特許第6389475号(P6389475)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6389475
(24)【登録日】2018年8月24日
(45)【発行日】2018年9月12日
(54)【発明の名称】バルーン副鼻腔拡張のための膨張装置
(51)【国際特許分類】
   A61M 25/10 20130101AFI20180903BHJP
【FI】
   A61M25/10 544
   A61M25/10 540
【請求項の数】2
【全頁数】18
(21)【出願番号】特願2015-556067(P2015-556067)
(86)(22)【出願日】2014年1月24日
(65)【公表番号】特表2016-508784(P2016-508784A)
(43)【公表日】2016年3月24日
(86)【国際出願番号】US2014012974
(87)【国際公開番号】WO2014120572
(87)【国際公開日】20140807
【審査請求日】2016年8月2日
(31)【優先権主張番号】13/755,934
(32)【優先日】2013年1月31日
(33)【優先権主張国】US
(73)【特許権者】
【識別番号】504101304
【氏名又は名称】メドトロニック・ゾーメド・インコーポレーテッド
(74)【代理人】
【識別番号】100140109
【弁理士】
【氏名又は名称】小野 新次郎
(74)【代理人】
【識別番号】100075270
【弁理士】
【氏名又は名称】小林 泰
(74)【代理人】
【識別番号】100101373
【弁理士】
【氏名又は名称】竹内 茂雄
(74)【代理人】
【識別番号】100118902
【弁理士】
【氏名又は名称】山本 修
(74)【代理人】
【識別番号】100118083
【弁理士】
【氏名又は名称】伊藤 孝美
(72)【発明者】
【氏名】ヴァカロ,ロバート・ケイ
(72)【発明者】
【氏名】ファースト,ティモシー・エム
(72)【発明者】
【氏名】リー,ウェンジェン
(72)【発明者】
【氏名】リトル,デーヴィッド・ジェイ
(72)【発明者】
【氏名】モウライ−アシュティアニ,アリ
(72)【発明者】
【氏名】オリバー,ダナ・エイ
【審査官】 今関 雅子
(56)【参考文献】
【文献】 米国特許出願公開第2012/0101515(US,A1)
【文献】 特開2008−079704(JP,A)
【文献】 国際公開第2011/100310(WO,A2)
【文献】 特表2006−507100(JP,A)
【文献】 米国特許第4134407(US,A)
【文献】 特表2004−512860(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A61M 25/00−29/04
A61M 5/48
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
外科用器具のバルーンを選択的に膨張させるための膨張装置であって、
筒体内に摺動可能に配置されたプランジャを備える注射器と、
前記注射器と前記バルーンの内部の間に閉じた膨張機構を確立するために、前記注射器の出口と外科用器具バルーンを流体連通させる連結器と、
前記注射器に関連付けられ、前記膨張機構の圧力が所定の水準に達したときに非警告状態から警告状態へ遷移するように構成されている機械的圧力指示器とを備え、
前記機械的圧力指示器が、
前記筒体の一部分の周りに配置された筐体と、
前記筒体の端部と前記筐体の間に配置されたばねとを備え、
前記膨張機構の圧力が前記ばねの付勢力を上回ると、前記筒体の前記端部が前記筐体から係脱するように前記機械的圧力指示器が構成されている、
装置。
【請求項2】
圧力計器が存在しないことを特徴とする、請求項1に記載の装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
[001]本開示は副鼻腔拡張機構および副鼻腔拡張方法に関する。より詳細には、副鼻腔炎および他の障害の治療の際に患者の副鼻腔の一部を拡張するためのバルーン副鼻腔拡張器具などのバルーン式外科用器具で有用な膨張装置に関する。
【背景技術】
【0002】
[002]副鼻腔系は、空気が満たされた4対の空洞の集まりであり、この空洞は、それらが位置する顔面骨に基づいて命名されている。上顎洞は鼻腔の周囲にあり、前頭洞は両目の上にあり、篩骨洞は両目の間にあり、蝶形骨洞は、脳下垂体下方の頭蓋底中央にある蝶形骨の内部にある。副鼻腔は、気道上皮がそこに沿って存在し、小孔と呼ばれる小さな穴を介して鼻腔につながり、多量の粘液を生成する分泌組織を収めている。この粘液は通常、対応する小孔を通って特定の様式で副鼻腔から除去される。
【0003】
[003]副鼻腔に沿って存在する粘膜が炎症を起こすことがある。この炎症は、副鼻腔炎(または鼻副鼻腔炎)として知られており、細菌、ウイルス、アレルギー、解剖学的異常などのさまざまな要因によって引き起こされることがある。副鼻腔の通路のうちの1つの粘膜が炎症を起こした場合、その通路はふさがれ、粘液を閉じ込めてしまう場合がある。副鼻腔炎を患っている患者は、頭痛、顔面痛、歯痛、内耳の問題などのいくつかの症状または合併症を経験することがある。
【0004】
[004]副鼻腔炎は通常、急性(継続期間が4週以下の感染)または慢性に分類される。急性副鼻腔炎は多くの場合、薬剤(たとえば、抗生物質、抗ヒスタミン薬など)で効果的に治療できる。慢性副鼻腔炎は、鼻腔付近の通路または罹患した副鼻腔に外科的に到達する、より侵襲的な治療選択肢を要することがある。従来の副鼻腔手術は、標的とする副鼻腔組織構造に到達するために、鼻の側面に沿って、または上の歯の歯肉を通って形成した切開部を必要とする。到達後、当該副鼻腔通路は外科的に拡大されるか、または他の方法で、粘液排出の再開を容易にするように変形される。
【0005】
[005]最近では副鼻腔矯正手術が内視鏡下で行われ、患者への外傷を最小限にしている。機能的内視鏡下副鼻腔手術(FESS:functional endoscopic sinus surgery)では、内視鏡が鼻内に挿入される。内視鏡による視覚化を用いて、通常の粘液排出を取り戻すために、副鼻腔炎に関連する解剖学的および病理的閉塞を取り除く。FESS(および他の鼻腔内処置)の利益は、罹患した副鼻腔に対してより標的を明確化した手法を可能にすることで、組織破壊を低減し、術後の合併症を最小限に抑えられることである。
【0006】
[006]さらに最近の最小侵襲性鼻腔内副鼻腔手術は、バルーン副鼻腔拡張またはバルーン副鼻腔形成術(balloon sinuplasty)として知られている。バルーン副鼻腔拡張(または単に「副鼻腔拡張」)は、最初はFESSに関連する術後の疼痛および出血に対処するために開発された。概して、従来の副鼻腔拡張は、罹患した副鼻腔通路を拡大または拡張するために小さな可撓性のバルーンカテーテルを使用する、副鼻腔炎を治療するための内視鏡を用いたカテーテルによる処置である。バルーンは、正確に配置され、膨張させられると、副鼻腔の内壁を損傷せずに通常の排液を取り戻すことを目標にして、副鼻腔の通路の壁を広げる。
