(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6389957
(24)【登録日】2018年8月24日
(45)【発行日】2018年9月12日
(54)【発明の名称】オイル回収手段を有する圧縮機
(51)【国際特許分類】
F04C 18/02 20060101AFI20180903BHJP
【FI】
F04C18/02 311Y
【請求項の数】13
【全頁数】14
(21)【出願番号】特願2017-514344(P2017-514344)
(86)(22)【出願日】2015年8月27日
(65)【公表番号】特表2017-527738(P2017-527738A)
(43)【公表日】2017年9月21日
(86)【国際出願番号】KR2015009000
(87)【国際公開番号】WO2016190490
(87)【国際公開日】20161201
【審査請求日】2017年3月13日
(31)【優先権主張番号】10-2015-0073005
(32)【優先日】2015年5月26日
(33)【優先権主張国】KR
(73)【特許権者】
【識別番号】516011246
【氏名又は名称】ハンオン システムズ
(74)【代理人】
【識別番号】110000051
【氏名又は名称】特許業務法人共生国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】ムン,チ ミョン
(72)【発明者】
【氏名】リム,クォン スゥ
(72)【発明者】
【氏名】リム,ジェ フン
(72)【発明者】
【氏名】ジョン,スゥ チョル
【審査官】
新井 浩士
(56)【参考文献】
【文献】
特開2010−163877(JP,A)
【文献】
特開2013−234666(JP,A)
【文献】
特開2002−213380(JP,A)
【文献】
特開2013−204457(JP,A)
【文献】
韓国公開特許第10−2011−0006181(KR,A)
【文献】
特開2007−032511(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
F04C 18/02
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
メインハウジングと、
該メインハウジングに旋回可能に装着される旋回スクロールと、
該旋回スクロールと噛み合って圧縮室を形成する固定スクロールと、
該固定スクロールの吐出側と連通する吐出空間及び該吐出空間内に捕集されたオイルが一時的に貯蔵される捕集空間を備える補助ハウジングとを含み、
前記固定スクロールに形成され、前記捕集空間と連通するオイル回収流路と、
前記メインハウジングに形成され、前記オイル回収流路と連通し少なくとも2箇所にオイルを供給するように分枝されて形成されるオイル供給流路とを含み、
前記メインハウジングには、回転軸の収容される吸入空間が形成され、前記オイル供給流路は、前記吸入空間と連通する第1オイル供給流路を含み、
前記旋回スクロールの背面と前記メインハウジングの対向面との間に背圧室が形成され、前記オイル供給流路は、前記背圧室と連通する第2オイル供給流路を含み、
前記第1オイル供給流路の吐出側における冷媒圧力が、前記第2オイル供給流路の吐出側における冷媒圧力より低く形成され、
前記第1オイル供給流路に減圧手段が設けられ、
前記減圧手段は、外周面に長手方向に沿って螺旋状に延びるオイル移送溝が形成されるオイル移送部材を含み、
前記オイル移送部材は、内部に水圧空間が設けられ、一側端部に前記水圧空間と連通する連通ホールが形成されたことを特徴とするオイル回収手段を有する圧縮機。
【請求項2】
メインハウジングと、
該メインハウジングに旋回可能に装着される旋回スクロールと、
該旋回スクロールと噛み合って圧縮室を形成する固定スクロールと、
該固定スクロールの吐出側と連通する吐出空間及び該吐出空間内に捕集されたオイルが一時的に貯蔵される捕集空間を備える補助ハウジングと、を含み、
前記固定スクロールに形成され、前記捕集空間と連通するオイル回収流路と、
前記メインハウジングに形成され、前記オイル回収流路と連通し少なくとも2箇所にオイルを供給するように分枝されて形成されるオイル供給流路とを含み、
前記メインハウジングには、回転軸の収容される吸入空間が形成され、前記オイル供給流路は、前記吸入空間と連通する第1オイル供給流路を含み、
前記オイル回収流路には減圧手段が設けられ、
前記オイル回収流路には、前記減圧手段が挿入されるための設置空間が形成され、該設置空間の内径は、前記オイル回収流路の流入口より大きい内径を有するように形成され、
前記減圧手段は、外周面に長手方向に沿って螺旋状に延びるオイル移送溝が形成されるオイル移送部材を含み、
