特許第6389615号(P6389615)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6389615
(24)【登録日】2018年8月24日
(45)【発行日】2018年9月12日
(54)【発明の名称】止水扉
(51)【国際特許分類】
   E06B 5/00 20060101AFI20180903BHJP
【FI】
   E06B5/00 Z
【請求項の数】5
【全頁数】12
(21)【出願番号】特願2014-21712(P2014-21712)
(22)【出願日】2014年2月6日
(65)【公開番号】特開2015-148096(P2015-148096A)
(43)【公開日】2015年8月20日
【審査請求日】2017年1月4日
(73)【特許権者】
【識別番号】000239714
【氏名又は名称】文化シヤッター株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100089118
【弁理士】
【氏名又は名称】酒井 宏明
(72)【発明者】
【氏名】中島 厚二
(72)【発明者】
【氏名】菅谷 展之
(72)【発明者】
【氏名】松岡 由利子
【審査官】 兼丸 弘道
(56)【参考文献】
【文献】 特開2007−023540(JP,A)
【文献】 特開昭55−039593(JP,A)
【文献】 実開平03−129690(JP,U)
【文献】 実開昭61−001522(JP,U)
【文献】 実開昭56−034994(JP,U)
【文献】 実開平06−076588(JP,U)
【文献】 韓国公開特許第10−2014−0003168(KR,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
E06B 5/00
E06B 3/70−3/88
E04H 9/14
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
構造物の屋外空間側と屋内空間側とを連通する開口に設けられる枠体と、
前記枠体に回動可能に支持され前記開口を開閉する扉体と、
前記扉体が前記開口を閉塞させる閉塞位置にある状態で、前記扉体が前記枠体に押し付けられる押付方向において当該枠体と当該扉体との間に介在する枠状の止水部材と、を備えた止水扉であって、
前記扉体は、複数の骨格部材と、前記骨格部材の両表面に取り付けられる扉表面材とを備え、屋内空間側の前記扉表面材が、屋内空間側から貫通されて前記骨格部材に到達する結合具により前記骨格部材に固定されており、
前記骨格部材は、前記扉表面材が重ねられる互いに平行な一対の重なり板部と、前記一対の重なり板部の一端部同士を連結する第1の連結板部と、前記一対の重なり板部の他端部から当該一対の重なり板部同士が近づく方向に延びた内側延在板部と、を一体的に含んだ断面Cの字状に形成され、
前記扉体は、前記骨格部材の前記第1の連結板部と、前記骨格部材の前記屋内空間側の前記内側延在板部と、の内側で延びるように配置されるカバー部材を備え、
前記カバー部材と、前記骨格部材の前記第1の連結板部と、前記骨格部材の前記屋内空間側の前記内側延在板部と、で構成される空間により、前記結合具の、前記骨格部材に到達するとともに前記扉体の内側に露出する貫通部が覆われていることを特徴とする、
止水扉。
【請求項2】
前記カバー部材は、断面コの字状に形成され、前記結合具を覆うカバー部と、前記重なり板部に固定され、前記カバー部に連なった一対の扉表面固定部材と、
を備えることを特徴とする、
請求項1記載の止水扉。
【請求項3】
前記カバー部は、前記重なり板部、前記第1の連結板部、および前記内側延在板部と交差するように延びる互いに平行な一対の平行板部と、前記一対の平行板部の一端部同士を連結するように前記重なり板部に対して間隔を隔てて平行に延びる第2の連結板部と、を一体的に含み、
前記扉表面固定部材は、前記重なり板部に重なるように、前記一対の平行板部の他端部からフランジ状に延びていることを特徴とする、
請求項2記載の止水扉。
【請求項4】
前記貫通部の外周面にコーキング材が塗布されていることを特徴とする、
