(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
前記表示部に表示された前記確認メッセージを受理すると、前記制御部は、前記回転駆動部の前記回転数を、前記下限回転数設定値以下に下げることを許すことを特徴とする請求項3に記載の体外循環装置。
【発明を実施するための形態】
【0014】
以下に、本発明の好ましい実施形態を、図面を参照して詳しく説明する。
尚、以下に述べる実施の形態は、本発明の好適な具体例であるから、技術的に好ましい種々の限定が付されているが、本発明の範囲は、以下の説明において特に本発明を限定する旨の記載がない限り、これらの態様に限られるものではない。
図1は、本発明の体外循環装置の好ましい実施形態を示す系統図である。
図1に示す体外循環装置1が行う「体外循環」には、「体外循環動作」と、「補助循環動作」を含む。体外循環装置1は、「体外循環動作」と「補助循環動作」のいずれも行うことができる。
【0015】
「体外循環動作」とは、例えば心臓外科手術によって一時的に心臓での血液循環を止めるような場合に、この体外循環装置1により血液の循環動作とこの血液に対するガス交換動作(酸素付加および/または二酸化炭素除去)を行うことである。「補助循環動作」とは、体外循環装置1の適用対象である患者Pの心臓が十分な機能を果たせない場合や肺によるガス交換が十分に行えないような状態において体外循環装置1によっても血液の循環動作の補助を行うことである。装置によっては、血液に対するガス交換動作を行う機能を持つものもある。
【0016】
図1に示す体外循環装置1は、例えば患者の心臓外科手術を行う場合には、体外循環装置1のポンプを作動して患者の静脈(大静脈)から脱血して、人工肺により血液中のガス交換を行って血液の酸素化を行った後に、この血液を再び患者の動脈(大動脈)に戻す人工肺体外血液循環を行うことができる。この体外循環装置1は、心臓と肺の代行を行う装置である。
図1に示す体外循環装置1は、血液を循環させる循環回路1Rを有している。循環回路1Rは、人工肺2と、遠心ポンプ3と、駆動手段であるドライブモータ4と、静脈側カテーテル(脱血側カテーテル)5と、動脈側カテーテル(送血側カテーテル)6と、制御部としてのコントローラ10を有している。
【0017】
図1に示すように、静脈側カテーテル(脱血側カテーテル)5は、大腿静脈より挿入され、静脈側カテーテル5の先端が右心房に留置される。動脈側カテーテル(送血側カテーテル)6は、大腿動脈より挿入される。静脈側カテーテル5は脱血チューブ11を用いて遠心ポンプ3に接続されている。脱血チューブ(脱血ラインともいう)11は、血液を送る管路である。ドライブモータ4がコントローラ10の指令SGにより遠心ポンプ3を動作すると、遠心ポンプ3は、脱血チューブ11から脱血して人工肺2に通した後に、送血チューブ12(送血ラインともいう)を介して患者Pに血液を戻すことができる。
【0018】
人工肺2は、遠心ポンプ3と送血チューブ12の間に配置されている。人工肺2は、この血液に対するガス交換動作(酸素付加および/または二酸化炭素除去)を行う。人工肺2は、例えば膜型人工肺であるが、特に好ましくは中空糸膜型人工肺を用いる。この人工肺2には、酸素ガス供給部13から酸素ガスがチューブ14を通じて供給される。送血チューブ12は、人工肺2と動脈側カテーテル6を接続している管路である。脱血チューブ11と送血チューブ12は、例えば塩化ビニル樹脂やシリコーンゴム等の透明性の高い、可撓性を有する合成樹脂製の管路が使用できる。脱血チューブ11内では、血液はV方向に流れ、送血チューブ12内では、血液はW方向に流れる。
【0019】
図1に示すように、超音波気泡検出センサ20が、脱血チューブ11の途中において脱血チューブ11の外側に配置されている。
ファストクランプ17は、送血チューブ12の途中位置において送血チューブ12の外側に配置されている。
超音波気泡検出センサ20が、脱血チューブ11内に送られている血液中に気泡があるのを検出した場合には、超音波気泡検出センサ20は、コントローラ10に気泡を検出した検出信号を送る。これにより、ファストクランプ17は、コントローラ10の指令により、血液が患者P側に送られるのを阻止するために、送血チューブ12を緊急に閉塞する。
【0020】
