(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B1)
(11)【特許番号】6389980
(24)【登録日】2018年8月24日
(45)【発行日】2018年9月12日
(54)【発明の名称】立ち椅子
(51)【国際特許分類】
A47C 9/00 20060101AFI20180903BHJP
A47C 9/02 20060101ALI20180903BHJP
A47C 7/00 20060101ALI20180903BHJP
【FI】
A47C9/00 Z
A47C9/02
A47C7/00 A
【請求項の数】4
【全頁数】16
(21)【出願番号】特願2017-116309(P2017-116309)
(22)【出願日】2017年5月29日
【審査請求日】2017年5月29日
(73)【特許権者】
【識別番号】517208377
【氏名又は名称】春井 徹
(72)【発明者】
【氏名】春井 徹
【審査官】
中村 泰二郎
(56)【参考文献】
【文献】
米国特許第4183579(US,A)
【文献】
英国特許出願公開第2210784(GB,A)
【文献】
仏国特許発明第370958(FR,A)
【文献】
実開昭55−157071(JP,U)
【文献】
米国特許第5295728(US,A)
【文献】
仏国特許発明第1417202(FR,A)
【文献】
実開昭55−093365(JP,U)
【文献】
米国特許出願公開第2006/0103207(US,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A47C 7/00− 9/10,
3/00− 3/40
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
立ち姿勢で使用する立ち椅子であって、脚部と前記脚部に立設された支柱と、前記支柱の上端部に支持された座部とを備え、前記支柱は、前記脚部に前後に回動可能に支持されており、前記立ち椅子は、前記支柱の回動位置を、解除可能に固定する第1のストッパーを更に備え、前記座部は、前記支柱の上端部に、前後に移動可能に支持されており、前記立ち椅子は、前記座部の前後の位置を、解除可能に固定する第2のストッパーを更に備える立ち椅子。
【請求項2】
前記脚部は、前記支柱を支持する部位を基準として、前方の着地部までの前後の距離よりも、後方の着地部までの前後の距離の方が長い、請求項1に記載の立ち椅子。
【請求項3】
前記脚部は、前方の着地部を左右対称の2箇所に有し、後方の着地部を左右対称の2箇所に有する、請求項1又は2に記載の立ち椅子。
【請求項4】
前記脚部は、前記後方の着地部よりも、さらに後方の部位かつ中央寄りの部位であって、左右対称の部位に、互いに分かれて又は互いに連なるように、別の後方の着地部を有する、請求項3に記載の立ち椅子。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この発明は、立ち姿勢で使用する完全なる前後の重心位置調整機能を有した座部と水平床及び勾配のある床面でも、支柱の垂直状況を任意で修正し、固定する手段を備え、長時間の立ち仕事を支援、快適に行えることを目的とした立ち椅子に関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来、長時間の立ち仕事を主体とする業務用途に於いて、着席使用する形態の椅子以外に既製品では、選択肢がなく、直立姿勢を維持した体勢で腰への過重負担を解消、疲労軽減し、跨った状態で前後のバランスコントロールを確立し、調整、運用出来る椅子は存在しなかった。
【先行技術文献】
【0003】
【特許文献1】特開平7−241226号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
これは、次のような欠点があった。
