特許第6389767号(P6389767)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6389767
(24)【登録日】2018年8月24日
(45)【発行日】2018年9月12日
(54)【発明の名称】燃料電池スタック
(51)【国際特許分類】
   H01M 8/2485 20160101AFI20180903BHJP
   H01M 8/2484 20160101ALI20180903BHJP
   H01M 8/2465 20160101ALI20180903BHJP
   H01M 8/10 20160101ALN20180903BHJP
   H01M 8/12 20160101ALN20180903BHJP
【FI】
   H01M8/2485
   H01M8/2484
   H01M8/2465
   !H01M8/10 101
   !H01M8/12 101
【請求項の数】3
【全頁数】13
(21)【出願番号】特願2015-9280(P2015-9280)
(22)【出願日】2015年1月21日
(65)【公開番号】特開2016-134335(P2016-134335A)
(43)【公開日】2016年7月25日
【審査請求日】2017年5月22日
(73)【特許権者】
【識別番号】000241463
【氏名又は名称】豊田合成株式会社
(73)【特許権者】
【識別番号】000003207
【氏名又は名称】トヨタ自動車株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110000604
【氏名又は名称】特許業務法人 共立
(72)【発明者】
【氏名】太田 忠伸
(72)【発明者】
【氏名】清水 達彦
【審査官】 菊地 リチャード平八郎
(56)【参考文献】
【文献】 特開2009−129545(JP,A)
【文献】 特開2009−238596(JP,A)
【文献】 特開2006−147217(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H01M 8/24
H01M 8/10
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
板状をなす複数の単セルが厚さ方向に積層されてなるセル積層体と、前記セル積層体を積層方向に挟む一対のエンドプレートと、筒状をなし前記一対のエンドプレートの一方である連絡エンドプレートに取り付けられている複数のマニホールドと、を有し、
前記セル積層体は前記単セルに流通する流体の通路となる複数の流通孔を有し、前記連絡エンドプレートは、貫通孔状をなし複数の前記流通孔に各々連絡する複数の出入口を有し、各々の前記マニホールドは前記出入口に取り付けられ、
前記マニホールドは熱可塑性樹脂製であり、
前記連絡エンドプレートは、熱可塑性樹脂以外の高強度材料からなるエンドプレート本体と、筒状をなし前記エンドプレート本体に一体化され前記出入口の内周面を構成する熱可塑性樹脂製の被覆部と、を有し、
前記マニホールドは、前記被覆部に溶着または接着され、湾曲した筒状をなし、
前記被覆部の軸方向における二端部のうちで前記マニホールド側に位置する第1被覆端部の流路断面と、前記マニホールドの軸方向における二端部のうちで前記連絡エンドプレート側に位置する第1マニホールド接続端部の流路断面と、は互いに対応する真円状をなす、燃料電池スタック。
【請求項2】
前記被覆部は前記出入口の内周面を覆う筒状の被覆本体部と、前記被覆本体部の二端部から延びそれぞれ前記連絡エンドプレートの表面に露出する一対の鍔部と、を有する、請求項1に記載の燃料電池スタック。
【請求項3】
前記流通孔は断面矩形状をなし、
前記被覆部の軸方向における二端部のうちで前記セル積層体側に位置する第2被覆端部は、前記流通孔の流路断面に対応した形状をなし、
前記被覆部の流路断面の形状は、前記第2被覆端部から前記第1被覆端部に向けて徐変している、請求項1または請求項2に記載の燃料電池スタック。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は燃料電池スタックに関し、具体的には、燃料電池スタックにガスを流通させるための構造に関する。
【背景技術】
【0002】
燃料電池は、電池セルに供給されたアノードガスとカソードガスとの反応によって発電する発電装置である。アノードガスは一般に水素ガスであり、カソードガスは一般に空気中の酸素ガスである。燃料電池には、これらのガスを電池セルに供給するための供給経路、および、反応し残ったガスおよび反応生成物たる水を外界に排出するための排出経路が設けられる。
