特許第6389850号(P6389850)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6389850
(24)【登録日】2018年8月24日
(45)【発行日】2018年9月12日
(54)【発明の名称】給電および充電に共用される電気装置
(51)【国際特許分類】
   H02J 7/00 20060101AFI20180903BHJP
   H02M 7/48 20070101ALI20180903BHJP
   B60L 11/18 20060101ALI20180903BHJP
【FI】
   H02J7/00 L
   H02J7/00 301B
   H02J7/00 P
   H02M7/48 E
   B60L11/18 E
【請求項の数】7
【全頁数】8
(21)【出願番号】特願2016-155111(P2016-155111)
(22)【出願日】2016年8月5日
(62)【分割の表示】特願2014-213159(P2014-213159)の分割
【原出願日】2009年11月17日
(65)【公開番号】特開2016-195540(P2016-195540A)
(43)【公開日】2016年11月17日
【審査請求日】2016年9月2日
(31)【優先権主張番号】0806455
(32)【優先日】2008年11月18日
(33)【優先権主張国】FR
(73)【特許権者】
【識別番号】509019750
【氏名又は名称】ヴァレオ システム ドゥ コントロール モトゥール
(74)【代理人】
【識別番号】100060759
【弁理士】
【氏名又は名称】竹沢 荘一
(74)【代理人】
【識別番号】100087893
【弁理士】
【氏名又は名称】中馬 典嗣
(72)【発明者】
【氏名】ルイ ドゥ スーザ
(72)【発明者】
【氏名】ボリス ブーシェ
【審査官】 永井 啓司
(56)【参考文献】
【文献】 特開2004−336836(JP,A)
【文献】 特開2007−097341(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B60L1/00−3/12
7/00−13/00
15/00−15/42
H02J7/00−7/36
H02M7/42−7/98
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
交流モータ(6)と、前記交流モータ(6)に接続されたインバータ(2)と、前記インバータ(2)に接続された蓄電手段(5)と、スイッチング手段(4)とを備える給電および充電のための複合電気装置であって、
前記スイッチング手段(4)は、前記交流モータ(6)への給電と、外部配電網(11)が巻線(7)に接続されているとき、インダクタとして前記交流モータ(6)の前記巻線(7)を用いることによって、前記外部配電網(11)から前記インバータ(2)を介する前記蓄電手段(5)への充電との両方を可能にし、
前記スイッチング手段(4)は、前記インバータ(2)内に組み込まれており、かつ前記交流モータ(6)の各相に対して1つのHブリッジ構造(3、3’、3’’)を備えており、
給電モードにおいて、Hブリッジ構造(3、3’、3’’)の各ブリッジアーム(A、B、C、D、E、F)は、前記交流モータ(6)の対応する相において、交流電流を流すように制御され、
充電モードにおいて、前記Hブリッジ構造(3、3’、3’’)のブリッジアーム(A、B、C、D、E、F)における一部分(B、D、F)のみが、前記交流モータ(6)の前記巻線(7)を介して前記外部配電網(11)に接続され、電気機械の前記交流モータ(6)の前記巻線(7)と共に、電圧の昇圧を実現するために制御され、
前記ブリッジアーム(A、B、C、D、E、F)の他の部分(A、C、E)のスイッチは、前記交流モータ(6)の前記巻線(7)を介して前記外部配電網(11)に接続されておらず、開かれていることを特徴とする電気装置。
【請求項2】
前記蓄電手段(5)の特性に、前記外部配電網(11)から前記インバータ(2)を介して供給される電圧を適合させることを可能にするDC/DCコンバータ(10)を、前記Hブリッジ構造(3、3’、3’’)と前記蓄電手段(5)との間に更に備えている、請求項1に記載の電気装置。
【請求項3】
前記交流モータ(6)は三相モータであり、前記スイッチング手段(4)は3つのHブリッジ構造を有する、請求項1または2に記載の電気装置。
【請求項4】