前記オイル移送部材は、内部に水圧空間が設けられ、一側端部に前記水圧空間と連通する連通ホールが形成されたことを特徴とするオイル回収手段を有する圧縮機。
【請求項3】
前記第1オイル供給流路には、前記減圧手段が挿入されるための設置空間が形成され、該設置空間の内径は、前記第1オイル供給流路の吐出口より大きい内径を有するように形成されることを特徴とする請求項1または2に記載のオイル回収手段を有する圧縮機。
【請求項4】
前記第1および第2オイル供給流路は、前記オイル回収流路の吐出口と連通する共通の流入口を有することを特徴とする請求項1に記載のオイル回収手段を有する圧縮機。
【請求項5】
前記旋回スクロールと前記メインハウジングとの間には、前記背圧室をシーリングするためのシーリング手段が備えられ、前記共通の流入口は、前記シーリング手段の半径方向の外側に配置されることを特徴とする請求項4に記載のオイル回収手段を有する圧縮機。
【請求項6】
前記固定スクロールと前記メインハウジングとの間からの冷媒漏れを防止するためのシーリング手段が固定スクロールとメインハウジングとの間に介在し、
前記シーリング手段には、前記オイル回収流路と前記第1オイル供給流路とを連結させるための通孔が形成されることを特徴とする請求項1または2に記載のオイル回収手段を有する圧縮機。
【請求項7】
前記減圧手段は、前記固定スクロールおよびメインハウジングより低い剛性を有する材質からなることを特徴とする請求項1または2に記載のオイル回収手段を有する圧縮機。
【請求項8】
回転軸の収容される吸入空間が備えられるメインハウジングと、
該メインハウジングに旋回可能に装着される旋回スクロールと、
該旋回スクロールと噛み合って圧縮室を形成する固定スクロールと、
該固定スクロールの吐出側と連通する吐出空間および該吐出空間内に捕集されたオイルが一時的に貯蔵される捕集空間を備える補助ハウジングと、
前記旋回スクロールを前記固定スクロール側に加圧する圧力が印加され、前記メインハウジングに形成される背圧室と、
前記捕集空間と連通するように前記固定スクロールに形成され、内部に減圧手段が備えられるオイル回収流路と、
前記メインハウジングに形成され、前記オイル回収流路と吸入空間との間から延びる第1オイル供給流路と、
前記オイル回収流路および第1オイル供給流路にそれぞれ備えられる2つの減圧手段と、
前記2つの減圧手段の間から分枝されて前記背圧室に連通する第2オイル供給流路とを含み、
前記減圧手段は、長手方向に延びる円筒状の形態を有するオイル移送部材であって、
前記オイル移送部材の外周面には、長手方向に沿って延びる第1オイル供給流路の内壁とともにオイルが移送経路を提供する螺旋状のオイル移送溝が形成され、前記オイル移送部材は、中空状の形態を有し、一側端部が開放端部からなり、他側端部は、閉鎖端部からなり、
前記開放端部を通してオイルの一部が、前記オイル移送部材内部の水圧空間に流入することを特徴とするオイル回収手段を有する圧縮機。
【請求項9】
前記第2オイル供給流路は、前記メインハウジングの一側端部に流入口が備えられることを特徴とする請求項8に記載のオイル回収手段を有する圧縮機。
【請求項10】
前記旋回スクロールとメインハウジングとの間には、前記背圧室をシーリングするためのシーリング手段が備えられ、前記流入口は、前記シーリング手段の半径方向の外側に配置されることを特徴とする請求項9に記載のオイル回収手段を有する圧縮機。
【請求項11】
前記オイル回収流路および第1オイル供給流路の少なくとも1つには、前記減圧手段が挿入されるための設置空間が形成され、前記設置空間の一側端部には段付部が形成されることを特徴とする請求項8に記載のオイル回収手段を有する圧縮機。
【請求項12】
前記段付部は、前記減圧手段の移動を阻止して、減圧手段が定位置に位置するように形成されることを特徴とする請求項11に記載のオイル回収手段を有する圧縮機。
【請求項13】
前記固定スクロールとメインハウジングとの間からの冷媒漏れを防止するためのシーリング手段が固定スクロールとメインハウジングとの間に介在し、
前記シーリング手段には、前記オイル回収流路と第1オイル供給流路とを連通させるための通孔が形成されることを特徴とする請求項8に記載のオイル回収手段を有する圧縮機。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、オイル回収手段を備えた圧縮機に係り、より詳しくは、吐出される冷媒に混入されたオイルを圧縮機の内部空間に回収するための手段を備えた圧縮機に関する。
【背景技術】
【0002】
一般的に、自動車には、車室の冷暖房のための空調装置(Air Conditioning;A/C)が設けられる。このような空調装置は、冷房システムの構成として、蒸発器から引き込まれた低温低圧の気相冷媒を高温高圧の気相冷媒に圧縮させて凝縮器に送る圧縮機を備えている。