図1に示すように、撮影従事者などが、三脚(2)などのカメラ保持道具を使用して、その傍らに長時間直立姿勢で業務を遂行する際、時間の経過と共に腰への過重負担解消、疲労軽減が課題であった。特に動画撮影を業務として遂行する従事者は、安定した構図、なめらかなカメラワークを要求され、カメラ(1)の動きに合わせ、上下左右に自身の身体を追従させるため、三脚本体床下付近の両脚の床面接地位置を殆ど変更する事が出来ずに業務を遂行するため、腰への負担は究めて深刻であった。
図2に示すように、従来品(4)には、座に浅く腰掛ける方法を概念とした座高の高い椅子は、存在したものの、座る姿勢そのものが人間工学的に、腰を曲げる姿勢を強要されてしまい、上半身と三脚道具類との間に距離が発生する。この距離は、技術者にとっては、緻密、正確性を要求される業務の妨げとなる。
図3に示すように、本発明の使用(5)は、直立する事でしか成立しない絶妙な重心バランスの在り方を損なわず、尚且つ直立姿勢時(6)と本発明使用時(7)の身長変化が究めて少ない椅子は存在しなかった。(約4cm差)また、小型、軽量であり、
図4に示すように、本発明(5)の脚部(8)は、自然な立ち姿勢(9)での左右の足幅間の距離(約25〜30cm)の範囲内(約20cm)に収まるコンパクト設計であり、例えば、三脚(2)のスプレッダー(3)が存在するような環境で、撮影姿勢を維持する時、足位置が狭く窮屈な場合でも、小型設計の脚部幅(8)は邪魔にならない。一般的な椅子の場合、脚部の面積は、大きく重い設計である。そうすることで、椅子としての安定性を成立させているが、立ち椅子としては、脚部が邪魔になる。また、小型設計は、持ち運びに関しても、重要な要素である。
本発明は、以上のような欠点をなくすためになされたものである。
【課題を解決するための手段】
【0005】
本発明は上述の目的を達成するため、長手方向上端に重心支点軸可変対応の座部を具設し、その下部には高さ調整機能を有した支柱部を突設し、長手方向下端には水平傾斜可変対応の支持脚を設けた立ち椅子を提供するものである。
【0006】
座部(11)をサドルクランプ(12)にて、座部取り付け用支柱(13)に螺合し、カウンターバランスベース(15)は、凹設された形状で天面部に形設された溝の中をカウンターバランスプレート(14)が前後に水平移動可能に支持することで、無段階の重心位置調整機能を有しており、任意で前後重心バランス支点軸(32)が決定される。使用者が正確な前後位置を目視で把握出来るために、スケール(33)と指標(34)を設け、最適な重心位置を決定後、解除可能に固定するストッパーとして、カウンターバランス固定用ノブ(16)を設け、更に前後の水平状態が判別確認出来る水準器(17)が添装されている。
【0007】
カウンターバランスベース(15)の底面中心部辺りに、外支柱(10)を突設し、調節ボタン(18)と調節穴(19)を具備している。 外支柱(10)と中支柱(21)は、相互に縦軸方向へ摺動自在に嵌合し、任意の長さで、固定する手段を備えた筒型スライド状の連結構造であり、回転止めネジ(20)が具設されている。
【0008】
中支柱(21)は、空洞枠の前後傾斜調整ベース(22)内部に形設したドーム型半球体(44)に突設され、前後可動枠(46)に沿って、前後に回動可能に支持されている。解除可能に固定するストッパーとしての前後傾斜固定用ハンドル(27)は、縦軸方向に刳り抜かれた前後傾斜固定用溝(45)内側に形設された固定用ナット(42)と螺合することで任意の傾斜角度に固定する手段を備えている。前後傾斜調整ベース(22)は、支持ベース(23)に載設され、その底面にはドーム型蓋(24)が設けてある。支持ベース(23)の底面四隅から、脚部(25)が配設され、その先端には脚先ゴム(26)が配設されている。後方側の両脚部(25)の中心位置より、後方側に後方転倒防止補助脚(28)が具設されている。後方転倒防止補助脚(28)の床面接地部分には滑り止めゴム(29)が形設されている。