ところで、ドライブモータ4は遠心ポンプ3を回転駆動するが、このドライブモータ4と遠心ポンプ3には下限回転数設定値が設定される。このドライブモータ4(遠心ポンプ3)の下限回転数とは、制御部100がドライブモータ4を作動して遠心ポンプ3を駆動することで、人工肺2から血液を返送する際に、体外循環装置1の循環回路1R内で血液の逆流を起こさないようにするための最低限の回転数をいう。すなわち、ドライブモータ4(遠心ポンプ3)の下限回転数は、遠心ポンプ3から送血チューブ12内においてかかる血液の圧力と、この送血チューブ12内における患者Pの血圧が、均等になる時の遠心ポンプの回転数である。
もし、この遠心ポンプ3(ドライブモータ4)の回転数が、下限回転数設定値以下に下がると、循環回路1Rでは血液が逆流を起こして、患者Pの人体に影響を及ぼす可能性があることから、体外循環装置1の循環回路1Rでは、下限回転数設定値の設定と維持は重要である。
【0021】
図1に示すように、コントローラ10は、ケース25と、表示部30と、操作部50を有している。表示部30と操作部50は、このケース25の前面に配置されている。表示部30は、ケース25の表面部26の上側に配置され、各種の数値や、「確認メッセージ」等の通知項目や警告項目等を表示できる。表示部30としては、例えば液晶表示装置を採用しているが、特に限定されない。各種の数値とは、遠心ポンプ3の下限回転数設定値や、現時点の回転数等である。
【0022】
図1に示すコントローラ10に設けられている操作部50は、ケース25の表面部26の下側に配置されている。この操作部50は、回転操作部51と、回転数表示部60を有している。図には円環状に記入しているが、回転数表示部60の並びの形状は円環状に限定されない。例えば、直線的な案内部を動くレバーや、曲線的にデザインされたタッチパネル等種々の形態を実施し得る。
この実施形態では、回転操作部51は、回転つまみ72を有しており、回転つまみ72を操作者が手指で摘んで、時計方向CWに回転させることで、遠心ポンプ3の回転数を増加することができる。また、回転つまみ72を操作者が手指で摘んで、反時計方向CCWに回転させることで、遠心ポンプ3の回転数を減少することができる。
【0023】
この回転数表示部60は、回転操作部51の周囲に配置されており、回転数表示部60は、円環状に配置された複数個の発光素子、例えば30個のLED(発光ダイオード)素子DP1からDP30により構成されている。これらのLED素子DP1からDP30は、
図1に示すコントローラ10の制御部100の指令により、好ましくは「赤色」と「緑色」に選択的に点灯できるようになっている。
【0024】
次に、
図2を参照する。
図2は、コントローラ10に配置されている円環状の回転数表示部60の点灯表示例を示している。
図2(A)の点灯表示例では、LED素子DP1からDP4と、LED素子DP10が選択的に「赤色」に点灯しており、これ以外のLED素子は非点灯状態である。
図2(B)の点灯表示例では、LED素子DP1からDP4と、LED素子DP15が「赤色」に点灯しており、これ以外のLED素子は非点灯状態である。
図2(A)と
図2(B)に示す点灯表示部60では、LED素子DP1が、回転数「100〜199」rpmを示し、LED素子DP2が、回転数「200〜299」rpm、LED素子DP3が、回転数「300〜399」rpm、・・・(中略)・・・、LED素子DP29が、回転数「2900〜2999」rpm、そしてLED素子DP30が、回転数「3000」rpmを示す。
【0025】
図2(A)に示す回転数表示部60の点灯表示例では、LED素子DP1からDP4と、LED素子DP10が「赤色」に点灯しているので、実際の回転指示値は400rpmであり、下限回転数設定値は1000rpmである。
図2(B)に示す回転数表示部60の点灯表示例では、LED素子DP1からDP4と、LED素子DP15が「赤色」に点灯しているので、実際の回転指示値は400rpmであり、下限回転数設定値は1500rpmである。すなわち、
図2(A)から
図2(B)では、下限回転数設定値が「1000rpm」から「1500rpm」に変更された場合の表示変更例を示している。
なお、
図2(A)と
図2(B)では、LED素子DP1からDP4と、LED素子DP10、DP15は、それぞれ「赤色」で点灯することで、操作者に注意を促している。
【0026】
次に、
図3を参照する。
図3に示すコントローラ10の回転数表示部60の点灯表示例は、
図2に示す点灯表示部60の点灯表示例とは異なる。
図3(A)に示す回転数表示部60の点灯表示例では、LED素子DP1からDP10までが「赤色」に点灯し、LED素子DP11からDP19までが「緑色」に点灯しており、この点灯状態では、コースト回転数設定値は、「1000rpm」であり、回転数指示値は、「1950rpm」に設定されている。
