(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6389863
(24)【登録日】2018年8月24日
(45)【発行日】2018年9月12日
(54)【発明の名称】テンヤ用ワイヤーアシストフックおよびテンヤ
(51)【国際特許分類】
A01K 83/00 20060101AFI20180903BHJP
A01K 91/06 20060101ALI20180903BHJP
A01K 85/00 20060101ALI20180903BHJP
【FI】
A01K83/00 Z
A01K91/06 B
A01K85/00 B
【請求項の数】5
【全頁数】9
(21)【出願番号】特願2016-242463(P2016-242463)
(22)【出願日】2016年12月14日
(65)【公開番号】特開2018-93804(P2018-93804A)
(43)【公開日】2018年6月21日
【審査請求日】2017年11月14日
【新規性喪失の例外の表示】特許法第30条第2項適用 1)販売者;株式会社 松尾商店 2)販売日;平成28年11月1日 3)販売場所;丸高渡船 売店 1)販売者;株式会社 松尾商店 2)販売日;平成28年12月1日 3)卸売場所;株式会社土屋商会(南港店)及び(貝塚店)
【早期審査対象出願】
(73)【特許権者】
【識別番号】516376422
【氏名又は名称】株式会社松尾商店
(74)【代理人】
【識別番号】100096437
【弁理士】
【氏名又は名称】笹原 敏司
(72)【発明者】
【氏名】岩原 良隆
【審査官】
田辺 義拓
(56)【参考文献】
【文献】
登録実用新案第3145567(JP,U)
【文献】
特開2014−132880(JP,A)
【文献】
特開2003−079275(JP,A)
【文献】
テイルフックプラス・システム,2010年11月22日,URL,http://blackfish.naturum.ne.jp/e1050369.html
【文献】
がまかつ 総合カタログ 2013,株式会社がまかつ,2013年,p.172,272
【文献】
【仕掛・道具】タチウオ用アシストフック,2012年 8月14日,URL,http://marusui.cocolog-nifty.com/blog/2012/08/post-7bec.html
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A01K 83/00−85/18
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
テンヤの針部の懐部に挿通される輪を一端に有し、他端に掛け針が結止されたワイヤーからなるテンヤ用ワイヤーアシストフックであって、
前記ワイヤーは、より線でできたステンレスワイヤーを使用し、前記ワイヤーの一端の輪を縮径して前記針部の懐部を締付ける締め具は、ビーズ状でゴム状弾性を有し、中心孔にワイヤーが挿通され、ワイヤーに沿ってスライドして、締め具の締付けまたは解除により前記テンヤの針部の懐部に着脱自在であることを特徴とするテンヤ用ワイヤーアシストフック。
【請求項2】
掛け針は、ダブルフック、トリプルフック、4本フックの何れかを用いたことを特徴とする請求項1に記載のテンヤ用ワイヤーアシストフック。
【請求項3】
掛け針は、ワイヤーの他端を折り返してステンレスクリップをかしめて形成した輪に、自由度がきくような状態で結止するか、又は自由度が効かないように拘束された状態で結止されているか、何れかであることを特徴とする請求項1又は請求項2に記載のテンヤ用ワイヤーアシストフック。
【請求項4】
締め具が、発光体からなる弾性材質製のビーズ体である請求項1に記載のテンヤ用ワイヤーアシストフック。
【請求項5】
テンヤ本体は、餌を縛りつける軸の先に大きな懐部と、返しの付いた針部を有し、軸の針部と反対側に、餌を固定する固定針が軸に設けられ、前記軸のチモト部には、環を有する錘が取り付けられているテンヤであって、
前記テンヤの懐部に、請求項1〜請求項4の何れかに記載のテンヤ用アシストフックのワイヤー一端の輪を通し、締め具をワイヤーに沿って懐部の方向にスライドしてワイヤーの一端の輪を縮径して締め付けることでワイヤーアシストフックを取り付け、締め具を逆方向に緩めて輪が開き、針部の返しを超えて容易に取り外せる、着脱自在なテンヤ用ワイヤーアシストフックを備えたことを特徴とするテンヤ。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、例えば、太刀魚釣りに用いられる釣具のテンヤ用ワイヤーアシストフックおよびテンヤの改良に関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来、釣り具のテンヤとして、一般的に太刀魚釣りに用いられるテンヤが広く知られている。この太刀魚釣りに用いられるテンヤは