請求項1〜請求項3のうちいずれか一項に記載の止水扉。
【請求項5】
前記結合具は、屋内空間側の前記扉表面材に屋内空間側からねじ込まれるねじであることを特徴とする、
請求項1〜請求項4のうちいずれか一項に記載の止水扉。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、止水扉に関する。
【背景技術】
【0002】
従来の止水扉として、例えば、特許文献1には、環状の枠部材と、この枠部材の開口を塞止する扉部材とを備え、この扉部材にて開口を塞止することによって、開口からの浸水を阻止する止水扉装置が開示されている。この止水扉装置は、枠部材に、扉部材の周縁部を受ける環状の受部が設けてあり、この受部の適宜位置に扉部材に当接させる枠側凸部が開口に倣って延設してある。そして、この止水扉装置は、受部の枠側凸部の当接部分に、弾性材を用いてなる止水部材が延設してある。止水扉装置は、扉体が複数の骨格部材と骨格部材の両面に取り付けられた扉表面材とを備えている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2007−023540号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
ところで、上述の特許文献1に記載の止水扉装置は、容易に開閉するために、扉体の軽量化が望まれているが、軽量化のために骨格部材を削減すると、扉体内に浸入した水の水圧により扉表面材が骨格部材から剥がれることが懸念される。
【0005】
本発明は、上記の事情に鑑みてなされたものであって、扉体の軽量化を図ることができ、扉表面材が骨格部材から剥がれることを抑制できる止水扉を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上記目的を達成するために、本発明に係る止水扉は、構造物の屋外空間側と屋内空間側とを連通する開口に設けられる枠体と、前記枠体に回動可能に支持され前記開口を開閉する扉体と、前記扉体が前記開口を閉塞させる閉塞位置にある状態で、前記扉体が前記枠体に押し付けられる押付方向において当該枠体と当該扉体との間に介在する枠状の止水部材と、を備えた止水扉であって、前記扉体は、複数の骨格部材と、前記骨格部材の両表面に取り付けられる扉表面材とを備え、屋内空間側の前記扉表面材が、屋内空間側から貫通されて前記骨格部材に到達する結合具により前記骨格部材に固定されており、前記骨格部材は、前記扉表面材が重ねられる互いに平行な一対の重なり板部と、前記一対の重なり板部の一端部同士を連結する第1の連結板部と、前記一対の重なり板部の他端部から当該一対の重なり板部同士が近づく方向に延びた内側延在板部と、を一体的に含んだ断面Cの字状に形成され、前記扉体は、前記骨格部材の前記第1の連結板部と、前記骨格部材の前記屋内空間側の前記内側延在板部と、の内側で延びるように配置されるカバー部材を備え、前記カバー部材と、前記骨格部材の前記第1の連結板部と、前記骨格部材の前記屋内空間側の前記内側延在板部と、で構成される空間により、前記結合具の、前記骨格部材に到達するとともに前記扉体の内側に露出する貫通部が覆われていることを特徴とする。
【0007】
上記止水扉は、屋内空間側の扉表面材と骨格部材とを結合具により固定するので、骨格部材の数を削減しても、扉体内に浸入した水の水圧により屋内空間側の扉表面材が骨格部材から剥がれることを抑制できる。したがって、止水扉は、扉体の軽量化と扉表面材が骨格部材から剥がれることを抑制することができる。また、止水扉は、扉体の内側に露出する結合具の貫通部を覆うカバー部材を備えているので、屋内空間側の扉表面材と結合具との間から扉体内に浸入した水が屋内空間側に漏れることを抑制することができる。また、止水扉は、カバー部材が骨格部材に取り付けられて、カバー部材が骨格部材とともに貫通部を覆うことができるので、結合具の周りからの屋内空間側への水が漏れることを抑制しながらも、カバー部材の構成を簡便にでき、軽量化を図ることができる。
【0008】
また、上記止水扉では、前記貫通部の外周面にコーキング材が塗布されているものとすることができる。
【0009】
