特許第6389959号(P6389959)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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特許6389959燃料電池スタックおよび燃料電池スタックの製造方法
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6389959
(24)【登録日】2018年8月24日
(45)【発行日】2018年9月12日
(54)【発明の名称】燃料電池スタックおよび燃料電池スタックの製造方法
(51)【国際特許分類】
   H01M 8/2432 20160101AFI20180903BHJP
   H01M 8/2483 20160101ALI20180903BHJP
   H01M 8/247 20160101ALI20180903BHJP
   H01M 8/12 20160101ALN20180903BHJP
【FI】
   H01M8/2432
   H01M8/2483
   H01M8/247
   !H01M8/12 101
   !H01M8/12 102A
【請求項の数】6
【全頁数】22
(21)【出願番号】特願2017-525152(P2017-525152)
(86)(22)【出願日】2016年6月7日
(86)【国際出願番号】JP2016066862
(87)【国際公開番号】WO2016204017
(87)【国際公開日】20161222
【審査請求日】2017年8月14日
(31)【優先権主張番号】特願2015-120343(P2015-120343)
(32)【優先日】2015年6月15日
(33)【優先権主張国】JP
(73)【特許権者】
【識別番号】000004547
【氏名又は名称】日本特殊陶業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110001911
【氏名又は名称】特許業務法人アルファ国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】堀田 信行
(72)【発明者】
【氏名】石川 秀樹
(72)【発明者】
【氏名】大橋 駿太
(72)【発明者】
【氏名】井筒 康貴
【審査官】 小森 重樹
(56)【参考文献】
【文献】 特開2011−210423(JP,A)
【文献】 特開2007−294184(JP,A)
【文献】 特開2005−197242(JP,A)
【文献】 特開2007−149467(JP,A)
【文献】 米国特許出願公開第2006/0269819(US,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H01M 8/2432
H01M 8/2483
H01M 8/247
H01M 8/12
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
第1の方向に並べて配置された複数の発電単位と、前記第1の方向に延びる複数の締結部材とを備え、前記複数の締結部材で締結された燃料電池スタックにおいて、
各前記発電単位は、
電解質層と前記電解質層を挟んで前記第1の方向に互いに対向する空気極および燃料極とを含む単セルと、
前記燃料極に面する燃料室と前記空気極に面する空気室との一方を構成する貫通孔が形成され、前記第1の方向において他の2つの部材に挟持されることにより前記燃料室と前記空気室との前記一方をシールするシール部材と、を含み、
少なくとも1つの前記発電単位に含まれる前記シール部材の前記他の2つの部材の内のいずれかと対向する表面における表面粗さRaは、3.0μm以下であり、
前記シール部材はヒステリシス特性を有し、
前記シール部材に与えられる圧力と前記シール部材に生ずるひずみとの関係を表す曲線における変曲点に関し、前記シール部材の内、前記複数の締結部材の内の1つの締結部材付近の位置における前記変曲点の前記圧力の値と、前記1つの締結部材と隣り合う他の前記締結部材との中間付近の位置における前記変曲点の前記圧力の値とは、±20%の値であることを特徴とする、燃料電池スタック。
【請求項2】
請求項1に記載の燃料電池スタックにおいて、
少なくとも1つの前記発電単位に含まれる前記シール部材の前記他の2つの部材の内のいずれかと対向する表面におけるうねりPaの標準偏差は、0.2以下であることを特徴とする、燃料電池スタック。
【請求項3】
請求項2に記載の燃料電池スタックにおいて、
前記シール部材の前記他の2つの部材の内のいずれかと対向する表面におけるうねりPaの平均値は、1.4μm以下であることを特徴とする、燃料電池スタック。
【請求項4】
電解質層と前記電解質層を挟んで第1の方向に互いに対向する空気極および燃料極とを含む単セルと、前記燃料極に面する燃料室と前記空気極に面する空気室との一方を構成する貫通孔が形成され、前記第1の方向において他の2つの部材に挟持されることにより前記燃料室と前記空気室との前記一方をシールするシール部材と、が前記第1の方向に並べて配置され、前記第1の方向に沿って延びる複数の締結部材で締結された燃料電池スタックの製造方法であって、
ヒステリシス特性を有する前記シール部材に前記第1の方向に沿った圧縮荷重を加える圧縮工程と、
前記圧縮工程の後に、複数の前記単セルと複数の前記シール部材とを前記複数の締結部材で締結する組立工程とを備え
前記圧縮工程における圧縮荷重は、製造された前記燃料電池スタックを構成する前記シール部材に与えられる圧力と前記シール部材に生ずるひずみとの関係を表す曲線における変曲点に関し、前記シール部材の内、前記複数の締結部材の内の1つの締結部材付近の位置における前記変曲点の前記圧力の値と、前記1つの締結部材と隣り合う他の前記締結部材との中間付近の位置における前記変曲点の前記圧力の値とが、±20%の値となる圧縮荷重であることを特徴とする、燃料電池スタックの製造方法。
【請求項5】
請求項4に記載の燃料電池スタックの製造方法において、さらに、
前記圧縮工程の前に、前記シール部材を加熱する熱処理工程を備えることを特徴とする、燃料電池スタックの製造方法。
【請求項6】
請求項4または請求項5に記載の燃料電池スタックの製造方法において、
前記圧縮工程における前記シール部材の単位面積あたりの前記圧縮荷重の値は、前記組立工程の完了時において複数の前記締結部材による前記燃料電池スタックの締結により前記シール部材に作用する単位面積あたりの荷重の値より大きいことを特徴とする、燃料電池スタックの製造方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本明細書によって開示される技術は、燃料電池スタックに関する。
【背景技術】
【0002】
固体酸化物形燃料電池(以下、「SOFC」ともいう)は、一般に、所定の方向(以下、「配列方向」ともいう)に並べて配置された複数の発電単位を備える燃料電池スタックの形態で利用される。燃料電池スタックは、上記配列方向に延びる複数の締結部材(例えばボルト)によって締結される。
【0003】
発電単位は、発電の最小単位であり、電解質層と、電解質層を挟んで上記配列方向に互いに対向する空気極および燃料極とを含む単セルを備える。発電単位は、また、空気極に面する空気室をシールするシール部材を備える(例えば特許文献1参照)。シール部材は、空気室を構成する貫通孔が形成されたフレーム形状の部材であり、例えばマイカにより形成される。シール部材が上記配列方向において他の2つの部材に挟持されることにより、空気室がシールされる。シール部材を用いることにより、比較的簡単かつ低コストな構成で、空気室のシールが実現される。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2011−210423号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