圧縮機には、ピストンの往復運動により冷媒を圧縮する往復式と、回転運動をしながら圧縮を行う回転式とがある。往復式には、駆動源の伝達方式によって、クランクを用いて複数のピストンに伝達するクランク式、斜板が設けられた回転軸に伝達する斜板式などがあり、回転式には、回転するロータリ軸とベーンを用いるベーンロータリ式、旋回スクロールと固定スクロールを用いるスクロール式がある。
圧縮機は、ロータを回転させて圧縮ユニットを駆動させることにより冷媒を圧縮するが、ロータのような回転体をはじめとして圧縮ユニットの駆動体は、固定体と繰り返される摩擦運動をすることになるので、潤滑が必須であり、要求されている。特に、スクロール圧縮機において、固定スクロールと旋回スクロールとの間での潤滑はさらに重要である。動力損失を最小化し、摩耗による損傷を防止するためには、固定スクロールと旋回スクロールとの間の摩擦を最小化しなければならない。圧縮効率の向上のためには、固定スクロールおよび旋回スクロールの間からの冷媒漏れを最小化しなければならない。
【0003】
したがって、従来から、冷媒にオイルを混入して圧縮室内における機械的な摩擦部位を潤滑する方式が利用されてきた。この方式によれば、オイル供給構造を単純化できて効率的であるが、冷媒に混入されて圧縮機の外部に吐出されるオイルにはオイル量減少の問題がある。
このために、オイル分離器が圧縮機とともに用いられる。ある特定の形態では、圧縮機とは別途に備えられたオイル分離器を用いる場合もあるが、自動車のように設置空間が狭い場合には、圧縮機ハウジングにオイル分離器を一体に形成する場合がある。このようなオイル分離器は、吐出される冷媒を衝突させて混入されたオイルを捕集し、これを再び圧縮機の内部に回収する。しかし、このように回収されたオイルを圧縮機の内部に供給するにあたり、必要な部分に適切な流量で供給しなければならない。そのために、オイル供給流路が複雑になる問題がある。したがって、オイル供給流路を単純化しながら、かつ効率的に回収されたオイルが供給できるようにする手段が必要とされている。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
本発明は上述した問題点を解消するためになされたものであって、その目的とするところは、回収されたオイルを効率的に圧縮機ハウジングの内部に供給することができるオイル回収手段を有する圧縮機を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0005】
上述した目的を達成するためになされた本発明のオイル回収手段を備えた圧縮機は、メインハウジングと、ハウジングに旋回可能に装着される旋回スクロールと、旋回スクロールと噛み合って圧縮室を形成する固定スクロールと、固定スクロールの吐出側と連通する吐出空間および吐出空間内に捕集されたオイルが一時的に貯蔵される捕集空間を備える補助ハウジングとを含み、固定スクロールに形成され、捕集空間と連通するオイル回収流路と、メインハウジングに形成され、オイル回収流路と連通し少なくとも2箇所にオイルを供給するように分枝されて形成されるオイル供給流路とを含むことを特徴とする。
【0006】
本発明の一側面によれば、固定スクロール側に1つのオイル流路を形成し、これと並んで配置される他の構成要素、例えば、メインハウジング内にオイル流路と連通する他の流路を形成され、複数の個所にオイルが供給できるようにしている。
ここで、メインハウジングには、回転軸の収容される吸入空間が形成され、オイル供給流路は、吸入空間と連通する第1オイル供給流路を含むことができる。
また、旋回スクロールの背面とメインハウジングの対向面との間に背圧室が形成され、オイル供給流路は、背圧室と連通する第2オイル供給流路を含むことができる。
【0007】
オイル回収流路には減圧手段が設けられる。
この時、オイル回収流路には、減圧手段が挿入されるための設置空間が形成され、設置空間の内径は、オイル回収流路の流入口より大きい内径を有するように形成される。
一方、第1オイル供給流路の吐出側における冷媒圧力が、第2オイル供給流路の吐出側における冷媒圧力より低く形成される。
【0008】
ここで、第1オイル供給流路に減圧手段が設けられる。
第1オイル供給流路には、減圧手段が挿入されるための設置空間が形成され、設置空間の内径は、第1オイル供給流路の吐出口より大きい内径を有するように形成される。
第1および第2オイル供給流路は、オイル回収流路の吐出口と連通する共通の流入口を有することができる。
【0009】
旋回スクロールとメインハウジングとの間には、背圧室をシーリングするためのシーリング手段が備えられ、共通の流入口は、シーリング手段の半径方向の外側に配置される。
減圧手段は、外周面に長手方向に沿って螺旋状に延びるオイル移送溝が形成されるオイル移送部材を含むことができる。
