(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
【発明を実施するための形態】
【0014】
以下本発明を、その好ましい実施形態に基づき説明する。本発明の銅粉は、それを構成する銅粒子の形状に特徴の一つを有する。具体的には銅粒子は直方体形状を有する。直方体形状を有する銅粒子は、六つの平面を有する六面体であり、各平面は略矩形をしている。略矩形とは、矩形を構成する四辺のうち、互いに交差する二辺のなす角度が90度である場合、及び90度に対してプラスマイナス20度の範囲内である場合の双方を包含する。
【0015】
直方体形状を有する銅粒子が有する六つの平面は、隣り合う平面とのなす角度が概ね90度になっている。概ね90度とは、隣り合う平面とのなす角度が90度である場合、及び90度に対してプラスマイナス20度の範囲内である場合の双方を包含する。
【0016】
直方体形状を有する銅粒子は、略矩形状である各面を観察したときに、
図1に示すとおり、各面を画定する四辺のうち、互いに交差する二辺a,bの長さの比率であるa/bの値(以下「アスペクト比」とも言う。)が1以上5以下であることが好ましく、1以上3以下であることが更に好ましく、1以上2以下であることが一層好ましい。この関係は、六つの面のうちの少なくとも一つの面で成立していることが好ましく、最も好ましくは六つの面のすべてで成立している。
【0017】
また、直方体形状を有する銅粒子は、略矩形状である各面を観察したときに、
図1に示すとおり最大長L
Mと長軸長L
Aとの比率であるL
M/L
Aの値が、1.05以上1.41以下であることが好ましく、1.10以上1.41以下であることが更に好ましく、1.12以上1.41以下であることが一層好ましい。この関係は、六つの面のうちの少なくとも一つの面で成立していることが好ましく、最も好ましくは六つの面のすべてで成立している。
【0018】
直方体形状を有する銅粒子は、最も好ましくは略立方体形状を有している。略立方体形状とは、六つの平面のいずれもが略同寸法の略正方形をしており、隣り合う平面とのなす角度が概ね90度になっている立体形状である。特に、
図1に示すとおり、各面を画定する四辺のうち、互いに交差する二辺a,bの長さの比率であるa/bの値が1以上5以下であることが好ましい。また、最大長L
Mと長軸長L
Aとの比率であるL
M/L
Aの値が、1.02以上1.41以下であることが好ましい。
【0019】
上述した直方体形状を有する銅粒子の集合体から構成される本発明の銅粉は、該銅粒子の形状に起因して、粒子が規則正しく積み上げられるので、該銅粉から形成される導電体の表面が平滑なものとなるという有利な効果を奏する。特に、銅粒子が立方体形状である場合、粒子の積み上げが一層規則正しくなるので、導電体の表面が一層平滑になる。また、その形状に起因して、及び表面炭素量が少ないことに起因して、導電体の充填密度を高くすることができ、それによって導電体は低抵抗なものとなる。導電体の表面が平滑でかつ充填密度が高いことは、該導電体と電気的な導通を行うための他の導電体との電気的な接触の信頼性が高まる点や、電気抵抗の上昇が抑制される点、及び回路表面粗さに起因する高周波伝送ノイズが抑制される点等から有利である。
【0020】
本発明の銅粉は、上述した直方体形状を有する銅粒子の集合体から構成され、好ましくは立方体形状を有する銅粒子の集合体から構成される。また、直方体形状を有する銅粒子及び立方体形状を有する銅粒子の集合体から構成されていてもよい。更に、本発明の銅粉においては、上述した本発明の効果を損なわない範囲において、直方体形状及び立方体形状以外の形状を有する銅粒子を含むことが許容される。直方体形状及び立方体形状以外の形状とは、例えば球形状、鱗片形状及び樹状などが挙げられる。