上記従来の技術では、シール部材によって空気室からのガスリークを十分に抑制することができず、十分なシール性を得ることができないという問題がある。十分なシール性が得られないと、例えば、高温のガスがリークすることによって熱利用効率が低下し、燃料電池スタックの総合効率が低下するため、好ましくない。なお、このような課題は、発電単位が空気室をシールするシール部材を備える構成に限られず、発電単位が燃料極に面する燃料室をシールするシール部材を備える構成にも共通の課題である。また、このような課題は、SOFCに限らず、他のタイプの燃料電池にも共通の課題である。
【0006】
本明細書では、上述した課題を解決することが可能な技術を開示する。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本明細書に開示される技術は、例えば、以下の形態として実現することが可能である。
【0008】
(1)本明細書に開示される燃料電池スタックは、第1の方向に並べて配置された複数の発電単位と、前記第1の方向に延びる複数の締結部材とを備え、前記複数の締結部材で締結された燃料電池スタックにおいて、各前記発電単位は、電解質層と前記電解質層を挟んで前記第1の方向に互いに対向する空気極および燃料極とを含む単セルと、前記燃料極に面する燃料室と前記空気極に面する空気室との一方を構成する貫通孔が形成され、前記第1の方向において他の2つの部材に挟持されることにより前記燃料室と前記空気室との前記一方をシールするシール部材と、を含み、少なくとも1つの前記発電単位に含まれる前記シール部材の前記他の2つの部材の内のいずれかと対向する表面における表面粗さRaは、3.0μm以下であることを特徴とする。本燃料電池スタックによれば、シール部材の表面粗さRaの値を抑え、シール部材の表面を介した燃料室または空気室からのガスの漏洩を効果的に抑制することができ、シール部材のガスシール性を向上させることができる。
【0009】
(2)上記燃料電池スタックにおいて、少なくとも1つの前記発電単位に含まれる前記シール部材の前記他の2つの部材の内のいずれかと対向する表面におけるうねりPaの標準偏差は、0.2以下であることを特徴とする構成としてもよい。本燃料電池スタックによれば、シール部材のうねりPaのばらつきを抑え、シール部材の表面を介した燃料室または空気室からのガスの漏洩をより効果的に抑制することができ、シール部材のガスシール性をさらに向上させることができる。
【0010】
(3)上記燃料電池スタックにおいて、前記シール部材の前記他の2つの部材の内のいずれかと対向する表面におけるうねりPaの平均値は、1.4μm以下であることを特徴とする構成としてもよい。本燃料電池スタックによれば、シール部材のうねりPaの値を抑え、シール部材の表面を介した燃料室または空気室からのガスの漏洩をより効果的に抑制することができ、シール部材のガスシール性をさらに向上させることができる。
【0011】
(4)本明細書に開示される燃料電池スタックの製造方法は、電解質層と前記電解質層を挟んで第1の方向に互いに対向する空気極および燃料極とを含む単セルと、前記燃料極に面する燃料室と前記空気極に面する空気室との一方を構成する貫通孔が形成され、前記第1の方向において他の2つの部材に挟持されることにより前記燃料室と前記空気室との前記一方をシールするシール部材と、が前記第1の方向に並べて配置され、前記第1の方向に沿って延びる複数の締結部材で締結された燃料電池スタックの製造方法であって、前記シール部材に前記第1の方向に沿った圧縮荷重を加える圧縮工程と、前記圧縮工程の後に、複数の前記単セルと複数の前記シール部材とを前記複数の締結部材で締結する組立工程とを備えることを特徴とする。本燃料電池スタックの製造方法によれば、シール部材のうねりPaの値やうねりPaのばらつきを抑えることができ、かつ、シール部材の気孔率を低下させることができ、シール部材の表面や内部を介した燃料室または空気室からのガスの漏洩をより効果的に抑制することができ、シール部材のガスシール性をさらに向上させることができる。
【0012】
(5)上記燃料電池スタックの製造方法において、さらに、前記圧縮工程の前に、前記シール部材を加熱する熱処理工程を備えることを特徴とする構成としてもよい。本燃料電池スタックの製造方法によれば、熱処理工程によってシール部材内部のバインダー等が分解や揮発して気孔率が高くなっても、その後に圧縮工程を実行することによってシール部材の気孔率を低下させることができ、シール部材の内部を介した燃料室または空気室からのガスの漏洩をより効果的に抑制することができる。
【0013】
(6)上記燃料電池スタックの製造方法において、前記圧縮工程における前記シール部材の単位面積あたりの前記圧縮荷重の値は、前記組立工程の完了時において複数の前記締結部材による前記燃料電池スタックの締結により前記シール部材に作用する単位面積あたりの荷重の値より大きいことを特徴とする構成としてもよい。本燃料電池スタックの製造方法によれば、圧縮工程を行うことによってシール部材のうねりPaの値やうねりPaのばらつき、気孔率をより効果的に低下させることができ、シール部材の表面や内部を介した燃料室または空気室からのガスの漏洩をさらに効果的に抑制することができる。
【0014】
なお、本明細書に開示される技術は、種々の形態で実現することが可能であり、例えば、燃料電池スタック、燃料電池スタックを備える発電モジュール、発電モジュールを備える燃料電池システム、それらの製造方法等の形態で実現することが可能である。
【図面の簡単な説明】
【0015】
図1】第1実施形態における燃料電池スタック100の構成を概略的に示す斜視図である。
図2】第1実施形態における燃料電池スタック100の上側のXY平面構成を示す説明図である。
図3】第1実施形態における燃料電池スタック100の下側のXY平面構成を示す説明図である。
図4図1から図3のIV−IVの位置における燃料電池スタック100のXZ断面構成を示す説明図である。
図5図1から図3のV−Vの位置における燃料電池スタック100のXZ断面構成を示す説明図である。
図6図1から図3のVI−VIの位置における燃料電池スタック100のYZ断面構成を示す説明図である。
図7図5に示す断面と同一の位置における互いに隣接する2つの発電単位102のXZ断面構成を示す説明図である。
図8図6に示す断面と同一の位置における互いに隣接する2つの発電単位102のYZ断面構成を示す説明図である。
図9図7のIX−IXの位置における発電単位102のXY断面構成を示す説明図である。
図10図7のX−Xの位置における発電単位102のXY断面構成を示す説明図である。
図11】熱交換部103のXY断面構成を概略的に示す説明図である。
図12】本実施形態における燃料電池スタック100の製造方法を示すフローチャートである。
図13】マイカシートMSの表面粗さRaの測定結果の一例を示す説明図である。
図14】マイカシートMSのうねりPaの測定結果の一例を示す説明図である。
図15】性能評価に用いた試験装置500の構成を示す説明図である。
図16】性能評価に用いた試験装置500の構成を示す説明図である。
図17】性能評価結果の一例を示す説明図である。
図18】マイカシートMSのヒステリシス特性を示す説明図である。
図19】マイカシートMSへの予荷重の有無の判定方法を示す説明図である。
【発明を実施するための形態】
【0016】
A.実施形態:
A−1.構成:
(燃料電池スタック100の構成)
