(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B1)
(11)【特許番号】6389937
(24)【登録日】2018年8月24日
(45)【発行日】2018年9月12日
(54)【発明の名称】電源制御回路及び電源制御回路を備えた論理回路装置
(51)【国際特許分類】
G06F 1/26 20060101AFI20180903BHJP
G06F 1/32 20060101ALI20180903BHJP
H01L 21/822 20060101ALI20180903BHJP
H01L 27/04 20060101ALI20180903BHJP
H03K 5/05 20060101ALI20180903BHJP
【FI】
G06F1/26 334B
G06F1/32 Z
H01L27/04 D
H03K5/05
【請求項の数】6
【全頁数】16
(21)【出願番号】特願2017-164513(P2017-164513)
(22)【出願日】2017年8月29日
【審査請求日】2017年8月29日
(73)【特許権者】
【識別番号】599092848
【氏名又は名称】力晶科技股▲ふん▼有限公司
(74)【代理人】
【識別番号】100101454
【弁理士】
【氏名又は名称】山田 卓二
(74)【代理人】
【識別番号】100081422
【弁理士】
【氏名又は名称】田中 光雄
(74)【代理人】
【識別番号】100125874
【弁理士】
【氏名又は名称】川端 純市
(72)【発明者】
【氏名】木原 雄治
【審査官】
田川 泰宏
(56)【参考文献】
【文献】
特開2012−39520(JP,A)
【文献】
特開2006−141191(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G06F 1/26−32
H01L 21/822
H01L 27/04
H03K 5/05
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
複数の入力信号を一時記憶して出力する第1の記憶手段からの複数の入力信号に対して所定の論理演算を行って、論理演算後の複数の出力信号を出力する論理回路のための電源制御回路であって、
前記第1の記憶手段には所定の電源電圧が供給され、
前記電源制御回路は、
前記電源電圧を前記論理回路に供給するか否かを選択的に切り替えるスイッチ手段と、
前記第1の記憶手段に入力される複数の入力信号の信号レベルの変化をそれぞれ検出し、当該信号レベルの変化を検出したときに検出信号をそれぞれ出力する複数の検出器回路と、
前記複数の検出器回路からの少なくとも1つの検出信号に基づいて、前記論理回路に電源電圧を供給するように前記スイッチ手段を制御する一方、前記複数の検出器回路から検出信号が出力されないとき前記論理回路に電源電圧を供給しないように前記スイッチ手段を制御する制御回路とを備えたことを特徴とする電源制御回路。
【請求項2】
前記制御回路は、前記複数の検出器回路からの少なくとも1つの検出信号に基づいて、前記論理回路のためのクロックに同期して、当該検出信号から所定の遅延時間だけ遅延された期間後に、前記論理回路に電源電圧を供給するように前記スイッチ手段を制御する請求項1記載の電源制御回路。
【請求項3】
前記遅延時間は、前記論理回路のためのクロックの1サイクルの時間に所定の時間を加算した時間であることを特徴とする請求項2記載の電源制御回路。
【請求項4】
前記電源制御回路は、前記電源電圧が前記スイッチ手段を介して前記論理回路に供給される電圧が実質的に前記電源電圧に等しいか否かを判断し、実質的に等しいときに電圧センサ信号を出力する比較手段をさらに備え、
前記制御回路は、前記複数の検出器回路からの少なくとも1つの検出信号に加えて、前記電圧センサ信号に基づいて、前記論理回路に電源電圧を供給するように前記スイッチ手段を制御することを特徴とする請求項1〜3のうちのいずれか1つに記載の電源制御回路。
【請求項5】
複数段の請求項1記載の論理回路を備え、前記複数段の論理回路が第1の記憶手段を介して縦続接続されて構成された論理回路装置のための電源制御回路であって、
前記第1の記憶手段には所定の電源電圧が供給され、
前記電源制御回路は、
1段目〜複数段目のスイッチ手段を含み、前記電源電圧を前記複数段の論理回路にそれぞれ供給するか否かを選択的に切り替える複数のスイッチ手段と、
前記第1の記憶手段に入力される複数の入力信号の信号レベルの変化をそれぞれ検出し、当該信号レベルの変化を検出したときに検出信号をそれぞれ出力する複数の検出器回路と、
