特許第6389465号(P6389465)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6389465
(24)【登録日】2018年8月24日
(45)【発行日】2018年9月12日
(54)【発明の名称】サンプルの表面を検査する装置および方法
(51)【国際特許分類】
   H01J 37/28 20060101AFI20180903BHJP
   H01J 37/244 20060101ALI20180903BHJP
   G01N 23/203 20060101ALI20180903BHJP
   G01N 23/2251 20180101ALI20180903BHJP
   H01L 21/66 20060101ALI20180903BHJP
【FI】
   H01J37/28 B
   H01J37/244
   G01N23/203
   G01N23/2251
   H01L21/66 J
【請求項の数】17
【全頁数】16
(21)【出願番号】特願2015-539542(P2015-539542)
(86)(22)【出願日】2013年10月24日
(65)【公表番号】特表2016-502732(P2016-502732A)
(43)【公表日】2016年1月28日
(86)【国際出願番号】NL2013050746
(87)【国際公開番号】WO2014065663
(87)【国際公開日】20140501
【審査請求日】2016年9月23日
(31)【優先権主張番号】2009696
(32)【優先日】2012年10月25日
(33)【優先権主張国】NL
【前置審査】
(73)【特許権者】
【識別番号】507013822
【氏名又は名称】テクニシエ ユニヴェルシテイト デルフト
(74)【代理人】
【識別番号】100116850
【弁理士】
【氏名又は名称】廣瀬 隆行
(72)【発明者】
【氏名】クライト,ピーター
【審査官】 右▲高▼ 孝幸
(56)【参考文献】
【文献】 特表2008−507690(JP,A)
【文献】 特開2011−187447(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H01J 37/28
G01N 23/203
G01N 23/2251
H01J 37/244
H01L 21/66
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
サンプルの表面を検査する装置であって、
前記装置は、一次荷電粒子ビームのアレイを生成するためのマルチビーム荷電粒子生成器と、光学軸を有する荷電粒子光学システムとを備え、前記荷電粒子光学システムは、
中間面における離間したスポットの第1のアレイに、前記一次荷電粒子ビームを収束するための、第1のレンズシステムと、
前記一次荷電粒子ビームを前記中間面から前記サンプル表面に導き、すべての一次荷電粒子ビームを、前記サンプル表面上の個々のスポットの第2のアレイに収束するために少なくとも前記一次荷電粒子ビームに対して共通の電磁気または静電対物レンズを備える、第2のレンズシステムと、を備え、
前記装置は、前記中間面に、または前記中間面付近に配置される位置感応後方散乱荷電粒子検出器を備え、前記検出器は、前記一次荷電粒子ビームを通過させるための1つまたは複数の貫通開口を備え、前記第2のレンズシステムは、後方散乱荷電粒子を、前記サンプル表面上の個々のスポットの前記第2のアレイから、前記検出器上の後方散乱荷電粒子スポットのアレイに投射するよう配置され、
前記第2のレンズシステムは、前記中間面から前記サンプルに向かう途中、前記一次荷電粒子ビームのアレイを前記光学軸の周りに回転させ、前記第2のアレイを前記光学軸の周りに0度より大きな角度で前記第1のアレイに対して位置づけるよう配置される、1つまたは複数の磁気レンズを備え、
前記1つまたは複数の磁気レンズが、前記後方散乱荷電粒子スポットのアレイを、前記第1のアレイに対して、前記光学軸の周りに、実質的に180度の角度で回転させるように配置される、
装置。
【請求項2】
前記1つまたは複数の貫通開口は、孔のアレイを備え、前記孔のアレイの各孔は、前記一次荷電粒子ビームのアレイの1つを通すように配置される
請求項1に記載の装置。
【請求項3】
前記孔のアレイの前記孔の直径は、前記孔の間のピッチより、実質的に小さい
請求項2に記載の装置。
【請求項4】
前記第2のレンズシステムが、前記後方散乱荷電粒子を、前記後方散乱荷電粒子の共通交差部を通って前記サンプル表面上の前記個々のスポットから、前記位置感応後方散乱荷電粒子検出器の実質的に個々のスポットに投射するように配置される
請求項1から3のいずれか一項に記載の装置。
【請求項5】
開口部は、前記後方散乱荷電粒子の前記共通交差部を備える前記面に、または前記面付近に配置される
請求項4に記載の装置。
【請求項6】
前記開口部は、開領域を備え、前記後方散乱荷電粒子がある角度方向で通過することを可能にし、一方で、他の角度方向をブロックする
請求項5に記載の装置。
【請求項7】
前記位置感応後方散乱荷電粒子検出器は、後方散乱荷電粒子ビーム毎に2つ以上のピクセルを含む
請求項1から6のいずれか一項に記載の装置。
【請求項8】
前記位置感応後方散乱荷電粒子検出器は、CCDカメラ、CMOSカメラ、または後方散乱荷電粒子から信号を直接取得する、アバランシェフォトダイオード、光電子増倍管もしくはPN接合半導体検出器のアレイである
請求項1から7のいずれか一項に記載の装置。
【請求項9】
前記位置感応後方散乱荷電粒子検出器は、前記中間面か、または前記中間面付近に、少なくとも実質的に配置される蛍光スクリーンと、前記蛍光スクリーンから、CCDカメラ、CMOSカメラ、またはアバランシェフォトダイオードもしくは光電子増倍管のアレイに光子を運ぶ光学構成とを備える
