(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
【発明を実施するための形態】
【0010】
以下、実施形態に係るカレンダー加工用樹脂ロールを詳細に説明する。
【0011】
カレンダー加工用樹脂ロールは、被カレンダー材をカレンダー加工する用途で使用される。被カレンダー材としては、紙、天然繊維からなる織布若しくは不織布、又は合成繊維からなる織布若しくは不織布が挙げられる。
【0012】
実施形態に係るカレンダー加工用樹脂ロールは、天然繊維又は合成繊維からなる織布又は不織布に適用してカレンダー加工した場合、その表面に柔らかな風合いを付与することができる。
【0013】
また、実施形態に係るカレンダー加工用樹脂ロールは、高い耐熱性を有するため、ポリエステルやナイロン等の合成繊維からなる織布又は不織布に適用して高温でカレンダー加工した場合、合成繊維を溶融させて通気度を低下させ、耐水圧性を向上させることができる。
【0014】
カレンダー加工用樹脂ロールは、芯金と、芯金の外周に配置される表面層とを備えている。以下にこの芯金、表面について詳述する。
【0015】
(1)芯金
芯金は、カレンダー加工時の高温及び継続的加圧に耐えうる十分な強度を有する材料であれば特に限定されないが、例えば、機械構造用炭素鋼鋼管(STKM)、ステンレス鋼又はアルミニウムを使用できる。
【0016】
(2)表面層
表面層は、両末端にジシクロヘキシルメタンジイソシアネート基を有するウレタンプレポリマー(A)と、ジアミン又はジオールからなる硬化剤(B)との重合体(ウレタン樹脂)から構成される。硬化剤がジアミンである場合、ウレタンプレポリマーと、ジアミンとはウレア結合によって縮重合する。硬化剤がジオールである場合、ウレタンプレポリマーと、ジオールとはウレタン結合によって縮重合する。
【0017】
<ウレタンプレポリマー(A)>
ウレタンプレポリマー(A)は、両末端にジシクロヘキシルメタンジイソシアネート(HMDI)基(次式(a1))を有する。
【化1】
【0018】
ウレタンプレポリマー(A)は、好ましくは、ポリエーテルジオール骨格(a2−1)又はポリカーボネートジオール骨格(a2−2)を有する。ウレタンプレポリマーは、その両末端にHMDI基を有するため、ジイソシアネートの一種である。ウレタンプレポリマー(A)は、例えば、次式(A1),(A2)の構造式で示される。
【化2】
【0020】
ポリエーテルジオール骨格(a2−1)を有するウレタンプレポリマー(A1)は、ポリエーテルジオールの2つのヒドロキシ基と、2つのHMDIのイソシアネート基とが反応してウレタン結合を形成した構造を有する。
【0021】
ポリエーテルジオール骨格(a2−1)中のR
1は、例えば、炭素数2〜15の直鎖状、分岐状、若しくは脂環状の炭化水素、炭素数2〜15の直鎖状、分岐状、若しくは脂環状のエーテル、又は炭素数8〜20の芳香環含有炭化水素である。R
1は、1種類又は2種以上であり得る。具体的には、ポリエーテルジオール骨格(a2−1)を構成するポリエーテルジオールは炭素数2〜20の2価アルコールのアルキレンオキサイド付加物が挙げられる。
【0022】
炭素数2〜20の2価アルコールは、例えば、炭素数2〜15の脂肪族ジオール[エチレングリコール、1,3−プロピレングリコール、1,4−ブタンジオール、1,5−ペンタンジオール、1,6−ヘキサンジオール、1,7−ヘプタンジオール、1,8−オクタンジオール、1,9−ノナンジオール、1,10−デカンジオール又はジエチレングリコール等の直鎖アルコール;1,2−、1,3−若しくは2,3−ブタンジオール、2−メチル−1,4−ブタンジオール、ネオペンチルグリコール、2,2−ブチルエチル−プロパンジオール、2,2−ジエチル−1,3−プロパンジオール、2−メチル−1,5−ペンタンジオール、3−メチル−1,5−ペンタンジオール、