(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
特許文献1及び2で開示されたシートモジュールは、乗客の快適さを考慮して、背もたれ側において横方向に幅広のスペースを確保し、足先側では横方向の幅が狭くなるような空間を仕切りによって確保している。
このとき、乗客をできるだけ航空機の飛行する方向に正対させることを考慮すると、上記シートモジュールを直列に並べて配置することとなるが、例えば特許文献1のように、前の乗客用のシートモジュールの背もたれ側の一部に後ろの乗客用のシートモジュールの足先側の部分を挿入する収容部を形成することが考えられる。
しかしながら、このようなシートモジュールの場合、上面視で略矩形の空間に対して乗客が対角線方向に横になることとなるため、心理的な快適さを損なうとともに、配置できるシートモジュールの数も限られるため、多くの乗客を乗せることができなくなる。
【0005】
一方、特許文献2のように、シートの背もたれ近傍を幅広とし、ベッドの状態でまっすぐに横になる姿勢となるように、上面視で略L字形のシートモジュールを形成し、これらを飛行機の飛行する方向に対して斜めに直列に並べて配置することも考えられる。
しかしながら、このようなシートモジュールによる配置の場合、シートの足先側には所定の幅が必要となるため、前の乗客用のシートモジュールの側壁部と後ろの乗客用のシートモジュールの足先部との間にデッドスペースが生じてしまい、スペースの使用効率が低下してしまうという問題がある。
【0006】
そこで、本発明の目的は、乗客の快適さを確保するとともに、客室内のスペースを有効活用できる航空機用シート構造体を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上記の目的を達成するために、本発明による航空機用シート構造体は、シート状態とベッド状態との形態変更が可能な
第1シートを含む
第1シート領域、及び前記
第1シート領域の長手方向に対して直交する方向に隣接して突出する
第1突出領域を、複数の仕切り板によって囲繞した第1のシートユニットと、
シート状態とベッド状態との形態変更が可能な
第2シートを含む
第2シート領域、及び前記
第2シート領域の長手方向に対して直交する方向に隣接して突出する
第2突出領域を、複数の仕切り板によって囲繞した第2のシートユニットと、
シート状態とベッド状態との形態変更が可能な
第3シートを含む第3のシートユニットと、
を備え、
前記第1のシートユニットの
第1突出領域と前記第2のシートユニットの
第2突出領域とは、
前記第1シート領域及び前記第2シート領域に関して反対方向に突出するように形成されており、
前記第1のシートユニットの長手方向が、航空機の前後方向と一致するように配置され、且つ前記第2のシートユニットの長手方向が、航空機の前後方向と一致するように配置されるとともに、前記第1のシートユニットの
第1突出領域に前記第2のシートユニットの
第2シート領域の一部を挿入した状態で結合されており、
前記第3のシートユニットは、前記第2のシートユニットに対し2列隣り合わせに配置され、
前記第2シートユニットおける、前記
第2シートの下部空間または前記
第2突出領域の収納部に中間部が収納されており、
取り出した前記中間部を、
前記第2シートユニットおける前記
第2シートの着座部と、
前記第1シートユニットおける前記
第1突出領域の内部に配置された足置部との間に配置することにより、上面の高さがそれぞれ同一となるように前記ベッド状態を形成し、
前記第2のシートユニットと前記第3のシートユニットとの間に配置された前記仕切り板をスライドして開放することにより、前記第2のシートユニットの前記
第2シートと前記第3のシートユニットの前記
第3シートとが連続することを特徴とする。
【0008】
本発明の代表的な一例による航空機用シート構造体は、前記第1のシートユニットの突出領域は底面側に収容部を有し、前記第2のシートユニットのシート領域は突出部を有し、前記第1のシートユニットと前記第2のシートユニットとは、前記収容部に前記突出部を挿入した状態で結合されている。
また、前記第1のシートユニットと前記第2のシートユニットとは、前記長手方向に対して同一側の仕切り板にドアを備える。
このとき、前記第1のシートユニットあるいは前記第2のシートユニットは、前記ドアと反対側の仕切り板にスライド部を備えてもよい。
【発明の効果】
【0009】
