(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
スチレン−メタクリル酸共重合体(A)とハイインパクトポリスチレン(B)とを質量比(A)/(B)=97.0/3.0〜99.9/0.1で含有するスチレン系樹脂組成物からなる二軸延伸シートであって、
前記スチレン−メタクリル酸共重合体(A)のメタクリル酸単量体単位の含有量が3〜14質量%であり、
前記スチレン系樹脂組成物のビカット軟化温度が106〜132℃の範囲であり、
前記二軸延伸シートの縦方向と横方向の配向緩和応力がいずれも0.5〜1.2MPaの範囲である
二軸延伸シート。
前記スチレン−メタクリル酸共重合体(A)は、重量平均分子量(Mw)が12万〜25万であり、重量平均分子量(Mw)と数平均分子量(Mn)との比Mw/Mnが2.0〜3.0であり、Z平均分子量(Mz)と重量平均分子量(Mw)との比Mz/Mwが1.5〜2.0である請求項1に記載の二軸延伸シート。
前記ハイインパクトポリスチレン(B)に由来するゴム成分の含有量が、前記スチレン系樹脂組成物に対して0.005〜0.36質量%である請求項1または請求項2に記載の二軸延伸シート。
前記スチレン系樹脂組成物中の未反応スチレンモノマーの含有量が1000ppm以下、未反応メタクリル酸モノマーの含有量が150ppm以下である請求項1〜3のいずれか1項に記載の二軸延伸シート。
【背景技術】
【0002】
ポリスチレンの二軸延伸シートは、その透明性、剛性に優れることから、型成形されて主に軽量容器等の成形品に大量に使用されている。しかしながら、これらの容器は、耐熱性に劣ることから、沸騰水に直接接触する用途や、電子レンジで加熱する用途へはあまり使用されていない。そこで、原料であるポリスチレンに耐熱性を付与する試みがなされてきた。耐熱性を向上させたポリスチレンとしては、例えば、スチレン−アクリル酸共重合体またはスチレン−メタクリル酸共重合体(特許文献1、特許文献2)、スチレン−無水マレイン酸共重合体(特許文献3、特許文献4)が挙げられる。これらは一般的にスチレン系耐熱性樹脂として知られており、透明性、剛性を損なわずに耐熱性を向上させている。
【0003】
スチレン系耐熱性樹脂を二軸延伸してシート化することにより、耐熱性に優れたシートを用いた成形品を得る技術が検討されてきた(特許文献2、特許文献4)。
しかし、スチレン系耐熱性樹脂は通常のポリスチレンよりも溶融押出時の流動性が低く、樹脂の生産能力やシートの生産能力を上げることが難しい。スチレン系耐熱性樹脂の流動性を上げるためには、押出温度を高くする方法が考えられるが、高温ではスチレン系耐熱性樹脂中のカルボン酸基が反応し、ゲル状の異物となってシートの品質低下を招くという問題点を有している。
【0004】
そこで、スチレン系耐熱性樹脂の流動性を向上する試みがなされてきた。スチレン系耐熱性樹脂の流動性を上げる方法として、例えば、流動パラフィンなどの可塑剤を添加する方法が存在する。また、上記ゲル化を抑制する方法として、カルボン酸基の反応阻害効果のあるアルコールを添加する方法(特許文献5)が挙げられる。しかし、これら添加剤を含有するシートは、透明性が低かったり、成形時の熱でブリードアウトするなどして成形品の品質低下を招きやすい。
【0005】
また、スチレン系耐熱性樹脂の二軸延伸シートは耐割れ性に乏しく、シートを二次成形する際に、型抜き不良や抜き粉の発生によって成形品の品質が低下するという問題点を有している。
さらに、近年需要が拡大している電子レンジ用容器の蓋材は、加熱時に内容物を漏れにくくするため、蓋と本体を隙間なく嵌め合わることができて、かつ蓋が内側である形状、いわゆる内嵌合蓋であることが多い。スチレン系耐熱性樹脂の二軸延伸シートからなる内嵌合蓋は、蓋を閉めたときに嵌合部が割れやすいという問題点を有している。
【0006】
また、内嵌合蓋には、蓋を閉じる時に空気を逃がすための通気弁を設けることが普通であり、この通気弁は電子レンジ加熱時に発生する蒸気を逃がす役目も持っている。成形品にこのような通気弁を設けるためには、通常、抜き刃を用いて穴を開ける必要がある。しかし、スチレン系耐熱性樹脂の二軸延伸シートは、この工程において抜き粉の付着やひび割れが発生しやすい。
このような理由から、スチレン系耐熱性樹脂の二軸延伸シートとしての透明性、強度、耐熱性、製膜性等の性能を保持しつつ、高い耐割れ性を有するシートが求められている。
【発明を実施するための形態】
【0022】
本発明の実施形態について以下説明する。但し、本発明の実施形態は、以下の実施形態に限定されるものではない。
【0023】
本発明の二軸延伸シートは、スチレン−メタクリル酸共重合体(A)とハイインパクトポリスチレン(B)とを特定の質量比で含有するスチレン系樹脂組成物からなる。本発明の二軸延伸シートは、前記スチレン系樹脂組成物を押出成形し、得られた未延伸シートを二軸延伸することによって得ることができる。以下、スチレン系樹脂組成物の各成分について説明する。
【0024】
(スチレン−メタクリル酸共重合体(A))
