特許第6389480号(P6389480)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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特許6389480対象イオンについて最適化されたイオン移動度分離タイムスケール
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6389480
(24)【登録日】2018年8月24日
(45)【発行日】2018年9月12日
(54)【発明の名称】対象イオンについて最適化されたイオン移動度分離タイムスケール
(51)【国際特許分類】
   G01N 27/62 20060101AFI20180903BHJP
   H01J 49/42 20060101ALI20180903BHJP
【FI】
   G01N27/62 101
   H01J49/42
   G01N27/62 B
【請求項の数】18
【全頁数】16
(21)【出願番号】特願2015-560772(P2015-560772)
(86)(22)【出願日】2014年3月5日
(65)【公表番号】特表2016-514262(P2016-514262A)
(43)【公表日】2016年5月19日
(86)【国際出願番号】GB2014050648
(87)【国際公開番号】WO2014135870
(87)【国際公開日】20140912
【審査請求日】2017年2月22日
(31)【優先権主張番号】1304037.3
(32)【優先日】2013年3月6日
(33)【優先権主張国】GB
(31)【優先権主張番号】13158047.4
(32)【優先日】2013年3月6日
(33)【優先権主張国】EP
(73)【特許権者】
【識別番号】504142097
【氏名又は名称】マイクロマス ユーケー リミテッド
(74)【代理人】
【識別番号】100101454
【弁理士】
【氏名又は名称】山田 卓二
(74)【代理人】
【識別番号】100081422
【弁理士】
【氏名又は名称】田中 光雄
(74)【代理人】
【識別番号】100125874
【弁理士】
【氏名又は名称】川端 純市
(74)【代理人】
【識別番号】100189544
【弁理士】
【氏名又は名称】柏原 啓伸
(72)【発明者】
【氏名】ケビン・ジャイルス
(72)【発明者】
【氏名】スティーブン・デレク・プリングル
(72)【発明者】
【氏名】ジェイソン・リー・ワイルドグース
【審査官】 伊藤 裕美
(56)【参考文献】
【文献】 米国特許出願公開第2002/0070338(US,A1)
【文献】 国際公開第02/07185(WO,A1)
【文献】 特表2004−504696(JP,A)
【文献】 国際公開第2011/125399(WO,A1)
【文献】 欧州特許出願公開第02557590(EP,A1)
【文献】 特表2012−525672(JP,A)
【文献】 米国特許出願公開第2012/0056085(US,A1)
【文献】 米国特許出願公開第2003/0001084(US,A1)
【文献】 米国特許出願公開第2001/0009266(US,A1)
【文献】 特開2001−202918(JP,A)
【文献】 米国特許出願公開第2008/0191129(US,A1)
【文献】 特表2008−535168(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G01N 27/60−27/70
H01J 49/00−49/48
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
イオンを分析するための分析装置であって、
物理化学的特性に基づいてイオンを分離するためのセパレータと、
1つ以上のイオンガイドを備えるインターフェースであって、それぞれのイオンガイドが複数の電極を備える、インターフェースと、
前記インターフェースの下流に配置された四重極ロッドセット質量または質量電荷比フィルタと、
(i)前記セパレータから出射する第1のイオン群を第1の通過時間t1で前記インターフェースを通って輸送し、かつ
(ii)前記セパレータから引き続いて出射する第2のイオン群を第2の異なる通過時間t2で前記インターフェースを通って輸送するように配置及び適合される、制御システムと、を備える前記分析装置。
【請求項2】
前記物理化学的特性が、イオン移動度または微分型イオン移動度を含む、請求項1に記載の分析装置。
【請求項3】
前記セパレータがイオン移動度セパレータまたは微分型イオン移動度セパレータを備える、請求項2に記載の分析装置。
【請求項4】
前記物理化学的特性が質量または質量電荷比を含む、請求項1に記載の分析装置。
【請求項5】
前記セパレータが飛行時間領域を含む、請求項4に記載の分析装置。
【請求項6】
前記制御システムが、通過時間t2で、前記インターフェースを通って前記第2のイオン群を輸送するように配置及び適合され、t2>t1、である、請求項1〜5のいずれか一項に記載の分析装置。
【請求項7】
前記制御システムは、前記第1のイオン群が第1の速度で前記1つ以上のイオンガイドに沿って並進されるように1つ以上の過渡直流電圧または電位を前記複数の電極に印加するように更に配置及び適合される、請求項1〜6のいずれか一項に記載の分析装置。
【請求項8】
前記制御システムは、前記第2のイオン群が第2の異なる速度で前記1つ以上のイオンガイドに沿って並進されるように1つ以上の過渡直流電圧または電位を前記複数の電極に印加するように更に配置及び適合される、請求項7に記載の分析装置。
【請求項9】
前記第2の速度が前記第1の速度よりも遅い、請求項8に記載の分析装置。
【請求項10】