【0007】
[007]副鼻腔拡張を実施するとき、外科医は、副鼻腔ガイドカテーテルまたは套管を鼻孔(または外鼻孔)を通して挿入して、内視鏡で見ながら罹患した副鼻腔小孔(開口)に到達する。次いでガイドワイヤおよび/または照明機構を、副鼻腔ガイドカテーテルを介して標的の副鼻腔内に導入する。意図した標的位置への到達を光または蛍光透視法によって確認した後、バルーンを備えた可撓性のカテーテルを、副鼻腔ガイドワイヤを介して空洞部に導入して、閉塞した小孔の中にバルーンを配置する。この点について、照明機構は、所望のバルーン配置を推定するときに外科医が頼る経皮的な(皮膚を通しての)光透過を提供する。所望のバルーン位置を視覚的に確認すると、バルーンを徐々に膨張させて、狭くなった、または閉塞した小孔を拡張する。次いでバルーンを収縮させ、取り除く。次に、粘液を洗い出すために、ガイドワイヤを介して灌流カテーテルを押し進めてもよい。最後に、空洞部が粘液を排出できるように、副鼻腔灌流カテーテルを副鼻腔から取り除く。
【0008】
[008]極めて前途有望であるが、既存の副鼻腔拡張機構および副鼻腔拡張方法にはいくつかの欠点がある。上で強調したように、利用可能な副鼻腔拡張機構は複数の工程および複数の器具を必要とする。ガイドワイヤは標的の副鼻腔部位への到達および可撓性のバルーンカテーテルの使用を容易にし得るが、外科医はガイドワイヤの正しい使用について訓練しなければならず、ガイドワイヤによって費用がかさむことになる。さらに、必要な照明源およびその使用は時間がかかるものであり、比較的高価である。さらに、外科医は、患者の皮膚を通した照明のみによって標的の小孔の位置を推定する必要がある。場合により、ガイドワイヤおよび/または照明源は、意図せず「見えない穴」に配置されるおそれがある。基準点として、副鼻腔機構の各領域は、ほとんどの患者にあるさまざまな細胞によって含気されている。これらの細胞は、経時的に成長して、まとまって解剖学的変化を生じさせることがある。場合により、たとえば、II型細胞が前頭洞に生じ、前頭洞小孔に甚だしく似た水準に増大することがある。前頭洞の副鼻腔炎を患っている患者のうち25%もの人がII型細胞を有すると推定される。内側を照明した(および外から見た)とき、自然な前頭洞小孔に非常に類似したII型細胞群の領域が現れる(または「感じられる」)ことがあり、所望の小孔に到達したと外科医が誤って推定することになる。続いてバルーンが膨張させられたとき、バルーンは小孔を開かず、実際は小孔をふさいでしまう。
【0009】
[009]上記の問題に加えて、利用可能な副鼻腔拡張機構で使用される膨張装置にはいくつかの欠点がある。基準点として、バルーンカテーテルは長い間、さまざまな外科的処置(たとえば、血管形成術、血管内ステント留置術、椎体形成術など)に使用されており、これらの用途に非常に適した膨張装置が広く利用可能である。バルーン副鼻腔拡張に関する解剖学的制約および性能要件は他のバルーンカテーテル処置とはかなり異なるが、既存のバルーン副鼻腔拡張機構は、変更なしで、既に利用可能な膨張装置になる。利用可能な膨張装置は、典型的には非常に大きく(十分な量の膨張流体を維持するため)、機能完備で(たとえば、装置内の圧力を表示する1つまたは複数の計器を備える)、使用するのが煩雑である。たとえば、機械的圧力計器(指針盤式の表示器を備える)、電子圧力計器(デジタル式の表示器を備える)が、利用可能なバルーンカテーテル膨張装置に備わっている。多くのバルーンカテーテル処置には必要であるが、その時点の機構内圧力を常に表示することは、バルーン副鼻腔拡張ではあまり重要ではない。これらの計器によって、特に膨張装置が使い捨てを意図されている場合、既存の膨張装置は極めて高価となる。さらに、計器は毎回の使用前に較正する必要がある場合もあり、それによって、処置の完了に必要な時間が長くなる。一方、他のあまり複雑でない膨張装置(たとえば、単純な注射器)は、機構内圧力の指示を行わず、機構内圧力が特定の水準を超えたときに警告がない。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0010】
[0010]上記に照らして、副鼻腔拡張機構および他のバルーンによる外科的処置で有用な、改良された膨張装置の必要性が存在する。
【課題を解決するための手段】
【0011】
[0011]本開示の各態様は、バルーン副鼻腔拡張器具などの外科用器具に備わったバルーンを膨張させるのに有用な膨張装置に関する。膨張装置は、注射器、連結器、および機械的圧力指示器を備える。注射器は、筒体内に摺動可能に配置されたプランジャを備える。連結器は、注射器とバルーンの内部の間に閉じた膨張機構を確立する際に、注射器の出口と外科用器具バルーンを流体連通させるように構成されている。圧力指示器は注射器と関連付けられ、膨張機構の圧力が所定の水準に達したときに非警告状態から警告状態へ遷移するように構成されている。いくつかの実施形態では、膨張装置は圧力計器が存在しないことを特徴とする。他の実施形態では、圧力指示器は、ばねおよび指示器本体を維持する筐体を備える。ばねは、圧力指示器を外から見たときに指示器本体が視覚的に不明瞭である非警告状態に指示器本体を付勢する。膨張機構内圧力が所定の水準まで上昇したとき、ばねの付勢力を上回り、指示器本体は、圧力指示器を外から見たときに指示器本体が視覚的に知覚され得る(触れて知覚される可能性もある)警告状態に遷移する。
【0012】
[0012]本開示の原理に従った他の態様は、外科用器具のバルーンを膨張させるのに有用な膨張装置に関し、装置は、注射器、連結器、および超過圧力制御器を備える。注射器は、筒体内に摺動可能に配置されたプランジャを備える。連結器は、注射器とバルーンの内部の間に閉じた膨張機構を確立する際に、注射器の出口と外科用器具バルーンを流体連通させるように構成されている。超過圧力制御器は注射器と関連付けられ、膨張機構の圧力が所定の水準に達すると、膨張機構内圧力を調節する(たとえば、膨張機構の体積を漸増させる)ように構成されている。いくつかの実施形態では、超過圧力制御器は、正常状態を実現するように構成されており、そこから自己遷移できる。閉じた膨張機構を作り出すために膨張装置が外科用器具バルーンに接続されたとき、超過圧力制御器は膨張機構に対して流体的に開放され、閉じた膨張機構の利用可能な体積全体の一部(または「超過圧力制御器の体積」)を画定する。正常状態では、超過圧力制御器の体積は実質的に一定のままである。膨張機構内圧力が所定の水準に達すると、超過圧力制御器は正常状態から自己遷移して、膨張機構体積全体のうち超過圧力制御器の体積成分を増加させ、発生した圧力を解放または蓄積する。注射器動作の継続により、使用者が所定の圧力水準を超えてさらに膨張機構の圧力を増加させようとした場合、超過圧力制御器は膨張機構内圧力に対する制御を実施して、注射器の漸進動作とともに膨張機構内圧力が増加し得る速度を制限する。いくつかの実施形態では、超過圧力制御器は、単独または注射器の構造と組み合わせて、膨張機構内圧力が最大水準を超えることを防ぐように構成されている。換言すると、超過圧力制御器は、正常状態では、膨張機構内圧力が注射器の動作とともに所定の圧力水準まで漸増できるようにしている。所定の圧力水準に達すると、超過圧力制御器は正常状態から遷移する。注射器のさらなる動作とともに膨張機構の全体圧力は所定の圧力水準を超えて増加することができるが、上記以外によって実現される速度を下回る速度であったなら、超過圧力制御器は設けられないはずである。超過圧力制御器は、正常状態から遷移するときに視覚的指示を使用者に提示するように構成されていてもよいし、そのように構成されていなくてもよい。
