(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
前記制御部は、前記ヘッド部の前記ノズル列における前記複数のノズルのそれぞれにより行う印刷の濃度について、前記副走査方向における前記ノズル列の中央部分を中心にして、前記ヘッド後端側と反対の方向であるヘッド前端側へ向かう方向と、前記ヘッド後端側へ向かう方向とで前記濃度の変化の仕方が対称になるように設定することを特徴とする請求項1又は2に記載の印刷装置。
前記制御部は、前記副走査方向における前記ノズル列の中央部分の前記ノズルにより行う印刷の濃度が前記ノズル列の端の前記ノズルにより行う印刷の濃度よりも高く、かつ、前記中央部分から離れるに従って徐々に濃度が低くなるように、前記複数のノズルのそれぞれにより行う印刷の濃度を設定することを特徴とする請求項3に記載の印刷装置。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
インクジェットプリンタにおいて、紫外線硬化型インクを用いる場合、媒体(メディア)の各位置に対して複数の印刷パスで印刷を行うマルチパス方式での印刷を行うことが一般的である。しかし、マルチパス方式で印刷を行う場合、印刷パスの幅の領域毎に印刷結果の様子が相違し、縞状の模様(光縞等)生じてしまう場合がある。特に、紫外線硬化型インクを用いる場合において、高い精度の印刷を高速に行おうとする場合、このような縞状の模様の発生が大きな問題になる場合がある。そのため、従来、インクジェットプリンタにおいて、紫外線硬化型インクを用いる場合について、このような縞状の模様の発生を抑え、より適切な方法で印刷をすることが望まれていた。そこで、本発明は、上記の課題を解決できる印刷装置及び印刷方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0005】
インクジェットプリンタにおいて、印刷結果の状態は、様々な条件に応じて決まる。そのため、例えば一定の様子の印刷不良が生じたとしても、その原因を突き止めることは容易ではない。また、より具体的に、インクジェットプリンタにおいて、紫外線硬化型インクを用いる場合について、従来、上記のような線状の領域が発生する原因については、十分に解明されていなかった。
【0006】
そこで、本願の発明者は、縞状の模様が発生する原因について、鋭意研究を行った。そして、先ず、縞状の模様が目立つ直接の原因として、印刷後の媒体に形成されるインクの層のうち、表層部(最上部)に形成されるインクのドットの形状が不均一であることが大きく関連していることを見出した。
【0007】
ここで、インクのドットの形状の不均一は、例えば、媒体上で未硬化状態のインクのドットが連結すること等により生じる。また、インクジェットプリンタにおいて、紫外線硬化型インクを用いる場合、マルチパス方式で媒体上に形成されるインクのドットのうち、インクの層の表層部に形成されるインクのドットは、一部分のみであり、その他のインクのドットは、インクの層の下層において、下地として機能する。また、より具体的に、近年広く用いられている通常のインクジェットプリンタにより、例えば600dpiの解像度で印刷を行った場合、表層部に形成されるインクのドットは、全体の20%程度であり、その他の80%程度のインクのドットは、下地として機能する。
【0008】
そこで、本願の発明者は、先ず、マルチパス方式で印刷を行う複数の印刷パスのうち、表層部のインクのドットを形成する印刷パスについて、他の印刷パスよりも低い濃度で印刷を行うことを検討した。この場合、印刷パスの濃度とは、例えば、印刷パス幅のバンド領域内においてその印刷パスで形成するインクのドットの密度に対応する濃度である。このように構成すれば、印刷パスで形成するインクのドットについて、例えば、隣接するドット間の距離を十分に大きくして、ドットの連結を生じにくくすることができる。また、これにより、インクの層の表層部について、インクのドットの形状をより均一化できると考えられる。
【0009】
しかし、本願の発明者は、更なる鋭意研究により、最後の印刷パスの濃度について、単に他の印刷パスよりも低い濃度にするのみでは、印刷パスの境界が目立ってしまう場合があることを見出した。また、その原因について、印刷パスの濃度の変化のさせ方が大きく関連していることを見出した。より具体的には、例えば、各印刷パスの濃度について、単に印刷パスを単位に変化させた場合、最後の印刷パスの濃度は、その直前の印刷パスの濃度と比べて、ステップ状に変化することになる。しかし、インクジェットプリンタにおいて、特定の境界を挟んで濃度が大きく変化する場合、その境界が目立つことになる。そのため、最後の印刷パスの濃度について、単に他の印刷パスよりも低い濃度にするのみでは、印刷パスの境界が目立つことになると考えられる。
【0010】
そこで、本願の発明者は、印刷パスの濃度について、単に印刷パスを単位にステップ状に変化させるのではなく、印刷パス内においても徐々に変化をさせることを考えた。また、このように濃度を変化させることにより、印刷パスの境界が目立つことを防ぎ、より適切に印刷を行い得ることを見出した。上記の課題を解決するために、本発明は、以下の構成を有する。
【0011】
(構成1)インクジェット方式で印刷を行う印刷装置であって、紫外線硬化型インクのインク滴を媒体へ吐出するノズルが複数個並ぶノズル列を有するヘッド部と、予め設定された主走査方向へ移動しつつインク滴を吐出する主走査動作をヘッド部に行わせる主走査駆動部と、主走査方向と直交する副走査方向へ、媒体に対して相対的にヘッド部を移動させる副走査駆動部と、ヘッド部による主走査動作を制御する制御部とを備え、ヘッド部のノズル列において、複数のノズルは、副走査方向へ並んでおり、ヘッド部は、媒体における同じ領域に対して複数回の主走査動作を行うマルチパス方式で媒体への印刷を行い、かつ、媒体における同じ領域に対して、予め設定されたN回(Nは、3以上の整数)の印刷パスのそれぞれに対応する主走査動作を行い、制御部は、複数の印刷パスに亘って、印刷パスにおいて行う印刷の濃度を連続的に減少させ、かつ、ヘッド部のノズル列において、N回の印刷パスにおいて1番目の印刷パス分のインク滴を吐出するノズルから、N番目の印刷パス分のインク滴を吐出するノズルへ向かう方向をヘッド後端側とした場合、ヘッド部のノズル列のうち、少なくともノズル列の後端側で印刷の濃度を連続的に減少させる印刷パスの分のインク滴を吐出する複数のノズルのそれぞれにより行う印刷の濃度を、ヘッド後端側へ向かって徐々に低く設定