本発明によれば、乗客の快適さを確保するとともに、客室内のスペースを有効活用できる。
【発明を実施するための形態】
【0011】
図1は、本発明の代表的な一例による航空機用シート構造体を適用した航空機の客室内のレイアウト例を示す部分上視図である。
図1において、図示上左側が航空機の先頭側であり、右側が航空機の後部側である。
【0012】
図1に示すように、本発明による航空機用シート構造を適用した航空機10には、第1のシートユニット110と第2のシートユニット120とからなる航空機用シート構造体100が、客室内部の航空機の前後方向と一致する方向に直列に複数配置されている。
例えば、航空機用シート構造体100のレイアウトの一例として、航空機10両壁面側(窓側)に1列の航空機用シート構造体100を直接に配置し、中間領域に互いの対向する側面が接する態様で航空機用シート構造体100を2列に直列に配置する。
そして、窓側の航空機用シート構造体100の列と中間領域の航空機用シート構造体100の列との間には、通路130が形成される。
【0013】
図2は、
図1の符号A1で示す領域に適用される航空機用シート構造体の概要を示す上面図である。
図2に示すように、航空機用シート構造体100は、第1のシートユニット110と、当該第1のシートユニット110の後部側に結合された第2のシートユニット120と、を1単位として構成される。
【0014】
第1のシートユニット110は、シート状態とベッド状態との形態変更が可能なシート113を含むシート領域111と、当該シート領域111の長手方向に対して直交する方向に隣接して突出する突出領域112と、を含む。
同様に、第2のシートユニット120は、シート状態とベッド状態との形態変更が可能なシート123を含むシート領域121と、当該シート領域121の長手方向に対して直交する方向に隣接して突出する突出領域122と、を含む。
【0015】
そして、
図2に示すように、第1のシートユニット110の突出領域112と第2のシートユニット120の突出領域122とは、各々のシート領域(111又は121)に関して反対方向に突出している。
このとき、第1のシートユニット110と第2のシートユニット120とは、それぞれのシート領域及び突出領域を同一のサイズで作成することが好ましい。
【0016】
図3は、
図2に示す航空機用シート構造体の一部を構成する第1のシートユニットの概要を示す図であって、
図3Aは上面図であり、
図3Bは斜視図である。
第1のシートユニット110は、
図2に示すシート113を含むシート領域111及び突出領域112の外周を、複数の仕切り板110a〜110dで囲繞することにより構成されている。
【0017】
シート領域111の内部に配置されるシート113は、
図3Bに示すように、着座部113aと、当該着座部113aと離間して配置される足置部113bと、着座部113aと結合された背もたれ部113cと、背もたれ部113cの上端に取り付けられたヘッドレスト113dと、ベッド状態の時に着座部113aと足置部113bとの間に配置される中間部(
図5の符号113e参照)と、を含む。
これらの構成を備えたシート113は、
図3Bに示すシート状態と後述するベッド状態(
図5参照)との間での形態変更が可能となる。
【0018】
シート領域111及び突出領域112を囲繞する複数の仕切り板は、シート領域111の背もたれ部113c側に配置された第1の仕切り板110aと、該第1の仕切り板110aに対向して足置部113b側に配置された第2の仕切り板110bと、シート領域111の側面で上記第1の仕切り板110aと第2の仕切り板110bとを接続する第3の仕切り板110cと、突出領域112の側面で上記第1の仕切り板110aと第2の仕切り板110bとを接続する第4の仕切り板110dと、で構成されている。
また、第3の仕切り板110cの中間部分には、スライド式のドア110eが取り付けられている。
これらの仕切り板110a〜110dにより、第1のシートユニット110は、乗客が個人的な部屋として利用できる内部空間を形成する。
【0019】
突出領域112において、第1の仕切り板110aと第4の仕切り板110dとの結合部近傍に位置する部分には、平面部110fが形成されており、当該平面部110fの床面側には、後述する第2のシートユニット120の突出部(
図4参照)を収容する収容部110gが形成されている。
ここで、
図3Bに示すように、平面部110fは、シート113の着座部113aに隣接して配置されているため、その上面をサイドテーブルとして使用することも可能である。
