(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
前記袋体が前記板状部材の後面に当接しながら膨出することで、前記板状部材において前記一端部に対応する部分が前記他端部に対応する部分よりも前方に位置するように前記板状部材が変形することにより前記一端部が前記他端部よりも前方に移動し、
前記板状部材において、前記着座者の一方の肩の後方に位置する第1部分及び前記着座者の他方の肩の後方に位置する第2部分の双方の間には、該双方を分離するための分離部が形成されていることを特徴とする請求項2乃至4のいずれか一項に記載の車両用シート。
前記板状部材は、前記袋体が前記板状部材の後面に当接しながら膨出することで前記板状部材において前記一端部に対応する部分が前記他端部に対応する部分よりも前方に位置するように変形する変形部を、上端部に備えており、
前記変形部の外縁のうち、前記幅方向外側の端部に位置する部分は、前記幅方向外側に向かうにつれて降下するように傾斜していることを特徴とする請求項1、2及び4のいずれか一項に記載の車両用シート。
【発明を実施するための形態】
【0019】
以下、本発明の一実施形態(本実施形態)の車両用シートについて、図面を参照しながら説明する。なお、以下の説明において、「前後方向」とは、車両用シートの前後方向に相当し、車両走行時の走行方向と一致する方向である。また、「幅方向」とは、車両用シートの幅方向に相当し、具体的には、車両用シートを正面視した際の左右方向である。
【0020】
また、以下に説明する実施形態は、本発明の理解を容易にするための一例に過ぎず、本発明を限定するものではない。本発明は、その趣旨を逸脱することなく、変更、改良され得ると共に、本発明にはその等価物が含まれることは勿論である。特に、以下の説明の中で述べる各部品の形状、材質及び配置位置等については、本発明の趣旨を逸脱しない限りにおいて適宜変更することが可能である。
【0021】
<<本実施形態の車両用シートの概略構成>>
先ず、
図1を参照しながら、本実施形態の車両用シート(以下、本シートS)について、その概略構成を説明する。
図1は、本シートSの概略構成を示す図である。
【0022】
本シートSは、その基本構成(後述する肩支持部を除いた構成)において、従来の車両用シートと共通している。すなわち、本シートSは、
図1に示すように、着座者を背側から支持するシートバックS1、着座者の臀部を支持するシートクッションS2、着座者の頭部を支持するヘッドレストS3より構成されている。シートバックS1及びシートクッションS2は、フレーム体にパッド材を載置してから表皮材で被覆することにより構成される。ヘッドレストS3は、頭部の芯材にパッド材を配してから表皮材で被覆することにより構成される。また、ヘッドレストS3は、ヘッドレストピラーhpを介してシートバックS1の上端部に支持されている。
【0023】
一方、本シートSは、シートバックS1のうち、着座者の肩を支持する部分である肩支持部Sa1に特徴を有する。具体的に説明すると、本シートSに着座者が着座してシートバックS1に凭れ掛かると、肩支持部Sa1が着座者の肩を包み込んで当該肩を押さえるようになる。より詳しく説明すると、肩支持部Sa1内に搭載された機構が作動し、肩支持部Sa1が着座者の肩に当接するようになる。これにより、
図1中、記号Fにて示す力が肩支持部Sa1から着座者の肩に向かって作用するようになる。かかる力Fは、同図に示す通り、幅方向内側に向かう成分と、下方に向かう成分とを有している。したがって、着座者の肩は、幅方向内側に押されるとともに、下方にも押されることとなる。
【0024】
以上のように着座者の両肩が、それぞれ、シートバックS1の肩支持部Sa1によって支持されて幅方向内側及び下方に押されることにより、着座者の上体が幅方向や上下方向にずれ動くのを抑制することが可能となる。これにより、着座者の姿勢は、本シートSに着座している間、安定的に保持されるようになる。
【0025】
<<シートバックの内部構造>>
次に、前述した肩支持部Sa1を備える本シートSのシートバックS1について、その内部構造を
図2乃至5を参照しながら説明する。
図2は、本シートSのシートバックS1のうち、シートバックフレームSf1の構成を示す図であり、シートバックフレームSf1を前方から見たときの図である。
図3は、
図2に図示のシートバックフレームSf1から板状部材を取り外した状態を図示している。
図4は、支持プレートの取り付け位置についての説明図として、シートバックフレームSf1の上端部から支持プレートを取り外した状態を図示しており、同図には支持プレートの取り付け位置が破線にて示されている。
図5は、
図4中のA−A断面を示す図である。
なお、図示の都合上、
図2乃至5に記載された各部品は、幾分簡略化されており、例えば、
図5中、ピラー位置調整機構6については、その内部構造を省略して図示している。
【0026】
シートバックS1の内部には、
図2及び3に示すようにシートバックフレームSf1が備えられており、同フレームSf1には、シートバックS1を構成する各種部品が取り付けられている。シートバックフレームSf1は、シートバックS1の骨格をなし、正面視で略矩形状の枠体となっている。具体的に説明すると、シートバックフレームSf1は、上端部に配置された上部フレーム1と、幅方向両端にそれぞれ設けられた一対の側部フレーム2と、側部フレーム2の下端部同士を連結する下部連結フレーム3と、を備えている。
【0027】
上部フレーム1は、逆さU字状の部分であり、金属パイプを略U字状に折り曲げ加工することにより構成される。この上部フレーム1の一端部は、一方の側部フレーム2の上端に繋ぎ込まれ、他端部は、他方の側部フレーム2の上端に繋ぎ込まれている。すなわち、上部フレーム1は、一対の側部フレーム2の上端同士を連結するものである。
【0028】
また、上部フレーム1の上方にはヘッドレストS3が配設されている。より具体的に説明すると、上部フレーム1の後方には、ヘッドレストS3の下部から延出したヘッドレストピラーhpを支持するピラー支持部7を備えたピラー位置調整機構6が設けられている。このピラー位置調整機構6は、ピラー支持部7に支持されたヘッドレストピラーhpの位置を不図示の駆動機構によって上下方向に移動させることで、ヘッドレストS3の高さを自動調整する機構である。
【0029】
そして、上部フレーム1には、上記のピラー位置調整機構6を保持するために、上部フレーム1の一端部から他端部に向かって延出した角パイプ状の保持パイプ12が取り付けられている。本実施形態では、
図4に示すように、上下方向に並べて2つの保持パイプ12が設けられているが、保持パイプ12の個数については任意に設定することが可能である。
【0030】
一方、
図5に示すように、保持パイプ12には、ピラー位置調整機構6を取り付けるための取り付けブラケット13が固定されている。より具体的に説明すると、取り付けブラケット13は、ピラー位置調整機構6が取り付けられる基部13aと、基部13aの両側端から前方に延出した一対の側部13bと、を備えている。そして、各側部13bの先端が2本の保持パイプ12のそれぞれの後面に溶接されることにより、取り付けブラケット13が保持パイプ12に固定されている。
【0031】
一対の側部フレーム2は、シートバックフレームSf1の側面を構成する部分であり、シートバックS1の幅を規定するために左右方向に離間して配設され、上下方向に延在している。各側部フレーム2の構成について説明すると、
図2や3に示すように、平板状の側板2aと、この側板2aの前端部からU字型に内側へ屈曲した前縁部2bと、が各側部フレーム2に備えられている。
【0032】
また、各側板2aの表面のうち、幅方向内側に位置する面にはエアセル(以下、側方エアセル4)が取り付けられており、この側方エアセル4によってサイドサポートSa2が構成されている。このサイドサポートSa2は、移動規制部に相当し、側方エアセル4に流体の一例である空気が封入されて幅方向内側に膨出することで着座者の上体が幅方向において移動するのを規制するものである。本実施形態において、サイドサポートSa2は、シートバックS1の幅方向両端部に備えられており、上下方向において着座者の腹部と略同じ高さとなる位置に配置されている。また、サイドサポートSa2を構成する側方エアセル4には、給排気用のチューブ部材C1が接続されている。
【0033】
さらに、幅方向において一対の側部フレーム2の間に設けられたスペースには、着座者の背がシートバックS1に凭れ掛かった際の圧力を受ける受圧プレート5が配設されている。この受圧プレート5は、樹脂製の部材であり、正面視で略T字状に成形されている。また、受圧プレート5のうち、より幅広に形成された上端部は、その幅方向両端部が幾分前方に向かうように屈曲している。
【0034】