前記複数の検出器回路からの少なくとも1つの検出信号に基づいて、前記論理回路に電源電圧を供給するように前記1段目のスイッチ手段を制御する一方、前記複数の検出器回路から検出信号が出力されないとき前記論理回路に電源電圧を供給しないように前記1段目のスイッチ手段を制御する電源制御信号を発生する制御回路と、
前記電源制御信号を前記論理回路のためのクロックに同期して一時的に記憶して次段の電源制御信号を発生して前記2段目のスイッチ手段に出力する第2の記憶手段とを備えたことを特徴とする電源制御回路。
【請求項6】
請求項1〜5のうちのいずれか1つに記載の電源制御回路を備えたことを特徴とする論理回路装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、例えば論理回路のための電源制御回路、及び電源制御回路を備えた論理回路装置に関する。
【背景技術】
【0002】
図1は従来例1にかかる論理回路とその電源制御回路の構成を示すブロック図である。
図1に示すように、論理回路10は一般的には、入力側の遅延型フリップフロップFFI1〜FFIMと、出力側の遅延型フリップフロップFFO1〜FFONとの間に設けられ、インバータINV1、ノアゲートNOR1、ナンドゲートNAND1等のゲート素子を備え、所定の論理演算を行う。そして、電源電圧Vddが論理回路10及び各遅延型フリップフロップFFI1〜FFIM,FFO1〜FFONに供給されている。
図1においては、論理回路では理想的にはリークパスはなく、論理回路が動作していない状態では、電流は流れない。
【0003】
しかし、論理回路のスタンバイ時にはリーク電流のみが存在するが、昨今の微細化技術を用いて製造すると、リーク電流が増加する。最近では、現状では低電流を維持することが不可能であり、論理回路に大きなリーク(欠点の1つ)があると大電流が流れる。
【0004】
以上の問題点を解決するために、電源電圧遮断回路が提案されており、この電源電圧遮断回路はリーク電流を低減するのに有効である。その一例を
図2〜
図4に示す。
【0005】
図2は従来例2にかかる論理回路とその電源制御回路の構成を示すブロック図である。
図2の回路では、
図1の回路に比較して、電源電圧Vddが、CPUからの電源遮断信号Spscoに基づいて制御されるMOSトランジスタQ1を介して、論理回路10及び各遅延型フリップフロップFFI1〜FFIM,FFO1〜FFONに供給されている。論理回路10等が動作しないときに、Hレベルの電源遮断信号Spscoに基づいてMOSトランジスタQ1をオフすることで、スタンバイ電流を軽減することができる。
【0006】
図3は従来例3にかかる論理回路とその電源制御回路の構成を示すブロック図である。
図3の回路は、
図2の回路に比較して、電源電圧Vddが、CPUからの電源遮断信号Spscoに基づいて制御されるMOSトランジスタQ1を介して、1つのアプリケーション機能ユニットである論理回路10に供給されているが、電源電圧VddはMOSトランジスタQ1を経由せずに直接に各遅延型フリップフロップFFI1〜FFIM,FFO1〜FFONに供給されている。この場合においても、各アプリケーション機能ユニットに対して、論理回路10が動作しないときに、MOSトランジスタQ1をオフすることで、スタンバイ電流を軽減することができる。
【0007】
図4は従来例4にかかる論理回路とその電源制御回路の構成を示すブロック図である。
図4の回路では、電源電圧Vddは電源電圧遮断回路であるMOSトランジスタQ1を介して、供給電圧Vddlとして、論理回路ブロック10、11,12、入力側の遅延型フリップフロップFFI1〜FFIM、出力側の遅延型フリップフロップFFO1〜FFON、に供給されている。一つの電源電圧Vddが、電源電圧遮断回路であるMOSトランジスタQ1を介して、複数の論理回路ブロックに供給されていることを示すものである。
【0008】
論理回路のための電源電圧の供給の制御方法としては、例えば特許文献1及び2に開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0009】
【特許文献1】特開2011−186934号公報
【特許文献2】特開2014−038382号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0010】
電源遮断信号SpscoはCPUにより発生され、PチャネルMOSトランジスタQ1により電源電圧が遮断される論理回路10は、1つのアプリケーションユニットとして構成されている大型の論理回路をカバーしている。従って、供給電圧Vddlレベルを回復するには比較的長い時間がかかる。
【0011】