【0021】
本発明の銅粉を構成する銅粒子は、それが直方体形状及び立方体形状のいずれの場合であっても、本発明の効果を損なわない範囲において、八箇所の角部のうちのいずれかが欠けていてもよい。例えば、銅粒子が立方体形状である場合、正方形の見かけの一辺長(つまり、角欠け部が存在しないとみなしたときの一辺長さ)に対して、角欠け部の長さが50%以下、特に30%以下であれば、本発明の効果は十分に奏される。
【0022】
また本発明の銅粉を構成する銅粒子は、銅粒子の集合体に占める直方体形状(立方体形状を含む)の粒子の割合が、好ましくは70個数%以上100個数%以下、より好ましくは75個数%以上100個数%以下であることで、導電体表面との平滑性を発揮することができる。この場合、銅粒子の集合体を日本電子(株)製JSM−6330Fを使った電子顕微鏡写真から、MAC−View(Mountech Co., Ltd.製)を使って画像解析することで。粒子個々の形状及び集合体中での存在割合を求めることができる。
【0023】
本発明の銅粉は、一次粒子の平均粒径が1μm以上15μm以下である。この範囲の値を有する銅粉は、これを構成する銅粒子の表面に、有機化合物からなる表面処理剤による表面処理を行わなくても、粒子どうしの凝集を抑制することができる。表面処理を不要にするという観点からは、本発明の銅粉は、前記の値が、1μm以上10μm以下であることが更に好ましい。
【0024】
一次粒子の平均粒径の値は、走査型電子顕微鏡(日本電子(株)製JSM−6330F)を用い、倍率10,000倍又は30,000倍で、銅粉を観察し、視野中の粒子200個について水平方向フェレ径を測定し、測定した値から、球に換算した体積平均粒径を算出して求められる。
【0025】
上述のとおり、本発明の銅粉は、有機化合物からなる表面処理剤による表面処理を行わなくても、粒子どうしの凝集を抑制することができるものである。このことに起因して、本発明の銅粉は、表面処理剤に由来する炭素の含有量の少ないものである。具体的には、本発明の銅粉における炭素の含有量は、好ましくは0.2質量%以下という少量であり、更に好ましくは0.15質量%以下、一層好ましくは0.1質量%以下という少量である。本発明の銅粉における炭素の含有量は、例えば炭素・硫黄分析装置(堀場製作所製、EMIA−320V)を用いて測定することができる。
【0026】
また本発明の銅粉においては、上述した炭素の含有量とBET比表面積の比である〔炭素の含有量(質量%)/BET比表面積(m
2/g)〕の値が、好ましくは1.0以下という少量であり、更に好ましくは0.6以下、一層好ましくは0.4以下という少量である。この比が、このような小さな値であることは、銅粉焼成時のガス発生量が少なくなるという点から有利である。
【0027】
本発明の銅粉は、これを構成する銅粒子の表面を観察したときに、該表面が、微細な凹凸形状となっていることが好ましい。つまり銅粒子は、これをその全体形状が把握できる程度の拡大倍率で顕微鏡観察を行うと、該銅粒子の各面の表面は平坦であるものの、各面を拡大観察すると、微細な凹凸形状が観察されるものである。微細な凹凸形状は、略矩形ないし略正方形を有する平坦面の全域にわたっていることが好ましい。また微細な凹凸形状は、直方体形状ないし立方体形状を有する銅粒子の六つの面のうち、少なくとも一面において観察されることが好ましく、六つの面のすべてにおいて観察されることが最も好ましい。粒子の表面が微細な凹凸形状となっていることによって、本発明の銅粉は、これを構成する銅粒子どうし、あるいは銅粒子−基板間での摩擦力が高まることに起因して接着力が向上することで、低抵抗率や高密着性に優れた特性を示すという有利な効果を奏する。
【0028】