図1から図6は、本実施形態における燃料電池スタック100の構成を概略的に示す説明図である。図1には、燃料電池スタック100の外観構成が示されており、図2には、燃料電池スタック100の上側の平面構成が示されており、図3には、燃料電池スタック100の下側の平面構成が示されており、図4には、図1から図3のIV−IVの位置における燃料電池スタック100の断面構成が示されており、図5には、図1から図3のV−Vの位置における燃料電池スタック100の断面構成が示されており、図6には、図1から図3のVI−VIの位置における燃料電池スタック100の断面構成が示されている。各図には、方向を特定するための互いに直交するXYZ軸が示されている。本明細書では、便宜的に、Z軸正方向を上方向と呼び、Z軸負方向を下方向と呼ぶものとするが、燃料電池スタック100は実際にはそのような向きとは異なる向きで設置されてもよい。図7以降についても同様である。
【0017】
燃料電池スタック100は、複数の(本実施形態では6つの)発電単位102と、熱交換部103と、一対のエンドプレート104,106とを備える。6つの発電単位102は、所定の配列方向(本実施形態では上下方向)に並べて配置されている。ただし、6つの発電単位102の内、3つの発電単位102は互いに隣接するように配置され、残りの3つの発電単位102も互いに隣接するように配置され、上記3つの発電単位102と上記残りの3つの発電単位102との間に熱交換部103が配置されている。すなわち、熱交換部103は、6つの発電単位102と熱交換部103とから構成される集合体における上下方向の中央付近に配置されている。一対のエンドプレート104,106は、6つの発電単位102と熱交換部103とから構成される集合体を上下から挟むように配置されている。なお、上記配列方向(上下方向)は、特許請求の範囲における第1の方向に相当する。
【0018】
燃料電池スタック100を構成する各層(発電単位102、熱交換部103、エンドプレート104,106)のZ方向回りの周縁部には、上下方向に貫通する複数の(本実施形態では8つの)孔が形成されており、各層に形成され互いに対応する孔同士が上下方向に連通して、一方のエンドプレート104から他方のエンドプレート106にわたって上下方向に延びる連通孔108を構成している。以下の説明では、連通孔108を構成するために燃料電池スタック100の各層に形成された孔も、連通孔108と呼ぶ場合がある。
【0019】
各連通孔108には上下方向に延びるボルト22が挿入されており、ボルト22とボルト22の両側に嵌められたナット24とによって、燃料電池スタック100は締結されている。ボルト22は、特許請求の範囲における締結部材に相当する。なお、図4から図6に示すように、ボルト22の一方の側(上側)に嵌められたナット24と燃料電池スタック100の上端を構成するエンドプレート104の上側表面との間、および、ボルト22の他方の側(下側)に嵌められたナット24と燃料電池スタック100の下端を構成するエンドプレート106の下側表面との間には、絶縁シート26が介在している。ただし、後述のガス通路部材27が設けられた箇所では、ナット24とエンドプレート106の表面との間に、ガス通路部材27とガス通路部材27の上側および下側のそれぞれに配置された絶縁シート26とが介在している。絶縁シート26は、例えばマイカシートや、セラミック繊維シート、セラミック圧粉シート、ガラスシート、ガラスセラミック複合剤等により構成される。
【0020】
各ボルト22の軸部の外径は各連通孔108の内径より小さい。そのため、各ボルト22の軸部の外周面と各連通孔108の内周面との間には、空間が確保されている。図2から図4に示すように、燃料電池スタック100のZ方向回りの外周における1つの頂点(Y軸負方向側およびX軸負方向側の頂点)付近に位置するボルト22(ボルト22A)と、そのボルト22Aが挿入された連通孔108とにより形成された空間は、燃料電池スタック100の外部から酸化剤ガスOGが導入されるガス流路である酸化剤ガス導入マニホールド161として機能し、燃料電池スタック100のZ方向回りの外周における1つの辺(Y軸に平行な2つの辺の内のX軸正方向側の辺)の中点付近に位置するボルト22(ボルト22C)と、そのボルト22Cが挿入された連通孔108とにより形成された空間は、熱交換部103から排出された酸化剤ガスOGを各発電単位102に向けて運ぶガス流路である酸化剤ガス供給マニホールド163として機能する。また、図2図3および図5に示すように、燃料電池スタック100のZ方向回りの外周における1つの辺(Y軸に平行な2つの辺の内のX軸負方向側の辺)の中点付近に位置するボルト22(ボルト22B)と、そのボルト22Bが挿入された連通孔108とにより形成された空間は、各発電単位102から排出された酸化剤オフガスOOGを燃料電池スタック100の外部へと排出する酸化剤ガス排出マニホールド162として機能する。なお、本実施形態では、酸化剤ガスOGとして、例えば空気が使用される。
【0021】
また、図2図3および図6に示すように、燃料電池スタック100のZ方向回りの外周における1つの辺(X軸に平行な2つの辺の内のY軸正方向側の辺)の中点付近に位置するボルト22(ボルト22D)と、そのボルト22Dが挿入された連通孔108とにより形成された空間は、燃料電池スタック100の外部から燃料ガスFGが導入され、その燃料ガスFGを各発電単位102に供給する燃料ガス導入マニホールド171として機能し、該辺の反対側の辺(X軸に平行な2つの辺の内のY軸負方向側の辺)の中点付近に位置するボルト22(ボルト22E)と、そのボルト22Eが挿入された連通孔108とにより形成された空間は、各発電単位102から排出された燃料オフガスFOGを燃料電池スタック100の外部へと排出する燃料ガス排出マニホールド172として機能する。なお、本実施形態では、燃料ガスFGとして、例えば都市ガスを改質した水素リッチなガスが使用される。
【0022】
図4から図6に示すように、燃料電池スタック100には、4つのガス通路部材27が設けられている。各ガス通路部材27は、中空筒状の本体部28と、本体部28の側面から分岐した中空筒状の分岐部29とを有している。分岐部29の孔は本体部28の孔と連通している。各ガス通路部材27の分岐部29には、ガス配管(図示せず)が接続される。また、図4に示すように、酸化剤ガス導入マニホールド161を形成するボルト22Aの位置に配置されたガス通路部材27の本体部28の孔は、酸化剤ガス導入マニホールド161に連通している。また、図5に示すように、酸化剤ガス排出マニホールド162を形成するボルト22Bの位置に配置されたガス通路部材27の本体部28の孔は、酸化剤ガス排出マニホールド162に連通している。また、図6に示すように、燃料ガス導入マニホールド171を形成するボルト22Dの位置に配置されたガス通路部材27の本体部28の孔は、燃料ガス導入マニホールド171に連通しており、燃料ガス排出マニホールド172を形成するボルト22Eの位置に配置されたガス通路部材27の本体部28の孔は、燃料ガス排出マニホールド172に連通している。
【0023】
(エンドプレート104,106の構成)
一対のエンドプレート104,106は、矩形の平板形状の導電性部材であり、例えばステンレスにより形成されている。一方のエンドプレート104は、最も上に位置する発電単位102の上側に配置され、他方のエンドプレート106は、最も下に位置する発電単位102の下側に配置されている。一対のエンドプレート104,106によって複数の発電単位102と熱交換部103とが押圧された状態で挟持されている。上側のエンドプレート104は、燃料電池スタック100のプラス側の出力端子として機能し、下側のエンドプレート106は、燃料電池スタック100のマイナス側の出力端子として機能する。
【0024】
(発電単位102の構成)