本発明におけるスチレン系樹脂組成物は、スチレンとメタクリル酸とを共重合させてなるスチレン−メタクリル酸共重合体(A)を含有する。本発明に用いるスチレン−メタクリル酸共重合体(A)において、スチレンとメタクリル酸の共重合比率は、所望とする耐熱性と機械的強度等によって種々設定可能である。耐熱性、機械的強度、シートにしたときの透明性のバランスに優れた樹脂が容易に得られる点から、メタクリル酸単量体単位の含有量は3〜14質量%とすることが必要である。メタクリル酸単量体単位の含有量が3質量%未満であると、耐熱性が不足し、また電子レンジ加熱時に穴あき、変形が起こり易くなる。メタクリル酸単量体単位の含有量は、好ましくは6質量%以上、さらに好ましくは8質量%以上である。一方、メタクリル酸単量体単位の含有量が14質量%を超えると、製膜時の流動性の低下、ゲル発生による外観低下が発生し易くなる。メタクリル酸単量体単位の含有量は、好ましくは12質量%以下、さらに好ましくは10質量%以下である。また、スチレン−メタクリル酸共重合体(A)は、必要に応じて、発明の効果を損なわない限りにおいて、スチレンとメタクリル酸以外の他のモノマーを適宜、共重合させてもよい。他のモノマーの含有率は10質量%以下であることが好ましく、より好ましくは5%質量以下、さらに好ましくは3質量%以下である。他のモノマーの含有率が10質量%を超えると、スチレンまたはメタクリル酸の比率が低下し、十分な透明性、機械的強度及び耐熱性が得られない場合がある。
【0025】
スチレン−メタクリル酸共重合体(A)の重量平均分子量(Mw)は、12万〜25万であることが好ましく、より好ましくは14万〜22万、さらに好ましくは15万〜20万である。重量平均分子量が12万未満であると、シートのドローダウン、ネックインが発生するなどの製膜性の低下、延伸配向の不足、容器成形時の熱板接触による表面荒れが発生し易くなる。一方、重量平均分子量が25万を超えると、流動性低下による製膜時の厚みムラ、ダイラインなどのシート外観低下、容器成形時の賦型不良などが発生し易くなる。
【0026】
また、スチレン−メタクリル酸共重合体(A)の重量平均分子量(Mw)と数平均分子量(Mn)との比Mw/Mnは、2.0〜3.0であることが好ましく、より好ましくは2.2〜2.8である。Mw/Mnが3.0を超えると、容器成形時の熱板接触による表面荒れが発生し易くなる。一方、Mw/Mnが2.0未満であると、流動性低下による製膜時の厚みムラや容器成形時の賦型不良が発生し易くなる。また、Z平均分子量(Mz)とMwとの比Mz/Mwは、1.5〜2.0であることが好ましく、より好ましくは1.6〜1.9である。Mz/Mwが1.5未満であると、シートのドローダウン、ネックインが発生するなどの製膜性の低下、延伸配向の不足が発生し易くなる。一方、Mz/Mwが2.0を超えると、流動性低下による製膜時の厚みムラやダイラインなどのシート外観低下が発生し易くなる。
【0027】
なお、上述の数平均分子量(Mn)、重量平均分子量(Mw)、Z平均分子量(Mz)は、GPC測定にて、以下の方法にて単分散ポリスチレンの溶出曲線より各溶出時間における分子量を算出し、ポリスチレン換算の分子量として算出したものである。
機種:昭和電工株式会社製Shodex GPC−101
カラム:ポリマーラボラトリーズ社製 PLgel 10μm MIXED−B
移動相:テトラヒドロフラン
試料濃度:0.2質量%
温度:オーブン40℃、注入口35℃、検出器35℃
検出器:示差屈折計
【0028】
スチレン−メタクリル酸共重合体(A)の重合方法としては、ポリスチレン等で工業化されている塊状重合法、溶液重合法、懸濁重合法等の公知の重合方法が挙げられる。品質面や生産性の面では、塊状重合法、溶液重合法が好ましく、連続重合であることが好ましい。溶媒としては例えば、ベンゼン、トルエン、エチルベンゼンおよびキシレン等のアルキルベンゼン類、アセトンやメチルエチルケトン等のケトン類、ヘキサンやシクロヘキサン等の脂肪族炭化水素類が使用できる。
【0029】
スチレン−メタクリル酸共重合体(A)の重合時に、必要に応じて重合開始剤、連鎖移動剤を使用することができる。重合開始剤としては、有機過酸化物を使用することができる。有機過酸化物の具体例としては、過酸化ベンゾイル、t−ブチルパーオキシベンゾネート、1,1−ジ(t−ブチルパーオキシ)シクロヘキサン、1,1−ビス(t−ブチルパーオキシ)−3,3,5−トリメチルシクロヘキサン、2,2−ビス(4,4−ジ−t−ブチルパーオキシシクロヘキシル)プロパン、t−ブチルパーオキシイソプロピルカーボネート、ジクミルパーオキサイド、t−ブチルクミルパーオキサイド、t−ブチルパーオキシアセテート、t−ブチルパーオキシ−2−エチルヘキサノエート、ポリエーテルテトラキス(t−ブチルパーオキシカーボネート)、エチル−3,3−ジ(t−ブチルパーオキシ)ブチレート、t−ブチルパーオキシイソブチレート等が挙げられる。連鎖移動剤の具体例としては、脂肪族メルカプタン、芳香族メルカプタン、ペンタフェニルエタン、α−メチルスチレンダイマーおよびテルピノーレン等が挙げられる。
【0030】
(ハイインパクトポリスチレン(B))
本発明におけるハイインパクトポリスチレン(B)は、粒子状のゴム成分が含まれるスチレン系樹脂であればよく、スチレンの単独重合体中にゴム成分が含まれているもの、スチレン−メタクリル酸共重合体中にゴム成分が含まれているもの等、いずれも好適に用いることができる。ゴム成分は、マトリックス樹脂となるポリスチレンやスチレン−メタクリル酸共重合体中に、独立して粒子状になって分散していてもよいし、ゴム成分にポリスチレンやスチレン−メタクリル酸共重合体がグラフト重合して粒子状に分散しているものであってもよい。