請求項1から6のいずれか一項に記載の装置。
【請求項10】
前記CCDカメラ、前記CMOSカメラ、またはアバランシェフォトダイオードもしくは光電子増倍管の前記アレイは、検出器ピクセルの前記アレイが、前記個々の後方散乱ビームの画像の前記アレイと一致するよう配置される
請求項9に記載の装置。
【請求項11】
前記第2のレンズシステムは、共通交差部を通る前記一次荷電粒子ビームを投射するように配置され、前記装置は、前記共通交差部を備える面に、または前記共通交差部を備える面の近くに、少なくとも実質的に位置づけられる、位置感応二次電子検出器を備える
請求項1から10のいずれか一項に記載の装置。
【請求項12】
前記第2のレンズシステムが、前記サンプル上の前記一次荷電粒子を走査するための、磁気および/または静電荷電粒子偏向器を備える
請求項1から11のいずれか一項に記載の装置。
【請求項13】
前記磁気および/または静電荷電粒子偏向器は、
前記装置が走査中に、前記検出器上の前記後方散乱荷電粒子スポットのアレイが実質的に静止した位置を取得するように配置されるか、又は前記静止した位置を取得できるように制御できる
請求項12に記載の装置。
【請求項14】
サンプルの表面を検査する方法であって、
前記方法は、
マルチビーム荷電粒子生成器を使用して、一次荷電粒子ビームのアレイを生成するステップと、
第1のレンズシステムを使用して、中間面における離間したスポットの第1のアレイに、前記一次荷電粒子を収束するステップと、
第2のレンズシステムを使用して、一次荷電粒子ビームを前記中間面から前記サンプル表面に向けて導き、少なくとも前記一次荷電粒子ビームに対して共通である電磁気または静電対物レンズを使用して、すべての一次荷電粒子ビームを、前記サンプル表面上の個々のスポットの第2のアレイに収束するステップと、
後方散乱荷電粒子を、前記サンプル表面上の個々のスポットの前記第2のアレイから、前記第2のレンズシステムを使用して、前記中間面上の後方散乱荷電粒子スポットのアレイに投射するステップと、
前記中間面に、または前記中間面付近に位置づけられる位置感応後方散乱荷電粒子検出器を使用して、前記後方散乱荷電粒子を検出するステップと
を含み、前記検出器は、前記一次荷電粒子ビームを通すための1つまたは複数の貫通開口を備え、
前記第2のレンズシステムは、前記中間面から前記サンプルに向かう途中、前記一次荷電粒子ビームのアレイを前記光学軸の周りに回転させ、前記第2のアレイを、前記光学軸の周りに0度より大きな角度で前記第1のアレイに対して位置づけるよう配置される1つまたは複数の磁気レンズを備え、
前記1つまたは複数の磁気レンズが配置され、前記後方散乱荷電粒子スポットのアレイを、前記第1のアレイに対して、前記光学軸の周りに、実質的に180度の角度で回転させる
方法。
【請求項15】
前記第2のレンズシステムは、磁気および/または静電荷電粒子偏向器を備え、前記サンプル上の前記一次荷電粒子を走査する
請求項14に記載の方法。
【請求項16】
前記磁気および/または静電荷電粒子偏向器は、走査中に前記検出器上の前記後方散乱荷電粒子スポットのアレイの実質的に静止した位置を取得するために、配置される、および/または制御可能である
請求項15に記載の方法。
【請求項17】
前記サンプル表面が、第1の方向に一定速度で移動し、一方、前記一次荷電粒子ビームが、前記第1の方向に少なくとも実質的に垂直な第2の方向に繰り返し走査される
請求項15または16に記載の方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、サンプルの表面を検査する装置および方法に関する。特に、本発明は、マルチビーム型走査電子顕微鏡などの、複数の荷電粒子ビームを使用して、サンプル表面を検査する装置に関する。本発明は、電子、陽電子、およびイオンなどの、任意の種類の荷電粒子に適用することができる。
【背景技術】
【0002】
本発明は、電子などの後方散乱荷電粒子を検出する装置に関する。これらの後方散乱荷電粒子は、一次荷電粒子とほぼ同じエネルギーを有する。通常、荷電粒子は、再び出てくる前に、サンプル内で最大数百電子ボルトを消失すると仮定される。後方散乱荷電粒子の角分布は、一次荷電粒子ビームの角分布よりもかなり大きい。対応する一次荷電粒子ビームの軸の近くを移動する後方散乱荷電粒子は、一次荷電粒子に極めてよく似ている経路に沿って荷電粒子光学システムを通って戻り、一次荷電粒子ビームと同じ面の周りで収束する。
【0003】
そのような装置は、例えば、米国特許第7,732,762号明細書に開示される。この米国特許は、使用時に、サンプルの表面に向けて複数の一次電子ビームを発射する電子エミッタを備える電子顕微鏡を開示する。本装置は、電子エミッタとサンプル表面との間の中間面における離間したスポットの第1のアレイに、電子ビームを収束するための、第1のレンズシステムを備える。本装置は、中間面からの一次電子ビームをサンプル表面に向けて導き、サンプル表面上の個々のスポットの第2のアレイに、すべての一次電子ビームを収束するための、第2のレンズシステムをさらに備える。特に、第2のレンズシステムは、一連のレンズを備え、さらに特に、個々の電子ビームに対する個々のマイクロレンズを備えるマイクロレンズアレイを備える。
【0004】
中間面では、蛍光物質を含む薄いシート状の板が配置される。薄いシートは、開口部を備え、したがって、一次電子ビームが通ることを可能にする。板は、後方散乱電子を収集し、収集した電子を、光子に変換する。光子は、光学レンズシステムによって、光子検出器のアレイに、少なくとも部分的に導かれる。