本発明は以上のような構成よりなる立ち椅子である。
【発明の効果】
【0009】
まずはじめに、椅子に座る。即ち、着座は、休息を目的とした用途の物と、業務や目的を遂行するために、適度な緊張感を維持して、集中力を切らさない用途に大きく大別される。前述の休息を目的とした形式の椅子の場合、クッションの効いた肌触りの良いソファなどでは、寛いで眠気を伴う。また、後述の業務用に近い形式の椅子だと、代表的なのが、自動車の椅子などで、一定の緊張感を維持出来る要素の椅子でないと、事故の要因になる。以上のことから、業務使途となると、集中力を維持出来る要素は、欠かせないテーマであると考える。本発明は、一定の緊張感と集中力を維持することで、立ち姿勢と変わらぬ姿勢を維持して、長時間の労務や目的遂行に対して、疲労の軽減効果を最大の課題としている。
原理は、やじろべえである。カウンターバランスと言う用語を用いているので、説明する。そもそも、カウンターバランスとは、相殺したり不足を補ったりして、釣り合いを取ることを意味している。本発明の立ち椅子は、使用者自らが望む重心位置を確保するために、自身で座部のカウンターバランスを調整後、直立姿勢を維持した体勢で跨り、自らが前後にバランスを保つことで、自身の両脚と本発明で重心バランスを確立するものである。水平床及び勾配のある床面でも、支柱の垂直状況を修正し、固定する手段を備え、完璧な重心コントロールの補正を自身が納得行くまで調整可能である。脚部を構成する形状として、前述の緊張感と集中力が維持出来る要素を取り入れるため、椅子としては、不安定な要素の小型脚部を採用している。この不安定な要素の脚部に跨ることで、使用者がバランス感覚をコントロールし、立ち椅子としてのカウンターバランス調整という概念が成立している。この小型脚部は、立ち椅子として、重要な使用者の足下を占有していない。直立姿勢で作業を行う成人の場合、人間工学的に両脚の左右の足幅間の距離が約25cm〜30cm前後が適当で安定し、望ましい。脚部も直立姿勢の邪魔にならない形状とサイズを特徴とし、理想的な足幅間の距離を確保することが出来る。
一般的な設計の椅子は、大きく重い脚部が着座により発生した重量を強引に吸収する仕組みであり、足下の占有率も高く、立ち椅子としては、適していない。
本発明使用の効果としては、本来の立ち仕事からくる腰への過重負担を大幅に軽減させ、疲労の抑止効果がある。但し、座部に座る形式の椅子とは異なり、休息を使用目的にはしていない。人間工学的要素として、体重を預けて跨る姿勢は、不用意にバランスを崩して後方へ転倒する危惧が懸念された。安全に考慮した後方転倒防止補助脚(28)、滑り止めゴム(29)により、その問題を解消している。
想定する耐荷重についてであるが、全体重を預けて座る形式の椅子とは、異なり、自身の脚と本発明の脚部を三点の支点として、運用する構造のため、成人の平均体重の1/3〜1/2程度の耐荷重を適応範囲としている。
また、本発明使用時に於いて、直立姿勢時との身長の変化も究めて少ないため、立ち姿勢を維持することが要求される業務全般でも違和感なく使用出来るため、撮影従事者に限定することなく、広く社会貢献に寄与出来ると考えられる。各種現場での運用時、本発明から、突然立ち上がり、歩く動作が必要になった場合も、瞬時に離脱、歩行することが可能である。また、股下の高さ調整機能が備わっており、使用者の股下の長さを特定しない。小型、軽量のため、携帯性にも優れている。
【図面の簡単な説明】
【0010】
【
図1】 本発明未使用時での通常の立ち姿勢による三脚使用時のビデオ撮影。
【
図2】 一般的な座高の高い椅子を使用した時の三脚使用時のビデオ撮影。
【
図3】 本発明使用時での立ち姿勢を維持した状態での三脚使用時のビデオ撮影。
【
図4】 本発明使用時での下端部正面上方からの足位置説明図である。
