄圧器は、鉄鋼材料とは異なる複合材料にて形成される複合容器である、
請求項1から3のいずれか1項に記載のガス供給システム。
前記蓄圧器ユニットは、前記タンクの圧力が前記低圧域と前記高圧域との間の圧力の範囲である中圧域である場合に使用される第3蓄圧器をさらに備える、請求項4から6のいずれか1項に記載のガス供給システム。
タンク搭載装置のタンクへガスを充填する充填設備にガスを供給するガス供給システムであり、ガス送出部と、少なくとも1個の蓄圧器を有し、前記ガス送出部から吐出されたガスを貯留する蓄圧器ユニットと、前記蓄圧器ユニットと前記ガス送出部との間を連通する導入流路を開閉する第1弁部材と、前記蓄圧器ユニットと前記充填設備との間を連通する導出流路を開閉する第2弁部材とを有するガス供給システムにおける蓄圧器の寿命を判定する方法であって、
前記第1弁部材が閉じ且つ前記第2弁部材が開いた状態のときに前記蓄圧器に作用する応力と前記第1弁部材が開き且つ前記第2弁部材が閉じた状態のときに前記蓄圧器に作用する応力との間の応力振幅を繰り返し取得する工程と、
前記応力振幅を複数のグループに分類する工程と、
各グループ毎の応力振幅の取得数と当該グループを代表する応力振幅に対応する破壊繰り返し数とから得られる値をグループ毎に合計して得られる疲労度合いに基づいて、前記蓄圧器の寿命を判定する工程と
を含む蓄圧器の寿命判定方法。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
水素ステーションにて利用される蓄圧器の疲労寿命を判定する手法の研究は、最近進められている。当該手法の一例として、蓄圧器に作用する圧力変動の回数(応力振幅が測定された回数)が破壊繰り返し数に達した場合に疲労寿命に達したと判定することが考えられる。
【0005】
しかし、上述の手法では、応力振幅が測定された回数は、応力振幅の大きさに関らず、応力振幅の発生ごとに1回ずつカウントされるため、蓄圧器の運用状況によっては、圧力変動が小さい状態が続いても応力振幅が取得された取得数がカウントされる。そのため、蓄圧器の実際の疲労寿命よりも早く蓄圧器を交換してしまう可能性がある。その結果、蓄圧器の交換頻度を低減することが難しく、これにより、水素ステーションの管理コストの低減が困難である。
【0006】
本発明は上記課題に鑑みなされたものであり、蓄圧器の寿命を適切に管理することを主たる目的としており、蓄圧器の長寿命化を図ることも目的としている。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明の請求項1に係るガス供給システムは、タンク搭載装置のタンクへガスを充填する充填設備にガスを供給するガス供給システムであって、少なくとも1個の蓄圧器を有し、ガスを貯留する蓄圧器ユニットと、ガスを前記蓄圧器ユニットに送出するガス送出部と、前記蓄圧器ユニットと前記ガス送出部との間を連通する導入流路を開閉する第1弁部材と、前記蓄圧器ユニットと前記充填設備との間を連通する導出流路を開閉する第2弁部材と、前記第1弁部材が閉じ且つ前記第2弁部材が開いた状態のときに前記蓄圧器に作用する応力と前記第1弁部材が開き且つ前記第2弁部材が閉じた状態のときに前記蓄圧器に作用する応力との間の応力振幅を繰り返し取得する取得部と、前記応力振幅を複数のグループに分類する分類部と、各グループ毎の応力振幅の取得数と当該グループを代表する応力振幅に対応する破壊繰り返し数とから得られる値をグループ毎に合計して得られる疲労度合いに基づいて、前記蓄圧器の寿命を判定する判定部とを備えていることを特徴とする。
【0008】
本発明のガス供給システムでは、蓄圧器に作用する応力の応力振幅の大きさに着目し、応力振幅の大きさごとに応力振幅の取得数を求めて蓄圧器の寿命判定に用いる。すなわち、蓄圧器におけるガスの貯留時および充填設備への供給時に当該蓄圧器に作用する応力の応力振幅を分類部によってその大きさによって複数のグループに分類し、判定部が、各グループ毎の応力振幅の取得数と当該グループを代表する応力振幅に対応する破壊繰り返し数とから得られる値をグループ毎に合計して得られる疲労度合いに基づいて、前記蓄圧器の寿命を判定する。これにより、蓄圧器に作用する応力の大きい応力振幅に起因する疲労寿命と小さい応力振幅に起因する疲労寿命とをそれぞれ個別に考慮しながら、蓄圧器の寿命をより適切に管理することができ、蓄圧器の交換頻度を低減することが可能である。その結果、水素ステーションの管理コストを低減することができる。
【0009】
前記蓄圧器ユニットは、第1蓄圧器と、第2蓄圧器とを含んでおり、前記判定部は、前記第1蓄圧器および前記第2蓄圧器のそれぞれの残存寿命を前記疲労寿命から求め、前記第1蓄圧器および前記第2蓄圧器のうちの前記残存寿命が長いものが、前記タンクの圧力が所定の低圧の範囲である低圧域内である場合に使用され、前記タンクの圧力が前記低圧域よりも幅が狭い所定の高圧の範囲である高圧域内である場合に、前記残存寿命が短いものが使用されるのが好ましい。
【0010】
タンク搭載装置のタンクの圧力が低圧域内である場合には、蓄圧器から多くのガスが充填設備に送出されるため蓄圧器に作用する応力振幅が大きくなり、蓄圧器が疲労しやすい。そこで、上記のように、前記第1蓄圧器および前記第2蓄圧器のうちの前記残存寿命が長いものが、上記低圧域にて使用される蓄圧器とされる。一方、タンクの圧力が上記高圧域内である場合には、蓄圧器から充填設備へのガスの送出量が相対的に低減することから、蓄圧器に作用する応力振幅が小さくなり、前記残存寿命が短いものが高圧域にて使用される蓄圧器とされる。その結果、蓄圧器の寿命を平滑化することができる。そして、蓄圧器の交換期間を長くすることができ、水素ステーションの管理コストをより低減することができる。
【0011】
低圧域または当該低圧域よりも高い圧力の高圧域の少なくとも一方に、少なくとも2個の蓄圧器が使用され、前記少なくとも2個の蓄圧器のうち温度が低い蓄圧器が使用されるように、蓄圧器の温度に基づいて、使用する蓄圧器を切り換える切換部をさらに備えているのが好ましい。
【0012】