また、受圧プレート5は、弾性を有する結合ワイヤ5aにて各側部フレーム2に取り付けられている。より詳しく説明すると、結合ワイヤ5aは、一対の側部フレーム2の間に架設されており、その両端部が側部フレーム2に係止されている。結合ワイヤ5aの中央部は、受圧プレート5の裏面に形成された掛け部(不図示)に掛けられている。この結果、受圧プレート5は、一対の側部フレーム2の間に設けられたスペース内に配置されるようになる。
【0035】
そして、着座者の背がシートバックS1に凭れ掛かることで受圧プレート5の前面に圧力が掛かると、弾性を有する結合ワイヤ5aが撓んで受圧プレート5が後方に移動するようになる。これにより、着座者の上体は、後方に向かって適度に沈み込むようになる。なお、受圧プレート5の形状については、
図3等に記載したものに限定されず、他の形状であってもよい。
【0036】
ところで、本実施形態に係るシートバックS1の特徴は、前述したように、着座者の肩を包み込むように支持する肩支持部Sa1を備えている点である。そして、本実施形態に係る肩支持部Sa1の内部構造は、
図3に図示のエアセル10と、
図2に図示の樹脂プレート20とを備えている。
【0037】
エアセル10は、流体の一例である空気が内部に封入されることにより膨出する袋体であり、
図2に示すように幅方向に並べて2つ設けられている。具体的に説明すると、各エアセル10の外形形状は、正面視で、一端側が半円となった長方形状となっている。ただし、エアセル10の外形形状については、特に限定されるものではなく、所定方向に長くなった形状であればよい。また、本実施形態では、袋体の一例として、空気が封入されることにより膨出するエアセル10を用いることとしたが、空気以外の流体、例えば、液体が封入することにより膨出する袋体を用いることも可能である。
【0038】
また、2つのエアセル10は、上下方向において受圧プレート5の直ぐ上方に位置し、その長手方向が幅方向に対して若干傾いた姿勢で設けられている。ここで、各エアセル10の長手方向両端のうち、幅方向外側にある端は、
図3に示すように、シートバックフレームSf1の側端(厳密には、上部フレーム1の側端)よりも外側に幾分はみ出た位置にある。
【0039】
さらに、各エアセル10は、
図3に示すように、その長手方向両端のうち、幅方向外側にある端が幅方向内側にある端よりも下方に位置するように設けられている。さらにまた、幅方向において、2つのエアセル10の間には隙間が形成されているが、かかる隙間は、
図3に示すように、シートバックS1の幅方向中央部に位置している。
【0040】
そして、上述の位置に2つのエアセル10を配置するために、シートバックフレームSf1に支持プレート11が取り付けられている。この支持プレート11は、幅方向に長い金属プレートであり、2つのエアセル10の各々を後方から支持するものである。また、支持プレート11の両側端部は、シートバックフレームSf1の側端に達し、さらに後方に折れ曲がっている。
【0041】
2つのエアセル10の各々は、支持プレート11の前面に取り付けられることで支持され、具体的には、各エアセル10の長手方向中央部が支持プレート11に留められている。また、各エアセル10の長手方向両端部のうち、幅方向外側にある端部には不図示の舌状突出部が設けられており、この舌状突出部が支持プレート11の側端部に沿って後方に折れ曲がって当該側端部にネジ止めされている。
【0042】
一方、支持プレート11は、上下方向において上部フレーム1と側部フレーム2との接合箇所と略同じ高さに位置するように、シートバックフレームSf1の前面に取り付けられている。支持プレート11の取り付け位置について
図4及び
図5を参照しながら具体的に説明すると、支持プレート11は、その後面にて、ピラー位置調整機構6を保持するために設けられた2つの保持パイプ12の前面に当接しており、各保持パイプ12に溶接にて固定されている。すなわち、本実施形態において、保持パイプ12は、支持プレート11の後面に当接して支持プレート11を保持する保持部として機能している。
【0043】
以上のように支持プレート11が、その後方にある保持パイプ12によって保持されることにより、エアセル10と干渉することなく支持プレート11を適切に保持することが可能となる。この結果、支持プレート11により支持される各エアセル10は、予め決められた取り付け位置にて良好に位置し続けるようになる。なお、本実施形態では、ピラー位置調整機構6を保持するために設けられた保持パイプ12に支持プレート11を保持させている。つまり、本実施形態では、ピラー位置調整機構6保持用の部材を支持プレート11保持用の部材として兼用するので、支持プレート11の支持剛性を効率良く向上させることが可能となる。
【0044】
ところで、各エアセル10には、
図3に示すようにチューブ部材C2が接続されている。このチューブ部材C2は、エアセル10へ供給される空気及びエアセル10から排出される空気の経路を形成するものであり、可撓性を有し、また、エアセル10別に設けられている。
【0045】
そして、各チューブ部材C2は、受圧プレート5の後方を通って受圧プレート5の上端に至り、さらに、受圧プレート5の上方から前側に延びて各エアセル10に接続されている。ここで、各チューブ部材C2は、幅方向において2つのエアセル10の間に形成された隙間が位置しているシートバックS1の中央部を通るように配索されている。
【0046】
具体的に説明すると、エアセル10別に設けられたチューブ部材C2は、圧縮空気の供給源(具体的には、後述のコンプレッサ52)から延出し、受圧プレート5の後方を通ってエアセル10に向かっている。また、各チューブ部材C2は、受圧プレート5の後方を通るにあたり、シートバックフレームSf1の側方から受圧プレート5の幅方向中央に向かって延出し、その中途位置で、受圧プレート5の後面に取り付けられた不図示のクリップにて束ねられている。そして、各チューブ部材C2のうち、受圧プレート5の幅方向中央に至ってからエアセル10に接続されるまでの部分は、シートバックフレームSf1の幅方向中央部を通るように延出している。
【0047】
以上のように本実施形態では、エアセル10間の隙間が位置しているシートバックS1の幅方向中央部を通るように各チューブ部材C2が配索されている。これにより、エアセル10間の隙間が位置しているスペースを有効利用するので、本シートSでは、シートバックS1をより小型化することが可能である。
【0048】
樹脂プレート20は、2つのエアセル10の前方位置に配置された板状部材である。この樹脂プレート20は、エアセル10の膨出に伴って着座者の肩に作用する力の作用範囲を拡大するために設けられ、正面視で上下方向に長い外形形状を有している。より具体的に説明すると、樹脂プレート20は、
図2に示すように、エアセル10の膨出に伴って変形する変形部21と、変形部21よりも下方に位置し下側に向かって延出した延出部22と、を有する。また、変形部21と延出部22とは、互いに隣接しており、その境界位置には、幅方向に沿って直線状に形成された溝23が設けられている。さらに、樹脂プレート20のうち、溝23が形成されている領域の幅方向両端部分には、幅方向内側に向かって略三角形状の切れ込み20aが形成されている。
【0049】
変形部21は、樹脂プレート20の上端部に配置されており、正面視で略六角形状となっている。変形部21の幅方向中央部には、上端から下方に向かって逆三角形状の切り欠き24が形成されており、この切り欠き24の先端は、変形部21の上下方向中央位置よりもやや下方に位置している。そして、変形部21は、切り欠き24を境にして2つの部分(具体的には、一端側変形部片25及び他端側変形部片26)に分離しており、分離した2つの部分である一端側変形部片25及び他端側変形部片26がそれぞれ個別に変形可能となっている。換言すると、切り欠き24は、両変形部片25、26の間に形成され、両変形部片25、26を分離するための分離部に相当する。
【0050】
ここで、一端側変形部片25及び他端側変形部片26は、着座者の背がシートバックS1に凭れ掛かった際に着座者の肩の後方に位置する。より厳密に説明すると、一端側変形部片25は、着座者の一方の肩の後方に位置する第1部分に相当し、他端側変形部片26は、着座者の他方の肩の後方に位置する第2部分に相当する。
【0051】
そして、一端側変形部片25及び他端側変形部片26の各々は、対応するエアセル10の直ぐ前に位置しており、対応するエアセル10が膨出した際に着座者の肩を包むように湾曲しながら変形する。これにより、シートバックS1の肩支持部Sa1が着座者の肩を押さえるようになり、以て着座者の姿勢を安定的に保持することが可能となる。
【0052】
なお、エアセル10は、対応する変形部片25、26の後面に当接し、かかる状態で膨出する。そして、エアセル10が膨出することで、エアセル10から着座者の肩に力が作用するようになる。このとき、力の作用範囲は、変形部21により拡大されるので、着座者の肩が広範囲で押されるようになる。
【0053】