【図面の簡単な説明】
【0013】
図1】[0013]膨張装置およびバルーン副鼻腔拡張器具を備えた外科用機構の概略図である。
図2】[0014]図2Aは、非警告状態にある本開示の原理に従った膨張装置の側面図である。 [0015]図2Bは、図2Aの膨張装置の断面図である。
図3】[0016]図3Aは、非警告状態にある図2Aの膨張装置の一部を示す拡大断面側面図である。[0017]図3Bは、警告状態にある図3Aの膨張装置の一部を示す断面側面図である。
図4】[0018]図4Aは、構成要素を取り外した、非警告状態にある本開示の原理に従った別の膨張装置の斜視図である。[0019]図4Bは、図4Aの膨張装置の側面図である。
図5】[0020]警告状態にある図4Aの膨張装置の側面図である。
図6】[0021]本開示の原理に従った別の膨張装置の断面図である。
図7】[0022]図7Aは、本開示の原理に従った別の膨張装置の分解斜視図である。[0023]図7Bは、非警告状態にある図7Aの膨張装置の斜視図である。[0024]図7Cは、警告状態にある図7Aの膨張装置の斜視図である。
【発明を実施するための形態】
【0014】
[0025]本開示の各態様は、バルーン式の(またはバルーンを備えた)外科用器具、たとえば、副鼻腔形成術および他のバルーンによる副鼻腔処置で有用な膨張装置に関する。本開示の膨張装置は、独立型の装置として設けることも、外科用機構の一部として備えることもでき、そのいくつかの例が、2012年12月21日に出願され、その開示全体を参照により本明細書に組み込む「Sinus Dilation System and Method」と題された米国特許出願第13/725,716号に記載されている。概して、また図1に示すように、本開示の膨張装置20は副鼻腔拡張器具22とともに使用できる。副鼻腔拡張器具22は広範囲の形態を想定することができ、より一般的に、バルーン26を備えたプローブ(たとえば、棒または管)24を含む。プローブ24は、患者の鼻孔もしくは外鼻孔を介して、または犬歯窩もしくは開口手法などの他の従来の手法によって副鼻腔の標的部位(たとえば、副鼻腔小孔)にバルーン26を送達させる大きさと形になっている。位置決め後、膨張装置20を操作してバルーン26を膨張させ、こうして膨張したバルーンが標的部位を拡張させる。後述するように、本開示の膨張装置20は(機械的または電気的)圧力計器を備えておらず、圧力値を表示しない。ただし、膨張装置20は所望の膨張圧力に達したときに使用者に警告を発する。したがって、本開示の簡素化された膨張装置20は、従来の外科的なバルーンカテーテル膨張装置と比較して、極めて費用効果が高く、使用が直観的で容易である。
【0015】
[0026]上記を念頭においた上で、本開示の原理に従い、かつ副鼻腔拡張器具で有用な膨張装置100の一実施形態が図2Aおよび図2Bに示してある。膨張装置100は、注射器組立体102、機械的圧力指示器または超過圧力制御器104、連結器組立体106、および任意の管108を備える。各種構成要素の詳細は後述する。概して、注射器組立体102は、(たとえば、本開示の副鼻腔拡張器具バルーンを膨張させるために)加圧された流体を手で送達することができる。機械的圧力指示器104は、連結器組立体106を介して注射器組立体102の出口と流体連通し、注射器組立体102における流体の圧力が所定の水準に達したときに視覚的指示(たとえば、図2B図3Aにも示す)の正常状態または非警告状態から警告状態(図3Bに示す)への遷移)を提示し、場合によっては、所定の水準に達したときに注射器組立体102の動作を制限する。管108は、設けられる場合、連結器組立体106の出口と副鼻腔拡張器具22(または対象となる他の器具)を流体連通させるための従来の形態であり得る。
【0016】
[0027]注射器組立体102は、注射器110、任意の押し込みハンドル112および任意の把持ハンドル114を備える。注射器110は従来の設計であってもよく、筒体120およびプランジャ122を備える。筒体120は、近位端126と遠位端128の間に延在する室124を画定する。つば130が場合により近位端126に形成されている。いずれにせよ、また図3Aに最もよく示されるように、室124は、副鼻腔拡張器具バルーン26(図1)を膨張させるのに適切な流体体積を維持する大きさになっている。流体は、遠位端128を介して室124から分配され得る。筒体120には、遠位端128から延びる出口132を形成することができる。出口132は、室遠位端128に対して開放されており、より小さい内径を設けている(したがってプランジャ122の前方移動の停止部として働く)。
【0017】
[0028]プランジャ122は、頭部142を備えるかまたは形成している軸140を有する。軸140は、室124を備えて摺動可能に配置されており、筒体120との密閉関係を作り出す頭部142を有する。したがって、頭部142は、Oリング144またはゴム膜であるか、またはそれを備え得る。プランジャ122は、頭部142と反対の端部146で終わっている。端部146に隣接する後続領域148は、プランジャ122の他の部分の直径よりも大きな外径を有することができ、この増加した大きさは、筒体120の中でプランジャ122が過剰に挿入されそうになるのを止めるように働く。後続領域148は、プランジャ122が筒体120に対して明白に(overtly)押し込まれるのを物理的に防ぐために、室遠位端128および/または(後述する)把持ハンドル114の直径よりも大きな直径を有する。
【0018】
[0029]いくつかの実施形態では、注射器110は3mL注射器であり、およそ1.9mLの膨張媒体の体積が室124の中で維持され得るように、プランジャ122の移動を制限するように構成されている。他の大きさおよび体積も許容可能である。
【0019】