蓄圧器への貯留/送出サイクルが頻繁になってきたときに、貯留工程時に高温となった水素が、十分に冷却されることなく、ガス供給システムからディスペンサなどの充填設備へ送出されてしまう可能性がある。そこで、上記のように低圧域または高圧域のいずれか一方の同じ圧力域で用いられる少なくとも2個の蓄圧器のうち、温度が低いものが使用されるようにすれば、蓄圧器ユニットから送出されるガスの温度の上昇を抑制できる。これによって、ガスを充填設備に導入する前の予備冷却(プレクール)する場合のガスの冷却負荷を低減することができる。蓄圧器にガスの貯留および充填設備への供給が高頻度で行われる水素ステーションにおいて特に有効になる。
【0013】
前記蓄圧器ユニットは、前記タンクの圧力が所定の低圧の範囲である低圧域内である場合に使用される第1蓄圧器と、前記タンクの圧力が前記低圧域よりも幅が狭い所定の高圧の範囲である高圧域内である場合に使用される第2蓄圧器とを備え、前記第1蓄圧器は、鋼製容器であり、前記第2蓄圧器は、鉄鋼材料とは異なる複合材料にて形成される複合容器であるのが好ましい。
【0014】
タンク搭載装置におけるタンクの圧力が低圧域内である場合には、蓄圧器から多くのガスが充填設備に送出されるため蓄圧器に作用する応力振幅が大きくなり、蓄圧器の疲労寿命が短くなり易い。一方、タンクの圧力が上記高圧域内である場合には、蓄圧器から充填設備へのガスの送出量が相対的に低減することから、蓄圧器に作用する応力振幅が小さくなり、蓄圧器の疲労寿命が短くなり難い。そこで、低圧域で使用される第1蓄圧器として、高耐久性を有する鋼製容器が用いられることにより、第1蓄圧器の長寿命化を図ることができる。また、高圧域で使用される第2蓄圧器として、鋼製容器よりも安価である複合容器が用いられることにより、蓄圧器ユニットのコストの増大を抑制することができる。また、鋼製容器および複合容器を併用することにより、第1および第2蓄圧器の寿命の平滑化を図ることができ、蓄圧器の交換頻度を低減することが可能である。
【0015】
前記第2蓄圧器は、前記第1蓄圧器の上方に配置されているのが好ましい。
【0016】
かかる構成によれば、鋼製容器よりも比較的寿命が短い複合容器である第2蓄圧器を第1蓄圧器よりも上方に配置しておくことにより、第2蓄圧器を交換する必要が生じた場合であっても、作業者が第2蓄圧器に容易にアクセスして交換作業を行うことができる。
【0017】
前記第1蓄圧器を囲む第1フレームと、前記第2蓄圧器を囲む第2フレームとをさらに備え、前記第2フレームは、前記第1フレームの上方に分離可能に積層されているのが好ましい。
【0018】
かかる構成によれば、第2蓄圧器を囲む第2フレームが第1蓄圧器を囲む第1フレームに対して分離可能に積層されているので、当該第2蓄圧器を第2フレームに囲まれた状態で容易に取り外すことができる。また、クレーン等を使って第2蓄圧器を第1蓄圧器の上方から取り外すことができるため、例えば第2蓄圧器を水平方向にスライドさせて取り外す場合に比べて、作業スペースを小さくすることができる。
【0019】
前記蓄圧器ユニットは、前記タンクの圧力が前記低圧域と前記高圧域との間の圧力の範囲である中圧域である場合に使用される第3蓄圧器をさらに備えるのが好ましい。
【0020】
かかる構成によれば、3つの異なる圧力域で使用される3つの蓄圧器を用いて迅速なガスの供給が可能になる。
【0021】
前記蓄圧器ユニットに他の蓄圧器ユニットが接続されているのが好ましい。
【0022】
かかる構成によれば、大型の蓄圧器を用意する場合に比べてガスの需要量に応じて蓄えられるガスの量を容易に調整することができる。
【0023】
本発明の請求項9に係るガス供給システムは、タンク搭載装置のタンクへガスを充填する充填設備にガスを供給するガス供給システムであって、ガスを貯留する蓄圧器ユニットと、ガスを前記蓄圧器ユニットに送出するガス送出部と、を備えており、前記蓄圧器ユニットは、前記タンクの圧力が所定の低圧の範囲である低圧域内である場合に使用される第1蓄圧器と、前記タンクの圧力が、前記低圧域よりも幅が狭い所定の高圧の範囲である高圧域内である場合に使用される第2蓄圧器とを備え、前記第1蓄圧器は、鋼製容器であり、前記第2蓄圧器は、鉄鋼材料とは異なる複合材料にて形成される複合容器であることを特徴とする。
【0024】
タンク搭載装置におけるタンクの圧力が低圧域内である場合には、蓄圧器から多くのガスが充填設備に送出されるため蓄圧器に作用する応力振幅が大きくなり、蓄圧器の疲労寿命が短くなり易い。一方、タンクの圧力が上記高圧域内である場合には、蓄圧器から充填設備へのガスの送出量が相対的に低減することから、蓄圧器に作用する応力振幅が小さくなり、蓄圧器の疲労寿命が短くなり難い。そこで、低圧域で使用される第1蓄圧器として、圧力変動に対して疲労しにくい鋼製容器が用いられることにより、第1蓄圧器の長寿命化を図ることができる。また、高圧域で使用される第2蓄圧器として、鋼製容器よりも安価である複合容器が用いられることにより、蓄圧器ユニットのコストの増大を抑制することができる。また、鋼製容器および複合容器を併用することにより、第1および第2蓄圧器の寿命の平滑化を図ることができ、蓄圧器の交換頻度を低減することが可能である。
【0025】
本発明の水素ステーションは、充填設備と、前記充填設備に水素ガスを供給する上記のガス供給システムと、を備え、前記充填設備が水素ガスをタンク搭載装置である車両に充填することを特徴とする。
【0026】
かかる構成によれば、水素ガスを蓄圧器ユニットの蓄圧器にあらかじめ貯留しておき、必要に応じて燃料電池車などの車両へ送出して迅速な水素ガスの供給を可能にする。
【0027】
本発明の蓄圧器の寿命判定方法は、タンク搭載装置のタンクへガスを充填する充填設備にガスを供給するガス供給システムであり、ガス送出部と、少なくとも1個の蓄圧器を有し、前記ガス送出部から吐出されたガスを貯留する蓄圧器ユニットと、前記蓄圧器ユニットと前記ガス送出部との間を連通する導入流路を開閉する第1弁部材と、前記蓄圧器ユニットと前記充填設備との間を連通する導出流路を開閉する第2弁部材とを有するガス供給システムにおける蓄圧器の寿命を判定する方法であって、前記第1弁部材が閉じ且つ前記第2弁部材が開いた状態のときに前記蓄圧器に作用する応力と前記第1弁部材が開き且つ前記第2弁部材が閉じた状態のときに前記蓄圧器に作用する応力との間の応力振幅を繰り返し取得する工程と、前記応力振幅を複数のグループに分類する工程と、各グループ毎の応力振幅の取得数と当該グループを代表する応力振幅に対応する破壊繰り返し数とから得られる値をグループ毎に合計して得られる疲労度合いに基づいて、前記蓄圧器の寿命を判定する工程とを含むことを特徴とする。