オイル移送部材は、内部に水圧空間が設けられ、一側端部に水圧空間と連通する連通ホールが形成される。
【0010】
オイル移送部材の外周面に嵌合するカバーを追加的に含むことができる。
減圧手段は、内部に長手方向に沿って螺旋状に延びるオイル移送溝が形成されるオイル移送部材を含むことができる。
オイル移送部材は、内部に水圧空間が設けられ、一側端部に水圧空間と連通する連通ホールが形成される。
【0011】
減圧手段は、オイル移送部材と、オイル移送部材の外周面に嵌合し、内側壁に長手方向に沿って螺旋状に延びるオイル移送溝が形成されるカバーとを含むことができる。
固定スクロールとメインハウジングとの間からの冷媒漏れを防止するためのシーリング手段が固定スクロールとメインハウジングとの間に介在し、シーリング手段には、オイル回収流路と第1オイル供給流路とを連通させるための通孔が形成される。
減圧手段は、固定スクロールおよびメインハウジングより低い剛性を有する材質からなるとよい。
【0012】
本発明の他の側面によれば、本発明のオイル回収手段を有する圧縮機は、回転軸の収容される吸入空間が備えられるメインハウジングと、ハウジングに旋回可能に装着される旋回スクロールと、旋回スクロールと噛み合って圧縮室を形成する固定スクロールと、固定スクロールの吐出側と連通する吐出空間および吐出空間内に捕集されたオイルが一時的に貯蔵される捕集空間を備える補助ハウジングと、旋回スクロールを固定スクロール側に加圧する圧力が印加され、メインハウジングに形成される背圧室と、捕集空間と連通するように固定スクロールに形成され、内部に減圧手段が備えられるオイル回収流路と、メインハウジングに形成され、オイル回収流路と吸入空間との間から延びる第1オイル供給流路と、オイル回収流路および第1オイル供給流路にそれぞれ備えられる減圧手段と、2つの減圧手段の間から分枝されて背圧室に連通する第2オイル供給流路とを含むことを特徴とする。
【0013】
第2オイル供給流路は、メインハウジングの一側端部に流入口が備えられる。
旋回スクロールとメインハウジングとの間には、背圧室をシーリングするためのシーリング手段が備えられ、流入口は、シーリング手段の半径方向の外側に配置される。
オイル回収流路および第1オイル供給流路の少なくとも1つには、減圧手段が挿入されるための設置空間が形成されるが、設置空間の一側端部には段付部が形成される。
【0014】
段付部は、減圧手段の移動を阻止して、減圧手段が定位置に位置するように形成される。
固定スクロールとメインハウジングとの間からの冷媒漏れを防止するためのシーリング手段が固定スクロールとメインハウジングとの間に介在し、シーリング手段には、オイル回収流路と第1オイル供給流路とを連通させるための通孔が形成される。
減圧手段は、メインハウジングまたは固定スクロールの内壁とともにオイルの移動経路を形成するオイル移送溝を有するオイル移送部材を含むことができる。
【0015】
オイル移送部材は、内部にオイルの一部が流入するように構成され、流入したオイルの圧力によって内壁に向かって膨張されるように構成される。
オイル移送部材は、固定スクロールおよびメインハウジングより低い剛性を有する材質からなるとよい。
減圧手段は、オイル移送部材の外周面に嵌合するカバーを含むことができる。
【0016】
減圧手段は、内部に長手方向に沿って螺旋状に延びるオイル移送溝が形成されるオイル移送部材を含むことができる。
減圧手段は、オイル移送部材と、オイル移送部材の外周面に嵌合し、内側壁に長手方向に沿って螺旋状に延びるオイル移送溝が形成されるカバーとを含むことができる。
【発明の効果】
【0017】
上記の構成を有する本発明の一側面によれば、固定スクロールに配置される1つの回収流路と、メインハウジングに配置される複数の供給流路とを含むため、オイル供給流路を単純化することができる。
また、複数の供給流路によって背圧室と吸入空間にオイルを独立して供給可能なため、効率的なオイルの供給が可能になる。特に、背圧室と直接連通するオイル供給流路を含むため、従来背圧室に間接的にオイルを供給していた場合に比べて、背圧室内の潤滑性能を向上させることができる。
さらに、吸入空間に追加的な減圧手段を備えることにより、互いに異なる圧力を有する複数の空間にオイルを供給することができる。
また、減圧手段をオイル移送部材またはカバーを含ませることにより、製品の組立過程でオイル移送流路が破損してオイルの供給が不良になるのを防止することができる。
【図面の簡単な説明】
【0018】
【
図1】本発明に係る圧縮機の一実施形態を示す断面図である。
【
図3】
図2に示した部分を分解して示す断面図である。
【
図7】
図6に示した減圧手段が適用された状態を示す
図2との関連図である。
【
図10】減圧手段のさらに他の変形例を示す斜視図である。
【発明を実施するための形態】
【0019】