【0020】
一方、シート領域111において、足置部113bが第2の仕切り板110bの外部に突出した部分には、突出部110hが形成されている。
また、第2の仕切り板110b及び第4の仕切り板110dには、内装品として、メインテーブル114及びサブテーブル115がそれぞれ取り付けられている。
【0021】
図4は、
図2に示す航空機用シート構造体の一部を構成する第2のシートユニットの概要を示す図であって、
図4Aは上面図であり、
図4Bは斜視図である。
第2のシートユニット120は、
図2に示すシート123を含むシート領域121及び突出領域122の外周を、複数の仕切り板120a〜120dで囲繞することにより構成されている。
【0022】
シート領域121の内部に配置されるシート123は、
図4Bに示すように、着座部123aと、当該着座部123aと離間して配置される足置部123bと、着座部123aと結合された背もたれ部123cと、背もたれ部123cの上端に取り付けられたヘッドレスト123dと、ベッド状態の時に着座部123aと足置部123bとの間に配置される中間部(図示せず)と、を含む。
これらの構成を備えたシート123は、第1のシートユニット110と同様に、
図4Bに示すシート状態とベッド状態との間での形態変更が可能となる。
【0023】
シート領域121及び突出領域122を囲繞する複数の仕切り板は、シート領域121の背もたれ部123c側に配置された第1の仕切り板120aと、該第1の仕切り板120aに対向して足置部123b側に配置された第2の仕切り板120bと、突出領域122の側面で上記第1の仕切り板120aと第2の仕切り板120bとを接続する第3の仕切り板120cと、シート領域121の側面で上記第1の仕切り板120aと第2の仕切り板120bとを接続する第4の仕切り板120dと、で構成されている。
また、第3の仕切り板120cの中間部分には、スライド式のドア120eが取り付けられている。
これらの仕切り板120a〜120dにより、第2のシートユニット120は、第1のシートユニット110と同様に、乗客が個人的な部屋として利用できる内部空間を形成する。
【0024】
突出領域122において、第1の仕切り板120aと第3の仕切り板120cとの結合部近傍に位置する部分には、平面部120fが形成されており、当該平面部120fの床面側には、第1のシートユニット110と同様に、収容部120gが形成されている。
ここで、
図4Bに示すように、平面部120fは、シート123の着座部123aに隣接して配置されているため、その上面をサイドテーブルとして使用することも可能である。
【0025】
一方、シート領域121において、足置部123bが第2の仕切り板120bの外部に突出した部分には突出部120hが形成され、上述した第1のシートユニット110の収容部110gに収容される。
また、第2の仕切り板120b及び第4の仕切り板120dには、内装品として、メインテーブル124が取り付けられている。
【0026】
図5は、本発明による航空機用シート構造体に備えられたシートのベッド状態の一例を示す概略図であって、
図3AのB−B断面を斜視した状態を示す。
なお、
図5においては、第1のシートユニット110の場合を例示しているが、第2のシートユニット120についてもその構成及び機能は同様である。
【0027】
図5に示すように、シート113のシート状態では、着座部113aと足置部113bとの間に中間部113eが配置される。
これにより、着座部113aと足置部113bと中間部113eとの上面がそれぞれ同一の高さとなり、乗客がシート113をベッドとして使用可能な状態となる。
ここで、中間部113eは、その一例として、シート状態では第1のシートユニット110の内部空間、例えば着座部113aの下部空間やあるいは突出領域112の収納部(図示せず)等に収納され、ベッド状態で取り出されて配置される。
【0028】
図6は、本発明による航空機用シート構造体のベッド状態の変形例を示す概略図であって、
図3AのB−B断面を斜視した状態を示す。
なお、
図6においては、第1のシートユニット110の場合を例示しているが、第2のシートユニット120についてもその構成及び機能は同様である。
【0029】
図6に示すように、シート113の着座部113aには、シート状態で折り畳まれて収容される折畳部113gが取り付けられており、ベッド状態では折畳部113gが展開されてフラット状態となる。