【0027】
図3(B)に示す回転数表示部60の点灯表示例では、操作者が
図1に示す回転操作部51を反時計方向CCWに回転することで、回転数指示値は、
図3(A)で示す回転数「1950rpm」から回転数「1000rpm」に、「下限回転数設定値」LRVに下げた状態を示している。従って、
図3(B)では、LED素子DP1からDP10までが点灯して明示している。
図3(B)に例示するように、このように回転数が「下限回転数設定値」LRVである1000rpmに下げた状態では、
図3(B)に示すように、回転数表示領域31は、下限回転数設定値LRVとして、「1000rpm」を表示している。
【0028】
なお、
図3(A)と
図3(B)では、LED素子DP1からDP10は、それぞれ「赤色」で点灯することで、操作者に注意を促しているが、
図3(A)では、回転数が下限回転数設定値LRVである1000rpmを超えるLED素子DP11からDP19は、それぞれ「緑色」で点灯することで、「赤色」とは異なり、回転数設定値LRVを超えていることを、「緑色」で点灯することで、操作者に知らせている。
【0029】
図3(B)には、
図1に示すコントローラ10の表示部30の表示例を示している。表示部30は、回転数表示領域31と、血液の送血量表示領域32と、「確認メッセージ」M等を表示するための表示領域33と、時間表示領域34,35と、バッテリ残量表示領域36と、そして時間表示領域37を有している。
【0030】
回転数表示領域31は、ドライブモータ4(遠心ポンプ3)の回転数を表示する。血液の送血量表示領域32は、血液の送血量(L/min)を表示する。「確認メッセージ」表示領域33は、例えば「下限回転数以下に下げますか?」等の「確認メッセージ」Mを表示することができる。時間表示領域34,35は、積算時間等を表示する。バッテリ残量表示領域36は、コントローラ10に内蔵されているバッテリ残量を表示する。時間表示領域37は、現在時刻をデジタル表示する。
【0031】
この確認メッセージ表示領域33には、「OK」ボタン38と、「キャンセル」ボタン39が配置されている。これらの「OK」ボタン38と「キャンセル」ボタン39は、操作者が指で触れることにより、コーストリリースするか否かを確認できるボタンである。
また、コントローラ10のケース25の表面部26には、コーストリリースボタン(コースト解除スイッチ)40が配置されている。このコーストリリースボタン40は、前記「OK」ボタン38と同じ働きをし、コーストリリースを行う場合は押下します。またコーストリリースするか否かを確認中の間に点滅することで、操作者に注意を促すことができる。
【0032】
このコーストリリース(コースト解除)とは、ドライブモータ4の回転数を下限回転数設定値以下にすることを示している。
手技中、維持していた回転数を体外循環の手技を終え、患者から循環回路1Rを離脱する際に予め設定していた下限回転数設定値以下に下げ、回転数を0に落とす必要がある。その際、誤操作による回転数の低下ではないため、「OK」ボタン38、またはコーストリリースボタン40を押すことで、前記下限回転数以下に落とすことが出来る。そして、回転数を0にすることで初めて、循環回路1Rを離脱出来る。
【0033】
ここで、
図1に示す体外循環装置1における体外循環操作を行う前に行われる操作者による手技の流れ、すなわち手術の準備から体外循環開始までの手技の手順の一例を、
図4を参照して説明する。
図4は、循環回路1R内を生理食塩水で満たしてドライブモータ4の回転数を1000rpm程に上げた後に、さらにドライブモータ4の回転数を上げて循環を開始するまでの操作例を示している。
図1に示すように、静脈側カテーテル5は、予め患者Pの大腿静脈より挿入され、静脈側カテーテル5の先端が右心房に留置される。動脈側カテーテル6は、大腿動脈より挿入される。
図4のステップSR1では、循環回路1Rは、カテーテルの結合部1C、1Dを、別に用意した破線で示すチューブ1Tでつなぐことで閉鎖回路に形成して、この閉鎖された循環回路1R内は生理食塩水で満たす。
【0034】
次に、循環回路1Rが生理食塩水で満たしたら、
図4のステップSR2では、結合部1Cを用いて脱血チューブ11と静脈側カテーテル5を接続するとともに、結合部1Dを用いて送血チューブ12と動脈側カテーテル6を接続する。
図4のステップSR3では、操作者(技師)により、鉗子などで送血チューブ12の途中をクランプして、動脈側の送血チューブ12を閉じる。