前記制御システムが、前記第1のイオン群が第1の速度で前記1つ以上のイオンガイドに沿って付勢されるように前記1つ以上のイオンガイドに沿って第1の直流電圧または電位勾配を第1の時点において維持するように更に配置及び適合される、請求項1〜9のいずれか一項に記載の分析装置。
【請求項11】
前記制御システムは、前記第2のイオン群が第2の異なる速度で前記1つ以上のイオンガイドに沿って付勢されるように前記1つ以上のイオンガイドに沿って第2の直流電圧または電位勾配を第2のより後の時点において維持するように更に配置及び適合される、請求項10に記載の分析装置。
【請求項12】
前記第2の直流電圧または電位勾配が前記第1の直流電圧または電位勾配未満である、請求項11に記載の分析装置。
【請求項13】
前記制御システムが、
(i)前記質量または質量電荷比フィルタにより、第1の質量または質量電荷比の範囲内に質量または質量電荷比を有するイオンを輸送させ、次いで
(ii)前記質量または質量電荷比フィルタにより、第2の異なる質量または質量電荷比の範囲内で質量または質量電荷比を有するイオンを輸送させるように更に配置及び調節される、請求項1〜12のいずれか一項に記載の分析装置。
【請求項14】
前記制御システムが、前記セパレータ内でのイオンの単一の分離サイクル内または単一の分離サイクル中に、前記セパレータから出射する前記第1のイオン群を第1の通過時間t1で前記インターフェースを通って輸送し、かつ前記セパレータから引き続いて出射する前記第2のイオン群を第2の異なる通過時間t2で前記インターフェースを通って輸送するように配置及び適合される、請求項1〜13のいずれか一項に記載の分析装置。
【請求項15】
請求項1〜14のいずれか一項に記載の分析装置を備える質量分析計。
【請求項16】
イオンを分析する方法であって、
セパレータ内で物理化学的特性に基づいてイオンを分離することと、
1つ以上のイオンガイドであって、それぞれのイオンガイドがインターフェースの下流に配置される複数の電極及び四重極ロッドセット質量または質量電荷比フィルタを備える、1つ以上のイオンガイドを備える前記インターフェースを提供することと、
前記セパレータから出射する第1のイオン群を第1の通過時間t1で前記インターフェースを通って輸送することと、
前記セパレータから引き続いて出射する第2のイオン群を第2の異なる通過時間t2で前記インターフェースを通って輸送することと、を含む前記方法。
【請求項17】
前記セパレータから出射する前記第1のイオン群を第1の通過時間t1で前記インターフェースを通って輸送する工程、及び前記セパレータから引き続いて出射する前記第2のイオン群を第2の異なる通過時間t2で前記インターフェースを通って輸送する工程が、前記セパレータ内でのイオンの単一の分離サイクル内または単一の分離サイクル中に行なわれる、請求項16に記載の方法。
【請求項18】
請求項16または17に記載の方法を含む質量分析方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
関連出願の相互参照
本出願は2013年3月6日に出願された英国特許出願第1304037.3号及び2013年3月6日に出願された欧州特許出願第13158047.4号からの優先権及びそれらの利益を主張する。これらの出願の内容全体が参照によって本明細書に組み込まれている。
【背景技術】
【0002】
本発明は分析装置、質量分析計、イオン分析方法、及び質量分析方法に関する。好適な実施形態は四重極ロッドセットマスフィルタの上流に結合及び配置されるイオン移動度セパレータ(「IMS」)に関する。
【0003】
イオン移動度セパレータまたは分析計(「IMS」)に関連付けられるタイムスケールは、イオン移動度分析計の下流に配置される分解型四重極(「Q」)がイオン移動度分析計またはセパレータの単一の実験またはサイクルにおいて異なる成分の輸送間を切り換える能力などの、実践上の難しさを提示している。
【0004】
四重極マスフィルタの上流に配置されるイオン移動度分析計を備える従来の質量分析計に伴う特定の問題は、イオン移動度分析計から接近して溶離している分析物イオンのイオン移動度分離タイムスケール(例えば、200μs)が、質量電荷比輸送窓を切り換えるのに例えば1msかかることもある四重極にとって高速過ぎることもあり得るということである。結果として、イオン移動度分析計は、イオン移動度分析計、四重極マスフィルタ、及び飛行時間質量分析器を備える質量分析計において、イオン検出器のダイナミックレンジなどのシステム性能に大幅な制限を課する。
【0005】
US 2002/0070338(Loboda)は、飛行時間質量分析器90の上流に配置されるイオン移動度部66及び四重極ロッドセット78を図5に開示している。
【0006】
WO 02/07185(Clemmer)は、イオン移動度分析計34が飛行時間質量分析器36の上流に配置される配置を図17に開示している。
【0007】
US 2005/0242279(Verentchikov)は、タンデム飛行時間質量分析計を開示している。
【0008】
US 2011/0127417(Ibrahim)は、荷電粒子の衝突活性化のシステム及び方法を開示している。
【0009】
GB−2497958(Makarov)は、タンデム質量分析用の衝突セルを開示している。
【0010】
GB−2391697(Micromass)は、直交加速式飛行時間質量分析器と同期的にイオンを受け取りかつイオンを放出するイオンガイドを有する質量分析計を開示している。
【0011】
GB−2397433(Micromass)は、パルス化イオン源からのイオンが内部に複数の捕捉領域が作成されているイオンガイドによって受け取られる質量分析計を開示している。
【0012】
GB−2451149(Micromass)は、デュアルモードイオン移動度質量分析装置を開示している。
【0013】