し、主走査駆動部は、主走査方向において予め設定された往路方向と、往路方向と反対の復路方向とのそれぞれの方向について、ヘッド部に主走査動作を行わせ、副走査駆動部は、往路方向への主走査動作と、復路方向への主走査動作との合間、及び、復路方向への主走査動作と、往路方向への前記主走査動作との合間のそれぞれにおいて、媒体に対して相対的にヘッド部を移動させ、N番目の印刷パスでのインク滴の吐出時において、インクのドットを形成すべき領域の周囲に先に行った印刷パスにより既に硬化しているインクのドットが形成されることで、硬化後のインクのドットの高さに差が生じにくくなるように、インクのドットが拡がり得る領域が限定されている。
【0012】
このように構成した場合、例えば、最後の印刷パスを含むk回の印刷パスにおける印刷の濃度を低くすることにより、インクの層の表層部に形成するインクのドットについて、例えば、密度を小さくし、ドットの連結等を生じにくくすることができる。また、これにより、インクの層の表層部について、インクのドットの形状を適切に均一化できる。そのため、このように構成すれば、例えば、紫外線硬化型インクを用いてマルチパス方式で印刷を行う場合において、印刷パスの幅の縞状の模様が発生すること等を適切に抑えることができる。
【0013】
また、このように構成した場合、直前の印刷パスと比べて印刷の濃度を低くする(N−k+1)番目の印刷パスについて、印刷パス全体の濃度を均一に低くするのではなく、その印刷パスの分のインク滴を吐出する複数のノズルのそれぞれにより行う印刷の濃度を、ヘッド後端側へ向かって徐々に低く設定する。この場合、印刷パス単位で印刷の濃度がステップ状に大きく変化することはない。
【0014】
そのため、このように構成すれば、例えば、印刷パスの境界が目立つことを適切に防ぐことができる。また、これにより、例えば、縞状の模様が発生すること等をより適切に抑えることができる。また、縞状の模様の発生等を抑えることにより、例えば、インクジェットプリンタにおいて、紫外線硬化型インクを用いる場合について、より適切な方法で印刷を行うことができる。
【0015】
尚、(N−k+1)番目の印刷パスの分のインク滴を吐出する複数のノズルのそれぞれにより行う印刷の濃度について、ヘッド後端側へ向かって徐々に低く設定するとは、例えば、ヘッド後端側へ向かう程濃度が低くなるように、それぞれのノズルに対応する印刷の濃度を設定することである。この場合、必ずしも全てのノズルについて互いに濃度を異ならせるのではなく、例えば一部のノズルについて、隣接するノズルと同じ濃度を設定してもよい。例えば、各ノズルによる印刷の濃度について、予め設定された複数本のノズルを単位にして、徐々に変化させてもよい。また、各ノズルによる印刷の濃度は、より精細に、1本のノズルを単位にして、徐々に変化させてもよい。
【0016】
(構成2)制御部は、少なくとも、媒体における同じ領域に対して行うN回の印刷パスのうち、最後の1回の印刷パスにおいて行う印刷の濃度を、(N−1)番目の印刷パスにおいて行う印刷の濃度よりも低くし、かつ、ヘッド部のノズル列のうち、最後の1回の印刷パスの分のインク滴を吐出する複数のノズルのそれぞれにより行う印刷の濃度を、ヘッド後端側へ向かって徐々に低く設定する。
【0017】
このように構成した場合、例えば、最後の印刷パスにおいて行う印刷の濃度について、低い濃度に適切に設定できる。また、これにより、例えば、インクの層の表層部について、インクのドットの形状を適切に均一化できる。また、最後の1回の印刷パスについて、印刷パスの境界が目立つことを適切に防ぐことができる。そのため、このように構成すれば、例えば、インクジェットプリンタにおいて、紫外線硬化型インクを用いる場合について、より適切な方法で印刷を行うことができる。尚、濃度を低下させる印刷パスは、最後の印刷パスのみに限らなくてもよい。例えば、最後から2番目の印刷パスにおいて、その前の印刷パスよりも濃度を低下させてもよい。
【0018】
(構成3)主走査駆動部は、主走査方向において予め設定された往路方向と、往路方向と反対の復路方向とのそれぞれの方向について、ヘッド部に主走査動作を行わせ、副走査駆動部は、往路方向への主走査動作と、復路方向への主走査動作との合間、及び、復路方向への主走査動作と、往路方向への主走査動作との合間のそれぞれにおいて、媒体に対して相対的にヘッド部を移動させる。
【0019】
このように構成すれば、例えば、媒体の各領域に対し、マルチパス方式で適切に印刷を行うことができる。また、この場合、媒体に対して相対的に副走査方向へ印刷部を移動させる副走査動作を往路及び復路のそれぞれの主走査動作の後に行うことにより、媒体の同じ領域に対し、往路及び復路のそれぞれにおいて、ヘッド部における異なるノズルでインクのドットを形成することができる。そのため、このように構成すれば、例えば、ノズルの特性をより適切に均一化し、高い精度での印刷をより適切に行うことができる。
【0020】
尚、マルチパス方式で印刷を行う方法としては、例えば、主走査動作の往路と復路との間には副走査動作を行わずに、往復の主走査動作を行う毎に副走査動作を行う方法も考えられる。このように構成すれば、例えば、往路及び復路を単位にして印刷の動作を行うことにより、最終的な印刷結果について、往路と復路との間に生じる印刷特性の差に起因する影響が生じにくい。しかし、この場合、媒体の各領域に対し、往路及び復路でヘッド部の同じノズルでインクのドットを形成することになる。そのため、この場合、往路と復路との間でノズルの特性を平均化することはできない。また、例えばいずれかのノズルの吐出特性にずれ等が生じた場合、その影響がより大きく現れることになる。これに対し、構成3のように構成した場合、上記のように、ノズルの特性をより適切に均一化することができる。また、これにより、高い精度での印刷をより適切に行うことができる。
【0021】