以下、添付した図面に基づいて、本発明に係るオイル回収手段を備えた圧縮機の実施形態について詳細に説明する。
図1には、本発明に係る圧縮機の一実施形態の断面図を示した。一実施形態100は、図示しない駆動手段、例えば、モータが収納される空間を有するメインハウジング110を含む。メインハウジング110は、略円筒形状を有し、駆動手段が収納される空間は、圧縮対象の冷媒が圧縮手段の内部に流入する前に一時的に滞留する吸入空間111として機能する。
吸入空間111の内部には、上述した駆動手段に連結された回転軸112が配置され、回転軸112の端部に挿入される固定ピン113によって回転軸の端部にカウンタマス114が固定されている。カウンタマス114は、後述する旋回スクロールの偏心回転による振動を相殺するために装着され、カウンタマスの端部は、旋回スクロール130の背面とベアリング115を介して結合される。
【0020】
ここで、メインハウジング110の一側端部(
図1上で左側端部)には背圧室116が形成される。背圧室116は、上述したカウンタマスが収納されるように形成された空間であって、旋回スクロール130によって開放された端部が覆われるように形成されている。したがって、背圧室116は、メインハウジングおよび旋回スクロールによって閉鎖された空間と定義される。
一方、メインハウジング110の下側には第1オイル供給流路117が形成される。第1オイル供給流路117は、一側端部がメインハウジングの端部に露出し、他側端部は吸入空間111と連通するように形成される。具体的に、露出した端部は、冷媒の流入口117aとして機能し、吸入空間側に配置された端部は、吐出口117bとして機能する。したがって、流入口に流入した冷媒は、第1オイル供給流路117に沿って吸入空間に吐出される。
一方、流入口117aから第2オイル供給流路118が分枝される。第2オイル供給流路118は、流入口117aから背圧室116まで延び、背圧室116と連通する吐出口118aを有する。すなわち、第1および第2オイル供給流路は、共通の流入口117aを有するが、その吐出口は、それぞれ吸入空間および背圧室側に配置されている。したがって、流入した冷媒は、吸入空間と背圧室とに分けられて供給される。ここで、第1オイル供給流路117の内部には、後述する減圧手段150が配置される。減圧手段150は、流入口117aに流入した冷媒の圧力を吸入空間の圧力に低下させるように構成されるものであって、第1オイル供給流路117の内部には、減圧手段150が挿入されるための挿入空間119が形成される。
【0021】
挿入空間119は、第1オイル供給流路117と連通するように形成されるが、その内径は、吐出口117bの内径よりも大きく形成される。これによって、挿入空間119の下流側端部には段付部119aが形成される。すなわち、挿入空間119は、メインハウジング110の一側端部まで延び、他側端部は吐出口117bと連通して、減圧手段150がメインハウジングの一側端部から挿入できるように形成される。この時、段付部119aは、減圧手段が定位置に置かれるようにするストッパとして機能するだけでなく、減圧手段150を通過した冷媒が吐出口117bに流入しながら、直径の縮小による追加の減圧がもたらされるようにする。
メインハウジング110の左側端部に固定スクロール120が結合される。固定スクロール120は、旋回スクロールのスクロール132と噛み合うスクロール122を含み、これらの間で圧縮空間が形成される。そして、固定スクロール120の略中央部には吐出口124が形成され、圧縮された冷媒が固定スクロールの外部に吐出できるようにする。そして、固定スクロール120の下側には、上述した第1オイル供給流路117と連通するオイル回収流路126が形成される。オイル回収流路126は、固定スクロールの両端部の間から延び、
図2に示したとおり、両端部にそれぞれ流入口126aと吐出口126bが配置される。ここで、吐出口126bは、減圧手段150が配置されるための設置空間128と連通し、設置空間128は、上述のように、減圧手段150が挿入されるための空間を提供するように形成される。これにより、流入口126a側に段付部126cが形成され、減圧手段を定位置に位置させることができる。
【0022】
そして、吐出口126bは、第1オイル供給流路の流入口117aと連通する。同時に、オイル回収流路には減圧手段150が配置され、オイルの圧力を吸入空間内の圧力(以下、吸入圧力)より大きい水準の圧力に減圧する。したがって、流入口117aは、吸入圧力と吐出圧力との間の圧力が印加され、これは背圧室の内部で要求される圧力と一致するように調節できる。
一方、固定スクロール120とメインハウジング110との間には、冷媒の漏れを防止するためのガスケット121(
