(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
前記制御部は、前記情報取得部により取得された情報が前記血液検体において異常な血球が出現していることを示す場合には、前記血液検体の処理後に行う洗浄の洗浄条件を第1の洗浄条件より強化された第2の洗浄条件に変更する、請求項1に記載の塗抹標本作製装置。
前記制御部は、異常白血球または異常赤血球に関する情報に基づいて、前記血液検体の処理後に行う洗浄の洗浄条件を前記第1の洗浄条件より強化された前記第2の洗浄条件に変更する、請求項2に記載の塗抹標本作製装置。
前記制御部は、白血球数または赤血球数に関する情報に基づいて、前記血液検体の処理後に行う洗浄の洗浄条件を前記第1の洗浄条件より強化された前記第2の洗浄条件に変更する、請求項2に記載の塗抹標本作製装置。
前記制御部は、異常な血球の数が、所定の閾値を超えている場合に、前記血液検体の処理後に行う洗浄の洗浄条件を前記第1の洗浄条件より強化された前記第2の洗浄条件に変更する、請求項2〜5のいずれか1項に記載の塗抹標本作製装置。
前記制御部は、異常な血球の存在が示唆される場合に、前記血液検体の処理後に行う洗浄の洗浄条件を前記第1の洗浄条件より強化された前記第2の洗浄条件に変更する、請求項2〜7のいずれか1項に記載の塗抹標本作製装置。
前記制御部は、前記情報取得部が取得した前記血液検体のヘマトクリット値に基づいて、前記血液検体を延ばす展開条件を変更して塗抹標本を作製する制御を行うように構成され、
前記情報取得部は、前記血液検体のヘマトクリット値および異常な血球の出現に関する情報を合わせて取得するように構成されている、請求項2〜8のいずれか1項に記載の塗抹標本作製装置。
前記制御部は、前記血液処理部の洗浄が複数回行われるように、前記血液検体の処理後に行う洗浄の洗浄条件を前記第1の洗浄条件より強化された前記第2の洗浄条件に変更する、請求項2〜9のいずれか1項に記載の塗抹標本作製装置。
前記制御部は、前記第1の洗浄条件の洗浄動作において用いられる洗浄液とは異なる塩素を含む洗浄液を用いて洗浄が行われるように、前記血液検体の処理後に行う洗浄の洗浄条件を前記第1の洗浄条件より強化された前記第2の洗浄条件に変更する、請求項2〜10のいずれか1項に記載の塗抹標本作製装置。
前記制御部は、前記血液検体において異常な血球が出現している場合には、前記第2の洗浄条件の洗浄動作における洗浄強化の度合いを変更するように、前記血液検体の処理後に行う洗浄の洗浄条件を前記第1の洗浄条件より強化された前記第2の洗浄条件に変更する、請求項2〜11のいずれか1項に記載の塗抹標本作製装置。
前記制御部は、洗浄液の量を前記第1の洗浄条件の洗浄動作における液量よりも増やすように、前記血液検体の処理後に行う洗浄の洗浄条件を前記第1の洗浄条件より強化された前記第2の洗浄条件に変更する、請求項2〜12のいずれか1項に記載の塗抹標本作製装置。
前記制御部は、洗浄時間を前記第1の洗浄条件の洗浄動作における洗浄時間よりも長くするように、前記血液検体の処理後に行う洗浄の洗浄条件を前記第1の洗浄条件より強化された前記第2の洗浄条件に変更する、請求項2〜13のいずれか1項に記載の塗抹標本作製装置。
前記情報取得部は、前記血液検体中の血球を分析するための血球分析装置の進捗を管理するためのホストコンピュータから異常な血球の出現に関する情報を取得する、請求項2〜15のいずれか1項に記載の塗抹標本作製装置。
血液検体を処理して前記血液検体の塗抹標本を作製するための血液処理部および前記血液検体の処理後に前記血液処理部を洗浄する洗浄部を備える塗抹標本作製装置における前記血液処理部の洗浄方法であって、
前記血液検体に含まれる血球の情報に基づいて、所定の場合に、前記血液検体の処理後に行う洗浄の洗浄条件を変更する、洗浄方法。
【発明を実施するための形態】
【0011】
以下、実施形態を図面に基づいて説明する。
【0012】
図1〜
図7を参照して、本実施形態による塗抹標本作製装置30の構成について説明する。
【0013】
(塗抹標本作製装置の概要)
図1に示すように、塗抹標本作製装置30は、血液処理部31と、洗浄部32と、情報取得部33と、制御部34とを備えている。塗抹標本作製装置30は、血液検体の塗抹標本を作製するための装置である。塗抹標本作製装置30は、たとえば、塗抹標本を作製するオーダを受けた場合や、外部の装置20aにより塗抹標本を作製する必要があると判断された場合に、血液検体の塗抹標本を作製する。塗抹標本とは、血球を観察するために血液検体をスライドガラスに塗りつけた標本である。塗抹標本における血液検体は、公知の染色液により染色処理を施してもよいが、染色処理は必須ではない。
【0014】
血液処理部31は、血液検体を処理して血液検体の塗抹標本を作製するために設けられている。血液処理部31は、塗抹標本を作製するための処理を血液検体に施す。
【0015】
洗浄部32は、血液処理部31を洗浄するために設けられている。洗浄部32は、血液検体の処理後に第1の洗浄条件で血液処理部31を洗浄できる。第1の洗浄条件とは、通常時の洗浄条件を示す。洗浄部32は、血液検体の処理後に第1の洗浄条件よりも洗浄条件が強化された第2の洗浄条件で血液処理部31を洗浄できる。
【0016】
情報取得部33は、外部から情報を取得することができる。情報取得部33は、血液検体についての異常な血球の出現に関する情報を外部の装置20aから取得できる。外部の装置20aは、たとえば、血球分析装置20またはホストコンピュータ50などの装置であってもよい。情報取得部33は、たとえば、信号を入出力させるためのインターフェース部である。このように構成すれば、たとえば、制御部34は情報取得部33を介して、異常な血球の出現に関する情報を容易に取得できる。
【0017】
制御部34は、CPUを含んでいる。制御部34は、血液処理部31および洗浄部32の動作を制御するために設けられている。制御部34は、情報取得部33から情報を取得できる。制御部34は、血液検体において異常な血球が出現している場合には、血液検体の処理後に行う洗浄の洗浄条件を第1の洗浄条件より強化された第2の洗浄条件に変更する。制御部34は、血液検体において異常な血球が出現している場合には、第2の洗浄条件により洗浄部32の動作を制御する。