これにより、着座部113aと足置部113bと折畳部113gとの上面がそれぞれ同一の高さとなり、乗客がシート113をベッドとして使用可能な状態となる。
【0030】
図7は、本発明による航空機用シート構造体に備えられたシートのリクライニング動作の一例を示す
図3AのB−B断面による斜視図であって、
図7Aは第1段階を示し、
図7Bは第2段階を示す。
シート113をリクライニングさせる際には、
図7Aに示すように、着座部113aを前方にスライドさせる(第1段階)。
このとき、着座部113aと背もたれ部113cとが一体でスライドし、背もたれ部113cの後方に空間が生じる。
【0031】
続いて、
図7Bに示すように、背もたれ部113cを上記空間内で着座部113aに対して傾斜させることにより、シート113がリクライニング姿勢となる(第2段階)。
なお、背もたれ部113cの傾斜角度は、段階式に変更する形式でも良いし、あるいは連続的に任意の角度を設定できるような形式でもよい。
【0032】
上記の構成を備えることにより、本発明による航空機用のシート構造体は、乗客一人ひとりのシートを含むシート領域を複数の仕切り板で囲繞するため、その内部空間を疑似的に個室用に使用することができ、乗客の快適さを確保できる。
また、第2のシートユニットのシート領域における足置部に対応する突出部を、第1のシートユニットに形成された収容部に収容した状態で、第1のシートユニットと第2のシートユニットとを連結するため、シートユニットを連結する際にユニット間の隙間をなくすことができ、結果として、客室内のスペースを有効活用できる。
【0033】
図8は、本発明による航空機用シート構造体の変形例を示す概略図であって、
図8Aは部分的な斜視図を示し、
図8Bはベッド状態での上面図を示す。
図8に示すシート構造体の変形例は、
図1の符号A2で示す領域に適用される場合の一例であり、上記
図2〜
図7で示した代表例と共通する構成については同一の符号を付して、再度の説明を省略する。
【0034】
図1に示すように、本発明による航空機用シート構造体100は、例えば航空機の客室における幅方向の中央付近では、直列に配置されたシート構造体を2列隣り合わせに並べて配置される。
そして、
図8に示す変形例では、図示上でシート領域が隣接する第2のシートユニット120の第4の仕切り板120d(すなわち、ドア120eを形成した第3の仕切り板120cと対向する仕切り板)に可動自在のスライド部Sを形成する。
【0035】
このとき、
図8Aに示すように、第4の仕切り板120dのスライド部Sをシート123の着座部123aと同一の高さまで開放するように設定することにより、隣り合う2つの航空機用シート構造体100における第2のシートユニット120のシート123が連続したいわゆる「ダブルベッド」の状態となる。
これにより、
図8Bに示すように、隣り合う2つの「内部空間」を連続的に使用することが可能となり、例えば家族等の2人連れの乗客に対して2人で1部屋を模した空間を提供することができる。
なお、スライド部Sをスライドさせる機構として、着座部123aの高さまで上下方向に動かすものや、あるいは第4の仕切り板120dに沿って横方向に動かすもの等の任意のものを採用できる。
【0036】
また、さらに別の変形例として、
図8Bの図示上で突出領域が隣接する第1のシートユニット110の第4の仕切り板110d(すなわち、ドア110eを形成した第3の仕切り板110cと対向する仕切り板)に可動自在のスライド部Sを形成する。
これにより、隣り合う2つの「内部空間」を突出領域の空間を連続的に共有して使用することが可能となり、個室としてのプライバシーを残しつつ隣り合った2つのシートを繋げて利用できる空間を提供することができる。
【0037】
以上、本発明の代表的な一例による航空機用シート構造体の構成を説明したが、本発明による航空機用シート構造体は上記の具体例に限定されるものではなく、種々の改変を施すことができる。
例えば、上記具体例では、第1及び第2のシートユニットにおいて、第3の仕切り板にドアを形成した場合を例示したが、第3の仕切り板に対向する第4の仕切り板にもドアを形成した上で両側に通路を配置するように構成してもよい。
【0038】
また、
図8に示す変形例において、第1のシートユニット側にスライド部を形成する際に、床面までの開放領域を形成することにより、隣り合う2つのシートユニットの間で往来が可能となるように構成してもよい。
その他にも、本発明の要旨を逸脱しない範囲で上記実施例に種々の改変を施すことも可能である。