また本発明の銅粉は、これを構成する銅粒子が多孔質体であることも好ましい。銅粒子が多孔質体である場合、該多孔質体に形成されている孔は、オープンセル型のものであってもよく、あるいはクローズドセル型のものであってもよい。好ましくは、孔はオープンセル型のものである。銅粒子が多孔質体であると、本発明の銅粉は、微小粒径でないにもかかわらず、その焼結開始温度が低くなるという点で有利なものとなる。
【0029】
上述の効果を一層顕著なものとする観点から、多孔質体からなる銅粒子から構成される本発明の銅粉は、そのBET比表面積が0.1m
2/g以上10m
2/g以下であることが好ましく、0.15m
2/g以上9.0m
2/g以下であることが更に好ましく、0.2m
2/g以上8.0m
2/g以下であることが一層好ましい。BET比表面積は、例えば、本発明の銅粉2.0gを、75℃で10分間の脱気処理を行った後、モノソーブ(カンタクロム社製)を用いてBET1点法で測定することができる。
【0030】
本発明の銅粉においては、上述したBET比表面積と、銅粒子の一次粒子径の平均粒径との比である〔BET比表面積(m
2/g)/一次粒子径の平均粒径(μm)〕の値が、好ましくは0.01以上10.0以下、更に好ましくは0.015以上5.0以下、一層好ましくは0.02以上3.0以下であることも、上述の効果を更に一層顕著なものとする観点から好ましい。
【0031】
次に、本発明の銅粉の好適な製造方法について説明する。本発明の銅粉は、(イ)湿式法、及び(ロ)乾式法のいずれかの方法で製造することができる。以下、これらの方法について説明する。
【0032】
(イ)の湿式法においては、直方体形状、好ましくは立方体形状を有する亜酸化銅粒子を湿式還元する操作を行う。直方体形状ないし立方体形状を有する亜酸化銅粒子の製造方法は公知であり、例えば本出願人の先の出願に係る特開2005−255446号公報に記載されている。具体的には、硫酸銅などの銅塩含有溶液にアルカリ溶液を加え、濃度(酸化銅(CuO)換算)0.3モル/L以上1.8モル/L以下のスラリーを調製し、その後、該スラリーに還元糖を添加時間70分〜480分の条件で添加し撹拌することで製造される。還元糖としてはグルコースを用いることが好ましい。グルコースは好適には水溶液の形態で用いる。この場合、グルコース濃度が0.1モル/L以上5モル/L以下であり、グルコース添加量はスラリー中の銅元素1モルに対してグルコース0.2モル以上2モル以下であることが好ましい。アルカリ溶液としては、例えば水酸化ナトリウム溶液、水酸化カリウム溶液、水酸化リチウム溶液、炭酸カリウム溶液又はこれらの混合溶液を用いることが好ましい。
【0033】
このようにして得られた亜酸化銅粒子を水に分散させてスラリーを得る。スラリーは必要に応じて加温してもよい。加温する場合、スラリー温度を25℃以上80℃以下にすることが好ましい。このスラリーと還元剤とを混合して亜酸化銅粒子の湿式還元を行う。本発明者の検討の結果、還元剤として系中の還元電位を−800mV以下にできるものを用いると、原料である亜酸化銅粒子の形状及び寸法を維持したまま、銅粒子を生成させ得ることが判明した。この観点から、本発明においては還元剤として水素化ホウ素ナトリウムを用いることが有利である。これに対して、後述する比較例1から明らかなとおり、還元剤として、系中の還元電位を−800mV以下にできないもの、例えばヒドラジンは還元電位が−300mVと高いため、原料が直方体形状ないし立方体形状を有する亜酸化銅粒子であっても、直方体形状ないし立方体形状を有する銅粒子を得ることはできない。
【0034】