【0018】
制御部34は、たとえば、血液検体についての異常な血球の出現に関する情報としての異常な血球数に関する情報を取得し、取得した情報に基づいて、血液検体の処理後に行う洗浄の洗浄条件を第1の洗浄条件より強化された第2の洗浄条件に変更できる。異常な血球数に関する情報とは、異常な血球数そのものの情報でもよい。
【0019】
また、制御部34は、たとえば、血液検体についての異常な血球の出現に関する情報としての異常血球出現フラグを取得し、血液検体の処理後に行う洗浄の洗浄条件を第1の洗浄条件より強化された第2の洗浄条件に変更できる。
【0020】
以上の構成により、急性骨髄性白血病患者の検体に含まれる芽球など健常者の末梢血中には通常含まれない血球のような、僅かに存在する場合でも診断に影響を及ぼすような血球を含む血液検体を血液処理部31により処理した場合において、第1の洗浄条件から洗浄条件が強化された第2の洗浄条件に洗浄条件を変更して洗浄動作を行える。これにより、僅かに存在する場合でも診断に悪影響を及ぼす異常な血球のキャリーオーバーを効果的に抑制できるとともに、塗抹標本作製装置30の処理能力を向上させられる。また、健常者の検体に対しても、例えば急性骨髄性白血病患者の検体に対しての洗浄と同様、一律に強力な洗浄動作を行う場合に比べて、塗抹標本の作製に要する時間が増大するのを抑制し、かつ、洗浄液等の試薬消費を抑制できる。したがって、塗抹標本におけるキャリーオーバーの影響を抑えるとともに、塗抹標本作製装置30の処理能力を向上させ、かつ、試薬消費を抑制できる。
【0021】
(塗抹標本作製装置の詳細な構成)
以下、
図2以降を参照して、
図1に示した塗抹標本作製装置30の好ましい実施形態の構成について具体的に説明する。
【0022】
図2に示すように、たとえば、塗抹標本作製装置30は、血球分析装置20とともに血液検体処理システム10に組み込まれている。血液検体処理システム10は、血球分析装置20および塗抹標本作製装置30に加えて、搬送装置40およびホストコンピュータ50を備えていてもよい。説明の便宜上、搬送装置40と、ホストコンピュータ50とを先に説明し、その後、血球分析装置20と、塗抹標本作製装置30との説明をする。
【0023】
搬送装置40は、血液検体を収容した試験管を搬送するための装置である。搬送装置40は、搬送レーン41と、通信部42とを備えている。搬送装置40は、搬送レーン41上の血液検体を収容した試験管を搬送できる。通信部42は、たとえば、信号を入出力させるためのインターフェース部である。
【0024】
ホストコンピュータ50は、病院や検査機関等の施設に設置されており、施設内に設置された複数台の血球分析装置に対して発行すべき測定オーダと、測定オーダにしたがって血球分析装置が検体を分析して得た分析結果とを統合して管理するコンピュータである。また、ホストコンピュータ50は、施設内に設置された複数台の血球分析装置に接続され、施設内の臨床検査業務の進捗を管理している。ホストコンピュータ50は、通信部51および52と、制御部53とを備えている。制御部53は、CPUを含んでいる。ホストコンピュータ50は、例えば、LIS(Laboratory Information System)であり、操作者から入力された測定オーダ、および、電子カルテシステム等の他の装置から送信された測定オーダを受け付け、測定オーダを記憶および管理する。ホストコンピュータ50は、血球分析装置20からのオーダ要求を受け付け、要求された測定オーダを血球分析装置20へ送信する。ホストコンピュータ50は、血球分析装置20から血球の分類および血球の計数などの分析結果を受信し、分析結果に関する情報を記憶および管理できる。また、ホストコンピュータ50は、塗抹標本作製装置30および血球分析装置20に通信可能に接続され、塗抹標本作製装置30の塗沫標本作製の進捗や血球分析装置20の分析の進捗を管理できる。
【0025】
(血球分析装置の構成)
血球分析装置20は、塗抹標本作製装置30の外部に配置されている。血球分析装置20は、血液検体の血球を分析するために設けられている。血球分析装置20は、たとえば、多項目血球分析装置である。詳細には、血球分析装置20は、血液検体中の血球を分類し、計数するための血球計数装置である。血球分析装置20は、血液検体の血球を分析した結果、塗抹標本作製装置30に塗抹標本を作製させるか否かを判断する。
【0026】
血球分析装置20は、測定部60と、分析部70とを備えている。
【0027】
測定部60は、血液検体の測定を行うために設けられている。測定部60は、検出部61と、通信部62とを備えている。測定部60は、通信部62により、分析部70に接続されている。通信部62は、たとえば、信号を入出力させるためのインターフェース部である。なお、
図2では、測定部60が2台設置された例を示したが、測定部60の設置台数は適宜変更できる。また、測定部60は、同仕様の装置であってもよいし、異なる仕様の装置であってもよい。
【0028】
検出部61は、搬送装置40により吸引処理位置600に搬送された血液検体の測定を行う。検出部61は、赤血球の検出(RBC検出)および血小板の検出(PLT検出)を、シースフローDC検出法により行える。検出部61は、血液中の血色素の検出(HGB検出)を、SLS−ヘモグロビン法により行える。検出部61は、白血球の検出(WBC検出)を、半導体レーザを用いたフローサイトメトリー法により行える。検出部61で得られた測定データは、通信部62を介して、分析部70によって取得される。
【0029】
分析部70は、通信部71〜73と、制御部74とを備えている。制御部74は、CPUを含んでいる。分析部70と測定部60とは、互いに、情報の送受信ができるように通信部71と通信部62とが接続されている。通信部71は、2台の測定部60における通信部62の各々に接続されている。分析部70と搬送装置40とは、互いに、情報の送受信ができるように通信部72と通信部42とが接続されている。分析部70とホストコンピュータ50とは、互いに、情報の送受信ができるように通信部73と通信部51とが接続されている。