図4のステップSR4では、操作者(技師)により、制御部100を通して、ドライブモータ4の回転数を1000rpmに上げる。そして、
図4のステップSR5では、操作者より、送血チューブ12の途中のクランプを解除して、送血チューブ12を開通させて、ドライブモータ4の回転数をさらに上げて、循環回路1R内における循環を開始する。
このようにして、循環回路1R内に生理食塩水を循環させて、体外循環操作を開始するまでの準備を行う。ただし、手技にふさわしいドライブモータ4の回転数は、患者の状態や病院の方針等によって変わる。
【0035】
次に、
図3(B)と
図5を参照して、
図1に示す体外循環装置1において人工肺2の離脱を行う動作例を説明する。
図5は、
図1に示す循環回路1Rから人工肺2を離脱する際の動作例を示すフロー図である。
図5のステップST1において、
図1に示す循環回路1Rから使用した人工肺2を離脱させる作業を開始する。ステップST2において、
図1に示すドライブモータ4が回転中に、すなわち遠心ポンプ3が回転中に、操作者(技師)が
図1に示す回転操作部51の回転つまみ72を反時計方向CCWに回して、ドライブモータ4の回転数を、上述した下限回転数設定値(例えば1000rpm)まで落とす。
【0036】
このように、ドライブモータ4の回転数を、上述した下限回転数設定値まで落とすと、ステップST3では、
図5に示すように、
図1の制御部100の指令により、表示部30には、確認メッセージMである「下限回転数以下に下げますか?」が表示される。
図5に示すこのステップST3において、確認メッセージMが表示されている状態では、操作者が
図1に示す回転つまみ72を反時計方向CCWにいくら回しても、ドライブモータ4の回転数は下げることができないようになっている。ステップST3において、確認メッセージMが表示されている状態で、操作者が表示部30内の「キャンセル」ボタン39を押下げると、ステップST4に移る。
このステップST4では、操作者が「キャンセル」ボタン39を押下げたことで、「下回転数以下に下げますか?」の確認メッセージMをキャンセルしたので、下限回転数以下に下げることを許可しなかった状態になる。このため、制御部100は、ドライブモータ4の回転数を、このまま下限回転数設定値(例えば1000rpm)を維持させる。
【0037】
そうでなく、
図5に示すステップST3において、「下限回転数以下に下げますか?」の確認メッセージMが表示されている状態で、操作者が、表示部30の「OK」ボタン38を押下げるか、あるいはコーストリリース(Coast Release)ボタン40を押下げると、ステップST5に移る。
このステップST5では、操作者が、表示部30の「OK」ボタン38を押下げるか、あるいはコーストリリース(Coast Release)ボタン40を押下げて、操作者が「下限回転数以下に下げますか?」の確認メッセージMを許可して、下限回転数以下に下げられる状態になる。このため、操作者は、回転つまみ72を反時計方向CCWに回して制御部100に指示をすることができるので、制御部100は、ドライブモータ4の回転数を、上述した下限回転数設定値(例えば1000rpm)以下に下げることができる。
その後、制御部100は、ドライブモータ4の回転数を、上述した下限回転数設定値(例えば1000rpm)以下に下げることができ、技師がステップST6において回転数を0にすることができたので、この状態で、ステップST7では、操作者は人工肺2を循環回路1Rから離脱させることができる。
【0038】
上述したように、
図1に示す体外循環装置1において人工肺2の離脱を行う時には、操作者が、
図5に示す表示部30に表示される確認メッセージMの表示を確認して許可するために、操作者が、
図5に示す表示部30の「OK」ボタン38を押下げるか、あるいはコーストリリースボタン40を押下げると、その後、ドライブモータ4の回転数を下げた状態で、操作者が人工肺2を循環回路1Rから離脱させることができる。
これにより、操作者は、
図5に示す確認メッセージMの表示を確認して許可した後、「OK」ボタン38あるいはコーストリリースボタン40を押下ないと、人工肺2の取り外しを行えない。従って、操作者が、ドライブモータ4の回転数が上述した下限回転数設定値(例えば1000rpm)以下にならない内に人工肺2を誤って取り外そうとする、人工肺2の離脱時の誤った取り外し操作の発生を無くすことができる。
【0039】
次に、
