特許第6389482号(P6389482)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6389482
(24)【登録日】2018年8月24日
(45)【発行日】2018年9月12日
(54)【発明の名称】傾斜ステント
(51)【国際特許分類】
   A61F 2/82 20130101AFI20180903BHJP
   A61F 2/915 20130101ALI20180903BHJP
【FI】
   A61F2/82
   A61F2/915
【請求項の数】3
【全頁数】15
(21)【出願番号】特願2015-562505(P2015-562505)
(86)(22)【出願日】2014年3月13日
(65)【公表番号】特表2016-509943(P2016-509943A)
(43)【公表日】2016年4月4日
(86)【国際出願番号】IB2014059730
(87)【国際公開番号】WO2014141126
(87)【国際公開日】20140918
【審査請求日】2017年3月7日
(31)【優先権主張番号】13/826,399
(32)【優先日】2013年3月14日
(33)【優先権主張国】US
(73)【特許権者】
【識別番号】515247772
【氏名又は名称】イシンガー,トーマス
(74)【代理人】
【識別番号】100077861
【弁理士】
【氏名又は名称】朝倉 勝三
(72)【発明者】
【氏名】イシンガー,トーマス
(72)【発明者】
【氏名】ソーラー,ロナルド・ジェイ
(72)【発明者】
【氏名】リーバー,グレン
【審査官】 川島 徹
(56)【参考文献】
【文献】 米国特許第05893887(US,A)
【文献】 特表2010−504142(JP,A)
【文献】 特表2012−526601(JP,A)
【文献】 米国特許出願公開第2007/0021816(US,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A61F 2/82
A61F 2/915
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
チューブ状のステントであって、
拡張可能なステント壁と、該ステントの両端の間に延出する長手軸とを含み、
前記チューブ状ステントの拡張に際に、該ステントの両端のうち少なくとも1端が前記長手軸に対して直角をなす面に対して傾斜した角度をもつように形成されてなり、
前記拡張可能なステント壁は、本体部と端部とよりなり、該本体部はその枠体部材を有するとともに該端部はその枠体部材を有し、該端部の枠体部材は該本体部の枠体部材とは異なる形状を有してなり、
前記端部が、
三角形中央部材を備え、該三角形中央部材が、第1脚部及び第2脚部とを有する基端側端部と、該中央部材の頂部を有する先端側端部とを有することと、
前記三角形中央部材の上方に位置するとともに長手方向に沿って正弦曲線を描く第1の枠体部材(168)を備え、該第1の枠体部材は、基端側端部(172)と先端側端部(174)とを有することと、
前記三角形中央部材の下方に位置するとともに長手方向に沿って正弦曲線を描く第2の枠体部材(170)を備え、該第2の枠体部材は、基端側端部(173)と先端側端部(175)とを有することと、
前記三角形状中央部材に対してその先端部に位置する直線状枠体部材(176)を備え、該直線状枠体部材は、基端側端部(178)と先端側端部(180)とを有することと、よりなり、
前記三角形中央部材の基端側端部の該第1及び第2の脚部は、前記本体部の枠体部材に接続されるとともに、前記三角形中央部材の先端側端部は、前記直線状枠体部材(176)の基端側端部(178)に接続され、
前記長手方向に沿って正弦曲線を描く該第1及び第2の枠体部材(168,170)のそれぞれの基端側端部(172,173)は、前記本体部の枠体部材に接続されるとともに、前記長手方向に沿って正弦曲線を描く該第1及び第2の枠体部材のそれぞれの先端側端部(174,175)は、前記直線状枠体部材(176)の先端側端部(180)に接続されてなる、チューブ状ステント。
【請求項2】
チューブ状のステントであって、
拡張可能なステント壁と、該ステントの両端の間に延出する長手軸とを含み、
前記チューブ状ステントの拡張に際に、該ステントの両端のうち少なくとも1端が前記長手軸に対して直角をなす面に対して傾斜した角度をもつように形成されてなり、
前記拡張可能なステント壁は、本体部と端部とよりなり、該本体部はその枠体部材を有するとともに該端部はその枠体部材を有し、該端部の枠体部材は該本体部の枠体部材とは異なる形状を有してなり、
前記端部は、
長手方向に沿って正弦曲線を描く第1の外縁枠部(368)と、
長手方向に沿って正弦曲線を描く第2の外縁枠部(370)と、
基端側頂部と先端側頂部とを含む軸方向に沿って正弦曲線を描く部材(341)と、該部材は前記第1及び第2の外縁枠部の間に挟まれていることと、
軸方向に沿って正弦曲線を描く終端部片(356)と、
よりなり、
該終端部片(356)は、
前記軸方向に沿って正弦曲線を描く部材(341)の振幅よりも短い振幅を有する多重正弦曲線部(340)と、
該終端部片の一対の脚部(354)と、よりなり、
前記長手方向に沿って正弦曲線を描く第1の外縁枠部(368)は、前記終端部片の前記一対の脚部の一方に接続され、
前記長手方向に沿って正弦曲線を描く第2の外縁枠部(370)は、前記終端部片の前記一対の脚部の他方に接続されてなる、チューブ状ステント。