【0030】
分析部70は、複数の血球分析装置20に接続できる装置であり、血球分析装置20の動作を制御できる装置である。また、分析部70は、測定部60から取得した血液検体に含まれる血球に関して散乱光強度、蛍光強度等に基づいて検体中に含まれる血球を分類し、且つ、種類毎に血球数を計数できる装置である。分析部70は、例えば、正常な白血球数、正常な赤血球数、および異常な血球数を計数することができる。
【0031】
異常な血球とは、健常者の末梢血中には通常含まれない血球細胞のことであり、たとえば、異常白血球および異常赤血球が挙げられる。異常白血球とは、たとえば、幼若球、異型リンパ球、形質細胞等である。幼若球とは、前骨髄球、骨髄球、後骨髄球、芽球を含む概念である。異常赤血球とは、たとえば、有核赤血球、鎌状赤血球等である。
【0032】
分析部70は、搬送装置40を制御できる。分析部70は、測定部60により検体の吸引処理が行われる吸引処理位置600、および、塗抹標本作製装置30により検体の吸引処理が行われる吸引処理位置300に、血液検体が収容された試験管を搬送するように搬送装置40を動作させるための信号を、搬送装置40に送信できる。
【0033】
分析部70は、測定部60から測定データを受信し血液検体の分析を行うために設けられている。具体的には、分析部70の制御部74は、血液検体中の測定部60から取得した測定データに基づき、備えているプログラムを用いて、正常な白血球数、正常な赤血球数、異常白血球数、または、異常赤血球数等を分析する。また、分析部70は、血液検体中の測定部60から取得した測定データに基づき、血液検体中の正常な白血球数、正常な赤血球数、異常白血球数、または、異常赤血球数が、設定されている正常な白血球数、正常な赤血球数、異常白血球数、または、異常赤血球数がそれぞれ対応する閾値よりも大きいか否かを判断する。なお、本明細書では、白血球数とは、正常な白血球数を示し、赤血球数とは、正常な赤血球数を示す。
【0034】
分析部70の制御部74は、異常白血球数、および、異常赤血球数の閾値を、たとえば0に設定している。これにより、制御部74は、測定部60から受信した測定部60の測定結果に基づいて、異常白血球および異常赤血球の有無を分析できる。また、分析部70の制御部74は、測定部60から受信した測定部60の測定結果に基づいて、白血球数および赤血球数を計数する。制御部74は、測定部60から受信した測定部60の測定結果に基づいて、たとえば、血液検体のヘマトクリット値、血小板数、ヘモグロビン量などの情報も取得できる。
【0035】
塗抹標本作製装置30の外部装置としての血球分析装置20は、異常な血球の出現に関する情報を生成できる。詳細には、分析部70の制御部74が異常な血球の出現に関する情報を生成できる。
【0036】
制御部74は、たとえば、血液検体の血球を分析した結果に基づいて、異常な血球の出現に関する情報としての異常な血球数を生成してもよい。
【0037】
また、制御部74は、血液検体の血球を分析した結果に基づいて、異常な血球の出現に関する情報としての異常な血球の出現を示唆する情報を生成してもよい。制御部74は、たとえば、異常な血球の出現を示唆する情報としての異常血球出現フラグを生成してもよい。具体的には、制御部74は、血球分析装置20の分析結果である白血球数、赤血球数、異常白血球数、または、異常赤血球数のうち少なくとも1つが、設定されている白血球数、赤血球数、異常白血球数、または、異常赤血球数に対応する閾値よりも大きい場合には、異常血球出現フラグを生成してもよい。
【0038】
また、制御部74は、血液検体の分析結果に異常な血球の出現に関する情報が含まれている場合に、塗抹標本作製装置30の洗浄動作を第1の洗浄動作から第2の洗浄動作に変更するための洗浄条件変更命令情報を生成してもよい。具体的には、制御部74は、血球分析装置20の分析結果である白血球数、赤血球数、異常白血球数、または、異常赤血球数のうち少なくとも1つが、設定されている白血球数、赤血球数、異常白血球数、または、異常赤血球数に対応する閾値よりも大きい場合には、洗浄条件変更命令情報を生成する。
【0039】
異常な血球の出現に関する情報または洗浄条件変更命令情報は、ホストコンピュータ50を介して、分析部70から塗抹標本作製装置30に送信される。
【0040】
また、ホストコンピュータ50が、洗浄条件変更命令情報を生成してもよい。具体的には、ホストコンピュータ50が、白血球数、赤血球数、異常白血球数、または、異常赤血球数に対応する閾値の情報を保有しており、血球分析装置20の分析結果である白血球数、赤血球数、異常白血球数、または、異常赤血球数を血球分析装置20から取得する。そして、ホストコンピュータ50が、白血球数、赤血球数、異常白血球数、または、異常赤血球数のうち少なくとも1つが、設定されている白血球数、赤血球数、異常白血球数、または、異常赤血球数に対応する閾値よりも大きい場合に、洗浄条件変更命令情報を生成してもよい。また、ホストコンピュータ50は、白血球数、赤血球数、異常白血球数、または、異常赤血球数に対応する閾値を変更して設定できる。
【0041】
また、この洗浄条件変更命令情報を用いることなく、洗浄条件が変更されてもよい。たとえば、塗抹標本作製装置30の制御部34が、血球分析装置20が生成した異常な血球の出現を示唆する情報としての異常血球出現フラグをホストコンピュータ50を介して血球分析装置20から取得する。または、塗抹標本作製装置30の制御部34が、ホストコンピュータ50が生成した異常な血球の出現を示唆する情報としての異常血球出現フラグをホストコンピュータ50から取得する。そして、制御部34が、異常血球出現フラグに基づいて、洗浄条件を第1の洗浄条件から第2の洗浄条件に変更してもよい。
【0042】