2−メチル−1,6−ヘキサンジオール、3−メチル−1,6−ヘキサンジオール、2−メチル−1,7−ヘプタンジオール、3−メチル−1,7−ヘプタンジオール、4−メチル−1,7−ヘプタンジオール、2−メチル−1,8−オクタンジオール、3−メチル−1,8−オクタンジオール又は4−メチルオクタンジオール等の分岐アルコール];炭素数6〜15の脂環式2価アルコール[1,4−シクロヘキサンジオール、1,4−ビス(ヒドロキシメチル)シクロヘキサン又は2,2−ビス(4−ヒドロキシシクロヘキシル)プロパン等];炭素数8〜20の芳香環含有2価アルコール[m−又はp−キシリレングリコール、ビス(ヒドロキシエチル)ベンゼン、ビス(ヒドロキシエトキシ)ベンゼン又はビスフェノールAのエチレンオキサイド付加物等];等が挙げられる。2価アルコールは単独で用いても2種以上を併用してもよい。
【0023】
ポリエーテルジオール骨格(a2−1)のnは、例えば、1〜4の整数である。
【0024】
ポリカーボネートジオール骨格(a2−2)を有するウレタンプレポリマー(A2)は、ポリカーボネートジオールの2つのヒドロキシ基と、2つのHMDIのイソシアネート基とが反応してウレタン結合を形成した構造を有する。
【0025】
ポリカーボネートジオール骨格(a2−2)中のR
2及びR
3は、例えば、上述するポリエーテルジオール骨格(a2−1)中のR
1と同様のものが挙げられる。R
2とR
3は、同じであっても、異なってもよい。R
2とR
3は、1種類又は2種以上であり得る。具体的には、ポリカーボネートジオール骨格(a2−2)を構成するポリカーボネートジオールは、カーボネート基により2価のアルコールが重合した構造を有している。2価アルコールは、上述するポリエーテルジオール骨格(a2−1)において挙げたのと同様なものを用いることができる。ポリカーボネートジオール骨格(a2−2)を構成するポリカーボネートジオールとしては、例えば、数平均分子量が500である旭化成ケミカルズ株式会社製のデュラノール(登録商標)T5650Eを使用することができる。
【0026】
ポリカーボネートジオール骨格(a2−2)のnは、例えば、1〜4の整数である。
【0027】
ウレタンプレポリマー(A)のイソシアネート基含有率(NCO%)は、表面層のショアD硬度に関与する。ウレタンプレポリマーのNCO%が増加すると、ウレタン樹脂中の架橋点が増加するため、表面層のショアD硬度が増加する。NCO%は、次式で定義される。
【0028】
イソシアネート基含有率(NCO%)
=(ウレタンプレポリマーが有するイソシアネート基(−NCO)の式量)/(ウレタンプレポリマーの分子量)×100
ウレタンプレポリマーのNCO%は、7%〜16%であることが好ましく、より好ましくは9%〜14%である。ウレタンプレポリマーのNCO%が7%未満であると、表面層の硬度を高くすることが困難になり、ウレタンプレポリマーのNCO%が16%を超えると、表面層の硬度が高くなりすぎ、目的とする硬度範囲にすることが困難になる虞がある。ウレタンプレポリマーのNCO%を9%〜14%にすると、織布又は不織布をカレンダー加工したとき、表面に柔らかな風合いを付与するのに適したショアD硬度に調整し易くなる。
【0029】
なお、NCO%は、JIS K 7301−1995に記載の試験方法によって測定できる。例えば、NCO%は、まず試料を脱水トルエンに溶解後、過剰のジノルマルブチルアミン溶液を加えて反応させる。次いで、残留したジノルマルブチルアミンを塩酸で逆滴定し、滴定曲線の変曲点を終点とし、その終点の滴定量から算出できる。
【0030】
ウレタンプレポリマーの数平均分子量は、525〜1150であることが好ましく、より好ましくは600〜944である。ウレタンプレポリマーの数平均分子量が525未満であると、ウレタン樹脂の架橋点が増加するため、表面層の硬度が増加しすぎる虞がある。ウレタンプレポリマーの数平均分子量が1150を超えると、表面層の硬度が低下して、目的とする硬度範囲にすることが困難になる虞がある。