【請求項3】
前記本体部の枠体部材は、該長手軸の方向において基端側頂部と先端側頂部を有し、環状に配置され軸方向に沿って正弦曲線を描く枠体部材であり、該枠体部材は互いに近接した環状リングを形成し、第1の環状リングが接続部材を介して第2の環状リングに接続され、該第1の環状リングの先端側頂部を該第2の環状リングの基端側頂部に取り付けてなる、請求項1又は2に記載のチューブ状ステント。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、分岐部分を処理するために使用されるチューブ状ステントに係り、特に、拡張状態ないし膨張状態において該ステントの少なくとも一端が該ステントの長手軸に対して直角をなす面に対してある角度を占める傾斜ステントに関する。
【背景技術】
【0002】
該ステントは、金属でできた人工器官、あるいは膨らんだ状態に拡張させるか、自動で拡張可能な人工器官、あるいはバルーンよりなる人工器官である。該ステントは、中空の器管、特に血管における病的部分の拡張や足場形成のために使用され、それには心臓カテーテル法や血管形成術による施術で使用されるカテーテルの技術が適用される。そして、該ステントは、ワイヤー状の材料から成るか、あるいはレーザ切断技術又はエッチングなどの他の技術によりチューブを切断して形成されるチューブ状のステントである。該ステントのチューブ状の壁を形成するワイヤー状メッシュ(網体)は、ステント材料をなす枠体とこれら枠体間に材料が存在しないギャップ(間隙)より成る。該枠体は一般に円周方向及び長手方向における洞波形の変化、又はダイヤモンド状ないし菱形の外形あるいは種々形状の組み合わせを呈する。
【0003】
もし、病変部が血管の分岐部分ないしその近傍、すなわち、血管の主枝から離れた側枝の根元のところにある場合、バルーン血管形成術が施され、恒久的に、あるいは一定の期間(即ち、生体吸収可能なステントの使用により)拡張した部分に足場をかけることにより、緊急でその後の血管開存を維持するために拡張した部分に拡張後、ステントが配置される。該ステントには更に、再狭窄を抑制する薬剤を塗布してもよい。又、該ステントは、前もってのバルーンによる拡張あるいはカテーテルベースの予備処置なしに主たる治療として配置されることもある。該ステントはターゲットとする病変部を完全に覆わなければならず、場合によっては、緊急でその後の血管の開存のために該ステントの機能を十分に使用するために、該病変部分を越えて非病変部ないし病変状態の少ない領域にまで達する必要がある。従って、分岐部においては血管の側枝の小孔を覆わなければならない。血管の側枝の小孔は、該側枝が例えば40°―60°程度の、90°より小さい角度で分岐しているので、その横断面は該側枝の長手軸に対して直角になっていない。従って、一般的なステントでは、上述した領域を十分に覆うことが出来ない不具合がある。
【0004】
分岐部又は小孔部のためのステント及び、かかるステントを配置するためのカテーテルについての種々の問題点を解決する措置が開示されている。発明者シュムレビッツ(Shumulevitz)の米国特許公開第20050222672号には、自力で自動拡張可能なステントが開示されており、該ステントはその圧縮のための引き込み可能なさや状部材と軸部分と蓋部分で覆われた構成である。該ステントは血管等の主枝内に導入するとともに血管等の側枝に向かう分岐領域の隆条部分と重なるためのドーナツ形構造と、スカート状端部とを有する。
【0005】
これと同様に、発明者ゴシュガリアン(Goshigarian)の米国特許公開第20050154447号には、スカート状端部を有する自動拡張可能なステントが開示されている。ここでは二重バルーン挿入法が用いられ、バルーンで拡張可能なステントが小孔に挿入される。該ステントの入口部開口径を拡大するために、即ち、入口部ステント部分をスカート状とするために、二重バルーンシステムの内の1つのバルーンが用いられる。
【0006】
上記の開示文献では、ステントの一部を血管等の側枝から主枝に、あるいは主枝から側枝へ突出させることなしに分岐部構造に適合する単一のステントの使用を示していない。むしろ、ここでは複数の突起部分及び/又はステントアセンブリあるいは組み合わせられた多重ステントが開示されている。
【0007】
更に、もし、血管等の側枝の小孔に橋掛け(ブリッジ)を必要とする状態で主枝における病変部の処置に2つのステントが必要とされる場合、これらステントの突起部分が、金属の重なり、衝突及びステント枠体の変形を招く恐れがある。これが緊急でその後(長期間)の処置成功の機会を減らし、ステント内での血栓症形成の危険性が増すなどの近々の事態を引き起こしていた。
【0008】
発明者イシンガー(Ischinger)に付与された米国特許第6,682,556号には、側枝に傾斜したステントを配置するためのカテーテルが開示されている。しかしながら、このイシンガー特許には、分岐部分のステント処置の要件に合致して使用可能な傾斜したステントを特定したデザインは開示されていない。
【発明の概要】
【発明が解決しょうとする課題】
【0009】
本発明は、膨らんだ状態に拡張するに際して少なくとも1つの傾斜した端部を有するステントが必要とされる点に鑑み、該ステントのデザインならびに構造が、かかる傾斜した端部を備えるとともに分岐部分の血液処理に用いられて有用性を発揮するチューブ状ステントを提供することを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0010】
