特許第6389699号(P6389699)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6389699
(24)【登録日】2018年8月24日
(45)【発行日】2018年9月12日
(54)【発明の名称】長尺材へのクランプ取付装置
(51)【国際特許分類】
   B23P 19/04 20060101AFI20180903BHJP
   B23P 21/00 20060101ALI20180903BHJP
   F16L 3/10 20060101ALI20180903BHJP
【FI】
   B23P19/04 Z
   B23P21/00 303A
   F16L3/10 Z
【請求項の数】2
【全頁数】10
(21)【出願番号】特願2014-172379(P2014-172379)
(22)【出願日】2014年8月27日
(65)【公開番号】特開2016-47559(P2016-47559A)
(43)【公開日】2016年4月7日
【審査請求日】2017年8月21日
(73)【特許権者】
【識別番号】000002967
【氏名又は名称】ダイハツ工業株式会社
(72)【発明者】
【氏名】赤池 和哉
(72)【発明者】
【氏名】宮内 博克
(72)【発明者】
【氏名】鈴木 慶一
【審査官】 三宅 達
(56)【参考文献】
【文献】 特開平07−336845(JP,A)
【文献】 特公平06−081897(JP,B2)
【文献】 特開2000−026086(JP,A)
【文献】 特開2003−284225(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B23P 19/00−21/00
F16L 3/00− 3/26
B62D 65/00−65/18
B60R 16/02
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
長尺材の長手方向の中途部分に、この長尺材を他の部材に取り付けるためのクランプを嵌合可能とする嵌合装置を設け、この嵌合装置が、作業用の静止側部材に取り付けられ、上記長尺材の中途部分を所定位置に位置決めする位置決め部と、この位置決め部により位置決めされた上記長尺材の中途部分に向けて上記クランプを押動し、このクランプを上記長尺材の中途部分に圧接状に嵌合させるクランプ押動体とを有した長尺材へのクランプ取付装置において、
上記嵌合装置を個別に複数設け、これら嵌合装置がそれぞれ個別に位置変更可能となるよう、上記静止側部材に上記位置決め部を着脱可能に取り付けたことを特徴とする長尺材へのクランプ取付装置。
【請求項2】
上記クランプ押動体が、上記静止側部材に取り付けられる基台と、この基台に移動可能となるよう支持され、上記クランプが上記長尺材の中途部分に嵌合するよう上記クランプを押動可能とする押動部とを有し、この押動部がクランプを押動するとき上記押動部が平行移動させられる一方、この平行移動の範囲を越えて上記押動部が上記長尺材の中途部分から離反するとき上記押動部が上記基台回りに回動移動させられるよう、上記押動部を上記基台に支持させたことを特徴とする請求項1に記載の長尺材へのクランプ取付装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、車両における燃料用パイプ材など長尺材の長手方向の中途部分に対し、この長尺材を他の部材に取り付け可能とするクランプを嵌合させる嵌合装置を設けた長尺材へのクランプ取付装置に関するものである。
【背景技術】
【0002】
車両における走行用駆動エンジンへの燃料の供給は、通常、車載燃料タンクの燃料をパイプ材を通し燃料ポンプにより送液することにより行われる。また、この燃料供給時の余剰燃料はリターン用のパイプ材を通し上記燃料タンクに戻される。一方、車両の制動は、オイルタンクのブレーキオイルをパイプ材を通し各車輪のブレーキ装置に送液することにより行われる。