【0003】
燃料電池スタックは、燃料電池の構成要素の一部であり、一般的には、板状をなす複数の電池セル(単セル)が厚さ方向に積層されてなるセル積層体と、当該セル積層体を積層方向に挟む一対のエンドプレートと、当該エンドプレートに取り付けられている複数のマニホールドと、を有する。セル積層体は、単セルにガスを供給したり、単セルからガスを排出したり、単セル間に冷却媒体を流通させたりするための流通孔を複数有し、一方のエンドプレートは、当該複数の流通孔に各々連絡する複数の出入口を有する。出入口を有するエンドプレートを連絡エンドプレートと呼ぶ。連絡エンドプレートには、当該複数の出入口に各々連絡する筒状のマニホールドが複数個取り付けられる。一部のマニホールドは水素タンク等の燃料供給部に連絡してアノードガス供給経路を構成する。他の一部のマニホールドは外気に連絡してカソードガス供給経路を構成する。他の一部のマニホールドは冷却媒体を収容する冷却媒体供給部に連絡して冷却媒体供給経路を構成する。さらに他の一部のマニホールドは外界に連絡して、燃料電池スタックから外界に向けた各種ガスおよび/または水の排出経路を構成する。
【0004】
近年、燃料電池には多くの用途が提案されており、用途によっては燃料電池の軽量化および小型化が求められている。発電に関与する単セルや、単セルを挟持するために大きな耐圧性を要求されるエンドプレートについては材料や形状の自由度が低いが、マニホールドについては材料や形状の自由度が比較的高い。このため、マニホールドを樹脂製にすることで燃料電池スタックの小型化や軽量化を図る技術が提案されている(例えば、特許文献1参照)。
【0005】
特許文献1に紹介されている燃料電池スタックによると、金属製の連絡エンドプレートに出入口を設け、樹脂製のマニホールドを当該出入口に挿入し、マニホールドと連絡エンドプレートとの間隙をOリングでシールし、かつ、マニホールドを連絡エンドプレートにボルトで締結することで、マニホールドと出入口間を気密にシールしつつマニホールドを連絡エンドプレートに固定している。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】特開2010−262908号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
しかし、特許文献1に紹介されている技術によると、マニホールドを連絡エンドプレートに取り付けるためのOリングやボルト等が必要になり、燃料電池スタックの部品点数を低減し難い。また、燃料電池スタックの表面には、マニホールドを連絡エンドプレートにボルト締結するための作業空間が必要になり、マニホールドの形状の自由度が低い。例えば、マニホールドを湾曲形状にして燃料電池スタックを小型化したい場合にも、マニホールドと連絡エンドプレートとの位置関係によっては、マニホールドとエンドプレートとの間にボルト締結のための作業空間を充分にとれない場合がある。そしてその結果、燃料電池スタックを小型化し難い場合がある。
本発明は上記事情に鑑みてなされたものであり、燃料電池スタックを小型化できる技術を提供することを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明の燃料電池スタックは、板状をなす複数の単セルが厚さ方向に積層されてなるセル積層体と、前記セル積層体を積層方向に挟む一対のエンドプレートと、筒状をなし前記一対のエンドプレートの一方である連絡エンドプレートに取り付けられている複数のマニホールドと、を有し、
前記セル積層体は前記単セルに流通する流体の通路となる複数の流通孔を有し、前記連絡エンドプレートは、貫通孔状をなし複数の前記流通孔に各々連絡する複数の出入口を有し、各々の前記マニホールドは前記出入口に取り付けられ、
前記マニホールドは熱可塑性樹脂製であり、
前記連絡エンドプレートは、熱可塑性樹脂以外の高強度材料からなるエンドプレート本体と、筒状をなし前記エンドプレート本体に一体化され前記出入口の内周面を構成する熱可塑性樹脂製の被覆部と、を有し、
前記マニホールドは前記被覆部に固着されたものである。
【発明の効果】
【0009】
本発明の燃料電池スタックは小型化可能である。
【図面の簡単な説明】
【0010】
図1】実施例1の燃料電池スタックを模式的に表す分解斜視図である。
図2】実施例1の燃料電池スタックにおける接続部を模式的に表す要部拡大切り欠き斜視図である。