この場合、止水扉は、貫通部の外周にコーキング材が塗布されているので、屋内空間側の扉表面材と結合具との間から扉体内に浸入した水が屋内空間側に漏れることを抑制することができる。
【0014】
また、上記止水扉では、前記結合具は、屋内空間側の前記扉表面材に屋内空間側からねじ込まれるねじとすることができる。
【0015】
この場合、止水扉は、結合具として、扉表面材及び骨格部材との摩擦の大きなねじを用いるので、扉体内に浸入した水の水圧により屋内空間側の扉表面材が骨格部材から剥がれることを抑制できる。
【発明の効果】
【0016】
本発明に係る止水扉は、扉体の軽量化を図ることができ、扉表面材が骨格部材から剥がれることを抑制できる、という効果を奏する。
【図面の簡単な説明】
【0017】
図1図1は、実施形態に係る止水扉の概略構成を表す模式的な正面図である。
図2図2は、図1に示すA−A断面図である。
図3図3は、実施形態に係る止水扉の概略構成を表す模式的な背面図である。
図4図4は、図3に示す扉体のB−B断面図である。
図5図5は、図4に示すV部を拡大して示す断面図である。
図6図6は、実施形態に係る止水扉の扉体の内側の概略構成を分解して示す斜視図である。
図7図7は、図5に示すVII部を拡大して示す断面図である。
図8図8は、実施形態に係る止水扉のねじの頭の正面図である。
図9図9は、実施形態に係る止水扉の組み付け前の骨格部材に扉表面材を重ねた状態を示す断面図である。
図10図10は、図9に示された扉表面材に形成された孔にねじをねじ込んだ状態を示す断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0018】
以下に、本発明に係る実施形態を図面に基づいて詳細に説明する。なお、この実施形態によりこの発明が限定されるものではない。また、下記実施形態における構成要素には、当業者が置換可能かつ容易なもの、或いは実質的に同一のものが含まれる。
【0019】
[実施形態]
図1は、実施形態に係る止水扉の概略構成を表す模式的な正面図である。図2は、図1に示すA−A断面図である。図3は、実施形態に係る止水扉の概略構成を表す模式的な背面図である。図4は、図3に示す扉体のB−B断面図である。図5は、図4に示すV部を拡大して示す断面図である。図6は、実施形態に係る止水扉の扉体の内側の概略構成を分解して示す斜視図である。図7は、図5に示すVII部を拡大して示す断面図である。図8は、実施形態に係る止水扉のねじの頭の正面図である。
【0020】
図1図2及び図3に示す本実施形態の止水扉1は、ビル、家屋、倉庫等の建築物を含む構造物Sに形成された開口Oを開放あるいは閉塞するものである。開口Oは、構造物Sの第1空間側(例えば、屋外空間側)と第2空間側(例えば、屋内空間側)とを連通するように形成される。本実施形態の止水扉1は、構造物Sの内部に水が浸入することを防止する、いわゆる止水扉である。本実施形態の止水扉1は、枠体4と、扉体5と、止水部材100とを備える。
【0021】
なお、以下の説明では、扉体5を閉塞位置に回動させる際の回動方向を「閉塞時回動方向」といい、扉体5を開放位置に回動させる際の回動方向を「開放時回動方向」という場合がある。また、閉塞時回動方向は、典型的には、開口Oを介して一方の空間側(屋外空間側)から他方の空間側(屋内空間側)へ水が浸入する可能性がある場合に、水が流動する可能性がある方向に沿った方向である。つまり、水の流動方向は、典型的には、開放時回動方向側が上流側、閉塞時回動方向側が下流側となる。また、水平方向に沿った方向であって後述の一対の縦枠部材41が向かい合う方向を「扉幅方向」という場合がある。本明細書中、水が浸入する可能性がある場合に、上流側を屋外空間側、下流側(言い換えれば、水の浸入を阻止や抑制したい側)を屋内空間側という場合がある。なお、屋外や屋内とは水が浸入する可能性がある場合の上流や下流を意味する便宜上の文言であり、本発明は、例えば廊下等の通路のような家屋や部屋等の概念が必ずしも明確にならない場合に設置された止水扉に対しても適用できる。
【0022】
枠体4は、構造物Sの開口Oに設けられる。枠体4は、一対の縦枠部材41と、上枠部材42及び下枠部材43とを含んで構成される四方枠タイプとなっている。