上述のとおり、直方体形状ないし立方体形状を有する亜酸化銅粒子の湿式還元を、系中の還元電位が−800mV以下にすることができる、例えば水素化ホウ素ナトリウムによって行うことで、原料である亜酸化銅粒子の形状及び寸法を維持したまま、銅粒子が生成する。したがって、目的とする銅粒子の粒径の制御のためには、原料である亜酸化銅粒子として適切な粒径を有するものを使用すればよい。例えば一次粒子の平均粒径が好ましくは1.0μm以上15.0μm以下、更に好ましくは1.0μm以上10.0μm以下である直方体形状ないし立方体形状を有する亜酸化銅粒子を用いる。
【0035】
上述した方法で製造された亜酸化銅粒子は中実のものであり、多孔質体ではない。しかし、驚くべきことに、この亜酸化銅粒子を、系中の還元電位が−800mV以下にすることができる水素化ホウ素ナトリウムによって湿式還元すると、形状及び寸法を維持したまま、表面に微細な凹凸形状を有し、また多孔質体である銅粒子が生成することが、本発明者らの検討の結果判明した。特に、湿式還元の条件として、亜酸化銅粒子のスラリーの温度を、上述した範囲に設定した状態下に、水素化ホウ素ナトリウムをスラリー中に、所定の時間にわたって連続的に添加するという条件を採用することで、表面に微細な凹凸形状を有し、また多孔質体である銅粒子を首尾よく生成させ得ることが判明した。
【0036】
次に、(ロ)の乾式法について説明する。乾式法においては、球形状を有する銅粒子を含むスラリーを、ビーズミル処理する操作に付す。通常、このような操作は、球形状を有する銅粒子から、扁平形状を有する銅粒子を製造するときに行われるものであるところ、本発明者の検討の結果、ビーズミルの処理条件を適切に制御し、従来よりも低エネルギー条件を採用することで、球形状を有する銅粒子から、直方体形状ないし立方体形状を有する銅粒子が塑性変形によって生成することが判明した。
【0037】
球形状を有する銅粒子を塑性変形させて直方体形状ないし立方体形状を有する銅粒子を生成させるためのビーズミルの処理条件には、ビーズの大きさ、充填率、ビーズミルに印加するエネルギーなどが挙げられる。ビーズの大きさに関しては、0.10mm以上1.0mm以下、特に0.15mm以上0.5mm以下、とりわけ0.20mm以上0.50mm以下のものを用いることが好ましい。ビーズの充填率に関しては、40%以上80%以下、特に45%以上70%以下、とりわけ50%以上70%以下に設定することが好ましい。
【0038】
ビーズミルに供する球形状の銅粒子は、スラリーの状態とすることが、目的とする形状の銅粒子を首尾よく得ることができる点から好ましい。銅粒子のスラリーの液媒体としては、例えば水、メタノール等の水溶性有機溶媒、及び水と水溶性有機溶媒との混合溶媒などが挙げられる。スラリー中の銅粒子の割合は、10%以上60%以下、特に20%以上50%以下、とりわけ30%以上40%以下であることが好ましい。
【0039】
目的とする粒径の銅粒子を首尾よく得る観点から、原料である球形状の銅粒子は、その一次粒子の平均径が、1.0μm以上15.0μm以下であることが好ましく、1.5μm以上14.5μm以下であることが更に好ましく、2.0μm以上14.0μm以下であることが一層好ましい。
【0040】
以上の各方法によって製造された本発明の銅粉は、これを樹脂及び有機溶媒と混合することで、導電性組成物となされる。樹脂及び有機溶媒としては、導電性組成物に従来用いられてきたものと同様のものを用いることができる。樹脂としては、例えばアクリル樹脂、エポキシ樹脂、エチルセルロース、カルボキシエチルセルロース等が挙げられる。有機溶媒としては、ターピネオール及びジヒドロターピネオール等のテルペン系溶剤や、エチルカルビトール及びブチルカルビトール等のエーテル系溶剤が挙げられる。
【0041】