図3】実施例1の燃料電池スタックにおける接続部を模式的に表す断面図である。
図4】実施例2の燃料電池スタックにおける接続部を模式的に表す断面図である。
図5】実施例3の燃料電池スタックにおける接続部を模式的に表す断面図である。
図6】実施例4の燃料電池スタックにおける接続部を模式的に表す断面図である。
図7】実施例5の燃料電池スタックにおける接続部を模式的に表す断面図である。
図8】実施例6の燃料電池スタックにおける接続部を模式的に表す断面図である。
図9】実施例7の燃料電池スタックにおける接続部を模式的に表す断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0011】
以下、具体例を挙げ、本発明の燃料電池スタックを説明する。なお、本発明の燃料電池スタックは固体高分子形燃料電池(所謂PEFC)、リン酸形燃料電池(所謂PAFC)、溶融炭酸塩形燃料電池(所謂MCFC)、固体酸化物形燃料電池(所謂SOFC)等、各種方式の燃料電池用の燃料電池スタックとして具現化できる。
【0012】
(実施例1)
以下、本発明の実施例1について図1図3を参照して説明する。以下、上、下、左、右、前、後とは、図1に示す上、下、左、右、前、後を指す。
図1に示す実施例1の燃料電池スタックは、セル積層体1と、一対のエンドプレート5と、複数のマニホールド8と、を有する。この燃料電池スタックは、図略の収容容器に収容される。収容容器は一対のエンドプレート5および当該エンドプレート5に挟まれるセル積層体1を、セル積層体1の積層方向に締結し保持する。なお、収容容器にかえてタイロッド等の締結部材によって一対のエンドプレート5およびこれに挟持されるセル積層体1を締結し保持しても良い。
【0013】
セル積層体1は、セル部10と、一対の端子部材15と、一対の絶縁部材16と、で構成されている。セル部10は、図1中前後方向に積層された多数の単セル11で構成されている。一対の端子部材15は、セル部10を前後から挟んでいる。一対の絶縁部材16は、一対の端子部材15を前後から挟んでいる。図示しないが、各単セル11は、平板型をなし、カソード、電解質膜、アノードが積層されてなる膜電極接合体と、各膜電極接合体を積層方向に挟む一対のセパレータと、一対のセパレータの間に介装されている絶縁材と、で構成されている。また、各単セル11の間、より具体的には、隣接する単セル1のセパレータ同士の間には、図略のガスケットが介装されている。
【0014】
セル積層体1には6つの流通孔20(21〜26)が設けられている。各流通孔20は、セル積層体1を構成する単セル11、端子部材15等の各要素に穿設され、セル積層体1の厚さ方向に延びている。また、各流通孔20は、図略の各単セル11(より具体的にはセパレータ)に各々形成されている図略の流通溝に連絡している。参考までに、図1中左上に位置する第1流通孔21は、カソード側セパレータの内側つまり電解質膜側に設けられている流通溝に連絡するカソードガス供給口である。第1流通孔21の下に位置する第2流通孔22は、各セパレータの外側に設けられている流通溝に連絡するクーラント供給口である。第2流通孔22の下に位置する第3流通孔23は、アノード側セパレータの内側つまり電解質膜側に設けられている流通溝に連絡するアノードガス排出口である。図1中右上に位置する第4流通孔24は上記したアノード側セパレータの内側に設けられている流通溝に連絡するアノードガス供給口である。第4流通孔24の下に位置する第5流通孔25は、上記した各セパレータの外側に設けられている流通溝に連絡するクーラント排出口である。第5流通孔25の下に位置する第6流通孔26は上記したカソード側セパレータの内側に設けられている流通溝に連絡するカソードガス排出口である。第1流通孔21には空気が流通し、第2流通孔22および第5流通孔25には冷却媒体(実施例1ではLLC)が流通し、第3流通孔23および第4流通孔24には水素ガスが流通し、第6流通孔26には空気、および、電池反応で生じた水が流通する。水素ガスが流通する第3流通孔23および第4流通孔24は、他の流通孔21、22、25、26に比べて小径であるが、各流通孔20は何れも断面矩形である点で同様である。なお、各流通孔20の形状、位置、流通する流体は、燃料電池の種類や用途等に応じて適宜設定すれば良い。
【0015】