[0030]ハンドル112、114は、設けられる場合、使用者による膨張装置100の把持および取り扱いを行いやすくするだけでなく、注射器110の操作も助ける。押し込みハンドル112は、プランジャ端部146に取り付けられるように構成されており、これ以外では押し込みハンドル112(ひいてはプランジャ122)に押圧力を加えるように作用する使用者の手の手の平および/または親指を人間工学的に受けるように構成された滑らかな面150を画定または形成する。他の実施形態では、押し込みハンドル112は、多様な他の形状を想定することができ、プランジャ122によって一体形成されていてもよい。
【0020】
[0031]把持ハンドル114は、筒体120の上に組み立てまたは成形するように構成されており、たとえば、つば130を収容する溝を形成している。把持ハンドル114は対向する指当て突起152、154を画定し、これらはそれぞれ、これ以外では押し込みハンドル112に押圧力を加えるように作用する使用者の手の1つまたは複数の指を人間工学的に受ける大きさと形の把持面156、158を形成している。この任意の構造では、次いで、使用者の手の平が押し込みハンドルの面150に当たるように配置され、使用者の指が把持ハンドルの把持面156、158に当たるように配置される。次いで使用者の手がきつく握られて、押し込み力を押し込みハンドル112/プランジャ122に加える。
【0021】
[0032]連結器組立体106は、連結器160および覆い162を備える。連結器160は多様な形態を想定することができ、いくつかの実施形態では、第1および第2の入口管170、172、ならびに出口管174を画定するY字連結器である。出口管174は、入口管170、172と流体連通し、補助管108に接続するように構成されている。連結器160は注射器組立体102および圧力指示器104とは別個の構成要素として記載されているが、他の実施形態では、連結器160は、注射器110および/または圧力指示器104によって、またはこれらと一体形成されている。
【0022】
[0033]覆い162は、注射器組立体102および圧力指示器104に対して連結器160をより強固に安定化させるように構成された任意の構成要素である。概して図2Bに示してあるように、覆い162は、筒体120、連結器160、および圧力指示器104の構成要素が取り付けられるさまざまな内部特徴物(たとえば、親骨)を形成している。以下で明らかにする理由により、覆い162の指示器領域178の側面176は開口180を形成している。他の実施形態では、覆い162は省略することができる。
【0023】
[0034]機械的圧力指示器104は図3Aおよび図3Bにより詳細に示してあり、筐体180、棒182、頭部184、指示器本体186、およびばねまたは他の付勢装置188を備える。概して、棒182は筐体180の中に摺動可能に配置され、頭部184および指示器本体186を維持する。ばね188は、図3Aに示した正常状態または非警告状態に棒182を付勢する。機械的圧力指示器104は、頭部184に(ばね188の付勢とは反対の方向に)作用する圧力がばね188の力を上回ったとき、図3Bの警告状態に遷移する。
【0024】
[0035]筐体180は、主室190および出入り口192を画定する筒状体である。共通する通路194が室190および出入り口192を通って延在し、筐体180の後続端部196で開放されている。さらに、通路194の直径は出入り口192で小さくなっている。
【0025】
[0036]頭部184および指示器本体186は、棒182の両端に接続されている。頭部184は、室190内の通路194の直径に近似する直径を有する(任意のOリング202に沿った)封止膜200を含むか、または備えており、図示した筐体180の内壁に対する流体密封を確立するように構成されている。棒182の直径は、頭部184の直径未満である。指示器本体186は、棒182の直径よりも大きな直径を有することができ、室190の中に完全に収められるのに十分な大きさとなっている。指示器本体186はさまざまな形態(たとえば、プラスチック)を想定することができ、いくつかの実施形態では明るい色(たとえば、赤)である。指示器本体186は、いくつかの実施形態では、棒182と一体形成されている。
【0026】
[0037]ばね188は、後述するように既知のばね力定数を有するように選択される。ばね188は棒182の周りに摺動可能に配置され、第1の端部210において頭部184に取り付けられている。ばね188の対向する第2の端部212は、室190の中に強固に取り付けられている。たとえば、機械的圧力指示器104は、後続端部196に隣接する通路194内に取り付けられ、ばね188の第2の端部212が当たって維持される減少した直径表面をもつ端部キャップ214を含むことができる。図3Bに最もよく示されるように、端部キャップ214は、指示器本体186が摺動可能に収められる内部孔216を形成している。以下で明らかにする理由により、筐体180が透明またはほぼ透明である構造では、端部キャップ214は不透明であり得るか、またはそれ以外では、端部キャップ214の中に位置するときに指示器本体186を視覚的に不明瞭にするように構成されている。
【0027】
[0038]最終的な組み立て時に、ばね188は、頭部184を出入り口192に向かって付勢し、頭部184および/または封止部材200は、室190との流体封止部を確立する。棒182、頭部184および指示器本体186の長さは、正常状態、非警告状態または図3Aの状態において、指示器本体186が完全に筐体180の中に位置し、したがって外からは隠れて見えない(たとえば、筐体180および端部キャップ214の一方または両方が不透明であることにより、指示器本体186を不明瞭にしている)ようになっている。逆に、頭部184が、後述するように室190内の後方に押しやられたとき、指示器本体186の少なくとも一部が図3Bの警告状態で筐体180(および覆い162)の外に位置し、したがって、筐体180の外部から使用者に見えるようになる。
【0028】
[0039]膨張装置100の構造は、連結器の第1の入口管170を注射器出口132に組み付け、第2の入口管172を圧力指示器(indictor)出入り口192に組み付けることを含む。したがって、連結器160は、注射器110を圧力指示器104と流体連通させ、出口管174は、流体または注射器110の(またはその動作によって生じる)圧力に対して流体的に開放されている。覆い162は、設けられる場合、図示されているように連結器160、筒体120および筐体180に組み付けられる。図2Aおよび図2Bに示されるように、膨張装置100を副鼻腔拡張器具22(図1)で使用している間、連結器の出口管174は、たとえば副鼻腔拡張器具の膨張内腔(図示せず)および補助管108を介してバルーン26(図1)と流体連通している。閉じた膨張機構または経路が膨張装置100とバルーン26の間に形成されており、膨張装置100から送達される流体および/または膨張装置100が生み出す圧力によって、バルーン26は膨らむ。副鼻腔の小孔を拡張させるとき、バルーン26が配置されて当たる構造がバルーン26の膨らみに抵抗し、それによって膨張機構内に圧力の上昇が生じることが理解されよう。