【0031】
ゴム成分としては、例えば、ポリブタジエン、スチレン−ブタジエン共重合体、ポリイソプレン、ブタジエン−イソプレン共重合体などが挙げられる。特に、ポリブタジエン、スチレン−ブタジエン共重合体として含まれていることが好ましい。
【0032】
ハイインパクトポリスチレン(B)は、例えば、スチレンとブタジエンとを共重合させてスチレン−ブタジエン共重合体を得たのち、スチレン単独、あるいは、スチレンとメタクリル酸との混合物に該共重合体を溶解させて重合を行うことにより、該共重合体が、連続層となるマトリックス樹脂(ポリスチレンあるいはスチレン−メタクリル酸)中に分散する粒子となるスチレン系樹脂として得ることができる。
【0033】
ハイインパクトポリスチレン(B)のゴム成分の含有量は、スチレン系樹脂組成物におけるゴム成分量を考慮して、例えば、5.0〜12.0質量%であることが好ましい。
【0034】
(スチレン系樹脂組成物)
本発明におけるスチレン系樹脂組成物は、スチレン−メタクリル酸共重合体(A)とハイインパクトポリスチレン(B)とを質量比(A)/(B)=97.0/3.0〜99.9/0.1で含有することが必要である。質量比(A)/(B)は、より好ましくは、99.0/1.0〜99.5/0.5である。この質量比で混合することによって、得られるシートおよび成形品の透明性を維持することができると共に、シートトリミング時の破断や切粉の発生、成形品の型抜き不良や抜き粉の発生を起こりにくくすることができる。
【0035】
スチレン系樹脂組成物中の未反応スチレンモノマーの含有量が1000ppm以下、未反応メタクリル酸モノマーの含有量が150ppm以下であることが好ましい。これらの未反応のモノマーの含有量が規定量よりも多いと、シート表面にブリードアウトしたり、押出機、延伸機のロールと接触した際に表面荒れや汚れを起こしやすい。また、シートを成形加工する際に成形加工機の金型等に付着して、成形品の外観を損ねたり、金型汚れを引き起こしてその後の成形品の外観を損なう懸念がある。
なお、未反応スチレンモノマーおよび未反応メタクリル酸モノマーの定量は、下記記載のガスクロマトグラフィーを用いて、内部標準法にて測定した。
装置名:GC−12A(島津製作所社製)
カラム:ガラスカラム φ3[mm]×3[m]
定量法:内部標準法(シクロペンタノール)
【0036】
また、スチレン−メタクリル酸共重合体(A)中に含まれる隣接する2つのメタクリル酸単量体単位が、高温、高真空の押出工程において、六員環酸無水物を形成する場合がある。この六員環酸無水物を多く含むスチレン系樹脂組成物は、シート化したときに透明なゲル状異物として顕在化し、シートの外観を損ねる恐れがある。そのため、スチレン系樹脂組成物中の六員環酸無水物の含有量は、1.0質量%以下であることが好ましい。
なお、上記六員環酸無水物の含有量は、カーボン核磁気共鳴(
13C−NMR)測定装置で測定したスペクトルの積分比から求めた。
【0037】
スチレン系樹脂組成物は、ビカット軟化温度が106〜132℃の範囲であることが必須である。ビカット軟化温度が106℃未満であると、シートの耐熱性が不足し、電子レンジ加熱時に変形が起こり易くなる。ビカット軟化温度は好ましくは112℃以上、さらに好ましくは116℃以上である。一方、ビカット軟化温度が132℃を超えると、製膜時および容器成形時の加工性が低下するおそれがある。ビカット軟化温度は好ましくは128℃以下、さらに好ましくは126℃以下である。なお、ビカット軟化温度は、JIS K−7206に準拠して、昇温速度50℃/hr、試験荷重50Nの条件で測定した。
【0038】
スチレン系樹脂組成物のメルトフローインデックス(MFI)は、製膜時のドローダウン、厚み均一性の観点から、0.5〜4.5g/10分の範囲にあることが好ましく、より好ましくは0.9〜3.6g/10分、さらには好ましくは1.3〜2.7g/10分である。なお、メルトフローインデックス(MFI)は、JIS K7210のH条件(200℃、5kg)に従って測定した。
【0039】
さらに、本発明におけるスチレン系樹脂組成物には、用途に応じて各種添加剤を配合してもよい。添加剤としては、例えば、酸化防止剤、ゲル化防止剤、紫外線吸収剤、光安定剤、滑剤、可塑剤、着色剤、帯電防止剤、難燃剤、鉱油等の添加剤、ガラス繊維、カーボン繊維およびアラミド繊維等の補強繊維、タルク、シリカ、マイカ、炭酸カルシウムなどの充填剤が挙げられる。また、上記スチレン系樹脂組成物をシート化したときの外観の観点から、酸化防止剤およびゲル化防止剤を単独または2種類以上を併用して配合することが好ましい。これらの添加剤は、スチレン−メタクリル酸共重合体(A)およびハイインパクトポリスチレン(B)の重合工程または脱揮工程、造粒工程にて添加しても良いし、スチレン系樹脂組成物を製造するときに添加しても良い。
上記添加剤の添加量に制限はないが、スチレン系樹脂組成物のビカット軟化温度およびメルトフローインデックス(MFI)の範囲から外れないように添加することが好ましい。
【0040】