本発明の具体的構成において、本発明は、第1のステント端部と、第2のステント端部と、該第1のステント端部から第2のステント端部へ延出する長手軸と、該長手軸に沿って該第1のステント端部から第2のステント端部へ延出する拡張可能なステント壁とよりなるチューブ状ステントであり、該チューブ状ステントの拡張の際に該第1のステント端部が該長手軸に対して直角をなす面に対して傾斜した角度をもつように形成されることに特徴を有する。
【0011】
本発明の具体的構成における更なる特徴は、該ステントの第2のステント端部が該長手軸に直角をなす面に対して平行にも、あるいは傾斜した角度を占めることもできることである。該第1のステント端部及び/又は第2のステント端部は先端部分を斜めにカットした切頭状の傾斜端部とされる。上記構成は、該第1のステント端部が該長手軸に対して直角な面に対してある角度をもって切断された部分を有するとともに該長手軸に直角の面に対して平行に切断された切頭部を含む構成により達成される。又、上記構成は、代替構成ないしは追加構成の提案として、該拡張可能なステント壁が拡張しない外形状態においては傾斜せず、拡張した外形状態においては少なくとも1つの傾斜端部を含む構造になっていることにより達成される。該ステント壁は、頂部と底部とを有するとともに該ステント壁の拡張の際して該頂部が該底部より長いか、あるいはその逆の構造を備えることができる。
【0012】
本発明の具体的構成における更なる特徴は、該拡張可能はステント壁が互いに近接した多数の環状リングよりなり、これら各環状リングは長手軸に直角な面に対して傾斜した角度を占める構成とされる。又、他の具体的構成として、該拡張可能なステント壁は、複数の本部枠体部材を有する本体部と、複数の端部枠体部材を有する端部とを備え、該端部枠体部材が該本部枠体部材とは異なる構造を有する。又、他の具体的構成において、複数の該本部枠体部材は,環状に配置されるとともに軸方向に正弦曲線を描く枠体部材であり、該枠体部材は長手軸の方向に沿って基部側頂部及び先端側頂部を有する。該軸方向に沿って正弦曲線を描く複数の枠体部材は近接した環状リングを形成する。これら環状リングは,その第1の環状リングの先端側頂部を第2の環状リングの基部側頂部に取り付ける接続部材を介して互いに連結される構成とし得る。
【0013】
本発明の具体的構成例において、該端部は、第1及び第2の脚部を備えた基端部と、頂部を備えた先端部とを有する三角形状をなす中央部材と、基端部と先端部とを有し該三角形状をなす中央部材の上方に位置づけられる長手軸に沿って正弦曲線を描く第1の枠体部材と、基端部と先端部とを有し該三角形状をなす中央部材の下方に位置づけられる長手軸に沿って正弦曲線を描く第2の枠体部材と、該三角形状をなす中央部材に対してその先端部に位置するとともに三角形状の枠体部材の基端部及び先端部を有する直線状枠体部材とを備える。ここにおいて、該三角形状の中央部材の該第1及び第2の脚部は、本体部枠体部材に接続されるとともに、該三角形状の中央部材の先端部は該直線状の枠体部材の基端部に接続される。 又、 該長手軸に沿って正弦曲線を描く第1及び第2の枠体部材の基端部は、該本体部の枠体部材に接続されるとともに、該長手軸に沿って正弦曲線を描く該第1及び第2の枠体部材の先端部は、該直線状の枠体部材の先端部に接続される。
【0014】
本発明の具体的構成例において、該端部は、長手軸に沿って正弦曲線を描く第1の外端枠部と、長手軸に沿って正弦曲線を描く第2の外端枠部と、正弦曲線を描く部材の基端側頂部と先端側頂部とを有し、長手軸に沿って正弦曲線を描く該第1及び第2の外端枠部の間に挟まれた軸方向に沿って正弦曲線を描く部材と、軸方向に沿って正弦曲線を描く終端部片とよりなる。軸方向に沿って正弦曲線を描く該終端部片は、軸方向に沿って正弦曲線を描く部材の振幅よりも短い振幅を有する正弦曲線を描く多重部分と、該多重部分上にある終端部片の先端側頂部及び基端側頂部と、端部片の頂部脚と底部脚とよりなる。ここにおいて、該正弦曲線を描く部材の先端側頂部は、該終端部片の基端側頂部に接続され、長手軸に沿って正弦曲線を描く第1の外端部材は該端部片の頂部脚に接続され、長手軸に沿って正弦曲線を描く第2の外端部材は該端部片の底部脚と接続される。
【0015】
本発明の更なる具体的構成例において、該ステント壁は、第1枠体をなす底部と第2枠体をなす頂部とより構成される。ここにおいて、該底部は、該チューブ状ステントが拡張しない状態において第1の底部長さを有するとともに拡張する際に第2の底部長さを有する構成の長手軸に沿って収縮する枠体構造を備えている。該第2の底部長さは、長手軸に沿って伸縮するステントの構造により該第1の底部長さよりも短い。他方、該頂部は、長手軸に沿った長さを維持するステント構造であり、該チューブ状ステントが拡張しない状態において第1の頂部長さを有するとともに拡張する際に第2の頂部長さを有する。該第2の頂部長さは、長手軸に沿った長さを維持する該ステント構造のために、該第1の頂部長さを実質的に同一である。
【0016】
