【課題を解決するための手段】
【0007】
そのために、本発明は、請求項1の特徴を有するシフト・バイ・ワイヤ操作装置を提案する。ここで提案する操作装置は、特に、車両のオートマチック変速機又は車両の自動変速機のために配備される。ここで提案する操作装置は、走行変速段の中の一つの走行変速段を選択するためのスクロール面と、操作に基づき許可信号を発出する許可キーとが少なくとも配置された操作領域を有する。有利には、このスクロール面によって、少なくとも前進走行動作D、ニュートラル位置N及び後進走行動作Rの走行変速段を選択することが可能である。更に有利には、このスクロール面によって、パーキング位置Pの走行変速段を更に選択することが可能である。更に有利には、このスクロール面によって、前記の走行変速段以外の少なくとも一つの走行変速段を選択することが可能である。
【0008】
この操作領域は、有利には、操作装置のユーザーのアクセス範囲内に有り、少なくともそのアクセス範囲内で見ることができる操作装置の範囲によって境界を画定された領域である。有利には、そのために、操作装置は、ユーザーのアクセス範囲内に配置された筐体部分を有し、その部分の筐体表面側が操作領域を形成するか、或いは操作領域の場所を提供し、この筐体部分のアクセス可能な範囲の境界を画定する周縁部が操作領域の最大範囲を定義する。そのような周縁部は、更に有利には、操作装置の筐体部分自体によって形成するか、或いはそれに代わって、例えば、アクセス可能な筐体部分を開放する空所を有する中央コンソールカバーなどの操作装置上に配置可能な部品によって構成することができる。
【0009】
このスクロール面は、有利には、前後に動かすことが可能な可動操作面である。有利には、このスクロール面は、回転軸の周りを回転可能なスクロールホイールの操作表面によって形成され、このスクロールホイール又は操作表面の回転可能性は、有利には、少なくとも一つの方向に限定されるか、或いは限定されない。このスクロールホイールの回転により、走行変速段の選択が行なわれる。それに代わって、このスクロール面は、有利には、非可動操作面、特に、タッチセンサ面により形成され、その面上で、操作装置の操作者は、走行変速段を選択するために、スクロールの動きに対応して、一回又は複数回指を前後にスライドしなければならない。
【0010】
この操作装置は、スクロール面を用いた走行変速段の中の少なくとも一つの走行変速段のシフトチェンジ作用を奏する選択、有利には、走行変速段からのシフトチェンジ作用を奏する選択が、特に、許可信号に基づく阻止・許可機器による許可後にのみ実施可能であるように、スクロール面と許可キーが阻止・許可機器を介して互いに接続されていることを特徴とする。この場合、スクロール面を用いた少なくとも一つの走行変速段の選択が自動車変速機のそれに対応するシフトチェンジを引き起こした時に、その選択がシフトチェンジ作用を奏するものする。
【0011】
この操作装置を用いて、周知の従来技術と異なり、選択可能な走行変速段からの少なくとも一つの走行変速段のシフトチェンジ作用を奏する選択が、許可信号を受信するまで阻止され、それによって、走行変速段選択部品の不注意な操作及びそれと同時に生じる実際の走行変速段と異なる走行変速段の選択を確実に防止することができる。何故なら、それまで選択されていた走行変速段と異なる走行変速段のシフトチェンジ作用を奏する選択を許可するためには、従来技術と異なり、先ずは許可キーの操作による許可信号が必要であるからである。更に、本発明では、従来の操作装置に反して、セレクタレバーの全く異なる実施形態によって、特に、ユーザーが自由にアクセスできる操作部品と選択された走行変速段を伝えるための機械機構又は電子回路とを接続する従来のセレクタレバーロッドを省くことによって、より小さい省スペースな操作装置を提供することができる。
【0012】
有利な実施構成では、この操作装置は、更に、少なくとも一つの信号変換器と信号受信機を備えたセンサ機器を有する。有利には、二つ以上の信号変換器又は信号受信機を配備することができ、それによって、信号の精度を向上することができる。この信号変換器は、スクロール面の操作が、選択された走行変速段に関する情報を送出する、信号変換器の信号を発生させるように、スクロール面と接続されている。これらの信号変換器と信号受信機を用いて、スクロール面の操作を検出して、スクロール面の操作から導き出される、選択された走行変速段に関する情報を信号により伝送することができる。
【0013】
