(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
梱包体は、載置台及び覆台が嵌る枠状の側壁と、載置台と覆台の間で保持部材及び複合部材の外周囲と側壁の隙間の少なくとも一部に設けられた緩衝材と、を含む請求項1〜7いずれか1項に記載の梱包体。
【発明を実施するための形態】
【0011】
[炭素繊維]
1.概要
本発明に用いられる複合材料に特に限定は無いが、炭素繊維と熱可塑性樹脂を含むことが好ましい。以下、好ましい態様として、複合材料に炭素繊維を含む場合に関して説明する。炭素繊維の種類は、熱可塑性樹脂の種類や複合材料の用途等に応じて適宜選択することができるものであり、特に限定されるものではない。
中でも、引張強度に優れる点でポリアクリロニトリル(PAN)系炭素繊維を用いることが好ましい。炭素繊維としてPAN系炭素繊維を用いる場合、その引張弾性率は100〜600GPaの範囲内であることが好ましく、200〜500GPaの範囲内であることがより好ましく、230〜450GPaの範囲内であることがさらに好ましい。また、引張強度は2000〜6000MPaの範囲内であることが好ましく、3000〜6000MPaの範囲内であることがより好ましい。
【0012】
2.炭素繊維の繊維長
炭素繊維の繊維長は、炭素繊維の種類や熱可塑性樹脂の種類、複合材料中における炭素繊維の配向状態等に応じて適宜決定することができるものであり、特に限定されるものではない。したがって、目的に応じて連続繊維を用いてもよく、不連続繊維を用いてもよい。不連続繊維を用いる場合、重量平均繊維長は1〜100mmの範囲内であることが好ましい。繊維長は互いに異なる炭素繊維を併用してもよい。換言すると、炭素繊維は、平均繊維長に単一のピークを有するものであってもよく、あるいは複数のピークを有するものであってもよい。
【0013】
炭素繊維の平均繊維長は、ロータリーカッター等で炭素繊維を一定長に切断して用いた場合は、そのカット長が平均繊維長にあたり、これは数平均繊維長でもあり、重量平均繊維長でもある。個々の炭素繊維の繊維長をLi、測定本数をjとすると、数平均繊維長(Ln)と重量平均繊維長(Lw)とは、以下の式(1),(2)により求められる(一定カット長の場合は、数平均繊維長(Ln)の計算式(1)で重量平均繊維長(Lw)を算出していることにもなる)。
Ln=ΣLi/j ・・・式(1)
Lw=(ΣLi
2)/(ΣLi)・・・式(2)
【0014】
3.炭素繊維の繊維形態
複合材料における炭素繊維の配向状態としては、例えば、炭素繊維の長軸方向が一方向に配列した一方向配列や、上記長軸方向が複合材料の面内方向においてランダムに配列した2次元ランダム配列を挙げることができる。なお、面内方向とは
図5の(a)でいうXY方向である。
炭素繊維の配向状態は、面内方向においてランダムに配列した2次元ランダム配列であることが好ましい。また、上記一方向配列と2次元ランダム配列の中間の無規則配列(強化繊維の長軸方向が完全に一方向に配列しておらず、かつ完全にランダムでない配列状態)であってもよい。
【0015】
なお、複合材料内における炭素繊維の配向態様は、例えば、複合材料の任意の方向、及びこれと直行する方向を基準とする引張試験を行い、引張弾性率を測定した後、測定した引張弾性率の値のうち大きいものを小さいもので割った比(Eδ)を測定することで確認できる。弾性率の比が1に近いほど、炭素繊維が2次元ランダム配列していると評価できる。直交する2方向の弾性率の値のうち大きいものを小さいもので割った比が2を超えないときに等方性であるとされ、この比が1.3を超えないときは等方性に優れていると評価される。
【0016】
4.炭素繊維の体積含有率(Vf)
好ましい態様として、複合材料に炭素繊維と熱可塑性樹脂を含む場合、式(3)で定義される、複合材料に含まれる炭素繊維体積割合(Vf)に特に限定は無いが5〜80%であることが好ましく、10〜80%であることがより好ましく、10〜70%であることが更に好ましく、20〜50%であることがより一層好ましく、30〜40%が最も好ましい。
100×炭素繊維体積/(炭素繊維体積+熱可塑性樹脂体積) ・・・ 式(3)
炭素繊維体積割合(Vf)が5%以上であれば、補強効果が十分に発現しやすくなる。反対に、Vfが80%以下であれば、得られる複合材料にボイドが発生しにくくなり、物性が向上しやすい。