本願明細書において使用された技術用語は、特別の定義が無い場合は、すべて通常の当業者において共通に理解されるものである。又、ここに記載の方法や材料などの説明に関して使用する用語に類似ないし均等する異なる用語があり、用語解釈に疑義が生じた場合には、本願明細書全体において解釈されるべきである。更に、ここに記載の具体的構成例ないし実施態様は、本発明をより容易に理解するためのものであるが、本発明はこれらの記載に限定されるものではない。尚又、尚又、本発明は、単に例として添付図面を参照して説明されており、図面を参照しての実施形態の詳細な説明については、本発明の技術的思想の理解を助けるために有用なものとしてなされたものであり、これら実施形態が実際にどのように実施されるかは当業者にとって自明なものとなろう。
【図面の簡単な説明】
【0017】
図1A】血管の分岐部分に配置された拡張していない状態のステントの概略斜視図である。
図1A図1Aの状態からの動作変化を示す拡張していない状態のステントの概略斜視図である。
図2A】分岐した血管の枝部分に配置された傾斜ステントの概略図である。
図2B図2Aの要部拡大図である。
図2C図2A及び図2Aに示された分岐部分の説明図である。
図2D図2A及び図2Aに示された分岐部分の他の説明図である。
図3A】本発明の実施形態に係る先端部分を斜めにカットした切頭状に傾斜した端部を有する傾斜ステントを示す概略斜面図である。
図3B図3A図に示す傾斜ステントを異なる方向より見た概略斜視図である。
図4】本発明の実施形態に係る血管分岐部分の領域において血管の主枝に配置された2つの切頭状の傾斜ステントの概略図である。
図5A】本発明の実施形態に係る切頭状の傾斜ステントの概略正面図である。
図5B図5Aに示された切頭状の傾斜ステントの概略平面図である。
図6A】ステント壁の構造を示す傾斜していないステントの平面図である。
図6B】ステント壁の他の構造を示す傾斜していないステントの平面図である。
図6C】ステント壁の更に他の構造を示す傾斜していないステントの平面図である。
図7A図6A~6Cに示したステント構造を傾斜端部の形状に変更する場合の状態を説明する概略斜視図である。
図7B図7Aに示した傾斜端部を備えたステントの形状に対応したステント構造を示す概略平面図である。
図8】傾斜した基端部と垂直の先端部とを有する傾斜ステントの部分破断説明図である。
図9A】長手方向に沿って切断されたステント本体を備えた傾斜ステントを拡張しない状態で示す平面図である。
図9B図9Aに示す傾斜ステントの拡張した状態を表わす要部拡大図である。
図10A】長手方向に沿って切断されたステント本体を備えた切頭状の傾斜ステントを拡張しない状態で示す平面図である。
図10B図10Aに示す切頭状の傾斜ステントの拡張した状態を表わす要部拡大図である。
図11A】拡張していない状態の第1の形状を呈する傾斜ステントの概略図である。
図11B】拡張した状態の第2の形状を呈する傾斜ステントの概略図である。
図12A図11Aに示す第1の形状を呈するステントにステント構造を表した概略図である。
図12B図11Bに示す第2の形状を呈するステントにステント構造を表した概略図である。
図12C図12A及び12Bに示すステントの横断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0018】
以下、本発明の実施形態を図面を参照して説明するが、説明を簡略にするために図面に示す本発明の対象構成の寸法は原寸と相違する場合もあることを理解されたい。例えば、該構成の内のいくつかの部材の寸法は他に比して誇張して図示したり機能的にまとめて表わしたりした部分もある。又、図中の参照番号は、同様の機能を果たす部材に同じ番号を付したりなど同じ機能のものを1つに整理して図示したところも見られることを理解されたい。
【0019】
本発明は、膨らんだ状態になる拡張ないし膨張(以下、拡張とする)状態において少なくとも1つの傾斜端部を有するステントに関する。更に、本発明に係るカテーテルの構成の利点を以下に説明する。
【0020】
本発明の実施形態を詳細に説明する前に、本発明は図面を参照して以下に説明する実施形態の具体的な構成、部材形状などに限定されないことを理解されたい。本発明は、説明された実施形態の変形構成も包含される。又、説明に用いられる用語は、この説明の目的のために使用されるものであり、限定的に解釈されるべきでないことも理解されたい。
【0021】
図1A及び1Bにおいて、これらの図には、血管200の分岐部分202のところに配置された傾斜していない状態のステント10が示されている。尚、血管200は、血管以外の人体の器管をも包含する。203は、血管200の側枝204内の病変部を示す。傾斜していないステント10は、チューブ状ないしスリーブ状のステント本体11よりなり、該本体11は先端部開口14を有する先端部12と基端部開口18を有する基端部16とを備える。該ステント本体11は長手軸20に沿って基端部16から先端部12まで延出した態様で、概して、ステンレス鋼などの金属又は非金属材料で形成されるともに、バルーンの拡張あるいは他の拡張手段により柔軟に変形可能である。このステント本体11の構成として、該本体11は、「Nitinol」(商標)などの弾力的ないし柔軟に自動的に、あるいは自力により拡張ないし膨張可能な材料よりなる。該ステント10は、レーザ技術によりチューブを切断して形成、あるいはワイヤー状材料を特定の形状に折曲し半径方向ならびに長手方向に互いに取り付けて形成される。このような形成方法自体は公知である。
【0022】
傾斜していないステント10の先端部12及び基端部16は、共に長手軸20に対して直角ないし垂直に走る面内で切断される。図1Aに示すように、傾斜していないステント10が分岐部分202において血管200の側枝204に配置される場合、基端部16は血管200の主枝206内に突き出る。