GB−2421840(Micromass)は、イオン移動度分析計の下流に位置するイオンガイドを備える質量分析計を開示している。
【0014】
GB−2485667(Micromass)は、水素−重水素交換を行なうために配置される気相イオン中性反応装置を備える質量分析計を開示している。
【0015】
改良された質量分析計及び質量分析方法を提供することが望まれている。
【発明の概要】
【0016】
本発明の一態様によると、イオンを分析するための分析装置であって、
物理化学的特性に基づいてイオンを分離するためのセパレータと、
1つ以上のイオンガイドを備えるインターフェースであって、それぞれのイオンガイドが複数の電極を備える、インターフェースと、
該インターフェースの下流に配置された四重極ロッドセット質量または質量電荷比フィルタと、
(i)該セパレータから出射する第1のイオン群を第1の通過時間t1で該インターフェースを通って輸送し、かつ
(ii)該セパレータから引き続いて出射する第2のイオン群を第2の異なる通過時間t2で該インターフェースを通って輸送するように配置及び適合される、制御システムと、を備える該分析装置が提供される。
【0017】
US 2002/0070338(Loboda)は、比較的に高速なイオン移動度分析計が比較的に遅い四重極マスフィルタに結合可能にするようにイオン移動度分析計と四重極マスフィルタとの間にインターフェースを提供すること及びイオン移動度分析計から出射するイオン群を異なる通過時間でインターフェースを通って輸送するように配置することを開示していない。
【0018】
本発明のこの好適な実施形態は、イオン移動度装置の高速分離タイムスケールに関連した欠点のいくつかを緩和し、かつ特に比較的に高速セパレータなどのイオン移動度分析計またはセパレータ装置(または他のセパレータ)が四重極マスフィルタなどのより遅い装置とインターフェース接続することを可能にする。
【0019】
対象イオンについて最適化されたイオン移動度分離タイムスケールは、既存及び将来のイオン移動度分析計またはセパレータを利用した計測器に対して実施可能な新規の動作モードである。
【0020】
本発明によって、イオン移動度別に分離され、次いで、質量電荷比別に濾過されるイオンの実験的タイムスケールを、システム全体としての性能を改善するように変更することが可能になる。
【0021】
本発明は、四重極ロッドセットマスフィルタが他のイオン光学装置または構成要素によって置き換えられる他の実施形態に拡張され得る。このイオン光学装置または構成要素は、上流セパレータによって時間的に分離される接近して溶離している2つのイオンの分離時間よりも遅い応答時間を有することが好ましい。しかたがって、四重極ロッドセットマスフィルタの提供は望ましいことであるが本発明にとって不可欠ではないことが理解されるべきである。
【0022】
本発明の一態様によると、イオンを分析するための分析装置であって、
物理化学的特性に基づいてイオンを分離するためのセパレータと、
インターフェースと、
(i)該セパレータから出射する第1のイオン群を第1の通過時間t1で該インターフェースを通って輸送し、かつ
(ii)該セパレータから引き続いて出射する第2のイオン群を第2の異なる通過時間t2で該インターフェースを通って輸送するように配置及び適合される制御システムと、を備える該分析装置が提供される。
【0023】
該物理化学的特性は、好ましくは、イオン移動度または微分型イオン移動度を含む。
【0024】
該セパレータは、好ましくは、イオン移動度セパレータまたは微分型イオン移動度セパレータを備える。
【0025】
該物理化学的特性は、好ましくは、質量または質量電荷比を含む。
【0026】
該セパレータは、好ましくは、飛行時間領域を含む。
【0027】
該制御システムは、好ましくは、該第2のイオン群を通過時間t2で該インターフェースを通って輸送するように配置及び適合され、t2>t1である。
【0028】
該インターフェースは、好ましくは、1つ以上のイオンガイドであって、それぞれのイオンガイドが複数の電極を備える、1つ以上のイオンガイドを備える。
【0029】
該制御システムは、好ましくは、該第1のイオン群が第1の速度で該1つ以上のイオンガイドに沿って並進されるように1つ以上の過渡直流電圧または電位を該複数の電極に印加するように更に配置及び適合される。
【0030】
該制御システムは、好ましくは、該第2のイオン群が第2の異なる速度で該1つ以上のイオンガイドに沿って並進されるように1つ以上の過渡直流電圧または電位を該複数の電極に印加するように更に配置及び適合される。
【0031】
該第2の速度は、好ましくは、該第1の速度よりも遅い。
【0032】
該制御システムは、好ましくは、該第1のイオン群が第1の速度で該1つ以上のイオンガイドに沿って付勢されるように該1つ以上のイオンガイドに沿って第1の直流電圧または電位勾配を第1の時点において維持するように更に配置及び適合される。
【0033】
該制御システムは、好ましくは、該第2のイオン群が第2の異なる速度において該1つ以上のイオンガイドに沿って付勢されるように該1つ以上のイオンガイドに沿って第2の直流電圧または電位勾配を第2のより後の時点において維持するように更に配置及び適合される。
【0034】
該第2の直流電圧または電位勾配は、好ましくは、該第1の直流電圧または電位勾配未満である。
【0035】
該分析装置は、好ましくは、該インターフェースの下流に配置されたフィルタを更に備える。該フィルタは、好ましくは、質量または質量電荷比フィルタを備える。該フィルタは、好ましくは、四重極ロッドセット質量または質量電荷比フィルタを備える。
【0036】
該制御システムは、好ましくは、
(i)該質量または質量電荷比フィルタにより、第1の質量または質量電荷比の範囲内に質量または質量電荷比を有するイオンを輸送させ、次いで