【0003】
上記の場合、長尺材である上記各パイプ材は車体に取り付けられるが、この取付作業が容易にできるようにするため、従来、下記特許文献1に示されるものが提案されている。即ち、上記各パイプ材は、予め、互いに並設状態にされる。次に、これら各パイプ材の長手方向の複数中途部分にそれぞれクランプが嵌合により取り付けられて、これらクランプにより上記各パイプ材同士が連結される。この結果、上記各パイプ材とクランプとは、全体としてコンパクトなユニット体とされる。そして、このユニット体を車体に取り付けることとすれば、上記各パイプ材を個別に車体に取り付けることに比べ、上記各パイプ材の取付作業は容易にできることとなる。
【0004】
ここで、上記ユニット体の形成時に、各パイプ材の長手方向の複数中途部分にそれぞれクランプを嵌合により取り付け可能とする長尺材へのクランプ取付装置には、従来の技術として、次のように構成されたものがある。
【0005】
即ち、上記クランプ取付装置には、パイプ材の長手方向の中途部分に、このパイプ材を他の部材に取り付けるためのクランプを嵌合可能とする嵌合装置が設けられる。この嵌合装置は、作業用の静止側部材である作業用テーブルに取り付けられ、上記パイプ材の中途部分を所定位置に位置決めする位置決め部と、この位置決め部により位置決めされた上記パイプ材の中途部分に向けて上記クランプを押動し、このクランプを上記パイプ材の中途部分に圧接状に嵌合させるクランプ押動体とを有している。また、このクランプ取付装置では、上記嵌合装置が複数設けられており、これら各嵌合装置の位置決め部は、作業用テーブルにそれぞれ固定されて一体的となるよう互いに結合され、また、上記各クランプ押動体も、これらに共用される基台にそれぞれ固定されて一体的となるよう互いに結合されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】実開昭62−26761号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
ところで、上記した従来の技術では、クランプ取付装置における各嵌合装置の位置決め部とクランプ押動体とはそれぞれ一体的にとなるよう互いに結合されており、これにより、上記各嵌合装置の相対位置は一定に定められたものとなっている。このため、上記長尺材へのクランプ取付装置によれば、形状が一定である各パイプ材の長手方向の複数中途部分にそれぞれクランプを取り付けることは容易にできる。
【0008】
しかし、上記従来の技術では、次のような問題点がある。
【0009】
即ち、近時、車両は多品種に向かう傾向があって、上記各パイプ材は、その都度、形状変更されることがある。この場合、上記従来の技術では各嵌合装置の相対位置は一定に定められているため、上記各パイプ材の形状変更が部分的であるとしても、この形状変更に伴い、上記各嵌合装置の相対位置を全体的に見直してこれら各嵌合装置の全体的な組み付けをやり直す作業が要求される。しかし、このような作業は煩雑であることから、上記各パイプ材へのクランプの取付作業は煩雑となりがちである。
【課題を解決するための手段】
【0010】
本発明は、上記のような事情に注目してなされたもので、本発明の目的は、パイプ材など長尺材の長手方向の複数中途部分に対しそれぞれクランプを嵌合により取り付ける際のクランプ取付作業が容易にできるようにすることである。
【0011】
請求項1の発明は、長尺材2の長手方向の中途部分に、この長尺材2を他の部材に取り付けるためのクランプ3を嵌合可能とする嵌合装置7を設け、この嵌合装置7が、作業用の静止側部材8に取り付けられ、上記長尺材3の中途部分を所定位置に位置決めする位置決め部9と、この位置決め部9により位置決めされた上記長尺材2の中途部分に向けて上記クランプ3を押動し、このクランプ3を上記長尺材2の中途部分に圧接状に嵌合させるクランプ押動体10とを有した長尺材へのクランプ取付装置において、