すなわち、変形部21の各変形部片25、26の前面の面積は、エアセル10における各変形部片25、26との当接面の面積よりも広くなっている。このため、エアセル10の膨出によって生じる力は、着座者の肩に対してより広い範囲で及ぶようになる。このようにエアセル10の膨出によって発生する力の作用範囲を樹脂プレート20により拡大すれば、比較的に小型のエアセル10を用いた場合であっても着座者の肩を適切に押さえることが可能となる。特に、本実施形態では、樹脂プレート20において、変形部21は、他の部分(具体的には延出部22)よりも幅広となっており、エアセル10の膨出によって生じる力の作用範囲をより一層拡大し易くなっている。
【0054】
さらに、本実施形態では、前述したように、一端側変形部片25及び他端側変形部片26の各々を個別に変形させることが可能である。これにより、本シートSでは、着座者の両肩の各々を個別に押さえることが可能となり、結果として、着座者の姿勢を安定的に保持するために着座者の肩を押さえる際の力を、左右の肩の各々に対して個別に調整することが可能となる。
【0055】
なお、各変形部片25、26において上下方向の中央部は、最も幅広となっており、
図2に示すように、当該中央部がエアセル10の直ぐ前方に位置している。また、各エアセル10の長手方向両端のうち、幅方向外側にある端は、
図2に示すように、対応する変形部片25、26よりも外側に幾分はみ出た位置にある。さらに、各変形部片25、26の外縁のうち、幅方向外側の端部に位置する部分は、着座者の肩を模して略円弧状の曲線をなし、幅方向外側に向かうにつれて降下するように傾斜している。
【0056】
延出部22は、樹脂プレート20の上下方向中央部から下端部に亘る部分である。この延出部22(厳密には、延出部22の下端部)は、着座者の背がシートバックS1に凭れ掛かった際に着座者の腰の後方に位置している。また、本シートSにおいて、変形部21及び延出部22は、連結して一体化されており、具体的には一体成形品となっている。これにより、エアセル10が膨出すると、これに伴って着座者の肩に作用する力の作用範囲が拡大し、着座者の腰まで押さえることが可能となる。なお、本実施形態において、延出部22は、上下方向に対して若干湾曲して弓形になっている。このため、延出部22によって着座者の腰を前方に押す際、比較的なだらかな面にて着座者の腰を好適に押すことが可能となる。
【0057】
また、延出部22は、
図2に示すように、変形部21よりも幅狭となっており、シートバックS1の幅方向両端部に備えられた一対のサイドサポートSa2間の隙間(より厳密には、側方エアセル4)よりも幅狭となっている。また、樹脂プレート20を設置する際、延出部22は、幅方向において左右一対のサイドサポートSa2間を通過するように配置されている。これにより、本シートSでは、樹脂プレート20とサイドサポートSa2との干渉を抑制しつつ、樹脂プレート20を通じて着座者の肩や腰を適切に押さえることが可能となる。
【0058】
<<エアセル10と樹脂プレート20との位置関係>>
各エアセル10は、樹脂プレート20の変形部21の後方に位置している。より厳密に説明すると、各エアセル10は、対応する変形部片25、26の後方に位置している。具体的には、一方のエアセル10は、一端側変形部片25の直ぐ後ろに位置し、他方のエアセル10は、他端側変形部片26の直ぐ後ろに位置している。そして、各エアセル10は、対応する変形部片25、26の後面に当接しながら膨出する。これにより、各変形部片25、26が変形し、シートバックS1中の肩支持部Sa1が着座者の肩を包み込むように押さえるようになる。
【0059】
そして、本シートSでは、エアセル10の膨出によって樹脂プレート20が着座者の肩を包み込むように変形することを実現するために、各エアセル10と樹脂プレート20との位置関係を調整している。以下、各エアセル10と樹脂プレート20との位置関係について
図6を参照しながら説明する。
図6は、エアセル10と樹脂プレート20との位置関係を示す図であり、図中には、説明を分かり易くするためにエアセル10及び樹脂プレート20のみを図示している。
なお、一端側変形部片25とエアセル10との位置関係については、他端側変形部片26とエアセル10との位置関係を左右反転したものであるので、以下の説明では、一端側変形部片25とエアセル10との位置関係のみを説明することとする。
【0060】
エアセル10は、
図6に示すように、その中心位置が一端側変形部片25の中心位置よりも上方、かつ、幅方向外側に位置している。ここで、エアセル10の中心位置とは、エアセル10の長手方向中央であり、かつ、エアセル10の高さ方向中央の位置である。また、一端側変形部片25の中心位置とは、一端側変形部片25の幅方向中央であり、かつ、一端側変形部片25の上下方向中央の位置である。なお、一端側変形部片25の幅方向一端は、一端側変形部片25の中で最も幅方向外側に位置する部位に相当し、一端側変形部片25の幅方向他端は、前述した切り欠き24の先端位置(換言すると、変形部21の幅方向中央位置)に相当する。
【0061】
また、前述した給排気用のチューブ部材C2は、正面視でエアセル10の中心位置と略一致する箇所に繋ぎ込まれている。したがって、エアセル10は、その中心位置から優先的に膨出し始めることとなる。このため、エアセル10が膨出すると、一端側変形部片25中、幅方向外側に位置する部分が選択的に変形するようになる。すなわち、一端側変形部片25は、その中の幅方向外側に位置する部分が幅方向内側に位置する部分よりも前方に位置するように変形することになる。
【0062】
以上のように一端側変形部片25が変形することで、
図7の(A)に示すように、シートバックS1が備える肩支持部Sa1のうち、幅方向外側にある一端部が幅方向内側にある他端部よりも前方に移動する。これにより、シートバックS1から着座者の肩に対して幅方向内側に向かう力が作用するようになり、着座者の肩は、肩支持部Sa1によって幅方向内側に押されるようになる。この結果、着座者の上体が幅方向にずれ動くのを抑制することが可能となり、以て着座者の姿勢が安定的に保持されるようになる。
ちなみに、
図7の(A)は、シートバックS1の肩支持部Sa1が着座者の肩を支持している様子を示した図であり、肩支持部Sa1を水平面で切断したときの断面を示した図である。
【0063】
なお、一端側変形部片25において幅方向外側に位置する部分は、肩支持部Sa1において幅方向外側にある一端部と対応する部分に相当し、一端側変形部片25において幅方向内側に位置する部分は、肩支持部Sa1において幅方向内側にある一端部と対応する部分に相当する。
【0064】
さらに、エアセル10が膨出すると、前述したように、一端側変形部片25において幅方向外側に位置する部分が選択的に変形するようになるが、特に、当該部分の上方領域が下方領域よりも前方に位置するように変形する。これは、給排気口があるエアセル10の中心位置が一端側変形部片25の中心位置よりも上方に位置していることに起因する。
【0065】
そして、以上のように一端側変形部片25が変形することで、
図7の(B)に示すように、肩支持部Sa1のうち、幅方向外側にある一端部が幅方向内側にある他端部よりも前方に移動する際、上記一端部中の上側部分が下側部分よりも前方に移動する。これにより、シートバックS1から着座者の肩に対して作用する力については、幅方向内側に向かう成分と下方に向かう成分とを有するようになる。したがって、着座者の肩は、幅方向内側に押されるとともに、下方にも押されることとなる。この結果、着座者の上体が上方にずれ動くのを抑制し、着座者の姿勢をより安定的に保持することが可能となる。
ちなみに、
図7の(B)は、シートバックS1の肩支持部Sa1が着座者の肩を支持している様子を示した図であり、肩支持部Sa1を垂直面で切断したときの断面を示した図である。
【0066】
なお、本実施形態では、エアセル10の膨出時に一端側変形部片25の幅方向外側部分が選択的に変形するのを助長する目的で、エアセル10の配置を好適なものに設定している。具体的に説明すると、各エアセル10は、その長手方向両端のうち、幅方向外側にある端が幅方向内側にある端よりも下方に位置するように配置している。これは、一般的な着座者の肩を想定した内容であり、着座者の肩のように幅方向外側に向かって下がるようにエアセル10が配置されていることで、シートバックS1の肩支持部Sa1は、着座者の肩を包み込むように支持することとなる。この結果、本シートSに着座した着座者の姿勢は、より一層安定するようになる。
【0067】
また、本実施形態では、
図2や
図6に示すように、エアセル10において幅方向外側にある端が、一端側変形部片25において幅方向外側にある端よりも幾分外側にはみ出ている。このような配置であれば、一端側変形部片25の幅方向外側部分がより変形し易くなるので、着座者の姿勢を安定させることが容易になる。
【0068】
また、本実施形態では、
図6に示すように、エアセル10の大部分が、正面視で見たときに一端側変形部片25の上端位置と上下方向中央位置との間に位置している。このような配置であれば、一端側変形部片25において幅方向外側に位置する部分が変形する際、その上方領域が下方領域よりも前方に位置するように変形し易くなるので、着座者の姿勢を安定させることがより容易になる。