使用者が、上乗せした力をプランジャ122にかけて所望のバルーン膨張(たとえば、図3Aの配置から図3Bの配置への遷移)を実施すると、膨張機構内圧力がさらに上昇する。膨張機構内圧力がある水準に達したとき、使用者に警告するのが望ましいことがある。これを念頭においた上で、機械的圧力指示器104は膨張機構内圧力に流体的にさらされ、圧力は、ばね188の付勢力とは反対の方向に、力を頭部184にかける。ばね188のばね力定数未満の膨張機構内圧力では、ばね188によって生じる力が、膨張機構内圧力によって頭部184に加えられる力を上回り、圧力指示器104は図2Aおよび図2Bの非警告状態のままになる(すなわち、指示器本体186は筐体180および/または端部キャップ214の中に隠れたままになる)。膨張機構内圧力がばね188によって加えられる力を上回るとき、頭部184、したがって、棒182および指示器本体186は、後方に変位されて図3Bの警告状態になる。変位によって、指示器本体186は、使用者によって容易に見られるか、または視覚的に知覚される筐体180の外部に移動する。
【0029】
[0040]上記の説明を念頭においた上で、図3Aおよび図3Bを具体的に参照すると、ばね力定数は、所望される標的膨張機構内圧力に相当するばね188について選択され得る。そうでない場合は、予想される副鼻腔拡張の解剖学的制約、機構構成要素の制限(たとえば、副鼻腔拡張バルーン26(図1)の破裂強さ)などの1つまたは複数の要因に基づいて、標的膨張機構内圧力を決定することができ、ばね188は、決定された標的膨張機構内圧力に関する力にほぼ等しいばね力定数を呈するように選択または構成される。関連する実施形態では、組み立て時に筐体180内でばね188の上に成立する事前荷重力と組み合わせたばね188のばね力定数が、指示器104が所定の膨張機構内圧力標的限界において警告状態に遷移するように選択される。いずれにせよ、使用中、指示器本体186が見えるようになると(たとえば、図3Bの警告状態)、使用者は、所望の標的膨張機構内圧力に達しており、プランジャ122にさらに力を加えるべきではないことを容易に理解する。いくつかの実施形態において、指示器本体186と端部キャップ214(または指示器104の他の構成要素)の間の境界面は、指示器本体186が端部キャップ214から変位すると「クリック」感および/または「クリック」音が生じるようになっている。たとえば、わずかな摩擦境界面が成立して、指示器本体186が動くと、これ以外では膨張装置100を扱っている使用者が感じ、かつ/または聞くことができる「クリック」感および/または「クリック」音(または他の雑音)を生じさせることができる。非警告状態から警告状態へ遷移する際の任意の触覚的特性は、光が少ない環境において有益であり得る。一例として、およそ2ATMのバルーン圧力が、副鼻腔の小孔拡張処置の一部として鼻腔付近の骨および他の組織を砕くのに典型的には必要とされる。副鼻腔拡張の成功には通常、10ATMを超えるバルーン圧力は必要なく、副鼻腔拡張処置は従来、12ATMの上限を指定している。12ATMを十分に上回るバルーン圧力(または試みられるバルーン圧力)は不要であり、患者の合併症、器具の破損、またはその両方を招くおそれがある。次いで、いくつかの実施形態では、膨張装置100(さらには後述する他の実施形態の膨張装置)は、膨張機構内圧力が約10ATM±1ATMに、他の実施形態では約12ATM±1ATMに到達したときに警告状態に遷移するように構成されている。
【0030】
[0041]いくつかの実施形態では、機械的圧力指示器104の体積は注射器110のものよりも著しく大きい。そうでない場合は、指示器の室190(図3B)の体積が注射器室124の体積よりも大きい。この構造では、所望の膨張機構内圧力に到達したとき、頭部184の変位が、注射器プランジャ122によって変位するさらなる流体を効果的に吸収し、生じ得る追加の圧力の量を制限することにより、偶発的に超過圧力状態になるリスクを低減する。関連する実施形態では、注射器110の行程長(すなわち、頭部142から後続領域148までのプランジャ122の長手方向の長さ)が、これ以外でほとんどの副鼻腔拡張膨張処置に必要な予想される移動距離を超えないように選択できる。いくつかの実施形態では、膨張装置100は、圧力指示器104が10ATM±1ATMの膨張機構内圧力で警告状態に遷移するように構成されており、注射器110が12ATM±1ATMを超過した膨張機構内圧力を生成するように操作されるのを防止する。他の関連する実施形態では、指示器本体186(または視覚的「警告」を使用者に提示するために具体的に含まれる任意の他の構造)は省略することができ、圧力指示器104は上記の圧力蓄積/制限を有益に実現する。これらの構造では、圧力指示器装置104は、機構内圧力の超過「指示」を使用者に提示しない点で、「超過圧力制御器」と呼ばれることもある。
【0031】
[0042]副鼻腔拡張処置を実施する際に膨張装置100が使用される実施形態では、本開示の原理に従った方法が、鼻腔付近の標的部位に達するのに適した副鼻腔拡張器具(たとえば、図1の副鼻腔拡張器具22)を選択することを含む。管108は、器具のバルーン26(図1)および(たとえば図2Bに示されているような)連結器組立体106と流体連通している。注射器110は膨張媒体を事前に装填することができ、管108と接続する前に使用者が注射器110に所望の体積の膨張媒体を満たすこともできる。いずれにせよ、バルーン26は最初は収縮しており、注射器組立体102は図3Aの装填済み状態にあり、圧力指示器104は図3Aの非警告状態にある。副鼻腔拡張器具22は使用者によって操作されて、たとえば、患者の鼻孔を通り、所望の鼻腔付近の通路に沿ってプローブ24を導くことにより、バルーン26を標的部位に位置付ける。バルーン26が鼻腔付近の標的部位に位置付けられた後、膨張装置100はバルーン26を膨らませるように操作される。他の実施形態では、最初にバルーンを鼻腔付近の標的部位に導いた後、管108はバルーン26と流体連通させられる。バルーン26の膨らみまたは膨張は、プランジャ122が使用者によって押し込められると生じ、膨張媒体を管108の中に押しやり、膨張機構内の圧力を上昇させる。膨張機構内圧力が所定の水準(たとえば、10ATM)に到達したとき、圧力指示器104は図3Aの非警告状態から図3Bの警告状態に自己遷移する。指示器本体186は使用者から容易に見えるようになり、標的膨張機構内圧力に到達したことを使用者に警告する。触覚的および/または聴覚的警告も生成される。標的膨張機構内圧力に到達したことが分かれば、使用者は、鼻腔付近の標的部位の所望の再整形(たとえば、鼻骨および他の組織の必要な破壊)が生じたことを確認する。次いで使用者は、注射器110を反対方向に操作することによってバルーン26を収縮させ、処置を終えることができる。あるいは、使用者は、追加の力をプランジャ122に加えることによって、膨張機構内圧力をさらに高めることを決めてもよい。膨張装置100は、膨張機構内圧力が標的圧力を超えて上昇することを可能にする(すなわち、警告状態に遷移した後、膨張機構内圧力をさらに高めることができる)が、プランジャ122の行程長および圧力指示器104に収まる圧力解放(たとえば、12ATM)によって可能になる最大限度までにすぎない。