【0005】
このシステムの欠点は、サンプル表面上の個々のスポット間の距離が、電子ビーム毎に1つの対物マイクロレンズを使用するために、比較的大きくなることである。したがって、既知のシステムは、小さなサンプルを検出するのにあまり適切ではない。
【0006】
本発明の目的は、後方散乱電子を検出するための新しい検出装置を提供するサンプル表面を検査するためのマルチ荷電粒子ビーム装置を提供することである。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0007】
【特許文献1】米国特許第7,732,762号明細書
【発明の概要】
【0008】
第1の態様によれば、本発明は、サンプルの表面を検査する装置を提供する。本装置は、一次荷電粒子ビームのアレイを生成するマルチビーム荷電粒子生成器と、光学軸を有する荷電粒子光学システムとを備え、荷電粒子光学システムは、
【0009】
中間面における離間したスポットの第1のアレイに、一次荷電粒子ビームを収束するための第1のレンズシステムと、
【0010】
一次荷電粒子ビームを中間面からサンプル表面に導き、すべての一次荷電粒子ビームを、サンプル表面上の個々のスポットの第2のアレイに収束するために少なくとも一次荷電粒子ビームに対して共通の電磁気または静電対物レンズを備える第2のレンズシステムと
を備え、
【0011】
本装置は、中間面に、または中間面付近に配置される位置感応後方散乱荷電粒子検出器を備え、前記検出器は、前記一次荷電粒子ビームを通過させるための1つまたは複数の貫通開口を備え、前記第2のレンズシステムは、後方散乱荷電粒子を、サンプル表面上の個々のスポットの第2のアレイから、検出器上の後方散乱荷電粒子スポットのアレイに投射するよう配置される。
【0012】
少なくとも一次荷電粒子ビームに対して共通である単一対物レンズを使用することにより、すべての一次荷電粒子ビームをサンプル表面上の個々のスポットの第2のアレイに収束するために共通レンズを使用するので、サンプル表面上の個々のスポットを、互いに非常に近接して配置することができる。これにより、本発明のマルチビーム装置は、例えば、サンプル領域が1mm以下の、より小さなサンプルを検査するのにより適切になる。
【0013】
本出願の文脈では、サンプルの表面は、サンプルの境界面の直ぐ下に物質を含むサンプルの上部層を包囲することが留意される。
【0014】
本出願の文脈では、前記一次荷電粒子ビームを通すための1つまたは複数の貫通開口が、検出器において1つまたは複数の孔を備えてもよく、検出器に隣接する開口を備えてもよいことがさらに留意される。
【0015】
好ましくは、一次ビームが最も小さな中間面が、後方散乱荷電粒子も収束する面に近接し、その面に、検出器が位置していることが好ましい。
【0016】
一実施形態において、1つまたは複数の貫通開口は、孔のアレイを備え、孔のアレイの各孔は、一次荷電粒子ビームの前記アレイの1つを通すように配置される。一実施形態において、孔のアレイの孔の直径は、孔の間のピッチより、実質的に小さい。一次荷電粒子ビームが収束する中間面に、または中間面付近に、検出器が少なくとも実質的に配置されるため、一次荷電粒子ビームは、検出器の十分小さな孔を通り、したがって、効率的な検出を可能にするのに十分な検出器の表面領域がある。
【0017】
しかしながら、本発明に従ってサンプル表面上に互いに非常に近接して個々のスポットを配置することで、後方散乱荷電粒子をサンプル表面上の異なるスポットから分離し、区別することが、より困難になる。例えば、米国特許第7,732,762号明細書に開示される装置に示すように、後方散乱電子は、蛍光物質の板で、収束した一次ビームの位置に、または位置周辺で結像される。この装置では、後方散乱電子の一部が、蛍光物質の板の開口部を通過し、検出されない。先行技術の装置では、一次ビームと同じスポットで収束されず、蛍光物質の板でぼやけたスポットを形成する後方散乱電子のみを検出することができる。
【0018】
一方で、このさらなる問題は、一実施形態により解決することができ、この実施形態においては、第2のレンズシステムが配置され、前記中間面からの離間したスポットの第1のアレイを、0.01から0.2の範囲の倍率でサンプル表面上に結像する。したがって、検出器における隣接スポット間の距離は、同じサンプル表面上の隣接スポットよりも、最大で100倍の大きさである。
【0019】
他方で、このさらなる問題は、本発明の一実施形態で解決することができ、この実施形態においては、第2のレンズシステムは、前記中間面からサンプルに向かう途中で、一次荷電粒子ビームのアレイを光学軸の周りに回転させ、光学軸の周りを0度より大きく、好ましくは、180度より小さな角度で第1のアレイに対して第2のアレイを位置づけるよう配置される、1つまたは複数の磁気レンズを備える。一実施形態において、後方散乱荷電粒子スポットのアレイを、第1のアレイに対して、光学軸の周りに、0度よりも大きく、好ましくは、360度よりも小さな角度で回転させるための、1つまたは複数の磁気レンズが配置される。後者の2つの実施形態を組み合わせることも可能であることに留意されたい。
【0020】