【
図5】 本発明の最低全長時での左面斜視図である。
【
図6】 本発明の最高全長時での左面斜視図である。
【
図7】 本発明の正面上方からの上端部説明図である。
【
図8】 本発明の上端部左面斜視からの座部、前方側での重心移動概念図である。
【
図9】 本発明の上端部左面斜視からの座部、中央側での重心移動概念図である。
【
図10】 本発明の上端部左面斜視からの座部、後方側での重心移動概念図である。
【
図11】 本発明の上端部左面斜視からの上端部説明図である。
【
図13】 本発明の左斜視からの上半部、分離図である。
【
図15】 本発明の左斜視からの下半部、分離図である。
【
図16】 本発明の符号38に装填する部品説明図である。
【
図17】 本発明の下端部左側面からの断面図である。
【
図18】 本発明の下端部左面俯瞰からの説明図である。
【
図19】 本発明の左面斜視からの脚部水平状態での対比図である。
【
図20】 本発明の左面斜視からの脚部前方傾斜時での対比図である。
【
図21】 本発明の左面斜視からの脚部後方傾斜時での対比図である。
【
図22】 本発明の下端部左側面上方からの説明図である。
【
図23】 本発明の下端部左側面上方からの分離図である。
【
図24】 本発明の下端部左側面からの前方傾斜時での断面図である。
【
図25】 本発明の下端部上方からの背面図である。
【
図27】 本発明の使用時の左側面斜視後方からの背面斜視図である。
【
図28】 本発明の未使用時と比較した正面対比図である。
【発明を実施するための形態】
【0011】
以下、本発明を実施するための形態を
図5〜
図28に基づいて説明する。
【0012】
図5・
図6に示すように、本発明は使用者の股下の長さ調節機能を有しており、
図5は、着地部から座部の頂点までの距離、最低全長時(約63cm)での左面斜視図である。
図6は、最高全長時(約86cm)での左面斜視図である。
【0013】
図5・
図6に示すように、本実施例の立ち椅子は、カウンターバランスベース(15)、カウンターバランスプレート(14)から上方に結合された座部(11)を含む上層部と、外支柱(10)、中支柱(21)を含む中層部と、前後傾斜調整ベース(22)、支持ベース(23)から着地部に設けた脚部(25)、脚先ゴム(26)、後方転倒防止補助脚(28)、滑り止めゴム(29)を含む下層部から構成されている。
【0014】
図7に示すように、上層部の構成は、座部(11)をサドルクランプ(12)にて、座部取り付け用支柱(13)に固定金具のボルト、ナットで螺合する。座部取り付け用支柱(13)とカウンターバランスプレート(14)は、一体構造で結合されている。
カウンターバランスプレート(14)とカウンターバランスベース(15)は、一対で成立する構造で形成しており、挿脱することも出来る。これは、持ち運びの際、コンパクト性を考慮している。材質としては、強度面から金属ダイキャスト製などが望ましい。
【0015】
図7に示すように、カウンターバランスベース(15)は、凹設された形状である。カウンターバランスベース(15)は、カウンターバランスプレート(14)取り付け接触部分にあたる底面内側左右の距離(30)は水平移動方向横軸に対して、天面内側左右の距離(31)より、底面を長くすることで、脱落防止と前後に水平移動する構造である。
図8・
図9・
図10に示すように、カウンターバランスベース(15)天面部に形設された溝の中を、形に合う構造で成形したカウンターバランスプレート(14)が前後に水平移動可能に支持されており、無段階の重心位置調整機能を有している。これにより、座部の支点位置を任意で調整し、前後重心バランス支点軸(32)が決定される。これは、後述説明する床の水平傾斜の変化に応じた前後重心バランス支点軸(32)の補正や使用者の任意で変更調整するためのものである。
【0016】
図11・