【0017】
[熱可塑性樹脂]
本発明における熱可塑性樹脂は、所望の強度を有する複合材料を得ることができるものであれば特に限定されるものではなく、複合材料の用途等に応じて適宜選択して用いることができる。
熱可塑性樹脂は、所望の軟化点又は融点を有するものを適宜選択して用いることができるが、通常、軟化点が180℃〜350℃の範囲内のものが用いられるが、これに限定されるものではない。
【0018】
上記熱可塑性樹脂としては、ポリオレフィン樹脂、ポリスチレン樹脂、熱可塑性ポリアミド樹脂、ポリエステル樹脂、ポリアセタール樹脂(ポリオキシメチレン樹脂)、ポリカーボネート樹脂、(メタ)アクリル樹脂、ポリアリレート樹脂、ポリフェニレンエーテル樹脂、ポリイミド樹脂、ポリエーテルニトリル樹脂、フェノキシ樹脂、ポリフェニレンスルフィド樹脂、ポリスルホン樹脂、ポリケトン樹脂、ポリエーテルケトン樹脂、熱可塑性ウレタン樹脂、フッ素系樹脂、熱可塑性ポリベンゾイミダゾール樹脂、ビニル系樹脂等を挙げることができる。
【0019】
上記ポリオレフィン樹脂としては、例えば、ポリエチレン樹脂、ポリプロピレン樹脂、ポリブタジエン樹脂、ポリメチルペンテン樹脂等を挙げることができる。
上記ビニル系樹脂としては、塩化ビニル樹脂、塩化ビニリデン樹脂、酢酸ビニル樹脂、ポリビニルアルコール樹脂等を挙げることができる。
上記ポリスチレン樹脂としては、例えば、ポリスチレン樹脂、アクリロニトリル−スチレン樹脂(AS樹脂)、アクリロニトリル−ブタジエン−スチレン樹脂(ABS樹脂)等を挙げることができる。
【0020】
上記ポリアミド樹脂としては、例えば、ポリアミド6樹脂(ナイロン6)、ポリアミド11樹脂(ナイロン11)、ポリアミド12樹脂(ナイロン12)、ポリアミド46樹脂(ナイロン46)、ポリアミド66樹脂(ナイロン66)、ポリアミド610樹脂(ナイロン610)等を挙げることができる。
上記ポリエステル樹脂としては、例えば、ポリエチレンテレフタレート樹脂、ポリエチレンナフタレート樹脂、ボリブチレンテレフタレート樹脂、ポリトリメチレンテレフタレート樹脂、液晶ポリエステル等を挙げることができる。上記(メタ)アクリル樹脂としては、例えば、ポリメチルメタクリレートを挙げることができる。
【0021】
上記ポリフェニレンエーテル樹脂としては、例えば、変性ポリフェニレンエーテル等を挙げることができる。上記熱可塑性ポリイミド樹脂としては、例えば、熱可塑性ポリイミド、ポリアミドイミド樹脂、ポリエーテルイミド樹脂等を挙げることができる。上記ポリスルホン樹脂としては、例えば、変性ポリスルホン樹脂、ポリエーテルスルホン樹脂等を挙げることができる。
上記ポリエーテルケトン樹脂としては、例えば、ポリエーテルケトン樹脂、ポリエーテルエーテルケトン樹脂、ポリエーテルケトンケトン樹脂を挙げることができる。上記フッ素系樹脂としては、例えば、ポリテトラフルオロエチレン等を挙げることができる。
【0022】
本発明に用いられる熱可塑性樹脂は1種類のみであってもよく、2種類以上であってもよい。2種類以上の熱可塑性樹脂を併用する態様としては、例えば、相互に軟化点又は融点が異なる熱可塑性樹脂を併用する態様や、相互に平均分子量が異なる熱可塑性樹脂を併用する態様等を挙げることができるが、この限りではない。
【0023】
[その他の剤]
本発明で用いる複合材料中には、本発明の目的を損なわない範囲で、有機繊維または無機繊維の各種繊維状または非繊維状のフィラー、難燃剤、耐UV剤、安定剤、離型剤、顔料、軟化剤、可塑剤、界面活性剤等の添加剤を含んでいてもよい。
【0024】
[複合材料の製造方法]
本発明に用いられる複合材料は、一般的に公知の方法を用いて製造することができ、例えば、WO2012/105080パンフレット、US2013/0317161号公報に記載の等方性基材を好ましく用いられる。該等方性基材を使用した複合材料は、その面内において、炭素繊維が特定の方向に配向しておらず、無作為な方向に分散して配置されている。
【0025】
[複合材料の形状]
本発明における複合材料の形状は、パターンカット形状であることが好ましい。
本明細書では、成形しやすいように、予め目的形状に複合材料がカットされた形状を、パターンカット形状と呼ぶ。正方形や長方形などの単純形状だけでなく、プレス成形する形状にあわせて、予め目的形状に複合材料はカットされる。