磁気レンズを使用することによって、第2のアレイの位置は、0から180度の間の角度で、第1のアレイに対して回転する。後方散乱荷電粒子は、同じ磁気レンズも通ることが好ましいが、0から180度の間の実質的に同じ角度で、第2のアレイに対しても回転する。後方散乱荷電粒子の回転は、一次荷電粒子ビームの回転と同じ回転方向であることに留意されたい。したがって、中間面における位置感応検出器の後方散乱荷電粒子のスポットのアレイは、光学軸の周りを、0度よりも大きく、360度よりも小さな角度で、第1のアレイに対して回転する。この回転は、中間面における、または中間面付近における、一次ビームの離間したスポットの第1のアレイに対する後方散乱荷電粒子のスポットのアレイの間に空間分離をもたらし、これにより、第1のアレイの位置から少なくとも実質的に逸脱する位置で後方散乱荷電粒子のスポットのアレイを配置することを可能にする。したがって、回転を慎重に選択することによって、中間面における、または中間面付近における、後方散乱荷電粒子の検出は、一次荷電粒子ビームの通過を少なくとも実質的に妨害しない。本発明による装置では、中間面で少なくとも実質的に収束される後方散乱荷電粒子もまた、検出することができる。
【0021】
米国特許第7,732,762号明細書による装置とは反対に、本発明の装置における第2のレンズシステムおよび/または検出器の位置は、ここでは、後方散乱荷電粒子のスポットのぶれを少なくとも実質的に低減するか、または小さなスポットに後方散乱荷電粒子を収束するよう配置することができ、それにより、本発明の検出装置の分解能を向上させる。
【0022】
一実施形態において、第2のレンズシステムは、後方散乱荷電粒子の共通交差部を通ってサンプル表面上の個々のスポットから、位置感応後方散乱荷電粒子検出器の実質的に個々のスポットに、後方散乱荷電粒子を投射するよう配置される。一実施形態において、開口部は、後方散乱荷電粒子の共通交差部を備える面に、または面付近に配置される。サンプルと検出器との間の、そのような後方散乱ビーム限定開口部は、後方散乱荷電粒子の受け入れ角度を限定し、検出器上の後方散乱粒子の画像におけるコントラストに影響を及ぼすよう使用される。開口部はまた、検出器上の後方散乱粒子のスポットのサイズを制御および制限するために使用することができる。一実施形態において、前記開口部は、開領域を備え、後方散乱荷電粒子がある角度方向で通過することを可能にし、一方で、他の角度方向をブロックする。
【0023】
一実施形態において、後方散乱荷電粒子スポットのアレイを、第1のアレイに対して、光学軸の周りに、実質的に180度の角度で回転させるための、1つまたは複数の磁気レンズが配置される。一実施形態において、検出器は、そこを通る前記一次荷電粒子ビームを通すための、1つの貫通開口を備える。この貫通開口は、検出器に、または検出器の高感度表面に、隣接して配置される。
【0024】
一実施形態において、位置感応後方散乱荷電粒子検出器は、後方散乱荷電粒子ビーム毎に2つ以上のピクセルを含む。後方散乱スポットより多くのピクセルを有する位置感応後方散乱荷電粒子検出器を使用すると、後方散乱信号が、検出器のピクセルを読み出すことによって取得される。後方散乱スポットが行き着く検出器面における位置を事前に判断する必要はない。
【0025】
一実施形態において、位置感応後方散乱荷電粒子検出器は、CCDカメラ、CMOSカメラ、後方散乱荷電粒子から信号を直接取得する、アバランシェフォトダイオード、光電子増倍管またはPN接合半導体検出器のアレイである。
【0026】
一実施形態において、位置感応後方散乱荷電粒子検出器は、前記中間面か、または前記中間面付近に、少なくとも実質的に配置される蛍光スクリーンと、蛍光スクリーンから、CCDカメラ、CMOSカメラ、またはアバランシェフォトダイオードもしくは光電子増倍管のアレイに光子を運ぶ光学構成とを備える。
【0027】
一実施形態において、CCDカメラ、CMOSカメラ、アバランシェフォトダイオードまたは光電子増倍管のアレイは、検出器ピクセルのアレイが、個々の後方散乱ビームの画像のアレイと一致するよう配置される。
【0028】
一実施形態において、サンプル表面上の離間したスポットの第2のアレイにおけるスポットの間のピッチは、0.3から30マイクロメートルの間である。
【0029】
一実施形態において、第2のレンズシステムは、サンプル上の一次荷電粒子を走査するための、磁気および/または静電荷電粒子偏向器を備える。一実施形態において、磁気および/または静電荷電粒子偏向器は、走査中に検出器上の後方散乱荷電粒子スポットのアレイの実質的に静止した位置を取得するために、配置される、および/または制御可能である。磁気偏向器は、サンプルから検出器へ移動する荷電粒子と反対方向に、サンプルに向かう途中で荷電粒子を偏向する。後者は、一次ビームを走査している間、検出器上の後方散乱電子スポットの移動を引き起こす。逆に、静電偏向器は、荷電粒子のビームを、粒子の方向とは無関係な方向に偏向する。したがって、静電偏向器を使用することで、検出器上のスポットが移動しなくなることを確実にすると思われる。しかしながら、磁気レンズによる画像の回転による移動の可能性が残っている。磁気および静電偏向器のダブルシステムは、走査中の検出器上のスポット位置を確実に安定させるために、設定を動作中に選択可能な、十分な調整可能パラメータをもたらす。
【0030】
一実施形態において、第2のレンズシステムは、共通交差部を通る一次荷電粒子ビームを投射するよう配置され、本装置は、前記共通交差部を備える面に、または前記共通交差部を備える面の近くに、少なくとも実質的に位置づけられる、位置感応二次電子検出器を備える。オランダ国特許出願第2009053号明細書でより詳細に説明するように、この実施形態は、二次電子が検出可能である検出システムを提供する。この実施形態は、二次電子と一次荷電粒子との間のエネルギー差を使用する。例えば、SEMでは、一次電子のエネルギーは、通常、1keVから30keVであり、二次電子のエネルギーは、通常、0eVから50eVである。このエネルギー差の結果は、第2のレンズシステムが、二次電子に対してよりも一次荷電粒子に対して異なる働きをするということである。一方で、第2のレンズシステムは、すべての一次荷電粒子ビームを、サンプル表面上の個々のスポットのアレイに収束するよう配置される。他方で、同じレンズシステムは、二次電子ビームを、共通交差部の面に向けて方向づけるよう使用される。二次電子は、一次荷電粒子のエネルギーよりかなり低いエネルギーを有するので、レンズシステムは、共通交差部を本質的に取り囲む領域上に二次電子を拡散するよう配置される。したがって、前記共通交差部を備える面では、または前記共通交差部を備える面付近では、ほとんどの二次電子ビームは、共通交差部ですべて収束する一次荷電粒子ビームから空間的に分離される。後方散乱荷電粒子が、共通交差部で少なくとも実質的に収束され、したがって、二次電子ビームから空間的に分離されることにも留意されたい。