上記嵌合装置7を個別に複数設け、これら嵌合装置7がそれぞれ個別に位置変更可能となるよう、上記静止側部材8に上記位置決め部9を着脱可能に取り付けたことを特徴とする長尺材へのクランプ取付装置である。
【0012】
請求項2の発明は、上記クランプ押動体10が、上記静止側部材8に取り付けられる基台29と、この基台29に移動可能となるよう支持され、上記クランプ3が上記長尺材2の中途部分に嵌合するよう上記クランプ3を押動可能とする押動部30とを有し、この押動部30がクランプ3を押動するとき上記押動部30が平行移動Aさせられる一方、この平行移動Aの範囲を越えて上記押動部30が上記長尺材2の中途部分から離反するとき上記押動部30が上記基台29回りに回動移動Bさせられるよう、上記押動部30を上記基台29に支持させたことを特徴とする請求項1に記載の長尺材へのクランプ取付装置である。
【0013】
なお、この項において、上記各用語に付記した符号や図面番号は、本発明の技術的範囲を後述の「実施例」の項や図面の内容に限定解釈するものではない。
【発明の効果】
【0014】
本発明による効果は、次の如くである。
【0015】
請求項1の発明は、長尺材の長手方向の中途部分に、この長尺材を他の部材に取り付けるためのクランプを嵌合可能とする嵌合装置を設け、この嵌合装置が、作業用の静止側部材に取り付けられ、上記長尺材の中途部分を所定位置に位置決めする位置決め部と、この位置決め部により位置決めされた上記長尺材の中途部分に向けて上記クランプを押動し、このクランプを上記長尺材の中途部分に圧接状に嵌合させるクランプ押動体とを有した長尺材へのクランプ取付装置において、
上記嵌合装置を個別に複数設け、これら嵌合装置がそれぞれ個別に位置変更可能となるよう、上記静止側部材に上記位置決め部を着脱可能に取り付けている。
【0016】
このため、上記長尺材の複数中途部分にそれぞれクランプを各嵌合装置により嵌合させようとする際に、上記長尺材に部分的な形状変更が生じた場合には、この形状変更が生じた部分についてのみ、上記嵌合装置が合致するよう位置変更させて、この嵌合装置の位置決め部を上記静止側部材に取り付ければよい。よって、長尺材の部分的な形状変更に伴い、上記各嵌合装置の相対位置を全体的に見直してこれら各嵌合装置の全体的な組み付けをやり直す作業は必要なく、各嵌合装置のうちの一部の位置変更で足りることから、長尺材の長手方向の複数中途部分にそれぞれクランプを嵌合させる際のクランプ取付作業は容易にできる。
【0017】
請求項2の発明は、上記クランプ押動体が、上記静止側部材に取り付けられる基台と、この基台に移動可能となるよう支持され、上記クランプが上記長尺材の中途部分に嵌合するよう上記クランプを押動可能とする押動部とを有し、この押動部がクランプを押動するとき上記押動部が平行移動させられるよう、この押動部を上記基台に支持させている。
【0018】
このため、上記クランプを長尺材の中途部分に嵌合させようとして、上記クランプを押動部が押動するとき、この押動部から上記クランプに与えられる各部押圧力を互いにより均一にさせることができる。よって、上記クランプは上記長尺材の中途部分に対し偏りなく嵌合させられることから、所望の嵌合が達成される。
【0019】
また、上記平行移動の範囲を越えて上記押動部が上記長尺材の中途部分から離反するとき上記押動部が上記基台回りに回動移動させられるよう、上記押動部を上記基台に支持させている。
【0020】
このため、上記嵌合装置におけるクランプ押動体の基台と押動部の移動軌跡との占有空間は、上記基台の周辺にコンパクトに限定される。よって、長尺材の中途部分にクランプを嵌合させる作業をする際の作業空間は、上記基台の周辺から、その外方域に向かって広く確保でき、その分、上記クランプ取付作業はより容易にできる。
【図面の簡単な説明】