【0031】
<硬化剤(B)>
硬化剤(B)は、ジアミン又はジオールである。ジアミンからなる硬化剤は、特に限定されず公知のものを使用でき、例えば、4,4’−メチレンビス(2−クロロアニリン)(MOCA)、ジアミノジフェニルメタン(MDA)等を使用できる。ジオールからなる硬化剤は、特に限定されず公知のものを使用でき、例えば、1,4−ブタンジオール又は1,2−プロパンジオール等を使用できる。なお、ジアミンである硬化剤を使用した場合、ジオールと比較して、表面層の耐熱性向上、動的発熱性の低減、高温使用時でも硬度が低下しにくい等の傾向があるため好ましい。
【0032】
表面層のショアD硬度は、60°以上90°以下である。表面層のショアD硬度の適切な範囲は、カレンダー加工される被カレンダー材の種類、その用途によって異なる。
【0033】
例えば、織布又は不織布をカレンダー加工する場合、表面層のショアD硬度は60°〜90°が適切である。好ましいショアD硬度は75°〜85°である。表面層のショアD硬度を60°未満にすると、カレンダー加工ときに被カレンダー材への線圧が低下するため、被カレンダー材が適切に押し潰されず、その表面に適切な光沢を付与することが困難になる。表面層のショアD硬度が90°を超えると、被カレンダー材をカレンダー加工するとき、被カレンダー材への線圧が増加するため、被カレンダー材が押し潰されてその表面が高光沢となる虞がある。表面層のショアD硬度を75°〜85°にすると、織布又は不織布をカレンダー加工したとき、表面に柔らかな風合いを付与するのに特に適している。
【0034】
単なる一例であるが、(A1)の構造式を有するウレタンプレポリマーを、硬化剤として4,4’−メチレンビス(2−クロロアニリン)(MOCA)を用いて硬化させたときの表面層のショアD硬度は、ウレタンプレポリマーのNCO%が7%のとき60°、NCO%が9%のとき75°、NCO%が14%のとき85°、NCO%が16%のとき90°である。このように、ウレタンプレポリマーのNCO%を調節することで、容易に表面層のショアD硬度を調節することができる。なお、表面層のショアD硬度はウレタンプレポリマーのNCO%以外にも、ウレタンプレポリマーの構造式や、硬化剤の種類、添加剤の有無、硬化条件等に依存して変化する。
【0035】
表面層を構成するウレタン樹脂は、ウレタンプレポリマーとは別のジイソシアネートを添加して硬化したものであってもよい。すなわち、表面層を構成するウレタン樹脂は、ウレタンプレポリマーと、別のジイソシアネートと、ジアミン又はジオールからなる硬化剤との重合体であってもよい。また、表面層を構成するウレタン樹脂は、ウレタンプレポリマーと硬化剤とからなる重合体に対して、別のジイソシアネートと硬化剤からなる重合体を混合したものであってもよい。
【0036】
このようにウレタンプレポリマーに加えて別のジイソシアネートを添加することによって、表面層のショアD硬度及びポットライフを調節することができる。別のジイソシアネートは、ウレタンプレポリマーと別のジイソシアネートの合量に対して、12重量%以下まで添加することができる。一例としては、ウレタンプレポリマーであるサンプレン(登録商標)P−870(NCO%:12%、三洋化成工業株式会社製)に対して、別のジイソシアネートであるMc115(東ソー株式会社製)を加える場合、それらの合量に対して12重量%まで添加することができる。別のジイソシアネートの添加量が12重量%を超えると、ウレタン樹脂のポットライフが短くなるため表面層の表面にピンホールや流れ模様などの欠陥が生じる虞がある。
【0037】