図7から図10は、発電単位102の詳細構成を示す説明図である。図7には、図5に示す断面と同一の位置における互いに隣接する2つの発電単位102の断面構成が示されており、図8には、図6に示す断面と同一の位置における互いに隣接する2つの発電単位102の断面構成が示されており、図9には、図7のIX−IXの位置における発電単位102の断面構成が示されており、図10には、図7のX−Xの位置における発電単位102の断面構成が示されている。
【0025】
図7および図8に示すように、発電の最小単位である発電単位102は、単セル110と、セパレータ120と、空気極側フレーム130と、空気極側集電体134と、燃料極側フレーム140と、燃料極側集電体144と、発電単位102の最上層および最下層を構成する一対のインターコネクタ150とを備えている。セパレータ120、空気極側フレーム130、燃料極側フレーム140、インターコネクタ150におけるZ方向回りの周縁部には、上述したボルト22が挿入される連通孔108に対応する孔が形成されている。
【0026】
インターコネクタ150は、矩形の平板形状の導電性部材であり、例えばフェライト系ステンレスにより形成されている。インターコネクタ150は、発電単位102間の電気的導通を確保すると共に、発電単位102間での反応ガスの混合を防止する。なお、本実施形態では、2つの発電単位102が隣接して配置されている場合、1つのインターコネクタ150は、隣接する2つの発電単位102に共有されている。すなわち、ある発電単位102における上側のインターコネクタ150は、その発電単位102の上側に隣接する他の発電単位102における下側のインターコネクタ150と同一部材である。また、燃料電池スタック100は一対のエンドプレート104,106を備えているため、燃料電池スタック100において最も上に位置する発電単位102は上側のインターコネクタ150を備えておらず、最も下に位置する発電単位102は下側のインターコネクタ150を備えていない(図4から図6参照)。
【0027】
単セル110は、電解質層112と、電解質層112を挟んで上下方向(発電単位102が並ぶ配列方向)に互いに対向する空気極(カソード)114および燃料極(アノード)116とを備える。なお、本実施形態の単セル110は、燃料極116で電解質層112および空気極114を支持する燃料極支持形の単セルである。
【0028】
電解質層112は、矩形の平板形状部材であり、例えば、YSZ(イットリア安定化ジルコニア)、ScSZ(スカンジア安定化ジルコニア)、SDC(サマリウムドープセリア)、GDC(ガドリニウムドープセリア)、ペロブスカイト型酸化物等の固体酸化物により形成されている。空気極114は、矩形の平板形状部材であり、例えば、ペロブスカイト型酸化物(例えばLSCF(ランタンストロンチウムコバルト鉄酸化物)、LSM(ランタンストロンチウムマンガン酸化物)、LNF(ランタンニッケル鉄))により形成されている。燃料極116は、矩形の平板形状部材であり、例えば、Ni(ニッケル)、Niとセラミック粒子からなるサーメット、Ni基合金等により形成されている。このように、本実施形態の単セル110(発電単位102)は、電解質として固体酸化物を用いる固体酸化物形燃料電池(SOFC)である。
【0029】
セパレータ120は、中央付近に上下方向に貫通する矩形の孔121が形成されたフレーム状の部材であり、例えば、金属により形成されている。セパレータ120における孔121の周囲部分は、電解質層112における空気極114の側の表面の周縁部に対向している。セパレータ120は、その対向した部分に配置されたロウ材(例えばAgロウ)により形成された接合部124により、電解質層112(単セル110)と接合されている。セパレータ120により、空気極114に面する空気室166と燃料極116に面する燃料室176とが区画され、単セル110の周縁部における一方の電極側から他方の電極側へのガスのリークが抑制される。なお、セパレータ120が接合された単セル110をセパレータ付き単セルともいう。
【0030】
空気極側フレーム130は、図7から図9に示すように、中央付近に上下方向に貫通する略矩形の孔131が形成されたフレーム状の板状部材である。本実施形態では、空気極側フレーム130は、耐熱性、絶縁性、シール性、および、構造安定性に優れたマイカにより形成されている。空気極側フレーム130の孔131は、空気極114に面する空気室166を構成する。空気極側フレーム130は、セパレータ120における電解質層112に対向する側とは反対側の表面の周縁部と、インターコネクタ150における空気極114に対向する側の表面の周縁部とに接触している。すなわち、空気極側フレーム130は、セパレータ120とインターコネクタ150とにより挟持されている。そのため、空気極側フレーム130によって、空気室166のシール(コンプレッションシール)が実現される。また、空気極側フレーム130によって、発電単位102に含まれる一対のインターコネクタ150間が電気的に絶縁される。また、空気極側フレーム130には、酸化剤ガス供給マニホールド163と空気室166とを連通する酸化剤ガス供給連通孔132と、空気室166と酸化剤ガス排出マニホールド162とを連通する酸化剤ガス排出連通孔133とが形成されている。空気極側フレーム130は、特許請求の範囲におけるシール部材に相当し、孔131は、特許請求の範囲における貫通孔に相当する。
【0031】
燃料極側フレーム140は、図7図8および図10に示すように、中央付近に上下方向に貫通する矩形の孔141が形成されたフレーム状の部材であり、例えば、金属により形成されている。燃料極側フレーム140の孔141は、燃料極116に面する燃料室176を構成する。燃料極側フレーム140は、セパレータ120における電解質層112に対向する側の表面の周縁部と、インターコネクタ150における燃料極116に対向する側の表面の周縁部とに接触している。また、燃料極側フレーム140には、燃料ガス導入マニホールド171と燃料室176とを連通する燃料ガス供給連通孔142と、燃料室176と燃料ガス排出マニホールド172とを連通する燃料ガス排出連通孔143とが形成されている。
【0032】
空気極側集電体134は、図7から図9に示すように、空気室166内に配置されている。空気極側集電体134は、所定の間隔をあけて並べられた複数の四角柱状の導電性部材から構成されており、例えば、フェライト系ステンレスにより形成されている。空気極側集電体134は、空気極114における電解質層112に対向する側とは反対側の表面と、インターコネクタ150における空気極114に対向する側の表面とに接触することにより、空気極114とインターコネクタ150とを電気的に接続する。なお、空気極側集電体134とインターコネクタ150とが一体の部材として形成されていてもよい。
【0033】
燃料極側集電体144は、図7図8および図10に示すように、燃料室176内に配置されている。燃料極側集電体144は、インターコネクタ対向部146と、複数の電極対向部145と、各電極対向部145とインターコネクタ対向部146とをつなぐ連接部147とを備えており、例えば、ニッケルやニッケル合金、ステンレス等により形成されている。各電極対向部145は、燃料極116における電解質層112に対向する側とは反対側の表面に接触し、インターコネクタ対向部146は、インターコネクタ150における燃料極116に対向する側の表面に接触する。そのため、燃料極側集電体144は、燃料極116とインターコネクタ150とを電気的に接続する。なお、電極対向部145とインターコネクタ対向部146との間には、例えばマイカにより形成されたスペーサー149が配置されている。そのため、燃料極側集電体144が温度サイクルや反応ガス圧力変動による発電単位102の変形に追随し、燃料極側集電体144を介した燃料極116とインターコネクタ150との電気的接続が良好に維持される。