【0069】
さらに、本実施形態では、シートバックS1の肩支持部Sa1が着座者の肩を包み込んで支持するのを助長する目的で、樹脂プレート20の形状を好適な形状に設定している。具体的に説明すると、樹脂プレート20の変形部21に設けられた各変形部片25、26の外縁のうち、幅方向外側の端部に位置する部分が、着座者の肩を模して幅方向外側に向かうにつれて降下するように傾斜している。このように樹脂プレート20のうち、着座者の肩の後方に位置する部分が着座者の肩を模した形状となっていることで、肩支持部Sa1が着座者の肩を包み込むように支持する効果がより効果的に発揮される。この結果、本シートSに着座した着座者の姿勢は、より一層安定するようになる。
【0070】
<<エアセルの保持に関する変形例>>
上記の実施形態では、エアセル10を後方から支持する支持プレート11を設けていることとした。また、上記の実施形態では、ピラー位置調整機構6を保持するためにシートバックフレームSf1に取り付けられた角筒状の保持パイプ12に、支持プレート11を保持させることとした。ただし、エアセル10を保持する構成については、上記の実施形態に限定されず、他の実施形態も考えられる。以下では、エアセル10の保持に関する変形例について
図8及び9を参照しながら説明することとする。
図8及び9は、変形例に係る車両用シートの構成を示す図であり、いずれの図も、エアセル10を保持する構成が上記の実施形態とは異なるシートバックフレームSf1を図示している。
【0071】
先ず、
図8に図示した第1の変形例について説明すると、上記の保持パイプ12を設ける代わりに、比較的剛性が高い金属製の部材からなる棒状部材14が用いられている。この棒状部材14は、上部フレーム1の水平部分から下方に延出しており、左右に間隔を空けて一対設けられている。それぞれの棒状部材14の上端部は、上部フレーム1に固定されており、下端部は、受圧プレート5の後面に設けられた係止部(不図示)に留められている。
【0072】
さらに、棒状部材14間には、弾性を有するワイヤ15を幅方向に沿って張架する。このワイヤ15は、上下方向に一定ピッチで複数並べて設けられている。そして、第1の変形例では、これら複数のワイヤ15の前面に支持プレート11が取り付けられており、具体的には、
図8中、破線にて示した取り付け位置に取り付けられている。
【0073】
次に、
図9に図示した第2の変形例について説明すると、支持プレート11や保持パイプ12を設ける代わりに、変形された受圧プレート16が設けられている。この受圧プレート16は、上述の実施形態で用いられる受圧プレート5よりも上方に幾分拡張されたものである。また、変形例に係る受圧プレート16がシートバックフレームSf1に取り付けられた状態では、その上端が、エアセル10の配置位置よりも幾分上方に位置している。
【0074】
そして、第2の変形例では、
図9に示すように、支持プレート11ではなく変形例に係る受圧プレート16の上端部にエアセル10が取り付けられており、具体的には、
図9中、破線にて示した取り付け位置に取り付けられている。このような構成であれば、支持プレート11を用いない分、部品点数が少なくなり、シートバックフレームSf1の組み立て作業についても、より簡素化することになる。
【0075】
<<本発明の応用例について>>
以上までに説明してきた車両用シートは、着座者が着座した際にシートバックS1の肩支持部Sa1が着座者の肩を包み込んで支持するものである。かかる構成を応用することにより、着座時に着座者の姿勢を矯正する車両用シート(以下、応用シートXS)も実現可能である。以下、本発明の応用例としての応用シートXSについて、その構成等を説明する。
【0076】
先ず、応用シートXSの基本構成について、
図10を参照しながら説明する。
図10は、応用シートXSの基本構成を示した図である。
応用シートXSは、上述した実施形態に係る車両用シート(すなわち、本シートS)の構成を踏襲しており、具体的に説明すると、シートバックXS1には、肩支持部Sa1に相当するショルダーサポートXa1が備えられている。このショルダーサポートXa1は、エアセル10を内蔵しており、エアセル10の膨出によって着座者の肩を幅方向内側且つ下方に押す機能を有する。
【0077】
また、応用シートXSは、シートバックXS1の幅方向両端部にサイドサポートXa2を備えている。このサイドサポートXa2は、上述した実施形態に係る車両用シートに備わっているサイドサポートSa2と同様の構成となっている。すなわち、応用シートXSに備わるサイドサポートXa2は、エアセル(側方エアセル4)を内蔵しており、側方エアセル4の膨出によって着座者の上体を幅方向内側に押す。
【0078】
そして、応用シートXSは、ショルダーサポートXa1及びサイドサポートXa2の他にも、エアセルを内蔵している部位を有している。具体的に説明すると、
図10に示すように、シートバックXS1のうち、着座者の腰に当接する部位にはランバーサポートXa3が設けられている。このランバーサポートXa3は、腰用エアセル8を内蔵しており、腰用エアセル8の膨出によって着座者の腰を前方に押す。
【0079】
また、応用シートXSが有するシートクッションXS2の幅方向両端部には、クッションサイドサポートXa4が設けられている。このクッションサイドサポートXa4は、クッション用の側方エアセル(以下、クッション用エアセル9)を内蔵しており、クッション用エアセル9の膨出によって着座者の大腿部を幅方向内側に押す。
【0080】
さらに、応用シートXSのシートクションXS2の前端部には、着座者の脚の膝下部を支持する膝下支持部としてのオットマン部Xa5が設けられている。このオットマン部Xa5は、シートクッションXS2の前端に配置されたエアセル(オットマン用エアセル30)を備えており、このオットマン用エアセル30が膨出したときに着座者の脚の膝下部を下方から支持するようになる。
【0081】
ここで、オットマン用エアセル30に着座者の脚の膝下部を載せることで当該膝下部を支持しようとすると、オットマン用エアセル30のうち、膝下部が載る部分とそれ以外の部分との間で膨らみ量に差が生じてしまう。この結果、着座者の脚の膝下部を支持する力が安定せず、適切に膝下部を支持し得なくなってしまう。
そこで、応用シートXSのオットマン部Xa5においては、
図11及び
図12に示すように、オットマン用エアセル30の前方に帯状の支持部材31を配置することとしている。
図11及び
図12は、着座者の脚の膝下部を支えるオットマン部Xa5についての説明図であり、シートクッションXS2を構成するクッションフレームXf2の前端部を側方から見たときの図である。
【0082】
支持部材31は、応用シートXSのシートクションXS2の前端部に取り付けられており、連結された複数の支持断片31aによって構成されている。各支持断片31aは、幅方向に長い略短冊状の金属板からなる。また、支持部材31において、互いに隣接する支持断片31a同士は、一方の支持断片31aが他方の支持断片31aに対して相対的に回動可能となるように蝶番を介して連結されている。
【0083】
そして、支持部材31は、オットマン用エアセル30が膨出すると、各支持断片31aの前面にて着座者の脚の膝下部を支持する支持位置(
図12に図示した支持部材31の位置)に向かって移動する。他方、支持部材31は、オットマン用エアセル30が収縮すると、シートクッションXS2の前方で下方に垂れ下がった状態で待機する待機位置(
図11に図示した支持部材31の位置)に向かって移動する。
【0084】
以上のように構成されたオットマン部Xa5であれば、オットマン用エアセル30の膨出によって着座者の脚の膝下部を支持する際に平坦面、より具体的には支持断片31aの前面にて支持することが可能となる。この結果、着座者の脚の膝下部を安定して支持している状態を良好に維持することが可能となる。
【0085】
<<応用シートXSにおける各種センサの配置>>
応用シートXSは、以上のようにエアセル内蔵の可動部を複数箇所に備えている。そして、応用シートXSに着座者が着座すると、各可動部が自動的に作動する。これにより、着座者の身体の背側部や大腿部が押圧され、着座者の姿勢が矯正されるようになる。換言すると、応用シートXSに着座することにより、着座者の骨格の曲がり状態がアクティブに補正されるようになる。ここで、骨格の曲がり状態とは、骨格の形状、骨格のずれや歪みなど、骨格の3次元構造に関する指標であり、本実施形態では、
図13に示すように、骨格中の各領域(図中において記号A〜Gが付されている各領域)がなす円弧形状の曲率が曲がり状態に相当する。
図13は、着座者の骨格の曲がり状態についての説明図である。
【0086】
応用シートXSにより着座者の姿勢を矯正するにあたっては、着座した当初の姿勢、換言すると、当初の骨格の曲がり状態をセンシングする必要がある。このため、応用シートXSのシートバックXS1及びシートクッションXS2の各々には、姿勢計測用センサが配置されている。以下、姿勢計測用センサの配置に関して、
