(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6389595
(24)【登録日】2018年8月24日
(45)【発行日】2018年9月12日
(54)【発明の名称】電気接触子
(51)【国際特許分類】
H01R 13/24 20060101AFI20180903BHJP
H01R 43/16 20060101ALI20180903BHJP
【FI】
H01R13/24
H01R43/16
【請求項の数】2
【全頁数】8
(21)【出願番号】特願2013-175149(P2013-175149)
(22)【出願日】2013年8月27日
(65)【公開番号】特開2015-46229(P2015-46229A)
(43)【公開日】2015年3月12日
【審査請求日】2016年8月21日
(73)【特許権者】
【識別番号】501462929
【氏名又は名称】株式会社ティー・ピー・エス
(74)【代理人】
【識別番号】100141092
【弁理士】
【氏名又は名称】山本 英生
(72)【発明者】
【氏名】高木 孝司
【審査官】
板澤 敏明
(56)【参考文献】
【文献】
特開2003−168510(JP,A)
【文献】
特表2012−503855(JP,A)
【文献】
特開平07−045321(JP,A)
【文献】
特開2003−025026(JP,A)
【文献】
特開平02−119072(JP,A)
【文献】
特開平08−037051(JP,A)
【文献】
米国特許第7387541(US,B1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H01R 13/24
H01R 43/16
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
箱形のハウジング、前記ハウジングの上部に設けられた開口から突出し、接触対象物に接触する山形の接触部、前記接触部に一体的に連続し、前記接触部を前記ハウジング上方に付勢するバネ部、及び前記接触部の自由端を係止し、前記バネ部が前記ハウジング上方に所定以上突出することを防止するストッパ部を備え、これら部位が折曲された一枚の導電性金属板から形成された電気接触子であって、
前記バネ部は前記ハウジングの側壁の前端よりも内側に位置する底壁の前端部を固定端とし、複数の曲げ部を有するS字形状を成して前記箱形ハウジング内に収容され、
当該曲げ部の一方は前記底壁の前端部で折返されると共に、前記曲げ部の他方は前記ハウジングの後端より内側で折返されて、それぞれ前記ハウジングの前端寄り、後端寄りに形成されており、
前記ストッパ部は、前記底壁の前端よりも前方のハウジング部分に形成されて、前記接触部の自由端を前記一方の曲げ部に対向する上方に係止することを特徴とする電気接触子。
【請求項2】
前記接触部に連続し前記自由端側とは反対側に位置する曲げ部に至る上バネ部分は、対向する前記ハウジングの上壁内面と間隙を介して設けられていることを特徴とする請求項1に記載の電気接触子。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、電気接触子に関し、特に、小型電気機器に配置され、バッテリー接続用等の電気接触に用いられる電気接触子に関する。
【背景技術】
【0002】
小型電気機器、特に携帯電話機は薄型化が要求されている。この要求に対応するために、特許文献1は、バッテリー等の相手接点に接触する接触部がハウジングから前方に突出し、その接触部の後部に弾性的に縮むコイルスプリングを配置した、いわゆるポゴピンコネクタを提案している。しかしながら、この特許文献1に提案されたポゴピンコネクタは部品点数が多くコスト高である。
【0003】
これに対し、特許文献2は、板金の打抜きおよび折曲げ加工により、上記のコイルスプリングの役割りを担うばね部を含むコンタクトが一体に形成された、部品点数の少ない電気コネクタを提案している。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2011−96606号公報