図3参照)が配置される。ガスケット121には、オイル回収流路および第1オイル供給流路とそれぞれ連通する通孔121aが形成され、回収されたオイルが第1オイル供給流路の内部に流れ込むようにする。ここで、ガスケット121は、上述のように、固定スクロールとメインハウジングとの間からの漏出を防止するために挿入されるものであるが、このような通孔を形成することで、オイル回収流路および第1オイル供給流路の間からの漏れ防止の機能も兼ねるようにすることができる。
ここで、固定スクロール120とメインハウジング110との間に旋回スクロール130が配置される。旋回スクロール130は、上述のように、メインハウジング110に対して旋回運動をするように構成される。ただし、旋回スクロール130が自転するのを防止するために、自転防止溝134およびガイドピン136によって結合されている。
【0023】
旋回スクロールは、固定スクロールに対して適正な程度の圧力で密着しなければならない。このために、旋回スクロールは、回転軸に対して、軸方向に沿って移動可能に装着され、背圧室の内部に印加された圧力に応じて旋回スクロールの固定スクロールに対する加圧程度が調節できる。旋回スクロールの左側面には、吸入圧から吐出圧に至る多様な圧力が印加され、このような圧力と均衡を合わせられるように、背圧室には吸入圧と吐出圧との間の中間圧力が印加される。同時に、背圧室内部の圧力を適切な水準に維持するために、背圧室を取り囲むようにシーリング手段138が配置される。
一方、背圧室に印加される圧力は、圧縮中の冷媒の一部を背圧室に流入させて印加される。このために、旋回スクロールの両端を貫通する背圧流路が形成され、背圧流路の両端部は、それぞれ圧縮室と背圧室に連通する。
固定スクロール120の左側端部には補助ハウジング140が配置される。補助ハウジングは、吐出口124と中間流路141によって連通する吐出空間142を提供し、これによって、圧縮された冷媒は吐出空間142に流入する。このように流入した圧縮冷媒は、図示しない吐出ポートを介して圧縮機の外部に吐出されるが、吐出空間142の内部には、吐出ポートと連通するように配置される油分離器144が配置される。
【0024】
油分離器144は、内部が空いている管形状を有し、一側端部のみが吐出ポートと連通するように配置される。したがって、吐出空間に流入した圧縮冷媒は、吐出ポートを介して外部に排出されるまで、油分離器を含む吐出空間の内壁とぶつかり、この過程で圧縮冷媒に混入されていたオイルが分離されて吐出空間の内部に滞留するようになる。
このように分離されたオイルは、自重によって、吐出空間142の下部に設けられる捕集空間145に溜まるようになる。捕集空間145は、復帰流路148を介してオイル回収流路126と連通する。これによって、分離されたオイルがオイル回収流路の内部に流入できる。このように流入したオイルは、減圧手段によってもたらされた圧力差に応じて背圧室および吸入空間に分配される。この時、オイルは、フィルタ146を通過しながら、異物が濾過した状態で供給される。
【0025】
以下、実施形態の作動について説明する。
吸入空間から圧縮室の内部に流入した冷媒は、オイルとともに圧縮された後、吐出空間142を経て外部に吐出される。この過程で、混入されたオイルの一部は、補助ハウジングの内部で分離されて捕集空間145に捕集された後、フィルタ146を経てオイル回収流路126に流入する。そして、減圧手段150を通過しながら背圧室と類似の圧力に減圧され、第1および2オイル供給流路の内部に流入する。
流入したオイルの一部は第1オイル供給流路を通して吸入空間に流入し、残りの一部は第2オイル供給流路を通して背圧室に流入する。この時、第1オイル供給流路に備えられる減圧手段によって、オイルは吸入圧力に減圧されて吸入空間に再供給される。したがって、複数の流路を備え、そのうちの一部に減圧手段を設けることにより、圧縮機内部の必要な場所に所望の圧力を有するオイルを供給することができる。
また、全体を個別流路として構成せず、1つのオイル回収流路からオイルが分配されるようにすることで、圧縮機の内部構造を単純化できるだけでなく、ハウジングの剛性も向上させることができる。
【0026】
さらに、第2オイル供給流路の流入口がシーリング手段の半径方向の外側に配置されており、メインハウジングの内部を貫通するように形成されているため、シーリング手段に沿ってオイル供給流路が形成された場合に比べてより円滑にオイルを供給することができる。また、2つの減圧手段を用いて第2オイル供給流路の流入口が中間圧の印加地点に配置されるようにすることで、流入口をシーリング手段の外側に備えても漏れに対する憂慮を払拭させることができる。
一方、減圧手段は、任意の形態を有することができる。すなわち、減圧手段は、オイル回収流路またはオイル供給流路の一部分の断面積を縮小した形態で実現されてもよいし、図示のように、別途の減圧手段を挿入して実現してもよい。