【0034】
(熱交換部103の構成)
図11は、熱交換部103の断面構成を概略的に示す説明図である。図11には、配列方向に直交する方向における熱交換部103の断面構成が示されている。図4から図6および図11に示すように、熱交換部103は、矩形の平板形状部材であり、例えば、フェライト系ステンレスにより形成されている。熱交換部103の中央付近には、上下方向に貫通する孔182が形成されている。また、熱交換部103には、中央の孔182と酸化剤ガス導入マニホールド161を形成する連通孔108とを連通する連通孔184と、中央の孔182と酸化剤ガス供給マニホールド163を形成する連通孔108とを連通する連通孔186とが形成されている。熱交換部103は、熱交換部103の上側に隣接する発電単位102に含まれる下側のインターコネクタ150と、熱交換部103の下側に隣接する発電単位102に含まれる上側のインターコネクタ150とに挟持されている。これらのインターコネクタ150間において、孔182と連通孔184と連通孔186とにより形成される空間は、後述する熱交換のために酸化剤ガスOGを流す熱交換流路188として機能する。
【0035】
A−2.燃料電池スタック100の動作:
図4に示すように、酸化剤ガス導入マニホールド161の位置に設けられたガス通路部材27の分岐部29に接続されたガス配管(図示せず)を介して酸化剤ガスOGが供給されると、酸化剤ガスOGは、ガス通路部材27の分岐部29および本体部28の孔を介して酸化剤ガス導入マニホールド161に供給される。酸化剤ガス導入マニホールド161に供給された酸化剤ガスOGは、図4および図11に示すように、熱交換部103内に形成された熱交換流路188内に流入し、熱交換流路188を通って酸化剤ガス供給マニホールド163へと排出される。熱交換部103は、上側および下側について発電単位102に隣接している。また、後述するように、発電単位102における発電反応は発熱反応である。そのため、酸化剤ガスOGが熱交換部103内の熱交換流路188を通過する際に、酸化剤ガスOGと発電単位102との間で熱交換が行われ、酸化剤ガスOGの温度が上昇する。なお、酸化剤ガス導入マニホールド161は、各発電単位102の空気室166には連通していないため、酸化剤ガス導入マニホールド161から各発電単位102の空気室166に酸化剤ガスOGが供給されることはない。酸化剤ガス供給マニホールド163へと排出された酸化剤ガスOGは、図4図5図7および図9に示すように、酸化剤ガス供給マニホールド163から各発電単位102の酸化剤ガス供給連通孔132を介して、空気室166に供給される。
【0036】
また、図6図8および図10に示すように、燃料ガス導入マニホールド171の位置に設けられたガス通路部材27の分岐部29に接続されたガス配管(図示せず)を介して燃料ガスFGが供給されると、燃料ガスFGは、ガス通路部材27の分岐部29および本体部28の孔を介して燃料ガス導入マニホールド171に供給され、燃料ガス導入マニホールド171から各発電単位102の燃料ガス供給連通孔142を介して、燃料室176に供給される。
【0037】
各発電単位102の空気室166に酸化剤ガスOGが供給され、燃料室176に燃料ガスFGが供給されると、単セル110において酸化剤ガスOGおよび燃料ガスFGの電気化学反応による発電が行われる。この発電反応は発熱反応である。各発電単位102において、単セル110の空気極114は空気極側集電体134を介して一方のインターコネクタ150に電気的に接続され、燃料極116は燃料極側集電体144を介して他方のインターコネクタ150に電気的に接続されている。また、燃料電池スタック100に含まれる複数の発電単位102は、熱交換部103を介しているものの、電気的に直列に接続されている。そのため、燃料電池スタック100の出力端子として機能するエンドプレート104,106から、各発電単位102において生成された電気エネルギーが取り出される。なお、SOFCは、比較的高温(例えば700℃から1000℃)で発電が行われることから、起動後、発電により発生する熱で高温が維持できる状態になるまで、燃料電池スタック100が加熱器(図示せず)により加熱されてもよい。
【0038】
各発電単位102の空気室166から排出された酸化剤オフガスOOGは、図5図7および図9に示すように、酸化剤ガス排出連通孔133を介して酸化剤ガス排出マニホールド162に排出され、さらに酸化剤ガス排出マニホールド162の位置に設けられたガス通路部材27の本体部28および分岐部29の孔を経て、当該分岐部29に接続されたガス配管(図示せず)を介して燃料電池スタック100の外部に排出される。また、各発電単位102の燃料室176から排出された燃料オフガスFOGは、図6図8および図10に示すように、燃料ガス排出連通孔143を介して燃料ガス排出マニホールド172に排出され、さらに燃料ガス排出マニホールド172の位置に設けられたガス通路部材27の本体部28および分岐部29の孔を経て、当該分岐部29に接続されたガス配管(図示しない)を介して燃料電池スタック100の外部に排出される。
【0039】
A−3.燃料電池スタック100の製造方法:
図12は、本実施形態における燃料電池スタック100の製造方法を示すフローチャートである。はじめに、空気極側フレーム130の形成材料である板状のマイカシートMSの表面を研磨する(S120)。この研磨工程は、例えば、マイカシートMSを、表面に研磨ペーパが巻き付けられた2つのローラの間を通過させることによって行われる。研磨工程により、マイカシートMSの両側の表面における微細な凹凸の程度が緩和され、表面粗さRaの値が小さくなる。
【0040】
図13は、マイカシートMSの表面粗さRaの測定結果の一例を示す説明図である。図13には、3つのマイカシートMSのサンプルn1からn3について、研磨工程(図12のS120)の前後での表面粗さRaの測定結果の一例が示されている。研磨工程前では、すべてのサンプルにおいて表面粗さRaは3.0(μm)より大きく、3つのサンプルの表面粗さRaの平均値(AV)は3.74(μm)であった。一方、研磨工程の後では、すべてのサンプルにおいて表面粗さRaは3.0(μm)以下であり、3つのサンプルの表面粗さRaの平均値(AV)は2.33(μm)であった。このように、研磨工程により、マイカシートMSの表面粗さRaは3.0(μm)以下に低下する。
【0041】
なお、マイカシートMSの表面粗さRaの定義は、JIS B 0601:2013に準拠するものとする。また、マイカシートMSの表面粗さRaは、JIS B 0633:2001に準拠して、触針式で測定される。ただし、一旦、組み立てられた燃料電池スタック100に含まれるマイカシートMS(空気極側フレーム130)の表面粗さRaを測定するためには、燃料電池スタック100のボルト22による締結を解除して、マイカシートMSを取り出す必要がある。この場合に、マイカシートMS単体を取り出すことができた場合には、マイカシートMSの表面粗さRaは触針式で測定される。一方、マイカシートMSが他の構成部材(例えばセパレータ120やインターコネクタ150)と固着して分離不可能である場合には、マイカシートMSと当該他の構成部材とを含む断面画像を撮像し、断面画像を解析して断面曲線を取得し、取得された断面曲線からJIS B 0601:2013に準拠してマイカシートMSの表面粗さRaが算出される。
【0042】
研磨工程の後、マイカシートMSに対する熱処理を実行する(図12のS130)。本実施形態では、熱処理として、マイカシートMSを850℃の大気中に5時間置くものとした。この熱処理は、主として、マイカをシート状に形成するためのバインダー(接着剤)をとばすことによって、バインダーに含まれる汚染物質を取り除くことを目的として実行される。熱処理により、マイカシートMS内部のバインダーがとばされるため、マイカシートMSの気孔率が高くなる。