【0032】
[0043]別の関連する実施形態の膨張装置250を図4Aおよび図4Bに示してあり、上で説明したように、注射器110および連結器160、ならびに機械的圧力指示器または超過圧力制御器252を備える。機械的圧力指示器252は、既に説明した指示器104(図2B)に類似しており、全体として、筐体254、指示器本体256(図4Aに見られる)、およびばねまたは他の付勢装置258を備える。指示器本体256およびばね258は、筐体254によって画定される主室260の中に配置される。主室260は出入り口262で流体的に開放されており、そうでなければ、連結器160の第2の入口管172に結合するように構成されている。遮蔽部264(図4Aでは指示器本体256を示すために省略しているが、図4Bには示してある)は、出入り口262に隣接する筐体254に形成されているか、または備えられている。遮蔽部264は不透明であるが、筐体254の残りの部分は透明または実質的に透明(たとえば、90%以上透明)である。
【0033】
[0044]指示器本体256は主室260の中に摺動可能に配置されている。いくつかの実施形態では、指示器本体256は、主室260の中に配置され、筐体254の内部に対して流体的に封止されている封止部材268を含む頭部266に取り付けられているか、またはそれに備わっている。いずれにせよ、ばね258は筐体254の中に配置され、直接的または間接的のいずれかで指示器本体256に対する付勢力を確立している。たとえば、端部キャップ270は、主室260の上に固着することができ、これに対してばね258が強固に固着されている。ばね258の反対の端部は頭部268に(あるいは、直接的に指示器本体256に)固定されている。ばね258は、指示器本体256が遮蔽部264の中にあり、したがって(図4Bに示されるように)圧力指示器250の外からは見えない図4Aおよび図4Bに示されるような非警告状態に指示器本体256を付勢する。
【0034】
[0045]使用中、ばね258のばね力定数(および/またはばね258にかかる事前荷重力)は、膨張装置258について所望される標的膨張機構内圧力に相当する。上記の実施形態のように、膨張機構の内部圧力が高められる(すなわち、注射器110が副鼻腔拡張器具のバルーンを膨張させるように操作される)とき、力が頭部266に、ばね258の付勢力とは反対の方向に及ぼされる。加えられる圧力が上昇するにつれて、ばね258は圧縮させられる。所定の標的膨張機構内圧力に到達すると、指示器本体256は遮蔽部264から後方へ変位させられ、図5に示すように遮蔽部264を越えて見えるようになる。圧力指示器252のこの警告状態では、標的膨張機構内圧力に到達したことが使用者に直ちに知らされる。非警告状態から警告状態に遷移する際に、「クリック」感および/または「クリック」音が発生してもよい。
【0035】
[0046]本開示の原理に従った別の実施形態の膨張装置300を図6に示してある。膨張装置300は、注射器302と、筐体304、端部キャップ306、およびばねまたは他の付勢装置308を含む圧力指示器または超過圧力制御器303とを備える。概して、ばね308は、所定の水準未満の加えられる力で筐体304に対して注射器302を保持する。注射器302に加えられる力がばね力を超えたとき、注射器302は筐体304の特徴物から係脱して「クリック」感および/または「クリック」音を発生させる。
【0036】
[0047]注射器302は従来の形態をもつことができ、筒体320およびプランジャ322を備える。筒体320はつば324で終わっており、分配流路328に流体的に開放されている室326を画定する。プランジャ322は、頭部332および封止部材334を両端で維持または形成している軸330を含む。軸330は室324の中に摺動可能に配置されており、封止部材334が筒体320に対して液体密閉部を形成している。
【0037】
[0048]筐体304は、対向する第1と第2の端部342、344の間に延在する筐体本体340を備える。筐体本体340は筒状であり、内部閉じ込め領域348を画定する壁346を有する。内部領域348の直径は比較的均一であり、後述するようにばね308および注射器筒体320を摺動可能に維持する大きさであり得る。いずれにせよ、肩部350が、第1の端部342で壁346から半径方向内側へ出た突起として形成されている。肩部350によって、内側領域348の直径が減少している。この点について、肩部350の直径は、つば324と肩部350の間の摩擦係合が最終的な組み立て時に実現されるように、筒体つば324の外径に近似している(たとえば、わずかに小さくなっている)。
【0038】
[0049]指把持部352は、壁346から半径方向外側へ出た突起として第1の端部342で筐体本体340によって形成されるか、またはそこに取り付けられている。台354は、第1の端部342で壁346から半径方向内側へ指把持部352とは反対に延在し、プランジャ軸330を摺動可能に収容する大きさの中央穴356を形成する(すなわち、穴356の直径が軸330の直径よりもわずかに大きい)。台354の内径は、以下で明らかにする理由により、プランジャ頭部332の直径よりも小さい。
【0039】
[0050]端部キャップ306は、棚状突起360およびガイド通路362を画定するリング形状体である。棚状突起360は、ばね308の一部分を受ける大きさと形の係合面364を形成している。ガイド通路362は注射器筒体320の直径よりもわずかに大きい直径を有する。この構造では、筒体320は、使用中に筒体320が端部キャップ306に対して自由に摺動するように、ガイド通路362の中にゆるく収められ得る。最終的に、端部キャップ306は、筐体304の第2の端部344に取り付けられるように構成される。1つの非限定的な例では、端部キャップ306と筐体壁346は相補的な(complimentary)ねじ山を形成している。これらおよび他の取り付け様式により、棚状突起360と筐体の第1の端部342の間の長手方向の距離は使用者によって選択的に変更され得る。
【0040】
[0051]ばね308は、対向する第1と第2の端部370、372の間に延在する巻きばねであり得る。ばね308の内径は、注射器筒体320を摺動可能に受ける大きさである。さらに、第1の端部370における直径は筒体つば324の直径よりも小さく、第2の端部372における直径は端部キャップ係合面364の直径よりも小さい。ばね308は、後述するように、付勢力を呈し、膨張装置300の動作を容易にする多様な他の形態をもつことができる。
【0041】