前記電気装置への通電時に、前記外部配電網(11)への接続のための差し込み口への接触を防止することができるロック手段を備えている、請求項1〜3のいずれか1項に記載の電気装置。
【請求項5】
前記差し込み口は、前記電気装置の接地手段を備えている、請求項1〜4のいずれか1項に記載の電気装置。
【請求項6】
Hブリッジ構造(3、3’、3’’)を有するスイッチング手段を、交流モータ(6)に給電するモードから、蓄電手段(5)を充電するモードへのスイッチング、またその逆のスイッチングを可能にするように制御するステップを含んでいる、請求項1〜5のいずれか1項に記載の電気装置に適用される、給電および充電に共用する方法。
【請求項7】
三相モータ(6)を有する前記電気装置に適用され、該三相モータ(6)の一相が損傷した際に、一定振幅の単一の回転磁界を発生させることができるように、他の二相のうちの一方の位相反転を制御するステップを含んでいる、請求項6に記載の方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、給電および充電に共用される電気装置、および共用の方法に関する。本発明は、再充電可能なバッテリによって給電されるモータ、またはオルタネータの分野に属する。
【0002】
本発明は、インバータを介して、バッテリがモータに給電し、かつ停車時にバッテリが再充電される電気自動車の分野に、特に好ましく応用しうるものである。
【0003】
しかしながら、このような応用のために特別に設計されてはいるが、この電気装置および方法は、他の分野、特に風力または水力などのエネルギーを発生させる装置に用いることができる。
【背景技術】
【0004】
従来、電気自動車には、インバータに直流電流を送出する高電圧バッテリが積載されている。インバータは、この直流電流を、電気自動車を駆動するモータに給電することができる交流電流に変換する。
【0005】
このような高電圧バッテリを再充電するために、バッテリを充電するための外部の配電網の交流電流を整流することができる交流−直流コンバータを備えている車載充電装置を、車両に積載することは知られている。車載充電装置は、さらに、配電網の電圧レベルを、高電圧バッテリの電圧レベルに合致させるための直流−直流コンバータを備えていると有利である。
【0006】
しかしながら、給電システムの電子部品、また充電システムの電子部品は、高価である。別の手法として、モータの一部と、モータへの給電に用いられる部品の一部とを利用して、バッテリを充電する装置を実現することを開示している特許文献1および2に提案されているように、相異なるステージにおいて、モータへの給電とバッテリの充電とが行われる。
【0007】
したがって、バッテリを充電する装置は、交流−直流コンバータを構成するためにインバータを、またインダクタを構成するためにモータの巻線を用いている。モータへの給電モードから、バッテリの充電モードへの移行は、パワーコンタクタを用いて、中性点接続を断つことによって実行される。
【0008】
しかしながら、パワーコネクタを使用するには、電気機械の電流を確実に通過させるために、そのパワーコネクタは大規模でなければならないという問題がある。具体的には、一例として、公称345Vのバッテリによって給電される出力50kWの牽引システムは、最大トルクを得るために、約350Aの二乗平均平方根電流を必要とする場合がある。ロータがロックされると、この電流は、500Aのピーク値に達する場合があり、同時に、現行の規格にしたがって車両が受ける振動および衝撃に耐えなければならない。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0009】
【特許文献1】ヨーロッパ特許公開第0603778号公報
【特許文献2】国際公開第WO97/08009号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0010】
本発明は、モータの構成要素と、インバータの構成要素とを用いることによって、モータへの給電と、バッテリの充電とに共用される電気装置および方法を提供することを目的としている。この装置は、また、給電モードと充電モードとの間の移行のためのパワーコンタクタを不要にすることができる構造を有している。
【課題を解決するための手段】
【0011】