【0043】
熱処理の後、マイカシートMSをプレス機で圧縮する(図12のS140)。本実施形態では、この圧縮工程において、マイカシートMSに80MPaから100MPa程度の圧力が加わるような圧縮荷重を与えるものとした。なお、本明細書では、燃料電池スタック100のボルト22による締結後にマイカシートMS(空気極側フレーム130)に作用する圧縮荷重(以下、「締結時荷重」という)と区別するため、この圧縮工程においてマイカシートMSに与える圧縮荷重を「予荷重」ともいう。本実施形態では、締結時荷重は、5MPaから15MPa程度である。すなわち、予荷重は、締結時荷重よりかなり大きい値に設定されている。圧縮工程により、マイカシートMSの平坦度が向上し、マイカシートMSのうねりPaの値およびばらつきが小さくなる。さらに、圧縮工程により、マイカシートMS内部の気孔がつぶされ、気孔率が低下する。なお、圧縮工程は、マイカシートMSの表面粗さRaの値にはほとんど影響を及ぼさない。
【0044】
図14は、マイカシートMSのうねりPaの測定結果の一例を示す説明図である。図14には、マイカシートMSのサンプル上に設定された5つの直線状の測定ラインML1からML5について、圧縮工程(図12のS140)において80MPaの予荷重を与える前後でのうねりPaの測定結果の一例が示されている。圧縮工程の前では、すべての測定ラインMLにおいて、うねりPaは1.4(μm)より大きく、5つの測定ラインMLのうねりPaの平均値(AV)は1.66(μm)、標準偏差(σ)は0.25であった。一方、圧縮工程の後では、1つの測定ラインML2を除くすべての測定ラインMLにおいて、うねりPaは1.4(μm)以下であり、5つの測定ラインMLのうねりPaの平均値(AV)は1.38(μm)、標準偏差(σ)は0.04であった。このように、マイカシートMSに予荷重を与えることにより、マイカシートMSのうねりPaの値が低下すると共に、うねりPaの値のばらつきが大幅に低下する。
【0045】
なお、マイカシートMSのうねりPaの定義は、JIS B 0601:2013に準拠するものとする。また、マイカシートMSのうねりPaは、JIS B 0633:2001に準拠して、触針式で測定される。
【0046】
圧縮工程の後、マイカシートMSをはじめとする燃料電池スタック100の各構成部材を組み立てる(図12のS150)。以上の工程により、上述した構成の燃料電池スタック100が製造される。
【0047】
A−4.空気極側フレーム130(マイカシートMS)の性能評価:
上述した方法により製造される燃料電池スタック100に含まれる空気極側フレーム130(マイカシートMS)のガスシール性について、性能評価を実施した。図15および図16は、性能評価に用いた試験装置500の構成を示す説明図である。また、図17は、性能評価結果の一例を示す説明図である。
【0048】
図15および図16に示すように、性能評価は、略円形の表面514を有する第1の治具510と、略円形の表面524を有する第2の治具520と、を備える試験装置500を用いて行った。第1の治具510の表面514には開口516が形成されており、当該開口516にガス流入管512が接続されている。また、第2の治具520の表面524には開口526が形成されており、当該開口526にガス排出管522が接続されている。
【0049】
性能評価では、平面形状がリング状であるマイカシートMSを、第1の治具510の表面514と第2の治具520の表面524とで挟持することによって、マイカシートMSの中空部分に空間を形成し、開口516を介して該空間にガス流入管512からのガスを流入させると共に、開口526を介して該空間からガス排出管522へとガスを排出させる。このときのガス流入管512におけるガス流量とガス排出管522におけるガス流量とを測定し、両者の差を、該空間からマイカシートMSの表面または内部を通るリーク経路LRを介したガスのリーク量として算出した。なお、ガス流入管512のガス流量を100mL/minとし、背圧を10kPaとした。また、マイカシートMSの周方向に直交する方向に沿った幅(シール幅)は5mmとした。
【0050】
図17に示すように、性能評価には、研磨もせず予荷重も与えなかったタイプ1のマイカシートMSと、研磨したが予荷重は与えなかったタイプ2のマイカシートMSと、研磨もして予荷重も与えたタイプ3のマイカシートMSとのそれぞれについて、3つのサンプルを用い、マイカシートMSにかかる面圧を変化させつつ、マイカシートMSの単位長さ(内周長)あたりのリーク量(mL/min/m)を調べた。なお、タイプ1のマイカシートMSの表面粗さRaは3.7(μm)であり、タイプ2およびタイプ3のマイカシートMSの表面粗さRaは2.3(μm)であった。また、予荷重の大きさは80MPaとした。
【0051】
図17に示すように、一般に、マイカシートMSにかかる面圧が小さいほど、ガスシール性は低下する傾向にあるが、面圧の値にかかわらず、タイプ2のマイカシートMSのガスシール性は、タイプ1のマイカシートMSのガスシール性より高い。これは、マイカシートMSの研磨によって表面粗さRaの値が小さくなり、マイカシートMSの表面を介したガスリークが抑制されるためであると考えられる。なお、マイカシートMSの研磨を行うことにより、サンプル間でのガスシール性のばらつきも小さくなっている。
【0052】
また、面圧の値にかかわらず、タイプ3のマイカシートMSのガスシール性は、タイプ2のマイカシートMSのガスシール性よりさらに高い。これは、マイカシートMSに予荷重を与えることによってうねりPaの値が小さくなり、マイカシートMSの表面を介したガスリークが抑制されるためであると考えられる。また、マイカシートMSに予荷重を与えることによってマイカシートMSの気孔率が低下し、マイカシートMSの内部を介したガスリークが抑制されるためでもあると考えられる。なお、マイカシートMSに予荷重を与えることにより、サンプル間でのガスシール性のばらつきもさらに小さくなっている。
【0053】
なお、マイカシートMSは、圧縮力を加えた後に力を解放しても圧縮力を加える前の状態に戻らない特性(ヒステリシス特性)を有する。そのため、一旦、マイカシートMSに予荷重を加えれば、予荷重を取り除いた後も、良好なうねりPaの値を維持する。従って、予荷重を与えたマイカシートMSにより空気極側フレーム130を形成すれば、空気極側フレーム130のガスシール性を向上させることができる。図18は、マイカシートMSのヒステリシス特性を示す説明図である。図18には、マイカシートMSの圧縮と解放とを繰り返した場合におけるリーク量(mL/min)の測定結果が示されている。図18に示すように、マイカシートMSの面圧を増加させると(P1)リーク量は減少するが、その後、マイカシートMSの面圧を減少させると(R1)、リーク量は増加するものの、その増加の傾きは前回の面圧増加時(P1)の傾きより緩やかとなる。同様に、その後、マイカシートMSの面圧を増加させると(P2)、前回の面圧減少時(R1)の傾きとほぼ同じ傾きでリーク量は減少するが、その後、マイカシートMSの面圧を減少させると(R2)、リーク量は増加するものの、その増加の傾きは前回の面圧増加時(P2)の傾きより緩やかとなる。このように、マイカシートMSはヒステリシス特性を有しているため、予荷重を与えたマイカシートMSにより空気極側フレーム130を形成すれば、空気極側フレーム130のガスシール性を向上させることができる。
【0054】