【0028】
本発明の蓄圧器の寿命判定方法では、蓄圧器に作用する応力の応力振幅の大きさに着目し、応力振幅の大きさごとに応力振幅の取得数を求めて蓄圧器の寿命判定に用いる。すなわち、蓄圧器におけるガスの貯留時および充填設備への供給時に当該蓄圧器に作用する応力の応力振幅をその大きさによって複数のグループに分類し、各グループ毎の応力振幅の取得数と当該グループを代表する応力振幅に対応する破壊繰り返し数とから得られる値をグループ毎に合計して得られる疲労度合いに基づいて、前記蓄圧器の寿命を判定する。これにより、蓄圧器に作用する応力の大きい応力振幅に起因する疲労寿命と小さい応力振幅に起因する疲労寿命とをそれぞれ個別に考慮しながら、蓄圧器の寿命をより適切に管理することができ、蓄圧器の交換頻度を低減することが可能である。その結果、水素ステーションの管理コストを低減することができる。
【0029】
前記蓄圧器の寿命を判定する工程では、前記疲労度合いが所定の閾値以上になった場合に、その蓄圧器の寿命であると判定するのが好ましい。
【0030】
この寿命判定方法では、疲労度合いが所定の閾値以上になった場合に、その蓄圧器の寿命であると判定する。これにより、蓄圧器の使用環境などを考慮して閾値を適宜設定すれば、蓄圧器の寿命をより一層適切に管理することができ、蓄圧器の交換頻度をより低減することが可能である。
【0031】
本発明の請求項13に係るガス供給システムの使用方法は、請求項1に記載のガス供給システムの使用方法であって、前記蓄圧器ユニットは、第1蓄圧器と、第2蓄圧器とを含んでおり、前記判定部は、前記第1蓄圧器および前記第2蓄圧器のそれぞれの残存寿命を前記疲労寿命から求め、前記第1蓄圧器および前記第2蓄圧器のうちの前記残存寿命が長いものを、前記タンクの圧力が所定の低圧の範囲である低圧域内である場合に使用し、前記タンクの圧力が前記低圧域よりも幅が狭い所定の高圧の範囲である高圧域内である場合に、前記残存寿命が短いものを使用することを特徴とする。
【0032】
この使用方法では、前記第1蓄圧器および前記第2蓄圧器のうちの前記残存寿命が長いものが、上記低圧域にて使用される蓄圧器とされる。一方、タンクの圧力が上記高圧域内である場合には、蓄圧器から充填設備へのガスの送出量が相対的に低減することから、蓄圧器に作用する応力振幅が小さくなり、前記残存寿命が短いものが高圧域にて使用される蓄圧器とされる。その結果、蓄圧器の寿命を平滑化することができる。そして、蓄圧器の交換期間を長くすることができ、水素ステーションの管理コストをより低減することができる。
【0033】
本発明の請求項14に係るガス供給システムの使用方法は、請求項1に記載のガス供給システムの使用方法であって、低圧域または当該低圧域よりも高い圧力の高圧域の少なくとも一方に、少なくとも2個の蓄圧器が使用され、前記少なくとも2個の蓄圧器のうち温度が低い蓄圧器が使用されるように、蓄圧器の温度に基づいて、使用する蓄圧器を切り換えることを特徴とする。
【0034】
この使用方法では、低圧域または高圧域のいずれか一方の同じ圧力域で用いられる少なくとも2個の蓄圧器のうち、温度が低いものが使用されるようにすれば、蓄圧器ユニットから送出されるガスの温度の上昇を抑制できる。これによって、ガスを充填設備に導入する前の予備冷却(プレクール)する場合のガスの冷却負荷を低減することができる。蓄圧器にガスの貯留および充填設備への供給が高頻度で行われる水素ステーションにおいて特に有効になる。
【発明の効果】
【0035】
本発明のガス供給システムおよび蓄圧器の寿命判定方法によれば蓄圧器の寿命を適切に管理することが可能になり、その結果、蓄圧器の長寿命化が可能である。
【発明を実施するための形態】
【0037】
以下、本発明の実施形態を図面を参照しながらさらに詳細に説明する。
【0038】
図1は本発明の実施形態に係る水素ステーション1を示す図である。水素ステーション1は、ガス供給システム2と、充填設備であるディスペンサ3とを備える。ガス供給システム2は、ディスペンサ3に水素ガスを供給するシステムである。ディスペンサ3は、水素ガスをタンク搭載装置である車両BのタンクCに充填する充填設備である。車両Bは、例えば燃料電池車である。この水素ステーション1では、水素ガスをガス供給システム2における後述の蓄圧器ユニット6の蓄圧器61〜63にあらかじめ貯留しておき、必要に応じてディスペンサ3を介して車両Bへ送出して迅速な水素ガスの供給を可能にする。
【0039】
ガス供給システム2は、蓄圧器ユニット6と、水素ガスを蓄圧器ユニット6に送出するガス送出部である圧縮機ユニット5と、ガス流路7と、弁ユニット8と、圧力検知部9と、制御部10と、プレクールシステム11とを備える。
【0040】
圧縮機ユニット5とディスペンサ3とはガス流路7を介して連通される。蓄圧器ユニット6および弁ユニット8は、ガス流路7の途中に配置される。ガス流路7内にはディスペンサ3に向かって水素ガスが流される。プレクールシステム11は、ディスペンサ3から車両BのタンクCへ充填される直前の水素ガスを冷却する。プレクールシステム11は、たとえば熱交換器を備えており、水素ガスと冷媒(ブライン等)との間で熱交換することによりディスペンサ3から車両BのタンクCへ充填される直前の水素ガスを冷却する。
【0041】
圧縮機ユニット5は、例えば往復動圧縮機などからなり、駆動部51と、圧縮部52とを備える。圧縮部52はピストンとシリンダとを有し、駆動部51の動力によりピストンが駆動されてシリンダ内にてガス導入路13から送られてきた水素ガスが圧縮される。圧縮された水素ガスは、ガス流路7を介して蓄圧器ユニット6へ送出される。
【0042】
図1に示す蓄圧器ユニット6は、3個の蓄圧器(第1蓄圧器61、第2蓄圧器62、第3蓄圧器63)を備える。各蓄圧器61〜63には、圧縮機ユニット5から吐出された水素ガスが貯留される。
【0043】
これら3個の蓄圧器61〜63については、所定の充填プロトコルに従って燃料電池車BのタンクCに水素ガスを急速充填できるように、タンクC内に充填されている水素ガスの圧力の大きさによって使用される蓄圧器が異なっている。