以上説明したように、上述の電源電圧遮断回路はシステムレベルで動作する。従って、アクティブ信号と電源電圧をオンにした後、アクティブ状態になるまでに多大の時間がかかるという問題点があった。特に、フリップフロップへの電源供給が遮断されているタイプでは、再開する時間期間は比較的長くなる。これらの時間期間の結果として、待ち時間なしで操作することは不可能であるという問題点があった。
【0012】
本発明の目的は以上の問題点を解決し、論理回路のための電源制御回路において、従来例に比較して電源電圧を回復するための待ち時間を短縮することができ、消費電力を軽減できる電源制御回路及び当該電源制御回路を備えた論理回路装置を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0013】
第1の発明にかかる電源制御回路は、複数の入力信号を一時記憶して出力する第1の記憶手段からの複数の入力信号に対して所定の論理演算を行って、論理演算後の複数の出力信号を出力する論理回路のための電源制御回路であって、
前記第1の記憶手段には所定の電源電圧が供給され、
前記電源制御回路は、
前記電源電圧を前記論理回路に供給するか否かを選択的に切り替えるスイッチ手段と、
前記第1の記憶手段に入力される複数の入力信号の信号レベルの変化をそれぞれ検出し、当該信号レベルの変化を検出したときに検出信号をそれぞれ出力する複数の検出器回路と、
前記複数の検出器回路からの少なくとも1つの検出信号に基づいて、前記論理回路に電源電圧を供給するように前記スイッチ手段を制御する一方、前記複数の検出器回路から検出信号が出力されないとき前記論理回路に電源電圧を供給しないように前記スイッチ手段を制御する制御回路とを備えたことを特徴とする。
【0014】
前記電源制御回路において、前記制御回路は、前記複数の検出器回路からの少なくとも1つの検出信号に基づいて、前記論理回路のためのクロックに同期して、当該検出信号から所定の遅延時間だけ遅延された期間後に、前記論理回路に電源電圧を供給するように前記スイッチ手段を制御する。
【0015】
また、前記電源制御回路において、前記遅延時間は、前記論理回路のためのクロックの1サイクルの時間に所定の時間を加算した時間であることを特徴とする。
【0016】
さらに、前記電源制御回路において、前記電源制御回路は、前記電源電圧が前記スイッチ手段を介して前記論理回路に供給される電圧が実質的に前記電源電圧に等しいか否かを判断し、実質的に等しいときに電圧センサ信号を出力する比較手段をさらに備え、
前記制御回路は、前記複数の検出器回路からの少なくとも1つの検出信号に加えて、前記電圧センサ信号に基づいて、前記論理回路に電源電圧を供給するように前記スイッチ手段を制御することを特徴とする。
【0017】
またさらに、前記電源制御回路において、複数段の請求項1記載の論理回路を備え、前記複数段の論理回路が第1の記憶手段を介して縦続接続されて構成された論理回路装置のための電源制御回路であって、
前記第1の記憶手段には所定の電源電圧が供給され、
前記電源制御回路は、
1段目〜複数段目のスイッチ手段を含み、前記電源電圧を前記複数段の論理回路にそれぞれ供給するか否かを選択的に切り替える複数のスイッチ手段と、
前記第1の記憶手段に入力される複数の入力信号の信号レベルの変化をそれぞれ検出し、当該信号レベルの変化を検出したときに検出信号をそれぞれ出力する複数の検出器回路と、
前記複数の検出器回路からの少なくとも1つの検出信号に基づいて、前記論理回路に電源電圧を供給するように前記1段目のスイッチ手段を制御する一方、前記複数の検出器回路から検出信号が出力されないとき前記論理回路に電源電圧を供給しないように前記1段目のスイッチ手段を制御する電源制御信号を発生する制御回路と、
前記電源制御信号を前記論理回路のためのクロックに同期して一時的に記憶して次段の電源制御信号を発生して前記2段目のスイッチ手段に出力する第2の記憶手段とを備えたことを特徴とする。
【0018】
第2の発明にかかる論理回路装置は、前記電源制御回路を備えたことを特徴とする。
【発明の効果】
【0019】
本発明に係る電源制御回路等によれば、論理回路のための電源制御回路において、従来例に比較して電源電圧を回復するための待ち時間を短縮することができ、消費電力を軽減できる。
【図面の簡単な説明】
【0020】
【
図1】従来例1にかかる論理回路とその電源制御回路の構成を示すブロック図である。
【
図2】従来例2にかかる論理回路とその電源制御回路の構成を示すブロック図である。
【
図3】従来例3にかかる論理回路とその電源制御回路の構成を示すブロック図である。
【
図4】従来例4にかかる論理回路とその電源制御回路の構成を示すブロック図である。
【
図5】実施形態1にかかる論理回路とその電源制御回路の構成例を示すブロック図である。