給電および充電に共用される本発明の電気装置は、交流モータ、インバータ、および蓄電手段を有し、さらに、インバータを介しての交流モータへの給電と、蓄電手段の充電との両方を可能にするスイッチング手段を有している。このスイッチング手段は、インバータ内に組み込まれており、かつ交流モータの各相当たり、少なくとも1つのHブリッジ構造を備えており、蓄電手段の充電時に、モータの各相の中性点接続を維持することができるようになっている。
【0012】
電気装置は、蓄電手段の特性に、外部配電網の電圧を適合させることを可能にするDC/DC(直流−直流)コンバータを、Hブリッジ構造と蓄電手段との間に備えている場合がある。
【0013】
交流モータが三相モータである場合には、スイッチング手段は、3つのHブリッジ構造を有していると有利である。
【0014】
電気装置への通電時に、外部配電網への接続のための差し込み口への接触を防止することができるロック手段を備えることもある。
【0015】
差し込み口は、電気装置の接地手段を備えている場合がある。
【0016】
本発明は、さらに、少なくとも1つのHブリッジを有するスイッチング手段を、交流モータに給電するモードから、蓄電手段を充電するモードへのスイッチング、またその逆のスイッチングを可能にするように制御するステップを有する、上述の電気装置に適用される、給電および充電に共用される方法を提供するものである。
【0017】
交流モータが三相モータである場合には、本発明の方法は、三相モータの一相が損傷した際に、一定振幅の単一の回転磁界を発生させることができるように、他の二相のうちの一方の位相反転を制御するステップを含んでいる場合がある。
【図面の簡単な説明】
【0018】
図1】三相モータ内に三相配電網への接続線を備える、本発明による電気装置の例示的な一実施形態を概要的に示す図である。
図2】三相インバータへの単層配電網の接続の例示的な一実施形態を概要的に示す図である。
図3】三相インバータへの単層配電網の接続の例示的な別の一実施形態を概要的に示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0019】
図面を参照して、非限定的な例として示す、以下の詳細な実施形態の説明を読むことによって、本発明をよりよく理解することができると思う。
【0020】
図1には、インバータ2と、インバータ2内に組み込まれており、3つのHブリッジ3、3’、3’’を有するスイッチング手段4とを備える、本発明による装置1が示されている。
【0021】
この装置1は、次の2つのモードで作動するようになっている。
− バッテリから成る蓄電手段5から、モータ6に交流電流が給電される給電モードと、
− モータの巻線7をインダクタとして用いることによって、コネクタ8に接続されている外部の配電網から、蓄電手段5を充電する充電モード。
【0022】
各Hブリッジ3、3’、3’’は、それぞれの2本のブリッジアーム(符号AおよびB、CおよびD、EおよびFを付されている)に、4つのスイッチ12を配置されている。従来の三相ブリッジに優るHブリッジの1つの利点は、それを用いることによって、同一の電圧から、モータの各相に印加される電圧が2倍になるということである。その結果、スイッチ12の数が2倍になるが、用いられるシリコンの面積は、Hブリッジの場合と、従来の三相ブリッジの場合とでほとんど同一である。これは、相電流が2分割されるからである。
【0023】
Hブリッジを用いることによって、さらに、スイッチングに伴う電力損失を少なくすることができる。
【0024】
装置1は、さらに、蓄電手段5、および巻線7がインダクタとして働くモータ6(部分的に示されている)を備えている。
【0025】
装置1は、さらに、三相配電網の差し込み口に接続可能なコネクタ8を備えている。このコネクタ8は、充電モード時の装置1への通電中に、三相配電網の差し込み口への接触を防止することができるロック手段(図面には示されていない)を備えている。コネクタ8は、さらに、給電モード時に、ユーザが、(通電されている)導線に接触することを防止する第2のロック手段(図示せず)が組み合わされている。差し込み口は、さらに、装置1の接地手段(図示せず)を備えている。コネクタ8は、EMCフィルタ(電磁波による障害を防止するためのフィルタ)、および配電網への接続を目的として作られている任意の器具のための従来の保護手段(図示せず)を備えていると有利である。
【0026】
給電モードから充電モードへの移行は、ブリッジアームA〜Fのスイッチを駆動する制御回路9によって管理される(図1においては、図面の読み出しを簡単にするために、制御回路9とスイッチとの関の接続は示されていない)。給電モードにおいては、制御回路9は、標準的制御と同様に、三相電流を発生させるブリッジアームA〜Fの全てを制御する。充電モードにおいては、電気機械のモータ6の巻線7(インダクタを構成する)とともに、昇圧器を実現するブリッジアームB、D、Fだけが制御される。