[0052]膨張装置300の組み立ては、ばね第1の端部370がつば324に当接するように注射器筒体320の周りにばね308を配置することを含む。注射器302/ばね308は、筐体304の中に搭載される。特に、端部キャップ306を筐体304から外した状態で、注射器筒体320/ばね308が内部領域348に挿入される。つば324は台354に当たるように配置され、肩部350によって摩擦係合される。必要な場合、次いでプランジャ322が穴356を介して筒体の室326内に搭載されてもよい。いずれにせよ、端部キャップ306は、筒体320の上に配置され(たとえば、筒体320は摺動可能にガイド通路362の中に配置され)、筐体304に取り付けられる。この点について、棚状突起360が筐体の第1の端部342に向かって移動させられると、ばねの第2の端部372は係合面364と当接する。ばねの第1の端部370がつば324に当接すること、またつば324が筐体台354に当接することを考えると、端部キャップ306が筐体第1の端部342に向かってさらに動く(たとえば、筐体304と上記の端部キャップ306がねじで係合する)ことで、ばね308は圧縮状態に配置される(すなわち、事前荷重力がばね308に発生する)。こうしてばね308に成立する事前荷重力は、上記のような所望される標的膨張機構内圧力値に従って使用者によって選択され得る。
【0042】
[0053]使用前に、膨張媒体(図示せず)を注射器室326の中に装填し、分配流路328を本開示の拡張器具と流体連通させる(たとえば、補助管108(図2A)は、分配流路328を副鼻腔拡張器具のバルーン26(図1)と流体連通させる)。その結果、閉じた膨張機構または経路が膨張装置300と副鼻腔拡張器具バルーン26の間に確立される。バルーン26の膨張を実施するために、使用者は膨張装置300の指把持部352を把持し、押圧力をプランジャ頭部332に加える(たとえば、使用者の親指以外の指を指把持部352の下側に当て、使用者の親指をプランジャ頭部332に当てて、親指と残りの指を互いに向かって固く握ることによって、押圧力がプランジャ頭部332に加わり、対応する引く力が反動的に指把持部352に加わることが理解される)。押圧力はプランジャ封止部材334に、ひいては室326の中に含まれる膨張流体に伝達される。プランジャ封止部材334が分配流路328に向かって移動すると、室326の(ひいては膨張機構全体の)体積が減少して、膨張機構内圧力の増加、ひいてはバルーン26の膨張をもたらす。プランジャ322がまず押し付けられ、膨張機構内圧力が上昇すると、注射器の筒体320と筐体304の間に相対的な動きがなくなる。プランジャ頭部332に加えられる力がばね308にかかる事前荷重力以下である間は、ばね308は、つば324が肩部350の中に保持される図示の初期状態または非警告状態に筒体320を付勢する。プランジャ頭部332に加えられる力がばね事前荷重力を超えたとき、筒体320は筐体の第1の端部342から離れるように移動させられ、つば324は肩部350から係脱する。つば324/肩部350は、この係脱によって「クリック」感および/または「クリック」音が発生するように構成することができる。ばねの事前荷重力を、所望される標的膨張機構内圧力水準と等しく設定することによって(たとえば、10ATM)、膨張装置300は、所望される標的膨張機構内圧力に到達したことをクリック感によって使用者に警告する。
【0043】
[0054]本開示の原理に従った別の膨張装置400を図7A〜7Cに示してあり、図7Bは非警告状態を示し、図7Cは警告状態を示す。膨張装置は注射器402および圧力指示器または超過圧力制御器404を備える。注射器402は、従来の様式を想定することができ、筒体406およびプランジャ408を備える。プランジャ408は、筒体406の室414の中に摺動可能に配置された封止部材412を備える第1の端部410を形成している。プランジャ408の反対の第2の端部416は、後述するように圧力指示器404に組み付けられているか、またはその一部である。筒体406は、つば418または使用者の力が従来のように使用中に加えられる他の構造(たとえば、指の輪)を備えることができる。
【0044】
[0055]圧力指示器404は、支持体420、結合構造422、摺動体423、棒424およびハンドル426を備える。概して、支持体420はプランジャの第2の端部416に取り付けられている。結合構造422および摺動体423は、ハンドル426に加わる押圧力がプランジャ408に伝達されるように、棒424(したがってハンドル426)をプランジャ408に対して維持する。ハンドル426に加わる押圧力が所定の水準を超えたとき、結合構造422は支持体420に対して移動して、「クリック」感および/または「クリック」音を発生させる。
【0045】
[0056]支持体420はプランジャ408と一体形成するか、または別々に形成し、プランジャの第2の端部416に取り付けることができる。いずれにせよ、支持体420は、第1および第2の取り込み領域432、434を画定する中央孔430を形成している。図示されているように、取り込み領域432、434は、(孔430の残りと比べて)半径方向に増加した幅を有することを特徴とし、後述するように結合構造422の対応する特徴物に従って大きさと形が決められている。この点については、取り込み領域432、434のそれぞれが、半径方向の幅が減少するそれぞれ前縁436、438によって画定されている。いくつかの実施形態では、支持体420は、ある加えられる力水準で取り込み領域432、434において変形するように構成されている。いくつかの実施形態では、孔430の中の結合構造422の位置を見えるようにするために、孔430は支持体420の対向する側面(一方は図面に見られ、440を付されている)で開いている。
【0046】
[0057]結合構造422は、多様な形態を想定することができ、いくつかの実施形態では、(図7Aに見られるように)留め輪453から伸長し、流路454によって分離された対向するばね指450、452を含むことができる。結合構造422は、第1および第2の取り込み領域432、434のそれぞれの中で支持体420と選択的に係合するように構成されている。たとえば、結合構造422が対向するばね指450、452を備える実施形態では、ばね指450、452はそれぞれ、取り込み領域432、434の対応する区画の形状に相当する周縁部形状を有する。ばね指450、452は、指450、452が取り込み領域432、434の一方と位置合わせされたとき、指450、452が自己付勢して取り込み領域432、434と係合状態になるように、外側へ付勢される構造を当然ながら想定している。係合した状態では、指450、452が、対応する取り込み領域432、434の前縁436、438を押し付ける。流路454は摺動体423を摺動可能に収める大きさになっている。結合構造422は、たとえば、以下で明らかにする理由により、互いに対して内側へ反るように構成された指450、452によって、ある加えられる力の水準で反りまたは圧縮を示すように構成することができる。