複合材料は、予め目的の形状にカットしておくことで、成形体を目的の形状に成形しやすい。例えば
図1(b)のような箱型の成形体102を製造する場合には、
図1(a)のようなパターンにカットされた複合材料100を用いると良い。なお、
図1(a)の101は成形時の(成形体を作成する際の)のり代となる部分である。
【0026】
[梱包体]
本発明における梱包体は、複数の取付孔を有する載置台に、複数の板状複合材料が積載されている。
【0027】
1.載置台
載置台と保持部材の素材に特に限定は無いが、コスト面から段ボールであることが好ましい。例えば
図2の載置台201には、複数の取付孔202が形成されている。ここに示した取付孔202は載置台201を貫通していても良いが、取付孔202の深さを載置台201の厚さよりも浅く形成して、底部のある孔として形成しても良い。
【0028】
2.取付孔と保持部材
本発明における取付孔202には、着脱可能に複数の保持部材が取り付けられている。複合材料を保持する保持部材は、その1つを保持部材301として
図3に示すように、取付孔202に着脱可能に取り付けられる取付領域302が一端部に一体に形成されたものであり、その保持部材301は、
図3〜10に示したように、載置台に積載された複合材料端面を通じて複合材料を保持する。
図3に示す如く、取付領域302を下にして、保持部材301を下方に下げることにより、その取付領域302を任意の取付孔202に嵌合し、保持部材301を載置台201に取り付けることができる。保持部材301を上方に持ち上げれば、その取付領域302が取付孔202から外れ、保持部材301を載置台201から離脱させることができる。
【0029】
複合材料を運搬する目的で、複合材料を載置台に積載して保持するには、例えば、複数の保持部材301の取付領域302を、複合材料の形状に合せて選択した取付孔202に
図3、
図4に示すように嵌め込み、
図5(a)〜
図5(b)に示したように、載置台201の上方から複合材料501を下降させ、複合材料501を載置台201の上面の載置面上に積載する。このとき、各保持部材301の保持面(接触面)は、複合材料501の端面に当接し、或いは近接して位置し、複合材料501を位置決めして保持することができる。
複合材料501を載置台201の上面に積載した後に、複数の保持部材301の取付領域302を取付孔202に嵌合して、複合材料501を保持部材301によって保持するようにしてもよい。
具体例として、
図5(c)に、載置台上に積載された、パターンカット形状の複合材料501Aを6個の保持部材301によって保持したときの様子を模式的に示す。保持部材301と複合材料501は互いに当接し、又は極く近接して位置するので、これらの間にスペーサを配置する必要はない。
【0030】
また、
図5(c)の具体例に示すように、
図5の502(二重丸)には保持部材301が取り付けられているが、
図5の503(一重丸)には保持部材301が取り付けられていない。これは、パターンカット形状に応じて載置台を準備するよりも、あらゆるパターンカット形状に対応できる載置台を予め作成しておくと、作業上好ましいためであり、異なる形状にパターンカットされた複合材料を載置する場合には、
図5(d)のように保持部材301が取り付けられる取付孔が
図5(c)とは異なってくる。
図5(d)は、
図5(c)とは異なるパターンカット形状の複合材料501Bを積載している模式図である。パターンカット形状が異なるため、保持部材301の取付位置は
図5(c)とは異なる。載置台201にはあらゆるパターンカット形状の複合材料を保持できるように取付孔202を設けて置くことが好ましく、従って、保持部材301の数は、取付孔202の数よりも少ないことが好ましい。
【0031】
3.保持部材の形状
本発明における梱包体は、複合材料と保持部材の接触面において、複合材料又は保持部材のいずれか一方の接触面が曲面であり、他方の接触面が平面又は曲面である。ここでいう「複合材料と保持部材の接触面」とは、複数ある接触面のうち、少なくとも1つの接触面において、複合材料又は保持部材のいずれか一方の接触面が曲面であり、他方の接触面が平面又は曲面であれば良い。これにより、複合材料から炭素繊維が脱落することなく、炭素繊維の毛羽が輸送中、あるいは輸送後の工場内で舞い上がって、電源ショートによる火災など、重大事故に繋がる可能性を抑制できる。