【0021】
図1】平面図である。
図2】側面図である。
図3】正面図である。
図4】斜視展開図である。
【発明を実施するための形態】
【0022】
本発明の長尺材へのクランプ取付装置に関し、パイプ材など長尺材の長手方向の複数中途部分に対しそれぞれクランプを嵌合により取り付ける際のクランプ取付作業が容易にできるようにする、という目的を実現するため、本発明を実施するための形態は、次の如くである。
【0023】
即ち、長尺材へのクランプ取付装置には、長尺材の長手方向の中途部分に、この長尺材を他の部材に取り付けるためのクランプを嵌合可能とする嵌合装置が設けられる。この嵌合装置は、作業用の静止側部材に取り付けられ、上記長尺材の中途部分を所定位置に位置決めする位置決め部と、この位置決め部により位置決めされた上記長尺材の中途部分に向けて上記クランプを押動し、このクランプを上記長尺材の中途部分に圧接状に嵌合させるクランプ押動体とを有している。上記嵌合装置は個別に複数設けられる。これら嵌合装置がそれぞれ個別に位置変更可能となるよう、上記静止側部材に上記位置決め部が着脱可能に取り付けられる。
【実施例】
【0024】
本発明をより詳細に説明するために、その実施例を添付の図に従って説明する。
【0025】
図において、符号1は、車両の車体に取り付けられる流体流動用のユニットである。このユニット1は、互いに並設されて互いにほぼ平行に延びる複数のパイプ材である長尺材2と、これら各長尺材2のそれぞれ長手方向における所定の複数中途部分にそれぞれ嵌合されて、これら各長尺材2同士を連結する複数の樹脂製クランプ3とを備えている。そして、上記ユニット1は、これが一体的に車体に取り付けられることにより、車体への各長尺材2の取り付け作業が容易にできることとされる。
【0026】
具体的には、上記長尺材2は、車両の車載燃料タンクからエンジンに燃料を送液するパイプ材や、オイルタンクからブレーキ装置にブレーキオイルを送液するパイプ材などである。上記クランプ3は、全体として直方体形状をなし、その一面に形成され、上記各長尺材2の長手方向の中途部分をそれぞれ弾性的に圧接状に嵌入可能とさせる複数の圧入溝4を有している。
【0027】
また、図中符号6は、上記長尺材2の長手方向における所定の複数中途部分にそれぞれ上記クランプ3を取り付けるための長尺材へのクランプ取付装置である。
【0028】
上記クランプ取付装置6は、上記ユニット1における長尺材2をこの長尺材2に隣接する他の部材である他の長尺材2に取り付けるために(換言すれば、互いに並設された複数長尺材2同士を互いに取り付けるために)、上記各長尺材2の複数中途部分にそれぞれ上記クランプ3を嵌合可能とする嵌合装置7を有している。
【0029】
上記嵌合装置7は、作業用の静止側部材8に取り付けられ、上記各長尺材2の中途部分を所定位置に位置決めする位置決め部9と、この位置決め部9により位置決めされた上記各長尺材2の中途部分に向けて上記クランプ3を押動し、このクランプ3を上記各長尺材2の中途部分にそれぞれ圧接状に嵌合させるクランプ押動体10とを有している。上記静止側部材8は、上面が水平方向に平坦に延びる作業用テーブル14である。
【0030】
上記位置決め部9は、上記長尺材2の長手方向に向かって位置変更可能となるよう、締結具15により上記作業用テーブル14の上面に着脱可能に取り付けられる基台16と、上下方向に位置変更可能となるよう、締結具17により上記基台16に着脱可能に取り付けられる昇降台18と、長尺材へのクランプ取付装置6の平面視(図1)で、上記長尺材2の長手方向に直交する軸心19回りで位置変更可能となるよう、締結具20により上記昇降台18に着脱可能に取り付けられる回動台21とを有している。
【0031】
また、上記位置決め部9は、上記回動台21の上面に支持され、上記長尺材2の長手方向で互いに少し離れて位置する一対の位置決め台24,24を有し、これら位置決め台24の上部には、それぞれ上方に向かって開き、その上方から上記各長尺材2の中途部分をそれぞれ個別に嵌脱可能に嵌入させる嵌入溝25が形成される。