別のジイソシアネートとしては、ジフェニルメタンジイソシアネート(MDI)系、又はトルエンジイソシアネート(TDI)系、ジシクロヘキシルメタンジイソシアネート(HMDI)系を使用できる。MDI系のジイソシアネートとしては、ミリオネート(登録商標)MT(ピュアMDI)(保土谷化学工業株式会社製)、ミリオネート(登録商標)MTL(変性MTL)(保土谷化学工業株式会社製)を使用できる。TDI系のジイソシアネートとしては、コロネート(登録商標)T−100(2,4−TDI)(東ソー株式会社製)、コロネート(登録商標)T−65(2,4−TDI/2,6−TDI=65/35)を使用できる。
【0038】
表面層の厚さは、5mm〜25mmにすることが好ましい。表面層の厚さを5mm未満にすると、表面層の下に配置される芯金の影響を受けて、カレンダー加工の性能に影響を及ぼす虞がある。一方、表面ゴム層の厚さが25mmを超えると、ウレタン樹脂が硬化するときの硬化収縮が増加するため、表面層の端部の接着に欠陥が生じる虞がある。
【0039】
表面層は、ウレタン樹脂の他に顔料、可塑剤及び充填剤等の各種配合剤、触媒を含有してもよい。触媒としては、例えば、アジピン酸、N,N−ジメチルエタノールアミン、又はジブチルスズジラウレートが使用される。
【0040】
表面層は、200℃まで耐える高い耐熱性を有する。被カレンダー材が紙である場合、90℃〜140℃の耐熱性を有することが好ましい。また、被カレンダー材が織布又は不織布である場合、140℃〜200℃の耐熱性を有することが好ましい。
【0041】
表面層は、350kg/cmの線圧に耐える高い耐圧性を有する。被カレンダー材が紙である場合、100kg/cm〜350kg/cmの線圧に耐えることが好ましい。また、被カレンダー材が、織布又は不織布である場合、150kg/cm〜250kg/cmの線圧に耐えることが好ましい。
【0042】
表面層は、高い耐摩耗性を有する。被カレンダー材が紙である場合、6ヵ月間で約260000kmの被カレンダー材がカレンダー加工されるため、この間において表面層の摩耗が少ないことが好ましい。また、被カレンダー材が織布又は不織布である場合、3ヵ月間で約3200kmの被カレンダー材がカレンダー加工されるため、この間において表面層の摩耗が少ないことが好ましい。
【0043】
なお、表面層は上述したウレタン樹脂を含む層を1層又は2層以上重ねて構成することができる。望ましい表面層は1層の上述する特定のウレタン樹脂の層から構成される。また、表面層はウレタン樹脂の他に添加剤を配合してもよい。添加剤としては、加硫剤、加硫促進剤、老化防止剤、補強剤、充填剤、着色剤、可塑剤等が挙げられる。
【0044】
(3)フィラメントワインディング層(FW層)
カレンダー加工用樹脂ロールは、芯金と、表面層との間にフィラメントワインディング層(FW層)をさらに介在してもよい。FW層とは、ある繊維に樹脂を含浸させ、繊維に張力かけて連続的にロールに巻き付けて硬化した層である。FW層に使用される繊維は、機械的強度が高いものであれば特に限定されないが、例えばガラス繊維又はカーボンファイバーが使用される。FW層に使用される樹脂は、耐熱性及び耐圧性に優れる熱硬化性樹脂又は熱可塑性樹脂であれば特に限定されないが、例えばビニルエステル樹脂、エポキシ樹脂、ポリ塩化ビニル、又はポリエチレンが使用される。
【0045】
FW層の厚さは、2.5mm〜15mmであることが好ましく、より好ましくは2.5mm〜10mmである。FW層の厚さを2.5mm未満にすると、そのクッション性が減少するため好ましくない。一方、FW層の厚さが15mmを超えると、その耐圧性が低下して使用時に割れが発生しやすくなるため好ましくない。
【0046】
カレンダー加工用樹脂ロールは、表面層と芯金との間、表面層とFW層との間、又はFW層と芯金との間に接着剤層をさらに備えてもよい。接着剤層は、特に限定されず、従来公知の接着剤を適宜使用することができる。
【0047】
実施形態に係るカレンダー加工用樹脂ロールの一例を
図1を参照して説明する。