センサ機器として、従来の電子センサ機器を使用することができる。例えば、有利なスクロールホイールと組み合わせて、ホールセンサに基づく位置センサ機器を用いることができ、永久磁石又は電磁石とすることができる信号変換器は、固定位置でスクロールホイールと接続される。それに代わって、有利なタッチセンサ面と組み合わせて、従来の電子タッチセンサ機器を用いることができる。この場合、選択可能な走行変速段は、スクロール面の操作に応じて選択された走行変速段を識別することが可能であるように、スクロール面に渡って規定される。センサ機器により検出されて伝送される、選択された走行変速段に関する情報は、選択された走行変速段に対応して自動車変速機のシフトチェンジを引き起こす。例えば、選択された走行変速段に関する情報は、センサ信号を用いて、センサ機器から変速機制御機器に伝送され、その制御機器は、センサ信号により伝送されて来た、選択された走行変速段に関する情報に基づき、それに対応して自動車変速機のシフトチェンジを実施する。それに代わって、センサ機器と変速機制御機器の間に、センサ信号又はセンサ信号により伝送される選択された走行変速段に関する情報を先ず処理した後、例えば、評価した後、更に転送する別の制御機器又は評価ユニットを中間接続することができる。
【0014】
有利には、阻止・許可機器は、選択された走行変速段に関する情報を有する信号の伝送を阻止及び許可するように構成され、この阻止・許可機器は、選択された走行変速段に関する情報を有する信号を伝送可能とする、スクロール面から自動車変速機にまで及ぶ伝送区間内に中間接続されており、少なくとも許可信号を受信するまで、選択された走行変速段に関する情報を有する信号の伝送を阻止する。
【0015】
この信号伝送方式は、様々な形で行なうことができ、本発明に関して重要なことではない。例えば、相応の中間接続されたインタフェースによる電気式、誘導式又は光学式信号伝送、或いはそれらの組合せが考えられる。
【0016】
この伝送区間は、有利には、少なくとも有線区間及び/又は無線区間から構成され、これらの区間を介して、何れにせよ、選択された走行変速段に関する情報を有する信号の伝送が行なわれる。例えば、ホールセンサに基づく位置センサ機器の場合、信号変換器と信号受信機の間に無線区間が有り、この無線区間を介して、信号変換器から出力された、選択された走行変速段に関する情報が、信号により信号受信機に伝送することが可能であるか、或いは信号受信機から取り出すことが可能である。更に、それに対して、信号受信機から自動車変速機までは、選択された走行変速段に関する情報のための伝送区間の一部として、信号配線、例えば、電気接続配線を考慮することができる。有利なタッチセンサ面をスクロール面とする場合、この信号配線は、例えば、容易に信号変換器を出発点とする。それに追加して、或いはそれに代わって、この伝送区間には、有利には、スクロール面から自動車変速機までの間における、選択された走行変速段に関する情報を有する信号を処理する、例えば、評価、伝送、通過又は同様のことを実施する全ての装置又は機器が含まれる。これらの装置又は機器は、そのために、選択された走行変速段に関する情報を有する信号を伝送するための有線区間として、同じく信号配線を備えるか、或いは信号配線の場所を提供することができる。言い換えると、阻止・許可機器は、少なくとも一つの無線区間及び/又は有線区間、及び/又は少なくとも一つの装置又は機器を含むことが可能な伝送区間の領域内において、選択された走行変速段に関する情報を有する信号の伝送を阻止及び許可するように構成される。有利には、この阻止・許可機器は、有線区間を断続するスイッチ部品、無線区間内に出し入れ可能な、選択された走行変速段に関する情報を有する信号の伝送を遮断する遮蔽部品、或いは少なくともそれぞれ許可キーの操作により発出される許可信号に応答して、選択された走行変速段に関する情報を有する信号の伝送を許容又は許可する、これらの装置又は機器を制御するソフトウェアの中の一つに関するブロックプログラムを用いて構成することができる。
【0017】
この操作装置を用いて、周知の従来技術と異なり、選択された走行変速段に関する情報を有する信号の伝送が、走行変速段の選択後から許可信号を受信するまで阻止され、それによって、走行変速段選択部品の不注意な操作及びそれと同時に起こる実際の走行変速段と異なる走行変速段の選択を確実に防止することができる。何故なら、それまで選択されていた走行変速段と異なる走行変速段の選択に関する情報を有する信号の伝送を許可するためには、従来技術と異なり、先ずは許可キーの操作が必要であり、それにより許可信号が発出されて、それに基づき、選択された走行変速段に関する情報を有する信号の伝送が初めて許可又は可能になるからである。更に、従来の操作装置に反して、セレクタレバーの全く異なる実施形態によって、特に、ユーザーが自由にアクセスする操作部品と選択された走行変速段を伝えるための機械機構又は電子回路とを接続する従来のセレクタレバーロッドを省くことによって、より小さい省スペースな操作装置を提供することができる。
【0018】