図14乃至
図16を参照しながら説明する。
図14は、シートバックXS1における姿勢計測用センサの配置についての一例を示す図である。
図15は、
図14中のD−D断面を示す模式図である。
図16は、シートクッションXS2における姿勢計測用センサの取り付け状態を示す図であり、シートクッションXS2を垂直面で切断した際の断面を示す模式図である。
【0087】
応用シートXSでは、
図14に図示の形状センサ40が姿勢計測用センサの一つとして用いられている。この形状センサ40は、形状感知光ファイバからなり、可撓性を有する。そして、形状センサ40は、着座者の骨格の曲がり形状に沿って屈曲することによって着座者の姿勢を検出する。具体的に説明すると、応用シートXSに着座した着座者の身体の背側部分に沿って形状センサ40が弓形に屈曲すると、形状センサ40各部における光の屈折率が変化するよう。一方、形状センサ40は、不図示の回路基板にコネクタやケーブル等を介して接続されており、光の屈折率の変化に応じた信号を上記回路基板に出力する。そして、回路基板では、形状センサ40からの出力信号に基づいて形状センサ40の捻れや曲げ等の3次元形状を特定し、その特定結果から着座者の姿勢が割り出される。
【0088】
なお、形状センサ40は、着座者の骨格(例えば脊椎)に沿って適切に屈曲するように、
図14に示すように応用シートXSの幅方向中央部に配置されている。
【0089】
また、応用シートXSのシートバックXS1では、上記の形状センサ40とともに、他の姿勢計測用センサとしての体圧センサ41が用いられている。この体圧センサ41は、略短冊型のフィルム形状をなしており、センサ本体としての検知部41aと、検知部41aからの出力信号を伝送するために形成された伝送路41bと、を有する。検知部41aは、着座者が応用シートXSに着座した際に掛かる圧力(体圧)を検出して当該体圧の大きさに応じた信号を出力する。伝送路41bは、シートバックXS1の前面から後面に向けて取り回されている。
【0090】
そして、体圧センサ41は、幅方向において形状センサ40を避けた位置に配置されており、具体的に説明すると、
図14に示すように形状センサ40の脇位置に横向き姿勢で上下方向に複数並べて設けられている。より詳しく説明すると、体圧センサ41は、着座者の肩付近、背中全域、腰付近のそれぞれの体圧分布を計測可能な位置に配置されている。
【0091】
ところで、各体圧センサ41は、シートバックXS1を構成するパッド材XP1と表皮材との間に介在している。一方、パッド材XP1は、例えばウレタンからなり、
図15に示すように、幅方向中央部に平坦部Pa1を、幅方向両端部に隆起部Pb1を、それぞれ有している。また、平坦部Pa1と隆起部Pb1との間には、表皮材を吊り込むための吊り込み溝Pc1がパッド材XP1の高さ方向(シートの上下方向)に沿って形成されている。
【0092】
上記の体圧センサ41の伝送路41bについては、上述したように、シートバックXS1の前面から後面に向けて取り回されているが、その配索経路については、当然ながら極力短くなっていることが望ましい。一方で、伝送路41bの配索経路については、伝送路41bが設けられていることで着座者が感じる違和感を極力抑えた経路に設定されていることが必要である。
【0093】
そこで、応用シートXSでは、吊り込み溝Pc1の数カ所にパッド材XP1の後面まで貫いた穴を形成し、
図15に示すように、当該穴を通じて伝送路41bをパッド材XP1の後面に向けて取り回すこととしている。これにより、伝送路41bが設けられていることで着座者が感じる違和感が軽減されるようになる。なお、吊り込み溝Pc1中、上記の穴が形成されている位置については、体圧センサ41の設置位置に合わせて決められていると好適であり、例えば、体圧センサ41と隣り合う位置であるとよい。
【0094】
応用シートXSのシートクッションXS2におけるセンサの配置について説明すると、シートクッションXS2では、上記の形状センサ40とともに、他の姿勢計測用センサとしての静電容量センサ42が用いられている。この静電容量センサ42は、シートクッションXS2の下面に向けて取り回されている。このために、シートクッションXS2を構成するパッド材XP2には、
図16に示すように、下面まで通じる穴が形成されており、当該穴を通じて静電容量センサ42をシートクッションXS2の下面に向けて取り回すこととしている。
【0095】
一方、静電容量センサ42をシートクッションXS2に取り付けるには、通常、静電容量センサ42をパッド材XP2の上面に貼り付けるが、かかる取り付け方法では、着座時に静電容量センサ42に過大な荷重が掛かることで同センサを破損させることがある。また、静電容量センサ42がパッド材XP2の上面にあることで、シートに着座した着座者に違和感を与える場合がある。さらに、パッド材XP2の表面にヒータ等の部品を設置する際には、当該部品の設置範囲が静電容量センサ42の設置によって制限されてしまう。
【0096】
そこで、応用シートXSでは、
図16に示すように、パッド材XP2の内部に静電容量センサ42を埋め込むこととしている。より具体的に説明すると、パッド材XP2の下側部分を形成した後に当該部分の表面(上面)に静電容量センサ42を貼り付け、その後、パッド材XP2の上側部分を形成することとしている。かかる構成により、応用シートXSでは、静電容量センサ42をパッド材XP2の上面に貼り付ける場合の不具合が解消されることになる。
【0097】
なお、静電容量センサ42を貼り付けた後にパッド材XP2の上側部分を形成するには、パッド材XP2の上側部分を別部品として準備し、静電容量センサ42を貼り付けた後にパッド材XP2の下側部分に別部品としての上側部分を貼り付けるとよい。あるいは、静電容量センサ42を貼り付けた状態にあるパッド材XP2の下側部分を不図示の金型に再投入し、インサート成型の要領でパッド材XP2の上側部分を成型する、すなわち、パッド材XP2を一体成型することとしてもよい。
【0098】
以上までに説明してきた姿勢計測用センサが応用シートXSには搭載されており、例えば着座者が着座したときに上記センサによる姿勢計測が自動的に開始される。また、応用シートXSには、着座者の重量を計測するウェイトセンサが前後左右にそれぞれ一個ずつ設けられている。そして、ウェイトセンサによる重量計測については、姿勢計測と同時に実行される。
【0099】
<<着座姿勢の補正制御について>>
応用シートXSは、以上までに説明してきた構成によって、着座者の姿勢(換言すると、骨格の曲がり状態)を補正することが可能である。以下、応用シートXSによる着座姿勢の補正制御について詳しく説明する。
【0100】
(制御構成)
先ず、着座姿勢の補正制御を実行するシステムの構成について
図17を参照しながら説明する。
図17は、着座姿勢の補正制御を実行するシステムの構成を示すブロック図である。
着座姿勢の補正制御を実行するシステム(以下、制御システムCS)は、
図17に示すように、上述したセンサ群と、コントローラ50と、応用シートXSに搭載されたエアセル内蔵の可動部と、可動部を駆動するための駆動機構と、によって構成されている。ここで、可動部とは、前述したショルダーサポートXa1、サイドサポートXa2、ランバーサポートXa3、クッションサイドサポートXa4、オットマン部Xa5である。
【0101】
また、制御システムCSは、ピラー位置調整機構51を更に備えている。このピラー位置調整機構51は、応用シートXSに搭載され、ヘッドレストピラーhpの位置を上下方向及び前後方向で調整するものである。そして、ピラー位置調整機構51がヘッドレストピラーhpの位置を調整することで、ヘッドレストXS3の位置が上下方向及び前後方向で変動することとなる。
さらに、制御システムCSは、チルト機構55を更に備えている。このチルト機構55は、応用シートXSのシートクッションXS2、特に、着座者の大腿部を支持するクッション前端部分に搭載され、当該前端部分の座面角度を調整するものである。
【0102】
センサ群は、応用シートXSに搭載された姿勢計測用センサ及びウェイトセンサ等からなる。このセンサ群により、応用シートXSに着座した着座者について、骨格の曲がり状態、肩付近の圧力分布、背中各部の圧力分布、腰付近の圧力分布、臀部から膝裏部に亘る範囲の圧力分布、及び体重を計測することが可能である。
【0103】
コントローラ50は、車両に搭載されたECU(Electronic Control Unit)からなり、各センサからの出力信号を受信して着座者の姿勢に関する各種の指標値を算出する。例えば、コントローラ50は、背中の圧力分布に関する計測結果から着座者の重心位置を算出する。
【0104】
また、コントローラ50は、算出した値に基づき、応用シートXSに搭載されたエアセル内蔵の可動部やピラー位置調整機構51を制御する。具体的に説明すると、エアセル内蔵の可動部は、駆動機構の動作によって動作する。ここで、駆動機構とは、コンプレッサ52と、コンプレッサ52に接続された給気路53(具体的には、上述したチューブ部材C1、C2が形成する経路)と、給気路53中に設けられた電磁弁54と、を有する。給気路53は、エアセル毎に設けられており、各給気路53の末端部が各エアセルに繋ぎ込まれている。また、電磁弁54についてもエアセル毎(すなわち、給気路53毎)に設けられている。