【0031】
前記共通交差部を備える面に、または前記共通交差部を備える面付近に、少なくとも実質的に、位置感応二次電子検出器を配置することによって、好ましくは、共通交差部に隣接する、および/または取り囲むように配置することによって、ほとんどの二次電子ビームを、一次荷電粒子ビームまたは後方散乱荷電粒子に対していかなる干渉をすることなく、検出することが可能となる。
【0032】
したがって、本発明による、特に、この実施形態による装置では、後方散乱荷電粒子は、本装置の荷電光学コラムに配置された検出器を使用して検出可能である。さらに、後方散乱荷電粒子および二次電子の両方は、別々に、実質的に同時に、検出することができる。
【0033】
第2の態様によれば、本発明は、以下のステップを含む、サンプルの表面を検査する方法を提供する。すなわち、
マルチビーム荷電粒子生成器を使用して、一次荷電粒子ビームのアレイを生成するステップと、
第1のレンズシステムを使用して、中間面における離間したスポットの第1のアレイに、一次荷電粒子ビームを収束するステップと、
第2のレンズシステムを使用して、一次荷電粒子ビームを中間面からサンプル表面に向けて導き、少なくとも一次荷電粒子ビームに対して共通である電磁気または静電対物レンズを使用して、すべての一次荷電粒子ビームを、サンプル表面上の個々のスポットの第2のアレイに収束するステップと、
後方散乱荷電粒子を、サンプル表面上の個々のスポットの第2のアレイから、前記第2のレンズシステムを使用して、中間面上の後方散乱荷電粒子スポットのアレイに投射するステップと、中間面に、または中間面付近に位置づけられる位置感応後方散乱荷電粒子検出器を使用して、前記後方散乱荷電粒子を検出するステップとを含み、前記検出器は、前記一次荷電粒子ビームが通るための、1つまたは複数の貫通開口を備える。
【0034】
一実施形態において、第2のレンズシステムは、前記中間面からサンプルに向かう途中で、一次荷電粒子ビームのアレイを光学軸の周りに回転させ、光学軸の周りを0度より大きく、好ましくは、180度より小さな角度で第1のアレイに対して第2のアレイを位置づけるよう配置される、1つまたは複数の磁気レンズを備える。一実施形態において、後方散乱荷電粒子スポットのアレイを、第1のアレイに対して、光学軸の周りに、0度よりも大きく、好ましくは、360度よりも小さな角度で回転させるための、1つまたは複数の磁気レンズが配置される。
【0035】
一実施形態において、後方散乱荷電粒子スポットのアレイを、第1のアレイに対して、光学軸の周りに、実質的に180度の角度で回転させるための、1つまたは複数の磁気レンズが配置される。一実施形態において、検出器は、そこを通る前記一次荷電粒子ビームを通すための、1つの貫通開口を備える。
【0036】
一実施形態において、第2のレンズシステムは、サンプル上の一次荷電粒子を走査するための、磁気および/または静電荷電粒子偏向器を備える。一実施形態において、磁気および/または静電荷電粒子偏向器は、走査中に検出器上の後方散乱荷電粒子スポットのアレイの実質的に静止した位置を取得するために、配置される、および/または制御可能である。
【0037】
一実施形態において、サンプル表面は、第1の方向に一定速度で移動し、一方、一次荷電粒子ビームは、第1の方向に少なくとも実質的に垂直な第2の方向に繰り返し走査される。これにより、走査荷電粒子ビーム顕微鏡でサンプルを調べる新しい方法、すなわち、オフライン顕微鏡法を提供する。オフライン顕微鏡法では、完全サンプル表面、例えば、1平方ミリメートルの領域が、ナノメートル分解能で走査および結像された後、この完全サンプル表面が、専門家、例えば、生物学者が利用可能となり、顕微鏡の後ろではなく、コンピュータ上で画像を調査および/または検査される。
【0038】
第3の態様によれば、本発明は、サンプルの表面を検査する装置を提供し、本装置は、一次荷電粒子ビームのアレイを生成するためのマルチビーム荷電粒子生成器と、光学軸を有する荷電粒子光学システムとを備え、本荷電粒子光学システムは、
中間面における離間したスポットの第1のアレイに、一次荷電粒子ビームを収束するための、第1のレンズシステムと、
一次荷電粒子ビームを、中間面から、サンプル表面に向けて方向づけ、すべての一次荷電粒子ビームを、サンプル表面上の個々のスポットの第2のアレイに収束する、第2のレンズシステムと
を備え、
本装置は、中間面に、または中間面付近に少なくとも実質的に配置された位置感応後方散乱荷電粒子検出器を備え、第2のレンズシステムは、少なくとも一次荷電粒子ビームに対して共通であり、第2のアレイを第1のアレイに対して、光学軸の周りに0度より大きく、180度より小さな角度で配置するよう、光学軸の周りに一次荷電粒子ビームのアレイを回転させるよう配置される、電磁気レンズを備える。
【0039】