セル積層体1は、一対のエンドプレート5によって、セル積層体1の積層方向つまり各単セル11の厚さ方向に挟み込まれている。一方のエンドプレート5は後述する出入口を有する連絡エンドプレート50であり、他方のエンドプレート5は出入口を有さない一般エンドプレート58である。連絡エンドプレート50は図1中前側に位置し、一般エンドプレート58は図1中後側に位置する。一般エンドプレート58はアルミニウム製であり、連絡エンドプレート50は後述するようにポリフェニレンスルファイド(Polyphenylenesulfide:PPS)樹脂およびアルミニウムで構成されている。
【0016】
連絡エンドプレート50は、第1流通孔21〜第6流通孔26に各々対面する位置に、6つの出入口を有する。第1流通孔21に対面する出入口を第1出入口51と呼び、第2流通孔22に対面する出入口を第2出入口52と呼び、第3流通孔23に対面する出入口を第3出入口53と呼び、第4流通孔24に対面する出入口を第4出入口54と呼び、第5流通孔25に対面する出入口を第5出入口55と呼び、第6流通孔26に対面する出入口を第6出入口56と呼ぶ。第1出入口51〜第6出入口56は貫通孔であり、第1出入口51〜第6出入口56の内周面は熱可塑性樹脂で構成されている。
【0017】
具体的には、連絡エンドプレート50は、一枚のエンドプレート本体6および6つの被覆部7(71〜76)を有する。エンドプレート本体6は、金属製であり、略平板状をなし、貫通孔状をなす6つの本体出入口60(61〜66)を有する。図1および図2に示すように、各本体出入口60の後側端部は断面略矩形であり、前側端部は断面略真円形である。前側端部と後側端部との間において、各本体出入口60の断面形状は徐変している。各被覆部7は、熱可塑性樹脂製であり、略筒状をなす。各被覆部7はそれぞれ対応する各本体出入口60の内部に配置されている。
【0018】
図2および図3に示すように、各被覆部7は、筒状をなす被覆本体部77と、被覆本体部77の軸方向の二端部に各々連続し鍔状をなす一対の鍔部78、79と、を有する略筒状をなす。被覆本体部77は本体出入口60の内周面を覆い、一対の鍔部78、79は各々連絡エンドプレート50の表面に露出している。換言すると、各々の被覆部7は、筒状をなし出入口の内周面を覆う被覆本体部77と、被覆本体部77の二端部から各々連絡エンドプレート50の表面に沿って延び、連絡エンドプレート50の表面に露出する一対の鍔部78、79と、を有する。鍔部78、79の外径は被覆本体部77の外径および本体出入口60の内径よりも大きい。したがって鍔部78、79は、連絡エンドプレート50からの被覆部7の抜け止めに寄与する。鍔部78は図1中前側、つまり後述するマニホールド8側に位置し、鍔部79は図1中後側、つまり上記したセル積層体1側に位置する。以下、被覆部7のなかで図1中前側つまりマニホールド8側に位置する部分を第1被覆端部7aと呼び、図1中後側つまりセル積層体側に位置する部分を第2被覆端部7bと呼ぶ。
【0019】
各被覆本体部77の外周面は、それぞれ対応する各本体出入口60の内周面に対応する形状をなす。各被覆本体部77の後側端部における外周面は断面略矩形状であり、前側端部における外周面は断面略真円状である。前側端部と後側端部との間において、各被覆本体部77における外周面の断面形状は徐変している。また、各被覆本体部77の内周面は、各被覆本体部77の外周面に沿った形状である。各被覆本体部77における後側端部の内周面の流路断面は、各流通孔20の流路断面に略一致した断面略矩形状である。したがって、各被覆本体部77は一端部側が略円筒状であり他端部側が略角筒状である筒状をなす。各被覆本体部77における前側端部の内周面の流路断面は、後述する第1マニホールド接続端部の流路断面に略一致した略真円状である。前側端部と後側端部との間において、各被覆本体部77における内周面の流路断面形状は徐変している。
各被覆部7は、エンドプレート本体6をインサート材としたインサート射出成形法により形成されている。
【0020】
図1図3に示すように、第1出入口51〜第6出入口56には、各々、熱可塑性樹脂製のマニホールド8(81〜86)が取り付けられている。以下、必要に応じて、連絡エンドプレート50およびマニホールド81〜86からなる接続構造を、接続部9と呼ぶ。各マニホールド81〜86は連絡エンドプレート50に設けられた被覆部71〜76の第1被覆端部7aに、各々振動溶着されている。マニホールド8の被覆部7への固着方法は、振動溶着に限定されず、例えば熱板溶着であっても良いし、接着であっても良い。