図12(拡大図)に示すように、使用者が正確な前後位置の変化を目視で把握出来るために、スケール(33)と指標(34)を設けている。
【0017】
図8・
図9・
図10に示すように、任意で最適な重心バランス支点軸(32)を決定後、
図7のカウンターバランス固定用ノブ(16)で、解除可能に固定するストッパーを備えている。構造的には、ねじ込み式のノブを螺送することで、カウンターバランスプレート(14)の左側面と、ねじ山先端が螺接し、固定する仕組みである。
【0018】
図12のカウンターバランスプレート(14)の水平状態が判別確認出来る水準器(17)が添装されている。これが、上層部の構成要素である。
【0019】
図5に示すように、中層部の構成は、カウンターバランスベース(15)の底面中心部辺りに、外支柱(10)を縦軸方向に突設している。素材は強度に応じた軽量なアルミ金属などが望ましい。
図13の外支柱(10)の中軸筒として、
図15の中支柱(21)がある。
【0020】
外支柱(10)は、筒構造の内側を中支柱(21)の内筒が縦軸方向へ摺動自在に嵌合する。
図14は、椅子の高さ調節と固定する手段として、外支柱(10)には調節穴(19)を穿設してある。穴は直径9ミリ程度で、10程度の数が望ましい。外支柱(10)が伸びきった状態で抜けてしまわない対策として、中支柱(21)の上端側から余裕を持たせた距離に筒を貫通する約9ミリ程度の穴(38)が穿設している。
この穴(38)に、
図16の外向きに反発作用のある8ミリ程度の円筒形のボタン形状を特徴とした部位を両端に配置した弾性体を挟み込むことで、ストッパーとして有効になり、外側に広がる反発力を利用した調節ボタン(18)を挟装している。弾性体の反発力で穴(38)より、調節ボタン(18)の山が飛び出すことで高さ調整を実現している。穴(38)が貫通構造であるのは、手前穴は調節ボタン(18)の操作用であり、奥側の穴は弾性体による作用力で調節ボタン(18)が筒内部で落下することを防止している。これにより任意の長さを調整する手段を備えている。
【0021】
図14は、部品を連結する前後の対比図である。外支柱(10)の長手方向下端には、回転止めネジ(20)を螺接することで、中支柱(21)を解除可能に固定するストッパーを備えている。構造的には、外支柱(10)の長手方向下端には、雄ネジ溝(35)が刻まれている。回転止めネジ(20)の上端内側に雌ネジ(36)が刻まれている。回転方向終点位置の内部が狭い構造である、止めネジ先端部(37)内径の終点と螺合することにより、固定する手段を備えている。これにより、
図5・
図6に示すように、座部の高さが床接地面より、例えば約63cm〜約86cmの範囲で可変調節可能である。これには、モデルとなる対象者の股下から着地面までの距離のデータ調査が必要であり、そこから、割り出すのが望ましい。現段階でも一般的な成人女性から男性までの体型を網羅している。これが、中層部の構成要素である。
【0022】
下層部の構成要素を説明する。
図17は、前後傾斜調整ベース(22)を左側面から見た断面図である。図に示すように、太線で描かれた図の箇所が結合されて一体化していることを表している。中支柱(21)が、空洞枠の前後傾斜調整ベース(22)内部に形設されたドーム型半球体(44)に、芯管ボルトネジ(40)と固定用ナット(41)で螺合することにより、中支柱(21)とドーム型半球体(44)は結合されている。空洞枠の前後傾斜調整ベース(22)を間に挟み込むように設ける事で、
図18(左側面からの俯瞰図)に示すように、前後可動枠(46)に沿って、前後に回動可能に支持されている。中心軸移動可能領域(39)の回動範囲は、中支柱(21)の垂直状態を0°とした場合、例えば前方向に20°〜後方向に20°の可変範囲が通常に修正して使用するには望ましいと考えられる。
【0023】