【0032】
本発明における接触面を、
図11(a)〜(g)に例示する。反対に、
図12(a)〜(c)に示した通り、複合材料501を保持する保持部材301の接触点が頂角の場合、複合材料501の接触面が曲面であっても、複合材料501の端部から炭素繊維が脱落しやすい。同様に、
図12(d)〜(f)の形状のように、保持部材301と複合材料501の接触面が、ともに平面形状(図では上から見ているため、接触面は直線状に描かれている)である場合でも、複合材料501と保持部材301とが、輸送中に擦れ合って、複合材料501から炭素繊維が脱落してしまう。
【0033】
本発明における複合材料と保持部材の接触面において、保持部材の接触面が曲面であり、複合材料の接触面が平面又は曲面であることが好ましい。
図11(e)のように、複合材料501側の接触面が直線形状であっても、保持部材301の接触面が曲面であれば、効果的に炭素繊維の毛羽の発生を抑制できるため、複合材料501のパターンカット形状の形状自由度が増す。
保持部材301の接触面が曲面である場合、曲面の曲率半径は15〜30mmであるとより好ましく、保持部材301が円柱形状(
図11(a)の形状、上から見ると保持部材301は円形状である。)であると更に好ましい。
【0034】
4.覆台
図6に示すように、取付孔202に取り付けられた保持部材301の載置台上面からの高さを、積載された複合材料601の載置台上面からの高さよりも高くなるように、保持部材の長さを設定し、その保持部材301の上に、覆台701を被せることで、より安定した梱包体になる(
図7、
図8)。また、このように覆台701を設ければ、その上に、図示していない梱包体を安定した状態で載せ、梱包体を上下に積み重ねることが可能となる。
覆台701としては適宜な形態のものを用いることができるが、本発明における梱包体は、複数の板状複合材料が、覆台701と載置台201とで挟まれて梱包され、覆台701は、載置台201の取付孔202と対応する位置に、挿入孔702を有し、着脱可能に保持部材301は挿入孔702に挿入されていることが好ましい。なお、挿入孔702に挿入されるのは、取付孔202に取り付けられた保持部材301の一端部とは反対側の他端部となる。これにより、保持部材301の上部に容易かつ正確に覆台701を取り付けることができる。覆台701と載置台201が同一形状であると、梱包体の製造するにあたって好ましい。
【0035】
5.緩衝部材
本発明における梱包体は、緩衝材1001を含むことが好ましい。緩衝剤1001のズレ防止の観点より、緩衝剤1001は、
図9(a)〜
図9(b)に示すように、載置台201及び覆台701が密閉可能に嵌る枠状の側壁901を有する箱に箱詰めした際、
図10に示すように、載置台201と覆台701の間で、保持部材301及び複合部材601の外周囲と箱の側壁901の隙間の少なくとも一部に設けるのが好ましく、当該隙間に敷き詰めるのがより好ましい。
緩衝材1001は、例えばゴム又は軟質樹脂などから成る弾性を有する部材であっても良いし、気泡入り緩衝材のようなエアークッションであると好ましい。
このような緩衝材1001を設けると、例えば、梱包体を運搬する際に、梱包体が斜めになっても、保持部材301及び複合部材601が緩衝材1001を介して側壁901によって支持され、保持部材301に応力が集中せず、緩衝材1001によって応力が緩和され、複合材料601に傷が付く不具合を阻止できる。
【0036】
6.炭素繊維毛羽量
本発明における梱包体中の炭素繊維毛羽量は、0.5g/m
2以下であることが好ましく、0.3g/m
2以下であることがより好ましく、0.1g/m
2以下であることが更に好ましい。
また、本発明における複合材料は、保持部材と接する複合材料端面の面粗度(Rz)が5μm以上50μm以下であることが好ましい。複合材料端面は表面性、特に平滑性に優れていることが、炭素繊維毛羽量発生防止の観点から好ましい。複合材料の面粗度(Rz)が50μm以下であることにより、端面において剥離やバリがほとんどなく、保持部材との摩擦による炭素繊維の毛羽発生を防止できる。面粗度(Rz)は好ましくは30μm以下であり、より好ましくは25μm以下であり、さらにより好ましくは15.0μm以下である。反対に、5μmより大きいと、例えば、この端面を他の部材と接着剤を用いて接合する場合、接着剤が端面内に浸透しやすくなるため、接着面(端面)のアンカー効果が十分に発現できなることが多い。