各マニホールド8は湾曲した略円筒状をなす。各マニホールド8の軸方向における二端部のうちで、図1中後側、つまり被覆部7側に位置するものを第1マニホールド接続端部87と呼び、他方を第2マニホールド接続端部88と呼ぶ。第1マニホールド側接続端部87はフランジ状をなす。既述したように、第1マニホールド接続端部87の流路断面と第1被覆端部7aの流路断面とは、互いに略一致する真円状をなす。第1マニホールド接続端部87と第1被覆端部7aとは、互いに振動溶着されている。
【0021】
実施例1の燃料電池スタックにおける連絡エンドプレート50は、金属製のエンドプレート本体6および熱可塑性樹脂製の被覆部71〜76で構成され、マニホールド81〜86は、各々対応する熱可塑性樹脂製の被覆部71〜76に固着されている。
樹脂と金属とを強固に固着するのは困難であるため、従来の燃料電池スタックのように金属製の連絡エンドプレート50に樹脂製のマニホールド8を取り付けるためには、Oリングやボルト等の多くの部品が必要になり、また、取り付け作業のために連絡エンドプレート50およびマニホールド8の形状にも制限があった。しかし、熱可塑性樹脂同士は溶着や接着等の方法で容易に固着されるため、実施例1の燃料電池スタックのように熱可塑性樹脂製の被覆部7に熱可塑性樹脂製のマニホールド8を固着する場合には、溶着や接着等の方法で容易に連絡エンドプレート50にマニホールド8を取り付けることができる。
また、締結等のボルトやOリング等や、ボルト締結のためのフランジ等の構造が不要になるため、燃料電池スタックを小型化できる。
さらに、燃料電池スタックの表面近傍、より具体的には接続部9付近に、ボルト締結作業のためのスペースを設ける必要がなくなる。このため、マニホールド8の形状の自由度が高まり、例えばマニホールド8の形状を、連絡エンドプレート50の表面近傍に配索される湾曲形状にすることもできる。こうすることで、燃料電池スタックを含む燃料電池をさらに小型化できる。
また、ボルト等の部品点数が低減し、組み付け工数も低減することによって、燃料電池スタックおよび当該燃料電池スタックを有する燃料電池の製造コストが低減する利点もある。
【0022】
なお、実施例1の燃料電池スタックにおいて、連絡エンドプレート50におけるエンドプレート本体6は金属製であったが、本発明の燃料電池スタックにおけるエンドプレート本体6の材料は金属に限定されず、熱可塑性樹脂以外の高強度材料からなれば良い。「熱可塑性樹脂以外の高強度材料」としては、具体的には、アルミニウム、ステンレススチール等の金属材料、セラミックス等の焼結体、CFRP等の繊維強化熱硬化性樹脂材料から選ばれる少なくとも一種が例示される。ここでいう「高強度」とは、熱可塑性樹脂製のマニホールド8および熱可塑性樹脂製の被覆部7に比べた強度を指す。熱可塑性樹脂以外の材料からなるエンドプレート本体6と熱可塑性樹脂製のマニホールド8とは強固に固着し難い。よって、エンドプレート本体6の材料が金属以外の場合にも、連絡エンドプレート50のなかで熱可塑性樹脂製のマニホールド8に固着される部分つまり被覆部7を熱可塑性樹脂製にすることで、実施例1と同様に、連絡エンドプレート50にマニホールド8を容易に取り付けることができ、燃料電池スタックを小型化でき、かつ、燃料電池スタックを含む燃料電池をさらに小型化できる。なお、一般エンドプレート58および連絡エンドプレート50用の材料は、強度、耐熱性、耐酸性、必要に応じて絶縁性等を考慮して適宜選択すれば良い。
【0023】
実施例1においては、第1マニホールド接続端部87の流路断面と第1被覆端部7aの流路断面とは、略一致する断面真円状をなす。このようにしたことで、連絡エンドプレート50に対するマニホールド8の取り付け方向を第1マニホールド接続端部87および第1被覆端部7aにおける流路断面の周方向に自在に設定できる利点がある。つまり、第1被覆端部7aに第1マニホールド接続端部87を固着するためには、両者の流路断面形状が軸方向および当該軸方向に垂直な周方向に略一致するよう、第1被覆端部7aに対して第1マニホールド接続端部87を取り付ける必要がある。第1マニホールド接続端部87および第1被覆端部7aの流路断面が略真円形であれば、第1被覆端部7aに対して第1マニホールド接続端部87を周方向に多様な角度で取り付け得る利点がある。なお、実施例1においては、第1マニホールド接続端部87と第1被覆端部7aとがともに断面真円状の流路断面を有し、かつ、円筒状をなすために、図2に示すように、両者の外周面に位置決めのためのマーカ99を設けている。
【0024】