図18に示すように、前後の角度調節可能に支持された中支柱(21)の固定方式は、時計方向に螺接する構造で固定するストッパーとしての前後傾斜固定用ハンドル(27)にて、
図17のドーム型半球体(44)と前後傾斜調整ベース(22)を螺合する仕組みで固定している。構造は、ドーム型半球体(44)の表層面から、
図18の前後傾斜固定用溝(45)を縦軸方向に刳り抜いてある。
図17の溝の奥に形設した堅牢な材質の固定用ナット(42)を内蔵してあり、前後傾斜固定用ハンドル(27)から突設されたボルトネジ(43)が時計方向に螺接することで、前後傾斜調整ベース(22)と螺合し、任意の角度で解除可能に固定する手段を備えている。
【0024】
図19(床水平時)・
図20(床前傾斜時)・
図21(床後傾斜時)に示すように、これらは、劇場などの作為的に勾配設計なされた床などで、支柱の垂直を床面の傾きに影響されることなく、角度修正して垂直に固定する手段を備えた脚部の使用対比例である。
図19(床水平時)の水平な床面を基準とした場合、
図20(床前傾斜時)の前方に傾斜のある床面の場合、前後重心バランス支点軸(32)は、座部(11)を後ろ側に移動させる必要があり、
図21(床後傾斜時)の後方に傾斜のある床面の場合、前後重心バランス支点軸(32)は、座部(11)を前側に移動させる必要がある。使用者に於いて、個人差もある。
図7の座部(11)を座部取り付け用支柱(13)に固定した際のサドルクランプ(12)の固定角度の違いでも、身体の保持力に差が出るので、移動させる数値的な値は、個別対応が必要である。
図19(床水平時)・
図20(床前傾斜時)・
図21(床後傾斜時)は、三例であるが、可動領域内は無段階である。脚部の土台となる該前後傾斜調整ベース(22)を中核とする構成部品の作用により、中心軸移動可能領域(39)の範囲内に於いて、前後回動が自在であり、確実に固定するストッパーとしての前後傾斜固定用ハンドル(27)を備えている。
【0025】
図22に示すように、前後傾斜調整ベース(22)は、支持ベース(23)に載設され、その底面にはドーム型蓋(24)が設けてある。
図23(説明用分離図)に示すように、支持ベース(23)の中心部に、例えば約直径5cm程度の円形型穴構造(47)を設けることで、
図24のドーム型半球体(44)が傾斜調整の際、ドーム型半球体底面突出角(48)が支持ベース(23)と接触防止することが出来る。
【0026】
図25(背面図)に示すように、支持ベース(23)の底面四隅から、脚部(25)が前方左右と後方左右に配設されている。その先端には、滑り止め対策として、脚先ゴム(26)を配設している。脚部(25)は中支柱(21)を支持する部位を基準として、前方の着地部までの前後の距離よりも、後方の着地部までの前後の距離の方が長いことを特徴としている。これは、前後バランスを確立し、使用中、不意に後方へ荷重バランスが崩れることの抑止力となる。人間工学的要素として後方には、目がない。危険の予知や回避する手段を持たないので、事故防止としての配慮は重要である。
【0027】
図25に示すように、安全に配慮し、後方転倒防止対策として、中支柱(21)を支持する部位を基準に、後方の両脚部(25)の中心位置より、後方側に対して、後方転倒防止補助脚(28)が具設されている。構造的には、後方の床面に対し、反発力の得られるT字型構造を特徴としている。その先端には、滑り止めゴム(29)を設けている。脚先ゴム(26)と同等程度の着地高である。
後方転倒防止脚として、例えば、同等の効果が得られるのであれば、T字型構造両端に伸びた左右に独立した構造の脚部でも抑止力として成立するなら構わない。
これが、下層部の構成である。
【0028】
図26(使用時正面図)は、運用時の正面図である。
図27(使用時背面斜視図)に示すように、後方転倒防止の危険性とは、該立ち椅子に跨り、バランスの釣り合いを維持しながら荷重を預け続けると、不意に後方側に崩れる転倒事故を回避することを目的としている。そのことを図で示している。