【
図6】実施形態1の変形例1にかかる論理回路とその電源制御回路の構成例を示すブロック図である。
【
図7A】実施形態1の変形例2にかかる論理回路とその電源制御回路の構成例を示すブロック図である。
【
図7B】
図7Aの回路の動作例を示すタイミングチャートである。
【
図8A】
図5の検出器回路DCの構成例を示す回路図である。
【
図8B】
図8Aの検出器回路DCの動作例を示すタイミングチャートである。
【
図9】
図5の制御回路20の構成例を示す回路図である。
【
図10】実施形態2にかかる論理回路装置とその電源制御回路の構成例を示すブロック図である。
【
図11A】実施形態2の回路の第1段目の回路の構成例を示すブロック図である。
【
図12A】実施形態2の回路の第2段目以降の回路の構成例を示すブロック図である。
【
図13】
図10の回路において、各論理回路10A,10B,10Cの電源供給を順次オフしたときの動作例を示すタイミングチャートである。
【
図14】
図10の回路において、各論理回路10A,10B,10Cの電源供給を順次オンしたときの動作例を示すタイミングチャートである。
【
図15】
図10の回路において、各論理回路10A,10B,10Cの電源供給をオン又はオフしたときの動作例を示すタイミングチャートである。
【発明を実施するための形態】
【0021】
以下、本発明の実施形態について説明する。図面において、同一又は同様の構成要素については同一の符号を付してその説明を省略する。
【0022】
本発明にかかる実施形態は、論理回路での低消費電力に関するものである。論理回路にリーク電流が増加し、リーク電流が大きい場合でも、スタンバイ電流を低く抑えることを目的としている。本実施形態にかかるアイデアの最も重要な項目は以下の通りである。
【0023】
電源供給信号の状態に変化してから動作状態になるまでに時間がかかることはない。そして、このアイデアは待ち時間の操作を実現しない。この考え方には、電源遮断トランジスタも含まれているが、このトランジスタの寸法は比較的小さい。電源遮断の延長はわずかである。1つのアプリケーションユニット対して多くの電源遮断トランジスタが存在する。このアイデアは回路がめったに使用されない、例えばセキュリティ回路などの急速な動作が必要なアプリケーションには有効である。このアイデアのポイントは次の通りである。
(1)遅延型フリップフロップの入力信号の変化を検出する検出器回路DC1〜DCM(
図5)を備える。
(2)検出器回路DC1〜DCMからの検出信号に基づいて、制御回路20は、電源電圧遮断用MOSトランジスタQ1を制御し、論理回路10が多段構成のときに設けられるシフトレジスタ30を介して次段の電源電圧遮断用MOSトランジスタQ31、Q32等(
図10)を制御すること。
(3)遅延型フリップフロップFFI1〜FFIM,FFO1〜FFON等に対して電源遮断の制御を行わない。
【0024】
実施形態1.
図5は実施形態1にかかる論理回路とその電源制御回路(論理回路以外の回路をいい、以下同様である。また、論理回路と電源制御回路を備えて論理回路装置という)の構成例を示すブロック図である。
図5の回路は、
図1の回路に比較して、以下の相違点を有する。
(1)入力側の遅延型フリップフロップFFI1〜FFIMに入力される各入力信号の変化をそれぞれ検出して1つのパルス信号である検出信号を出力する検出器回路(DC)DC1〜DCMを備える。
(2)検出信号に応答して、Lレベルの電源制御信号Sccを発生して、スイッチ手段又はスイッチ素子である電源制御用PチャネルMOSトランジスタQ1のゲート及びシフトレジスタ30に印加する制御回路(CC)20を備える。シフトレジスタ30は入力される電源制御信号Sccを例えば1クロック(これに代えて所定クロック期間でもよい)だけ遅延させた後、次段の電源制御用MOSトランジスタ及びシフトレジスタに出力する。
(3)それぞれ一時記憶手段である、入力側の遅延型フリップフロップFFI1〜FFIM及び出力側の遅延型フリップフロップFFO1〜FFONには、電源制御用PチャネルMOSトランジスタQ1を介することなく、直接に電源電圧Vddが印加される。
【0025】
図5において、各検出器回路DC1〜DCMはそれぞれ入力信号Sin1〜SinMの信号レベルの変化を検出したとき、1個のパルス信号である検出信号を制御回路20に出力する。当該検出信号に応答して、制御回路20はクロックCLKに同期してLレベルの電源制御信号Sccを発生してPチャネルMOSトランジスタQ1のゲートに出力するとともに、シフトレジスタ30に出力する。シフトレジスタ30は入力される電源制御信号Sccに基づいて、次のクロックCLKに同期して電源制御信号Sccを次段の回路に出力する。PチャネルMOSトランジスタQ1のゲートにLレベルの電源制御信号Sccが印加されたとき、MOSトランジスタQ1がオンされ、電源電圧VddがMOSトランジスタQ1を介して供給電圧Vddlとして、所定の論理演算を行う論理回路10に供給されて、当該論理回路10が動作する。