ゲル化防止剤は、メタクリル酸の脱水反応によるゲル化反応を抑制する効果を有する。ゲル化防止剤としては、例えば、脂肪族アルコール等が有効である。一般的な脂肪族アルコールとして、7−メチル−2−(3−メチルブチル)−1−オクタノール、5−メチル−2−(1−メチルブチル)−1−オクタノール、5−メチル−2−(3−メチルブチル)−1−オクタノール、2−ヘキシル−1−デカノール、5,7,7−トリメチル−2−(1,3,3−トリメチルブチル)−1−オクタノール、8−メチル−2−(4−メチルヘキシル)−1−デカノール、2−ヘプチル−1−ウンデカノール、2−ヘプチル−4メチル−1−デカノール、2−(1,5−ジメチルヘキシル)−(5,9−ジメチル)−1−デカノールなどが挙げられる。
【0041】
酸化防止剤としては、例えば、トリエチレングリコール−ビス〔3−(3−t−ブチル−5−メチル−4−ヒドロキシフェニル)プロピオネート〕、2,4−ビス(n−オクチルチオ)−6−(4−ヒドロキシ−3,5−ジ−t−ブチルアニリノ)−1,3,5−トリアジン、ペンタエリスリチルテトラキス〔3−(3,5−ジ−t−ブチル−4−ヒドロキシフェニル)プロピオネート〕、オクタデシル−3−(3,5−ジ−t−ブチル−4−ヒドロキシフェニル)プロピオネート、2,2−チオビス(4−メチル−6−t−ブチルフェノール)および1,3,5−トリメチル−2,4,6−トリス(3,5−ジ−t−ブチル−4−ヒドロキシベンジル)ベンゼン等のフェノール系酸化防止剤、ジトリデシル−3,3’−チオジプロピオネート、ジラウリル−3,3’−チオジプロピオネート、ジテトラデシル−3,3’−チオジプロピオネート、ジステアリル−3,3’−チオジプロピオネート、ジオクチル−3,3’−チオジプロピオネート等の硫黄系酸化防止剤、トリスノニルフェニルホスファイト、4,4’−ブチリデン−ビス(3−メチル−6−t−ブチルフェニルージートリデシル)ホスファイト、(トリデシル)ペンタエリスリトールジホスファイト、ビス(オクタデシル)ペンタエリスリトールジホスファイト、ビス(ジ−t−ブチルフェニル)ペンタエリスリトールジホスファイト、ビス(ジ−t−ブチル−4−メチルフェニル)ペンタエリスリトールジホスファイト、ジノニルフェニルオクチルホスフォナイト、テトラキス(2,4−ジ−t−ブチルフェニル)1,4−フェニレンージーホスフォナイト、テトラキス(2,4−ジ−t−ブチルフェニル)4,4’−ビフェニレン−ジ−ホスフォナイト、10−デシロキシ−9,10−ジヒドロ−9−オキサ−10−ホスファフェナンスレン等の燐系酸化防止剤が挙げられる。
【0042】
(二軸延伸シート)
本発明の二軸延伸シートは、次のような方法で製造することができる。まず、前記スチレン系樹脂組成物を押出機により溶融混練して、ダイ(特にTダイ)から押し出す。次に、縦方向(シート流れ方向、MD;Machine Direction)および横方向(シート流れ方向に垂直な方向、TD;Transverse Direction)の二軸方向に逐次又は同時で延伸することによって、二軸延伸シートが製造される。
【0043】
二軸延伸シートの厚みは、シートおよび容器の強度、特に剛性を確保するために、好ましくは0.1mm以上であり、より好ましくは0.15mm以上、さらに好ましくは0.2mm以上である。一方、賦型性および経済性の観点から、二軸延伸シートの厚みは、好ましくは0.7mm以下であり、より好ましくは0.6mm以下、さらに好ましくは0.5mm以下である。
【0044】
二軸延伸シートの縦方向および横方向の延伸倍率はいずれも、1.8〜3.2倍の範囲にあることが好ましい。延伸倍率が1.8倍未満では、シートの耐折性が低下し易い。一方、延伸倍率が3.2倍を超えると、熱成形時の収縮率が大きすぎることにより賦形性が損なわれるおそれがある。
なお、本発明の延伸倍率の測定方法は、以下のとおりである。二軸延伸シートの試験片に対して、縦方向(MD)および横方向(TD)に100mm長の直線Yを引く。JIS K7206に準拠して測定したシートのビカット軟化温度より30℃高い温度のオーブンに、上記試験片を60分間静置し収縮させた後の、上記直線の長さZ[mm]を測定する。縦方向および横方向の延伸倍率(倍)は、それぞれ次式によって算出した数値である。
延伸倍率(倍)=100/Z
【0045】
本発明の二軸延伸シートは、前記スチレン系樹脂組成物を二軸延伸することによって得ることができる。さらにシートおよび成形品の強度、特に耐割れ性を確保するために、シートの縦方向および横方向の配向緩和応力が0.5〜1.2MPaの範囲を満足することが必要である。配向緩和応力が0.5MPa未満では、シートの耐割れ性を確保できず、トリミング工程での引き裂けや切粉の発生、容器の抜き工程での割れや抜き粉の発生が頻発し、シートおよび成形品の生産性を著しく損なう。一方、配向緩和応力が1.2MPaを超えると、シート延伸工程での安定延伸性と量産性の両立が難しくなるほか、容器成形時の賦形性が損なわれる。また、縦方向および横方向いずれかの配向緩和応力が上記の数値範囲から外れた場合には、より配向緩和応力が高い方向に引き裂けやすくなり、シートトリミング工程や容器の抜き工程でシートの破断が発生しやすくなる。
なお、本発明の二軸延伸シートの配向緩和応力は、ASTM D1504に準じて、シートを構成する樹脂組成物のビカット軟化温度より30℃高い温度のシリコーンオイル中でのピーク応力値として測定した値である。
【0046】