【0044】
すなわち、第1蓄圧器61は、タンクCの圧力(すなわち、タンクC内に充填されている水素ガスの圧力)が所定の低圧の範囲である低圧域内である場合に使用される。以下、第1蓄圧器61を「低圧側蓄圧器61」と呼ぶ。
【0045】
第2蓄圧器62は、タンクCの圧力が、前記低圧域よりも幅が狭い所定の高圧の範囲である高圧域内である場合に使用される。以下、第2蓄圧器62を「高圧側蓄圧器62」と呼ぶ。
【0046】
第3蓄圧器63は、タンクの圧力が前記低圧域と前記高圧域との間の圧力の範囲である中圧域である場合に使用される。以下、第3蓄圧器63を「中圧側蓄圧器63」と呼ぶ。
【0047】
例えば、低圧側蓄圧器61は、タンクCの圧力が圧力範囲0〜50MPaの場合に使用され、中圧側蓄圧器63は、タンクCの圧力が圧力範囲50〜60MPaの場合に使用され、高圧側蓄圧器62は、タンクCの圧力が圧力範囲60〜70MPaの場合に使用されるが、これらの圧力範囲は使用条件等を考慮して適宜設定される。
【0048】
各蓄圧器61〜63は、例えば、両端が閉じた円筒形状の密閉された耐圧性の高い容器(
図3参照)からなる。
【0049】
充填プロトコルに従って水素ガスを車両BのタンクCへ急速に充填するためには、本実施形態のように複数の蓄圧器を利用することが好ましいが、これらの蓄圧器として、鉄鋼材料を含む鋼製容器と比較して安価な複合容器(例えば、炭素繊維およびアルミニウムなどの複数の材料からなる容器)が利用されることが考えられる。しかしながら、車両BにおけるタンクCの圧力が低圧域内である場合には、低圧側蓄圧器61から多くの水素ガスがディスペンサ3に供給されるため低圧側蓄圧器61に作用する応力振幅が大きくなり、低圧側蓄圧器61の疲労寿命が短くなり易い。一方、タンクCの圧力が上記高圧域内である場合には、高圧側蓄圧器62からディスペンサ3への水素ガスの供給量が相対的に低減することから、高圧側蓄圧器62に作用する応力振幅が小さくなり、高圧側蓄圧器62の疲労寿命が短くなり難い。
【0050】
そこで、本実施形態では、低圧域で用いられる低圧側蓄圧器61(第1蓄圧器)としては、圧力変動による疲労がしにくい鉄鋼材料からなる鋼製容器が用いられ、当該低圧域よりも高圧の高圧域で用いられる高圧側蓄圧器62(第2蓄圧器)としては、比較的安価な複合容器が用いられている。また、本実施形態では、タンクCの圧力が前記低圧域と前記高圧域との間の圧力の範囲である中圧域である場合に使用される中圧側蓄圧器63(第3蓄圧器)としても、比較的安価な複合容器が用いられている。しかし、本発明はこれに限定されるものではなく、中圧側蓄圧器63として、鋼製容器が用いられてもよい。
【0051】
複合容器は、鉄鋼材料と異なる複数の材料である複合材料を含む容器であり、例えば、上記のように炭素繊維およびアルミニウムのなどの複数の材料からなる安価な耐圧容器である。具体的には、複合容器は、アルミライナ(すなわち、アルミニウム製の容器本体部分)の外周面に炭素繊維が巻かれることによって形成される。
【0052】
図2に示されるように、低圧側蓄圧器61、中圧側蓄圧器63、および高圧側蓄圧器62は、それぞれフレーム65〜67に囲まれた状態で、使用される圧力域が低い方から順に下から積層された状態で配置されている。したがって、複合容器からなる中圧側蓄圧器63および高圧側蓄圧器62は、鋼製容器からなる低圧側蓄圧器61の上方に位置するように配置される。
【0053】
これらのフレーム65〜67は、各蓄圧器61〜63をそれぞれ収容可能な矩形断面を有する中空枠体であり、例えば柱状の鋼材を組み合わせて製造される。以下、低圧側蓄圧器61(第1蓄圧器)を囲むフレームを「低圧側フレーム65」(第1フレーム)、中圧側蓄圧器63(第3蓄圧器)を囲むフレームを「中圧側フレーム67」(第3フレーム)、高圧側蓄圧器62(第2蓄圧器)を囲むフレームを「高圧側フレーム66」(第2フレーム)と呼ぶ。
【0054】
中圧側フレーム67および高圧側フレーム66は、低圧側フレーム65から上方に分離可能に当該低圧側フレーム65の上に積層されている。また、高圧側フレーム66は、中圧側フレーム67から上方に分離可能に当該中圧側フレーム67の上に積層されている。低圧側フレーム65と中圧側フレーム67との連結、および中圧側フレーム67と高圧側フレーム66との連結は、それぞれボルトおよびナットなどの締結部材を用いて行われる。
【0055】
なお、上記の各蓄圧器61〜63は、
図3に示されるように、放熱のためにヒートシンク14が取り付けられていてもよい。ヒートシンク14は、例えば、熱伝導性の高い複数の金属板が各蓄圧器61〜63の外周面に放射状に配置された構成を有するが、放熱性を有していれば他の形態であってもよい。
【0056】
ガス流路7は、各蓄圧器61〜63と圧縮機ユニット5との間を連通する導入流路71と、各蓄圧器61〜63とディスペンサ3との間を連通する導出流路72とを有する。導入流路71および導出流路72はそれぞれ、各蓄圧器61〜63の近傍で3本に分岐して、各蓄圧器61〜63に接続されている。本実施形態では、各蓄圧器61〜63がそれぞれ1つの接続口を有し、当該接続口に導入流路71および導出流路72が接続されるために、これら導入流路71および導出流路72は、各蓄圧器61〜63近傍で合流しているが、本発明はこれに限定されるものではない。他の例として、例えば、導入流路71および導出流路72は、各蓄圧器61〜63に別個に設けられた2つの接続口にそれぞれ接続されてもよい。
【0057】
弁ユニット8は、各蓄圧器61〜63ごとに導入側および導出側の流路を個別に開閉するために、複数の第1弁部材81および第2弁部材82を備える。具体的には、第1弁部材81は、導入流路71における各蓄圧器61〜63に接続される分岐部分にそれぞれ配置され、各蓄圧器61〜63と圧縮機ユニット5との間を連通する導入流路71を開閉する。第2弁部材82は、導出流路72における各蓄圧器61〜63に接続される分岐部分にそれぞれ配置され、各蓄圧器61〜63とディスペンサ3との間を連通する導出流路72を開閉する。
【0058】
また、導入流路71の第1弁部材81の上流側(