一実施形態において、第2のレンズシステムは、単一対物レンズを備える。一実施形態において、この単一対物レンズは、一次荷電粒子ビームのアレイが光学軸の周りを回転するよう配置される電磁気レンズである。代替実施形態において、単一対物レンズは、電磁気レンズとサンプルとの間の追加レンズである。この代替実施形態において、単一対物レンズは、電磁気レンズまたは静電レンズを備える。
【0040】
本明細書で説明され、示されるさまざまな態様および特徴は、個々に、可能な限り、適用することができる。これらの個々の態様、特に、添付の独立請求項で説明する態様および特徴は、分割特許出願の主題とすることができる。
【0041】
本発明は、添付図面に示す例示的実施形態に基づいて、説明する。
【図面の簡単な説明】
【0042】
図1図1は、本発明によるマルチビーム走査電子顕微鏡(MBSEM)の一例を示す図である。
図2図2は、本発明によるMBSEMの第2の例のビーム経路の一部を示す図である。
図3図3は、本発明によるMBSEMの第3の例のビーム経路の一部を示す図である。
図4図4は、その中間面における、本発明によるMBSEMの一例のビーム経路の模式的な断面図である。
図5図5は、その中間面における、本発明によるMBSEMのさらなる例のビーム経路の模式的な断面図である。
図6図6は、本発明によるマルチビーム走査電子顕微鏡(MBSEM)のさらなる例を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0043】
図1は、本発明のマルチビーム走査電子顕微鏡(MBSEM)の一例である。
MBSEM1は、一次荷電粒子ビーム3のアレイ、この場合では、一次電子ビーム3のアレイを生成するための、マルチビーム荷電粒子生成器2を備える。マルチビーム電子生成器2は、発散電子ビーム5を生成するための、少なくとも1つの電子源4を備える。発散電子ビーム5は、開口レンズアレイ6によって収束された一次電子ビーム3のアレイに分割される。一次電子ビーム3は、矢印Pで模式的に示すように、後に、サンプル15に向けて方向づけられる。
【0044】
ソース4の複数画像は、加速レンズ7の物体主面に位置づけられる。加速レンズ7は、一次電子ビーム3を、光学軸8に向けて方向づけ、すべての一次電子ビーム3の第1の共通交差部9を生成する。
【0045】
第1の共通交差部9は、磁気集光レンズ10によって、電流制限開口部の役目を果たす可変開口部16上に結像される。可変開口部16では、すべての一次電子ビーム3の第2の共通交差部が生成される。
【0046】
MBSEMは、一次荷電粒子ビームを、可変開口部16の共通交差部から、サンプル表面15に向けて方向づけ、すべての一次荷電粒子ビーム3を、サンプル表面15上の個々のスポットのアレイに収束するための、レンズシステム13、14を備える。レンズシステムは、可変開口部16を、対物レンズ14のコマフリー面に結像し、対物レンズ14が、サンプル表面15に収束された一次電子ビームのアレイを生成するための、中間磁気レンズ13を備える。
【0047】
さらに、MBSEMは、サンプル表面15上に収束された一次電子ビームのアレイを走査するための、走査コイル18を備える。
【0048】
図1に示すようなMBSEMでは、後方散乱荷電粒子を検出するのに適切な少なくとも2つの代替位置が存在する。
【0049】
第1の位置は、中間磁気レンズ13と対物レンズ14との間とすることができる。この場合、中間磁気レンズ13は、図1に示すように、位置感応後方散乱荷電粒子検出器11が配置される中間面における離間したスポットの第1のアレイに、一次電子ビーム3を収束する第1のレンズシステムの少なくとも一部である。対物レンズ14は、一次電子ビーム3を、検出器11面からサンプル15の表面に向けて方向づけ、すべての一次荷電粒子ビーム3を個々のスポットの第2のアレイに収束する第2のレンズシステムの少なくとも一部である。対物レンズ14は、以下の図4および図5の説明でより詳細に説明するように、一次電子ビーム3に対して共通であり、一次電子ビーム3のアレイを光学軸8の周りに回転させて、検出器11面で第1のアレイに対して、光学軸8の周りに0度より大きく、180度より小さな角度で、標的15に第2のアレイを位置づける、電磁気レンズを備える。
【0050】
第2の位置は、開口レンズアレイ6と磁気集光レンズ10との間とすることができる。この場合、開口レンズアレイ6は、図1に示すように、位置感応後方散乱荷電粒子検出器12が配置される中間面における離間したスポットの第1のアレイに、一次電子ビーム3を収束する第1のレンズシステムの少なくとも一部である。磁気集光レンズ10は、一次電子ビーム3を、検出器12面からサンプル15の表面に向けて方向づけ、すべての一次荷電粒子ビーム3を個々のスポットの第2のアレイに収束する第2のレンズシステムの少なくとも一部である。第2のレンズシステムは、一次電子ビーム3に対して共通の電磁気レンズを備える。磁気集光レンズ10、中間磁気レンズ13、および対物レンズ14の1つまたは複数は、電磁気レンズを備え、以下の図4および図5の説明でより詳細に説明するように、一次電子ビーム3のアレイを光学軸8の周りに回転させて、検出器12面で第1のアレイに対して、光学軸8の周りに0度より大きく、180度より小さな角度で、標的15に第2のアレイを位置づけるように配置される。
【0051】
後方散乱電子を検出するために、検出器は、第1の検出器11の位置に配置されるか、または第2の検出器12の位置に配置されることに留意されたい。後方散乱電子検出器11、12は、サンプル表面15の各単一一次電子ビームスポットの個々の後方散乱電子画像を取得するよう配置される。これは、サンプル表面15が、このMBSEM1で走査される場合に、複数画像を、単一走査期間における同じ時点で取得することが可能であることを意味する。
【0052】