(構成4)制御部は、ヘッド部のノズル列における複数のノズルのそれぞれにより行う印刷の濃度について、副走査方向におけるノズル列の中央部分を中心にして、ヘッド後端側と反対の方向であるヘッド前端側へ向かう方向と、ヘッド後端側へ向かう方向とで濃度の変化の仕方が対称になるように設定する。
【0022】
マルチパス方式で印刷を行う場合、それぞれの印刷パスによる印刷の濃度を合計した濃度について、媒体上の各位置について、予め設定された所定の濃度に合わせることが必要となる。そのため、例えば、いずれかの印刷パスの濃度を低くした場合、他の印刷パスの濃度について、その分だけ、濃度を高めることが必要となる。また、濃度の設定について、単に印刷パス単位で設定するのではなく、いずれかの印刷パスの分のインク滴を吐出する複数のノズルによる印刷の濃度について、徐々に変化するように設定した場合、他の印刷パスにおいて、この変化分を補完するように濃度を設定することが必要になる。
【0023】
しかし、このような補完を行うための濃度の設定は、必ずしも容易なものではなく、複雑になる場合がある。そのため、各ノズルによる印刷の濃度を徐々に変化させる場合、複数の印刷パスによる印刷の濃度の合計を合わせることが難しくなる場合もある。
【0024】
これに対し、構成4のように構成した場合、例えば、濃度の変化の仕方に対称性を持たせることにより、各ノズルによる印刷の濃度について、ヘッド後端側とヘッド前端側との間で適切に補完することができる。そのため、このように構成すれば、例えば、最後の印刷パス等の印刷の濃度を適切に低くすることができる。また、これにより、例えば、インクの層の表層部について、インクのドットの形状をより適切に均一化できる。
【0025】
(構成5)制御部は、副走査方向におけるノズル列の中央部分のノズルにより行う印刷の濃度がノズル列の端のノズルにより行う印刷の濃度よりも高く、かつ、中央部分から離れるに従って徐々に濃度が低くなるように、複数のノズルのそれぞれにより行う印刷の濃度を設定する。
【0026】
このように構成すれば、最後の印刷パス等の印刷の濃度について、低い濃度を適切に設定できる。また、これにより、例えば、インクの層の表層部について、インクのドットの形状をより適切に均一化できる。
【0027】
尚、この構成において、ヘッド部は、スタガ状に並ぶ複数のインクジェットヘッドを有してもよい。この場合、複数のインクジェットヘッドのそれぞれは、例えば、副走査方向へノズルが並ぶノズル列をそれぞれ有する。また、この場合、ヘッド部のノズル列とは、例えば、複数のインクジェットヘッドのそれぞれにおけるノズル列を副走査方向において仮想的に連結したノズル列のことであってよい。
【0028】
(構成6)ヘッド部は、スタガ状に並ぶ複数のインクジェットヘッドを有し、複数のインクジェットヘッドのそれぞれは、副走査方向へノズルが並ぶノズル列をそれぞれ有し、制御部は、それぞれのインクジェットヘッドにおけるノズル列に含まれる複数のノズルにより行う印刷の濃度について、副走査方向におけるノズル列の中央部分のノズルにより行う印刷の濃度が高く、かつ、中央部分から離れるに従って徐々に濃度が低くなるように設定する。
【0029】
このように構成すれば、最後の印刷パス等の印刷の濃度について、低い濃度を適切に設定できる。また、これにより、例えば、インクの層の表層部について、インクのドットの形状をより適切に均一化できる。
【0030】
また、インクジェットヘッドにおいて、ノズル列の端のノズルは、通常、ノズル列の中央部のノズルと比べ、着弾位置のずれ等が生じやすい。これに対し、このように構成した場合、スタガ状の並ぶそれぞれのインクジェットヘッドにおいて、ノズル列の端のノズルについて、そのノズルによる印刷の濃度を低く設定することになる。そのため、例えばそれぞれのインクジェットヘッドについて、ノズル列の端のノズルの影響を適切に低減できる。また、これにより、例えばノズル列の端のノズルにおいて着弾位置のずれ等が生じた場合にも、印刷結果への影響を適切に抑えることができる。そのため、このように構成すれば、例えば、スタガ状に並ぶ複数のインクジェットヘッドの構成に合わせ、各印刷パスの濃度をより適切に設定できる。
【0031】
(構成7)インクジェット方式で印刷を行う印刷方法であって、紫外線硬化型インクのインク滴を媒体へ吐出するノズルが複数個並ぶノズル列を有するヘッド部に、予め設定された主走査方向へ移動しつつインク滴を吐出する主走査動作と、主走査方向と直交する副走査方向へ媒体に対して相対的に移動する副走査動作とを行わせ、ヘッド部のノズル列において、複数のノズルは、副走査方向へ並んでおり、ヘッド部による主走査動作を制御することにより、ヘッド部に、媒体における同じ領域に対して複数回の主走査動作を行うマルチパス方式で媒体への印刷を行わせ、かつ、媒体における同じ領域に対して、予め設定されたN回(Nは、3以上の整数)の印刷パスのそれぞれに対応する主走査動作を行わせ、主走査動作の制御において、少なくとも、媒体における同じ領域に対して行うN回の印刷パスのうち、最後のk回(kは、1以上N未満の整数)の印刷パスにおいて行う印刷の濃度を、(N−k)番目の印刷パスにおいて行う印刷の濃度よりも低くし、かつ、ヘッド部のノズル列において、N回の印刷パスにおいて1番目の印刷パス分のインク滴を吐出するノズルから、N番目の印刷パス分のインク滴を吐出するノズルへ向かう方向をヘッド後端側とした場合、ヘッド部のノズル列のうち、(N−k+1)番目の印刷パスの分のインク滴を吐出する複数のノズルのそれぞれにより行う印刷の濃度を、ヘッド後端側へ向かって徐々に低く設定する。このように構成すれば、例えば、構成1と同様の効果を得ることができる。
【発明の効果】
【0032】
本発明によれば、例えば、インクジェットプリンタにおいて、紫外線硬化型インクを用いる場合について、より適切な方法で印刷を行うことができる。
【発明を実施するための形態】
【0034】
以下、本発明に係る実施形態を、図面を参照しながら説明する。
図1は、本発明の一実施形態に係る印刷装置10の一例を示す。