図1に示すカレンダー加工用樹脂ロール10は、芯金11と、この芯金11の外周面に積層されたウレタン樹脂を含む表面層12とを備える。ウレタン樹脂は、特定のウレタンプレポリマーと、ジアミン又はジオールである硬化剤との重合体である。特定のウレタンプレポリマーは、例えば、ポリテトラメチレングリコール骨格の両末端にジシクロヘキシルメタンジイソシアネート(HMDI)基を有し、NCO%が7%〜16%である。表面層12のショアD硬度は、60°以上90°以下である。
【0048】
カレンダー加工用樹脂ロール10は、表面層12が前述したウレタン樹脂を含むため、ポットライフが長く、液体状の樹脂の注型用モールドに注入する間に硬化が進行し難くなる。その結果、カレンダー加工用樹脂ロール10は、表面層12の表面に多数のピンホールや流れ模様などの欠陥が生じ難くなる。そのため、ピンホールに起因したロールの割れが生じる虞が少なく、また流れ模様が転写される虞も少なくなる。
【0049】
また、カレンダー加工用樹脂ロール10は、従来のウレタン樹脂と比較して、高い耐熱性を有し、高温下においても溶融し難い。そのため、高い耐熱性を必要とする合成繊維からなる織布又は不織布である被カレンダー材を用い、当該被カレンダー材をカレンダー加工することによって、通気度を低下させ、耐水圧性を向上させることができる。また、その表面層は適切な硬度を有するため、織布又は不織布をカレンダー加工することによって、表面に柔らかな風合いを付与することができる。
【0050】
従って、実施形態によれば、適切な硬度、高い耐熱性、及び高い耐久性を有するカレンダー加工用樹脂ロールを提供することができる。
【0051】
実施形態に係るカレンダー加工用樹脂ロールの他の例について
図2を参照して説明する。
図2に示すカレンダー加工用樹脂ロール20は、芯金21と、この芯金21の外周面に積層されたフィラメントワインディング(FW)層22と、このFW層22の外周面に積層された表面層23とを備える。FW層22は、芯金21の外周面に対して、熱硬化性樹脂である例えば、ビニルエステル樹脂を含浸させたガラス繊維であるロービングを巻きつけて熱硬化させることで形成される。表面層23は、例えば、
図1で説明したものと同様の材料で形成される。
【0052】
図2に示すカレンダー加工用樹脂ロール20は、
図1に示すカレンダー加工用樹脂ロール10と同様の効果を得ることができる。
図2に示すカレンダー加工用樹脂ロール20では、使用時にFW層22がクッションの役割を果たすため、耐圧性を向上できる。また、
図2に示すカレンダー加工用樹脂ロールでは、FW層22によって、カレンダー加工用樹脂ロールの肉厚の調節が容易になる。
【0053】
図3は、実施形態のカレンダー加工用樹脂ロール10a,10bを使用した被カレンダー材40のカレンダー加工装置100の一例を示す概略図である。この装置では、1つの金属ロール30の上下に2つのカレンダー加工用樹脂ロール10a,10bが前記金属ロール30を挟んで略平行に対接している。この装置100では、カレンダー加工用樹脂ロール10a、金属ロール30、及びカレンダー加工用樹脂ロール10bがこの順番に一直線上に並んでいる。金属ロール30は、加熱機構を備えており被カレンダー材40に適した温度に加熱されている。被カレンダー材40は、送出ロール50aから、カレンダー加工用樹脂ロール10a及び金属ロール30の間隙、及び金属ロール30及びカレンダー加工用樹脂ロール10bの間隙にこの順番で搬送され、巻取りロール50bで巻き取られる。このとき、被カレンダー材40は、金属ロール30からの熱によって加熱され、カレンダー加工用樹脂ロール10a,10bと金属ロール30との間の線圧によって連続的に加圧される。この加熱及び加圧によって、被カレンダー材40は適切な厚さ、適切な光沢度を有するようにカレンダー加工される。
【0054】