図2は、図1の同じセットアップの模式的で簡易化された表現を示し、特に、図2で示す例は、図1の2つの共通交差部の代わりに、可変開口部216の位置における1つの共通交差部のみを示す。ただ1つの共通交差部のみを使用する場合、図1に示すような磁気集光レンズ10は、省略することができる。
【0053】
この場合も、図2に示すようなセットアップでは、後方散乱荷電粒子を検出するのに適切な2つの位置が存在する。
【0054】
第1の位置は、中間磁気レンズ213と対物レンズ214との間とすることができる。この場合、中間磁気レンズ213は、図2に示すように、位置感応後方散乱電子検出器211が配置される中間面における離間したスポットの第1のアレイに、一次電子ビーム23を収束する第1のレンズシステムの少なくとも一部である。対物レンズ214は、一次電子ビーム23を、検出器211面からサンプル215の表面に向けて方向づけ、すべての一次荷電粒子ビーム23を個々のスポットの第2のアレイに収束する第2のレンズシステムの少なくとも一部である。対物レンズ214は、以下の図4および図5の説明でより詳細に説明するように、一次電子ビーム23に対して共通であり、一次電子ビーム23のアレイを光学軸28の周りに回転させて、検出器211面で第1のアレイに対して、光学軸28の周りに0度より大きく、180度より小さな角度で、標的215に第2のアレイを位置づける、電磁気レンズを備える。
【0055】
対物レンズ214では、可変開口部217が、サンプル215と検出器211との間の後方散乱ビーム限定開口部として配置されることに留意されたい。後方散乱ビーム限定開口部217は、後方散乱電子の受け入れ角度を限定し、検出器211上の後方散乱粒子の画像におけるコントラストに影響を及ぼすよう使用される。開口部217はまた、検出器211上の後方散乱粒子のスポットのサイズを制御および制限するために使用することができる。
【0056】
あるいは、位置感応電子検出器212は、中間磁気レンズ213上の第2の位置に配置される。検出器212より上には、第1のレンズシステム(図示せず)が配置され、これは、例えば、図1に示すようなマルチ電子ビーム生成器2と同じであり、図2に示すように、位置感応後方散乱荷電粒子検出器212が配置される中間面における離間したスポットの第1のアレイに、一次電子ビーム23を収束する。中間磁気レンズ213は、一次電子ビーム23を、検出器212面からサンプル215の表面に向けて方向づけ、すべての一次荷電粒子ビーム23を個々のスポットの第2のアレイに収束する第2のレンズシステムの少なくとも一部である。第2のレンズシステムは、一次電子ビーム23に対して共通の電磁気レンズを備える。中間磁気レンズ213および対物レンズ214の1つまたは複数は、電磁気レンズを備え、以下の図4および図5の説明でより詳細に説明するように、一次電子ビーム23のアレイを光学軸28の周りに回転させて、検出器212面で第1のアレイに対して、光学軸8の周りに0度より大きく、180度より小さな角度で、標的215に第2のアレイを位置づけるように配置される。
【0057】
図3は、後方散乱電子を検出するためのMBSEMにおける光学セットアップのさらなる例を示す。このセットアップでは、位置感応後方散乱電子検出器311は、コリメーティングレンズ310と収束レンズ313との間に配置される。加速レンズ37およびコリメーティングレンズ310は、図3に示すように、位置感応後方散乱電子検出器311が配置される中間面における離間したスポットの第1のアレイに、一次電子ビーム33を収束する第1のレンズシステムの少なくとも一部である。収束レンズ313および対物レンズ314は、一次電子ビーム33を、検出器311面からサンプル315の表面に向けて方向づけ、すべての一次荷電粒子ビーム33を個々のスポットの第2のアレイに収束する第2のレンズシステムの少なくとも一部である。収束レンズ313および対物レンズ314の1つまたは複数は、以下の図4および図5の説明でより詳細に説明するように、一次電子ビーム33に対して共通であり、一次電子ビーム33のアレイを光学軸38の周りに回転させて、検出器311面で第1のアレイに対して、光学軸38の周りに0度より大きく、180度より小さな角度で、標的315に第2のアレイを位置づける、電磁気レンズを備える。対物レンズ314では、可変開口部317が、サンプル315と検出器311との間に後方散乱ビーム限定開口部として配置される。
【0058】
収束レンズ313を、一次電子ビーム33のアレイを光学軸38の周りに回転させるための電磁気レンズとして使用する場合、対物レンズ314はまた、静電レンズとすることができる。静電レンズは、光学軸38の周りに、電子ビームの回転をもたらさないことに留意されたい。
【0059】
光学軸8、28、38の周りを電子ビーム3、13、33が回転することの効果は、図4および図5で実証する。
図4は、表面がサンプルと向かい合う、位置感応後方散乱電子検出器411の一例の表面の模式図を示す。検出器411は、一次荷電粒子ビーム42を荷電粒子源2からサンプル表面15に向かう途中で通過させるための、孔42のアレイを備える。検出器411は、荷電粒子ビーム43が収束する中間面に、または中間面付近に、実質的に配置されるので、検出器411は、一次荷電粒子ビーム43が最小になる面に配置される。したがって、検出器411にある孔42は、後方散乱荷電粒子を検出するのに十分な表面領域を残すために、十分小さい。孔42は、荷電粒子ビーム43が、離間したスポットの第1のアレイに収束する位置に配置される。
【0060】