図1(a)、(b)は、印刷装置10の要部の構成の一例を示す正面図及び上面図である。本例において、印刷装置10は、インクジェット方式で印刷を行うインクジェットプリンタであり、ヘッド部12、主走査駆動部14、副走査駆動部16、プラテン18、紫外線照射部20、及び制御部22を備える。尚、以下において説明をする点以外について、印刷装置10は、公知のインクジェットプリンタと同一又は同様の構成を有してよい。例えば、以下に説明をする点を除き、上記の各構成は、公知のインクジェットプリンタと同一又は同様の特徴を有してよい。また、印刷装置10は、上記の各構成以外に、公知のインクジェットプリンタと同一又は同様の他の構成を更に有してよい。
【0035】
ヘッド部12は、インク滴を吐出するノズルが複数個並ぶノズル列を有する部分であり、印刷対象の媒体(メディア)50へインク滴を吐出することにより、媒体50への印刷を行う。また、本例において、ヘッド部12は、ノズル列の各ノズルから、紫外線硬化型インクのインク滴を媒体50へ吐出する。尚、ヘッド部12のより具体的な構成については、後に詳しく説明をする。
【0036】
主走査駆動部14は、予め設定された主走査方向(図中のY方向)へ移動しつつインク滴を吐出する主走査動作をヘッド部12に行わせる構成である。本例において、主走査駆動部14は、キャリッジ102及びガイドレール104を有する。キャリッジ102は、ノズル列と媒体50と対向させた状態でヘッド部12を保持する。ガイドレール104は、主走査方向へのキャリッジ102の移動をガイドするレールであり、制御部22の指示に応じて、主走査方向へキャリッジ102を移動させる。また、本例において、主走査駆動部14は、主走査方向において予め設定された往路方向と、往路方向と反対の復路方向とのそれぞれの方向について、ヘッド部12に主走査動作を行わせる。
【0037】
副走査駆動部16は、主走査方向と直交する副走査方向(図中のX方向)へ媒体50に対して相対的に移動する副走査動作をヘッド部12に行わせる構成である。本例において、副走査駆動部16は、媒体50を搬送するローラであり、主走査動作の合間に媒体50を搬送することにより、ヘッド部12に副走査動作を行わせる。この場合、より具体的に、副走査駆動部16は、往路方向への主走査動作と、復路方向への主走査動作との合間、及び、復路方向への主走査動作と、往路方向への主走査動作との合間のそれぞれにおいて、予め設定された印刷パス幅分、媒体50に対して相対的にヘッド部12を移動させる。
【0038】
プラテン18は、媒体50を載置する台状部材であり、ヘッド部12と対向させて媒体50を支持する。紫外線照射部20は、媒体50上に形成されたインクのドットに紫外線を照射する紫外線光源である。紫外線照射部20としては、例えばUVLEDを好適に用いることができる。また、紫外線照射部20は、ヘッド部12と共にキャリッジ102に保持され、主走査動作時において、ヘッド部12と共に移動する。これにより、紫外線照射部20は、主走査動作時において、媒体50上のインクを硬化させる。
【0039】
また、本例において、紫外線照射部20は、主走査方向においてヘッド部12の両側に配設されている。そして、往路方向及び復路方向のそれぞれの方向への主走査動作においては、ヘッド部12の移動方向においてヘッド部12の後方側となる紫外線照射部20が、媒体50上のインクに紫外線を照射する。
【0040】
制御部22は、例えば印刷装置10のCPUであり、例えばホストPCの指示に応じて、印刷装置10の各部の動作を制御する。これにより、制御部22は、ヘッド部12に、主走査動作及び副走査動作等を行わせる。
【0041】
また、より具体的に、本例において、制御部22は、印刷装置10に、マルチパス方式での印刷の動作を行わせる。また、マルチパス方式での印刷の動作において、それぞれの印刷パスで印刷する濃度の設定を行う。この濃度の設定については、後に更に詳しく説明をする。
【0042】
尚、上記及び以下に説明をする点以外について、制御部22は、例えば、従来のインクジェットプリンタにおける制御部と同一又は同様の動作を行う。例えば、制御部22は、印刷する画像をホストPCから受け取り、RIP処理等の画層形成処理等を行ってよい。また、画像形成処理により形成される画像に応じて、制御部22は、例えば、マルチパス方式のそれぞれの印刷パスにおいて行う動作を決定する。
【0043】
以上の構成により、本例によれば、例えば、媒体50の各領域に対し、マルチパス方式で適切に印刷を行うことができる。また、この場合、往路及び復路のそれぞれの主走査動作の後に副走査動作を行うことにより、媒体50の同じ領域に対し、往路及び復路のそれぞれにおいて、ヘッド部における異なるノズルでインクのドットを形成することができる。そのため、本例によれば、例えば、ノズルの特性をより適切に均一化し、高い精度での印刷をより適切に行うこともできる。
【0044】
続いて、ヘッド部12のより具体的な構成について、詳しく説明をする。
図2は、ヘッド部12の構成の一例を示す。
図2(a)は、ヘッド部12の全体の構成の一例を、紫外線照射部20と共に示す。
図2(b)は、ヘッド部12において同一色のインクのインク滴を吐出する複数のインクジェットヘッド202の構成の一例を示す。
【0045】
本例において、ヘッド部12は、複数の色のそれぞれ(CMYKの各色)のインク滴を吐出するカラー印刷用のヘッド部であり、主走査方向の一方側及び他方側の紫外線照射部20の間に、各色用のインクジェットヘッド202を、それぞれ複数個有する。また、各色用の複数のインクジェットヘッド202は、スタガ状に並んでいる。複数のインクジェットヘッド202がスタガ状に並ぶとは、例えば、図示のように、主走査方向における位置を交互にずらしつつ、副走査方向に並ぶことである。また、色が異なるインクジェットヘッド202は、図示のように、他の色の対応するインクジェットヘッド202と副走査方向の位置を揃えて、主走査方向に並んで配設される。尚、各色のインクジェットヘッド202の配置については、例えば、色スタガの配置にしてもよい。
【0046】
また、本例において、それぞれのインクジェットヘッド202は、副走査方向へノズルが並ぶノズル列204をそれぞれ有する。この場合、例えば
図2(b)に示すように、同じ色用の複数のインクジェットヘッド202におけるノズル列204は、インクジェットヘッド202の位置に合わせて主走査方向の位置をずらしつつ、副走査方向へ並ぶ。そのため、それぞれのノズル列204について、副走査方向における位置のみを見た場合、