図1の第1弁部材81に対する右側)には、水素ガスの逆流を阻止する逆止弁12が設けられている。これにより、導入流路71から各蓄圧器61〜63への水素ガスの導入を許容しながらその逆の流れを規制することが可能である。また、導出流路72における第2弁部材82の下流側(
図1の第2弁部材82に対する右側)にも逆止弁12が設けられているので、各蓄圧器61〜63から導出流路72への水素ガスの導出を許容しながらその逆の流れを規制することが可能である。
【0059】
圧力検知部9は、圧力センサであり、各蓄圧器61〜63に接続される水素ガスの流路部分に取り付けられる。圧力検知部9により各蓄圧器61〜63の内部の圧力を検知する。なお、圧力検知部として、各蓄圧器61〜63の外周面にひずみゲージを貼り付けてもよい。この場合、ひずみゲージで測定された各蓄圧器61〜63の外周面のひずみの大きさを用いて、各蓄圧器61〜63の圧力振幅を求めることが可能である。
【0060】
制御部10は、圧縮機ユニット5、弁ユニット8、およびプレクールシステム11を制御する。また、制御部10は、各蓄圧器61〜63に作用する応力の変動の回数に基づいて蓄圧器61〜63の寿命を判定するために、水素ガスの貯留時およびディスペンサ3への供給時に各蓄圧器61〜63に作用する応力に関する応力振幅を取得する取得部10aと、当該応力振幅を分類する分類部10bと、各蓄圧器61〜63の寿命を判定する判定部10cを備える。
【0061】
取得部10aは、各蓄圧器61〜63からディスペンサ3への水素ガスの供給時に各蓄圧器61〜63に作用する応力と各蓄圧器61〜63への水素ガスの貯留時に各蓄圧器61〜63に作用する応力との間の応力振幅を繰り返し取得する。
【0062】
具体的には、取得部10aは、水素ガスの貯留完了時(すなわち、第2弁部材82が閉状態において第1弁部材81が開状態から閉状態に移行したとき)から次の水素ガスのディスペンサ3への供給完了時(すなわち、第1弁部材81が閉状態において第2弁部材82が開状態から閉状態に移行したとき)までの間にその都度各蓄圧器61〜63の応力振幅を取得する。なお、取得部10aは、水素ガスの供給完了時から水素ガスの貯留完了時までの間にその都度応力振幅を取得してもよい。
【0063】
分類部10bは、取得された応力振幅をその大きさによって複数のグループに分類する。
【0064】
判定部10cは、各グループ毎に応力振幅が取得された数である取得数をそれぞれ計数し、各グループ毎の当該取得数と当該グループを代表する応力振幅に対応する破壊繰り返し数とから得られる値をグループ毎に合計して得られる疲労度合いに基づいて、各蓄圧器61〜63の寿命を判定する。
【0065】
以上のように構成された制御部10は、以下の手順で各蓄圧器61〜63の寿命を判定する。まず、取得部10aは、以下のようにして、応力振幅を所定の期間内に繰り返し取得する。
【0066】
具体的には、以下のようにして、各蓄圧器61〜63の応力振幅Δσ
iを圧力変動ΔPから求める。
【0067】
まず、
図4に示されるように、円筒容器からなる各蓄圧器61〜63における内部圧力をPとした場合、圧力変動ΔPは、以下の式1のように求められる。
ΔP=Pmax−Pmin(式1)
ここで、
Pmax:圧縮機ユニット5から各蓄圧器61〜63への貯留が完了した時点における各蓄圧器61〜63内部の圧力(すなわち、第2弁部材82が閉状態において、第1弁部材81が開状態から閉状態に移行したときの内部圧力)であり、
Pmin:各蓄圧器61〜63からディスペンサ3への供給が完了した時点における各蓄圧器61〜63内部の圧力(すなわち、第1弁部材81が閉状態において、第2弁部材82が開状態から閉状態に移行したとき内部の圧力)である。
【0068】
一方、各蓄圧器61〜63の内径をd、外径をDとした場合、内部圧力Pのときの各蓄圧器61〜63で発生する最大応力σは、K(=D/d)を用いて表すと、
σ=((K
2+1)/(K
2−1)+1)×P (式2)
のように表される。
【0069】
この式2のPに上記の圧力変動ΔPを適用して、応力振幅Δσ
iを求めれば、以下の式3のようになる。
Δσ
i=((K
2+1)/(K
2−1)+1)×ΔP (式3)
なお、平均応力を加味した補正項を考慮してΔσ
iが決定されてもよい。
【0070】
ついで、分類部10bは、応力振幅Δσ
iをその大きさによって複数のグループに分類する。
【0071】
判定部10cは、所定の期間における応力振幅の取得数n
iを各グループごとに計数する。
【0072】
ここで、グループの数および各グループに含まれる応力振幅Δσ
iの大きさの範囲は、所定の期間の長さや各蓄圧器61〜63に作用する圧力変動ΔPの大きさなどによって適宜設定される。例えば、
図5に示されるように、所定の期間Tの間に、車両BのタンクCが空の状態から水素ガスの最大の充填量になるまでフル充填した場合にはΔσ
1のように大きな応力振幅が発生する。タンクCが例えば水素ガスが半分残っている状態から最大の充填量になるまで充填した場合にはΔσ
2のように小さな応力振幅が発生する。判定部10cでは、所定の期間Tの間における応力振幅Δσ
1の取得数n
1と応力振幅Δσ
2の取得数n
2を個別に計数する。
【0073】
そして、判定部10cは、各グループ毎の応力振幅Δσ
iの取得数n
iを当該グループを代表する応力振幅に対応する破壊繰り返し数N
iで割った数値であるn
i/N
iを各グループごとに求める。
【0074】
ここで、グループを代表する応力振幅としては、例えば、各グループにおける応力振幅の中央値又は平均値が用いられるが、他の基準で代表となる応力振幅を設定してもよい。
【0075】
さらに、判定部10cは、各グループごとに求められた数値n
i/N
iを合計して疲労度合いΣn
i/N
iを求める。疲労度合いΣn
i/N
iの値が所定の閾値以上になった場合には、判定部10cは、各蓄圧器61〜63の寿命であると判定する。閾値を例えば1とした場合、以下の式4のようになったときに各蓄圧器61〜63の寿命になったと判定する。
【0077】
応力σ
iに対する一定応力振幅試験の寿命がN
iであるとき、変動応力中でσ
iがn
i回繰り返されたときのσ
iによる疲労損傷の度合いを示す値は、繰り返し数比としてn
i/N
iで与えられる。また各応力レベルについての疲労損傷は、各応力レベルごとに独立で、線形に加算されるものとして、そのn
i/N
iの合計である疲労度合いΣn