検出器411と、すべての荷電粒子ビームに対して共通であり、一次ビームのアレイを光学軸48の周りに回転させるよう配置される電磁気レンズとの間で、サンプル表面上の個々のスポットの第2のアレイの位置は、孔42に対して、0から180度で、回転される。後方散乱荷電粒子はまた、同じ電磁気レンズ通り、0から180度の間の実質的に同じ角度で、第2のアレイに対して回転する。したがって、中間面における位置感応検出器411の後方散乱荷電粒子のスポット44のアレイは、光学軸48の周りを、0度よりも大きく、360度よりも小さな角度で、一次荷電粒子ビーム43に対して回転する。この回転は、孔42に対する後方散乱荷電粒子のスポット44のアレイの間に空間分離をもたらし、一次ビーム43の位置から少なくとも実質的に逸脱する位置で後方散乱荷電粒子のスポット44のアレイを配置することを可能にする。後方散乱荷電粒子44は、検出器の表面に衝突する場合、読み取られる信号に変換され、このデータは、保管および/またはさらなる評価のためにコンピュータに転送される。
【0061】
図4における例に示すように、一次ビーム43が最小で、一次ビーム43が孔42を通る面は、後方散乱荷電粒子がまた小スポット44に収束する面付近にあるか、または面に配置される。
【0062】
位置感応検出器411の表面は、多数のピクセルによって覆われ、検出器411上の後方散乱荷電粒子のスポット44は、スポット44の1つまたは複数が、孔42の1つまたは複数上にない限り、検出可能である。多数のピクセル、すなわち、後方散乱スポット44よりはるかに多いピクセルを有する位置感応検出器411を使用する場合、後方散乱スポット44が、検出器411上に正確に行き着くことを事前に判断する必要はない。
【0063】
図5は、表面がサンプルと向かい合う、位置感応後方散乱電子検出器511のさらなる例の表面の模式図を示す。この検出器511は、孔のアレイを備えない。代わりに、検出器511は、光学軸58に隣接して配置され、荷電粒子光学システムの光学ビーム経路の半分を実質的にカバーする。他の半分は、検出器511に遮断されることなく、一次荷電粒子ビーム53を、荷電粒子源2からサンプル表面15に向かう途中で通過させる。
【0064】
この場合も、電磁気レンズは、検出器511とサンプルとの間に配置され、レンズは、すべての荷電粒子ビームに対して共通であり、一次ビーム53のアレイを、光学軸58の周りに回転させるよう配置される。この例において、サンプル表面上の個々のスポットの第2のアレイの位置は、一次ビーム53に対して、光学軸58の周りを約90度の角度で回転する。後方散乱荷電粒子はまた、同じ電磁気レンズを通り、第2のアレイに対して、同じ方向に、約90度の実質的に同じ角度で、回転する。したがって、中間面における位置感応検出器511の後方散乱荷電粒子のスポット54のアレイは、光学軸58の周りを、約180度の角度で、一次荷電粒子ビーム53に対して回転する。この回転のため、後方散乱荷電粒子のスポット54のアレイは、検出器511が配置される光学ビーム経路の側に動かされる。後方散乱荷電粒子54は、検出器511の表面に衝突する場合、読み取られる信号に変換され、このデータは、保管および/またはさらなる評価のためにコンピュータに転送される。
【0065】
一実施形態において、位置感応後方散乱荷電粒子検出器411、511は、CCDカメラ、CMOSカメラ、または後方散乱荷電粒子から信号を直接取得する、アバランシェフォトダイオード、光電子増倍管もしくはPN接合半導体検出器のアレイである。代替実施形態において、検出器411、511は、中間面の蛍光スクリーンと、CCDカメラなどの、光子を蛍光スクリーンから光子検出器に搬送する光学構成とを備え、それらは、オランダ国特許出願第2009053号明細書でより詳細に説明され、参照により本明細書に組み込まれる。
【0066】
図6は、図1に示し、上記で詳細に説明したのと本質的に同じMBSEMを示し、後方散乱電子検出器12が、開口レンズアレイ6と磁気集光レンズ10との間に配置される。図6に示すようなMBSEMは、さらに、共通交差部を備える面か、または面付近に、この場合では、可変開口部16の直下に、少なくとも実質的に位置づけられる、位置感応二次電子検出器17を備える。この二次電子検出器17は、サンプル表面15上の各単一一次電子ビームスポットの個々の二次電子画像を取得するよう配置され、後方散乱電子検出器12は、サンプル表面15上の各単一一次電子ビームスポットの個々の後方散乱電子画像を取得するよう配置される。これは、サンプル表面15が、このMBSEM1で走査される場合に、後方散乱電子および二次電子の複数画像を、単一走査期間における同じ時点で取得することが可能であることを意味する。
【0067】
要約すると、本発明は、サンプルを検査する装置および方法に関する。本装置は、一次荷電粒子ビームのアレイを生成する生成器と、光学軸を有する荷電粒子光学システムとを備える。光学システムは、すべての一次ビームを、中間面におけるスポットの第1のアレイに収束するための第1のレンズシステムと、すべての一次ビームを、サンプル表面上のスポットの第2のアレイに収束するための第2のレンズシステムとを備える。本装置は、中間面に、または中間面付近に配置された、位置感応後方散乱荷電粒子検出器を備える。第2のレンズシステムは、すべての荷電粒子ビームに対して共通である、電磁気または静電レンズを備える。第2のレンズシステムは、一次ビームのアレイを光学軸の周りに回転させ、第2のアレイを、ある角度で第1のアレイに対して位置づける、磁気レンズを備えることが好ましい。
【0068】
上記の説明は、好適な実施形態の動作を示すことを意図しており、本発明の範囲を限定することを意味していないことが理解される。上記の説明から、当業者には、多くの変形が、本発明の主旨および範囲によってさらに包含されることが明らかであろう。
図1
図2
図3
図4
図5
図6