【特許文献2】特開平11−162592号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、特許文献2に開示された電気コネクタは、ハウジングが別体であり、この別体のハウジング内に収納しなければならず、作業に手間がかかると共に、この収納作業中に変形されたりして、コネクタ(接触子)としての作用を充分に果たすことが出来なくなってしまうことがあった。また、このコネクタは、上記したように、別体のハウジング内に収容しなければならないので、結果としてコスト高になるという欠点もあった。
【0006】
そこで、本発明は、上記したような電気コネクタのような欠点がなく、堅牢であり、安価に製造でき、しかも実装の際に取り扱いやすい電気接触子およびその製造方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
前記目的は、以下の(1)〜(5)の構成の本発明の電気接触子およびその製造方法により達成される。
(1)
箱形ハウジング、このハウジングの上部に設けられた開口から突出し、接触対象物に接触する接触部、この接触部に一体的に連続し、前記接触部をハウジング上方に付勢するバネ部、前記接触部の少なくとも一方の側部に設けられた係止部、および前記ハウジングの少なくとも一方の側壁に設けられた切欠き部の上縁で形成され、その上縁に前記係止部が係合することにより、前記バネ部が前記ハウジング上方に所定以上突出しないようにするストッパ部を備え、これらの部位が、一枚の導電性金属板を折り曲げ成形することにより形成されていることを特徴とする電気接触子。
(2)
前記バネ部が蛇行形状をしている前記(1)の電気接触子。
(3)
複数の電気接触子に相当する、キャリアに連結して横方向に並べられて設けられた複数の導電性金属材料板片を備える一枚の導電性金属板を準備し、この一枚の導電性金属板片を順送金型により打ち抜き、曲げ加工をして電気接触子を製造する電気接触子の製造方法であって、先ず、一番目の材料板を、打ち抜き用金型を用いて、前記ハウシングの底壁を形成するための底壁形成部、前記ハウジングの2つの側壁を形成するための、前記底形成部の両側に設けられた第1および第2の側壁形成部、前記ハウジングの上壁を形成するための、前記第1および第2の側壁形成部の一方の側部に前記側壁形成部より短い設けられた上壁形成部、前記バネ部を形成するための、前記底壁形成部の一端に設けられたバネ部形成部、および前記接触部を形成するための、前記バネ部形成部の先端に設けられた接触部形成部を備え、前記接触部には、その少なくとも一方の側部に係止部が設けられ、前記第1および第2の側壁形成部には、その少なくとも一方に前記係止部が嵌合する切欠きが設けられた一つの導電性金属板素材を打ち抜く打ち抜き工程、複数の折曲げ工程を持つ金型を用いて、この導電性金属板素材を折り曲げ成形することにより、箱形ハウジング、このハウジングの上壁に設けられた開口から突出し、接触対象物に接触する接触部、この接触部に一体的に連続し、前記接触部をハウジング上方に付勢するバネ部、前記接触部の少なくとも一方の側部に設けられた係止部、および前記ハウジングの少なくとも一方の側壁に設けられた切欠き部の上縁で形成され、その上縁に前記係止部が係合することにより、前記バネ部が前記ハウジング上方に所定以上突出しないようにするストッパ部を備えた電気接触子を形成する折り曲げ成形工程、および形成された電気接触子をキャリアから切り離す切り離し工程を備えており、以上の工程を2番目、3番目の導電性金属板片と繰り返して行うことにより、1番目、2番目、3番目の導電性金属板片と工程が1つずつ進む様にして複数の電気接触子を製造することを特徴とする電気接触子の製造方法。
(4)
形成された電気接触子をキャリアから順次切り離すか、すべての電気接触子をキャリアに接続した状態で製造し、最後にすべての電気接触子をキャリアから切り離して複数個の電気接触子を製造する前記(3)の電気接触子の製造方法。
(5)
前記バネ部が蛇行形状をしている前記(3)または(4)の電気接触子の製造方法。
【発明の効果】
【0008】