また、塗抹標本作製装置30の制御部34が、たとえば、白血球数、赤血球数、異常白血球数、または、異常赤血球数に対応する閾値の情報を保有しており、血球分析装置20の分析結果である白血球数、赤血球数、異常白血球数、または、異常赤血球数をホストコンピュータ50を介して血球分析装置20から取得する。そして、制御部34が、白血球数、赤血球数、異常白血球数、または、異常赤血球数のうち少なくとも1つが、設定されている白血球数、赤血球数、異常白血球数、または、異常赤血球数に対応する閾値よりも大きい場合に、洗浄条件を第1の洗浄条件から第2の洗浄条件に変更してもよい。また、制御部34は、白血球数、赤血球数、異常白血球数、または、異常赤血球数に対応する閾値を変更して設定できる。
【0043】
なお、分析部70は、白血球数、赤血球数、異常白血球数、または、異常赤血球数のうち少なくとも1つの血球数に対応する閾値を変更して設定できる。具体的には、分析部70の制御部74は、上記の少なくとも1つの血球数に対応する閾値を個別に変更して設定できる。これにより、洗浄動作の洗浄条件を変更してするための条件を適切な数値に設定することができる。
【0044】
図2に示す例では、1台の血球分析装置20が設置されているが、設置される血球分析装置20の台数は適宜変更できる。
【0045】
(塗抹標本作製装置の構成)
塗抹標本作製装置30は、情報取得部33および制御部34に加え、血液処理部31としての吸引部310と、分注部320と、洗浄部32としての第1洗浄部330と、第2洗浄部340とを備えていてもよい。
【0046】
情報取得部33は、ホストコンピュータ50と塗抹標本作製装置30とが互いに情報の送受信ができるように、通信部52と接続されている。
【0047】
図3に示すように、吸引部310と分注部320とは、ポンプ380に接続されている。ポンプ380は、たとえば、シリンジポンプである。吸引部310とポンプ380との間には、流路を開閉するためのバルブ370aが設けられている。分注部320とポンプ380との間には、流路を開閉するためのバルブ370bが設けられている。バルブ370aとバルブ370bとは、独立して開閉できる。なお、
図3は、吸引部310および分注部320を、それぞれ、第1洗浄部330および第2洗浄部340により洗浄する状態を示した図である。
【0048】
吸引部310は、図示しないハンド部材によって吸引処理位置300から塗抹標本作製装置30側に搬送された試験管から血液を吸引するために設けられている。吸引部310は、たとえば、管状部材により形成されている。
【0049】
吸引部310は、垂直駆動部311により移動されるように構成されてもよい。吸引部310は、制御部34が垂直駆動部311を制御することにより、垂直方向に移動される。洗浄時には、吸引部310は、先端部310aが第1洗浄部330の後述する外面洗浄部332に対応する位置に配置されるように降下される。
【0050】
第1洗浄部330は、吸引部310を洗浄するために設けられている。第1洗浄部330は、たとえば、内面洗浄部331と、外面洗浄部332とを備えている。
【0051】
内面洗浄部331は、吸引部310における先端部310aと反対側の部分に接続されている。洗浄液が、内面洗浄部331から吸引部310の内部に流されることにより、吸引部310の内面が洗浄される。
【0052】
外面洗浄部332は、吸引部310の下方に配置されている。外面洗浄部332は、たとえば、洗浄液吐出部332aを含む。洗浄液吐出部332aから、吸引部310の外面に向け洗浄液が吐出されることにより、吸引部310の外面が洗浄される。外面洗浄部332は、内面洗浄部331および洗浄液吐出部332aから出され洗浄に用いられた後の排液を、図示しない排液部から排出できるように構成されてもよい。
【0053】
分注部320は、吸引部310が吸引した血液検体を塗抹位置のスライドガラス500(
図2参照)に分注するために設けられている。分注部320は、たとえば、管状部材により形成されている。
【0054】
分注部320は、水平駆動部321により移動されるように構成されてもよい。分注部320は、制御部34が水平駆動部321を制御することにより、水平方向に移動される。洗浄時には、分注部320は、平面視において、第2洗浄部340の後述する外面洗浄部342に対応する位置に移動される。
【0055】
第2洗浄部340は、分注部320を洗浄するために設けられている。第2洗浄部340は、たとえば、内面洗浄部341と、外面洗浄部342とを備えている。
【0056】
内面洗浄部341は、分注部320における先端部320aと反対側の部分に接続されている。洗浄液が、内面洗浄部341から分注部320の内部に流されることにより、分注部320の内面が洗浄される。
【0057】
外面洗浄部342は、たとえば、洗浄液吐出部342aを含む。洗浄液吐出部342aから、分注部320の外面に向け洗浄液が吐出されることにより、分注部320の外面が洗浄される。外面洗浄部342は、垂直駆動部343により移動されるように構成されてもよい。外面洗浄部342は、制御部34が垂直駆動部343を制御することにより、垂直方向に移動される。洗浄時には、外面洗浄部342は、分注部320の先端部320aの位置まで上昇される。外面洗浄部342は、内面洗浄部341および洗浄液吐出部342aから出され、洗浄に用いられた後の排液を、図示しない排液部から排出できるように構成されてもよい。
【0058】
また、
図4に示すように、塗抹標本作製装置30の血液処理部31は、展開部材350を備えていてもよい。塗抹標本作製装置30の洗浄部32は、第3洗浄部360を備えている。
図4は、展開部材350を第3洗浄部360により洗浄する状態を示した図である。
【0059】
展開部材350は、スライドガラス500(
図2参照)に滴下された血液検体を延ばすために設けられている。展開部材350は、たとえば、引きガラスにより形成されている。展開部材350は、展開部材350の支持部350aの先端に配置されている。展開部材350は、制御部34が血球分析装置20から取得した血液検体のヘマトクリット値に基づいて、血液検体を延ばす展開条件を変更して塗抹標本を作製するように、制御部34により動作が制御される。