金属ロール30は、加熱機構によって、被カレンダー材40の材料及びその用途に適した温度に加熱される。被カレンダー材40が紙である場合、金属ロール30の表面温度は90℃〜140℃になるように加熱される。被カレンダー材40が織布又は不織布である場合、金属ロール30の表面温度は140℃〜200℃になるように加熱される。
【0055】
被カレンダー材40の搬送速度は、被カレンダー材40の材料に適した速度に調節される。被カレンダー材40が紙である場合、例えば、搬送速度が1000m/分になるように調節される。被カレンダー材40が織布又は不織布である場合、例えば、搬送速度が25m/分になるように調節される。
【0056】
カレンダー加工用樹脂ロール10a,10bは、熱の蓄積が多くなる運転中に、内部冷却及び/又は表面冷却を行うことが好ましい。冷却手段としては特定されるものではないが、例示として内部に冷却水などの液体媒体を通すことで実行し得る。また、表面冷却の方法としては風冷や冷却用のロールに接触させることにより実行し得る。
【0057】
以下、本実施形態の実施例1〜2、比較例1〜4を詳細に説明する。
【0058】
<実施例1のカレンダー加工用樹脂ロールの作製>
実施例1のカレンダー加工用樹脂ロールは、
図2の構成になるように作製した。芯金21としてはSTKMからなる外径300mmの管を使用した。次いで、この芯金21の外周面上に接着材層(コナップ(登録商標)1146、Cytec Industries Inc.製)を常法により塗布した。次いで、接着剤層の形成された芯金21の外周面上に、熱硬化性樹脂を含浸させたガラス繊維(ガラスロービング4450番、旭ファイバーグラス株式会社製)を巻き付けた。この熱硬化性樹脂としては、ペンタエリストリール系ポリエーテルポリオール(サンニックス(登録商標)HD402、三洋化成工業株式会社製)と、ピュアMDI(ミリオネート(登録商標)MT、保土谷化学工業株式会社製)との混合物を使用した。その後、90℃で10時間加熱して、熱硬化性樹脂を硬化させた後、冷却して、研磨し、フィラメントワインディング層(FW層)22を形成した。
【0059】
次いで、ウレタンプレポリマーであるサンプレン(登録商標)P−870(三洋化成工業株式会社製)を60℃に温調した。このウレタンプレポリマーは、ポリエーテルジオール骨格であるポリテトラメチルグリコール骨格(a2−1)を有し、その両末端にジシクロヘキシルメタンジイソシアネート(a1)基を有し、NCO%が12%である。このウレタンプレポリマーは、次式(A3)に示す構造式を有する。
【化4】
【0060】
一方、ジアミンの硬化剤であるメチレンビス(2−クロロアニリン)(キュアミン(登録商標)MT、イハラケミカル工業株式会社製)を120℃に温調した。その後、表1に示すように、脱泡したウレタンプレポリマー100重量部に対して硬化剤34.3重量部になるように配合し、十分に撹拌し液体状の樹脂組成物を得た。
【0061】
次いで、注型用モールド内に芯金21の外周面上にFW層22が積層されたものを設置し、前記液体状の樹脂組成物を注入する。次いで、この樹脂組成物の注入された注型用モールドを60℃に16時間温調した後、180℃で10時間加熱して樹脂組成物を硬化させた。次いで、注型用モールドから樹脂ロールを取り出し、表面層23の表面を厚さ12.5mmになるまで研磨した。その結果、
図2に示す構造の外径335mmのカレンダー加工用樹脂ロール20を得た。
【0062】
<実施例2のカレンダー加工用樹脂ロールの作製>
ウレタンプレポリマーの材料以外は、実施例1と同様に表1に示す配合量で実施例2のカレンダー加工用樹脂ロールを作製した。ウレタンプレポリマーとして、R
2が炭素数6の直鎖状の炭化水素であり、R
3が炭素数5の直鎖状の炭化水素であるポリカーボネートジオール骨格(a2−2)を有し、その両末端にジシクロヘキシルメタンジイソシアネート基(a1)を有し、NCO%が12%であるものを使用した。このウレタンプレポリマーは、次式(A4)に示す構造式を有する。