本発明の電気接触子は、該電気接触子を構成するハウジング、接触部およびバネ部を、一枚の導電性金属板を折り曲げ成形して形成してあるので、堅牢であり、安価に製造できる。しかも、該電気接触子を構成するハウジング、接触部およびバネ部が一体であるため、実装の際には、ハウジングを把持して実装すればよいので、取り扱いやすく、接触部に触れることがないので、接触部の変形を防止できる。また、ハウジングが一体であるので、その底壁等を被取付機器である電気機器に半田付け等で取り付けるだけで実装ができ、実装場所を選ばない。更には、電気接触子全体が導電性であるので、リード線等をどこにでも接続でき、配線が自由であるという効果を持つ。
【図面の簡単な説明】
【0009】
【
図1】本発明の実施の形態の電気接触子の斜視図である。
【
図2】
図1に示した電気接触子を反対側から見た斜視図である。
【
図3】
図1に示した電気接触子の内部を表す斜視図である。
【
図4】
図1に示した電気接触子の製造工程を説明するための図である。
【発明を実施するための形態】
【0010】
以下、添付図面を参照して、本発明の実施の形態による電気接触子について説明する。
本発明の実施の形態による電気接触子10は、
図1、
図2および
図3に示したように、箱形ハウジング12、このハウジングの上部に設けられた開口12aから突出し、バッテリーの端子等のような接触対象物(図示せず)に接触する接触部14、およびこの接触部14に一体的に連続し、前記接触部16をハウジング12上方に付勢するバネ部16を備えている。これらハウジング12、接触部14およびバネ部16は、一枚の導電性金属板を打ち抜き、それを折り曲げ成形することにより形成されている。この導電性金属としては、銅合金、ステンレス材が好ましい。
【0011】
前記接触部14は、図に示したように、ほぼ逆U字形をしており、バネ部16がこれに続いている。このバネ部16自体は第1曲げ部16−1、第2曲げ部16−2を有し、ハウジング12内に収容されている。
【0012】
前記ハウジング12は、底壁20、その両側縁から垂直に立ち上がった第1および第2の側壁22、24、ハウジング12の上部に前記開口12aを形成するため、該開口12aを残してハウジング12の上部を覆う上壁26、およびハウジング12のバネ部16の前側を覆うように垂直に延びる前壁28を備えている。望ましくは、このハウジング12は、前記前壁28に対向した後壁30を備えていることが好ましい。前記バネ部16は、ハウジング12の底壁20に続いている。また、前記接触部14から前記第2曲げ部16−2に至る上バネ部分16−3と、前記上壁26内面との間には間隙26aが設けられている。
【0013】
前記ハウジング12の側壁22および24には、その下部から上方に所定長延びる切欠き部32および34が形成されている。一方、接触部14には、その自由端14aの両側部に係止部36および38が形成されており、これら係止部36および38は、それぞれ切欠き部32および34に嵌合されている。前記自由端14aは、前記バネ部16の作用により上方に付勢されているが、切欠き部32および34の上縁32aおよび34aに当接することにより、それ以上上方に跳ね上がらないようになっている。その意味で、上縁32aおよび34aは、ストッパ部を形成している。前記係止部は自由端の先端に設けても良い。この場合は、係止部は一つであってもよい。このとき、ストッパ部を形成する切欠き部は、ハウジングの前壁28に設ける。
【0014】
次に、
図4および
図5を参照して、上述した電気接触子10の製造方法の各工程について説明する。この製造方法においては、複数の電気接触子に相当する、キャリアに連結して横方向に並べられて設けられた複数の導電性金属材料板片を備える一枚の導電性金属板(図示せず)を準備し、この一枚の導電性金属板片を順送金型により打ち抜き、曲げ加工をして複数の電気接触子を製造する。なお、この説明においては、前記ハウジング12の後壁30は省略して説明する。
【0015】
まず、1番目の導電性金属板片を、順送金型の打ち抜き金型を用いて、
図4(a)、
図5(a)に示した形状の素材110に打ち抜く。