【0027】
図2および
図3は、このような減圧手段の一例を示したものであって、減圧手段150は、長手方向に延びる円筒状の形態を有するオイル移送部材として実現される。ここで、減圧手段も、減圧手段と同一に形成される。以下では、説明の便宜のために、減圧手段をオイル移送部材と称する。オイル移送部材の外周面には、長手方向に沿って延びる螺旋状のオイル移送溝152が形成され、オイル移送溝152は、第1オイル供給流路の内壁とともにオイルが移送経路を提供する。
従来は、オイルの通る流路の内部を加工して特定の形態を有するようにして減圧がなされるようにしたのに対し、本発明では、減圧手段の設置空間を形成した後、その内部に別途に製造した減圧手段を設けるようにすることで、減圧手段を容易に設けられるだけでなく、製造工程も単純化することができる。
ここで、減圧手段は、任意の材質からなるとよいし、一例として、減圧手段は、減圧手段が挿入される部分の材質より剛性が低い材質からなるとよい。実施形態において、固定スクロールおよびメインハウジングは、鋳鉄または炭素鋼などからなるとよいし、この場合、減圧手段は、それより低い剛性を有する材質、例えば、樹脂材質などからなるとよい。このように減圧手段がより低い剛性を有するようにすることで、減圧手段が固定スクロールおよびメインハウジングに形成された設置空間内に締まり嵌め方式で固定されるようにすることができる。
これにより、別途の固定手段を必要としないだけでなく、ある程度の加工公差も減圧手段が変形しながら吸収可能なため、製造工程を単純化することができる。
【0028】
一方、
図5を基にすれば、オイル移送部材150は、中空状の形態を有し、一側端部が開放端部151からなっていて、開放端部151を介してオイル移送部材の内部空間153が外部と連通する。そして、開放端部151に対向する他側端部は、閉鎖端部からなっている。ここで、開放端部151は、オイル移送部材の両端部のうち相対的に高圧側に対向するように配置される。例えば、オイル回収流路内に配置されたオイル移送部材150は、吐出空間側に開放端部151が配置され、第1オイル供給流路内に配置されたオイル移送部材150は、固定スクロールを対向するように開放端部151が配置される。
したがって、開放端部151を通してオイルの一部が内部空間153、すなわち、水圧空間に流入する。このように流入したオイルは、オイル移送部材を半径方向の外側、すなわち、設置空間128の内壁に向かって加圧する。これによって、オイル移送部材150の外周面に形成されるオイル移送溝152が設置空間の内壁に密着し、それによってオイルがオイル移送溝を横切って(
図5の左から右方向に)移動することが防止される。これによって、オイルの螺旋移動が促進され、オイルの流動経路が増大して減圧効果が大きくなるようにすることができる。
すなわち、第1オイル供給流路117を通過していたオイルがオイル移送部材150に到達すると、オイル移送溝152に沿って移動してオイル供給流路117を通過するが、オイル移送溝152が円柱形状のオイル移送部材150の外周面にねじ山のように形成されることにより、オイル供給流路117を直線に通過するオイルに比べて移動距離が長くなり、それによってオイルの圧力が減少する。このように減圧されたオイルは吸入空間に供給され、回転軸または駆動手段を潤滑させる。
【0029】
一方、減圧手段は、
図6および
図7に示した形態でも実現できる。
図6および
図7に示した変形例に基づけば、変形例は、オイル移送部材150の外周面に嵌合するカバー154を含む。
カバー154は、管形状に形成され、円柱形状のオイル移送部材150の外周面に嵌合する。したがって、オイル移送部材150の外周面に形成されたオイル移送溝152がカバー154によって覆われ、組立時、固定スクロールまたはメインハウジングに形成されたオイル回収流路またはオイル供給流路の入口先端や内側壁にオイル移送溝152がぶつからないように保護される。
カバー154の内径は、オイル移送部材150の外径と同一に形成され、オイル移送溝152の先端とカバー154の内側壁とが密着して結合される。したがって、
図6に示しているように、カバー154の内側壁とオイル移送溝152とがオイルを移送させる通路を形成する。カバー154の外径は、オイル供給流路の内径と同一に形成され、カバー154がオイル供給流路の内側壁に密着して嵌合する。カバー154は、剛性を有する材質で形成されることも可能であるが、軟性の材質で形成されてもよい。
【0030】
カバー154が剛性の材質で形成された場合、カバー154の剛性によって管形状が変形せず、カバー154の内部にオイル移送部材150がスライディングしながら容易に嵌合するだけでなく、カバー154がメインハウジング110の第1オイル供給流路117にスライディングしながら容易に嵌合する。