図2(b)の右側に示すように、一直線状に並んでいると考えることもできる。また、この場合、同じ色用の複数のインクジェットヘッド202のそれぞれにおけるノズル列204を副走査方向において仮想的に連結したノズル列206を考え、このノズル列206をヘッド部12のノズル列と考えることができる。そのため、以下において、ノズル列204を副走査方向において仮想的に連結したノズル列206について、ヘッド部12のノズル列206と呼ぶ。
【0047】
尚、
図2においては、説明の便宜上、CMYKの各色について、それぞれ3個のインクジェットヘッド202を有する場合の構成を図示した。しかし、各色用のインクジェットヘッド202の数は、3個以外の数であってもよい。例えば、各色用のインクジェットヘッド202の数は、1個であってもよい。また、ヘッド部12は、他の色について、一又は複数のインクジェットヘッド202を更に有してもよい。例えば、ヘッド部12は、CMYKの各色に加え、W(白)、CL(クリア)、PR(プライマ)等の各色の一部又は全てのインクジェットヘッド202を更に有してもよい。
【0048】
続いて、マルチパス方式で行う印刷の動作について、各印刷パス毎の印刷の濃度の設定について、説明をする。本例において、印刷装置10は、媒体50(
図1参照)における同じ領域に対して、予め設定されたN回(Nは、3以上の整数)の印刷パスのそれぞれに対応する主走査動作を行う。この場合、ヘッド部12(
図1参照)のノズル列206において並ぶ複数のノズル208は、ヘッド前端側からヘッド後端側へ向かって、それぞれの印刷パス分のインク滴を吐出するノズル208になる。尚、この場合、ヘッド後端側とは、ヘッド部において、1番目の印刷パス分のインク滴を吐出するノズルから、N番目の印刷パス分のインク滴を吐出するノズルへ向かう方向である。また、ヘッド前端側とは、ヘッド後端側と反対の側である。
【0049】
図3は、各印刷パス毎の印刷の濃度の設定の一例を示す。
図3に示した場合において、印刷装置10は、12回の印刷パスにより印刷を行う。そして、この場合、ヘッド部12のノズル列206中のノズル208は、図示のように、ヘッド前端側からヘッド後端側へ、1パス目〜12パス目のそれぞれの印刷パス用に割り当てられる。
【0050】
尚、
図2を用いて説明をしたように、本例において、ヘッド部12のノズル列206は、3個のインクジェットヘッド202のノズル列204により構成されている。そのため、この場合、より具体的には、最もヘッド前端側にあるインクジェットヘッド202のノズル列204のノズルが、1パス目〜4パス目のそれぞれの印刷パス用に割り当てられる。また、ヘッド前端側から2番目にあるインクジェットヘッド202のノズル列204のノズルが、5パス目〜8パス目のそれぞれの印刷パス用に割り当てられる。そして、最もヘッド後端側にあるインクジェットヘッド202のノズル列204のノズルが、9パス目〜12パス目のそれぞれの印刷パス用に割り当てられる。
【0051】
また、
図3においては、図示の便宜上、ノズル208の配置について、一の印刷パスに対応するノズル208の個数を減らす等の簡略化を適宜行っている。実際の構成において、それぞれのインクジェットヘッド202のノズル列204を構成する複数のノズル208は、例えば、副走査方向へ、300dpiの解像度のピッチで並ぶ。また、マルチパス方式の印刷の動作において、副走査駆動部16は、各回の副走査動作における媒体50の送り量について、例えばノズル208のピッチ未満の距離をずらした送り量を用いてもよい。より具体的には、例えば、1回の副走査動作における媒体50の送り量について、ノズル208のピッチの半分のずれが生じるように設定すること等が考えられる。この場合、副走査方向における印刷の解像度は、ノズル208のピッチに対応する解像度の2倍である600dpiになる。また、1回の副走査動作における媒体50の送り量について、ノズル208のピッチの1/3分のずれが生じるように設定すること等も考えられる。この場合、副走査方向における印刷の解像度は、ノズル208のピッチに対応する解像度の3倍である900dpiになる。
【0052】
本例において、制御部22(
図1参照)は、少なくとも、媒体における同じ領域に対して行うN回の印刷パスのうち、最後のk回(kは、1以上N未満の所定の整数)の印刷パスにおいて行う印刷の濃度を、(N−k)番目の印刷パスにおいて行う印刷の濃度よりも低く設定する。この場合、各回の印刷パスにおいて行う印刷の濃度とは、例えば、印刷パス幅のバンド領域内に対し、その印刷パスにおいて形成するインクのドットの密度に対応する濃度のことである。また、インクのドットの密度に対応する濃度とは、例えば、インクのドットの密度に応じて適宜規格化等を行った濃度であってよい。
【0053】
更に、制御部22は、ヘッド部12のノズル列206のうち、(N−k+1)番目の印刷パスの分のインク滴を吐出する複数のノズルのそれぞれにより行う印刷の濃度を、ヘッド後端側へ向かって徐々に低く設定する。この場合、複数のノズルのそれぞれにより行う印刷の濃度とは、例えば、そのノズルにより1回の主走査動作で形成するインクのドットの密度に対応する濃度である。また、この場合、インクのドットの密度は、例えば、主走査方向におけるインクの並びの密度である。
【0054】
また、より具体的に、制御部22は、例えば
図3の右側部分に示すように、それぞれの印刷パスに対応する濃度の設定を行う。これにより、制御部22は、例えば、最後の1回である12番目の印刷パスにおいて行う印刷の濃度を、最後から2番目の印刷パスである11番目の印刷パスにおいて行う印刷の濃度よりも低く設定する。また、制御部22は、ヘッド部12のノズル列206のうち、少なくとも、最後の1回の印刷パスの分のインク滴を吐出する複数のノズルのそれぞれにより行う印刷の濃度を、ヘッド後端側へ向かって徐々に低く設定する。
【0055】
このように構成すれば、例えば、最後の印刷パス等における印刷の濃度を低くすることにより、インクの層の表層部に形成するインクのドットについて、例えば、密度を小さくし、ドットの連結等を生じにくくすることができる。また、これにより、インクの層の表層部について、インクのドットの形状を適切に均一化できる。そのため、本例によれば、例えば、紫外線硬化型インクを用いてマルチパス方式で印刷を行う場合において、縞状の模様が発生すること等を適切に抑えることができる。