図6を参照して、体外循環装置1において誤操作があった時に行うべき動作例を説明する。
図6は、体外循環装置1において誤操作があった時に行う動作例を示すフロー
図6のステップST11において、ドライブモータ4(遠心ポンプ3)が回転中に、ステップST12において、ドライブモータ4の回転数が、何らかの要因で誤って、上述した下限回転数設定値以下に急落した場合には、ステップST13に移る。
この何らかの要因とは、例えば操作者が設定すべき下限回転数設定値の数値を忘れて、誤った下限回転数設定値の数値を設定してしまう場合や、操作者の身体が誤って
図1に示す回転数設定用の回転つまみ72に触れて、回転つまみ72が回転してドライブモータ4の回転数が下限回転数設定値以下になってしまう場合や、物体が落下して回転つまみ72に当たって回転つまみ72が回転して、ドライブモータ4の回転数が下限回転数設定値以下になってしまう場合等である。
【0040】
図6のステップST12において、上述したように、ドライブモータ4の回転数が、何らかの要因で、上述した下限回転数設定値まで急落すると、
図1の制御部100は、
図6のステップST13では、
図1の制御部100は、表示部30において確認メッセージMである「下限回転数以下に下げますか?」を表示させる。
【0041】
図6に示すように、「下限回転数以下に下げますか?」の確認メッセージMが表示されている状態では、操作者が
図1に示す回転つまみ72を反時計方向CCWにいくら回しても、ドライブモータ4の回転数は下げることができないようになっている。
ステップST13において、「下限回転数以下に下げますか?」の確認メッセージMが表示されている状態で、操作者が「OK」ボタン38を押下げるか、あるいはコーストリリースボタン40を押下ると、ステップST14に移る。ステップST14では、操作者が「下限回転数以下に下げますか?」の確認メッセージMを許可して、下限回転数以下に下げられる状態になる。このため、ステップST14では、操作者は、回転つまみ72を反時計方向CCWに回して制御部100に指示をすることができるので、ドライブモータ4の回転数を、上述した下限回転数設定値(例えば1000rpm)以下に下げることができる。
【0042】
そうでなく、
図6に示すステップST13において、「下限回転数以下に下げますか?」の確認メッセージMが表示されている状態で、操作者が、表示部30の「キャンセル」ボタン39を押下げると、ステップST15に移る。
ステップST15では、操作者は、「下限回転数以下に下げますか?」の確認メッセージMをキャンセルして、あるいは回転つまみ72を時計方
向CWに回せば回転数を上げることができ、下限回転数以下に下げることを許可しなかった状態になる。このため、操作者は、回転つまみ72を回転すれば制御部100に指示をすることができ、制御部100は、ドライブモータ4の回転数を、ステップST12において下限回転数設定値まで急落した状態から、下限回転数設定値から下げる前(急落する前)の回転数、例えば2200rpmに戻すことができる。ステップST16では、このように、操作者は、ドライブモータ4の回転数が、下げる前の回転数、例えば2200rpmで、ドライブモータ4の回転を再開することができる。
【0043】
これにより、操作者は、
図5に示す確認メッセージMの表示を確認した後、操作者が「OK」ボタン38を押下げるか、あるいはコーストリリースボタン40を押下れば、ドライブモータ4の回転数を下げることができるので、回転つまみ72の誤操作時に対応して、ドライブモータ4の回転を停止させることができる。また、操作者が「キャンセル」ボタン39を押下げれば、ステップST15では、回転つまみ72の誤操作時に対応して、ドライブモータ4の回転数を急落する前の回転数に戻して、循環回路1Rの動作を再開することができる。
【0044】
次に、
図7と
図8を参照して、
図1に示す回転操作部51の機械的な構造例を説明する。
図7は、回転操作部51の構造例を示す斜視図であり、
図8は、
図7に示す回転操作部51の回転つまみ72の操作例を示す図である。
図7に示す回転操作部51は、コントローラ10のケース25の表面部26に設けられている。この回転操作部51は、円盤状の固定部70と、この固定部70の上に回転可能に配置されている回転部71と、回転つまみ72を有している。
【0045】