【0060】
展開部材350の支持部350aは、垂直駆動部351および水平駆動部352に接続されている。展開部材350は、制御部34が垂直駆動部351および水平駆動部352の各々を制御することにより、垂直方向および水平方向に移動される。洗浄時には、展開部材350は、第3洗浄部360に溜められた液中まで降下される。
【0061】
第3洗浄部360は、展開部材350を洗浄するために設けられている。第3洗浄部360は、たとえば、溜めた洗浄液を用いて展開部材350に対して超音波洗浄を行う。第3洗浄部360は、展開部材350の洗浄が終了すると洗浄液を交換できるように構成されている。
【0062】
第1洗浄部330、第2洗浄部340および第3洗浄部360は、1回の洗浄動作において、予め設定された一定時間の洗浄動作を行うように、制御部34により制御される。
【0063】
(塗抹標本作製装置の制御部の構成)
図2に戻り、塗抹標本作製装置30の制御部34は、たとえば、異常な血球の出現に関する情報を取得し、異常な血球の出現に関する情報に基づいて、血液検体の処理後に行う洗浄動作の洗浄条件を変更して洗浄部32の動作を制御するように構成されている。また、制御部34は、たとえば、洗浄条件変更命令情報を取得し、洗浄条件変更命令情報に基づいて、血液検体の処理後に行う洗浄動作の洗浄条件を変更して洗浄部32の動作を制御してもよい。
【0064】
制御部34は、異常な血球の数が、所定の閾値を超えている場合に、血液検体の処理後に行う洗浄の洗浄条件を第1の洗浄条件より強化された第2の洗浄条件に変更する。このように構成すれば、簡易な制御処理により洗浄条件を第1の洗浄条件より強化された第2の洗浄条件に変更できる。
【0065】
制御部34は、異常な血球の存在が示唆される場合に、血液検体の処理後に行う洗浄の洗浄条件を第1の洗浄条件より強化された第2の洗浄条件に変更できる。詳細には、制御部34は、異常血球出現フラグに基づいて、血液検体の処理後に行う洗浄の洗浄条件を第1の洗浄条件より強化された第2の洗浄条件に変更できる。これにより、僅かに存在する場合でも診断に悪影響を及ぼす異常な血球のキャリーオーバーを効果的に抑制しつつ、塗抹標本の作製に要する時間が増大するのを抑制し、かつ、洗浄液等の試薬消費を抑制できる。
【0066】
制御部34は、異常白血球または異常赤血球に関する情報に基づいて、血液検体の処理後に行う洗浄動作の洗浄条件を第1の洗浄条件より強化された第2の洗浄条件に変更する。たとえば、制御部34は、異常白血球に関する情報に基づいて、血液検体の処理後に行う洗浄動作の洗浄条件を変更して洗浄部32の動作を制御して、血液処理部31を洗浄する処理を行える。これにより、健常者の末梢血中には通常含まれない異常白血球を含んだ血液検体の塗抹標本を作製した場合でも、洗浄部32により、血液処理部31の洗浄を十分に行うことができるので、異常白血球を含む血液検体が次の塗抹標本にキャリーオーバーするのを抑制することができる。なお、異常白血球に関する情報とは、血球分析装置20の異常な血球の出現に関する情報の一例であり、たとえば、異常白血球の数に関する情報、または、異常白血球の数に基づく異常血球出現フラグである。
【0067】
また、異常赤血球の塗抹標本を作製した場合にも、異常赤血球に関する情報に基づいて洗浄条件を第1の洗浄条件より強化された第2の洗浄条件に変更して、血液処理部31を洗浄する処理が制御部34により行われるので、上記のように異常白血球を含んだ血液検体の塗抹標本を作製した場合と同様、異常赤血球を含む血液検体が次の塗抹標本にキャリーオーバーするのを抑制することができる。異常赤血球に関する情報とは、血球分析装置20の異常な血球の出現に関する情報の一例であり、たとえば、異常赤血球の数に関する情報、または、異常赤血球の数に基づく異常血球出現フラグである。
【0068】
制御部34は、血液検体において異常な血球が出現している場合には、血液検体の処理後に行う洗浄の洗浄条件を第1の洗浄条件より強化された第2の洗浄条件に変更して第1洗浄部330の動作を制御できる。制御部34は、異常な血球の出現に関する情報に基づいて、第1洗浄部330による吸引部310の洗浄動作における洗浄条件を変更して、第1洗浄部330の動作を制御するように構成されている。制御部34は、たとえば、異常白血球に関する情報に基づいて、血液検体処理後に行う洗浄動作の洗浄条件を変更して第1洗浄部330の動作を制御して、吸引部310を洗浄する処理を行う。また、制御部34は、洗浄条件変更命令情報に基づいて、第1洗浄部330による吸引部310の洗浄動作における洗浄条件を変更して、第1洗浄部330の動作を制御してもよい。これにより、健常者の末梢血中には通常含まれない異常白血球を含む塗抹標本を作製した場合でも、第1洗浄部330により、吸引部310の洗浄を十分に行うことができ、異常白血球が次の血液検体の塗抹標本にキャリーオーバーするのを効果的に抑制することができる。
【0069】
制御部34は、血液検体において異常な血球が出現している場合には、血液検体の処理後に行う洗浄の洗浄条件を第1の洗浄条件より強化された第2の洗浄条件に変更して第2洗浄部340の動作を制御できる。制御部34は、異常な血球の出現に関する情報に基づいて、第2洗浄部340による分注部320の洗浄動作における洗浄条件を変更して、第2洗浄部340の動作を制御するように構成されている。制御部34は、たとえば、異常白血球に関する情報に基づいて、血液検体処理後に行う洗浄動作の洗浄条件を変更して第2洗浄部340の動作を制御して、分注部320を洗浄する処理を行う。また、制御部34は、洗浄条件変更命令情報に基づいて、第2洗浄部340による分注部320の洗浄動作における洗浄条件を変更して、第2洗浄部340の動作を制御してもよい。これにより、健常者の末梢血中には通常含まれない異常白血球を含む塗抹標本を作製した場合でも、第2洗浄部340により、分注部320の洗浄を十分に行うことができ、異常白血球が次の血液検体の塗抹標本にキャリーオーバーするのを効果的に抑制することができる。