【0056】
また、この場合、直前の印刷パスと比べて印刷の濃度を低くする印刷パスについて、印刷パス全体の濃度を均一に低くするのではなく、その印刷パスの分のインク滴を吐出する複数のノズルのそれぞれにより行う印刷の濃度を、ヘッド後端側へ向かって徐々に低く設定する。そのため、印刷パス単位で印刷の濃度がステップ状に大きく変化することはない。従って、本例によれば、例えば、印刷パスの境界が目立つことも適切に防ぐことができる。
【0057】
また、本例において、ヘッド部12のノズル列206における複数のノズル208のそれぞれにより行う印刷の濃度について、制御部22は、より具体的に、副走査方向におけるノズル列206の中央部分を中心にして、ヘッド前端側へ向かう方向と、ヘッド後端側へ向かう方向とで濃度の変化の仕方が対称になるように設定する。例えば、制御部22は、
図3の右側部分に示すように、副走査方向におけるノズル列206の中央部分のノズル208により行う印刷の濃度を最も高くすることにより、中央部分のノズル208により行う印刷の濃度をノズル列206の端のノズル208により行う印刷の濃度よりも高く設定する。また、複数のノズル208のそれぞれにより行う印刷の濃度について、中央部分から離れるに従って徐々に濃度が低くなるように設定する。
【0058】
このように構成すれば、最後の印刷パス等の印刷の濃度について、低い濃度を適切に設定できる。また、これにより、例えば、インクの層の表層部について、インクのドットの形状をより適切に均一化できる。
【0059】
ここで、マルチパス方式で印刷を行う場合、それぞれの印刷パスによる印刷の濃度を合計した濃度について、予め設定された所定の濃度に合わせることが必要となる。そのため、例えば、いずれかの印刷パスの濃度を低くした場合、他の印刷パスの濃度について、その分だけ、濃度を高めることが必要となる。
【0060】
また、濃度の設定について、単に印刷パス単位で設定するのではなく、本例のように、ノズル単位で濃度を設定し、一の印刷パスの分のインク滴を吐出する複数のノズルによる印刷の濃度について、徐々に変化するように設定した場合、他の印刷パスにおいて、この変化分を補完するように濃度を設定することが必要になる。しかし、このような補完を行うための濃度の設定は、必ずしも容易なものではなく、複雑になる場合がある。
【0061】
これに対し、本例においては、例えば、濃度の変化の仕方に上記のような対称性を持たせることにより、各ノズル208による印刷の濃度について、ヘッド後端側とヘッド前端側との間で適切に補完することができる。また、これにより、最後の印刷パス等の印刷の濃度を適切に低くすることができる。そのため、本例によれば、例えば、インクの層の表層部について、インクのドットの形状をより適切に均一化できる。
【0062】
また、例えば
図3の右側部分に示すように、本例においては、最後の印刷パスのみではなく、ノズル列206の中央部よりもヘッド後端側のノズル208で印刷を行う各印刷パスについて、直前の印刷パスよりも濃度を低く設定している。そのため、より具体的に、最後の印刷パスのみではなく、例えば最後から2番目の印刷パスである11番目の印刷パス等についても、その前の印刷パスである10番目の印刷パス等と比べ、濃度を低く設定することになる。そして、この場合、例えば、最後から2番目の印刷パス等で形成するインクのドットについても、例えば、密度を小さくし、ドットの連結等を生じにくくすることができる。また、これにより、例えば、インクの層の表層部について、インクのドットの形状をより適切に均一化できる。
【0063】
尚、以上の説明において、各回の印刷パスにおいて行う印刷の濃度、及び、複数のノズル208のそれぞれにより行う印刷の濃度は、より具体的に、印刷装置において予め設定された濃度により媒体を塗りつぶす場合の濃度であってよい。この濃度は、例えば、印刷装置において予め設定されている100%の濃度であってよい。また、印刷装置の設定に応じて、例えば、200%又は300%等と定義される濃度であってもよい。
【0064】
また、最後の印刷パス等の印刷パスの分のインク滴を吐出する複数のノズル208のそれぞれにより行う印刷の濃度について、ヘッド後端側へ向かって徐々に低く設定するとは、例えば、ヘッド後端側へ向かう程濃度が低くなるように、それぞれのノズルに対応する印刷の濃度を設定することである。この場合、必ずしも全てのノズルについて濃度を異ならせるのではなく、例えば一部のノズルについて、隣接するノズルと同じ濃度を設定してもよい。例えば、各ノズルによる印刷の濃度について、予め設定された複数本のノズルを単位にして、徐々に変化させてもよい。この場合、印刷の濃度は、例えば階段状に変化してよい。この場合も、例えば、印刷パスを単位にステップ状に変化させる場合と比べ、濃度の変化を適切かつ十分に緩やかにできる。また、これにより、印刷パスの境界が目立つことを適切に防ぐことができる。また、各ノズルによる印刷の濃度は、より精細に、1本のノズルを単位にして、徐々に変化させてもよい。このように構成すれば、例えば、印刷パスの境界が目立つことをより適切に防ぐことができる。
【0065】
また、最後の印刷パス等において、それぞれのノズル208により行う印刷の濃度を低くする場合、副走査方向における位置が同じライン上に形成する複数のインクのドットの位置については、例えばディザ法や誤差拡散法等を用いて決定される一定のルールに基づいて分散させる。このように構成すれば、例えば、低い濃度で印刷を行うノズル208について、形成するドットの位置を適切に分散させることができる。
【0066】
図4は、本例の濃度設定を用いて行った印刷の結果を示す図であり、
図3に示した濃度設定を用いた場合について、印刷装置10において用いる各色のインク(CMYKの各色等)のインク滴を順次吐出しつつ、1回の主走査動作を行った様子を示す。
図4(a)は、1回の主走査動作による印刷結果の一例を示す写真である。
図4(b)は、印刷結果の一部を拡大して示す写真である。
【0067】
両写真からわかるように、