【化5】
【0063】
<比較例1のカレンダー加工用樹脂ロールの作製>
ウレタンプレポリマーの材料以外は、上述する実施例1と同様に表1に示す配合で比較例1のカレンダー加工用樹脂ロールを作製した。ウレタンプレポリマーとしては、アジプレン(登録商標)LF750D(ケムチュラ・コーポレーション製)を使用した。このウレタンプレポリマーは、ポリエーテルジオール骨格であるポリエーテルジオール骨格を有し、その両末端にトルエンジイソシアネート(TDI)基を有する。
【0064】
<比較例2のカレンダー加工用樹脂ロールの作製>
ウレタンプレポリマーの材料以外は、上述する実施例1と同様に表1に示す配合で比較例2のカレンダー加工用樹脂ロールを作製した。ウレタンプレポリマーとしては、アジプレン(登録商標)LF600D(ケムチュラ・コーポレーション製)を使用した。このウレタンプレポリマーは、ポリエーテルジオール骨格であるポリエーテルジオール骨格を有し、その両末端にトルエンジイソシアネート(TDI)基を有する。
【0065】
<比較例3のカレンダー加工用樹脂ロールの作製>
表面層23としてウレア樹脂を用いたこと以外は、上述する実施例1と同様に表1に示す配合で比較例3のカレンダー加工用樹脂ロールを作製した。無溶剤熱硬化性ポリウレアエラストマーであるポレア(登録商標)R300(イハラケミカル工業株式会社製)のA液を30℃に温調し、B液を30℃に温調した。その後、表1に示す割合で、ウレタンプレポリマーと硬化剤とを混合撹拌機に投入し、十分に撹拌後、減圧下で脱泡して樹脂組成物を得た。次いで、注型用モールドに芯金21の外周面上にFW層22が積層されたものを設置し、樹脂組成物を注入する。次いで、この注型用モールドを100℃で20分温調した後、180℃で4時間加熱硬化させた。
【0066】
<比較例4のカレンダー加工用樹脂ロールの作成>
表面層23としてエステル樹脂を用いたこと以外は、上述する実施例1と同様に表1に示す配合で比較例4のカレンダー加工用樹脂ロールを作製した。2,2’−(1,3−フェニレン)−ビス(2−オキサゾリン)75重量部、アジピン酸25重量部、亜リン酸トリフェニル1重量部を混合し130℃に温調した。十分に撹拌後、減圧下で脱泡して樹脂組成物を得た。次いで、注型用モールドに芯金21の外周面上にFW層22が積層されたものを設置し、樹脂組成物を注入する。次いで、この注型用モールドを100℃で20分温調した後、200℃で30分間の条件で硬化させた。
【0067】
実施例1,2、比較例1〜4に係るカレンダー加工用樹脂ロールに対して、ポットライフ、ショアD硬度、表面層の状態、被カレンダー材の光沢度、表面層の割れ、表面層の摩耗を測定した結果を表1に示す。
【0068】
以下に、各測定の測定方法に関して説明する。
【0069】
<ショアD硬度>
各カレンダー加工用樹脂ロールについて、JIS6253に基づいて、ショアD硬度[°]を測定した。測定機としては、高分子計器株式会社製のアスカーゴム硬度計D型を使用して測定した。
【0070】
<被カレンダー材の光沢度>
各カレンダー加工用樹脂ロールについて、
図3に示すカレンダー加工装置を用いてカレンダー加工を行って、被カレンダー材の光沢度を判定した。被カレンダー材40としては、幅30cm、厚み0.5mmのナイロンの平織の織布を用いた。金属ロール30の表面温度は180℃になるように加熱した。カレンダー加工用樹脂ロール10a,10bと金属ロール30との間の線圧はそれぞれ200kg/cmであり、被カレンダー材40の搬送速度は25m/分であるように調節した。被カレンダー材40は、カレンダー加工用樹脂ロール10a,10bと金属ロール30との間を2回通過してカレンダー加工した。次いで、カレンダー加工後の被カレンダー材の光沢度を目視で判定した。
【0071】
<表面層の割れ・摩耗>