図7に示す固定部70は、ケース25の表面部26に固定されている。操作者が回転部71を指で持つことで、回転部71は、軸部74を中心にして固定部70に対して、時計方向CWと反時計方向CCWに沿って回転して位置決め可能である。回転部71は、円盤状の部材ではあるが、扇形の切欠き部分73を有している。回転部71は、切欠き部分73を有していることから、切欠き部分73の一端部分は、後で説明する誤動作防止部75となっている。この誤動作防止部75は、回転つまみ72がこの誤動作防止部75の位置よりも反時計方向CCWに向けて回転しない様にするために、回転部72に設けられている。
【0046】
図7に示すように、回転つまみ72の一端部側は、軸部74の上端部に取り付けられており、操作者が回転つまみ72を指で持つことで、回転つまみ72は、固定部70と回転部71に対して、時計方向CWと反時計方向CCWに沿って回転して位置決め可能である。回転つまみ72の他端部側の内面は、ストッパ部材76と、付勢部材であるスプリング77を有している。ストッパ部材76は、スプリング77を介して回転つまみ72の他端部側の内面に取り付けられている。
固定部70の上面であって、回転部71の切欠き部分73により露出している部分は、回転つまみ72のストッパ部材76を、時計方向CWと反時計方向CCWに沿ってガイドするための平坦なガイド面78としての機能を有する。
【0047】
図7に示すように、回転つまみ72が時計方向CWまたは反時計方向CCWに回転すると、回転つまみ72の回転角度は、回転角度検出部99により検出される。回転角度検出部99としては例えばロータリエンコーダが採用できる。
図7に示すこの回転角度検出部99により検出された回転つまみ72の回転角度は、制御部100に通知される。制御部100には、回転つまみ72の回転角度に対応したドライブモータ4の回転数との関係を示す対応表を備えている。このため、制御部100は、回転つまみ72の回転角度に基づいて、ドライブモータ4の回転数を、
図3に示す表示部30の回転数表示領域31には、例えば1000rpmと表示させることができる。
【0048】
図8(A)には、回転部71が固定部70に対して時計方向CWに回転することで、回転部71の誤動作防止部75は、1500rpmの位置に位置決めされている状態を示している。
図8(B)には、さらに回転部71が固定部70に対して時計方向CWに回転することで、回転部71の誤動作防止部75は、2000rpmの位置に位置決めされている状態を示している。
【0049】
図8(A)に示す状態では、回転つまみ72が実線で示す位置から時計方向CWに回転されて破線で示す位置になると、回転つまみ72のストッパ部材76の位置は、
図7(A)に示す状態から
図7(B)に示す状態に変わる。すなわち、
図7(A)に示す状態では、ストッパ部材76が回転つまみ72の内面と回転部71の表面のガイド面71Sとの間に、スプリング77の力に抗して挟まれているので、ストッパ部材76がスプリング77を圧縮した状態になっている。そして、
図7(B)に示す状態では、ストッパ部材76が固定部70のガイド面78によりガイドされるので、スプリング77はこのストッパ76をガイド面78に押し付けている。
【0050】
ところが、
図8(A)に示す状態では、操作者がこの回転つまみ72を破線の位置から反時計方向CCWに戻そうとすると、ストッパ部材76が回転部71の誤動作防止部75に直接突き当たる。従って、回転つまみ72は、これ以上、反時計方向CCWには回転して戻すことができないようになっている。この例では、回転部71の誤動作防止部75が、例えば1500rpmの位置に設定されているので、操作者は
図1に示すドライブモータ4(遠心ポンプ3)の回転数を、1500rpm以下にはすることができない。
【0051】
また、
図8(B)に示す状態では、回転つまみ72が実線で示す位置から時計方向CWに回転されて破線で示す位置になると、同様にして、回転つまみ72のストッパ部材76の位置は、
図7(A)に示す状態から
図7(B)に示す状態に変わる。
ところが、
図8(B)に示す状態では、操作者がこの回転つまみ72を破線の位置から反時計方向CCWに戻そうとすると、ストッパ部材76が回転部71の誤動作防止部75に直接突き当たる。従って、回転つまみ72は、これ以上、反時計方向CCWには戻すことができないようになっている。この例では、回転部71の誤動作防止部75が、例えば2000rpmの位置に設定されているので、操作者は
図1に示すドライブモータ4(遠心ポンプ3)の回転数を、2000rpm以下にはすることができない。
【0052】