図3を用いて説明をしたような濃度の設定を用いて主走査動作を行った場合、ヘッド部12の中央部のノズルにより印刷された部分の濃度は高くなり、ヘッド前端側及びヘッド後端側のノズルにより印刷された部分の濃度は低くなる。また、この場合、実際の印刷の動作においては、副走査動作を間に挟んで複数回の主走査動作を行うことにより、上記において説明をしたように、最後の印刷パス等の印刷の濃度を低い濃度を適切に設定できる。また、これにより、例えば、インクの層の表層部について、インクのドットの形状をより適切に均一化できる。
【0068】
尚、本例のように、複数の色(CMYKの各色等)のインクを用いる場合、濃度の設定の勾配等について、色毎に異ならせてもよい。このように構成すれば、例えば、各色のインクの特性に合わせ、より高い精度で印刷を行うことができる。
【0069】
ここで、本例においてインクのドットが硬化する様子について、更に詳しく説明をする。
図5は、インクのドットの硬化の仕方について説明をする図である。
図5(a)は、媒体へのインク滴の着弾後、紫外線が照射されるまでの時間と、硬化後のインクのドットの高さとの関係の一例を示すグラフである。
【0070】
紫外線を照射される前の状態において、紫外線硬化型インクは、ノズルから吐出可能な低い粘度の状態になっている。そのため、媒体へのインク滴の着弾により形成されるインクのドットは、時間の経過により、徐々に拡がる。また、このドットの拡がりは、紫外線の照射によりインクを十分に硬化させることにより終了する。そのため、紫外線が照射されるまでの時間と、硬化後のインクのドットの高さとの関係は、グラフに示すように、紫外線が照射されるまでの時間が長くなる程、硬化後のインクのドットの高さが低くなる関係になる。また、グラフに示したように、紫外線が照射されるまでの時間に対するドットの高さの変化は、通常、ある程度の時間までの期間は傾きが急な変化になっている。
【0071】
ここで、
図2等を用いて説明をしたように、本例において、ヘッド部12(
図2参照)は、複数色のインクジェットヘッド202(
図2参照)が主走査方向に並んだ構成を有している。また、紫外線照射部20は、ヘッド部12に対し、主走査方向の両側に配設される。そして、主走査方向における往路方向及び復路方向の各方向の主走査動作においては、ヘッド部12の後方側になる紫外線照射部20により、媒体50上のインクに紫外線を照射する。
【0072】
しかし、
図2に示した構成等からわかるように、各色のインクジェットヘッド202は、必ずしも2個の紫外線照射部20のそれぞれと等距離の位置には配設されていない。また、
図2に示した以外の構成を考えた場合も、複数色のインクジェットヘッドを用いる場合、少なくともいずれかの色については、通常、2個の紫外線照射部20のそれぞれとの距離が異なる位置に配設される。
【0073】
そして、これらの場合、往路方向の主走査動作と、復路方向の主走査動作とで、紫外線が照射されるまでの時間が異なることになる。また、印刷装置において、近年求められている印刷速度で印刷を行う場合、通常、グラフ中に矢印で示したような、ドットの高さの変化が時間に対して比較的敏感な期間に紫外線を照射することが必要になる。そのため、往復の両方向の主走査動作を行う場合、通常、往路方向の主走査動作と、復路方向の主走査動作との間で、硬化後のインクのドットの高さに差が生じやすくなる。また、その結果、紫外線硬化型インクを用いて、マルチパス方式で印刷を行う場合、主走査動作を行う方向により、それぞれの印刷パスの印刷結果に差が生じる場合がある。より具体的には、例えば、主走査動作を行う方向に応じて、凹凸の差が大きなマット状の印刷結果と、凹凸の差が小さなグロス状の印刷結果とが交互に現れること等が考えられる。そして、これらの現象は、例えば従来の方法で印刷を行った場合に縞状の模様が生じることの原因の一つになっているとも考えられる。
【0074】
これに対し、本例においては、
図3に関連して説明をしたように、最後の印刷パス及びその前の印刷パスについて、印刷の濃度を低く設定している。そのため、本例においては、複数回の主走査動作における最後の往復により形成するインクのドットの数を適切に低減できる。また、これにより、インクの層の表層部について、主走査動作の方向による影響を適切に抑えることができる。
【0075】
また、上記においても説明をしたように、本例においては、最後の印刷パス等における印刷の濃度を低くすることにより、インクの層の表層部に形成するインクのドットについて、例えば、密度を小さくし、ドットの連結等を生じにくくしている。また、これにより、インクの層の表層部について、インクのドットの形状を均一化している。そこで、インクのドットの硬化の仕方に関連して、このような効果についても、更に詳しく説明をする。
【0076】
図5(b)は、インクのドットが連結する様子の一例を示す。1回の印刷パスにおいて、例えば隣接する画素間等の近接した位置に複数のインクのドット302を形成した場合、液体状態のドット302が互いに接触しやすくなる。そして、このような接触が生じた場合、インクのドットは連結し、図中の右側に示すように、大きな一つのドットになる。また、この場合、媒体とインクとの接触角が大きくなるため、インクのドットが拡がりやすくなり、より短時間でインクのドットが平坦化する。また、例えば印刷パスにおける印刷の濃度が高い場合には、形成するドットの数が多くなるため、このようなドットの連結が生じやすくなる。更には、その結果、連結の発生した箇所と、連結しなかった箇所との間で、インクのドットの形状や高さに差が生じやすい。
【0077】
一方、本例における最後の印刷パス等のように、印刷の濃度が低い場合、インクのドットを離散的に形成できるため、インクのドットの連結は生じにくい。また、最後の印刷パス等においては、
図5(c)に示すように、インクのドットを形成すべき領域の周囲に、先に印刷パスにより、既に硬化しているインクのドットが形成されている。
図5(c)は、最後の印刷パス等において形成するインクのドットの様子の一例を示す。
【0078】