【0070】
制御部34は、血液検体において異常な血球が出現している場合には、血液検体の処理後に行う洗浄の洗浄条件を第1の洗浄条件より強化された第2の洗浄条件に変更して第3洗浄部360の動作を制御できる。制御部34は、異常な血球の出現に関する情報に基づいて、第3洗浄部360による展開部材350の洗浄動作における洗浄条件を変更して、第3洗浄部360の動作を制御するように構成されている。制御部34は、たとえば、異常白血球に関する情報に基づいて、血液検体処理後に行う洗浄動作の洗浄条件を変更して第3洗浄部360の動作を制御して、展開部材350を洗浄する処理を行う。また、制御部34は、洗浄条件変更命令情報に基づいて、第3洗浄部360による展開部材350の洗浄動作における洗浄条件を変更して、第3洗浄部360の動作を制御してもよい。これにより、健常者の末梢血中には通常含まれない異常白血球を含む塗抹標本を作製した場合でも、第3洗浄部360により、展開部材350の洗浄を十分に行うことができ、異常白血球が次の血液検体の塗抹標本にキャリーオーバーするのを効果的に抑制することができる。
【0071】
また、制御部34は、異常白血球としての幼若球に関する情報に基づいて、血液検体の処理後に行う洗浄の洗浄条件を第1の洗浄条件より強化された第2の洗浄条件に変更してもよい。これにより、幼若球を含む塗抹標本を作製した場合でも、幼若球を含む血液検体が次の血液検体の塗抹標本にキャリーオーバーするのを効果的に抑制することができる。
【0072】
制御部34は、異常白血球としての芽球に関する情報に基づいて、血液検体の処理後に行う洗浄の洗浄条件を第1の洗浄条件より強化された第2の洗浄条件にしてもよい。芽球の塗抹標本を作製した場合でも、芽球を含む血液検体が次の塗抹標本にキャリーオーバーするのを効果的に抑制することができる。
【0073】
また、制御部34は、異常白血球または異常赤血球ではない白血球または赤血球の数に関する情報に基づいて、血液検体の処理後に行う洗浄の洗浄条件を第1の洗浄条件より強化された第2の洗浄条件に変更して洗浄部32の動作を制御してもよい。これにより、上記のように異常白血球または異常赤血球の塗抹標本を作製した場合と同様、白血球または赤血球の数が異常である塗抹標本を作製した場合にも、洗浄動作を十分に行うことができるので、前の血液検体の白血球または赤血球が次の塗抹標本にキャリーオーバーするのを抑制することができる。
【0074】
制御部34は、白血球数、赤血球数、異常白血球数、または、異常赤血球数のうち少なくとも1つの血球数が、対応する閾値を超えていることに基づいて、血液検体処理後に行う洗浄動作の洗浄条件を変更して洗浄部32の動作を制御してもよい。これにより、容易に洗浄条件を変更することができる。
【0075】
(情報取得部による情報の取得)
塗抹標本作製装置30の情報取得部33は、血球分析装置20が生成した洗浄条件変更命令情報を取得してもよい。情報取得部33は、血球分析装置20が生成した洗浄条件変更命令情報を、血球分析装置20からホストコンピュータ50を介して取得してもよい。制御部34は、情報取得部33により取得した洗浄条件変更命令情報に基づいて、洗浄条件を第1の洗浄条件より強化された第2の洗浄条件に変更できる。これにより、制御部34の制御負荷を抑制しつつ、洗浄を十分に行うことができる。
【0076】
また、情報取得部33は、血球分析装置20が生成した異常な血球の出現に関する情報を血球分析装置20からホストコンピュータ50を介して取得してもよい。これにより、制御部34の制御負荷を抑制しつつ、洗浄を十分に行うことができる。
【0077】
また、情報取得部33は、ホストコンピュータ50が生成した洗浄条件変更命令情報をホストコンピュータ50から取得してもよい。
【0078】
情報取得部33は、血球分析装置20の分析部70またはホストコンピュータ50によって塗抹標本作製装置30に塗抹標本を作製させるか否かが判断されて生成された塗抹標本の作製命令情報と、洗浄条件変更命令情報または異常な血球の出現に関する情報と、を合わせて取得してもよい。これにより、情報取得部33が、塗抹標本の作製命令情報と、洗浄条件変更命令情報または異常な血球の出現に関する情報と、を別々に取得する場合よりも、情報を取得する処理を簡素化できる。
【0079】
情報取得部33は、血液検体のヘマトクリット値と、洗浄条件変更命令情報または異常な血球の出現に関する情報とを血球分析装置20から合わせて取得してもよい。これにより、制御部34が、血液検体のヘマトクリット値と、洗浄条件変更命令情報または異常な血球の出現に関する情報とを別々に取得する場合よりも、情報を取得する処理を簡素化できる。
【0080】
(洗浄条件を変更する詳細な例)
制御部34は、洗浄条件変更命令情報または異常な血球の出現に関する情報に基づいて、血液検体の処理後に行う洗浄動作の洗浄条件を通常時の第1の洗浄条件より強化された第2の洗浄条件に変更して、洗浄部32の動作を制御するように構成されている。なお、第1の洗浄条件において用いられる洗浄液は、防腐剤および界面活性剤を含有する水である。第1の洗浄条件において用いられる洗浄液は、実質的に塩素を含んでいない。また、第1の洗浄条件では、この洗浄液を用い、1回の洗浄が行われる。
【0081】
たとえば、制御部34は、血液処理部31の洗浄を複数回行うように、血液検体の処理後に行う洗浄の洗浄条件を第1の洗浄条件より強化された第2の洗浄条件に変更して洗浄部32の動作を制御する。好ましくは、制御部34は、洗浄動作を複数回行うように、第1洗浄部330、第2洗浄部340および第3洗浄部360の動作を制御して、吸引部310、分注部320および展開部材350のそれぞれを洗浄する処理を行う。第2の洗浄条件における洗浄回数は、第1の洗浄条件における洗浄回数より多い回数であり、たとえば2回である。洗浄を行う回数は、3回以上であってもよい。これにより、たとえば、異常白血球の塗抹標本を作製した場合でも、容易な方法で、第1洗浄部330、第2洗浄部340および第3洗浄部360により吸引部310、分注部320および展開部材350の洗浄を十分に行うことができる。その結果、容易に次の塗抹標本にキャリーオーバーするのを抑制することができる。