(ii)該質量または質量電荷比フィルタにより、第2の異なる質量または質量電荷比の範囲内で質量または質量電荷比を有するイオンを輸送させるように更に配置及び調節される。
【0037】
該フィルタは、好ましくは、イオン移動度または微分型イオン移動度フィルタを備える。
【0038】
該制御システムは、好ましくは、
(i)該イオン移動度または微分型イオン移動度フィルタにより、第1のイオン移動度または微分型イオン移動度の範囲内でイオン移動度または微分型イオン移動度を有するイオンを輸送させ、次いで、
(ii)該イオン移動度または微分型イオン移動度フィルタにより、第2の異なるイオン移動度または微分型イオン移動度の範囲内でイオン移動度または微分型イオン移動度を有するイオンを輸送させるように更に配置及び調節される。
【0039】
該制御システムは、好ましくは、該セパレータ内でイオンの単一の分離サイクル内または単一の分離サイクル中に、該セパレータから出射する該第1のイオン群を第1の通過時間t1で該インターフェースを通って輸送するように及び該セパレータから引き続いて出射する該第2のイオン群を第2の異なる通過時間t2で該インターフェースを通って輸送するように配置及び適合される。
【0040】
本発明の一態様によると、前述のような分析装置を備える質量分析計が提供される。
【0041】
本発明の一態様によると、イオンを分析する方法であって、
セパレータ内で物理化学的特性に基づいてイオンを分離することと、
1つ以上のイオンガイドであって、それぞれのイオンガイドが該インターフェースの下流に配置される複数の電極及び四重極ロッドセット質量または質量電荷比フィルタを備える、1つ以上のイオンガイドを備える、インターフェースを提供することと、
該セパレータから出射する第1のイオン群を第1の通過時間t1で該インターフェースを通って、輸送することと、
該セパレータから引き続いて出射する第2のイオン群を第2の異なる通過時間t2で該インターフェースを通って輸送することと、を含む該方法が提供される。
【0042】
該セパレータから出射する該第1のイオン群を第1の通過時間t1で該インターフェースを通って輸送する工程、及び該セパレータから引き続いて出射する該第2のイオン群を第2の異なる通過時間t2で該インターフェースを通って輸送する工程は、好ましくは、該セパレータ内でイオンの単一の分離サイクル内または単一の分離サイクル中に行われる。
【0043】
本発明の一態様によると、前述の方法を含む質量分析方法が提供される。
【0044】
本発明の一態様によると、イオンを分析する分析装置であって、
物理化学的特性に基づいてイオンを分離するためのセパレータと、
インターフェースと、
(i)該セパレータから出射する第1のイオン群を第1の通過時間t1で該インターフェースを通って第1のイオン経路を介して通って輸送し、かつ
(ii)該セパレータから引き続いて出射する第2のイオン群を第2の異なる通過時間t2で該インターフェースを通って第2の異なる(例えば、より長い)イオン経路を介して輸送するように配置及び適合される、制御システムと、を備える分析装置が提供される。
【0045】
該制御システムは、好ましくは、該セパレータ内でイオンの単一の分離サイクル内または単一の分離サイクル中に、該セパレータから出射する該第1のイオン群を第1の通過時間t1で該インターフェース通って第1のイオン経路を介して輸送し、かつ該セパレータから引き続いて出射する第2のイオン群を第2の異なる通過時間t2で該インターフェースを通って第2の異なる(例えばより長い)イオン経路を介して輸送するように配置及び適合される。
【0046】
本発明の一態様によると、イオンを分析する方法であって、
セパレータ内で物理化学的特性に基づいてイオンを分離することと、
インターフェースを提供することと、
該セパレータから出射する第1のイオン群を第1の通過時間t1でインターフェースを通って第1のイオン経路を介して輸送することと、
該セパレータから引き続いて出射する第2のイオン群を第2の異なる通過時間t2で該インターフェースを通って第2の異なる(例えばより長い)イオン経路を介して輸送することと、を含む該方法が提供される。
【0047】
該セパレータから出射する該第1のイオン群を第1の通過時間t1で該インターフェースを通って第1のイオン経路を介して輸送する工程、及び該セパレータから引き続いて出射する第2のイオン群を第2の異なる通過時間t2で該インターフェース通って第2の異なる(例えばより長い)イオン経路を介して輸送する工程が、好ましくは、該セパレータ内でイオンの単一の分離サイクル内または単一の分離サイクル中に行なわれる。
【0048】
本発明の一態様によると、イオンを分析する分析装置であって、
物理化学的特性に基づいてイオンを分離するためのセパレータと、
インターフェースと、
該セパレータ内でイオンの単一の分離サイクル内で、該セパレータから出射する第1のイオン群を第1の通過時間t1で該インターフェースを通って輸送し、かつ該セパレータから引き続いて出射する第2のイオン群を第2の異なる通過時間t2で該インターフェースを通って輸送するように配置及び適合される制御システムと、を備える該分析装置が提供される。
【0049】
本発明の一態様によると、イオンを分析する方法であって、
セパレータ内で物理化学的特性に基づいてイオンを分離することと、
インターフェースを提供することと、
該セパレータ内でイオンの単一分離サイクル中に、該セパレータから出射する第1のイオン群を第1の通過時間t1で該インターフェースを通って輸送すること、及び該セパレータから引き続いて出射する第2のイオン群を第2の異なる通過時間t2で該インターフェースを通って輸送することと、を含む該方法が提供される。
【0050】
一実施形態によると、該質量分析計は、