本発明におけるスチレン系樹脂組成物中のハイインパクトポリスチレン(B)に由来するゴム成分の含有量は、スチレン系樹脂組成物に対して0.005〜0.36質量%であることが好ましい。二軸延伸シートのブロッキングを防止するためには、ゴム成分の含有量は0.005重量%以上であることが好ましい。0.010重量%以上がより好ましく、0.040重量%以上がさらに好ましい。一方、二軸延伸シートの透明性を保持するために、ゴム成分の含有量は0.36重量%以下が好ましい。0.24重量%以下がより好ましく、0.12重量%以下がさらに好ましい。スチレン系樹脂組成物中のゴム成分の含有量は、スチレン系樹脂組成物をクロロホルムに溶解し、一塩化ヨウ素を加えてゴム成分中の二重結合を反応させた後、ヨウ化カリウムを加え、残存する一塩化ヨウ素をヨウ素に変え、チオ硫酸ナトリウムで逆滴定する一塩化ヨウ素法によって測定される。
【0047】
本発明の二軸延伸シート中のハイインパクトポリスチレン(B)に由来するゴム成分の平均ゴム粒子径は、1〜9μmであることが好ましい。ゴム成分の平均ゴム粒子径は、シートのブロッキングを防止するために、1μm以上であることが好ましい。一方、ゴム成分の平均ゴム粒子径は、二軸延伸シートの透明性を保持するために、9μm以下であることが好ましい。
二軸延伸シート中のゴム成分の平均ゴム粒子径は、超薄切片法にて観察面がシート平面と平行方向となるように切削し、四酸化オスミウム(OsO
4)でゴム成分を染色した後、透過型顕微鏡にて粒子100個の粒子径を測定し、以下の式により算出した値である。
平均ゴム粒子径=Σni(Di)
4/Σni(Di)
3
ここで、niは測定個数、Diは測定した粒子径を示す。
【0048】
本発明の二軸延伸シートには、公知の離型剤・剥離剤(例えばシリコーンオイル)、防曇剤(例えばショ糖脂肪酸エステル、ポリグリセリン脂肪酸エステル等のノニオン系界面活性剤、ポリエーテル変性シリコーンオイル、二酸化珪素等)、帯電防止剤(例えば各種ノニオン系界面活性剤、カチオン系界面活性剤、アニオン系界面活性剤等)の内の1種または2種以上を混合して、シートの少なくとも一方の表面に塗布してもよい。特に、シートおよび成形品の剥離性の面から、本発明の二軸延伸シートは、その少なくとも一方の表面にシリコーンオイルの塗膜を有することが好ましい。
【0049】
本発明の離型剤・剥離剤として使用するシリコーンオイルとしては、この種の離型剤として公知の、例えば、メチル水素ポリシロキサン、ジメチルポリシロキサン、メチルフェニルポリシロキサン、ジフェニルポリシロキサン等が挙げられる。また、前記シリコーンオイルに一部官能基を導入した変性体、例えば、ポリエーテル変性シリコーンオイル、アミノ変性シリコーンオイル、エポキシ変性シリコーンオイル、カルボキシル変性シリコーンオイル、フッ素変性シリコーンオイル等を用いても良い。これらの中で、離型性、匂いおよび経済性等の点から、ジメチルポリシロキサンが特に好ましい。
【0050】
これら塗工剤を二軸延伸シートに塗工する方法は特に限定されることはなく、簡便にはロールコーター、ナイフコーター、グラビアロールコーター等を用い塗工する方法が挙げられる。また、噴霧、浸漬等を採用することも出来る。
【0051】
本発明の二軸延伸シートから成形品を得る方法としては、特に制限はなく、従来の二軸延伸シートの二次成形方法において慣用されている方法を用いることができる。例えば、真空成形法や圧空成形法等の熱成形方法によって二次成形を行うことができる。これらの方法は例えば高分子学会編「プラスチック加工技術ハンドブック」日刊工業新聞社(1995)に記載されている。
【0052】
本発明の二軸延伸シートの成形品の用途としては、各種の容器があり、各種物品の包装容器等に広く用いることができる。中でも、電子レンジ加熱用食品包装容器等が本発明の特徴が十分に発揮されるため、好ましい。また、本体部分と当該本体部分と嵌合可能な蓋材とからなるフードパックであって、嵌合部分の形状が内嵌合である成形品は、本発明の優れた耐割れ性が一層生かされるため、特に好ましい。
【実施例】
【0053】
以下に実施例と比較例を用いて、本発明の実施の形態をさらに具体的に説明するが、本発明はこれらの例に限定されるものではない。
【0054】
(実験例1)[スチレン−メタクリル酸共重合体(A−1)の製造]
内容量200Lのジャケット、攪拌機付きオートクレーブに純水100kg、ポリビ二ルアルコール100gを加え、130rpmで攪拌した。続いてスチレン72.0kg、メタクリル酸8.0kgおよびt−ブチルパーオキサイド20gを仕込み、オートクレーブを密閉して、110℃に昇温して5時間重合を行った(ステップ1)。さらに140℃で3時間保持し、重合を完結させた(ステップ2)。得られたビーズを洗浄、脱水、乾燥した後、押出し、表1に記載のペレット状のスチレン−メタクリル酸共重合体(A−1)を得た。これを熱分解ガスクロマトグラフィーを用いて分析した結果、スチレン単量体単位/メタクリル酸単量体単位の質量比は90/10であった。また、GPC測定により求めた数平均分子量(Mn)、重量平均分子量(Mw)、Z平均分子量(Mz)はそれぞれ、8.0万、20万、36万であった。
【0055】
(実験例2〜20)[スチレン−メタクリル酸共重合体(A−2〜20)の製造]
実験例1の各種原料仕込み量を調整し、表1、表2に記載の各種スチレン-メタクリル酸共重合体(A−2〜20)を得た。
【0056】