【0032】
上記クランプ押動体10は、上記静止側部材8である作業用テーブル14に上記位置決め部9の回動台21を介し取り付けられる基台29と、この基台29に移動可能となるよう支持され、上記クランプ3が上記位置決め部9により位置決めされた各長尺材2の中途部分に嵌合するよう、上記クランプ3を上記中途部分に向けて押動可能とする押動部30と、上記回動台21に取り付けられ、上記押動部30の長手方向の一端部30aに枢支具31aにより連結され、上記押動部30を移動させるよう作動する油圧シリンダ式のアクチュエータ31とを有している。
【0033】
上記基台29は、上記位置決め部9の回動台21の上面に取り付けられ、上記長尺材2の長手方向で互いに少し離れて対面する一対の基板33,33を有している。これら各基板33にそれぞれカム溝34が形成される。上記押動部30の長手方向の一端部30aは上記一対の基板33,33の間に配置され、上記押動部30の一端部30aには、上記各カム溝34にそれぞれカム係合する一対のカム突起35,35が突設される。
【0034】
上記クランプ押動体10のアクチュエータ31を作動させれば、上記押動部30は上記各カム溝34へのカム突起35,35のカム係合に依り移動することとされ、この移動により上記押動部30の他端部30bは上記クランプ3を押動し、このクランプ3を上記各長尺材2の中途部分に嵌合させるよう作動する(図1〜3中実線)。
【0035】
そして、上記したように押動部30の他端部30bがクランプ3を押動するとき、上記押動部30は、各長尺材2の径方向、クランプ3の各圧入溝4の開口方向、および位置決め部9の各嵌入溝25の開口方向に向かって平行移動Aさせられる。一方、この平行移動Aの範囲を越えて上記押動部30が上記各長尺材2の中途部分から離反するとき、上記押動部30は、上記基台29回りに回動移動Bさせられるようになっている。
【0036】
上記位置決め部9とクランプ押動体10とを有する嵌合装置7は、上記各長尺材2の長手方向に沿って、それぞれ個別に複数(図1の例では4つ)設けられる。これら各嵌合装置7は、前記した位置決め部9の構成により、それぞれ個別に位置変更可能となるよう、上記静止側部材8である作業用テーブル14の上面に着脱可能に取り付けられる。
【0037】
複数の長尺材2を互いに並設させた状態で、これら各長尺材2の複数中途部分にそれぞれ上記クランプ3を嵌合させ、これにより上記各長尺材2を互いに連結してユニット1を形成しようとする場合には、まず、上記各嵌合装置7を上記各長尺材2の長手方向に沿った複数の各所定位置に設け、上記静止側部材8である作業用テーブル14の上面上に上記各嵌合装置7の位置決め部9を取り付ける。そして、上記各長尺材2の中途部分を上記各嵌合装置7の位置決め部9の各嵌入溝25に嵌入させれば、上記各長尺材2の複数中途部分の位置決めがそれぞれできる。
【0038】
次に、上記位置決め部9により位置決めされた各長尺材2の中途部分に対し、それぞれ上記クランプ3の各圧入溝4が対向するようこのクランプ3を上記各長尺材2の中途部分上に載置する。次に、上記クランプ押動体10のアクチュエータ31を作動させ、上記押動部30の他端部30bを上記各長尺材2の中途部から離れたところから上記クランプ3に向けて回動移動Bさせ始める(図2中、二点、一点鎖線)。
【0039】
上記アクチュエータ31を更に作動させれば、上記押動部30は平行移動Aすることとされて、この押動部30の他端部30bは上記クランプ3を押動し、これにより、このクランプ3の各圧入溝4は上記各長尺材2の中途部分にそれぞれほぼ同時に嵌合する(図1〜3中、実線)。これにより、上記各長尺材2の中途部分へのクランプ3の嵌合が完了し、上記各長尺材2同士が連結されてユニット1が形成される。そこで、上記アクチュエータ31を上記とは逆に作動させて、上記押動部30を上記クランプ3から離反させれば(図2中、二点鎖線)、上記各嵌合装置7の位置決め部9から上記ユニット1を取り出すことができる。