【0105】
そして、コントローラ50は、コンプレッサ52のオンオフや電磁弁54の開閉を制御することにより、各エアセルの膨出量をコントロールする。また、コントローラ50は、ピラー位置調整機構51内に搭載された不図示の駆動機構をオンオフ制御することで、ヘッドレストピラーhpが目標位置に到達するようにピラー位置調整機構51を制御する。また、コントローラ50は、チルト機構55内に搭載された不図示の駆動機構をオンオフ制御することでシートクッションXS2の前端部分の座面角度が所定の角度になるようにチルト機構55を制御する。
【0106】
(着座姿勢の補正制御の流れ)
次に、着座姿勢の補正制御の流れについて
図18を参照しながら説明する。
図18は、着座姿勢の補正制御の流れを示す概略図である。
着座姿勢の補正制御は、
図18に示すように、クッション側制御処理S001、腰部制御処理S002、肩部制御処理S003、ヘッドレスト位置制御処理S004の順に進行する。以下、各制御処理について個別に説明する。
【0107】
(1)クッション側制御処理S001
クッション側制御処理S001は、臀部から膝裏部に亘る範囲の圧力分布を最適化する制御処理(以下、座面圧分布最適化処理)と、着座者の重心位置を正規の位置に移動させる制御処理(以下、重心補正処理)とに分かれている。
【0108】
座面圧分布最適化処理について説明すると、当該処理は、
図19に示す手順にて実行される。
図19は、座面圧最適化処理の手順を示す図である。
座面圧分布最適化処理は、応用シートXSに着座者が着座した時点で座面圧分布、すなわち、臀部から膝裏部に亘る範囲の圧力分布を計測するところから始まる(S011)。計測後、コントローラ50が、座面圧分布の指標値を算出する(S012)。座面圧分布の指標値については、特に制限されるものではないが、一例を挙げて説明すると、計測した座面圧分布における最大圧力と最少圧力を特定し、両圧力の差分を算出する。
【0109】
その後、コントローラ50は、シートクッションXS2の前端部分の座面角度が所定量だけ変化するようにチルト機構55を制御する(S013)。そして、座面圧分布を計測する工程S011、座面圧分布における最大圧力と最少圧力との差分を算出する工程S012、及び、チルト機構55を制御する工程S013については、上記の差分が最小となるように繰り返される。最終的に、上記の差分が最小となった時点で(S014)、座面圧分布最適化処理が完了する。
【0110】
次に、重心補正処理について説明する。重心補正処理は、
図20に示す手順にて実行される。
図20は、重心補正処理の手順を示す図である。
具体的に説明すると、重心補正処理は、応用シートXSに着座者が着座した時点で座面圧分布を計測するところから始まる(S021)。計測後、コントローラ50が、計測結果から座面圧バランス、換言すると重心のずれ量を算出する(S022)。
【0111】
座面圧分布の計測結果から重心のずれ量を算出する手順については、特に制限されるものではないが、一例を挙げて説明すると、計測した座面圧分布を、シート幅方向中央の位置を境にして左右に二分割した上で、左側の圧力分布の平均値、及び、右側の圧力分布の平均値をそれぞれ算出する。そして、算出した2つの平均値の差を、重心のずれ量として算出する。
【0112】
重心のずれ量を算出した後、コントローラ50は、クッションサイドサポートXa4のエアセル(クッション用エアセル9)が所定量だけ膨出するようにコンプレッサ52や電磁弁54をコントロールする(S023)。そして、座面圧分布を計測する工程S021、重心のずれ量を算出する工程S022、及び、クッションサイドサポートXa4を作動させる工程S023は、重心のずれ量が無くなるまで、換言すると、座面圧が略左右対称となるまで繰り返される。最終的に、重心のずれ量が無くなった時点で(S024)、重心補正処理が完了する。
【0113】
(2)腰部制御処理S002
腰部制御処理S002は、着座者の背側の体圧分布を最適化する制御処理(以下、体圧分布最適化処理)と、着座者の重心位置を正規の位置に移動させる制御処理(以下、第2の重心補正処理)とに分かれている。
【0114】
体圧分布最適化処理について説明すると、当該処理は、
図21に示す手順にて実行される。
図21は、体圧分布最適化処理の手順を示す図である。
体圧分布最適化処理は、応用シートXSに着座者が着座した時点で着座者の背側の体圧分布を計測するところから始まる(S031)。計測後、コントローラ50が、ランバーサポートXa3のエアセル(腰用エアセル8)が所定量だけ膨出するようにコンプレッサ52や電磁弁54をコントロールする(S032)。これらの工程S031、S032(すなわち、背側の体圧分布の計測とランバーサポートXa3の作動)は、ランバーサポートXa3の作動限界に到達するまで、分かり易くは、腰用エアセル8の膨出量が最大となるまで繰り返される(S033)。
【0115】
その後、ランバーサポートXa3の作動量を変えながら計測した体圧分布の計測結果から、最適な体圧分布を割り出す(S034)。最適な体圧分布を割り出す手順については、特に制限されるものではないが、一例を挙げて説明すると、計測した背中の体圧分布を、背中上方部、背中中央部、背中下方部に分割し、それぞれの部分について体圧の平均値を算出する。そして、算出した3つの平均値のうち、最大値と最小値の差分を求める。ここで、差分が最も小さくなったときの体圧分布が最適な体圧分布として設定される。
【0116】
そして、最適な体圧分布が割り出されると、コントローラ50が、その最適な体圧分布と同じ計測結果を得たときのランバーサポートXa3の作動量を目標量として設定する(S035)。その後、コントローラ50は、ランバーサポートXa3の作動量が目標量に到達するようにコンプレッサ52や電磁弁54をコントロールする(S036)。最終的に、ランバーサポートXa3の作動量が目標量に到達した時点で(S037)、体圧分布最適化処理が完了する。
【0117】
なお、体圧分布最適化処理については、
図21に図示した手順の他に、
図22に図示した手順によっても実現することが可能である。
図22は、体圧分布最適化処理の手順に関する変更例を示す図である。
【0118】
より具体的に説明すると、変更例において、体圧分布最適化処理は、応用シートXSに着座者が着座した時点で着座者の背中のうち、骨盤部における体圧分布を計測するところから始まる(S041)。計測後、コントローラ50が、腰用エアセル8が所定量だけ膨出するようにコンプレッサ52や電磁弁54をコントロールする(S042)。これらの工程S041、S042(すなわち、骨盤部における体圧分布の計測とランバーサポートXa3の作動)は、骨盤部における体圧分布が目標の体圧分布となるまで繰り返される(S043)。ここで、目標の体圧分布とは、骨盤部における体圧分布として理想的な分布であり、具体的には統計データや実験によって明らかにされるものである。
【0119】
骨盤部における体圧分布が目標の体圧分布となった後には、着座者の体重を計測し(S044)、更に、コントローラ50が体重の計測結果から目標圧力を算定する(S045)。ここで、目標圧力とは、着座者の脊椎の所定部位(具体的には、解剖学上、「T9」と称される部位)における理想的な体圧である。体重から目標圧力を算定する手順については、特に制限されるものではないが、一例を挙げて説明すると、着座者の脊椎の所定部位における理想的な圧力と体重との相関関係を実験的に明らかにし、その相関式から目標圧力を算定する。
【0120】
目標圧力の算定後、着座者の脊椎の所定部位(具体的には「T9」に相当する部位)の体圧を計測する(S046)。計測後、コントローラ50が、腰用エアセル8が所定量だけ膨出するようにコンプレッサ52や電磁弁54をコントロールする(S047)。これらの工程S046、S047(すなわち、「T9」に相当する部位における体圧分布の計測とランバーサポートXa3の作動)は、体圧の計測結果が目標圧力に到達するまで繰り返される。最終的に、「T9」に相当する部位における体圧分布の計測結果が目標圧力に達した時点で(S048)、変形例に係る体圧分布最適化処理が完了する。
【0121】
次に、第2の重心補正処理について説明する。第2の重心補正処理は、
図23に示す手順にて実行される。
図23は、第2の重心補正処理の手順を示す図である。
具体的に説明すると、第2の重心補正処理は、応用シートXSに着座者が着座した時点で着座者の背側の体圧分布を計測するところから始まる(S051)。計測後、コントローラ50が、計測結果から背骨の歪み具合(左右方向の曲がり具合)を算出する(S052)。
【0122】
背側の体圧分布から背骨の歪み具合を算出する手順については、特に制限されるものではないが、一例を挙げて説明すると、体圧分布において最も体圧が低い箇所は、背骨がある位置に相当する。したがって、正規の着座姿勢となっている場合、