また、マイカシートMSのヒステリシス特性を利用することにより、燃料電池スタック100に含まれるマイカシートMSにより形成された空気極側フレーム130が、予荷重を与えられたものか否かを判定することができる。図19は、マイカシートMSへの予荷重の有無の判定方法を示す説明図である。図19には、マイカシートMSのひずみと圧力との関係が示されている。曲線C1は、マイカシートMSに予荷重を与えることなく製造された燃料電池スタック100から取り出されたマイカシートMSにおける、ボルト22付近の位置における特性曲線であり、曲線C2は、そのようなマイカシートMSにおける、ボルト22とボルト22との中間付近の位置における特性曲線である。また、曲線C3は、マイカシートMSに予荷重が与えられて製造された燃料電池スタック100から取り出されたマイカシートMSにおける、ボルト22付近の位置における特性曲線であり、曲線C4は、そのようなマイカシートMSにおける、ボルト22とボルト22との中間付近の位置における特性曲線である。
【0055】
一般に、マイカシートMSに対する圧力を増加させるとひずみは大きくなる傾向にあるが、マイカシートMSはヒステリシス特性を有するため、過去に経験した圧力の値を超えると、圧力の増加に対するひずみの増加の割合が急激に大きくなる。この切り替わりの点が、各曲線における変曲点に相当する。
【0056】
予荷重が与えられなかったマイカシートMSについては、締結時荷重が過去に経験した最大の荷重となる。ここで、マイカシートMSのボルト22付近の位置における締結時荷重の値P2は、マイカシートMSのボルト22とボルト22との中間付近の位置における締結時荷重の値P1より大きい。そのため、曲線C1の変曲点における圧力P2は、曲線C2の変曲点における圧力P1より大きい。また、曲線C1と曲線C2とは、変曲点までの圧縮特性も互いに異なる。従って、燃料電池スタック100から取り出したマイカシートMSにおけるボルト22付近の位置と、ボルト22とボルト22との中間付近の位置とで、変曲点における圧力の値や変曲点までの圧縮特性が互いに異なれば、このマイカシートMSは予荷重が与えられなかったものであると判定できる。
【0057】
一方、予荷重が与えられたマイカシートMSについては、ボルト22付近の位置であっても、ボルト22とボルト22との中間付近の位置であっても、予荷重P3が過去に経験した最大の荷重である。そのため、曲線C3と曲線C4とは、変曲点における圧力の値が±20%の値P3となる。また、曲線C3と曲線C4とは、変曲点までの圧縮特性も±20%の値である。従って、燃料電池スタック100から取り出したマイカシートMSにおけるボルト22付近の位置と、ボルト22とボルト22との中間付近の位置とで、変曲点における圧力の値や変曲点までの圧縮特性が互いに±20%の値であれば、このマイカシートMSは予荷重が与えられたものであると判定できる。
【0058】
以上説明したように、本実施形態の燃料電池スタック100の製造方法は、マイカシートMSを研磨する工程を備える。研磨されたマイカシートMSにより空気極側フレーム130を形成することにより、空気極側フレーム130の表面粗さRaを3.0(μm)以下とすることができる。そのため、空気極側フレーム130の表面を介した空気室166からのガスの漏洩を効果的に抑制することができ、空気極側フレーム130のガスシール性を向上させることができる。
【0059】
また、本実施形態の燃料電池スタック100の製造方法は、マイカシートMSに予荷重を与える圧縮工程を備える。マイカシートMSはヒステリシス特性を有するため、マイカシートMSに予荷重を与えることによって、マイカシートMSにより形成される空気極側フレーム130のうねりPaの値やうねりPaのばらつきを低下させることができる。具体的には、空気極側フレーム130のうねりPaの平均値を1.4(μm)以下とすることができ、空気極側フレーム130のうねりPaの標準偏差を0.2以下とすることができる。そのため、空気極側フレーム130のうねりPaの値やうねりPaのばらつきを抑え、空気極側フレーム130の表面を介した空気室166からのガスの漏洩をより効果的に抑制することができ、空気極側フレーム130のガスシール性をさらに向上させることができる。なお、空気極側フレーム130のうねりPaの平均値や標準偏差は、空気極側フレーム130上に設定された任意の5つの測定ラインML上における測定結果から算出するものとする。
【0060】
また、マイカシートMSに予荷重を与えることによって、マイカシートMSにより形成される空気極側フレーム130の気孔率も低下させることができるため、空気極側フレーム130の内部を介した空気室166からのガスの漏洩をより効果的に抑制することができ、空気極側フレーム130のガスシール性をさらに向上させることができる。
【0061】
なお、本実施形態の燃料電池スタック100の製造方法では、熱処理工程の後に圧縮工程が実行される。そのため、熱処理工程によってマイカシートMS内部のバインダー等が分解や揮発して気孔率が高くなっても、その後に圧縮工程を実行することによってマイカシートMSの気孔率を低下させることができ、空気極側フレーム130の内部を介した空気室166からのガスの漏洩をより効果的に抑制することができる。
【0062】
また、本実施形態の燃料電池スタック100の製造方法では、圧縮工程においてマイカシートMSに与えられる予荷重は、締結時荷重より大きい値に設定されている。そのため、圧縮工程を行うことによって空気極側フレーム130のうねりPaの値やうねりPaのばらつき、気孔率をより効果的に低下させることができ、空気極側フレーム130の表面や内部を介した空気室166からのガスの漏洩をさらに効果的に抑制することができる。
【0063】
B.変形例:
本明細書で開示される技術は、上述の実施形態に限られるものではなく、その要旨を逸脱しない範囲において種々の形態に変形することができ、例えば次のような変形も可能である。
【0064】
上記実施形態では、空気極側フレーム130(マイカシートMS)を研磨することにより、空気極側フレーム130の表面粗さRaを3.0(μm)以下としているが、他の製造方法によって空気極側フレーム130の表面粗さRaを3.0(μm)以下としてもよい。どのような製造方法を採用したとしても、空気極側フレーム130の表面粗さRaを3.0(μm)以下とすれば、空気極側フレーム130の表面を介した空気室166からのガスの漏洩を効果的に抑制することができ、空気極側フレーム130のガスシール性を向上させることができる。
【0065】
同様に、上記実施形態では、空気極側フレーム130(マイカシートMS)に予荷重を与えることにより、空気極側フレーム130のうねりPaの標準偏差を0.2以下とし、うねりPaの平均値を1.4(μm)以下としているが、他の製造方法によって空気極側フレーム130のうねりPaの標準偏差を0.2以下とし、うねりPaの平均値を1.4(μm)以下としてもよい。どのような製造方法を採用したとしても、空気極側フレーム130のうねりPaの標準偏差を0.2以下とし、または、うねりPaの平均値を1.4(μm)以下とすれば、空気極側フレーム130のうねりPaの値やうねりPaのばらつきを抑え、空気極側フレーム130の表面を介した空気室166からのガスの漏洩をより効果的に抑制することができ、空気極側フレーム130のガスシール性をさらに向上させることができる。
【0066】
また、上記実施形態では、予荷重は締結時荷重より大きい値に設定されているが、予荷重は、締結時荷重と同じか締結時荷重より小さい値に設定されてもよい。ただし、予荷重を締結時荷重より大きい値に設定すると、空気極側フレーム130のうねりPaの値やうねりPaのばらつき、気孔率をより効果的に低下させることができるため、好ましい。
【0067】
また、上記実施形態では、マイカシートMSに対する熱処理が実行されているが、熱処理は必ずしも実行される必要は無い。
【0068】