この場合、硬化済みのドット302により周囲が囲まれているため、硬化する前の液体の状態においても、インクのドット302が拡がり得る領域は限定される。また、媒体とインクとの接触角も小さくなるため、平坦化も生じにくい。そのため、この場合、紫外線が照射されるまでの時間がある程度異なったとしても、硬化後のインクのドットの高さに差は生じにくい。より具体的には、例えば、往路方向の主走査動作と、復路方向の主走査動作とで、ヘッド部12の構造により紫外線が照射されるまでの時間に差が生じたとしても、形成されるインクのドットの高さに差が生じにくくなると考えられる。そのため、本例によれば、例えば、往路方向及び復路方向への両方向への主走査動作を行う場合においても、インクの層の表層部に形成するインクのドットについて、主走査動作の方向によるドットの高さの差を適切に抑えることができる。また、これにより、主走査動作の方向による影響をより適切に抑えることができる。
【0079】
続いて、本例において行う濃度の設定について、
図3を用いて説明した構成以外の変形例を説明する。
図6は、濃度の設定の変形例を示す図であり、
図3の右側に示した濃度の設定に変えて用いる濃度の設定の例を示す。
図6(a)は、濃度の設定の第1の変形例を示す。
図6(b)は、濃度の設定の第2の変形例を示す。
【0080】
図3においては、ヘッド部12のノズル列206(
図2参照)における複数のノズルのそれぞれにより行う印刷の濃度について、曲線状に徐々に変化する場合の例を示した。しかし、濃度の変化は、
図6(a)に示すように、直線状に設定してもよい。また、濃度の変化について、例えば
図6(b)に示すように、ノズル列206の中央部分等の一部の範囲について、濃度を一定にしてもよい。これらの場合も、
図3に示した濃度の設定の場合と同様に、最後の印刷パス等の印刷の濃度を低い濃度を適切に設定できる。また、これにより、例えば、インクの層の表層部について、インクのドットの形状をより適切に均一化できる。更には、その他の効果についても、同様に得ることができる。
【0081】
また、本例のように、同一の色について複数のインクジェットヘッド202(
図2参照)を用いる場合、ヘッド部12全体のノズル列206のみではなく、個々のインクジェットヘッド202のノズル列204(
図2参照)に合わせてそれぞれの印刷パスの濃度を設定することも考えられる。
図7は、濃度の設定の更なる変形例(以下、第3の変形例という)を示す図であり、
図3の右側に示した濃度の設定に変えて用いる濃度の設定の例を示す。尚、以下に説明をする点を除き、
図7において、
図3等と同じ符号を付した構成は、
図3等における構成と同一又は同様の特徴を有する。
【0082】
第3の変形例において、制御部22(
図1参照)は、スタガ状に並ぶ同一色用の複数のインクジェットヘッド202のそれぞれにおけるノズル列204に含まれる複数のノズル208により行う印刷の濃度について、図中に示すように、副走査方向におけるノズル列204の中央部分のノズルにより行う印刷の濃度が高く、かつ、中央部分から離れるに従って徐々に濃度が低くなるように設定する。このように構成した場合も、例えば、最後の印刷パス等の印刷の濃度について、低い濃度を適切に設定できる。また、これにより、例えば、インクの層の表層部について、インクのドットの形状をより適切に均一化できる。更には、その他の効果についても、
図3に示した濃度の設定を用いる場合と同様に得ることができる。
【0083】
また、それぞれのインクジェットヘッド202において、ノズル列204の端のノズル208は、中央部のノズル208と比べ、着弾位置のずれ等が生じやすい。これに対し、第3の変形例のように構成した場合、スタガ状に並ぶそれぞれのインクジェットヘッド202において、ノズル列204の端のノズル208について、そのノズル208による印刷の濃度を低く設定することになる。そのため、例えばそれぞれのインクジェットヘッド202について、ノズル列204の端のノズル208の影響を適切に低減できる。また、これにより、例えばノズル列204の端のノズル208において着弾位置のずれ等が生じた場合にも、印刷結果への影響を適切に抑えることができる。そのため、このように構成すれば、例えば、スタガ状に並ぶ複数のインクジェットヘッド202の構成に合わせ、各印刷パスの濃度を適切に設定できる。
【0084】
図8は、第3の変形例の濃度設定を用いて行った印刷の結果を示す図であり、1回の主走査動作による印刷結果の一例について、写真を示す。写真からわかるように、
図7を用いて説明をしたような濃度の設定を用いて主走査動作を行った場合、それぞれのインクジェットヘッド202のノズル列204(
図7参照)における中央部のノズルにより印刷された部分の濃度は高くなり、それぞれのインクジェットヘッド202におけるヘッド前端側及びヘッド後端側のノズルにより印刷された部分の濃度は低くなる。その結果、ヘッド部12全体のノズル列206(
図7参照)においても、ヘッド前端側及びヘッド後端側のノズルにより印刷された部分の濃度は低くなる。そのため、この場合も、上記においても説明したように、例えば、最後の印刷パス等の印刷の濃度を低い濃度を適切に設定できる。また、これにより、例えば、インクの層の表層部について、インクのドットの形状をより適切に均一化できる。
【0085】
尚、個々のインクジェットヘッド202のノズル列204に合わせてそれぞれの印刷パスの濃度を設定する場合においても、例えば、
図7に示した構成以外の濃度の設定を用いてもよい。例えば、それぞれのインクジェットヘッド202のノズル列204で行う範囲の印刷の濃度について、
図6(a)を用いて説明をした濃度の設定と同様にして、濃度の設定を直線状に変化させてもよい。また、
図6(b)を用いて説明をした濃度の設定と同様にして、それぞれのインクジェットヘッド202におけるノズル列204の中央部分等の一部の範囲について、濃度を一定にすること等も考えられる。これらの場合も、スタガ状に並ぶ複数のインクジェットヘッド202の構成に合わせ、各印刷パスの濃度を適切に設定できる。
【0086】
以上、本発明を実施形態を用いて説明したが、本発明の技術的範囲は上記実施形態に記載の範囲には限定されない。上記実施形態に、多様な変更又は改良を加えることが可能であることが当業者に明らかである。その様な変更又は改良を加えた形態も本発明の技術的範囲に含まれ得ることが、特許請求の範囲の記載から明らかである。