i/N
iによって表される。したがって、式4のように表すことが可能である。この疲労度合いΣn
i/N
iが所定の閾値、たとえば1になったとき、すなわち、Σn
i/N
i=1になったときに蓄圧器が破断すると考えられる。
【0078】
なお、閾値は、理論的には1になるが、測定条件に応じて閾値は適宜変更してもよく、例えば1未満の値などに設定されてもよい。
【0079】
つぎに、上記の水素ステーション1を用いた車両Bへの水素ガスの充填方法を説明する。
【0080】
図1に示す車両BのタンクCに水素ガスが充填される際には、予め、ガス導入路13を介してガス供給源(図示せず)から送られた水素ガスが圧縮機ユニット5によって圧縮された後、弁ユニット8の第2弁部材82を閉じた状態で第1弁部材81を開けることにより、蓄圧器ユニット6に送出され、各蓄圧器61〜63にそれぞれの圧力域に応じた圧力に調整された水素ガスが貯留される。具体的には、低圧側蓄圧器61(圧力範囲0〜50MPa)には、50MPaの圧力で水素ガスが貯留され、中圧側蓄圧器63(圧力範囲50〜60MPa)には、60MPaの圧力で水素ガスが貯留され、高圧側蓄圧器62(圧力範囲60〜70MPa)には、70MPaの圧力で水素ガスが貯留される。
【0081】
そして、車両Bが水素ステーション1に搬入されると、弁ユニット8の第1弁部材81を閉じた状態で第2弁部材82を開けることにより、蓄圧器ユニット6からディスペンサ3に水素ガスが供給されるとともに、ディスペンサ3が所定の充填プロトコルに従って車両BのタンクCへ水素ガスを充填する。
【0082】
このとき、蓄圧器ユニット6では、まず低圧側蓄圧器61(圧力範囲0〜50MPa)からディスペンサ3へ水素ガスが供給される。ディスペンサ3は、車両BのタンクC内の圧力を間接的に測定し、タンクCと低圧側蓄圧器61との間の圧力差が所定値以下となったと判断すると、ガス供給システム2に対して低圧側蓄圧器61からの水素ガスの供給を停止する指示を送る。
【0083】
続いて、ガス供給システム2が中圧側蓄圧器63(圧力範囲50〜60MPa)を開放し、ディスペンサ3に水素ガスが供給される。これによりディスペンサ3(あるいは中圧側蓄圧器63)と車両BのタンクCとの間の圧力差が回復し、タンクCへ充填される水素ガスの流量が確保される。車両BのタンクCの圧力が上昇し、中圧側蓄圧器63とタンクCとの間の圧力差が所定値以下となったとディスペンサ3が判断すると、ガス供給システム2は中圧側蓄圧器63からの水素ガスの供給を停止するとともに、さらに高圧側蓄圧器63(圧力範囲60〜70MPa)を開放して水素ガスが供給される。これにより、ディスペンサ3とタンクCとの間の圧力差が確保され、十分な量の水素ガスが充填される。タンクCの圧力が設定値になったと判断されると、ガス供給システム2からの水素ガスの供給が停止される。
【0084】
以上のように、ガス供給システム2は、車両BのタンクCの3つの圧力領域に応じて低圧側蓄圧器61(圧力範囲0〜50MPa)、中圧側蓄圧器63(圧力範囲50〜60MPa)、および高圧側蓄圧器62(圧力範囲60〜70MPa)を切り替えることにより、ディスペンサ3が充填プロトコルに従って効率よく水素ガスをタンクCに充填することが可能となる。
【0085】
つぎに、各蓄圧器61〜63の寿命を判定する方法について、
図6のフローチャートを参照しながら説明する。
【0086】
まず、制御部10の取得部10aは、上記のように、圧力変動ΔPに基づいて、(式3)に従って、各蓄圧器61〜63における応力振幅Δσ
iを求める(ステップS1)。
【0087】
ついで、分類部10bは、応力振幅Δσ
iをその大きさによって複数のグループに分類する(ステップS2)。
【0088】
判定部10cは、上記のように所定の期間における各グループごとに応力振幅の取得数n
iをカウントする(ステップS3)。
【0089】
ついで、判定部10cは、上記のように、各グループ毎の応力振幅Δσ
iの取得数n
iを当該グループを代表する応力振幅に対応する破壊繰り返し数N
iで割った数値であるn
i/N
iを各グループごとに求める(ステップS4)。
【0090】
ついで、判定部10cは、上記のように、n
i/N
iを合計して疲労度合いΣn
i/N
iを求める(ステップS5)。
【0091】
その後、判定部10cは、上記のように、Σn
i/N
iの値が所定の閾値A以上になったか否かを判定し(ステップS6)、Σn
i/N
iの値が所定の閾値A以上である場合には、該当する蓄圧器61〜63は寿命であると判定し(ステップS7)、そうでない場合は一寿命ではないと判定する(ステップS8)。
【0092】
以上のようにして、判定部10cは、蓄圧器61〜63に作用する応力の応力振幅の大きさごとに疲労寿命の評価値であるn
i/N
iを個別に求めた後に当該n
i/N
iを足し合わせて疲労度合いΣn
i/N
iを求めることにより、蓄圧器61〜63の寿命を正確に判定することが可能である。
【0093】
(作用効果)
(1)
本実施形態のガス供給システム2および蓄圧器の疲労判定方法では、各蓄圧器61〜63に作用する応力の応力振幅Δσ
iの大きさに着目し、応力振幅Δσ
iの大きさごとに応力振幅Δσ
iの取得数n
iを求めて各蓄圧器61〜63の寿命判定に用いる。すなわち、分類部10bは、各蓄圧器61〜63における水素ガスの貯留時およびディスペンサ3への供給時に当該蓄圧器61〜63に作用する応力の応力振幅Δσ
iをその大きさによって複数のグループに分類する。ついで、判定部10cは、各グループ毎の応力振幅Δσ
iの取得数と当該グループを代表する応力振幅に対応する破壊繰り返し数とから得られる値をグループ毎に合計して疲労度合いを求める。疲労度合いは、具体的には、各グループ毎に得られている応力振幅Δσ
iの取得数n
iを、各グループで代表する応力振幅Δσ
iに対応する破壊繰り返し数N
iで割ることによって得られる値n
i/N
iをすべてのグループについて足し合わせて求められる。判定部10cは、疲労度合いΣn
i/N
iに基づいて、各蓄圧器61〜63の寿命を判定する。これにより、各蓄圧器61〜63に作用する応力の大きい応力振幅に起因する疲労寿命と小さい応力振幅に起因する疲労寿命とをそれぞれ個別に考慮しながら、各蓄圧器61〜63の寿命をより適切に管理することができ、蓄圧器の交換頻度を低減することが可能である。その結果、水素ステーション1の管理コストを低減することができる。