【0023】
一対の縦枠部材41は、それぞれ開口Oの鉛直方向に沿った端面に1つずつ設けられる。一対の縦枠部材41は、水平方向において開口Oの空間部分を挟んで対向し、扉幅方向において左右一対で設けられる。一対の縦枠部材41は、鉛直方向に沿って設けられる。
【0024】
上枠部材42及び下枠部材43は、それぞれ開口Oの水平方向に沿った端面に1つずつ設けられる。ここでは、上枠部材42は、開口Oの水平方向に沿った端面であって鉛直方向上側の端面に設けられる。下枠部材43は、開口Oの水平方向に沿った端面であって鉛直方向下側の端面に設けられる。上枠部材42及び下枠部材43は、鉛直方向において開口Oの空間部分を挟んで対向する。上枠部材42及び下枠部材43は、水平方向に沿って設けられる。
【0025】
枠体4は、開口Oの内面側にて一対の縦枠部材41の端部と上枠部材42、下枠部材43の端部とが連結されており、全体として開口Oに対応した環状のロの字型形状に構成される。枠体4は、開口Oの周囲を囲むように構造物Sに固定的に取り付けられている。一対の縦枠部材41、上枠部材42、下枠部材43は、開口Oの各端面との間がコーキング材等により水密状態とされる。
【0026】
さらに、枠体4は、各縦枠部材41、上枠部材42、下枠部材43における開口Oの空間部分側に、止水部材100を保持するための保持部44を有する。保持部44は、枠体4の各縦枠部材41、上枠部材42、下枠部材43に沿って、全体として環状のロの字型形状に構成される。保持部44は、枠体4の各縦枠部材41、上枠部材42、下枠部材43において、開放時回動方向側、すなわち、屋外空間側に開口するように凹部状に形成され、当該凹部内に止水部材100を収容、保持することができる。
【0027】
扉体5は、枠体4に回動可能に支持され開口Oを開閉する開閉体である。すなわち、扉体5は、開口Oを開放あるいは閉塞する。本実施形態の扉体5は、片開き式の扉である。
【0028】
扉体5は、当該扉体5を開閉するためのドアノブ51等が設けられる。また、扉体5は、水平方向に沿った一方の端面に蝶番52等が設けられる一方、他方の端面にラッチ53等が設けられる。蝶番52は、鉛直方向に沿った回動軸を中心として、扉体5を枠体4の一方の縦枠部材41に回動可能に支持する。本実施形態の蝶番52は、1つの回動軸を有する1軸蝶番によって構成される。本実施形態の蝶番52は、鉛直方向に間をあけて2箇所に設けられる。ラッチ53は、枠体4の他方の縦枠部材41に形成される係合穴53aと係合することで、扉体5の戸先を当該縦枠部材41に係合するものである。扉体5は、水平方向において蝶番52が設けられる基端部側が吊り元側(言い換えれば、戸尻側)となる一方、吊り元側とは反対側、すなわち、ラッチ53が設けられる先端部側が戸先側となる。扉体5は、さらに、不図示のドアクローザー等を備えていてもよい。
【0029】
したがって、扉体5は、蝶番52の回動軸を回動中心として、開口Oを閉塞させる閉塞位置(図2中に実線で図示)と、開口Oを開放させる開放位置(図2中に点線で図示)とに回動可能となる。そして、この扉体5は、閉塞位置にある状態でラッチ53が縦枠部材41に形成された係合穴53aと係合する。扉体5は、閉塞位置から開放位置側に回動されることで、屋外空間側に進出し開口Oを開放する。
【0030】
止水部材100は、扉体5が閉塞位置にある状態で開口Oを止水するものである。止水部材100は、扉体5が閉塞位置にある状態で、扉体5が枠体4に押し付けられる押付方向Pにおいて当該枠体4と当該扉体5との間に介在する。本実施形態の止水部材100は、枠体4側に設けられるものとして説明するがこれに限らず、扉体5側に設けられてもよい。ここで、扉体5が枠体4に押し付けられる押付方向Pとは、典型的には、扉体5に対して屋外空間側から水圧が作用した際に当該水圧による押し付け力が作用する方向であり、第1空間側(例えば、屋外空間側)から第2空間側(例えば、屋内空間側)に向う方向である。本実施形態では、押付方向Pは、閉塞位置にある扉体5の扉表面材55a,55bと直交する方向で屋内空間側に向う方向に相当する。
【0031】