(a)(i)エレクトロスプレーイオン化(ESI)イオン源、(ii)大気圧光イオン化(APPI)イオン源、(iii)大気圧化学イオン化(APCI)イオン源、(iv)マトリックス支援レーザー脱離イオン化(MALDI)イオン源、(v)レーザー脱離イオン化(LDI)イオン源、(vi)大気圧イオン化(API)イオン源、(vii)シリコン基板上脱離イオン化(DIOS)イオン源、(viii)電子衝撃(EI)イオン源、(ix)化学イオン化(CI)イオン源、(x)電界イオン化(FI)イオン源、(xi)電界脱離(FD)イオン源、(xii)誘導結合プラズマ(ICP)イオン源、(xiii)高速原子衝撃(FAB)イオン源、(xiv)液体二次イオン質量分析(LSIMS)イオン源、(xv)脱離エレクトロスプレーイオン化(DESI)イオン源、(xvi)ニッケル63放射性イオン源、(xvii)大気圧マトリクス支援レーザー脱離イオン化イオン源、(xviii)サーモスプレーイオン源、(xix)大気サンプリンググロー放電イオン化(「ASGDI」)イオン源、(xx)グロー放電(「GD」)イオン源、(xxi)インパクタイオン源、(xxii)リアルタイム直接分析(「DART」)イオン源、(xxiii)レーザースプレーイオン化(「LSI」)イオン源、(xxiv)ソニックスプレーイオン化(「SSI」)イオン源、(xxv)マトリックス支援インレットイオン化(「MAII」)イオン源、及び(xxvi)溶媒支援インレットイオン化(「SAII」)イオン源から成る群から選択されたイオン源、ならびに/あるいは
(b)1つ以上の連続またはパルス化イオン源、ならびに/あるいは
(c)1つ以上のイオンガイド、ならびに/あるいは
(d)1つ以上のイオン移動度分離装置及び/または1つ以上の非対称電場イオン移動度分析計デバイス、ならびに/あるいは
(e)1つ以上のイオントラップまたは1つ以上のイオン捕捉領域、ならびに/あるいは
(f)(i)衝突誘起解離(「CID」)フラグメンテーションデバイス、(ii)表面誘起解離(「SID」)フラグメンテーションデバイス、(iii)電子移動解離(「ETD」)フラグメンテーションデバイス、(iv)電子捕獲解離(「ECD」)フラグメンテーションデバイス、(v)電子衝突または衝撃解離フラグメンテーションデバイス、(vi)光誘起解離(「PID」)フラグメンテーションデバイス、(vii)レーザー誘起解離フラグメンテーションデバイス、(viii)赤外放射誘起解離デバイス、(ix)紫外放射誘起解離デバイス、(x)ノズル−スキマー間インターフェースフラグメンテーションデバイス、(xi)インソースフラグメンテーションデバイス、(xii)インソース衝突誘起解離フラグメンテーションデバイス、(xiii)熱または温度源フラグメンテーションデバイス、(xiv)電界誘起フラグメンテーションデバイス、(xv)磁場誘起フラグメンテーションデバイス、(xvi)酵素消化または酵素分解フラグメンテーションデバイス、(xvii)イオン−イオン反応フラグメンテーションデバイス、(xviii)イオン−分子反応フラグメンテーションデバイス、(xix)イオン−原子反応フラグメンテーションデバイス、(xx)イオン−準安定イオン反応フラグメンテーションデバイス、(xxi)イオン−準安定分子反応フラグメンテーションデバイス、(xxii)イオン−準安定原子反応フラグメンテーションデバイス、(xxiii)イオンを反応させて付加イオンまたは生成イオンを形成するイオン−イオン反応デバイス、(xxiv)イオンを反応させて付加イオンまたは生成イオンを形成するイオン−分子反応デバイス、(xxv)イオンを反応させて付加イオンまたは生成イオンを形成するイオン−原子反応デバイス、(xxvi)イオンを反応させて付加イオンまたは生成イオンを形成するイオン−準安定イオン反応デバイス、(xxvii)イオンを反応させて付加イオンまたは生成イオンを形成するイオン−準安定分子反応デバイス、(xxviii)イオンを反応させて付加イオンまたは生成イオンを形成するイオン−準安定原子反応デバイス、及び(xxix)電子イオン化解離(「EID」)フラグメンテーションデバイスからなる群から選択される1つ以上の衝突、フラグメンテーションまたは反応セル、ならびに/あるいは
(g)(i)四重極質量分析器、(ii)二次元または線形四重極質量分析器、(iii)ポールまたは三次元四重極質量分析器、(iv)ペニングトラップ質量分析器、(v)イオントラップ質量分析器、(vi)磁場型質量分析器、(vii)イオンサイクロトロン共鳴(「ICR」)質量分析器、(viii)フーリエ変換イオンサイクロトロン共鳴(「FTICR」)質量分析器、(ix)静電またはオービトラップ質量分析器、(x)フーリエ変換静電またはオービトラップ質量分析器、(xi)フーリエ変換質量分析器、(xii)飛行時間質量分析器、(xiii)直交加速式飛行時間質量分析器、及び(xiv)直線加速式飛行時間質量分析器からなる群から選択される質量分析器、ならびに/あるいは、
(h)1つ以上のエネルギー分析器または静電エネルギー分析器、ならびに/あるいは
(i)1つ以上のイオン検出器、ならびに/あるいは
(j)(i)四重極マスフィルタ、(ii)二次元または線形四重極イオントラップ、(iii)ポールまたは三次元四重極イオントラップ、(iv)ペニングイオントラップ、(v)イオントラップ、(vi)磁場型マスフィルタ、(vii)飛行時間マスフィルタ、及び(viii)ウィーンフィルタから成る群から選択される1つ以上のマスフィルタ、ならびに/あるいは
(k)イオンをパルス状にするためのデバイスまたはイオンゲート、ならびに/あるいは
(l)実質的に連続したイオンビームをパルス化したイオンビームに変換するデバイスをさらに備えてもよい。
【0051】
質量分析計は、