図7に示しているように、第1オイル供給流路117は、オイル移送部材150とカバー154の組立体が嵌合した状態で位置固定できるように段付いて形成されている。
一方、カバー154がゴムのような軟性の材質で形成されると、弾力があるので、カバー154がオイル移送部材150の外周面に密着して嵌合するだけでなく、カバー154がハウジングの第1オイル供給流路117の内側壁に密着して強固に固定可能になる。
【0031】
一方、減圧手段は、
図8および
図9に示した形態にも変形可能である。変形例では、オイル移送部材160の内部にその長手方向に沿ってオイル移送溝162を備えている。
オイル移送部材160は、円柱形状に形成され、メインハウジング110の第1オイル供給流路117に沿って長手方向に挿入される。オイル移送溝162は、オイル移送部材160の長手方向に沿って螺旋状に形成されている。したがって、オイルがオイル移送溝162に沿って螺旋移動をしながらオイル移送部材160を通過する。この時、オイルの移動する距離は、第1オイル供給流路117を直線に通過するオイルに比べて長くなってオイルの圧力が減少するようになる。
変形例において、オイル移送溝162は、
図4および
図5に示した変形例とは異なり、オイル移送部材160の内部に形成することにより外部に露出しなくなる。従って、組み立て時、メインハウジング110の第1オイル供給流路117の入口先端や内側壁にオイル移送溝162がぶつからなくなる。
オイル移送溝162の先端にはオイル案内溝164が形成されている。オイル案内溝164は、オイル移送溝162にオイルが捕集されて案内できるように、オイル移送溝162の断面積より大きく形成される。変形例のオイル移送部材160は、オイル移送溝162を内部に備えることにより、カバー154を別途に備えなくても、オイル移送溝162のなす流路が組立時に損傷して塞がらないように完全に保全することができる。
【0032】
また、減圧手段は、
図10に示した形態にも変形可能である。
図10に示したとおり、変形例に示した減圧手段170は、オイル移送部材172と、オイル移送部材172の外周面に嵌合し、内側壁174aにオイル移送溝174bが形成された管形状のカバー174とを含む。オイル移送部材172は、円柱形状に形成され、メインハウジング110の第1オイル供給流路117に沿って長手方向に挿入される。
オイル移送溝174bは、上述のようなオイル移送部材150に形成されるのではなく、カバー174の内側壁174aに形成される。オイル移送部材172の外周面は滑らかな面に形成され、カバー174の内側壁174aにねじ山形状のオイル移送溝174bが形成されることにより、オイル移送部材172の外周面とカバー174のオイル移送溝174bとがオイル通路を形成する。
カバー174のオイル移送溝174bは、カバー174の長手方向に沿って螺旋状に形成されている。したがって、オイルがオイル移送溝174bに沿って螺旋移動をしながらオイル移送部材172を通過する。この時、オイルの移動する距離は、第1オイル供給流路117を直線に通過するオイルに比べて長くなってオイルの圧力が減少するようになる。
【符号の説明】
【0033】
100:一実施形態
110:メインハウジング
111:吸入空間
112:回転軸
113:固定ピン
114:カウンタマス
115:ベアリング
116:背圧室
117:第1オイル供給流路
117a:(冷媒の)流入口
117b:(第1オイル供給流路の)吐出口
118:第2オイル供給流路
118a:(背圧室と連通する)吐出口
119:挿入空間
119a:(挿入空間の下流側端部に形成された)段付部
120:固定スクロール
121:ガスケット
121a:第1オイル供給流路とそれぞれ連通する通孔
122:(旋回スクロールのスクロール(132)と噛み合う)スクロール
124:(圧縮された冷媒を固定スクロールの外部に吐出する)吐出口
126:オイル回収流路
126a:(第2オイル供給流路の)流入口
126b:(第1オイル供給流路の流入口と連通する)吐出口
126c:(設置空間の上流側端部に形成された)段付部
128:設置空間
130:旋回スクロール
132:(旋回スクロールの)スクロール
134:自転防止溝
136:ガイドピン
138:シーリング手段
140:補助ハウジング
141:中間流路
142:吐出空間
144:油分離器
145:捕集空間
146:フィルタ
148:復帰流路
150:減圧手段、オイル移送部材
151:開放端部
152:オイル移送溝
153:内部空間
154:カバー
160:(変形例の)オイル移送部材
162:(変形例の)オイル移送溝
164:(変形例の)オイル案内溝
170:(オイル移送部材と管形状のカバーを含む変形例の)減圧手段
172:(変形例の)オイル移送部材
174:管形状のカバー
174a:内側壁
174b:(カバーの内側壁に形成された)オイル移送溝