図24に示すように、体圧分布中で最も体圧が低い箇所がシートの幅方向中央に位置することになり、かかる状態では重心が正規の位置に存在する。
図24は、背側の体圧分布と重心位置との関係を示す図である。
【0123】
これに対して、背骨が歪んでいると、
図24に示すように、体圧分布中で最も体圧が低い箇所がシートの幅方向中央からずれた位置にあり、このずれ量から背骨の歪み具合を算出する。なお、背骨が歪んだ状態では、当然ながら、重心が正規の位置からずれた位置に存在することになる。
【0124】
背骨の歪み具合を算出した後には、コントローラ50が、サイドサポートXa2のエアセル(側方エアセル4)が所定量だけ膨出するようにコンプレッサ52や電磁弁54をコントロールする(S053)。そして、背側の体圧分布を計測する工程S051、背骨の歪み具合を算出する工程S052、及び、サイドサポートXa2を作動させる工程S053は、重心位置が正規の位置に達するまで、換言すると、背骨の歪み具合が無くなるまで繰り返される。最終的に、重心位置が正規の位置に達した時点で(S054)、第2の重心補正処理が完了する。
【0125】
(3)肩部制御処理S003
肩部制御処理S003は、補正された着座姿勢に合わせて着座者の肩を適切に支持するための処理であり、
図25に示す手順にて実行される。
図25は、肩部制御処理S003の手順を示す図である。
具体的に説明すると、肩部制御処理S003は、応用シートXSに着座者が着座した時点で着座者の肩付近の体圧分布を計測するところから始まる(S061)。計測後、コントローラ50が、計測結果から肩付近の体圧分布に関する指標値を算出する(S062)。肩付近の体圧分布に関する指標値については、特に制限されるものではないが、一例を挙げて説明すると、計測した体圧分布における平均値を算出する。
【0126】
その後、コントローラ50は、ショルダーサポートXa1を作動させるべく、エアセル10が所定量だけ膨出するようにコンプレッサ52や電磁弁54をコントロールする(S063)。この際、ショルダーサポートXa1は、着座者の肩に対して幅方向内側、かつ、下方に向く力が掛かるように着座者の肩を押す。
【0127】
以上までに説明してきた工程、すなわち、肩付近の体圧分布を計測する工程S061、体圧分布の平均値を算出する工程S062、及び、ショルダーサポートXa1を作動させる工程S063は、上記の平均値が目標値に達するまで繰り返される。ここで、目標値とは、肩を良好に保持している状態での肩付近の体圧分布における平均値であり、統計データや実験等によって明らかにされるものである。
【0128】
そして、上記の平均値が目標値に達した時点で(S064)、肩部制御処理S003が完了する。肩部制御処理S003が完了すると、ショルダーサポートXa1が着座者の肩に掛ける当接圧が適切に調整され、着座者の肩がショルダーサポートXa1によって包み込まれて支持されるようになる。
【0129】
(4)ヘッドレスト位置制御処理S004
ヘッドレスト位置制御処理S004は、補正された着座姿勢に合わせて着座者の頭部を適切に支持するための処理である。本制御処理において、コントローラ50は、姿勢補正によって変動された各部の体圧分布に基づいて、ピラー位置調整機構51を制御する。この結果、ヘッドレストピラーhp及びこれに支持されるヘッドレストXS3の位置は、補正後の着座姿勢に応じて適切な位置に調整される。
なお、ヘッドレスト位置制御処理S004の手順、すなわち、ヘッドレストピラーhpの位置の調整手順については、特に言及しないが、着座者の頭部を好適に支持し得る位置に調整される限りにおいては自由に手順を決定することが可能である。
【0130】
以上までに説明してきた流れにより着座姿勢の補正制御が進行し、一連の制御処理がすべて完了した時点で、着座者の姿勢が好適な姿勢に補正されることとなる。ちなみに、上記の例では、クッション側制御処理S001、腰部制御処理S002、肩部制御処理S003、ヘッドレスト位置制御処理S004の順で補正制御が進行することとしたが、これに限定されるものではない。すなわち、補正制御において各制御処理の順番については、上記の例以外にも考えられる。具体的に説明すると、下記のR1)〜R9)に示す順番にて補正制御が進行することとしてもよい。なお、下記のR1)〜R9)のそれぞれにおいて、各制御処理は、符号のみで表されており、例えば、クッション側制御処理S001についてはS001と表記されている。
R1)S001、S003、S002、S004
R2)S001、S003、S004、S002
R3)S002、S003、S001、S004
R4)S002、S001、S003、S004
R5)S002、S003、S004、S001
R6)S003、S002、S001、S004
R7)S003、S001、S002、S004
R8)S003、S002、S004、S001
R9)S004、S003、S002、S001
【0131】
<<応用シートXSの発展構成>>
上記の実施形態では、各種センサによる計測結果に基づいて着座者の姿勢を補正することが可能な車両用シート、すなわち、応用シートXSについて説明した。この応用シートXSを更に発展させた構成としては、各種センサによる計測結果に基づいてシートポジションやシート自体の状態が調整可能な構成が考えられる。以下では、かかる応用シートXSの発展構成について説明する。
【0132】
上記のように発展させた構成の応用シートXS(以下、発展例に係る応用シートXS)は、そのポジションや状態をアクティブに調整することが可能である。具体的に説明すると、発展例に係る応用シートXSは、
図26に示すように、上述したセンサ群、コントローラ50及びピラー位置調整機構51を備えており、さらに、前後位置調整機構61、高さ調整機構62、及びクッション長さ調整機構63を備えている。
図26は、応用シートXSの発展構成を示す図であり、厳密には、シートポジションやシートの状態を調整するシステムの構成を示している。
【0133】
前後位置調整機構61は、応用シートXSを前後移動させる機構であり、シート下部に設けられた公知のスライドレール装置、及び、スライドレール装置の可動部を駆動する駆動機構からなる。高さ調整機構62は、応用シートXSの位置を上下方向で調整するための機構であり、シート下部に設けられた公知の回動リンク装置、及び、回動リンクを駆動する駆動機構からなる。クッション長さ調整機構63は、応用シートXSのシートクッションXS2の全長(前後方向における長さ)を伸張するための機構である。このクッション長さ調整機構63は、シートクッションXS2の前端部において進退自在な状態で設けられている拡張装置(例えば、前述したオットマン部Xa5に相当する装置)、及び、拡張装置の可動部を駆動する駆動機構からなる。
【0134】
そして、発展例に係る応用シートXSにおいて、コントローラ50は、各種センサによって着座者の身体情報を計測した際の計測結果から、着座者の体格を予測する。その後、コントローラ50は、予測結果に基づいて上記の各機構(具体的には、ピラー位置調整機構51、前後位置調整機構61、高さ調整機構62及びクッション長さ調整機構63)を制御する。この結果、発展例に係る応用シートXSのポジション、クッション長さ及びヘッドレスト位置(以下、シートポジション等)が、予測された着座者の体格に応じて最適な内容に調整されることとなる。
【0135】
以上に説明したシートポジション等の調整は、例えば
図27に示す手順にて実行される。
図27は、シートポジション等の調整処理に関する手順を示す図である。
シートポジション等の調整処理は、応用シートXSに搭載された各種センサによって着座者の身体情報を計測するところから始まる(S101)。この計測工程S101では、着座者の体重を応用シートXSに搭載されたウェイトセンサにより計測するとともに、着座者の体幅(胴部の横幅)を計測する。ここで、体幅の計測についいては、特に制限されるものではないが、一例を挙げると、着座者の体圧分布(特に腰椎又は骨盤付近の圧力分布)を計測した上で着座者とシートとの接触長さを求め、当該接触長さから体幅を決定することが考えられる。あるいは、シート前方に設置されたカメラにより着座者を撮像し、その画像を解析して体幅を決定することとしてもよい。
【0136】
なお、計測工程S101は、所定の条件が成立した時点で自動的に実行されることとなっている。計測工程S101の実行条件としては、例えば、下記の1)〜4)のいずれかを採用することが可能である。
1)着座者が応用シートXSに着座した際に掛かる程度の荷重をウェイトセンサにより検知した時点
2)シートベルト装着判定用のセンサによりシートベルトの装着を検知した時点
3)車内に設置されたカメラにより応用シートXSに着座した着座者を検知した時点
4)シートクッションXS2の座面温度を温度センサにより監視し、当該座面温度の昇温速度が閾値以上であることを検知した時点
上記の1)〜4)に挙げたケースの他、車内に設けられた不図示のスイッチを着座者が操作したときに計測工程S101を実行することとしてもよい。