各カレンダー加工用樹脂ロールについて、
図3に示すカレンダー加工装置を用いてカレンダー加工を行って、表面層の割れ・摩耗を判定した。被カレンダー材40としては、幅30cm、厚み0.2mmの厚紙を用いた。金属ロール30は、表面温度が180℃になるように加熱した。カレンダー加工用樹脂ロール10a,10bと金属ロール30との間の線圧は最大280kg/cmであり、被カレンダー材40の搬送速度は50m/分であるように調節した。この被カレンダー材を、1000mをカレンダー加工し、それを3回繰り返した。次いで、カレンダー試験後の各カレンダー加工用樹脂ロールの表面層の状態を目視で判定した。
【0072】
<ポットライフ>
各カレンダー加工用樹脂ロールにおいて、使用した樹脂(例えば、ウレタンプレポリマー)200gを金属製の容器に採取して、オイルバスによって液温90±1℃に温調する。次いで、各樹脂に対して、各硬化剤を加えて1分間撹拌後、音叉振動型粘度計VIBRO VISCOMETER SV−100(株式会社エー・アンド・ディ製)にて粘度を測定して、粘度が50Pasに到達するまでの時間をポットライフ[分]と定義した。
【表1】
【0073】
表1から明らかなように、表面層を構成するウレタン樹脂が、両末端にHMDI基を有するウレタンプレポリマーと、ジアミンからなる硬化剤との重合体であり、表面層のショアD硬度が60°以上90°以下である実施例1,2のカレンダー加工用樹脂ロールは、いずれの項目でも優れた性能であることがわかる。被カレンダー材の光沢度の試験結果では、実施例1,2のカレンダー加工用樹脂ロールによると、被カレンダー材である合成繊維を溶融させて通気度を低下させ、耐水圧性を向上させ、被カレンダー材の表面に柔らかな風合いを付与することができた。
【0074】
一方、表面層が従来のウレタン樹脂又はウレア樹脂で構成されている比較例1〜3のカレンダー加工用樹脂ロールでは、ポットライフが1分〜6分と短いため、表面層に多数のピンホールや流れ模様の欠陥が発生していた。比較例1〜3のカレンダー加工用樹脂ロールでは、表面層の割れの試験において内部のピンホールから割れが発生して耐久性が低かった。また、比較例1,3のカレンダー加工用樹脂ロールでは、被カレンダー材の光沢度の試験結果において、被カレンダー材に表面層の流れ模様の欠陥が転写する不具合が生じた。比較例2のカレンダー加工用樹脂ロールでは、被カレンダー材の光沢度の試験結果において、その表面層のショアD硬度が59°と低いため、被カレンダー材の表面の光沢度が弱く、被カレンダー材の表面に柔らかな風合いを付与することができなかった。
【0075】
他方、比較例4のカレンダー加工用樹脂ロールでは、被カレンダー材の光沢度の試験結果において、その表面層のショアD硬度が92°と高いため、被カレンダー材の表面の光沢度が高く、被カレンダー材の表面に柔らかな風合いを付与することができなかった。
【0076】
以上の結果より、実施形態に係るカレンダー加工用樹脂ロールは、適切な表面層の硬度を有し、高い耐久性を有することが示された。
【0077】
なお、いくつかの実施形態について説明したが、これらの実施形態は、例示であり、発明の範囲を限定するものではない。これらの実施形態は、その他の様々な形態で実施されることができ、発明の要旨を逸脱しない範囲で、種々の変更を行うことができる。これらの実施形態及びその変形は、発明の範囲や要旨に含まれるとともに、特許請求の範囲に記載された発明とその均等の範囲に含まれる。
【解決手段】 芯金と、前記芯金の外周に配置されるウレタン樹脂を含む表面層とを備えるカレンダー加工用樹脂ロールであって、前記ウレタン樹脂は、両末端にジシクロヘキシルメタンジイソシアネート基を有するウレタンプレポリマーと、ジアミン又はジオールである硬化剤との重合体であり、前記表面層のショアD硬度が60°以上90°以下であることを特徴とするカレンダー加工用樹脂ロール。