また、上記実施形態では、空気極側フレーム130の形成材料として、マイカが用いられているか、マイカに代えて、バーミキュライト、サーミキュライト、アルミナフェルト等の他の材料が用いられてもよい。
【0069】
また、上記実施形態では、空気室166をシールする空気極側フレーム130の表面粗さRaやうねりPa、空気極側フレーム130を形成する際の研磨や予荷重について説明したが、燃料室176のシールが燃料極側フレーム140によるコンプレッションシールにより実現されている場合には、空気極側フレーム130に加えて、あるいは空気極側フレーム130に代えて、燃料極側フレーム140の表面粗さRaやうねりPa、燃料極側フレーム140を形成する際の研磨や予荷重について上記実施形態と同様の構成および製造方法を採用すれば、燃料極側フレーム140による燃料室176のガスシール性を向上させることができる。なお、空気極側フレーム130や燃料極側フレーム140とは別に、シール部材を設け、そのシール部材の表面粗さRaやうねりPa、研磨や予荷重について上記実施形態と同様の構成および製造方法を採用するとしてもよい。また、シール部材によるガスシール性の向上のため、シール部材(例えば、空気極側フレーム130)を挟持する2つの部材(例えば、セパレータ120およびインターコネクタ150)の表面は、極端な凹凸が無く、平面に近いことが好ましい。例えば、シール部材を挟持する2つの部材の表面の表面粗さRaは、2.0μm以下であることが好ましく、1.0μm以下であることがより好ましく、0.5μm以下であることが一層好ましい。なお、シール部材を挟持する2つの部材の表面の表面粗さRaは、上述のシール部材の表面粗さRaと同様に、JIS B 0601:2013に準拠して測定することができる。
【0070】
また、上記実施形態において、燃料電池スタック100に含まれる発電単位102の個数は、あくまで一例であり、発電単位102の個数は燃料電池スタック100に要求される出力電圧等に応じて適宜決められる。
【0071】
また、上記実施形態において、燃料電池スタック100の配列方向における熱交換部103の位置はあくまで一例であり、熱交換部103の位置は任意の位置に変更可能である。ただし、熱交換部103の位置は、燃料電池スタック100に含まれる複数の発電単位102の内、より高温になる発電単位102に隣接する位置であることが、燃料電池スタック100の配列方向における熱分布の緩和のために好ましい。例えば、燃料電池スタック100の配列方向中央付近の発電単位102がより高温になりやすい場合には、上記実施形態のように、燃料電池スタック100の配列方向中央付近に熱交換部103を設けることが好ましい。また、燃料電池スタック100が2つ以上の熱交換部103を備えていてもよい。
【0072】
また、上記実施形態では、熱交換部103が酸化剤ガスOGの温度を上昇させるように構成されているが、熱交換部103が、酸化剤ガスOGに代えて燃料ガスFGの温度を上昇させるように構成されてもよいし、酸化剤ガスOGと共に燃料ガスFGの温度を上昇させるように構成されてもよい。
【0073】
また、上記実施形態では、ボルト22の両側にナット24が嵌められているとしているが、ボルト22が頭部を有し、ナット24はボルト22の頭部の反対側にのみ嵌められているとしてもよい。
【0074】
また、上記実施形態では、エンドプレート104,106が出力端子として機能するとしているが、エンドプレート104,106の代わりに、エンドプレート104,106のそれぞれと接続された別部材(例えば、エンドプレート104,106のそれぞれと発電単位102との間に配置された導電板)が出力端子として機能するとしてもよい。
【0075】
また、上記実施形態では、各ボルト22の軸部の外周面と各連通孔108の内周面との間の空間を各マニホールドとして利用しているが、これに代えて、各ボルト22の軸部に軸方向の孔を形成し、その孔を各マニホールドとして利用してもよい。また、各マニホールドを各ボルト22が挿入される各連通孔108とは別に設けてもよい。
【0076】
また、上記実施形態では、2つの発電単位102が隣接して配置されている場合には、1つのインターコネクタ150が隣接する2つの発電単位102に共有されるとしているが、このような場合でも、2つの発電単位102がそれぞれのインターコネクタ150を備えてもよい。また、上記実施形態では、燃料電池スタック100において最も上に位置する発電単位102の上側のインターコネクタ150や、最も下に位置する発電単位102の下側のインターコネクタ150は省略されているが、これらのインターコネクタ150を省略せずに設けてもよい。
【0077】
また、上記実施形態において、燃料極側集電体144は、空気極側集電体134と同様の構成であってもよく、燃料極側集電体144と隣接するインターコネクタ150とが一体部材であってもよい。また、空気極側フレーム130ではなく燃料極側フレーム140が絶縁体であってもよい。また、空気極側フレーム130や燃料極側フレーム140は、多層構成であってもよい。
【0078】
また、上記実施形態における各部材を形成する材料は、あくまで例示であり、各部材が他の材料により形成されてもよい。
【0079】
また、上記実施形態において、都市ガスを改質して水素リッチな燃料ガスFGを得るとしているが、LPガスや灯油、メタノール、ガソリン等の他の原料から燃料ガスFGを得るとしてもよいし、燃料ガスFGとして純水素を利用してもよい。
【0080】
また、上記実施形態において、電解質層112と空気極114との間に、例えばセリアを含む反応防止層を設け、電解質層112内のジルコニウム等と空気極114内のストロンチウム等とが反応することによる電解質層112と空気極114との間の電気抵抗の増大を抑制するとしてもよい。なお、本明細書において、Aを挟んでBとCとが互いに対向するとは、AとBまたはCとが隣接することを必要とせず、AとBまたはCとの間に他の構成要素が介在する形態を含む。例えば、電解質層112と空気極114との間に反応防止層が設けられた構成であっても、空気極114と燃料極116とは電解質層112を挟んで互いに対向すると言える。
【0081】
また、上記実施形態では、固体酸化物形燃料電池(SOFC)を例に説明したが、本発明は、固体高分子形燃料電池(PEFC)、リン酸型燃料電池(PAFC)、溶融炭酸塩形燃料電池(MCFC)といった他のタイプの燃料電池にも適用可能である。
【符号の説明】
【0082】
22:ボルト 24:ナット 26:絶縁シート 27:ガス通路部材 28:本体部 29:分岐部 100:燃料電池スタック 102:発電単位 103:熱交換部 104:エンドプレート 106:エンドプレート 108:連通孔 110:単セル 112:電解質層 114:空気極 116:燃料極 120:セパレータ 121:孔 124:接合部 130:空気極側フレーム 131:孔 132:酸化剤ガス供給連通孔 133:酸化剤ガス排出連通孔 134:空気極側集電体 140:燃料極側フレーム 141:孔 142:燃料ガス供給連通孔 143:燃料ガス排出連通孔 144:燃料極側集電体 145:電極対向部 146:インターコネクタ対向部 147:連接部 149:スペーサー 150:インターコネクタ 161:酸化剤ガス導入マニホールド 162:酸化剤ガス排出マニホールド 163:酸化剤ガス供給マニホールド 166:空気室 171:燃料ガス導入マニホールド 172:燃料ガス排出マニホールド 176:燃料室 182:孔 184:連通孔 186:連通孔 188:熱交換流路 500:試験装置 510:治具 512:ガス流入管 514:表面 516:開口 520:治具 522:ガス排出管 524:表面 526:開口
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