【0029】
使い方の調整方法を説明する。
(イ).下層部から構成する要素で、水平床及び勾配のある床面に対して、支柱の前後垂直状態を判別し、必要に応じて修正する。
(ロ).上層部に設けた水準器(17)を目視で確認する。
(ハ).支柱の垂直状態を修正する場合、水準器(17)の水平を確認しながら、前後傾斜調整用ハンドル(27)の固定を解除し、支柱の前後垂直状態を修正する。前後傾斜調整用ハンドル(27)にて固定する。
(ニ).床面の勾配により生じた前後重心バランス支点軸(32)の誤差を上層部に設けたカウンターバランスプレート(14)を前後に移動させる。
(ホ).暫定的に仮り決めした該立ち椅子に跨り、股下の高さ調節と前後重心バランス支点軸(32)の誤差修正を任意で行い、(ニ)以降の作業を繰り返し、目視でスケール(33)と指標(34)の数値の変化に伴う前後重心バランス支点軸(32)を体感し、意図する前後のバランス支点が取得出来たら調整を終了する。これにより、誰にでも満足の得られる完全バランス調整機能を有している。
【0030】
図28に示すように、図左、未使用時直立姿勢(49)、図右、本発明使用時直立姿勢(50)との対比では、同一人物身長差(52)が約4cm前後であり、直立姿勢を維持することを要求される業務全般に於いても、立ち椅子(51)の使用は、立ち姿を自然にサポート維持し、業務の支障にはならない。
本発明は以上のような構成よりなる立ち椅子である。
【符号の説明】
【0031】
1 ビデオカメラ
2 三脚
3 三脚のスプレッダー(安定させるために広がる構造の骨格)
4 座高の高い一般的な椅子
5 立ち椅子
6 直立姿勢での撮影時の身長高さ
7 立ち椅子使用時での直立姿勢の身長高さの差異
8 立ち椅子使用時、脚部の左右の距離(約20cm)
9 立ち椅子使用時、使用者の標準的な左右の足幅間の距離(約25〜30cm)
10 外支柱
11 座部
12 サドルクランプ
13 座部取り付け用支柱
14 カウンターバランスプレート
15 カウンターバランスベース
16 カウンターバランス固定用ノブ
17 水準器
18 調節ボタン
19 調節穴
20 回転止めネジ
21 中支柱
22 前後傾斜調整ベース
23 支持ベース
24 ドーム型蓋
25 脚部
26 脚先ゴム
27 前後傾斜固定用ハンドル
28 後方転倒防止補助脚
29 滑り止めゴム
30 底面内側左右の距離
31 天面内側左右の距離
32 前後重心バランス支点軸
33 スケール
34 指標
35 雄ネジ溝
36 雌ネジ溝
37 止めネジ先端部
38 穴
39 中心軸移動可能領域
40 芯管ボルトネジ
41 固定用ナット
42 固定用ナット
43 固定用ボルトネジ
44 ドーム型半球体
45 前後傾斜固定用溝
46 前後可動枠
47 円形型穴構造
48 ドーム型半球体底面突出角
49 未使用時直立姿勢
50 本発明使用時直立姿勢
51 立ち椅子
52 同一人物身長差(約4cm)
【要約】
【課題】 長時間立ち続けることで成立する業務や、直立姿勢で一定の動作や作業を要求される実務者の疲労軽減、労働環境改善のため、傾いた環境の床などでも支柱の垂直修正の機能を有し、かつ前後の重心バランスの変化にも完全に修正、調整する機能を有した立ち椅子を提供する。
【解決手段】 縦軸方向で摺動自在にして伸縮、嵌合する手段を備えた筒型形状の支柱に、傾斜角のある床面でも、支柱の垂直状態を修正、角度を変更する機能を備えた脚部を設け、上端には、床面の傾きで生じた前後重心軸のバランスの変化を修正、調整する機能を有した座部を設け、後方への転倒事故を回避する機能を装備し、それを特徴としている。これを使用する時は、使用者が跨り、股下の長さを調節し、床面水平の変化状態に対し修正を行い、座部の前後の重心軸調整を行う。長時間の疲労軽減、業務や目的の遂行を円滑に行える役割に勤めている。
【選択図】
図5