【0137】
計測工程S101の実行後、コントローラ50は、計測結果から着座者の体格を予測する(S102)。具体的に説明すると、コントローラ50は、計測した体幅及び体重から着座者の身長を予測し、さらに、予測した身長から着座者の体格を予測する。ここで、着座者の体格とは、着座者の脚の長さ、腕の長さ、頭の位置、目の高さ等が該当する。また、体幅及び体重から身長を予測する方法、及び、身長から着座者の体格を予測する方法については、特に特に制限されるものではないが、一例を挙げて説明すると、相関式を実験や統計データにより求めて当該相関式に各値を代入して求めることとしてもよい。
【0138】
その後、コントローラ50は、予測した着座者の体格に基づき、当該体格に応じた最適なシートポジション等を特定する(S103)。具体的に説明すると、コントローラ50は、前工程S102において着座者の脚の長さ、腕の長さ、頭の位置、目の高さを予測しており、これらのパラメータに対応した調整事項について、その調整量を決定する。各種パラメータと調整事項との対応関係については、
図28に示す通りであり、例えば、脚の長さに応じて、前後方向でのシート位置やクッション長さが調整される。なお、
図28は、着座者の体格に関する各パラメータとシートに関する調整事項との対応関係を示す図である。
【0139】
さらに、コントローラ50は、最適なシートポジション等を特定した後、当該特定結果に従ってピラー位置調整機構51、前後位置調整機構61、高さ調整機構62及びクッション長さ調整機構63を制御する(S104)。この結果、応用シートXSのシートポジション等が、前工程S103で特定した最適な内容に調整されるようになる。かかる調整が完了した時点で、シートポジション等の調整処理が終了することになる。
【0140】
ところで、前述したように、シートポジション等に関する調整量は、着座者の体格に関するパラメータに応じて決定し、当該パラメータは、計測工程S101にて計測された着座者の体幅や体重に基づいて予測されることになっている。したがって、シートポジション等についての調整量は、着座者の体格に関する予測結果に依存し、その予測結果と真の体格との間が異なると、調整量の算出結果に誤差が生じるため、調整後においてもシートポジション等が最適化されない虞がある。
【0141】
ここで、上記の誤差が生じる要因としては、下記E1)〜E6)が列挙される。
E1)応用シートXSに着座している着座者の足が車体フロアに着いているために体重が正確に計測されないこと
E2)着座者が着ている衣服により体重が正確に計測されないこと
E3)着座者が着ている衣服により体幅が正確に計測されないこと
E4)着座者の体幅、体重及び身長の関係が、体幅及び体重から身長を予測する式(相関式)に示す関係から外れたものであること
E5)着座者の身長と体格との関係が、身長から体格を予測する式(相関式)に示す関係から外れたものであること
E6)着座者の着座状態が正規の着座状態とは異なっていること
【0142】
そこで、発展例に係る応用シートXSでは、以上に挙げた誤差要因の影響を排除するための措置を講じており、シートポジション等について適切な調整を実現している。以下、発展例に係る応用シートXSにおいて採用された誤差要因排除用の措置について説明する。
【0143】
先ず、第1の誤差要因E1として挙げられた「着座者の足が車体フロアに着いているために体重が正確に計測されないこと」に対して、発展例に係る応用シートXSでは、体重測定に際して高さ調整機構62によりシートの高さを調整範囲の中で最も高い位置まで上昇させることとしている。これにより、体重測定時に着座者の足が車体フロアから浮き上がって応用シートXSに全体重が掛かるようになり、正確に体重を計測することが可能となる。
【0144】
なお、上記の誤差要件E1を排除する方法は、上記の内容以外にも考えられ、例えば、クッション長さ調整機構63によってクッション長さを最長にして脚全体をシートクッションXS2上に載せれば、上記の内容と同様に、応用シートXSに全体重が掛かることとなる。また、体重計測時に音や警告表示等によって着座者に足を上げさせることを促すこととしてもよい。また、実際の体重の計測結果と真の体重との間のずれ量を実験等により明らかにした上で、計測結果を補正するための補正式を決定し、当該補正式にて計測結果を補正することとしてもよい。あるいは、車両のドアが開いた時点から体重計測を継続し、シートに着座する瞬間に着座者の足が車体フロアから離れることを利用し、その瞬間での計測結果(換言すると、応用シートXSに全体重が掛かったときの体重)を正味の体重とすることとしてもよい。
【0145】
次に、第2の誤差要因E2として挙げられた「衣服により体重が正確に計測されないこと」に対して、発展例に係る応用シートXSでは、シートクッションXS2内に搭載された静電容量センサ42の計測結果に基づいて体重の計測結果を補正することとしている。より具体的に説明すると、静電容量センサ42の計測結果は、着座者の着衣量に応じて変動するため、静電容量センサ42の計測結果に応じた補正量を算出し、当該補正量を体重の計測結果に加算して正味の体重としている。
なお、補正量の算出方法については、静電容量センサ42の計測結果と補正量との相関を実験等により明らかにし、その相関式に静電容量センサ42の計測結果を代入することで補正量を算出するとよい。
【0146】
次に、第3の誤差要因E3として挙げられた「衣服により体幅が正確に計測されないこと」に対して、発展例に係る応用シートXSでは、シートクッションXS2内に搭載された静電容量センサ42の計測結果に基づいて体
幅の計測結果を補正することとしている。つまり、前述した体重の補正と同様、静電容量センサ42の計測結果に応じた補正量を算出し、当該補正量にて体幅の計測結果を補正して正味の体幅としている。
なお、補正量の算出方法については、静電容量センサ42の計測結果と補正量との相関を実験等により明らかにし、その相関式に静電容量センサ42の計測結果を代入することで補正量を算出するとよい。
【0147】
次に、第4の誤差要因E4として挙げられた「着座者の体幅、体重及び身長の関係が身長予測に用いられる相関式から外れていること」に対して、発展例に係る応用シートXSでは、シートポジション等の調整後に着座者本人が不図示のスイッチを操作してシートポジション等を再調整し得るように構成されている。この際、コントローラ50は、着座者の操作量、すなわち再調整量を学習する。そして、次回以降の調整では、当該操作量(再調整量)を反映した調整が実行されるようになっている。
以上のように着座者のマニュアル操作を学習して次回以降の調整に反映することは、第5の誤差要因E5として挙げられた「着座者の身長と体格との関係が体格予測に用いられる相関式から外れていること」に対する措置としても採用されている。
【0148】
次に、第6の誤差要因E
6として挙げられた「着座者の着座状態が正規の着座状態とは異なっていること」に対して、発展例に係る応用シートXSでは、着座状態の相違量を考慮してシートポジション等を調整することとしている。ここで、「着座状態」とは、着座者の着座位置や着座姿勢を意味する。また、「正規の着座状態から異なった状態」とは、例えば、着座者が通常の着座位置よりも幾分前寄りの位置に着座している状態、より詳しくは、着座者の臀部が通常の位置より前側に位置し、且つ、着座者の背が通常よりも後傾した状態のことである。
【0149】
そして、着座状態が正規の着座状態とは異なっているとき、コントローラ50は、その事を検知し、正規の着座状態からの相違量を算出する。具体的に説明すると、発展例に係る応用シートXSには、前後左右の4箇所にウェイトセンサが設けられており、コントローラ50は、各ウェイトセンサによる計測結果から、着座者の重心の現在位置を算出する。なお、重心位置の算出方法については、公知の算出方法を利用することが可能である。
【0150】
ここで、着座状態が正規の着座状態とは異なっているとき、着座者の重心位置も通常の位置からずれていることになり、コントローラ50は、算出した重心位置と通常の重心位置との間のずれ量を算出する。かかる重心位置のずれ量が着座状態の相違量に相当する。なお、通常の重心位置については、着座者が正規の着座状態で応用シートXSに着座しているときのデータから求められ、コントローラ50に予め記憶されている。
【0151】
そして、コントローラ50は、シートポジション等に関する各調整量を決定する際に、上述した重心位置のずれ量を考慮して当該各調整量を決定する。このように重心位置のずれ量を考慮してシートポジション等を調整することにより、例え正規の状態とは異なる着座状態にて着座者が応用シートXSに着座しているとしても、当該着座状態に応じてシートポジション等に最適な内容へ調整することが可能となる。
【0152】
以上までに説明してきたように、発展例に係る応用シートXSでは、想定される誤差要因を排することで、シートポジション等に関する調整量を算出する際に誤差が生じるのを抑えることが可能である。