【0026】
図6は実施形態1の変形例1にかかる論理回路とその電源制御回路の構成例を示すブロック図である。
図6の回路は、
図5の回路に比較して以下の点が異なる。
(1)供給電圧Vddlが実質的に電源電圧Vddに等しいとき(Vddl≒Vdd)、すなわち、具体的にはVdd1=Vdd±ΔVd(微小電圧範囲内にある)のとき、Hレベルの電圧センサ信号Svsを各遅延型フリップフロップFFI1〜FFIMに出力するコンパレータ40を備える。
(2)各遅延型フリップフロップFFI1〜FFIMはそれぞれ、Hレベルの電圧センサ信号Svsが入力されるときにのみ出力信号を出力する。
【0027】
すなわち、
図6の回路では、入力信号Sin1〜SinMの信号レベルの変化を検出したときに、制御回路20はLレベルの電圧センサ信号SccをMOSトランジスタQ1のゲートに印加する。このとき、MOSトランジスタQ1がオンとされた後、コンパレータ40はVddl≒Vddであることを検出して電圧センサ信号Svsを各遅延型フリップフロップFFI1〜FFIMに出力する。これに応答して、各遅延型フリップフロップFFI1〜FFIMはそれぞれ入力信号Sin1〜SinMを論理回路10に出力する。すなわち、論理回路10への電源供給を確認したうえで論理回路10は動作を開始できるので、論理回路10が誤動作することを防止できる。
【0028】
図6のコンパレータ40を用いた回路は、他の実施形態及び他の変形例にも適用してもよい。
【0029】
図7Aは実施形態1の変形例2にかかる論理回路とその電源制御回路の構成例を示すブロック図である。また、
図7Bは
図7Aの回路の動作例を示すタイミングチャートである。
図7Aの回路は、
図5の回路に比較して以下の点が異なる。
(1)制御回路20の電源制御信号Sccの出力端子と、MOSトランジスタQ1のゲートとの間に、直列に接続された信号時間調整用の2個のインバータINV11,INV12が挿入される。
【0030】
図7Aの回路において、検出器回路DC1〜DCMはそれぞれ遅延型フリップフロップFFI1〜FFIMの各入力端子に接続され、各フリップフロップFFI1〜FFIMへの入力信号Sin1〜SinMが変化すると、
図7Bに示すように、検出器回路DC1〜DCMは1つのパルス信号である検出信号Sbb1〜SbbMを発生して制御回路20に出力する。複数の検出器回路DC1〜DCMのうちの1つが検出信号を制御回路20に出力すると、制御回路20はLレベルの電源制御信号Sccを発生してインバータINV11,INV12を介してPチャネルMOSトランジスタQ1のゲートに印加する。このとき、電源電圧Vddが論理回路10に供給される。その後、論理回路10が動作する。ここで、検出信号Sbb1〜SbbM(総称して、符号Sbbを付す)であるパルス信号のパルス幅は1サイクルと同じように設定される。制御回路20は、電源制御信号Sccの立ち下りから1サイクル後、遅延型フリップフロップFFI1〜FFIMへの入力信号Sin1〜SinMが変化しなければ、電源制御信号Sccの立ち下りから時間期間Tca後(Tca=1サイクル+α)に電源制御信号Sccをハイレベルに変化させて、MOSトランジスタQ1をオフとし、論理回路10への電源供給を自動的に遮断させる。
【0031】
図8Aは
図5の検出器回路DC1〜DCM(総称して、符号DCを付す)の構成例を示す回路図である。また、
図8Bは
図8Aの検出器回路DCの動作例を示すタイミングチャートである。
【0032】
図8Aにおいて、2個のインバータINV21,INV22及びキャパシタC1からなる遅延回路50と、インバータINV23と、インバータINV24及び伝送ゲートTG1,TG2がループ形状に接続されてなるラッチ回路と、出力インバータINV25とを備えて構成される。
図8Aの回路は、入力信号Sinを遅延させる遅延回路と、入力信号Sinに対して排他的論理和の信号変化を検出する検出回路とから構成される。
【0033】
図8Bに示すように、入力信号Sinがハイレベルからローレベルに、もしくはローレベルからハイレベルに変化すると、検出回路の出力信号は、遅延回路50の遅延時間によってパルス幅が決まるパルス信号である検出信号Sbbを発生する。ここで、
図8Aの回路は非常に高速に動作する。
【0034】
図9は
図5の制御回路20の構成例を示す回路図である。