しかしこれは、カテーテルが突出したステントを越えて主枝206に進出するのを妨げる恐れがある。更に、もしステントが主枝206内の病変部の処置のために側枝204の小孔を橋渡し(ブリッジ)する必要がある場合、側枝に突出したステントの部分が金属の重なり及び接触を導き、結果、ステント枠体の変形を招き、緊急でその後(長期間)の処置の成功を著しく損なう恐れがあり、又、ステント内に血栓を形成するリスクも増大するなどの懸念をもたらす。
【0023】
図1Bに示すように、もし主枝206への傾斜していないステントの突出を、側枝204における傾斜していないステント10の配置のみによって回避しようとすると、側枝204の一部が覆われない状態で残る。
【0024】
図2A−2Dは、傾斜したステント100を示し、該ステント100は血管200の枝部分に配置される。該傾斜ステント100はチューブ状ないしスリーブ状のステント本体111を備え、該本体111は先端部開口114を有する先端部112と基端部開口118を有する基端部116を有する。該ステント本体111は、長手軸120に沿って該基端部116から該先端部112まで延出するように走っている。該傾斜ステント100の先端部112と基端部116の少なくとも1つが、長手軸120に対して直角ないし垂直に走る面に対して角度をもって切断ないしカットされる。この傾斜した角度は0°−90°の範囲にあり、具体的構成例では、40°―60°が望ましい範囲として設定される。該傾斜したステント100の基端部116及び先端部112の内の一方が長手軸120に対して直角ないし垂直に走る面で切断ないしカットされる。このステント端部の形状については後述のように垂直端部124と称する。図2Aに示す例では、病変部203は側枝204内にあり、該傾斜ステント100はこの側枝204に配置される。図2Bに示す例では、該病変部203が主枝206にあり、該傾斜ステント100は主枝206内に配置される。図2C及び2Dに示す例では、多数の病変部203が側枝204の小孔を囲む領域において主枝206内にあり(図2C)、そして複数の傾斜ステント100が分岐部分202を囲む領域において該主枝206に配置される(図2D)。従って、図2A−2Dで示すように、傾斜端部122の傾斜構造が、側枝204へのステントの配置及び/又は分岐部分202における主枝206へのステントの配置を、より良好に対処するのに適用される。
【0025】
このようなステントについて、その原理的なものは開示されているが、該傾斜ステント100の製作に必要な具体的構造、側枝204から主枝206へ、あるいはその逆の方向へ突出する部分のリスクの最小化に必要な具体的構造については、未だ提案されるところがなかった。更に、これに適合した構造としては、傾斜ステント100を拡張した後に該傾斜端部における半径方向の支持力が十分に確保されることが必要とされるが、この点についての提案も見られなかった。
【0026】
図3A及び3Bには、本発明の実施形態に係る傾斜ステント300を示し、該ステント300が切頭状の傾斜端部ないし端面を備えた態様を夫々異なる2つの角度から見た斜視図で示されている。この切頭状傾斜ステント300では、該ステントの傾斜端部のところで追加的な支持を付与する構成になっている。該切頭状傾斜ステント300は基端部開口314を有する基端部312と、先端部開口318を有する先端部316と、該基端部312から先端部316に長手軸320に沿って延出したステント本体311とよりなる。 該基端部開口314は、該ステント本体311が円筒形をなしているので、おおむね円環状ないし楕円形をなす。この基端部開口314は長手軸320に対して直角ないし垂直の面内で切断ないしカットされ、ここに垂直端部324が形成される。切頭状傾斜ステント300の先端部316は長手軸320に対して直角ないし垂直の面に対して角度を持って部分的に切断ないしカットされ、ここに傾斜端部322が形成される。該傾斜端部322は、第1の先端部開口326と第2の先端部開口328よりなる。該第1の先端部開口326は長手軸320に対して直角ないし垂直の面に対して角度を持って切断ないしカットされ、該第2の先端部開口328は長手軸320に対して直角ないし垂直の面内で切断ないしカットされて形成されている。従って、該第2の先端部開口328は該傾斜端部322の切頭状部330とも称する。このステント端部の構造部分を切頭状傾斜端部323とも称する。尚、本発明のいくつかの実施形態においては、基端部312は傾斜端部であり、他方、先端部316は垂直端部で形成される。更に、他の実施形態では、基端部312及び先端部316の双方が切頭状傾斜端部で形成される。
【0027】
図4には、本発明に実施形態に係る2つの切頭状傾斜端部を有するステント300が示されている。これらステントは分岐部分202のまわりの領域において分岐血液200の主枝206内に配置される。2つのステントのそれぞれの切頭状部330は主枝206内において互いに対向する態様で示されていて、主枝206及び側枝204の両方が血液の流れに対して開いた状態を呈している。
【0028】
図5A及び5Bには、本発明の他の実施形態として、切頭状傾斜端部を有する傾斜ステント300が示されている。傾斜端部322は短縁332と長縁334を有する。切頭状端部330は該長縁334から変化可能な距離のところに位置付けられる。切断面をTとすると、これら異なる距離のところの切断面T、T、Tを選択できる。図5Bで明白のように、切頭状端部330が短縁332に対して近付くほど、切頭状端部330の円周は大きくなる。