有利な実施構成では、この許可キーは、操作時間の間持続する許可信号を送出するように構成される。更に、この阻止・許可機器は、許可信号を伝送している時間の間にのみ、選択された走行変速段に関する情報を有する信号の伝送を許容するように構成される。それによって、選択時間中の別の操作部品、即ち、許可キーの操作によって認識する形で、走行変速段のシフトチェンジ作用を奏する選択が実施されることを保証している。この場合、選択された走行変速段に関する情報を有する信号がそれに対応する自動車変速機のシフトチェンジを引き起こした場合に、選択がシフトチェンジ作用を奏するものする。この許可キーが更に操作されない限り、有利には、許可キーの操作終了と同時に、選択された走行変速段に関する情報を有する信号の伝送の阻止が行なわれる。この許可キーの操作中に最後に伝送された、選択された走行変速段に関する情報を有する信号は、有利には、それに対応する自動車変速機のシフトチェンジのために使用される。
【0019】
代替の有利な実施構成では、許可キーは、更なる操作に対応して阻止信号を送出するように構成される。更に、この阻止・許可機器は、この阻止信号の受信時又は受信後から、その次に許可信号を受信するまで、選択された走行変速段に関する情報を有する信号の伝送を阻止するように構成される。前述した有利な実施構成と異なり、許可キーは、選択された走行変速段に関する情報を有する信号の伝送を許可するために、走行変速段を選択している間連続して操作されない。この有利な実施構成では、許可キーの一回の操作が、選択された走行変速段に関する情報を有する信号の伝送を少なくとも実施するための許可状態に操作装置を移行するのに十分である。許可キーの繰り返される、或いは新たな操作後に初めて、操作装置が、許可キーから発出される阻止信号に基づき、選択された走行変速段に関する情報を有する信号の伝送を阻止する阻止状態に移行する。
【0020】
更に有利には、この阻止・許可機器は、阻止信号を受信しない場合、許可信号の受信後所定の時間が経過した後に、或いは走行変速段を選択するためのスクロール面の操作が終了するまで、選択された走行変速段に関する情報を有する信号の伝送を阻止するように構成される。それにより、操作装置が誤って漠然と長い間許可状態に留まらないことを保証できる。
【0021】
有利な実施構成では、この阻止・許可機器は、初期状態において、スクロール面を形成するスクロールホイールと係合して、このスクロールホイールの回転運動を阻止するとともに、許可信号に基づき、この係合を解除して、スクロールホイールの回転運動を許可するように構成された可動式阻止部品を有する。
【0022】
有利には、この阻止・許可機器は、可動式阻止部品を形成する、或いは装備した出し入れ可能なアンカーを備えた電磁式アクチュエータを有し、このアンカーは、引き出された状態において、スクロールホイールの回転運動を阻止するためにスクロールホイールと係合し、引き入れられた状態において、スクロールホイールの回転運動を許容する。更に有利には、この電磁式アクチュエータは、阻止状態と等しい引き出された状態で無電流状態に有り、許可状態と等しい引き入れられた状態で、許可キーの操作に基づき開始される通電状態に有る。この操作装置のエネルギー負荷は、この電磁式アクチュエータの逆の設計と比べて削減することができる。この電磁式アクチュエータの制御は、有利には、許可キー及び電磁式アクチュエータと接続された制御機器によって行なうことができる。それに代わって、許可キーは、操作している時には、電磁式アクチュエータに電流を流す回路を閉じ、操作していない時には、この回路を開いて、それにより電磁式アクチュエータに電流を流さない押しボタンスイッチとして構成することができる。
【0023】
それに代わって、この阻止・許可機器は、有利には、許可キーを操作している時には、可動式阻止部品を許可状態と等しい非係合状態に移行させ、許可キーを操作していない、或いは離している時には、自動的に係合状態に移行させる、許可キーから可動式阻止部品にまで及ぶ機械機構を有する。それによって、安価な操作装置を提供することができる。
【0024】
本発明の有利な実施構成では、スクロールホイールは、単安定又は多安定形態で設計される。単安定形態とは、本発明の意味において、スクロールホイールが、停止位置が間に有る二つの終端位置の間を移動可能であり、一つの終端位置に達した後、スクロールホイールが自律的に停止位置に戻るようなスクロールホイールの設計であると理解される。各終端位置には、選択された初期走行変速段に応じて、隣り合う次の走行変速段に基づく順番の中の一つが対応付けられる。例えば、走行変速段の所定の順番をP,R,N,Dとすることができ、最後に選択された初期走行変速段が走行変速段Nである場合、スクロールホイールの互いに逆の回転方向に設けられた各終端位置には、前記の変速段順序で初期走行変速段Nの隣の走行変速段R又はDが対応付けられる。それによって、自動車変速機の簡単なシフトアップ又はシフトダウンが可能である。そのために、操作装置は、スクロールホイールの各終端位置を所定の走行変速段順序において最後に選択された走行変速段の直後の走行変速段に自動的に対応付ける制御機器を有するか、或いはそのような制御機器と接続される。