【0094】
なお、本実施形態では、蓄圧器ユニットが3個の蓄圧器61〜63を備えた例が示されているが、本発明はこれに限定されるものではなく、少なくとも1個の蓄圧器を有していれば、蓄圧器の寿命を適切に管理して、蓄圧器の交換頻度を低減することが可能である。
【0095】
(2)
タンクCの圧力が低圧域内である場合には、低圧側蓄圧器61(第1蓄圧器)から多くのガスがディスペンサ3に供給されるため低圧側蓄圧器61に作用する応力振幅が大きくなり、低圧側蓄圧器61の疲労寿命が短くなり易い。一方、タンクCの圧力が上記高圧域内である場合には、高圧側蓄圧器62(第2蓄圧器)からディスペンサ3への水素ガスの供給量が相対的に低減することから、高圧側蓄圧器62に作用する応力振幅が小さくなり、高圧側蓄圧器62の疲労寿命が短くなり難い。そこで、本実施形態のガス供給システム2では、低圧域で使用される低圧側蓄圧器61(第1蓄圧器)として、高耐久性を有する鋼製容器が用いられることにより、低圧側蓄圧器61の長寿命化を図ることができる。また、高圧域で使用される高圧側蓄圧器62(第2蓄圧器)として、鋼製容器よりも安価である複合容器が用いられることにより、蓄圧器ユニット6のコストの増大を抑制することができる。また、鋼製容器および複合容器を併用することにより、低圧側蓄圧器61および高圧側蓄圧器62の寿命の平滑化を図ることができ、蓄圧器の交換頻度を低減することが可能である。
【0096】
(3)
本実施形態のガス供給システム2では、蓄圧器ユニット6がタンクCの圧力が前記低圧域と前記高圧域との間の圧力の範囲である中圧域である場合に使用される中圧側蓄圧器63(第3蓄圧器)をさらに備えているので、3つの異なる圧力域で使用される蓄圧器、すなわち、低圧側蓄圧器61、中圧側蓄圧器63、および高圧側蓄圧器62を用いて迅速なガスの供給が可能になる。
【0097】
また、中圧側蓄圧器63として、鋼製容器よりも安価である複合容器が用いられることにより、3つの異なる圧力域で使用される3本の蓄圧器61〜63を備えた蓄圧器ユニット6であっても、当該蓄圧器ユニット6コストの増大を抑制することが可能である。
【0098】
なお、上記実施形態では、中圧側蓄圧器63を備えた蓄圧器ユニット6が示されているが、中圧側蓄圧器63は省略してもよい。
【0099】
(4)
本実施形態のガス供給システム2では、鋼製容器よりも比較的寿命が短い複合容器である中圧側蓄圧器63および高圧側蓄圧器62を第1ユニット60側の低圧側蓄圧器61よりも上方に配置しておくことにより、仮に複合容器からなる中圧側蓄圧器63または高圧側蓄圧器62を交換する必要が生じた場合であっても、作業者はこれらの蓄圧器62、63に容易にアクセスして交換作業を行うことができる。
【0100】
(5)
本実施形態のガス供給システム2では、中圧側蓄圧器63を囲む中圧側フレーム67(第3フレーム)および高圧側蓄圧器62を囲む高圧側フレーム66(第2フレーム)が低圧側蓄圧器61を囲む低圧側フレーム65(第1フレーム)の上方に分離可能に積層されているので、中圧側蓄圧器63および高圧側蓄圧器62をそれぞれフレーム67、66に囲まれた状態で容易に取り外すことができる。また、クレーン等を使って中圧側蓄圧器63および高圧側蓄圧器62を低圧側蓄圧器61の上方から取り外すことができるため、例えばこれら中圧側蓄圧器63および高圧側蓄圧器62を水平方向にスライドさせて取り外す場合に比べて、作業スペースを小さくすることができる。
【0101】
(他の実施形態についての説明)
(A)
上記実施形態のガス供給システム2では、蓄圧器ユニット6は、3個の蓄圧器61〜63を備え、各蓄圧器61〜63が使用される圧力域があらかじめ設定されていたが、本発明はこれに限定されるものではない。
【0102】
例えば、本発明の他の実施形態として、蓄圧器ユニットが複数の蓄圧器を備え、いずれか1つの蓄圧器が使用される構成を有するガス供給システムにおいて、車両BのタンクCの圧力が低圧域内である場合には、そのときに使用される蓄圧器から多くの水素ガスがディスペンサ3に供給されるため蓄圧器に作用する応力振幅が大きくなり、蓄圧器が疲労しやすい。そこで、本発明の変形例として、例えば、複数の蓄圧器についての残存寿命を上記の蓄圧器の寿命管理法を利用して求め、当該残存寿命に応じて低圧域で用いられる蓄圧器を決定してもよい。具体的には、蓄圧器ユニット6は、複数の蓄圧器として、例えば、第1蓄圧器と、第2蓄圧器とを含み、第1蓄圧器および第2蓄圧器のうちの一方が低圧域に用いられ、他方が当該低圧域よりも高い圧力の高圧域で用いられるようにすればよい。このような変形例では、第1蓄圧器および第2蓄圧器は、例えばすべて同じ複合容器(または鋼製容器)を用いてもよい。
【0103】
この変形例では、判定部10cは、第1蓄圧器および第2蓄圧器のそれぞれのΣn
i/N
iの値を求め、さらに、前記Σn
i/N
iの値に基づいて当該第1蓄圧器および第2蓄圧器の残存寿命をそれぞれ求める。そして、第1蓄圧器および第2蓄圧器のうちの残存寿命が長いものが、車両BのタンクCの圧力が所定の低圧の範囲である低圧域内である場合に使用される。一方、タンクCの圧力が前記低圧域よりも幅が狭い所定の高圧の範囲である高圧域内である場合に、前記残存寿命が短いものが高圧域で使用される。この構成によれば、前記第1蓄圧器および前記第2蓄圧器のうちの前記残存寿命が長いものが、上記低圧域にて使用される蓄圧器とされる。一方、タンクCの圧力が上記高圧域内である場合には、蓄圧器からディスペンサ3(充填設備)への水素ガスの供給量が相対的に低減することから、蓄圧器に作用する応力振幅が小さくなり、前記残存寿命が短いものが高圧域にて使用される蓄圧器とされる。その結果、蓄圧器の寿命を平滑化することができる。そして、蓄圧器の交換期間を長くすることができ、水素ガスステーション1の管理コストをより低減することができる。
【0104】
(B)
なお、複数の蓄圧器は、3個以上であってもよく、その場合も、残存寿命が最も長いものが、車両BのタンクCの圧力が低圧域内である場合に使用されるようにすればよい。
【0105】