【0029】
本発明の1つの実施形態において、切頭状傾斜端部を有するステント300は、傾斜していないステント10をその一端ないしは両端において切断して形成することもできる。これによって、該ステントに1つ又は2つの切頭状端部を形成できる。これは、拡張していない状態ないしは部分的に拡張していない状態でなされ、該切頭状傾斜端部の形状は、ステントの拡張の間及び拡張後において維持される。又、上記構成の代替案として拡張状態、ないし部分的に拡張した状態においてもなし得る。すなわち、切頭状傾斜端部は、バルーン上に圧縮あるは折曲された時に維持される構造である。又、追加的実施形態においては、切頭状傾斜端部を有するステント300が、該ステントの少なくとも1つの垂直端部を切頭状傾斜端部に変換する構造を有する独特のステントにより構成されるが、その詳細は後述される。
【0030】
図6A−6Cは傾斜しない種々のステント壁の構造を有するステント10の概略平面図を示す。図6Aでは、傾斜しないステント10が互いに近接した多数の環状リング36よりなり、各環状リング36は他の環状リング36に接続部材38により接続されている。図6Aの実施形態では、環状リング36が軸方向に沿って正弦曲線を描く枠体部材40よりなる。これら各部材は一連の交互に配列された基端側頂部42と先端側頂部44を有する。接続部材40は、例えば、第1の環状リング36の先端側頭部44を他の環状リング36の基端側頂部42に接続する。図6Bに示された実施形態においては、環状リング36がダイヤモンド状ないし菱形の枠体46よりなる。図6Cに示された実施形態においては、環状リング36が楕円形の枠体48によりなる。このように、該環状リング36は、ステント壁を形成するに適した任意の形状とすることが可能である。
【0031】
図7A及び7Bには実施形態には傾斜ステント100の概略図が示されている。この傾斜ステント100は、図6A−6Cに示した枠体部材を傾斜端部122の形成のために変更した構成を示している。即ち、傾斜していないステント100の環状リング136が、傾斜ステント100の長手軸120に対して直角ないし垂直の面に対して傾斜した角度を持つよう構成される。図7Aに示す実施形態では、環状リング136は楕円形の枠体148よりなる。図7Bの他の実施形態では、該環状リング136が軸方向に正弦曲線を描く枠体部材140よりなる。該環状リング136は、ステント壁として、又、傾斜端部122を形成するために傾斜角度状態で位置付けられるようにするための適宜の形状とすることができる。該傾斜ステント100の一端又は両端を傾斜端部とし得る。切頭状の傾斜ステント300を形成するために、図5A及び5Bに関連して記載した通り、該傾斜端部122の長縁を切断ないしカットすることができる。
【0032】
図8に略示した傾斜ステント100においては、先端部112が傾斜端部122であり、基端部116が垂直端部124である。この実施形態において、環状リング136は軸方向に沿って正弦曲線を描く枠体部材140により構成される。ここにおいては、ステント本体111が拡張した際に軸方向に沿って正弦曲線を描く枠体部材140が傾斜端部122のところで傾斜位置に向かって、及び垂直端部124のところで垂直位置に向かって拡張する。これは、例えば図9A及び9Bに関連して記載したように、極めて独特のステント構造により達成される。
【0033】
図9A及び9Bには傾斜ステント100の平面図及び部分拡大図がそれぞれ示されている。該ステント100は縦に切断ないしカットされたステント本体を備え、該本体は巻かれていない開いた態様で、拡張しない状態(図9A)と拡張した状態(図9B)でそれぞれ示されている。図9Aに示すように、傾斜ステント100は多数の近接配置された環状リング136よりなり、各環状リング136は接続部材138によって他の環状リング136に接続されている。図9Aに示す実施形態では、環状リング136は軸方向に正弦曲線を描く枠体部材140よりなる。各枠体部材140は、一連の相互に配列された基端側頂部142と先端側頂部144を有する。該接続部材138は、例えば、第1の環状リング136の先端側頂部144を次位の他の環状リング138の基端側頂部142に接続する。各環状リング136は、図9Aで示す軸方向の領域I-VIIIではそれぞれ独立した状態で表されている。ここにおいて、軸方向の領域I-VIは本体部150、該領域VII及びVIIIは傾斜端部152よりなる。この点の詳細は後述する。本体部150の各環状リング136は傾斜ステント100の長手軸120に対して直角ないし垂直に配置されている。傾斜端部152の軸方向領域VIIは軸方向に沿って正弦曲線を描く枠体部材140の環状リング136を含む。軸方向領域VIIにおける軸方向に正弦曲線を描く枠体部材140の数は、軸方向領域I-VIにおける軸方向に沿って正弦曲線を描く枠体部材140の数より少ない。その結果、軸方向領域VIIの円周は軸方向領域I-VIの円周よりも小さくなる。軸方向領域I-VIにおいて、軸方向領域IIの基端側頂部142は、接続部材138を介して軸方向領域Iの先端側頂部144に接続される。同様に、軸方向領域の基端側頂部142は接続部材138を介して軸方向領域IIの先端側頂部144に接続される。上記のパターンは該本体部150全体を通して続く。該本体部150と傾斜端部152の間の接続は異なる。この実施形態において、中央位置にある軸方向に沿って正弦曲線を描く枠体部材140のための軸方向領域VIIの基端側頂部142は、軸方向領域VIの先端側頂部144に接続される。軸方向領域VIIの縁部上の軸方向に正弦曲線を描く枠体部材140は、その2つの端部で足部154を有する。そして、これら足部154は軸方向領域VIの頂縁及び底縁のところで先端側頂部144に接続される。