(実験例21)[スチレン−メタクリル酸共重合体(A−21)の製造]
内容量200Lのジャケット、攪拌機付きオートクレーブに純水100kg、ポリビ二ルアルコール100gを加え、130rpmで攪拌した。続いてスチレン64.0kg、ブタジエン4.0kg、メタクリル酸8.0kgおよびt−ブチルパーオキサイド20gを仕込み、オートクレーブを密閉して、110℃に昇温して5時間重合を行った(ステップ1)。さらに140℃で3時間保持し、重合を完結させた(ステップ2)。得られたビーズを実験例1と同様の方法でペレット化して、スチレン−メタクリル酸共重合体(A−21)を得た。これを熱分解ガスクロマトグラフィーを用いて分析した結果、スチレン単量体単位/ブタジエン単量体単位/メタクリル酸単量体単位の質量比は、85/5/10であった。また、GPC測定により求めた数平均分子量(Mn)、重量平均分子量(Mw)、Z平均分子量(Mz)はそれぞれ、8.0万、20万、36万であった。
【0057】
(実験例22)[スチレン−メタクリル酸共重合体(A−22)の製造]
内容量200Lのジャケット、攪拌機付きオートクレーブに純水100kg、ポリビ二ルアルコール100gを加え、130rpmで攪拌した。続いてスチレン64.0kg、無水マレイン酸4.0kg、メタクリル酸8.0kgおよびt−ブチルパーオキサイド20gを仕込み、オートクレーブを密閉して、110℃に昇温して5時間重合を行った(ステップ1)。さらに140℃で3時間保持し、重合を完結させた(ステップ2)。得られたビーズを実験例1と同様の方法でペレット化して、スチレン−メタクリル酸共重合体(A−22)を得た。これを熱分解ガスクロマトグラフィーを用いて分析した結果、スチレン単量体単位/無水マレイン酸単量体単位/メタクリル酸単量体単位の質量比は、85/5/10であった。また、GPC測定により求めた数平均分子量(Mn)、重量平均分子量(Mw)、Z平均分子量(Mz)はそれぞれ、8.0万、20万、36万であった。
【0058】
(実験例23)[スチレン−メタクリル酸共重合体(A−23)の製造]
内容量200Lのジャケット、攪拌機付きオートクレーブに純水100kg、ポリビ二ルアルコール100gを加え、130rpmで攪拌した。続いてスチレン64.0kg、メタクリル酸メチル4.0kg、メタクリル酸8.0kgおよびt−ブチルパーオキサイド20gを仕込み、オートクレーブを密閉して、110℃に昇温して5時間重合を行った(ステップ1)。さらに140℃で3時間保持し、重合を完結させた(ステップ2)。得られたビーズを実験例1と同様の方法でペレット化して、スチレン−メタクリル酸共重合体(A−23)を得た。これを熱分解ガスクロマトグラフィーを用いて分析した結果、スチレン単量体単位/メタクリル酸メチル単量体単位/メタクリル酸単量体単位の質量比は、85/5/10であった。また、GPC測定により求めた数平均分子量(Mn)、重量平均分子量(Mw)、Z平均分子量(Mz)はそれぞれ、8.0万、20万、36万であった。
【0059】
(実験例24)[スチレン−メタクリル酸共重合体(A−24)の製造]
実施例1と同様の配合および重合方法にて重合を実施した。得られたビーズを洗浄、脱水、乾燥した後、得られたスチレン−メタクリル酸共重合体100質量部に対して流動パラフィン(モービル石油社製「ホワイトレックス335」)を1質量部添加して押出し、表2に記載のペレット状のスチレン−メタクリル酸共重合体(A−24)を得た。また、GPC測定により求めた数平均分子量(Mn)、重量平均分子量(Mw)、Z平均分子量(Mz)はそれぞれ、8.0万、20万、36万であった。
【0060】
(実験例25)[スチレン−メタクリル酸共重合体(A−25)の製造]
スチレン75.2kg、ブタジエン2.4kg、メタクリル酸2.4kgとした以外は実験例21と同様の配合および重合方法にて重合を実施して、スチレン−メタクリル酸共重合体(A−25)を得た。
【0061】
(実験例26)[スチレン−メタクリル酸共重合体(A−26)の製造]
スチレン66.4kg、無水マレイン酸2.4kg、メタクリル酸11.2kgとした以外は実験例22と同様の配合および重合方法にて重合を実施して、スチレン−メタクリル酸共重合体(A−26)を得た。
【0062】
(実験例27)[ハイインパクトポリスチレン(B−1)の製造]
ゴム状重合体として5.5質量%のローシスポリブタジエンゴム(旭化成製、商品名ジエン55AS)を使用し、89.5質量%のスチレンと、溶剤として5.0質量%のエチルベンゼンに溶解して重合原料とした。また、ゴムの酸化防止剤(チバガイギー製、商品名イルガノックス1076)0.1質量部を添加した。この重合原料を翼径0.285mの錨型撹拌翼を備えた14リットルのジャケット付き反応器(R−01)に12.5kg/hrで供給した。反応温度は140℃、回転数は2.17sec
−1で反応させた。得られた樹脂液を直列に配置した2基の内容積21リットルのジャケット付きプラグフロー型反応器に導入した。1基目のプラグフロー型反応器(R−02)では、反応温度が樹脂液の流れ方向に120〜140℃、2基目のプラグフロー型反応器(R−03)では、反応温度が樹脂液の流れ方向に130〜160℃の勾配を持つようにジャケット温度を調整した。R−01出口での樹脂率は25%、R−02出口での樹脂率は50%であった。得られた樹脂液は230℃に加熱後、真空度5torrの脱揮槽に送られ、未反応モノマー、溶剤を分離・回収した。その後、脱揮槽からギヤポンプで抜き出し、ダイプレートを通してストランドとした後、水槽にて冷却したのち、ペレタイザーを通してペレット化し、製品として回収し、表3に記載のハイインパクトポリスチレン(B−1)を得た。得られた樹脂(B−1)の樹脂率は70%であった。ここで、樹脂率とは、下記式によって算出される。