図5に示すようにドジョウなどの餌Gを縛り付ける長い軸41を有する針部42と、その軸41のチモト部43に錘44を取り付け、この錘44に設けた取り付け環45に釣り糸Lを結び付ける。この太刀魚釣りに用いられるテンヤは、長い軸41にドジョウなどの餌Gを縛り付けて釣りを行うが、餌Gに引き寄せられた太刀魚(図示せず)を針部42に掛ける仕組みとされている(特許文献1)。
【0003】
上記のような一般的な太刀魚釣りに用いられるテンヤの他に、
図6に示すように針部42に三又針46を取り付けた太刀魚釣りに用いられるテンヤ50なども知られている(特許文献2)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開平08−163939号(
図5参照)
【特許文献2】登録実用新案公報3145567号(
図6参照)
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
図5の従来の太刀魚釣りに用いられるテンヤは、太刀魚の摂餌活動力が落ちたり、あるいは仕掛けに馴れてくると釣れ難くなり、餌Gに近寄ることがあっても針部42に掛かりづらくなり、餌Gのドジョウの端部gだけをかじり取られるなど、釣り果が低下する一方、傷んだ餌Gを新しく付け替えるには非常に手間がかかり、釣り趣が著しく阻害される問題があった。このような問題を解消するため、
図6に示すように、針部42に三又針46を付けることも提案されている。
【0006】
図6に示す太刀魚釣りに用いられるテンヤでは、餌Gのドジョウの端部gだけをかじり取られたりする問題はかなり解消される。しかし、
図6の太刀魚釣りに用いられるテンヤは一般的に販売されている製品ではなく、
図6のような太刀魚釣りに用いられるテンヤを使用したいと考える場合には、各自で製作しなければならない。しかも、釣る魚に応じてテンヤを大きくしたり、小さくしたりしなければならないが、軸48が鋼線で出来ているため、三又針46を付け替えようとしても、針部42の大きな返し47が邪魔になって三又針46の取り換えが出来ない問題がある。さらに三又針46の軸48が太く目立つので太刀魚に感づかれ易く、これが釣り果の低下につながる懸念がある。
【0007】
本発明は、上記課題を解消することを目的としてなされたもので、テンヤに、着脱自在であって、しかも取り付けた後も大小のテンヤに付け替えのできるテンヤ用ワイヤーアシストフック、あるいは前記テンヤ用ワイヤーアシストフックを取り付けたテンヤを提供することを目的としてなされたものである。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明の、テンヤの針部の懐部に挿通される輪を一端に有し、他端に掛け針が結止されたワイヤーからなるテンヤ用ワイヤーアシストフックであって、前記ワイヤーは、より線でできたステンレスワイヤーを使用し、前記ワイヤーの一端の輪を縮径して前記針部の懐部を締付ける締め具は
、ビーズ状でゴム弾性を有し、中心孔にワイヤーが挿通され、ワイヤーに沿ってスライドして、締め具の締付けまたは解除により前記テンヤの針部の懐部に着脱自在であることを特徴とする。
【0009】
また、本発明は、テンヤ用ワイヤーアシストフックを取り付けたテンヤに関し、針部の懐部に、前記のテンヤ用ワイヤーアシストフックが着脱自在に取り付けられていることを特徴とする。
【発明の効果】
【0010】
本発明のテンヤ用ワイヤーアシストフックは、テンヤの針部の懐部に着脱自在に取り付けることができるので、テンヤを変えても迅速に付け替えることができる。
【0011】
また、本発明のテンヤは、テンヤ用ワイヤーアシストフックが針部に取り付けられるので、本来の針部に掛らなくても掛け針に魚が掛かりやすく、釣り落しを防げる。しかも、前記掛け針を繋ぐワイヤーの太さも可能な限り細い材質にできるので、目立ちにくく、その分釣れやすくなる。さらに、前記掛け針は、餌の端部に伸びるので、餌の端部だけ食いちぎられるといった問題も解消できる。
【図面の簡単な説明】
【0012】
【
図1】本発明のテンヤ用ワイヤーアシストフックの側面図
【
図2】本発明のテンヤ用ワイヤーアシストフックを用いたテンヤの側面図
【
図4】本発明の変形例のテンヤ用ワイヤーアシストフックの側面図
【実施例1】
【0013】