【0034】
傾斜ステント100の軸方向領域VIIIは三角形中央部材156を含み、該部材156はその基端側端部158と先端側端部160を有する。該三角形中央部材の基端側端部158は第1の脚162と第2の脚164を有する。又、該三角形中央部材の先端側端部160は該三角形中央部材156の頂部166を有する。該軸方向領域VIIIは更に長手方向に沿って正弦曲線を描く第1の枠体部材168と第2の枠体部材170を含み、該第1の枠体部材は該三角形中央部材156の上方に位置し、他方、第2の枠体部材は該中央部材156の下方に位置する。該第1の枠体部材168は、その基端側端部172と先端側端部174とを有し、該第2の枠体部材170は、その基端側端部173と先端側端部175とを有する。軸方向領域VIIIは更に直線状枠体部材176を含む。該部材は三角形中央部材156の先端部分に位置するとともに、その基端側端部178と先端側端部180とを有する。三角形中央部材154の第1の脚162と第2の脚164は、軸方向領域VIIの軸方向に沿って正弦曲線を描く枠体部材140の2つの先端側頂部に接続される。三角形中央部材の先端側点端部160は、直線状枠体部材の基端側端部178に接続される。第1及び第2の枠体部材の基端側端部172、173は軸方向領域VIIの2つの外側先端側頂部144に接続される。第1及び第2の枠体部材の先端側端部174、175は直線状枠体部材の先端側端部180に接続される。
【0035】
図9Bにはステント100が、部分的に拡大して示されている。ここに示された実施形態において、軸方向に沿って正弦曲線を描く枠体部材140は円周方向に拡張ないし膨張した状態となっている。従って、該ステント100の拡張が許容される。もし、接続部材138が図9A及び9Bに示すように直線状であるなら、該傾斜ステント100の拡張は長手軸120に沿って傾斜ステントの短縮(フォーショートニング)を引き起こす。本発明のいくつかの実施形態においては、該接続部材138が正弦曲線を描く形状あるいはS字状の形状を呈するので、その拡張に際して傾斜ステント100の短縮を妨げる。長手軸に沿って正弦曲線を描く第1及び第2の枠体部材168,170は、長手方向ないし軸方向に拡張するので、該第1及び第2の枠体部材を実質的にほとんど直線状となる部材に変える。そして、このように直線状となった部材が傾斜端部182の外縁を形成する。
【0036】
図10A及び10Bには切頭状の傾斜ステント300の平面図及び部分拡大図がそれぞれ示されている。該ステント300は縦に切断ないしカットされたステント本体を備え、該本体は巻かれていない開いた態様で、拡張しない状態(図10A)と拡張した状態(図10B)でそれぞれ示されている。図10Aに示すように、切頭状傾斜ステント300は多数の近接配置された環状リング336よりなり、各環状リング336は接続部材138によって他の環状リング336に接続されている。図10Aに示す実施形態において、該環状リング336は、軸方向に沿って正弦曲線を描く枠体部材340よりなる。各枠体部材340は、一連の相互に配列された基端側頂部342と先端側頂部344をと有する。接続部材338は、例えば、第1の環状リング336の先端側頂部344を他の環状リング336の基端側頂部342に接続する。各環状リング336は図10Aの軸方向領域I-VIIIにおいて独立した態様で示されている。以下に詳述するように、該領域I-VI は本体部350を有し、該領域VII 及びVIIIは、切頭状傾斜端部352を有する。該本体部350の各環状リング336は、切頭状傾斜ステント300の長手軸320に対して直角ないし垂直に配置されている。切頭状傾斜端部352の軸方向領域VIIは、軸方向に沿って正弦曲線を描く枠体部材340の環状リング336を有する。ここにおいて、該領域VIIにおける該枠体部材340の数は、領域I-VIにおける該枠体部材340の数よりも少ない。この結果、該領域VIIの円周は領域I-VIの円周よりも小さい。ここに示された実施形態において、軸方向領域I-VIについて該領域IIの基端側頂部342は接続部材338を介して軸方向領域Iの先端側頂部344に接続される。同様に、該領域 III の基端側頂部342は接続部材338を介して該領域IIの先端側頂部に接続される。この接続パターンは該本体部350全体にわたり継続する。図10Aに示す実施形態では、軸方向領域V 及びVIの軸方向に沿って正弦曲線を描く枠体部材340が円周方向及び端部方向において若干突出する。
【0037】
該本体部350と切頭状傾斜端部352との間の接続は異なる。この実施形態では、軸方向領域VIIの中央に位置する軸方向に沿って正弦曲線を描く枠体部材の基端側頂部342軸方向領域VIの先端側頂部344に接続される。該中央の枠体部材341は、長手軸方向において、他の枠体部材340よりも若干短い。長手方向に沿って正弦曲線を描く第1の外縁枠体368は、軸方向領域VIIの枠体部材340の上方に位置するとともに、長手方向に沿って正弦曲線を描く第2の外縁枠体370は、軸方向領域VIIの枠体部材340の下方に位置する。これら第1及び第2の部材368、370は、軸方向領域VIの頂縁及び底縁のところで先端側頂部344に接続される。