本実施形態の止水部材100は、戸先側止水ゴム102、吊り元側止水ゴム103、上側止水ゴム104、及び、下側止水ゴム105を含んで構成される。戸先側止水ゴム102、吊り元側止水ゴム103、上側止水ゴム104、及び、下側止水ゴム105は、所定の弾性を有する弾性部材であり、例えば、独立気泡型の樹脂(止水ゴム)材や気泡を有しない柔らかめの樹脂等を用いることができる。戸先側止水ゴム102、吊り元側止水ゴム103、上側止水ゴム104、及び、下側止水ゴム105は、扉体5が閉塞位置にある状態で枠体4と扉体5との間に介在し、当該枠体4と扉体5との間を封止(シール)して流体の通過を防止する。さらに言えば、戸先側止水ゴム102、吊り元側止水ゴム103、上側止水ゴム104、及び、下側止水ゴム105は、扉体5の閉塞位置側への回動に応じて枠体4と扉体5との間で弾性変形し枠体4と扉体5とに密着し、当該枠体4と当該扉体5との間を密閉する。
【0032】
戸先側止水ゴム102、吊り元側止水ゴム103は、鉛直方向に沿って設けられる一対の鉛直部材である。上側止水ゴム104、下側止水ゴム105は、水平方向に沿って設けられる一対の水平部材である。戸先側止水ゴム102、吊り元側止水ゴム103、上側止水ゴム104、及び、下側止水ゴム105は、棒状の部材として形成される。
【0033】
より詳細には、戸先側止水ゴム102は、戸先側の縦枠部材41の保持部44内に収容、保持される。吊り元側止水ゴム103は、吊り元側の縦枠部材41の保持部44内に収容、保持される。上側止水ゴム104は、上枠部材42の保持部44内に収容、保持される。下側止水ゴム105は、下枠部材43の保持部44内に収容、保持される。戸先側止水ゴム102、吊り元側止水ゴム103、上側止水ゴム104、及び、下側止水ゴム105は、各保持部44内で、各端部が水密状態(密着状態)となるように連続的に連結されている。戸先側止水ゴム102、吊り元側止水ゴム103、上側止水ゴム104、及び、下側止水ゴム105によって構成される止水部材100は、全体として枠体4に対応した枠状のロの字型形状に構成される。
【0034】
次に、図4に戻り、扉体5の構成について説明する。扉体5は、図4に示すように、框、縦桟、横桟等の複数の骨格部材54と、骨格部材54の両表面に取り付けられる扉表面材55a,55bと、カバー部材56とを備えている。なお、図4には、骨格部材54として縦桟を示し、他を省略している。扉体5は、互いに組み付けられた複数の骨格部材54に対して、両表面から板状の扉表面材55a,55bを組み付けることで、全体として矩形パネル状の部材として構成される。
【0035】
骨格部材54は、図4に示すように、断面Cの字型形状に形成され、扉表面材55a,55bが重ねられる互いに平行な一対の重なり板部54a,54bと、一対の重なり板部54a,54bの一端部同士を連結した連結板部54cと、一対の重なり板部54a,54bの他端部から当該一対の重なり板部54a,54b同士が近づく方向に延びた内側延在板部54dとを一体に備えている。
【0036】
扉表面材55a,55bは、例えば、ステンレス鋼などの溶接により変色するなどの美観を損なう金属で構成され、平板状に形成されている。屋外空間側の扉表面材55aは、接着剤などにより骨格部材54の一方の重なり板部54aに固定されている。屋内空間側の扉表面材55bは、屋内空間側から貫通されて骨格部材54に到達するねじ57(結合具に相当)により骨格部材54の他方の重なり板部54bに固定されている。
【0037】
ねじ57は、屋内空間側の扉表面材55bに屋内空間側からねじ込まれるねじである。ねじ57として、本実施形態では、周知のタッピングねじが用いられる。また、本発明では、これに限定することなく、種々のねじを用いてもよい。また、本発明では、結合具としてねじ57であれば、扉表面材55b及び骨格部材54との摩擦が大きくなるので、好ましいが、使用上水圧に耐え得るのであれば、結合具としてねじ57に替えて例えば釘等の扉表面材55bを貫通して骨格部材54に到達するものを用いてもよい。ねじ57は、図8に示すように、頭57aの表面に星形の穴が形成された所謂いじり止めねじとなっている。ねじ57は、本実施形態では、図3に示すように、扉表面材55a,55bに鉛直方向、水平方向に等間隔に配置され、扉体5内に浸入した水から想定される水圧が作用した際に、扉表面材55bが骨格部材54から剥がれることなく、水圧に耐え得る位置に配置されている。また、本発明では、想定される水圧に耐え得るのであれば、ねじ57は、扉体5の下方から上方に向かうにしたがって徐々に疎となる位置、即ち、互いに隣り合うもの同士の間隔が広くなる位置に配置されてもよい。