【0037】
7.梱包体
本発明における梱包体とは、積載された複合材料が、載置台に保持部材を介して保持されているものを指すので、例えば
図6に示すものが梱包体となる。
ただし、好ましい形態として、覆台を設けたもの(例えば
図8)や、密閉可能とするために箱詰めしたもの(例えば
図9、
図10)も、本発明における梱包体である。
【0038】
[梱包体の運搬]
梱包体を運搬するときは、載置台の下から、例えばフォークリフトのフォークを差し込んで、梱包体を持ち上げ、これをトラックなどに載せて輸送することができる。このとき、載置台上の複合材料は、その周囲を複数の保持部材により保持されているので、複合材料を安定した状態で運搬することができる。
複合材料を輸送先に運んだあと、複合材料を下した後には、保持部材を分離して元の場所に返送することができるし、段ボールで載置台や保持部材等を作成している場合は、輸送先で破棄することもできる。
【0039】
以上のように、本願発明の梱包体は、複数の取付孔が形成された載置台と、取付孔に着脱可能に取り付けられて複合材料を保持する保持部材とを具備している。このため、複合材料のサイズや形態がいかなるときも、これに合せて取付孔を選択し、その取付孔に保持部材を取り付けることにより、様々なパターンカット形状の複合材料であっても、その周囲を保持部材によって保持することができる。
【0040】
また、
図2に示したように、載置台201に形成された取付孔2020の形状と寸法は、全の取付孔202でほぼ同一に形成されていることが好ましい。このようにすれば、保持部材301の取付領域302を、いずれの取付孔202にも容易に嵌合し、かつ容易にその取付孔202から抜き出すことができ、保持部材301の着脱作業を楽に行うことができる。
また、
図2に示した例では、載置台201の上面のうちの特定の領域のみ、複数の取付孔202が形成されているが、載置台上の全領域に複数の取付孔202を形成するようにしてもよく、例えば、
図13(a)に示すように、載置台上の全領域に複数の取付孔202を行列状に設けてもよい。
図13(b)は、複数の取付孔202が行列状に設けられた載置台201に、
図5(c)に示したパターンカット形状の複合材料501Aが載置される場合を示しており、
図13(b)において、502(二重丸)には保持部材が取り付けられており、503(一重丸)には保持部材が取り付けられていない。このように、複合材料の形状に合わせて選択される取付孔に保持部材を取り付けることにより、あらゆるパターンカット形状の複合材料を保持できる。
【0041】
[圧縮成形]
本発明における複合材料は、梱包体から出されたのち、プレス成形してプレス成形体となる。好ましい成形方法としては、コールドプレスやホットプレスを用いた圧縮成形が利用される。
【0042】
(コールドプレス法)
コールドプレス法は、例えば、第1の所定温度に加熱した複合材料を第2の所定温度に設定された金型内に投入した後、加圧・冷却を行う。すなわち、コールドプレス法は、少なくとも以下の工程A−1)〜工程A−3)を含んでいる。
工程A−1) 複合材料を、複合材料に含まれる熱可塑性樹脂の軟化温度以上に加温する工程。
工程A−2) 上記工程A−1)で得られた加温させた複合材料を、熱可塑性樹脂が軟化温度未満に温度調節された成形型に配置する工程。
工程A−3) 上記工程A−2)で成形型に配置した複合材料を加圧し、成形する工程。
これらの工程を行うことで、複合材料の成形を完結させることができる。
【0043】
(ホットプレス法)
ホットプレス法は、少なくとも以下の工程B−1)〜工程B−3)を含んでいる。
工程B−1) 複合材料を成形型に配置する工程
工程B−2) 成形型を熱可塑性樹脂の軟化温度以上まで昇温し、加圧する工程
工程B−3) 熱可塑性樹脂の軟化点未満に成形型の温度を調節して成形する工程
【0044】
(両者のプレス方法に共通事項に関して)