例えば、燃料電池スタックが車載用であれば、連絡エンドプレート50に対するマニホールド8の湾曲方向が車種毎に異なる場合がある。しかし、第1被覆端部7aの流路断面および第1マニホールド接続端部87の流路断面が略真円形であれば、同じ連絡エンドプレート50およびマニホールド8を用いても、連絡エンドプレート50に対するマニホールド8の周方向の取付角度を任意に変更するだけで、連絡エンドプレート50に対するマニホールド8の湾曲方向を自在に変更できる。したがって、この場合には、本発明の燃料電池スタックを多様な車両に兼用できる利点がある。
【0025】
一般に、燃料電池スタックにおいては、なるべく大きな流路面積を確保するために、各流通孔20の流路断面は矩形状をなしている。一方、マニホールド8およびマニホールド8に接続される配管の流路断面は、圧力損失低減のため、円形状をなすのが好ましいと考えられる。実施例1の燃料電池スタックでは、被覆部7のなかで断面矩形の流通孔20に対面する部分、つまり、第2被覆端部7bの流路断面を矩形とした。また、被覆部7のなかでマニホールド8に対面する部分、つまり第1被覆端部7aの流路断面を略真円形とした。そしてその間の部分の流路断面を矩形から真円形に徐変させた。このようにすることで、流路断面矩形の流通孔20と流路断面真円形のマニホールド8とを被覆部7によって滑らかに連続させることができ、燃料電池スタックに流通する気体の圧損を低減することができる。
【0026】
実施例1においては、エンドプレート本体6における本体出入口60の流路断面形状を一定の矩形状にし、被覆部7の外周面を断面一定の矩形状にするとともに、被覆部の流路断面形状のみを矩形から円形に徐変させている。このようにすることで、連絡エンドプレート50において金属部分であるエンドプレート本体6の占める割合を小さくすることができ、燃料電池スタックの軽量化に寄与し得る。
【0027】
また、エンドプレート本体6に設けた本体出入口60を、被覆部7の流路断面形状に応じて、矩形から真円形に徐変するようにすることもできる。この場合には、熱可塑性樹脂製の被覆部7の肉厚を一定にでき、成形収縮のバラツキによる被覆部7内周面の凹凸を抑制できるため、燃料電池スタックの流体通路における乱流の発生を抑制でき、当該流体通路における圧力損失を低減できる。
【0028】
実施例1では連絡エンドプレート50の被覆部7に用いる熱可塑性樹脂としてPPSを用いたが、これに限らず、例えば、PP等のオレフィン系樹脂や、PA6TやPA9T等の芳香族ナイロン樹脂を用いても良い。
【0029】
実施例1においては、被覆部7はインサート射出成形法によりエンドプレート本体6と一体に成形したが、被覆部7をエンドプレート本体6と別体で成形し、接着等の方法によりエンドプレート本体6に一体化しても良い。また、被覆部7の成形方法は射出成形に限らず、ブロー成形等他の成形法を用いても良い。
金属製のエンドプレート本体6に熱可塑性樹脂製の被覆部7を接着する接着法としては種々の方法を用い得るが、特許第5560565号または特許第5234011号に記載された方法を採用するのが好ましい。
【0030】
特許第5560565号に記載されているように、金属製の部材の表面に極性官能基を導入し、樹脂材には接着性改質剤を配合すると、この極性官能基と接着性改質剤に含まれる接着性官能基とが反応することで、金属製の部材と樹脂製の部材とが接合強度高く固着される。本発明の燃料電池スタックにおけるエンドプレート本体6の表面に上記のようにして極性官能基を付与し、被覆部7とエンドプレート本体6とを接着する接着剤として上記の接着性改質剤を配合した樹脂材料を用いれば、金属製のエンドプレート本体6と熱可塑性樹脂製の被覆部7とを接合強度高く固着できると考えられる。
【0031】
特許第5234011号に開示されている技術に基づいてエンドプレート本体6と被覆部7とを接着するためには、金属製のエンドプレート本体6の表面に極性官能基を付与するとともに、被覆部7とエンドプレート本体6とを接着する接着剤として上記の接着性改質剤を配合した樹脂材料を用いれば良いと考えられる。或いは、被覆部7の原料に上記の接着性改質剤を配合して、表面処理したエンドプレート本体6と被覆部7とを溶着する方法も考えられる。何れの場合にも、上記と同様に、金属製のエンドプレート本体6と熱可塑性樹脂製の被覆部7とを接合強度高く固着できると考えられる。
さらには、上記の2種の方法の何れかで表面処理したエンドプレート本体6をインサート材とし、接着性改質剤を配合した原料を用いて被覆部7をインサート成形する場合にも、金属製のエンドプレート本体6と熱可塑性樹脂製の被覆部7とが接合強度高く固着された一体成形品が得られると考えられる。
【0032】
(実施例2)
実施例2の燃料電池スタックは、接続部9の形状以外は実施例1の燃料電池スタックと同じものである。