【0038】
ねじ57の骨格部材54に到達するねじ部57b(貫通部に相当)は、屋内空間側の扉表面材55b及び骨格部材54の他方の重なり板部54bを貫通して、図5及び図6に示すように、扉体5の内側に露出している。ねじ57のねじ部57bの外周面には、図7に示すように、コーキング材58が塗布されている。コーキング材58は、ねじ部57bの外周面と、扉表面材55a,55b及び重なり板部54bに形成された貫通孔59との間に充填されている。コーキング材58は、ねじ部57bの外周面と、扉表面材55a,55b及び他方の重なり板部54bに形成された貫通孔59との間を止水する。コーキング材58は、シリコーン系、変性シリコーン系、ポリウレタン系などの樹脂で構成されている。
【0039】
カバー部材56は、骨格部材54に取り付けられて、ねじ57の扉体5の内側に露出するねじ部57bを、骨格部材54と協同して覆うものである。カバー部材56は、薄手の板金などで構成され、図6に示すように、コの字型形状に形成されたカバー部56aと、カバー部56aに連なった一対の扉表面材固定部56bとを備えている。カバー部56aは、互いに平行な一対の平行板部56cと、平行板部56cの一端部同士を連結した連結板部56dとを一体に備えている。一対の扉表面材固定部56bは、平行板部56cの他端部から互いに離れる方向に延びている。一対の扉表面材固定部56bは、連結板部56dと平行である。
【0040】
カバー部材56は、カバー部56aが扉体5の内側に露出するねじ部57bを覆う位置に配置され、扉表面材固定部56bが接着剤により重なり板部54bに固定される。また、カバー部材56は、骨格部材54の連結板部54cと内側延在板部54dとの間に配置され、骨格部材54の連結板部54cと内側延在板部54dとの間にコーキング材58が充填されている。コーキング材58によりカバー部材56と骨格部材54とで囲まれる空間、すなわち、扉体5の内側に露出するねじ部57bを覆う空間には、扉体5内に浸入した水が浸入することが規制される。
【0041】
次に、扉表面材55bを骨格部材54の他方の重なり板部54bに組み付ける工程の一例を図9及び図10を参照して説明する。図9は、実施形態に係る止水扉の組み付け前の骨格部材に扉表面材を重ねた状態を示す断面図である。図10は、図9に示された扉表面材に形成された孔にねじをねじ込んだ状態を示す断面図である。
【0042】
扉表面材55bを骨格部材54の他方の重なり板部54bに組み付ける前に、図9に示すように、扉表面材55bのねじ57がねじ込まれる位置に、ねじ部57bの外径よりも小径な孔59aを形成しておく。さらに、骨格部材54の他方の重なり板部54bのねじ57がねじ込まれる位置に、ねじ57を位置決めするための凹み59bを形成しておく。そして、図9に示すように、孔59aと凹み59bとが連通する位置に扉表面材55bと骨格部材54を位置決めした後に、孔59aにねじ57のねじ部57bをねじ込む。そして、ねじ57を孔59aの内径を広げながらねじ込み、図10に示すように、扉表面材55bを貫通させた後に、凹み59b内に侵入させる。さらに、ねじ57をねじ込んで、ねじ部57bが骨格部材54の他方の重なり板部54bを貫通して、扉表面材55bが骨格部材54の他方の重なり板部54bに組み付けられる。その後、カバー部材56、扉表面材55aなどが組み付けられるなどして、扉体5が組み立てられる。
【0043】