この素材110は、前記ハウシングの底壁20を形成するための底壁形成部120、前記ハウジングの2つの側壁22、24を形成するための、前記底形成部の両側に設けられた第1および第2の側壁形成部122および124、前記ハウジングの上壁26を形成するための、前記第1および第2の側壁形成部の一方の側部に前記側壁形成部より短い設けられた上壁形成部126、前記ハウジングの前壁28を形成するための、前記第1および第2の側壁形成部の一方の前縁に連続して設けられた前壁形成部128、前記バネ部16を形成するための、前記底壁形成部の一端に設けられたバネ部形成部116、および前記接触部14を形成するための、前記バネ部形成部の先端に設けられた接触部形成部114を備えている。前記接触部形成部114には、その自由端の両側部に係止部36および38が設けられ、前記第1および第2の側壁形成部122および124には、それぞれ切欠き32および34が設けられている。
【0016】
電気接触子10を形成するには、前記素材110を次の工程に従い、複数の折曲げ用の金型を用いて、折り曲げることにより行われる。
第1工程:
図4(b)、(c)、
図5(b)、(c)に示したように接触部形成部114を曲げ、接触部14を形成する。
第2工程:
図4(d)、
図5(d)に示したようにバネ部形成部116を中程から
図4で見て下方に折り曲げ、バネ部16を途中まで形成する。
第3工程:
図4(e)、
図5(e)に示したように前壁形成部128を折り曲げる。
第4工程:
図4(f)、
図5(f)に示したように上壁形成部126を折り曲げる。
第5工程:
図4(g)、
図5(g)に示したように第1の側壁形成部122を折り曲げ、第1の側壁22を形成する。
第6工程:
図4(h)、
図5(h)に示したようにバネ部形成部116をその元の部分から
図4で見て起こすように折り曲げ、バネ部16を完成する。
このとき、係止部36は、切欠き32に係合する。
最終工程:最後に、
図4(i)、
図5(i)に示したように第2の側壁形成部124をその底辺から垂直に起こすように折り曲げ、第2の側壁2416を完成する。
このとき、同時に、上壁26および前壁28も形成されると共に、係止部38は、切欠き34に係合する。
【0017】
形成された電気接触子は、キャリアから順次切り離されるか、すべての電気接触子をキャリアに接続した状態で製造し、最後にすべての電気接触子をキャリアから切り離す。
以上により、本実施の形態の電気接触子10は完成される。
【0018】
なお、この順送金型を用いた製造方法では、1番目の導電性金属板片による前記素材110が前記第1工程を受けている間に、前記打ち抜き金型を用いて、2番目の導電性金属板片の打ち抜きを行い、次いで、1番目の導電性金属板片による前記素材110が前記第2工程を受けている間に、2番目の導電性金属板片の第1工程を、そして前記打ち抜き金型を用いて、3番目の導電性金属板片の打ち抜きを行い、といったように並べられた導電性金属板片を順次金型内で送って、複数の電気接触子を製造する。
【0019】
以上説明した本発明の実施の形態による電気接触子は、該電気接触子を構成するハウジング、接触部およびバネ部を、一枚の導電性金属板を折り曲げ成形して形成してあるので、堅牢であり、安価に製造できる。しかも、該電気接触子を構成するハウジング、接触部およびバネ部が一体であるため、実装の際には、ハウジングを把持して実装すればよいので、取り扱いやすく、接触部に触れることがないので、接触部の変形を防止できる。また、ハウジングが一体であるので、その底壁等を被取付機器である電気機器に半田付け等で取り付けるだけで実装ができ、実装場所を選ばない。更には、電気接触子全体が導電性であるので、リード線等をどこにでも接続でき、配線が自由であるという効果を持つ。
【符号の説明】
【0020】
10 電気接触子
12 ハウジング
14 接触部
16 バネ部
20 底壁
22 側壁
24 側壁
26 上壁
28 前壁
30 後壁
32 切欠き
32a 切欠き32の上縁(ストッパ)
34 切欠き
34a 切欠き34の上縁(ストッパ)
36 係止部
38 係止部