上述した回転操作部51の構造例のように、下限回転数設定値を、例えば1500rpmや2000rpmに設定した場合に、操作者は回転つまみ72を1500rpm以下あるいは2000rpm以下には反時計方向CCWに戻せないように、回転つまみ72の反時計方向CCWへの回転を阻止する構造になっている。
また、回転部71を固定部70に対して回転操作することで、下限回転数設定値は変更自在である。また、ストッパ部材76をスプリング77の力に抗して、回転つまみ72の内面側に押し上げれば、ストッパ部材76は固定部70のガイド面78から回転部71の表面のガイド面71Sに移すことができる。従って、回転つまみ72は、
図8(A)と
図8(B)に示す回転部71の誤動作防止部75があるにもかかわらず、反時計方向CCWに回転することができる。
【0053】
本発明の実施形態の体外循環装置1は、モータ4により循環回路1Rに配置されたポンプ3を駆動して、患者の血液を人工肺2に通して循環させる体外循環装置である。
この体外循環装置1は、制御部100と、操作者が操作することで、制御部100に指令を与えてモータ4の回転数を可変でき、モータ4を作動して人工肺2から患者である患者Pの体内に血液を返送する際に、循環回路1R内で血液の逆流を起こさないようにするための最低限の回転数であるモータの下限回転数設定値を可変自在に設定可能な制御部100と操作部(例えば回転操作部51)と、制御部100の指令により、モータ4の下限回転設定値を表示可能な回転数表示部60と、を有する。
これにより、操作部51を用いてモータ4の下限回転数設定値を変えることができ、そのモータ4の下限回転数設定値を回転数表示部60に表示できる。このため、体外循環装置1においてモータ4の回転数が下限回転数以下に陥るような誤操作を起こさないようにして、循環回路では血液が逆流を起こして患者の人体に影響を及ぼすことを防ぎ、手術における体外循環操作を安全に行うことができる。
【0054】
表示部30は、モータ4の回転数が0rpmから上昇して下限回転数設定値を超えている場合に、モータ4の回転数を下限回転数設定値以下に下げる前に、制御部100は、表示部30には確認メッセージMを表示させる。これにより、モータ4の回転数を下限回転数設定値以下に下げる前に、制御部100は、表示部30には確認メッセージMを表示させるので、操作者はこの確認メッセージMにより、モータ4の回転数が下限回転数設定値以下になろうとしていることを目視で確認でき、モータ4の回転数が下限回転数設定値以下に誤って操作されることを防ぐことができる。
【0055】
表示部30に表示された確認メッセージを受理すると、制御部は、モータの回転数を、下限回転数設定値以下に下げることを許す。これにより、表示部30に表示された確認メッセージを受理した場合に、操作者は、モータの回転数を、下限回転数設定値以下に下げることができ、モータの回転数が下限回転数設定値以下に誤って操作されることを防ぐことができる。
【0056】
操作部は、操作者が指でつまんで回転操作可能な回転つまみを有する回転操作部であり、回転つまみの周囲には、モータの回転数を、点灯により表示する回転数表示部60が設けられている。これにより、回転つまみ72の周囲に回転数表示部60が設けられているので、操作者が回転つまみ72を操作する際に、モータの回転数は、回転数表示部60の点灯により目視で確認できる。
【0057】
回転操作部は、固定部と、モータの下限回転数設定値を任意に設定するために、固定部に対して回転可能に設けられている回転部と、回転部と固定部に対して回転可能に設けられ、操作者がつまんで回転操作することで制御部に指令を与えてモータの回転数を設定するための回転つまみと、を有し、回転部は、回転つまみを突き当てることで回転つまみがモータの下限回転数設定値以下にまで誤って回転するのを防止する誤操作防止部を有する。これにより、回転部は、回転つまみを突き当てることで回転つまみがモータの下限回転数設定値以下にまで誤って回転するのを防止する誤操作防止部を有するので、モータの回転数が下限回転数設定値以下に誤って操作されることを、機械的に確実に防ぐことができる。
【0058】
本発明は、上記実施形態に限定されず、特許請求の範囲を逸脱しない範囲で種々の変更を行うことができる。
回転駆動部は、上述したように「モータ」でも、「ロータリポンプ」でも「モータおよびポンプ」を組み合わせた場合の回転駆動部分でもよい。
上記実施形態の各構成は、その一部を省略したり、上記とは異なるように任意に組み合わせることができる。
回転数表示部60は、図示例のように環状に形成されている以外に、直線状あるいは楕円形状等の任意の他の形状に形成されていても良い。