【0040】
上記の場合、嵌合装置7を個別に複数設け、これら嵌合装置7がそれぞれ個別に位置変更可能となるよう、上記静止側部材8に上記位置決め部9を着脱可能に取り付けている。
【0041】
このため、上記長尺材2の複数中途部分にそれぞれクランプ3を各嵌合装置7により嵌合させようとする際に、上記長尺材2に部分的な形状変更が生じた場合には、この形状変更が生じた部分についてのみ、上記嵌合装置7が合致するよう位置変更させて、この嵌合装置7の位置決め部9を上記静止側部材8に取り付ければよい。よって、長尺材2の部分的な形状変更に伴い、上記各嵌合装置7の相対位置を全体的に見直してこれら各嵌合装置7の全体的な組み付けをやり直す作業は必要なく、各嵌合装置7のうちの一部の位置変更で足りることから、長尺材2の長手方向の複数中途部分にそれぞれクランプ3を嵌合させる際のクランプ取付作業は容易にできる。
【0042】
また、前記したように、クランプ押動体10が、静止側部材8に取り付けられる基台29と、この基台29に移動可能となるよう支持され、上記クランプ3が上記長尺材2の中途部分に嵌合するよう上記クランプ3を押動可能とする押動部30とを有し、この押動部30がクランプ3を押動するとき上記押動部30が平行移動Aさせられるよう、この押動部30を上記基台29に支持させている。
【0043】
このため、上記クランプ3を長尺材2の中途部分に嵌合させようとして、上記クランプ3を押動部30が押動するとき、この押動部30から上記クランプ3に与えられる各部押圧力を互いにより均一にさせることができる。よって、上記クランプ3は上記長尺材2の中途部分に対し偏りなく嵌合させられることから、所望の嵌合が達成される。
【0044】
また、上記平行移動Aの範囲を越えて上記押動部30が上記長尺材2の中途部分から離反するとき上記押動部30が上記基台29回りに回動移動Bさせられるよう、上記押動部30を上記基台29に支持させている。
【0045】
このため、上記嵌合装置7におけるクランプ押動体10の基台29と押動部30の移動軌跡との占有空間は、上記基台29の周辺にコンパクトに限定される。よって、長尺材2の中途部分にクランプ3を嵌合させる作業をする際の作業空間は、上記基台29の周辺から、その外方域に向かって広く確保でき、その分、上記クランプ取付作業はより容易にできる。
【0046】
なお、上記長尺材2は、車両部品に限定されるものではなく、各種工業製品に用いられるものであってもよい。また、長尺材2は一本のみでもよく、その断面形状は矩形や中実であってもよい。また、上記実施例におけるクランプ3は、互いに並設された長尺材2,2同士を互いに取り付けるもの(これを換言すれば、長尺材2,2のうち、いずれか一方の長尺材2を他方の部材である他の長尺材2に取り付けるもの)であるが、長尺材2を車体など他の部材に取り付けるものであってもよい。
【0047】
また、上記複数の長尺材2は、その長手方向の一部分が水平方向に並設され、他部分が上下方向に並設されるものであってもよい。この場合、各長尺材2を各嵌合装置7の位置決め部9の各嵌入溝25に嵌脱させることが容易にできるようにするため、上記各嵌入溝25が形成された位置決め台24を、上記各長尺材2の径方向外方に向かって回動台21に対し位置変更可能となるようこの回動台21に支持させてもよい。
【符号の説明】
【0048】
1 ユニット
2 長尺材
3 クランプ
4 圧入溝
6 長尺材へのクランプ取付装置
7 嵌合装置
8 静止側部材
9 位置決め部
10 クランプ押動体
29 基台
30 押動部
30a 一端部
30b 他端部
31 アクチュエータ
31a 枢支具
A 平行移動
B 回動移動
図1
図2
図3
図4