【0047】
[0058]摺動体423は頭部456を画定し、指450、452間に形成された流路454内に収まる大きさになっている。摺動体423は、棒424に取り付けられるようにさらに構成されている。摺動体423による結合構造422との摺動係合は、摺動体423が図7Bの後退位置と図7Cとの前方位置との間で結合構造422に対して移動可能となるようなさまざまな方法で実現され得る。基準点として、図7Bの後退位置では、頭部426は、ハンドル426/摺動体423に対する後退力が直接的に結合構造に伝達するように留め輪453に当接する。
【0048】
[0059]棒424はハンドル426および摺動体423に取り付けられる。したがって摺動体423は事実上、棒424の直径がより小さな延長部として機能する。摺動体423は流路454の中で摺動する大きさになっているが、棒424は拡大した外部寸法を有し、留め輪453を通り抜けることができない。図7Cの前方位置において、棒424は次いで、ハンドル426/棒424に対する前進力が直接的に留め輪453に伝達されるように、結合構造422を押し付ける。いくつかの実施形態では、圧力指示器404は、支持体420に対する棒424の動きを支持し、案内するハブ460をさらに備えることができる。
【0049】
[0060]ハンドル426は、使用者が押圧力を膨張装置400に加えるのを容易にすることによって、使用者の手または指による扱いを補助する任意の形態を想定することができる。したがって、ハンドル426は場合により、板470および枠472を形成しているか、または備えている。板470は、使用者の親指を収める大きさと形になっており、枠472は、使用者の親指と板470の間の明確な接触を維持するのを補助するように構成されている。ハンドル426の他の形態も等しく許容可能である。
【0050】
[0061]図7Bの非警告状態では、注射器室414には膨張媒体(図示せず)が装填され、圧力指示器402は、結合構造422が第1の取り込み領域432の中で係合されるように配置されている。握る力は、使用者によってハンドル426およびつば418において加えられる。ハンドル426において加えられる押圧力によって、摺動体423は、棒424が留め輪454に接するまで結合構造422の中で摺動または前進する。摺動体423は第2の位置(図7C)に遷移させられる。ただし、結合構造422は第1の取り込み領域432の中に残ったままである。ハンドル426に加え続けられる力は、結合構造422および棒424を介して支持体420に伝達される。所定の水準未満の加えられる力では、結合構造422は第1の取り込み領域432の中で係合したままであり、加えられる押圧力は結合構造422/前縁436の境界面において支持体420に伝達される。この押圧力は直接的にプランジャ408に移り、それによって膨張媒体が室414から分配される。
【0051】
[0062]膨張機構内の圧力が上昇し始めると、ハンドル426に加えられる押圧力も上昇する。所定の水準未満の膨張機構内圧力では、対応する押圧力が、結合構造422を第1の取り込み領域432から係脱させるには不十分である。しかし、膨張機構内圧力が所定の水準を超えたとき、結合構造422に加えられる対応する押圧力は、圧力指示器404を図7Bの非警告状態から図7Cの警告状態に遷移させる。より具体的には、非警告状態からの遷移の際に、結合構造422は、第1の取り込み領域432の前縁436において支持体孔430をわずかに拡大させる(たとえば、摺動体423の頭部456は、指450、452が互いに向かって反るのを防ぎ、支持体430は変形する)。前方へ移動させ続けると、結合構造422は第1の取り込み領域432から係脱し、次いで図7Bに示されるように第2の取り込み領域434の中で自己係合する。結合構造422が第2の取り込み領域434と係合されると、「クリック」感および/または「クリック」音が発生する。この触覚的なカチッと鳴る作動(および/または結合構造422が第2の取り込み領域434に移動したことの視覚的な確認)は、膨張機構内圧力が所定の水準に上昇したことを使用者に容易に知らせる。使用者は押圧力をハンドル426に加え続けることができる(この力は結合構造422/前縁438の境界面を介して支持体420/プランジャ408に移る)が、使用者は、所定の標的膨張機構内圧力が得られたことを通知される。
【0052】
[0063]支持体420および結合構造422の材料ならびにそれらの境界面の形態を選択することによって、膨張装置400は、特定の膨張機構内圧力(たとえば、10ATM)において警告状態に遷移するように構成することができる。膨張装置400は、ハンドル426を後退させることによって再設定することができる。摺動体423は、指450、452の間から後退し、支持体420に対する結合構造422のさらなる後退によって、指450、452が容易に反り、続いて第1の取り込み領域432の中で係合することを可能にする。
【0053】
[0064]本開示の膨張装置は、バルーン副鼻腔拡張処置で従来使用されていたものを含む以前の設計に対する顕著な改良をもたらす。たとえば、本開示の膨張装置は、従来の指針盤圧力計器が存在しないことを特徴とする。開示された膨張装置の簡素化された様式は、従来の設計と比べて、より簡単かつより直観的に使用され、あまり費用がかからず、使い捨て装置として生じる廃棄物が少ない。費用効果の高い膨張装置は、必要なバルーン膨張ならびに標的圧力水準の「警告」および/または制御を行うことが可能である。本開示の膨張装置は、剛性プローブまたは可撓性カテーテルを備えたものなど、多様な異なる構造の副鼻腔拡張器具とともに使用することができる。さらに、膨張装置は副鼻腔拡張処置およびその器具で有用なものとして説明したが、広範囲の他の外科的なバルーン処置および器具もまた、副鼻腔に関するものでもそうでなくてもよい開示された膨張装置から利益を得ることができる。
【0054】
[0065]好ましい実施形態を参照しながら本開示を説明してきたが、本開示の趣旨および範囲から逸脱することなく形態および詳細に変更を加えられることが当業者には認識されよう。たとえば、本開示の膨張装置は、ばねを対応する圧力指示器に組み込んで所望の付勢力を発生させるものとして説明したが、他の付勢または補償構成も考えられる。機械ばねは可撓性蛇腹組立体、または筒形コイルもしくは電気変換器で置き換えることができる。また、本開示の膨張装置は、膨張機構の標的圧力に到達したときに少なくとも視覚的警告を使用者に提示するように構成された圧力指示器を備えるものとして説明したが、他の実施形態では、本開示の指示器のうち任意のものを、説明したように有益な圧力蓄積/制限を依然として提示する圧力水準の直接的な視覚的指示を発生しないように修正することができる。
図1
図2A
図2B
図3A
図3B
図4A
図4B
図5
図6
図7A
図7B
図7C