(i)Cトラップ、及びクアドロ対数電位分布を有する静電場を形成する外側腹状電極及び同軸内側スピンドル状電極を備える質量分析器を更に備えてよく、第1の動作モードにおいて、イオンがC−トラップに移送された後、質量分析器に注入され、第2の動作モードにおいて、イオンはC−トラップに移送された後、衝突セルまたは電子移動解離デバイスに移送されて、そこで少なくとも一部のイオンが断片化されてフラグメントイオンとなり、次に、フラグメントイオンはC−トラップに移送されてから質量分析器に注入され、ならびに/あるいは
(ii)複数の電極を含む積層リングイオンガイドであって、各電極は、使用時に移送されるイオンが通過する開口を有し、イオン経路の長さに沿って電極の間の間隔が増加する積層リングイオンガイドをさらに備えてもよい。イオンガイドの上流部における複数の電極のそれぞれの開口は第1の直径を有しともよく、イオンガイドの下流部における複数の電極のそれぞれの開口は、第1の直径よりも小さい第2の直径を有してもよい。使用時に、連続する電極にACまたはRF電圧の反対の位相が印加される、積層リングイオンガイドのいずれかを更に備えてよい。
【0052】
実施形態によると、質量分析計はACまたはRF電圧を複数の電極に供給するように配置及び適合されるデバイスを更に備える。ACまたはRF電圧は、好ましくは、(i)<50Vピーク・トゥ・ピーク、(ii)50〜100Vピーク・トゥ・ピーク、(iii)100〜150Vピーク・トゥ・ピーク、(iv)150〜200Vピーク・トゥ・ピーク、(v)200〜250Vピーク・トゥ・ピーク、(vi)250〜300Vピーク・トゥ・ピーク、(vii)300〜350Vピーク・トゥ・ピーク、(viii)350〜400Vピーク・トゥ・ピーク、(ix)400〜450Vピーク・トゥ・ピーク、(x)450〜500Vピーク・トゥ・ピーク、及び(xi)>500Vピーク・トゥ・ピークから成る群から選択される振幅を有する。
【0053】
ACまたはRF電圧は、好ましくは、(i)<100kHz、(ii)100〜200kHz、(iii)200〜300kHz、(iv)300〜400kHz、(v)400〜500kHz、(vi)0.5〜1.0MHz、(vii)1.0〜1.5MHz、(viii)1.5〜2.0MHz、(ix)2.0〜2.5MHz、(x)2.5〜3.0MHz、(xi)3.0〜3.5MHz、(xii)3.5〜4.0MHz、(xiii)4.0〜4.5MHz、(xiv)4.5〜5.0MHz、(xv)5.0〜5.5MHz、(xvi)5.5〜6.0MHz、(xvii)6.0〜6.5MHz、(xviii)6.5〜7.0MHz、(xix)7.0〜7.5MHz、(xx)7.5〜8.0MHz、(xxi)8.0〜8.5MHz、(xxii)8.5〜9.0MHz、(xxiii)9.0〜9.5MHz、(xxiv)9.5〜10.0MHz、及び(xxv)>10.0MHzから成る群から選択される周波数を有する。
【0054】
該質量分析計はまた、イオン源の上流にクロマトグラフィまたは他の分離装置を備えてよい。一実施形態によると、クロマトグラフィ分離装置は、液体クロマトグラフィまたは気体クロマトグラフィ装置を備えてよい。別の実施形態によると、分離装置は、(i)キャピラリ電気泳動(「CE」)分離装置、(ii)キャピラリエレクトロクロマトグラフィ(「CEC」分離装置、(iii)実質的に剛性セラミック系多層マイクロ流体基板(「セラミックタイル」)分離装置、または(iv)超臨界流体クロマトグラフィ分離装置を備えてよい。
【0055】
イオンガイドは、好ましくは、(i)<0.0001mbar、(ii)0.0001〜0.001mbar、(iii)0.001〜0.01mbar、(iv)0.01−0.1mbar、(v)0.1〜1mbar、(vi)1〜10mbar、(vii)10〜100mbar、(viii)100〜1000mbar、及び(ix)>1000mbarから成る群から選択された圧力に維持される。
【図面の簡単な説明】
【0056】
本発明の様々な実施形態は、ここで、一例としてのみ及び添付図面を参照して記載されることになる。
【0057】
図1】イオン移動度分析計またはセパレータ装置と、インターフェースまたは移送装置と、四重極ロッドセットマスフィルタと、ガスセルと、直交加速式飛行時間質量分析器と、を備える本発明の一実施形態に係る質量分析計を示している。
図2図1に示す位置A、B、及びDにおけるイオン移動度実験の開始に関して2つの目的とするイオンの時間的分離を示している。
図3】イオン移動度分析計またはセパレータ装置を用いたイオンの分離間のタイムスケールの差及び四重極マスフィルタを切り換える能力が、単離段階の効果を制限できる様子を示している。
図4】本発明の好適な実施形態に従ってインターフェースまたは移送領域を通ってイオンの通過時間を増大させる効果を示している。
図5】ガスセルの出口において分離された2成分を示す。
図6】ガスセルが、一実施形態により、ダイナミックレンジを改善するためにIMSピークの忠実度の若干の喪失を許容するように構成され得る様子を示している。
図7】イオンゲートがインターフェースまたは移送装置の上流に提供される更なる実施形態を示す。
【発明を実施するための形態】
【0058】
図1は本発明一実施形態に係るIMS−Q−ToF質量分析計の簡略模式図を示す。この質量分析計は、イオン移動度セパレータ(「IMS」)2と、インターフェースまたは移送装置3と、四重極ロッドセットマスフィルタ4と、ガスまたは反応セル5と、直交加速式飛行時間質量分析器6と、を備える。様々な異なるタイプの実験は、この計測器ジオメトリを利用して行なわれてもよい。特に、好ましくは、イオン移動度分析計またはセパレータ装置2の下流に配置される四重極マスフィルタ4は特定の親または前駆イオンを選択するために利用されてよい。
【0059】