図9において、制御回路20は、(1)入力信号Sbb1〜SbbMに対してオアゲート回路71と、(2)オアゲート回路の出力信号を所定期間遅延させる遅延出力回路72とを備えて構成される。ここで、オアゲート回路71は、MOSトランジスタQ21−1〜Q21−M,Q20,Q22とを備えて構成される。ここで、S52は例えばチップイネーブル信号であって、アクティブ時にハイレベルになり、非アクティブ時にローレベルになる動作制御信号である。また、遅延出力回路72は、MOSトランジスタQ23と、インバータINV27,INV28と、遅延回路50と、インバータINV28,INV29とを備えて構成される。遅延回路50は、4個のインバータINV31〜INV34と、3個のキャパシタC11〜C13とを備えて構成される。
【0035】
以上のように構成された制御回路20は、複数M個の入力信号Sbb1〜SbbMのうちの少なくとも1個のパルス信号に応答して1個のパルス信号を発生して所定の遅延時間だけ遅延させて時間期間Tcaのローレベルの電源制御信号Sccを発生して出力する。
【0036】
以上のように構成された実施形態1又はその変形例にかかる電源制御回路を備えた論理回路によれば、各検出器回路DC1〜DCMはそれぞれ入力信号Sin1〜SinMの信号レベルの変化を検出したとき1個のパルス信号である検出信号Sbb1〜SbbMを制御回路20に出力する。制御回路20はクロックCLKに同期して、入力信号Sin1〜SinMのうちの少なくとも1つに応答してLレベルの電源制御信号Sccを発生してPチャネルMOSトランジスタQ1のゲートに出力することで、MOSトランジスタQ1がオンされ、電源電圧VddがMOSトランジスタQ1を介して供給電圧Vddlとして論理回路10に供給されて、当該論理回路10が動作する。以上の動作により、論理回路のための電源制御回路において、従来例に比較して電源電圧を回復するための待ち時間を短縮することができ、消費電力を軽減できる。
【0037】
実施形態2.
図10は実施形態2にかかる論理回路装置(複数段の論理回路が縦続接続された回路装置をいう)とその電源制御回路の構成例を示すブロック図である。
図10の回路は、
図5の回路を第1段目として用いてその後、縦続接続して2段目以降の回路を連結したことを特徴とする。ただし、検出回路DCCは前記縦続接続ではなく、遅延型フリップフロップ回路DCCに接続される。すなわち、
(1)入力信号Sin1〜SinMをそれぞれ受信する複数M個の遅延型フリップフロップFFI1〜FFIMを含む遅延型フリップフロップ回路FFAと、
(2)遅延型フリップフロップDC1〜DCMに接続され、入力信号Sin1〜SinMをそれぞれ検出する検出器回路DC1〜DCMを含む検出回路DCCと、
(3)論理回路10と同様の構成(論理構成は異なる)を有し、遅延型フリップフロップ回路FFAからの複数の入力信号を論理処理する論理回路10Aと、
(4)論理回路10Aからの複数個の出力信号をそれぞれ受信する複数個の遅延型フリップフロップを含む遅延型フリップフロップ回路FFBと、
(5)論理回路10と同様の構成(論理構成は異なる)を有し、遅延型フリップフロップ回路FFBからの複数の出力信号を論理処理する論理回路10Bと、
(6)論理回路10Bからの複数個の出力信号をそれぞれ受信する複数個の遅延型フリップフロップを含む遅延型フリップフロップ回路FFCと、
(7)論理回路10と同様の構成(論理構成は異なる)を有し、遅延型フリップフロップ回路FFCからの複数の出力信号を論理処理する論理回路10Cと、
(8)論理回路10Cからの複数個の出力信号をそれぞれ受信する複数個の遅延型フリップフロップを含む遅延型フリップフロップ回路FFDとを備える。
【0038】
制御回路20は実施形態1と同様に動作し、Lレベルの電源制御信号Scc(A)を発生して、論理回路10Aの電源供給を制御するMOSトランジスタQ1のゲート及びシフトレジスタ30に出力する。シフトレジスタ30は
図6のシフトレジスタ30と同様に、クロックCLKに同期して例えば1サイクルなど所定のサイクル期間遅延させた後、遅延された信号をLレベルの電源制御信号Scc(B)として論理回路10Bの電源供給を制御するMOSトランジスタQ31のゲート及びシフトレジスタ31に出力する。また、シフトレジスタ31はシフトレジスタ30と同様に、クロックCLKに同期して所定のサイクル期間遅延させた後、遅延された信号をLレベルの電源制御信号Scc(C)として論理回路10Cの電源供給を制御するMOSトランジスタQ32のゲート及びシフトレジスタ32に出力する。さらに、シフトレジスタ32も同様に動作する。
【0039】
以上のように構成された