上記実施形態のガス供給システム2では、蓄圧器ユニット6は、使用される圧力域ごとすなわち、低圧側、中圧側、高圧側にそれぞれ1個ずつの蓄圧器を有しているが、本発明はこれに限定されるものではなく、本発明のさらに他の実施形態として、
図7に示されるように、いずれかの圧力域において複数の蓄圧器(例えば、低圧域において、2個の低圧側蓄圧器61)を備え、各蓄圧器の温度に応じて使用する蓄圧器を使い分けるようにしてもよい。
【0106】
この
図7の例では、各蓄圧器61の外周面等の温度検知に適した場所には、温度検知部15が取り付けられている。そして、第1弁部材81および第2弁部材82と2個の低圧側蓄圧器61との間には、2個の低圧側蓄圧器61のいずれかに水素ガスの流路を切り換える切換部16が設けられている。切換部16は、制御部10によって切換制御される。
【0107】
制御部10は、複数の蓄圧器61のうち温度が低い蓄圧器61が使用されるように、複数の蓄圧器61の温度に基づいて使用する蓄圧器61を切り換えるように切換部16を制御する。具体的には、温度検知部15が低圧側蓄圧器61の温度を検知し、制御部10は、当該2個の低圧側蓄圧器61のうち温度が低い方へ水素ガスの流路を切り換えるように、切換部16を制御する。これにより、2つの低圧側蓄圧器61のうち、温度が低いものが選択されて使用されるので、蓄圧器ユニット6からディスペンサ3に供給されるガスの温度の上昇を抑制するので、プレクールシステム11における水素ガスの冷却負荷を低減することができる。また、温度が高くなった低圧側蓄圧器61は、使用されない間に外気へ放熱されて自然冷却され、とくに
図3のヒートシンク14を用いることによって効率よく冷却される。
【0108】
なお、この変形例の場合、低圧側蓄圧器61は少なくとも2個あればよく、3個以上であってもよい。
【0109】
(C)
本発明のさらに他の実施形態として、
図8に示すように、ガス供給システム2が流路73を介して圧縮機ユニット5からディスペンサ3へ水素ガスを直接供給できるようにしてもよい。この
図8に示されるガス供給システム2では、圧縮機ユニット5からディスペンサ3へ通じる流路73の途中には、分岐路74を介して蓄圧器61が連通する。流路73における分岐路74よりも上流側および下流側には、閉鎖弁17、18が設けられている。また、分岐路74の途中にも閉鎖弁83が設けられている。
【0110】
この
図8に示されるガス供給システム2では、圧縮機ユニット5からディスペンサ3への水素ガスの供給が不足しているときは蓄圧器61から水素ガスが補われ、水素ガスが足りているときは、蓄圧器61に水素ガスが貯留される。蓄圧器61内部に水素ガスが十分に貯留されているときは、閉鎖弁83は閉められる。本システムであっても、寿命判定方法を用いることにより、蓄圧器の寿命管理を適切に行うことが可能である。
【0111】
(D)
上記実施形態のガス供給システム2では、蓄圧器ユニット6は、
図2に示されるように、低圧側蓄圧器61、中圧側蓄圧器63、高圧側蓄圧器62が下から順に積層された3層の積層構造になっているが、本発明はこれに限定されるものではない。本発明のさらに他の実施形態として、
図9に示されるように、鋼製容器からなる低圧側蓄圧器61の上方に、それぞれ複合容器からなる中圧側蓄圧器63および高圧側蓄圧器62を横に並べて配置してもよい。この場合も、中圧側蓄圧器63を囲む中圧側フレーム67および高圧側蓄圧器62を囲む高圧側フレーム66は、低圧側蓄圧器61を囲む低圧側フレーム65に対して分離可能にボルトなどで連結されていればよい。さらに、中圧側フレーム67および高圧側フレーム66も互いに分離可能に連結されていればよい。これにより、当該中圧側蓄圧器63および高圧側蓄圧器62の交換が非常に容易になる。
【0112】
(E)
上記の実施形態のガス供給システム2は、1つの蓄圧器ユニット6を備えた構成になっているが、本発明のさらに他の実施形態として、
図10に示されるように、蓄圧器ユニット6Aに対して他の蓄圧器ユニット6Bが接続されていてもよい。
【0113】
蓄圧器ユニット6A,6Bは、上記実施形態と同様に、低圧側蓄圧器61、中圧側蓄圧器63、および高圧側蓄圧器62を備えている。蓄圧器ユニット6Bの蓄圧器61〜63はそれぞれ、導出流路72における蓄圧器ユニット6Aの蓄圧器61〜63と第2弁部材82との間の部位に接続される。なお、
図10では、
図1の導入流路71および第1弁部材81は簡略化のため省略しているが、蓄圧器ユニット6Bの蓄圧器61〜63はそれぞれ、導入流路71における蓄圧器ユニット6Aの蓄圧器61〜63と第1弁部材81との間の部位に接続される。複数の蓄圧器ユニット6A、6Bを用意することにより、大型の1つの蓄圧器ユニットを用意する場合に比べて、水素ガスの需要量に応じて蓄えられる水素ガスの量を容易に調整することができる。
【0114】
以上、本発明の実施形態について説明したが、本発明は上記実施形態に限定されるものではなく、様々な変更が可能である。
【0115】
例えば、上記実施形態では、疲労度合いの一例として、各グループ毎に得られている応力振幅Δσ
iの取得数n
iを、各グループで代表する応力振幅Δσ
iに対応する破壊繰り返し数N
iで割ることによって得られる値n
i/N
iをすべてのグループについて足し合わせた疲労度合いΣn
i/N
iを例に挙げて説明したが、本発明はこれに限定されるものではない。本発明では、疲労度合いは、各グループ毎の応力振幅Δσ
iの取得数n
iと当該グループを代表する応力振幅に対応する破壊繰り返し数N
iとから得られる値をグループ毎に合計して得られるものであればよく、他の計算式で得られる疲労度合いであってもよい。例えば、本発明のさらに他の実施形態として、各グループごとに重み付けなどの目的のために所定の係数k
iを設定しておき、Σ(n
i/N
i)×k
iを疲労度合いとしてもよい。
【0116】
上記実施形態では、蓄圧器ユニット6にガスを送出するガス送出部の一例として圧縮機ユニット5を例に挙げて説明しているが、本発明はこれに限定されるものではなく、ガスを送出できるものであれば種々の装置をガス送出部として用いることが可能である。例えば、水を電気分解して水素ガスを発生させる水電解装置を、ガス送出部として用いることも可能である。さらに、液化水素から水素ガスを生成する装置をガス送出部として用いることも可能である。