【0025】
スクロールホイールの有利な多安定設計では、操作装置は、スクロールホイールに対して、選択可能な走行変速段と同じ数のロック位置を提供する、スクロールホイールと接続されたロック機器を有する。有利には、スクロールホイールは、二つの互いに逆の回転方向の中の少なくとも一つの方向に無限に回転することが可能である。このロック機器は、シフト・バイ・ワイヤ操作装置に配備された通常のロック機器とすることができる。
【0026】
スクロールホイールの単安定又は多安定設計によって、相応の走行変速段の選択時に、ユーザーに対して触覚によるフィードバックが可能である。
【0027】
本発明では、スクロール面及び許可キーは、ユーザの片手だけで、これら二つの構成部品を特に同時に操作することが可能であるように配置される。それによって、ここで提案する操作装置は、簡単に扱うことができる。有利な実施構成では、許可キーが親指により操作され、スクロール面がそれ以外の指により、更に有利には、人指し指又は中指により操作されるように配備される。それによって、この操作装置の取り扱いを一層簡略化できる。
【0028】
有利な実施構成では、操作領域は、許可キーを備えるか、或いは形成する、手の平を載せる部分を有する。有利には、許可キーは、この手の平を載せる部分の空所内に、或いは手の平を載せる部分の表面上に配置される。更に有利には、この手の平を載せる部分は、有利には、ユーザーが触った場合に、それに対応する許可信号を発出するセンサ面を有する。それに代わって、この手の平を載せる部分自体が許可キーを形成する。更に有利には、そのために、この手の平を載せる部分自体が押しボタン部品として構成される。
【0029】
有利な実施構成では、許可キーは、操作装置のユーザーを識別するための指紋センサによって形成され、この許可キーは識別機器と接続され、この識別機器が、許可キーにより検出された指紋像と識別機器内に保存された、或いは記憶された指紋像との照合を行なって、一致した場合に、阻止・許可機器による選択された走行変速段に関する情報を有する信号の伝送を許可するための信号を阻止・許可機器に発出する。本発明の意味では、許可キーから識別機器に送出される指紋像は、検出された指紋像が保存された指紋像と一致する限り、容易に許可信号に対応付けられる。それによって、権限の無いユーザーによる自動車変速機のシフトチェンジを防止することができ、それによって、この操作装置を自動車盗難防止機器と組み合わせて使用することが可能である。
【0030】
有利な実施構成では、この操作装置は、少なくとも選択された走行変速段を表示する表示機器を有する。更に有利には、この表示機器は、選択された走行変速段の表示に加えて、実際に選択された走行変速段が選択可能な走行変速段と比べて色を変えるか、或いは明るさの強度を変えられるように構成される。更に有利には、この表示機器は、操作領域内に配置される。この表示機器は、選択された走行変速段に関する情報を表示機器により表示できるように、阻止・許可機器と直接的又は間接的に接続される。阻止・許可機器との直接的な接続は、別の機器又は装置を中間接続しない接続を前提とする。間接的な接続は、例えば、選択された走行変速段に関する情報を有する信号を処理する制御機器などの少なくとも一つの装置又は機器を中間接続することを前提とする。
【0031】
本発明の別の観点では、シフト・バイ・ワイヤ操作装置を用いて自動車変速機の走行変速段を選択する方法が提供され、この操作装置は、特に、前述した形式の操作装置とすることができる。ここで提案する方法は、操作に応じて走行変速段の中の一つの走行変速段の選択を実施可能とするスクロール面の操作に基づき、選択された走行変速段に関する情報を有する信号の伝送を許可する少なくとも一つの許可信号を発出する許可キーを操作する工程を有する。更に、本方法は、スクロール面の操作により一つの走行変速段を選択する工程を有する。有利には、本方法は、更に、走行変速段の選択後に、選択された走行変速段に関する情報を有する信号を伝送する工程を有する。更に有利には、本方法は、許可信号を受信するまで、選択された走行変速段に関する情報を有する信号の伝送を阻止する次の工程を有する。本方法により、スクロール面の不注意な操作によって、走行変速段の中の一つの走行変速段の不注意なシフトチェンジ作用を奏する選択を確実に防止することができる。
【0032】
本発明の更なる特徴及び利点は、本発明の主要な細部を図示した図及び図面に基づく本発明の有利な実施例の以下の記述及び請求項から明らかとなる。個々の特徴は、それぞれ本発明の有利な実施構成において、個々に単独で、或いは複数を任意に組み合わせて実現することができる。
【0033】
以下において、添付図面に基づき、本発明の有利な実施例を詳しく説明する。