図4に示すように、実施例2の燃料電池スタックにおいては、被覆部7における第1被覆端部7a側の鍔部78が、第2被覆端部7b側の鍔部79よりも大径である。また、鍔部78の周縁部78aは被覆部7の軸方向に沿い鍔部79側に突出する鉤状になっている。エンドプレート本体6における各本体出入口60の周縁部60aは、鍔部78の周縁部78aに対応するリング状の溝部60aを構成している。したがって、エンドプレート本体6と鍔部78とは、溝部60aの内部において噛み合っているといえる。接続部9をこのような形状にすることで、エンドプレート本体6に被覆部7を強固に一体化できる。
また、実施例2の燃料電池スタックにおいては、鍔部78を大径にしたことで、鍔部78とマニホールド8の第1マニホールド接続端部87との固着面積を大きくでき、マニホールド8と連絡エンドプレート50との接合強度を向上させ得る利点もある。
【0033】
(実施例3)
実施例3の燃料電池スタックは、接続部9の形状以外は実施例1の燃料電池スタックと同じものである。
図5に示すように、実施例3の燃料電池スタックにおいては、エンドプレート本体6における各本体出入口60の周縁部に複数の貫通孔60bが設けられている。当該貫通孔60bには、被覆部7の一部からなり被覆部7の軸方向つまりエンドプレート本体6の厚さ方向に延びる結合壁7cが入り込んでいる。結合壁7cは、鍔部78の周縁部と鍔部79の周縁部とを連結している。換言すると、エンドプレート本体6と被覆部7とは機械的に一体化され、エンドプレート本体6と被覆部7とは非常に強固に一体化されている。
【0034】
(実施例4)
実施例4の燃料電池スタックは、接続部9の形状以外は実施例1と同じものである。
図6に示すように、実施例4においては、第1被覆端部7aの流路断面と第1マニホールド接続端部87の流路断面とが互いに略一致する正六角形状をなす。第1被覆端部7aおよび第1マニホールド接続端部87の流路断面形状をこのようにすることで、第1被覆端部7aに対する第1マニホールド接続端部87の取り付け方向を、上記流路断面の周方向に60°ずつ回転させた6通りの方向に変更できる。したがって、連絡エンドプレート50に対するマニホールド8の周方向の取り付け角度を変更するだけで、連絡エンドプレート50に対するマニホールド8の湾曲方向を所定の6方向に変更できる。よって、この場合にも、同じ連絡エンドプレート50およびマニホールド8を有する同じ燃料電池スタックを多様な用途に兼用できる利点がある。
また、第1被覆端部7aおよび第1マニホールド接続端部87は各々角筒状をなす。このため、作業者は、第1被覆端部7aに対する第1マニホールド接続端部87の取り付け方向を触覚や視覚で知覚し易い。このため実施例4の燃料電池スタックによると連絡エンドプレート50に対するマニホールド8の取付方向を容易に位置決めできる利点もある。
なお、実施例4においては、第1被覆端部7aの流路断面と第1マニホールド接続端部87の流路断面とが互いに略一致する正六角形状をなしているが、これらは正多角形であれば実施例4と同様の効果が得られる。なお、この場合、連絡エンドプレート50およびマニホールド8の汎用性および両者の位置決め性を考慮すると、第1被覆端部7aおよび第1マニホールド接続端部87の流路断面は、正五角形〜正八角形であるのが好ましい。
【0035】
(実施例5)
実施例5の燃料電池スタックは、接続部9の形状以外は実施例1の燃料電池スタックと同じものである。
図7に示すように、実施例5の燃料電池スタックにおいては、被覆部7がマニホールド8の湾曲方向に向けて傾斜している。こうすることで、被覆部7とマニホールド8とを滑らかに連続させつつ、マニホールド8の立ち上がり部分、つまり、連絡エンドプレート50の表面に対して垂直に延びる部分を省くことができる。その結果、マニホールド8を連絡エンドプレート50により近づけることができ、燃料電池スタックをさらに小型化できる。
【0036】
(実施例6)
実施例6の燃料電池スタックは、接続部9の形状以外は実施例1の燃料電池スタックと同じものである。
図8に示すように、実施例6の燃料電池スタックにおいては、被覆部7における鍔部78は、マニホールド8の湾曲方向に沿った湾曲形状をなし、エンドプレート本体6からマニホールド8側に突出している。こうすることによっても、被覆部7とマニホールド8とを滑らかに連続させつつ、マニホールド8の立ち上がり部分を省くことができ、マニホールド8を連絡エンドプレート50により近づけることができるために、燃料電池スタックをさらに小型化できる。