一実施形態によると、イオンはイオン移動度分析計またはセパレータ装置2においてそれらのイオン移動度に応じて分離されてよい。イオンは、次に、好ましくはインターフェース、移送装置または移送領域3を通って、好ましくは、分解能モードで動作するように配置される四重極マスフィルタ4まで搬送される。四重極マスフィルタ4は、好ましくは、イオン移動度分析計またはセパレータの単一サイクルまたは単一の分離サイクル内にイオン移動度分析計またはセパレータ装置2から溶離する目的とする成分間を切り換え、これによって改良された選択性(イオン移動度及び質量電荷比分離の部分的直交性質に起因)と更には改良されたデューティサイクル(四重極濾過前のイオンの時間的先行分離に起因)をもたらす。この取り組みは、目的とする成分の質量電荷比及びイオン移動度がライブラリ/方法展開段階から誘導される両方の対象実験及びまた質量電荷比及びイオン移動度が初期サーベイスキャンから誘導されるデータ依存式取得(「DDA」)のために標準MSMS取り組みに比べてかなりの改善をもたらす。
【0060】
図2は、単一の分離サイクル中に図1に示される質量分析計内での位置A、B及びDにおけるイオン移動度実験の開始に関して2つの目的とするイオンの時間的分離を示す。
【0061】
図2では、イオンが位置Aに到達するのにかかる時間はイオンの移動度によって決定される。このイオン移動度は2成分の時間的分離によって示されるような分離機構を提供する。この2つの目的とする成分はまた図2に示されるような異なる質量電荷比値を有する。ただし、位置Aにおいて、質量電荷比に基づいた分離はまだ発生していない。
【0062】
イオン移動度分析計またはセパレータ領域2を出ると、イオンは、好ましくは、インターフェースまたは移送領域3に入り、このインターフェースまたは移送領域3は、一実施形態によると、進行波イオンガイド(「TWIG」)を備えてもよい。このインターフェースまたは移送領域3は、好ましくは、イオン移動度分析計またはセパレータ装置2の圧力と四重極マスフィルタ4の圧力との間の中間圧力に維持される。この進行波イオンガイドは、好ましくは、位置Bにおける時間は更に進行波イオンガイドの長さ及び進行波の速度に関連している値T−Tだけ増大されるようにイオンを一定速度で搬送する。例えば、300m/sの進行波速度で動作される50mm長さの進行波イオンガイドは、約167μsの時間的シフトを導入するであろう。繰り返すが、計測器内のこの位置において質量電荷分離はまだ発生していない。
【0063】
この時点におけるイオンが成分1及び2に関連した及び成分1及び2と類似の時間においてフラグメントイオンを含み得るとはいえ、ガスセル5を通過するイオンが位置Dに到達するための類似の時間シフトが観察される。例示の目的でのみ、図2に示されるこの2成分は、フラグメンテーションを受けていない。位置Bと位置Cとの間にイオンが移動するにつれて、それらは好ましくは分解型四重極マスフィルタ4を通過し、好ましくは、近似の時間において成分1及び2の質量電荷比を順次に切り離して、これによって選択性及びデューティサイクルを改善する。
【0064】
上記の取り組みは従来のシステムに比べて重要な利点をもたらす。しかしながら、取り組みは、にもかかわらず、何らかの制限を受ける。本発明はこれらの制限のいくつかに対応するように努めている。
【0065】
図1を参照して前述したこの取り組み1つの欠点は、接近して溶離している2成分間のイオン移動度分析計またはセパレータ分離時間が、分解型四重極マスフィルタ4が2つの質量電荷比設定間を切り換えることができる速度よりもかなり短い点である。
【0066】
四重極マスフィルタ4が、異なる質量電荷比設定間を切り換えるのにかかる時間は、様々な電子部品の整定時間及び分解型四重極マスフィルタ4を通る飛行時間を含むいくつものパラメータに依存している。この切り換え時間の典型的な値は、1msのオーダーである。対照的に、リニアドリフト管イオン移動度分析計またはセパレータ装置を通る5msの公称通過時間を有し、かつ50(FWHM)の分解能で動作する2つのベースライン分解成分は、200μsのみによって時間通りに分離される可能性がある。したがって、四重極4がこのタイムスケールで質量電荷比輸送窓を切り換えられない可能性があることが明らかであろう。
【0067】
図3は、イオン移動度分析計またはセパレータ装置2間のタイムスケールの差及び四重極マスフィルタ4の切り換えがどのように単離段階の効果を制限するかをより詳細に示す。図3は、50(FWHM)の近似イオン移動度分析計またはセパレータ分解能において動作するシステムを示し、かつ5msの公称通過時間で位置B(すなわち、イオン移動度分析計またはセパレータ装置2の出口において)に到達する2成分を示す。しかしながら、2成分は実際には0.4msによって分離され、かつしたがって十分にベースライン分解される。四重極マスフィルタ4は、成分1の最後がイオン移動度分析計またはセパレータ装置2から溶離した直後の時間Tにおいて切り換えられる。しかしながら、四重極マスフィルタ4がこれらの2成分間で選択するために質量電荷比輸送窓を切り換えるのにかかる時間はTであり、かつ成分2が時間T+T前に四重極マスフィルタ4に到達することは図3から明らかである。その結果、マスフィルタ4が成分2に対応する質量電荷比を有するイオンを輸送するべく切り換えるのに十分な時間を持つ前に成分2はマスフィルタ4に到達することになる。結果として、成分2はマスフィルタ4によって前方へ輸送されないであろう。これは濾過または単離段階の分解能を事実上制限する。
【0068】
本発明の一実施形態によると、この取り組みに対する改善は、イオン移動度分析計またはセパレータ装置2と四重極マスフィルタ4との間にインターフェースまたは移送装置3を導入することにより及び単一の分離サイクル中にインターフェースまたは移送領域3を横切ってまたは通っての通過時間を変更することにより成分2を遅延することである。このことは、成分1が単一の分離サイクル中にインターフェースまたは移送装置3から排出したかまたは出射した後に、例えば、インターフェースまたは移送イオンガイド3に適用された進行波の速度を変更(すなわち、低減)することによって達成され得る。