図1は、本発明のテンヤ用ワイヤーアシストフックの側面図である。このテンヤ用ワイヤーアシストフック1(以下、単にワイヤーアシストフックと簡略化する場合もある。) は、例えば、太刀魚釣りに用いられるが、太刀魚釣り用に限定されるものではない。本発明のテンヤ用ワイヤーアシストフック1は、
図2に示すようなテンヤ2の針部25の懐部23に挿通される輪10を一端11に有し、他端12に掛け針13が結止されたワイヤー14であって、ワイヤー14には輪10を縮径させて針部25の懐部23を締付ける締め具15が挿通されている。なお、
図1に示す符号16はステンレスクリップを示し、掛け針13を結止する輪17をワイヤー14の他端12に作るためのもので、ワイヤー14の他端部を折り返して前記ステンレスクリップ16をかしめて輪17を形成している。
【0014】
ワイヤー14は、より線でできたステンレスワイヤーを使用するのが好ましい。ワイヤー14の素材にステンレスワイヤーを使用することにより、太刀魚のような鋭い歯や障害物との擦れに伴うワイヤー14の破断防止、劣化の軽減に役立つ。さらに、ワイヤーアシストフック1の特徴の1つである着脱機能を生かし、長期にわたって使いまわしが可能となる。
【0015】
ワイヤー14の長さ寸法は、ドジョウやいかなご等の餌Gの長さ、掛け針の全長に応じて決定される。さらに、このワイヤー14の長さ寸法は、テンヤ2のサイズに応じて長さが決定される。なお、本発明のワイヤーアシストフック1は、後述するように一種類で複数のタイプのテンヤ2に対応できる。なお、ワイヤー14は、目立ちにくくし、釣果向上につなげるため、太刀魚等が釣れた時にその重さや動きに耐え得る限りできるだけ細いものを使用することが望ましい。
【0016】
締め具15は、ビーズ状のゴム状弾性を有する素材のものを使用することが好ましく、中心孔にワイヤー14が挿通され、
図1の点線で示すようにワイヤー14をスライドできるようになっている。
【0017】
前記締め具15は、合成ゴムや合成樹脂であってもよく、蓄光性を有し夜間海中で発光する素材を用いることが望ましい。本実施例は、具体的には発光玉(登録商標)ソフトタイプを使用した。このような締め具15を使用することにより、発光による光に集まる魚の習性を利用して集魚効果も期待できるのと、ワイヤー14を針部25の懐部23に固定する2つの効果が発揮できる。
【0018】
なお、締め具15の形状
をビーズ状にすれば締め付けや緩める際の手掛かりが出来て扱いやすくなる。
【0019】
掛け針13は、既存のトリプルフックを使用したが、トリプルフックに限定されるものではなく
、ダブルフック、4本フック等を使用してもよい。なお、掛け針13の材質は、海水環境で使用するので腐食しにくい材質とするため、ステンレス製とすることが望ましい。なお、掛け針13は、魚が警戒して探りを入れるために、テンヤ2に括り付けた餌Gの端部gに食い付いた時に掛かるようになっており、テンヤ2によりサイズが異なるが、実施例の図に示すトリプルフック13は、高さ2.2cm、幅1.9cmを使用した。このタイプのトリプルフック13では現在市販されているキャスティング用テンヤのS,SS,SSSサイズとバランスがとれ、これらの3タイプのものに使用できる。従って、1種類のワイヤーアシストフック1で、だいたい3種類程度のテンヤ2に対応でき、釣り場の状況によって1種のワイヤーアシストフック1で3種類程度のテンヤ2に自在に脱着して釣り果を上げることが可能となる。
【0020】
なお、掛け針13とテンヤ2のバランスが崩れると、テンヤ2の姿勢が崩れるので、釣り果に影響がでて好ましくない。しかし、本発明のワイヤーアシストフック1は、ワイヤー14と、ワイヤー14に結止された掛け針13と、ステンレスクリップ16と、ワイヤー14の輪10を縮径させる締め具15とから構成され、これら最小限の部材で構成することにより全体が軽量となり、ワイヤーアシストフック1がテンヤ2のバランスに影響を及ぼさない特徴がある。このように、テンヤ2のバランスが保持されることにより、テンヤ2の最良な姿勢を維持できるので、釣り果を上げることができる。
【0021】
本発明のテンヤ用ワイヤーアシストフック1の使用に際して、輪10を針部25の懐部23に通し、締め具15によって輪10を締付けることでワイヤーアシストフック1が懐部23に取り付けることができる。また、輪10は懐部23に締付けられているので、返し24を超えて針部25から容易に外れないようになる。
【0022】
逆に、締め具15を逆方向へ緩めれば、輪10が開き、返し24を超えて容易に取り外せるようになる。従って、このようなテンヤ用ワイヤーアシストフック1により、ワンタッチでテンヤ2に着脱することが可能となる。
【0023】
以上説明したように、本発明のテンヤ用アシストフック1は、テンヤ2の針の懐部23に脱着自在にできるので、釣り場の状況に応じて自由にテンヤ2を使い分けることができ、それだけ釣り果向上に寄与することができる。