上記のように構成される止水扉1は、水圧が作用していない初期状態に対して、屋外空間側から水圧が作用する水圧状態では、扉体5の戸先側が水圧によって屋内空間側、言い換えれば、枠体4側に押し込まれることとなる。一方、水圧状態とは、扉体5に対して屋外空間側から所定の大きさの水圧が作用している状態である。水圧状態では、止水扉1は、扉体5に対して屋外空間側から水圧が作用すると、戸先側止水ゴム102、吊り元側止水ゴム103や上側止水ゴム104、下側止水ゴム105の戸先側が枠体4と扉体5との間で押付方向Pに十分に押しつぶされて、適正な止水性能を確保することができる。
【0044】
また、水圧状態では、止水扉1は、骨格部材54と扉表面材55a,55bなどとの隙間から扉体5内に水が浸入する。扉体5内に侵入した水の水圧は、扉表面材55bを屋内空間側に押圧して、扉表面材55bを骨格部材54から剥がそうとする。このとき、ねじ57が水圧に耐え得る位置に配置されているので、扉表面材55bが骨格部材54から剥がれることを抑制できる。また、扉体5内に浸入した水は、カバー部材56と骨格部材54とで囲む空間内に浸入しようとするが、カバー部材56が水圧により骨格部材54に押し付けられ、コーキング材58によりカバー部材56と骨格部材54との間が止水されているので、カバー部材56と骨格部材54とで囲む空間内に水が浸入することが規制される。また、仮に、カバー部材56と骨格部材54とで囲む空間内に水が浸入しても、ねじ57のねじ部57bの外周面と貫通孔59との間にコーキング材58が充填されているので、扉体5内に浸入した水がねじ57の周りから屋内空間側に漏れることを規制できる。
【0045】
以上で説明した実施形態に係る止水扉1によれば、屋内空間側の扉表面材55bと骨格部材54とをねじ57により固定するので、骨格部材54の数を削減しても、扉体5内に浸入した水の水圧により屋内空間側の扉表面材55bが骨格部材54から剥がれることを抑制できる。したがって、止水扉1は、扉体5の軽量化を図ることができ、扉表面材55bが骨格部材54から剥がれることを抑制することができる。
【0046】
また、止水扉1は、ねじ57のねじ部57bの外周面にコーキング材58が塗布されているので、屋内空間側の扉表面材55bとねじ57との間から扉体5内に浸入した水が屋内空間側に漏れることを抑制することができる。したがって、止水扉1は、開口Oを止水することができる。さらに、止水扉1は、結合具としてねじ57を用いるので、骨格部材54の数を削減しても、扉体5内に浸入した水の水圧により屋内空間側の扉表面材55bが骨格部材54から剥がれることを抑制できる。
【0047】
また、止水扉1は、扉体5の内側に露出するねじ57のねじ部57bを覆うカバー部材56を備えている。また、カバー部材56が、骨格部材54に取り付けられて、骨格部材54とともにねじ57のねじ部57bを覆い、カバー部材56と骨格部材54との間がコーキング材58により止水されている。このために、止水扉1は、カバー部材56と骨格部材54とでねじ部57bを囲む空間内に扉体5内に浸入した水が浸入することを抑制でき、ねじ57の周りから扉体5内に浸入した水が屋内空間側に漏れることを確実に抑制することができる。さらに、止水扉1は、カバー部材56が骨格部材54に取り付けられて、骨格部材54とともにねじ部57bを覆うので、カバー部材56の構成を簡便にすることができ、軽量化を図ることができる。
【0048】
前述した実施形態では、カバー部材56を骨格部材54に取り付けたが、本発明では、これに限定されることなく、カバー部材56を扉表面材55bに取り付けてもよく、骨格部材54と協同せずに単独でねじ部57bを覆ってもよい。さらに、本発明では、カバー部材56は、前述した実施形態に記載された形状に限定されることなく、ねじ部57bを単独又は骨格部材54などと協同して覆うことができれば、種々の形状に形成してもよい。
【0049】
なお、上述した本発明の実施形態に係る止水扉は、上述した実施形態に限定されず、特許請求の範囲に記載された範囲で種々の変更が可能である。
【符号の説明】
【0050】
1 止水扉
4 枠体
5 扉体
54 骨格部材
55a,55b 扉表面材
56 カバー部材
57 ねじ(結合具)
57b ねじ部(貫通部)
58 コーキング材
100 止水部材
S 構造物
O 開口
P 押付方向
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10