【0037】
(実施例7)
実施例7の燃料電池スタックは、接続部9の形状以外は実施例1の燃料電池スタックと同じものである。
図9に示すように、実施例7の燃料電池スタックにおいては、エンドプレート本体6における各本体出入口60の周縁部が深く陥没している。この各本体出入口60の周縁部を陥没部60cと呼ぶ。被覆部7における鍔部78は、陥没部60cに入り込んでいるため、エンドプレート本体6におけるマニホールド8側の表面よりも奥側に下がった位置にある。つまり、実施例7においては、各本体出入口60の周縁部においてはエンドプレート本体6の肉厚が比較的薄い。また、被覆部7の軸方向長さもまた比較的短い。マニホールド8は実施例1と同じものであるが、マニホールド8の第1マニホールド接続端部87は、陥没部60cの奥側において鍔部78に固着されている。このため、マニホールド8の立ち上がり部分は陥没部60cに収容される。つまり、実施例7の燃料電池スタックにおいても、マニホールド8の立ち上がり部分は実質的に省かれている。このため、実施例7の燃料電池スタックにおいても、被覆部7とマニホールド8とを滑らかに連続させつつ、マニホールド8を連絡エンドプレート50により近づけることができるために、燃料電池スタックをさらに小型化できる。
【0038】
実施例5〜7においては、マニホールド8における立ち上がり部分、つまり、マニホールド8における連絡エンドプレート50側の部分を、被覆部7の一部で構成したともいえる。このことにより、マニホールド8の立ち上がり部分は、実質的に、連絡エンドプレート50の内部に入れ込まれ、マニホールド8から省くことが可能になる。さらに、これにより、マニホールド8を連絡エンドプレート50に近接させることが可能になり、燃料電池スタックの小型化を実現できる。
【0039】
(備考1)
本発明は上記し且つ図面に示した実施形態のみに限定されるものではなく、要旨を逸脱しない範囲内で適宜変更して実施できる。
(備考2)
本発明の燃料電池スタックは、
板状をなす複数の単セル11が厚さ方向に積層されてなるセル積層体1と、前記セル積層体1を積層方向に挟む一対のエンドプレート5と、筒状をなし前記一対のエンドプレート5の一方である連絡エンドプレート50に取り付けられている複数のマニホールド8(81〜86)と、を有し、
前記セル積層体1は前記単セル11に流通する流体の通路となる複数の流通孔20(21〜26)を有し、前記連絡エンドプレート50は、貫通孔状をなし複数の前記流通孔20に各々連絡する複数の出入口51〜56を有し、各々の前記マニホールド8は前記出入口に取り付けられ、
前記マニホールド8は熱可塑性樹脂製であり、
前記連絡エンドプレート50は、熱可塑性樹脂以外の高強度材料からなるエンドプレート本体6と、筒状をなし前記エンドプレート本体6に一体化され前記出入口の内周面を構成する熱可塑性樹脂製の被覆部7(71〜76)と、を有し、
前記マニホールド8は前記被覆部7に固着されたものである。
本発明の燃料電池スタックは以下の(1)〜(5)の何れかを備えるのが好ましく、複数を備えるのが望ましい。
(1)前記被覆部7は前記出入口の内周面を覆う筒状の被覆本体部77と、前記被覆本体部77の二端部から延びそれぞれ前記連絡エンドプレート50の表面に露出する一対の鍔部78、79と、を有する。
(2)前記マニホールド8は、前記被覆部7に溶着または接着されている。
(3)前記被覆部7の軸方向における二端部のうちで前記マニホールド8側に位置する第1被覆端部7aの流路断面と、前記マニホールド8の軸方向における二端部のうちで前記連絡エンドプレート50側に位置する第1マニホールド接続端部87の流路断面と、は互いに対応する真円状をなす。
(4)前記流通孔20は断面矩形状をなし、
前記被覆部7の軸方向における二端部のうちで前記セル積層体1側に位置する第2被覆端部7bは流通孔20の流路断面に対応した形状をなし、
前記被覆部7の流路断面の形状は、前記第2被覆端部7bから前記第1被覆端部7aに向けて徐変している。
(5)前記マニホールド8は湾曲した筒状をなす。
【符号の説明】
【0040】
1:セル積層体 5:エンドプレート
6:エンドプレート本体 7(71〜76):被覆部
8(81〜86):マニホールド 11:単セル
20(21〜26):流通孔 50:連絡エンドプレート
51〜56:出入口 77:被覆本体部
78、79:鍔部 7a:第1被覆端部
7b:第2被覆端部 87:第1マニホールド接続端部
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9