前記の導電性組成物は、これを基材の表面に塗布することで塗膜となされ、該塗膜を、好ましくは加熱下に乾燥させることで導電体が形成される。この導電体においては、導電性組成物中に含まれる銅粉を構成する銅粒子の形状に起因して、該導電体の表面が平坦なものとなる。また、銅粉に含まれる炭素分が少ない場合には、導電体を製造するときに加えられる熱に起因するブリスターの発生が抑制されるので、このことに起因しても、導電体の表面が平坦なものとなる。具体的には、前記の導電性組成物から形成された導電体は、JIS B0601に準拠して測定された算術平均粗さRaが好ましくは1.0μm以下、更に好ましくは0.7μm以下、一層好ましくは0.5μm以下という平滑なものになる。算術平均粗さRaは、例えば(株)東京精密社のサーフコム 130Aを用いて測定することができる。
【0042】
前記の導電性組成物から形成された導電体は、導電性組成物中に含まれる銅粉を構成する銅粒子の形状及び炭素分の少なさに起因して、該導電体中での銅粒子の充填率が高くなる。具体的には、前記の導電性組成物から形成された導電体の密度が好ましくは5.0g/cm
3以上、更に好ましくは6.0g/cm
3以上、一層好ましくは6.5g/cm
3以上、更に一層好ましくは7.5g/cm
3以上という高充填なものになる。導電体の密度は、例えば導電体を1cm×1cmの大きさに切り出し、その厚みと質量を測定し、質量を体積で除すことで算出される。導電体の形成は、導電体組成物をアルミナ基板上に5cm×5cmの面積で膜厚が50μmとなるように印刷等の手段によって施した後、120℃で10分間にわたり空気中で乾燥させることで得られる。
【0043】
また、前記の導電性組成物から形成された導電体は、その抵抗率が好ましくは、6.0×10
−4Ω・cm以下、更に好ましくは4.0×10
−4Ω・cm以下、一層好ましくは3.0×10
−4Ω・cm以下という低抵抗なものになる。導電体の抵抗率は、例えば、(株)三菱アナリテック社のロレスタGP MCP−T610型を用いて、4端子4探針法によって測定することができる。
【実施例】
【0044】
以下、実施例により本発明を更に詳細に説明する。しかしながら本発明の範囲は、かかる実施例に制限されない。特に断らない限り、「%」は「質量%」を意味する。
【0045】
〔実施例1〕
立方体形状銅粒子から構成される銅粉の湿式合成
原料となる立方体状亜酸化銅粒子から構成される銅粉を、特開2005−255446号公報の実施例1に記載のとおりに合成した。合成された亜酸化銅粒子の一次粒子の平均径は5.5μmであった。得られた亜酸化銅粉200gを40℃の純水1000mLに分散させた。そこへ75gの水素化ホウ素ナトリウムを純水150gに溶解させた溶液を、10分かけて連続的に添加した。その後、反応スラリーを1時間撹拌することで、立方体形状銅粒子から構成される銅粉を湿式合成した。反応終了後、反応液全量を固液分離した。得られた固形分について、純水を用いたデカンテーションを行い、上澄み導電率が1000μS/cm以下になるまで繰り返した。洗浄物を固形分離し、得られた固形分を常温で減圧乾燥し、目的とする銅粉を得た。得られた銅粉の一次粒子の平均粒径は5.8μmであり、炭素含有量は0.08%であった。銅粒子は多孔質体であり、表面に微細な凹凸が形成されていた。得られた銅粉の走査型電子顕微鏡像を
図2(a)及び(b)に示す。銅粉のBET比表面積は4.7m
2/gであり、〔BET比表面積(m
2/g)/一次粒子の平均粒径(μm)〕の値が0.810であり、〔炭素含有量(%)/BET比表面積(m
2/g)〕の値が0.02であった。また、立方体状銅粒子は、銅粒子の集合体の中で94個数%であった。
【0046】
得られた銅粉20gを、エチルセルロース5.0%を含むターピネオール5.0gに加えて混練することでペーストを調製した。得られたペーストを、アルミナ基板上に、ギャップ50μmのアプリケーターを用いて塗布することで塗膜を形成した。この塗膜を、大気下120℃で10分間乾燥させて導電体を得た。得られた導電体の算術平均粗さRaを測定したところ、0.25μmであった。また、得られた導電体の密度は7.1g/cm