図10の回路において、入力信号Sin1〜SinMにおいてレベル変化がないときは、制御回路20はHレベルの電源制御信号Scc(A)を発生することで、MOSトランジスタQ1をオフとし、論理回路10Aには電源電圧Vddが供給されず動作しない。次に、次のサイクルで、シフトレジスタ30からの電源制御信号Scc(B)はHレベルとなり、MOSトランジスタQ31がオフとされて論理回路10Bの電源をオフにする。その後、論理回路10Cも同様に動作する。
【0040】
図11Aは実施形態2の回路の第1段目の回路の構成例を示すブロック図である。また、
図11Bは
図11Aの回路の動作例を示すタイミングチャートである。
図11Aの回路は
図10の回路に比較して、制御回路20とMOSトランジスタQ1のゲートとの間にインバータINV11,INV12を挿入したことのみ相違する。
【0041】
実施形態2の回路では、第1段目の回路のみが入力信号Sin1〜SinMをそれぞれ検出する検出器回路DC1〜DCMを含む検出回路DCC及び制御回路20を備える。
図11Bの動作例では、入力信号Sin2のレベルが変化した後、クロックCLKに同期して入力信号Sin2が遅延型フリップフロップFFI2を介して論理回路10Aに転送されるとともに、電源制御信号Scc(A)によりMOSトランジスタQ1がオンとされ、論理回路10Aに電源電圧Vddが供給される。
【0042】
図12Aは実施形態2の回路の第2段目以降の回路の構成例を示すブロック図である。また、
図12Bは
図12Aの回路の動作例を示すタイミングチャートである。
図12Aの回路は
図10の回路に比較して、シフトレジスタ31とMOSトランジスタQ32のゲートとの間にインバータINV13,INV14を挿入したことのみ相違する。
【0043】
実施形態2の回路の第2段目以降の回路では、前段のシフトレジスタ30からの電源制御信号Scc(B)を受信するためにシフトレジスタ31が設けられ、シフトレジスタ31はシフトレジスタ30と同様に例えば1サイクル遅延させてLレベルの電源制御信号Scc(C)を発生してインバータINV13,INV14を介して、論理回路10Cの電源供給を制御するMOSトランジスタQ32のゲートに印加する。
図12Bにおいて、電源制御信号Scc(B)dは電源制御信号Scc(B)から所定の遅延時間だけ遅延された遅延電源制御信号であって、セレクタ60の切り替え信号として用いる。セレクタ60は、電源制御信号Scc(B)dに基づいて、論理回路10Cが非動作時には変化しないHレベル信号をクロックCLK−Cとして複数M個の遅延型フリップフロップFFC1〜FFCMに出力する一方、論理回路10Cが動作時にはクロックCLKを選択してクロックCLK−Cとして複数M個の遅延型フリップフロップFFC1〜FFCMに出力する。
【0044】
以上のように構成された回路の動作を
図12Bに示しており、電源制御信号Scc(B)に基づいて電源制御信号Scc(C)が発生されて当該
図12Aの回路が動作することがわかる。
【0045】
図13は
図10の回路において、各論理回路10A,10B,10Cの電源供給を順次オフしたときの動作例を示すタイミングチャートである。
図13から明らかなように、電源制御信号Scc(A),Scc(B),Scc(C)に基づいて論理回路10A,10B,10Cへの電源供給が順次オフされていることがわかる。なお、
図13〜
図15において、FL1〜FL3は電源電圧のフローティングレベルを表す。
【0046】
図14は
図10の回路において、各論理回路10A,10B,10Cの電源供給を順次オンしたときの動作例を示すタイミングチャートである。
図13から明らかなように、電源制御信号Scc(A),Scc(B),Scc(C)に基づいて論理回路10A,10B,10Cへの電源供給が順次オンされていることがわかる。
【0047】
図15は
図10の回路において、各論理回路10A,10B,10Cの電源供給をオン又はオフしたときの動作例を示すタイミングチャートである。
図15から明らかなように、入力信号Sinに基づいて発生された電源制御信号Scc(A),Scc(B),Scc(C)に応じて、論理回路10A,10B,10Cへの電源供給がオン又はオフされていることがわかる。
【0048】
以上のように構成された実施形態2にかかる電源制御回路を備えた論理回路においても、実施形態1と同様に、入力信号Sinの変化に基づいて各論理回路10A,10B,10Cへの電源供給をオンする一方、入力信号Sinが変化しないときに各論理回路10A,10B,10Cへの電源供給をオフする。以上の動作により、論理回路のための電源制御回路において、従来例に比較して電源電圧を回復するための待ち時間を短縮することができ、消費電力を軽減できる。
【0049】
特許文献1及び2との相違点.