【0038】
切頭状傾斜ステント300の軸方向領域VIII は、軸方向に沿って正弦曲線を描く一連の枠体部材340を有する終端部片356を含む。ここにおいて、軸方向領域VIIIの中央にある該枠体部材の基端側頂部342は軸方向領域VII の該枠体部材340の先端側頂部344に接続される。更に、軸方向領域VIIIの縁上の枠体部材340は、その2つの端部のところに脚部354を有する。そして、これら脚部354は軸方向領域VIIの頂縁及び底縁のところで長手方向に沿って正弦曲線を描く枠体部材368、370と接続される。
【0039】
図10Bには切頭状傾斜ステント300の拡張状態が示されている。ここに示された実施形態において、軸方向に沿って正弦曲線を描く枠体部材340が円周方向に拡張しており、これによって切頭状傾斜ステント300の拡張が許容される。 もし、該接続部材338が図10A及び10Bに示すように直線状の場合、切頭状の傾斜ステント300の拡張は、長手軸320に沿う切頭状傾斜ステント300の短縮(フォーショートニング)を引き起こす。本発明の実施形態では、接続部材338が正弦曲線を描く形状あるいはS字状の形状を有するので、該ステントの拡張に際して切頭状傾斜ステント300の短縮を引き起こすことが避けられる。長手方向に正弦曲線を描く第1及び第2の枠体部材368は長手方向ないし軸方向に拡張するので、該第1及び第2の枠体部材は実質的に殆ど直線状の部材に変わる。更に、軸方向領域VIIIの該枠体部材340は、切頭状傾斜ステント300が拡張した際に実質的に殆ど直線状の部材に変わる。これらの直線状に変わる部材は、その先端部のところで切頭状外縁を含んで切頭状傾斜端部322の外縁382を形成する。傾斜端部322を形成するためにこれと同様の構成が切頭状傾斜ステント300の基端側端部においても適用される。
【0040】
図11A及び11Bに示す傾斜ステント100は、第1の構成(図11A)を有し、ここでは拡張していない状態において傾斜ステント100が2つの垂直端部124を有するとともに第2の構成(図11B)を有し、ここでは拡張した状態において傾斜ステント100が2つの傾斜端部122を有する。これらの実施形態において、 拡張していない傾斜ステント100は、図11Aで示すように、その頂部のところで長さL1を有する。他方、拡張した傾斜ステント100は、図11Bで示すように底部においては第1の長さL1、頂部においては第2の長さL2を有する形状となり、あるいは該底部と頂部の長さを図示とは逆にした形状でもよい。 これは、差動の性質を使用し、かかる構造の半径方向/円周方向の拡張を備えた差動ステント壁の半径方向の拡張下で短縮ないし収縮をなすことによりなされる。
【0041】
図12A−12Cは、図11A及び11Bのステントの概略図に相当する本発明の実施形態に係るステント構造を示す。この実施形態において、傾斜ステントの円周の、例えば上半分の部分190は、ダイヤモンド形状ないし菱形をなし、長手方向に収縮する構造を備える。他方、例えば反対側の下半分の部分192は、長手方向にその長さを維持する構造、例えば、正弦曲線に沿う曲線、湾曲、あるいはS字状の構造を備え、又、接続部材を備える。該上半分190及び/又は下半分192は、傾斜ステント100の円周の半分よりも小さく、あるいは大きく、設定することもできる。図12Cは、図12A及び12Bに示す傾斜ステント100の横断面図である。尚、切頭状の傾斜ステント300もこれと同様に使用可能である。
【0042】
該傾斜ステント100及び切頭状傾斜ステント300は、該ステントの端部122、322は分岐部分内で適切に位置づけられるように血管等の管内に配置されなければならない。このステント配置のために、トルク性を発揮するか、あるいは自力の位置付けを助成する給送装置が用いられるが、これ自体は公知である。
更に、該ステントの傾斜端部を同定するために、例えば、傾斜端部122、322の最も長い部分上のマーカー及び該端部の最も短い部分上のマーカーよりなす放射線不透過性マーカーを用いてもよい。又、更に、該ステントの他の部位及び/又は該給送装置上に追加してマーカーを用いてもよい。該ステント100,300は拡張ないし膨張可能あるいは自力で自動的に拡張するバルーンで構成できる。
自力で自動的に拡張するステントは、管径が大の血管等の管の場合などの特殊な状況で使用される。該ステント100,300は、金属材料あるいは非金属材料で形成される。
【0043】
以上、本発明の特徴について種々の実施形態に分けて説明したが、これらの特徴を1つの実施形態に組み合わせることも可能である。
又逆に、1つの実施形態に表した本発明の種々の特徴は、これらを別途の複数ないし適宜の副実施形態で表すこともできる。
【0044】
本発明は、上述の通り特定の実施形態について説明したが、これら実施形態の変形構成等も当業者にとって容易に変更可能な構成も本発明に含まれる。
又、本願明細書に記載された全ての刊行物、特許、特許出願は本願明細書においてはそれらの内容の全体が本願明細書に関連する。更に、本願における引用資料等については、これら資料等が本発明に対して公知であると認容したものとは解釈されない。
図1A
図1B
図2A
図2B
図2C
図2D
図3A
図3B
図4
図5A
図5B
図6A
図6B
図6C
図7A
図7B
図8
図9A
図9B
図10A
図10B
図11A
図11B
図12A
図12B
図12C