【0082】
(洗浄条件を変更する他の例)
第2の洗浄条件において、通常時の第1の洗浄条件よりも強化して洗浄するための方法は、洗浄回数を変更する以外にも種々の方法を採用することができる。
【0083】
制御部34は、第1の洗浄条件の洗浄動作において用いられる洗浄液とは異なる塩素を含む洗浄液を用いて洗浄が行われるように、血液検体の処理後に行う洗浄の洗浄条件を第1の洗浄条件より強化された第2の洗浄条件に変更してもよい。制御部34は、たとえば、塩素を含む洗浄液を用いて、第1洗浄部330および第2洗浄部340の動作を制御して、吸引部310および分注部320のそれぞれを洗浄する処理を行ってもよい。制御部34は、たとえば、塗抹標本作製装置30の緊急検体セット部300aに塩素を含む洗浄液を収容する試験管がセットされている場合に、異常な血球の出現に関する情報または洗浄条件変更命令情報に基づいて、異常白血球の血液検体を吸引および分注した、吸引部310および分注部320の各々を、塩素を含む洗浄液を用いて洗浄する処理を行ってもよい。塩素を含む洗浄液は、吸引部310から吸引され、分注部320から吐出される。これにより、異常白血球の塗抹標本を作製した場合でも、確実に、吸引部310および分注部320の洗浄を行うことができる。その結果、容易に異常白血球の血液検体が次の塗抹標本にキャリーオーバーするのを抑制することができる。
【0084】
また、制御部34は、洗浄液の量を第1の洗浄条件の洗浄動作における液量よりも増やすように、血液検体の処理後に行う洗浄の洗浄条件を第1の洗浄条件より強化された第2の洗浄条件に変更してもよい。制御部34は、たとえば、洗浄液の量を通常時の2倍の量にして、第1洗浄部330、第2洗浄部340および第3洗浄部360により、吸引部310、分注部320および展開部材350のそれぞれを洗浄する処理を行ってもよい。これにより、異常白血球の塗抹標本を作製した場合でも、確実に、第1洗浄部330、第2洗浄部340および第3洗浄部360により吸引部310、分注部320および展開部材350の各々の洗浄を十分に行うことができる。
【0085】
また、制御部34は、洗浄時間を第1の洗浄条件の洗浄動作における洗浄時間よりも長くするように、血液検体の処理後に行う洗浄の洗浄条件を第1の洗浄条件より強化された第2の洗浄条件に変更してもよい。制御部34は、たとえば、洗浄時間を通常時の2倍の時間にして、第1洗浄部330、第2洗浄部340および第3洗浄部360により、吸引部310、分注部320および展開部材350のそれぞれを洗浄する処理を行ってもよい。これにより、異常白血球の塗抹標本を作製した場合でも、確実に、第1洗浄部330、第2洗浄部340および第3洗浄部360により吸引部310、分注部320および展開部材350の各々の洗浄を十分に行うことができる。
【0086】
また、洗浄条件を通常時の洗浄条件よりも強化する場合に、強化の度合いを変更することもできる。
【0087】
具体的には、制御部34は、血液検体において異常な血球が出現している場合には、第2の洗浄条件の洗浄動作における洗浄強化の度合いを変更するように、血液検体の処理後に行う洗浄の洗浄条件を第1の洗浄条件より強化された第2の洗浄条件に変更してもよい。たとえば、制御部34は、異常な血球の出現に関する情報に基づいて、第2の洗浄条件による洗浄動作における、洗浄強化の度合いを変更するように洗浄動作の洗浄条件を変更して、洗浄部32の動作を制御してもよい。制御部34は、たとえば、異常白血球数に関する第1閾値および第2閾値など複数の閾値に基づいて、異常白血球数が第1閾値を超えた時は洗浄を2回行い、異常白血球数が第2閾値を超えた時は洗浄を3回行うように洗浄動作を制御してもよい。制御部34は、白血球数、赤血球数、および、異常赤血球数についても、異常白血球の場合と同様に、複数の閾値に基づいて、洗浄動作を制御してもよい。
【0088】
また、血液検体において異常な血球が出現している場合には、第2の洗浄条件の洗浄動作における洗浄強化の度合いを変更するような異常血球出現フラグが、分析部70の制御部74またはホストコンピュータ50の制御部53によって生成されてもよい。また、血液検体において異常な血球が出現している場合には、第2の洗浄条件の洗浄動作における洗浄強化の度合いを変更するような洗浄条件変更命令情報が、分析部70の制御部74またはホストコンピュータ50の制御部53によって生成されてもよい。
【0089】
制御部34は、血液検体の処理動作毎に洗浄動作を行うように洗浄部32の動作を制御する。制御部34は、吸引部310により吸引された血液検体を分注部320がスライドガラス500に滴下し、滴下された血液検体をスライドガラス500上で展開部材350によって延ばした後、吸引部310、分注部320および展開部材350を洗浄するように、第1洗浄部330と、第2洗浄部340と、第3洗浄部360とをそれぞれ制御する。これにより、異常白血球の塗抹標本を作製した場合でも、次の塗抹標本を作製する前に洗浄動作を行うことができるので、次の塗抹標本にキャリーオーバーするのを抑制することができる。
【0090】
(その他のシステム構成)
上記では、血液検体処理システム10が、血球分析装置20と、塗抹標本作製装置30と、搬送装置40と、ホストコンピュータ50とを備えている例を示したが、血液検体処理システム10の構成は、適宜変更できる。血液検体処理システム10は、たとえば
図5に示すように、血球分析装置20と、塗抹標本作製装置30と、搬送装置40とを備えるが、ホストコンピュータ50とを備えていないシステムであってもよい。この場合、血球分析装置20の分析部70において、直接測定オーダを作成するよう構成される。
【0091】
(洗浄条件変更命令情報または異常血球出現フラグの生成処理)
次に、
図6を参照して、分析部70の制御部74により実施される洗浄条件変更命令情報または異常血球出現フラグの生成処理について説明する。以下では、この処理が分析部70の制御部74(