樹脂率(%)=100×(生成したポリマー量)/{(仕込んだモノマー量)+(溶剤量)}
また、得られた樹脂(B−1)中のゴム成分含有量は8.0質量%、ゴム成分の平均ゴム粒子径は2.0μmであった。
【0063】
(実験例28〜36)[ハイインパクトポリスチレン(B−2〜10)の製造]
実験例27の各種原料仕込み量を調整し、表3に記載の各種ハイインパクトポリスチレン(B−2〜10)を得た。
【0064】
【表1】
【0065】
【表2】
【0066】
【表3】
【0067】
<実施例1>
実験例1のスチレン-メタクリル酸共重合体(A−1)99.0質量%と実験例25のハイインパクトポリスチレン(B−1)1.0質量%をハンドブレンドし、ペレット押出機(真空ベント付き二軸同方向押出機 TEM35B (東芝機械製))を用い、押出温度230℃、回転数250rpm、真空ベントのゲージ圧力−760mmHgにてダイプレートを通してストランドとした後、水槽にて冷却したのち、ペレタイザーを通してペレット化し、樹脂組成物を得た。なお、真空ベントのゲージ圧力は、常圧に対する差圧値として示した。得られた樹脂組成物中の未反応スチレンモノマーの含有量は500ppm、未反応メタクリル酸モノマーの含有量は50ppm、スチレン-メタクリル酸共重合体(A−1)由来の六員環酸無水物の含有量は0.5質量%であった。また、昇温速度50℃/hr、試験荷重50Nにおけるビカット軟化温度は120℃、JIS K7210のH条件(200℃、5kg)におけるメルトフローインデックス(MFI)は1.8g/10minであった。上記樹脂組成物をシート押出機(Tダイ幅500mm、リップ開度1.5mm、φ40mmのエキストルーダー(田辺プラスチック機械社製))を用い、押出温度230℃、吐出量20kg/hにて未延伸シートを得た。このシートをバッチ式二軸延伸機(東洋精機)で(ビカット軟化温度+30)℃に予熱し、歪み速度0.1/secでMD方向2.4倍、TD方向2.4倍(面倍率5.8倍)に延伸し、表1に記載の二軸延伸シートを得た。得られたシートの厚みは0.25mm、得られたシートの配向緩和応力(縦方向/横方向)は0.7/0.7MPaであった。また、シート中のゴム成分含有量は0.080質量%、ゴム成分の平均ゴム粒子径は5.0μmであった。得られたシートの両面に、バーコーターにてシリコーンエマルジョン(TSM6343(Momentive Performance Materials.inc社製))を塗布し、105℃のオーブンにて1分間乾燥させ、表4に記載の二軸延伸シートを得た。
【0068】
<実施例2〜58、比較例1〜10>
実施例1のスチレン-メタクリル酸共重合体(A)およびハイインパクトポリスチレン(B)の配合量、樹脂組成物の押出条件、シート製膜条件および延伸条件、塗工条件を調整し、表4〜表8に記載の二軸延伸シート(実施例2〜58、比較例1〜10)を得た。
【0069】
得られたシートについて、以下の方法にて測定、評価を行った。○、△、×の相対評価においては、○または△のときを合格と判定した。結果は表4〜表8に記載した。
【0070】
(1)成膜性
<ドローダウン>
上記シート押出条件(Tダイ幅500mm、リップ開度1.5mm、φ40mmのエキストルーダー(田辺プラスチック機械社製)、押出温度230℃)にて製膜したときの、製膜可能な引取速度の最小値を下記基準で評価した。
○:0.5m/分未満
△:0.5m/分以上、10.0m/分未満
×:10.0m/分以上
【0071】
<厚み均一性>
上記製膜シートを二軸延伸し、縦方向および横方向に50mm間隔で直線を5本ずつ格子状に引いた時の交点25点についてマイクロゲージを用いて厚みを測定し、平均厚みと最大値、最小値を算出し、厚み範囲から、下記基準で評価した。
○:平均厚み0.24〜0.26mm、厚み範囲:0.23〜0.27mm
△:平均厚み0.24〜0.26mm、厚み範囲:0.21〜0.29mm
×:上記以外の厚み範囲
【0072】
<外観>
二軸延伸シート350mm×350mmの範囲について、1)面積100mm
2以上のロール付着跡、2)面積10mm
2以上の気泡、3)透明および不透明異物、4)付着欠陥、5)幅3mm以上のダイライン(成膜時にTダイ出口で発生するシート流れ方向に走る欠陥)を欠点とし、欠点の個数を下記基準で評価した。
○:0個
△:1〜4個
×:5個以上
【0073】
<延伸均一性>
二軸延伸シートから100mm×100mmのシート片を9枚切り出し、前記樹脂組成物のビカット軟化温度より30℃高い温度のオーブンに、上記試験片を60分間静置し収縮させた後の縦および横方向のシート片の長さ[X]および[Y](単位:mm)を測定した。次式より算出される値について条件を満たすシート片の個数を計測し、以下の基準で評価した。
2.2≦100/[X]≦2.6、かつ、2.2≦100/[Y]≦2.6 ・・・式(A)