特許文献1では、半導体装置のチャージ電力を効果的に削減するチャージリサイクルを実現するために、半導体装置は、複数の回路ブロック、回路ブロックそれぞれに電源を供給するローカル配線、ローカル配線に電源を供給するグローバル配線、ローカル配線それぞれとグローバル配線の間に配置された第1のスイッチ、2つのローカル配線の間に配置された第2のスイッチを有する。判定部は、2つのローカル配線の間の電位差が基準値以下であることを示す判定信号を出力する。電源制御部101は、電源制御命令および判定信号に従い、第1のスイッチおよび第2のスイッチの開閉をそれぞれ制御する。しかしながら、特許文献1の半導体装置では、電源遮断期間における電源遮断にかかる余分な充電が、活性される回路ブロックに対するリサイクル充電として用いるので、従来例と同様に消費電力を軽減できない。
【0050】
特許文献2では、細粒度パワーゲーティングにおいて、オーバーヘッドの?ない小さな改良によって,非常に理想的なエネルギー削減効果を達成するために、アイドルサイクルカウンタが設けられている。アイドルサイクルカウンタは、入力を検知した場合にはアイドルサイクルレジスタをリセットし、入力を検知しない場合にはアイドルサイクルカウンタに加算する。比較器は、アイドルサイクルレジスタに保持されたアイドルサイクルとBECレジスタに保持されたデータBECとを比較して、比較結果に応じて電源遮断処理又は電源非遮断処理のトリガーとなるフラグである予測フラグを予測フラグレジスタに書き込む。電源遮断器は、電源と論理回路ブロックの間に接続され、アイドル期間が始まったときに、予測フラグレジスタに保持されている予測フラグに応じて電源供給を制御する。しかしながら、アイドルサイクルカウンタを用いて電源遮断を行っているので、従来例と同様に消費電力を軽減できない。
【産業上の利用可能性】
【0051】
以上詳述したように、本発明に係る電源制御回路等によれば、論理回路のための電源制御回路において、従来例に比較して電源電圧を回復するための待ち時間を短縮することができ、消費電力を軽減できる。
【符号の説明】
【0052】
10,10A,10B,10C 論理回路、
11 入力信号処理回路、
12 出力信号処理回路、
20 制御回路(CC)、
30〜32 シフトレジスタ(SR)、
40 コンパレータ、
50,51 遅延回路、
60 セレクタ、
71 オアゲート回路、
72 遅延出力回路、
C1〜C13 キャパシタ、
DC1〜DCM 検出器回路(DC)、
DCC 検出回路、
FFI1〜FFIM,FFO1〜FFON、FFA1〜FFAM,FFC1〜FFCM 遅延型フリップフロップ、
FFA,FFB,FFC,FFD 遅延型フリップフロップ回路、
INV1〜INV29 インバータ、
NAND1 ナンドゲート、
NOR1 ノアゲート、
Q1〜Q32,Q21−1〜Q21−M MOSトランジスタ、
TG1,TG2 伝送ゲート。
【要約】
【課題】論理回路のための電源制御回路において、従来例に比較して電源電圧を回復するための待ち時間を短縮することができ、消費電力を軽減する。
【解決手段】複数の入力信号を一時記憶して出力する記憶手段からの複数の入力信号に対して所定の論理演算を行って、論理演算後の複数の出力信号を出力する論理回路のための電源制御回路である。記憶手段には電源電圧が供給され、電源制御回路は、電源電圧を論理回路に供給するか否かを切り替えるスイッチ手段と、複数の入力信号の信号レベルの変化をそれぞれ検出し、信号レベルの変化を検出したときに検出信号をそれぞれ出力する複数の検出器回路と、複数の検出器回路からの少なくとも1つの検出信号に基づいて、論理回路に電源電圧を供給するようにスイッチ手段を制御する一方、複数の検出器回路から検出信号が出力されないとき論理回路に電源電圧を供給しないようにスイッチ手段を制御する制御回路とを備える。
【選択図】
図5