図2参照)により実施される例を説明する。
【0092】
ステップS1において、制御部74は、血球分析装置20において血液検体中の血球を分析する処理を行う。具体的には、制御部74は、吸引処理位置600に移動された試験管のIDを測定部60の図示しないバーコードリーダにより読み取り、ホストコンピュータ50に対してこの検体の測定オーダの問い合わせをする。そして、制御部74は、ホストコンピュータ50から受信した測定オーダに基づき、測定部60の測定動作を制御する。制御部74は、測定部60で行われた測定結果に基づいて、血球分析装置20の異常な血球の出現を判断するための血球数に関する情報を取得する。
【0093】
ステップS2において、制御部74は、塗抹標本作製のオーダがあるか否かを判断する。制御部74は、血液検体中の分析結果に基づいて、塗抹標本作製の要否を判断し、オーダを立てる。制御部74は、塗抹標本作製のオーダがある場合には、ステップS3に処理を進める。一方、制御部74は、塗抹標本作製のオーダがない場合には、洗浄条件変更命令情報または異常血球出現フラグの生成処理を終了する。
【0094】
ステップS3において、制御部74は、異常白血球または異常赤血球の少なくとも一方があるか判断する。制御部74は、異常白血球または異常赤血球の少なくとも一方がある場合には、ステップS5に処理を進める。一方、制御部74は、異常白血球および異常赤血球の両方がない場合には、ステップS4に処理を進める。
【0095】
ステップS4に進んだ場合には、制御部74は、白血球数または赤血球数の少なくとも一方が、白血球数または赤血球数が対応する閾値よりも大きいか否かを判断する。制御部74は、白血球数または赤血球数の少なくとも一方が、白血球数または赤血球数が対応する閾値よりも大きい場合には、ステップS5に処理を進める。一方、制御部74は、白血球数および赤血球数の両方が、白血球数または赤血球数が対応する閾値以下である場合には、洗浄条件変更命令情報生成処理を終了する。
【0096】
ステップS5に進んだ場合には、制御部74は、洗浄部32による洗浄動作が強化されるように洗浄条件を変更するための洗浄条件変更命令情報を生成する。また、制御部74は、洗浄部32による洗浄動作が強化されるように洗浄条件を変更するための異常血球出現フラグを生成してもよい。その後、制御部74は、洗浄条件変更命令情報または異常血球出現フラグの生成処理を終了する。
【0097】
以上の処理により、洗浄条件変更命令情報または異常血球出現フラグが生成される。制御部74は、洗浄条件変更命令情報または異常血球出現フラグの生成処理を、各血液検体ごとに行う。
【0098】
(洗浄条件変更処理)
次に、
図7を参照して、塗抹標本作製装置30の制御部34により実施される洗浄条件変更処理について説明する。
【0099】
ステップS11において、制御部34は、塗抹標本作製装置30に搬送される血液検体の情報を取得する。具体的には、制御部34は、血液検体のヘマトクリット値などの情報と、塗抹標本の作製命令情報と、洗浄条件変更命令情報または異常血球出現フラグの生成処理のステップS5(
図6参照)で生成された洗浄条件変更命令情報または異常血球出現フラグとを、血球分析装置20の分析部70から取得する。
【0100】
ステップS12において、制御部34は、血液検体の処理を行う。詳細には、制御部34は、塗抹標本作製装置30の吸引処理位置300に搬送された試験管から血液検体を吸引部310に吸引させる処理を行う。そして、制御部34は、吸引した血液検体を分注部320からスライドガラス500に吐出させる処理を行う。そして、制御部34は、展開部材350によりスライドガラス500に滴下された血液検体を延ばす処理を行う。
【0101】
ステップS13において、制御部34は、ステップS12で血液検体が滴下されたスライドガラス500(
図2参照)を用いて、塗抹標本を作製する処理を行う。
【0102】
ステップS14において、制御部34は、洗浄条件変更命令情報または異常血球出現フラグが生成された血液検体であるか否かを判断する。制御部34は、洗浄条件変更命令情報または異常血球出現フラグが生成された血液検体でない場合には、ステップS15に処理を進める。一方、制御部34は、洗浄条件変更命令情報または異常血球出現フラグが生成された血液検体である場合には、ステップS16に処理を進める。
【0103】
ステップS15に進んだ場合には、制御部34は、通常洗浄を行う。具体的には、制御部34は、第1洗浄部330、第2洗浄部340および第3洗浄部360により、吸引部310、分注部320および展開部材350のそれぞれを、第1の洗浄条件により、防腐剤および界面活性剤を含有する水を用いて、1回洗浄する。その後、制御部34は、ステップS17に処理を進める。
【0104】
ステップS16に進んだ場合には、制御部34は、洗浄条件を第1の洗浄条件から第2の洗浄条件に変更して洗浄を行う。具体的には、制御部34は、第1洗浄部330、第2洗浄部340および第3洗浄部360により、吸引部310、分注部320および展開部材350のそれぞれを、洗浄を強化するように第2の洗浄条件に洗浄条件を変更することによって、防腐剤および界面活性剤を含有する水を用いて、2回洗浄する洗浄処理を行う。その後、制御部34は、ステップS17に処理を進める。
【0105】
ステップS17において、制御部34は、塗抹標本作製のオーダが終了したか否かを判断する。制御部34は、塗抹標本作製のオーダが終了していない場合には、ステップS11に処理を戻す。一方、制御部34は、塗抹標本作製のオーダが終了した場合には、洗浄条件変更処理を終了する。
【0106】
以上の処理により、洗浄条件変更処理が行われる。制御部34は、洗浄条件変更処理を、各血液検体ごとに行う。
【0107】
なお、今回開示された実施形態は、すべての点で例示であって制限的なものではないと考えられるべきである。本発明の範囲は、上記した実施形態の説明ではなく特許請求の範囲によって示され、さらに特許請求の範囲と均等の意味および範囲内でのすべての変更が含まれる。