【0024】
さらに、テンヤ用アシストフック1のワイヤー14を細いものにすることによって、目立ち難くでき、また、締め具15に発光あるいは蓄光素材(ビーズ)を使用すれば、誘魚効果も期待でき漁獲向上により寄与させることができる。
【0025】
図4はテンヤ用ワイヤーアシストフック1の変形例を示している。前記ワイヤーアシストフック1は、
図1に示すように、ステンレスクリップ16をかしめて、ワイヤー14の他端12に掛け針13を結止する輪17を作っている。輪17のために、掛け針13は、ある程度自由度がきくような状態で結止されている。これに対して、
図4に示す変形例では、輪17を備えているが、輪17は、ステンレスクリップ16により絞られて、掛け針13がワイヤー14の他端12に自由度が効かないように拘束された状態で結止されている。このように、掛け針13を自由が効かないような状態で結止することにより、掛け針13の方向性が定まり、ワイヤー14に対して掛け針13が直線状に延びて、垂れ下がるような姿勢になることがないので、直線的に餌を取りにくる太刀魚等の魚種に対して掛け針13が接触した際、力が逃げにくく、口や顎の外表面に引っ掛かりやすくなるという特徴がある。
【実施例2】
【0026】
図2は、
図1のワイヤーアシストフック1を取り付けた太刀魚釣りに用いられるテンヤ2を示している。ただし、本発明のテンヤ2は太刀魚釣用に限定されないことは言うまでもない。なお、前記のように、テンヤ2は、現在市販されているキャスティング用テンヤのS,SS,SSSサイズを用いた。この太刀魚釣りに用いられるテンヤ本体21は、ドジョウなどの餌Gを縛りつける長さの軸22の先に大きな懐部23と、返し24の付いた針部25を有し、軸22の針部25と反対側に、餌Gを固定する固定針26A、26B、26Cが軸22と一体に設けられている。なお、この固定針26A〜26Cは針26A一本のみ、あるいは針26A、26Bの2本だけであっても良い。
【0027】
前記軸22のチモト部27には、環28を有する錘29が一体に取り付けられている。そして、前記のように針部25の懐部23に、テンヤ用ワイヤーアシストフック1の輪10を通し、締め具15を懐部23の方向へスライドして締め付けることでワイヤーアシストフック1が取り付けられている。
【0028】
図3は前記テンヤ2の使用状態を示す。まず、テンヤ2の軸22にドジョウなどの餌Gを固定針26A〜26Bに突き刺して位置決めし、さらにワイヤーWなどで縛り付けて固定する。この時、ドジョウなどの餌Gの端部gをテンヤ2より突き出すようにする。そして、環28に釣り糸Lを結び止める。
【0029】
この状態でテンヤ2を海中に投げると、釣り糸Lに引かれテンヤ2は餌Gの端部gを下方にした斜め姿勢で支持される。従ってテンヤ用ワイヤーアシストフック1は、餌Gの端部gの下方に位置するようになる。
【0030】
なお、この時、餌Gの端部gは、縛られていないので釣り糸Lのしゃくり動作や波の上下動などにより、前記ワイヤーアシストフック1と共にゆらゆらと揺れ動き、いわゆる「誘い」となる。
【0031】
一方、太刀魚などの魚が就餌するときは、頭を上にしたほぼ垂直姿勢をとることが知られているので、太刀魚が下方から餌Gを咥えた時、ワイヤーアシストフック1の掛け針13が太刀魚の口の他、顎の外表面にも掛り易くなる。
【0032】
また、テンヤの大きさに対し、テンヤ用ワイヤーアシストフック1の大きさが合わない場合、釣初める前に任意に異なる大きさのワイヤーアシストフック1に取り換える。さらに釣始めた後で有っても、魚の釣れ方の状況から判断して異なるテンヤ2に迅速に付け替えることができる。
【0033】
なお、実施例2では、
図1のワイヤーアシストフック1を取り付けたテンヤ2で説明したが、
図4のワイヤーアシストフック1を取り付けたテンヤ2であってもよい。
図4のワイヤーアシストフック1により、ワイヤー14に対して掛け針13が固定されているので、餌を取にきた太刀魚の口や顎の外表面に引っ掛かりやすくなる。
【産業上の利用可能性】
【0034】
本発明のテンヤ用ワイヤーアシストフックおよびテンヤは、漁業の分野、特に釣りの分野に応用することが可能である。
【符号の説明】
【0035】
1 テンヤ用ワイヤーアシストフック
2 テンヤ
10 輪
11 ワイヤー一端
12 ワイヤー他端
13 掛け針
14 ワイヤー
15 締め具
16 ステンレスクリップ
21 テンヤ本体
22 軸
23 懐部
24 返し
25 針部
26A、26B、26C 固定針
27 チモト部
28 環
29 錘
G 餌のドジョウ
g ドジョウの端部