なお、成形型に投入する際、複合材料は、対象の成形体の板厚に合わせて、単独(1枚で)又は複数枚用いられる。複数枚用いる場合、複数枚を予め積層して加熱してもよいし、加熱した複合材料を積層した後に成形型内に投入してもよいし、加熱した複合材料を成形型内に順次積層してもよい。なお、積層した場合の最下層の複合材料と最上層の複合材料との温度差は少ない方が良く、この観点からは、成形型に投入する前に積層した方が好ましい。
【0045】
上記の各工程は、上記の順番で行う必要があるが、各工程間に他の工程を含んでもよい。他の工程とは、例えば、工程A−3)又は工程B−2)の前に、工程A−3)又は工程B−2)で利用される成形型と別の賦形装置を利用して、成形型のキャビティの形状に予め賦形する予備賦形工程等がある。
また、工程A−3)と工程B−2)は、複合材料に圧力を加えて所望形状の成形体を得る工程であるが、このときの成形圧力については特に限定はしないが、成形型キャビティ投影面積に対して30MPa未満が好ましく、20MPa以下であるとより好ましく、10MPa以下であると更に好ましい。
また、当然のことであるが、プレス成形時に種々の工程を上記の工程間に入れてもよく、例えば真空にしながらプレス成形する真空圧縮成形を用いてもよい。
【実施例】
【0046】
[評価・分析方法]
以下に実施例を示すが、本発明はこれらに制限されるものではない。なお、本実施例における各値は、以下の方法に従って求めた。
【0047】
[原材料の準備]
本発明で用いた原材料は以下の通りである。
(複合材料の準備)
強化繊維として、東邦テナックス社製の炭素繊維“テナックス”(登録商標)STS40−24KS(平均繊維径7μm)をナイロン系サイジング剤処理したものを使用し、熱可塑性樹脂として、ユニチカ社製のナイロン6樹脂A1030(融点:230℃)を用いたこと以外は、WO2012/105080パンフレット(US2013/0317161号公報)の実施例1に記載された方法に基づき、等方性材料を作成し、240℃で90s間予熱後、2.0MPaの圧力をかけながら180s間、240℃にてホットプレスした。ついで、加圧状態で50℃まで冷却し、炭素繊維体積割合Vf=35%、炭素繊維の重量平均繊維長20mm、板厚2mm、の平板を得た。
【0048】
(パターンカット形状にカット)
得られた複合材料を、
図5(a)の501のようなパターンカット形状にカットした。パターンカット形状にカットした複合材料端面の面粗度(Rz)を4点測定したところ、平均値は13.1μmであった。
【0049】
(載置台)
段ボールを用いて、
図3のように円形の取付孔を設けた載置台を準備した。載置台の面積は、1.5m×0.7mとし、厚みは0.16mとした。また、載置台の内部には桁を設けて、8トンまで耐えられるように準備した。円形の取付孔は、直径0.046m、深さ0.14mとした。
【0050】
(保持部材)
図3の301に示すような円柱状の紙管を保持部材をとして6本準備した。また、保持部材の円柱は、外径0.046m、内径0.034m、高さ0.44mとした。これを上記取付孔に刺したので、載置台から上に0.30m 突出していた。
【0051】
(覆台)
載置台と同様のものをもう一つ準備し、これを覆台とした。
【0052】
[実施例1]
上記パターンカット形状にカットした複合材料を、
図2〜
図10に描いたように、密閉可能に箱詰し、さらに緩衝剤を敷き詰めた梱包体を製造した。
これを、工場内で5キロメートル、トラックで運搬し、梱包体を開けた際、内部に含まれている梱包体中の炭素繊維毛羽量を測定したところ、0.10gであった。載置台の大きさは1.5m×0.7m(1.05m
2)であるので、この値で除算すると、梱包体に含まれる炭素繊維の毛羽量は、0.095g/m
2となる。
運搬時に複合材料を定位置に保持しながら複合材料からの炭素繊維の脱落を抑制し、毛羽が発生することなく複合材料を運搬できる梱包体および、梱包体の製造方法を提供する。複数の取付孔を有する載置台に、複数の板状複合材料が積載された梱包体であって、複合材料は炭素繊維と熱可塑性樹脂を含み、着脱可能に取付孔に取り付けられた複数の保持部材によって、複合材料が保持され、複合材料と保持部材の接触面において、複合材料又は保持部材のいずれか一方の接触面が曲面であり、他方の接触面が平面又は曲面である、梱包体。