【0027】
より詳細には、この例においては、制御回路9は、次のようにブリッジアームA〜Fを駆動する。
− 給電モードにおいては、各Hブリッジは、モータの対応する相に交流電流を流すように制御される。モータの三相を流れる交流電流は、従来どおりに、モータが回転するように調和させられる。制御回路9は、従来の正弦波PWM(パルス幅変調)制御にしたがって、ブリッジアームAおよびBのスイッチ12(この例では、パワートランジスタである)を駆動することができる。他の2つのHブリッジも、三相モータの場合には、好ましくは互いに120°だけ位相がずれた状態で、同じ正弦波PWM制御にしたがって駆動される。
− 三相の充電モードにおいては、インダクタを構成する各巻線7に交流電流が流れ、PFC(力率補正)機能が全相で遂行されるように、ブリッジアームA、C、Eの各々の2つのスイッチは開かれ、一方、ブリッジアームB、D、Fの各々の2つのスイッチは、三相チャージャのための従来の交流制御にしたがって駆動される。
【0028】
制御回路9は、さらに、モータ6を、劣化モードにおいて作動させることができる。具体的には、モータ6またはインバータ2の故障によって、ある相が損傷した場合に、制御回路9は、モータ6の作動している二相のうちの一方の相の位相を反転させるように制御する。この制御によって、トルク反転を発生させることのない、一定振幅の単一の回転磁界を発生させ続けることができる。このようなことは、相の損傷によって強いトルク反転が引き起こされる、従来の三相ブリッジを用いた装置においては不可能である。
【0029】
図1を参照すると、装置1は、さらに、Hブリッジと蓄電手段5との間に配置されたDC/DCコンバータ10を備えていることが分かる。DC/DCコンバータ10を用いることによって、電圧を適合させることができ、したがって性能を下げることなく、インバータの定格を最適化することができる。実際、蓄電手段5の電圧は、蓄電手段5の負荷に応じて変動し、この変動比は1:2に達するから、DC/DCコンバータ10を用いることによって、インバータ2を通る電流が半分になるまで、インバータ2の定格を、より高電圧に設定することができる。
【0030】
図2は、単相チャージャを構成する三相のインバータ2を示している。
【0031】
この例においては、制御回路9は、ブリッジアームA〜Fを、次のように駆動することができる。
− 給電モードにおいては、図1の装置の給電モードにおける制御(上記参照)と同じ制御がなされる。
− 充電モードにおいては、インダクタを構成する各巻線7に整流された交流電流が流れ、PFC機能が関連する相において遂行されるように、ブリッジアームB、C、E、Fは制御されず、すなわち、これらのブリッジアームのスイッチ12は全て開かれ、ブリッジアームAおよびDのスイッチは、単相チャージャのための従来の交流制御にしたがって駆動される。
【0032】
図3も、単相チャージャを構成する三相のインバータを示している。単相配電網に対するこの第2の解法においては、配電網11は、ブリッジ整流器を介して、インバータ2に接続されている。配電網11の電流は、単相のダイオードブリッジ13によって整流される。
【0033】
この例においては、制御回路9は、ブリッジアームA〜Fを、次のように駆動することができる。
− 給電モードにおいては、図1の装置の給電モードにおける制御(上記参照)と同じ制御がなされる。
− 充電モードにおいては、インダクタを構成する各巻線7に整流された交流電流が流れ、PFC機能が関連する相において遂行されるように、ブリッジアームB〜Fは制御されず、一方、ブリッジアームAのスイッチ12は、単相チャージャのための従来の交流制御にしたがって駆動される。
【0034】
請求項によって定められている本発明の範囲から逸脱することなく、本発明の他の態様を、さらに考え出すことができる。特に、上述の装置を、モータ6の各相にHブリッジ構造を有する多相システムに拡張することができる。
【符号の説明】
【0035】
1 装置
2 インバータ
3、3’、3’’ Hブリッジ
4 スイッチング手段
5 蓄電手段
6 モータ
7 巻線
8 コネクタ
9 制御回路
10 DC/DCコンバータ
11 配電網
12 スイッチ
A〜F ブリッジアーム
図1
図2
図3