3であり、抵抗率は2.5×10
−4Ω・cmであった。
【0047】
〔実施例2〕
立方体形状銅粒子から構成される銅粉のビーズミル処理による製造
原料となる球形状銅粒子から構成される銅粉を、特開平10−330801号公報の実施例1に記載のとおりに合成した。この原料銅粉の一次粒子の平均粒径は5.5μmであった。この銅粉1.0kgとメタノール5.0kgとを混合してスラリーとなし、このスラリーを媒体分散ミルであるダイノーミル内に入れた。また、メディアとして直径0.2mmのジルコニア製ビーズを用い、これを充填率70%でダイノーミル内に入れた。この状態下にダイノーミルを5分間にわたり運転して、球形状銅粒子を塑性変形させてその立方体化を行った。ミル処理後、固形分を分離し、得られた固形分を常温で減圧乾燥した。得られた銅粉の一次粒子の平均粒径は5.6μmであり、炭素含有量は0.04%であった。得られた銅粉の走査型電子顕微鏡像を
図3に示す。この銅粉を用い、実施例1と同様にして導電体を形成し、この導電体の算術平均粗さRa、充填率及び抵抗率を測定した。その結果を以下の表1に示す。また、直方体状銅粒子は、銅粒子の集合体の中で81個数%であった。
【0048】
〔実施例3〕
立方体形状銅粒子から構成される銅粉のビーズミル処理による製造
実施例2において、ダイノーミルの運転時間を10分に延ばした以外は、実施例2と同様にして、立方体形状銅粒子から構成される銅粉を製造した。得られた銅粉の一次粒子の平均粒径は6.2μmであり、炭素含有量は0.04%であった。得られた銅粉の走査型電子顕微鏡像を
図4に示す。この銅粉を用い、実施例1と同様にして導電体を形成し、この導電体の算術平均粗さRa、充填率及び抵抗率を測定した。その結果を以下の表1に示す。また、直方体状銅粒子は、銅粒子の集合体の中で88個数%であった。
【0049】
〔比較例1〕
本比較例は、実施例1において、亜酸化銅の還元を、水素化ホウ素ナトリウムではなくヒドラジンを用いて行った例である。それ以外は、実施例1と同様にして銅粉を製造した。得られた銅粉を構成する銅粒子は、略球形状のものであった。銅粉の一次粒子の平均粒径は2.1μmであり、炭素含有量は0.35%であった。得られた銅粉の走査型電子顕微鏡像を
図5に示す。この銅粉を用い、実施例1と同様にして導電体を形成し、この導電体の算術平均粗さRa、充填率及び抵抗率を測定した。その結果を以下の表1に示す。
【0050】
〔比較例2〕
本比較例は、実施例2で用いた原料の銅粉そのものを用いた例である。この銅粉の一次粒子の平均粒径は5.5μmであり、炭素含有量は0.22%であった。この銅粉の走査型電子顕微鏡像を
図6に示す。この銅粉を用い、実施例1と同様にして導電体を形成し、この導電体の算術平均粗さRa、充填率及び抵抗率を測定した。その結果を以下の表1に示す。
【0051】
〔比較例3〕
本比較例は、特許文献1の実施例3に記載のとおりに銅粉を合成した例である。得られた銅粉の一次粒子の平均粒径は52nmであり、炭素含有量は2.1%であった。この銅粉を用い、実施例1と同様にして導電体を形成し、この導電体の算術平均粗さRa、充填率及び抵抗率を測定した。その結果を以下の表1に示す。また、直方体状銅粒子は、銅粒子の集合体の中で95個数%であった。
【0052】
【表1】
【0053】
表1に示す結果から明らかなとおり、各実施例で得られた銅粉を用いて形成された導電体は、比較例で得られた銅粉を用いて形成された導電体に比べて、表面の平滑性及び充填率が高く、また抵抗率が低いものであることが判る。特に、比較例3は、導電体の表面粗さが他の比較例に比べて低いものの、充填性が悪く密度が低いことに起因して、抵抗率が高くなってしまった。