○:式(A)を満たすシート片の個数が15個以上
△:式(A)を満たすシート片の個数が9〜14個
×:式(A)を満たすシート片の個数が8個未満
【0074】
(2)透明性
JIS K−7361−1に準じ、ヘーズメーターNDH5000(日本電色社)を用いて、二軸延伸シートのヘーズを測定した。
○:ヘーズ1.5%未満
△:ヘーズ1.5%以上、3.0%未満
×:ヘーズ3.0%以上
【0075】
(3)シート強度
<引裂き強度>
JIS K−7128−2 第3部 直角形引裂き法に準じて、縦方向、横方向の引裂き強度を測定し、最小値を求めて、以下のように評価した。
○:10MPa以上
△:5MPa以上、10MPa未満
×:5MPa未満
【0076】
<耐折性>
ASTM D2176に準じて、シート押出方向(縦方向)とそれに垂直な方向(横方向)の耐折曲げ強さを測定し、最小値を求め、以下のように評価した。
○:5回以上
△:2回以上、5回未満
×:2回未満
【0077】
(4)成形性
<賦型性>
熱板成形機HPT?400A(脇坂エンジ二アリング社製)にて、熱板温度150℃、加熱時間2.0秒の条件で、フードパック(寸法 蓋:縦150×横130×高さ30mm、本体:縦150×横130×高さ20mm)を成形し、賦型性を下記基準にて評価した。
○:良好
△:コーナー部に僅かな形状不良
×:寸法と異なる形状またはコーナー部に著しい形状不良
【0078】
<外観>
上記フードパックの外観について、1)表面の荒れによる白化、2)金型等の汚れの転写、3)レインドロップ、を欠点とし、下記基準にて評価した。
○:欠点なし
△:蓋の天面以外に欠点が1点あり
×:上記以外(蓋の天面に欠点があるか、天面以外に2点以上の欠点がある)
【0079】
<トリミング時の耐割れ性(抜き性)>
上記フードパックを50枚重ね、プレス式の打抜き機で打ち抜いたときのヒンジ部およびフランジ部に割れが発生している枚数より以下の基準で評価した。
○:割れの発生が0枚
△:割れの発生が1〜5枚
×:割れの発生が6枚以上
【0080】
(5)耐熱性
<熱変形率>
上記成形条件で得られた弁当蓋を110℃に設定した熱風乾燥機に60分間入れた後、容器の変形を目視で観察した。
○:変形なし
△:軽微な変形、外寸変化5%未満
×:大変形、外寸変化5%以上
【0081】
<電子レンジ加熱耐性>
上記のフードパックの蓋の中央に5mm×5mmの範囲でマヨネーズを9点付着させ、容器本体に水300gを入れ、蓋容器をかぶせて1500Wの電子レンジで90秒間加熱した後、マヨネーズ付着部分の様子を目視で評価した。
○:変化なし
△:白化あり、容器がわずかに変形
×:穴あきあり、容器が著しく変形
【0082】
(6)滑性
容器天面から切り出したシートの食品接触面と食品非接触面を重ねた状態にて、JIS P8147 紙および板紙−静および動摩擦係数の測定方法に準じた方法にて摩擦角(滑り始める角度)を測定し、以下の基準で評価した。
○:15°未満
△:15°以上、30°未満
×:30°以上
【0083】
【表4】
【0084】
【表5】
【0085】
【表6】
【0086】
【表7】
【0087】
【表8】
【0088】
表4〜表8の結果から、実施例1〜58はいずれも、本発明の規定を満足するものであり、製膜性(ドローダウン、厚み均一性、外観、延伸均一性)、透明性(ヘーズ)、シート強度(引裂き強度、耐折性)、成形性(賦型性、外観、トリミング時の耐割れ性(抜き性))、耐熱性(熱変形率、電子レンジ加熱耐性)、滑性(摩擦角)のいずれの性能においても、優れた性能を有するものであった。
【0089】
一方、比較例1は、スチレン−メタクリル酸共重合体(A−2)中のメタクリル酸単量体単位の含有量が少ないため、ビカット軟化温度が低く、熱変形率と電子レンジ加熱耐性に劣るものであった。比較例2は、スチレン−メタクリル酸共重合体(A−8)中のメタクリル酸単量体単位の含有量が多いため、製膜時の厚み均一性と外観および賦型性に劣るものであった。比較例3は、ハイインパクトポリスチレン(B)の含有量が多いものであり、スチレン樹脂組成物中のゴム成分の含有量が多く、製膜時の外観と透明性に劣るものであった。比較例4は、ハイインパクトポリスチレン(B)を含有しないものであり、スチレン樹脂組成物中にゴム成分を含有せず、シート強度(引裂き強度、耐折性)、トリミング時の耐割れ性、滑性に劣るものであった。
【0090】
比較例5は、スチレン−メタクリル酸共重合体(A−25)中のメタクリル酸単量体単位の含有量が比較的少なく、さらに共重合モノマーとしてブタジエンを含むために、ビカット軟化温度が低く、熱変形率と電子レンジ加熱耐性に劣るものであった。比較例6は、スチレン−メタクリル酸共重合体(A−26)中のメタクリル酸単量体単位の含有量が比較的多く、さらに共重合モノマーとして無水マレイン酸を含むために、ビカット軟化温度が高く、賦型性に劣るものであった。比較例7は、横方向の配向緩和応力が高いものであり、引裂き強度、賦型性、トリミング時の耐割れ性に劣るものであった。比較例8は、縦方向と横方向の配向緩和応力がいずれも低いものであり、耐折性とトリミング時の耐割れ性に劣るものであった。比較例9は、縦方向と横方向の配向緩和応力がいずれも高いものであり、賦型性に劣るものであった。比較例10は、横方向の配向緩和応力が低いものであり、引裂き強度とトリミング時の耐割れ性に劣るものであった。