【0069】
図4は、成分1がインターフェースまたは移送進行波イオンガイド3を排出した後インターフェースの電極に適用された進行波の速度を300m/sから60m/sまで低減することの効果を示す。50mmの長さを有する移送進行波イオンガイド3について、成分2がインターフェースまたは移送進行波イオンガイド3を横断する通過時間は833μsだけ増大される。このシフトまたは通過時間の増大によって、四重極マスフィルタ4が切り換えて、かつ整定するのに十分な時間を持った後に成分2が四重極マスフィルタ4に到達することが確実になる。これによって成分2の前方への送信を確実にさせる。この場合、単離段階の分解能はここでインターフェースまたは移送装置3を通る通過時間に関連している。
【0070】
一定のイオン移動度分析計またはセパレータ分解能に対して時間内での分離が、関係式T=A×Kにおける次数(X)に依存する進行波に基づいたイオン移動度分析計またはセパレータ装置などのリニアドリフト管を用いないイオン移動度分析計またはセパレータ計測器についてかなり異なり得ることは注目するに値する、ここにTがドリフト時間であり、Kが移動度であり、かつAは定数である。この差は前述の四重極切り換え制限の効果を支援するかまたは妨害し得る。
【0071】
図3を参照して前述した取り組み第2の欠点は、任意の成分の時間圧縮及びイオン検出システムデジタル化の限られた強度スケールに起因してイオン移動度分離がやはりMS−Q−ToF質量分析計のイオン検出器システムのダイナミックレンジに対してかなりの制限を導入することである。
【0072】
図5は、図1の位置Dにおいて、すなわちガスセル5の出口おいてIMS−質量電荷比空間においてうまく分離されかつ単離された2成分を示す。
【0073】
更なる実施形態によると、ガスセル5は図6に示されるようなイオン移動度分析計またはセパレータピークの忠実度のある程度の喪失を許容するように構成されてよい。その結果、相当数の直交加速式飛行時間押し出しが、成分を分析するために現在使用されている。Tこれはシステムのダイナミックレンジを有利に増大させる。忠実度の喪失の程度の選択を2成分の分離の程度に基づかせることができる。
【0074】
上記の両方の例において、2成分の選択は記述的な目的のみである。実際問題として、2つを超える成分は分離または分解能などに応じて選択されてよい。
【0075】
前方に透過しているイオンは、フラグメンテーション、質量測定またはイオン移動度測定、その他などの分析手法に従ってよい。
【0076】
この記載された取り組みは、他の高速前置四重極セパレータイオントラップ及び質量電荷比セパレータなどとともに適用される更なる実施形態が想到される。
【0077】
別の余り好適でない実施形態によると、通過時間遅れを切り換える代わりに、イオンは代替的に空間内で、異なる移送装置であって、それぞれが異なる有効通過時間を有する移送装置へ切り換えられてよい。
【0078】
別の実施形態によると、軸方向磁場などの進行波以外の取り組みを利用する移送装置3が使用されてよい。
【0079】
他の計測器改善は好ましい実施形態に係る取り組みを介してアクセスすることができる。例えば、成分は、過剰分離されるならば、遅れずに共に押し出されることができ、イオン移動度分析計またはセパレータのより短いサイクル時間を許容し、よって究極的に前置イオン移動度分析計またはセパレータアキュムレータにおける空間電荷効果を低減させる。
【0080】
遅延シフトは、イオン移動度分析計またはセパレータ装置2と同じ圧力で動作する装置によって導入されてよい。
【0081】
この遅延シフトはまた、イオン移動度分析計またはセパレータ装置2それ自身のパラメータを変更することによって導入されることができる。
【0082】
時間軸の連続延長は、走査四重極マスフィルタ4がイオン移動度分析計またはセパレータ装置2から溶離しているイオンを追跡する能力を改善するかまたは、例えば、直交加速式飛行時間質量分析器6によるイオン移動度分析計またはセパレータ装置2のデジタル化を改善するように進行波速度を連続的にかつ単調に遅らせることによって実現され得る。
【0083】
長さの関数として変動する通過速度を有する移送装置3とともに蓄積領域を有する移送装置が利用され得る。
【0084】
四重極マスフィルタ4は、好ましくは、時間及び質量電荷比の両方において単離を提供する。しかしながら、実際問題として、異なる装置は時間単離(例えば、イオンゲート7)及び質量電荷比単離(例えば、四重極マスフィルタ4)を提供するために使用されてよい。図7はこのタイプの幾何形状の一例の模式図を示す。
【0085】
図7に示す実施形態において、目的とする成分を含む領域に対応する時間領域はイオンゲート7によって選択される。このイオンゲート7はイオン移動度分析計またはセパレータ装置2または移送装置3の一部であってよい、そして例示のみの目的で別体の構成要素として図7に示される。この時間選択領域は、次いで、移送進行波イオンガイド3によって仕切られ、かつ分解型四重極マスフィルタ4への効率的な送達を可能にするように目的とする成分が移送進行波イオンガイド3を通過するにつれてそれらの時間的分離が調節されてよい。先述した蓄積領域を有する位置依存進行波速度進行波イオンガイドはこの取り組みにとって特に有益である。
【0086】
本発明は好適な実施形態を参照して記載されたが、添付の特許請求の範囲に明記されている本発明の範囲を逸脱することなく形態及び細部の様々な変更がなされ得ることが当業者によって理解されるであろう。
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7