【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかし、前記特許文献では、灯具ハウジングのフランジ部の接合面と前面カバーのシール脚(のシール山)の当接部に伝達される振動が横方向振動であるため、以下のような問題がある。
【0007】
第1には、当接部の振動方向に溶着代が拡大されて、溶着部に沿って形成される溶着バリの巾が大きい。特に、灯室内側よりも灯室外側に形成される溶着バリが大きくなって、灯具の見栄えが悪い。
【0008】
さらに、溶着バリの巾が当接部の振動方向(例えばX方向)とこれに直交する方向(例えばY方向)で異なるため、灯具の見栄えがいっそう悪い。
【0009】
第2には、溶着工程開始当初(振動伝達開始当初)は、前面カバー側のシール山と灯具ハウジングの接合面の当接部の温度が低いため、両者が擦れることで発生した粉バリが灯室内側および外側に飛散し、灯具の灯室内に残れば配光に悪影響を与える。このため、溶着工程終了後に、灯室内の粉バリを除去する工程が必要となる。
【0010】
本発明は、上記問題に鑑みてなされたもので、灯具ハウジングと前面カバーを
溶着するに際し、溶着部に沿って形成される溶着バリの巾が狭く、しかも均一巾となるとともに、溶着工程開始当初に発生する粉バリの灯室内側への飛散を防止できる灯具のシール脚の
溶着方法および同方法によって溶着一体化された灯具を提供することを目的とするものである。
【課題を解決するための手段】
【0011】
上記目的を達成するために、本発明(請求項1)は、灯室を画成する合成樹脂製の灯具構成部材である灯具ボディと前面カバーのいずれか一方の部材に形成したシール脚の先端部を、他方の部材の対向する接合面に振動溶着する灯具のシール脚の溶着方法において、
前記一方の部材に形成したシール脚の先端部にその頂点が灯室内側にオフセットするシール山を設け、
前記シール脚が上方を向くように前記一方の部材を配置し、その上方に前記他方の部材を前記シール山に当接するように配置するとともに、
前記両部材の当接部を縦方向振動により溶着するように構成した。
【0012】
(作用)一方の灯具構成部材(例えば、前面カバー)のシール脚のシール山と他方の灯具構成部材(例えば、灯具ハウジング)の対向する接合面の当接部が縦方向に振動加圧されると、該当接部に摩擦熱が発生し、該当接部が溶融することで、シール脚の先端部が他方の灯具構成部材の対向する接合面に溶着されるが、当接部は溶着代拡大につながる横方向(接合面に沿った方向)に振動することなく、縦方向だけに振動するため、溶着部の灯室内側および外側に蓄積する溶着バリは、それぞれ巾が狭く、しかも溶着部に沿ってそれぞれ一定の巾となる。
【0013】
また、当接部が摩擦熱で溶融することで、当接部の灯室内側および外側に溶着バリが蓄積するが、当接部を構成するシール山の頂点が灯室内側にオフセットするため、即ち、当接部がシール脚の厚さ方向の中心に対し灯室内側にオフセットするため、
図4(a),(b),(c)に示すように、シール脚先端部の灯室内側寄りで当接部が溶融し、当接部の灯室外側よりも内側に多くの量の溶着バリが蓄積する。詳しくは、溶着部に蓄積する溶着バリの量は、シール山の体積にほぼ相当し、溶着部に沿って一定であるが、灯室内側への蓄積量が多い分、灯室外側への蓄積量が少なくなる。
【0014】
このため、溶着工程が終了して、一方の灯具構成部材に設けたシール山と他方の灯具構成部材の対向する接合面の当接部が溶融一体化された形態、即ち、一方の灯具構成部材に形成したシール脚先端部が他方の灯具構成部材の対向する接合面に溶着された形態では、
図4(d)に示すように、溶着部の灯室内側および灯室外側に溶着バリが蓄積しているが、灯具外に露呈する、灯室外側に蓄積した溶着バリの量は、灯室内側に蓄積した溶着バリの量よりも少なく、それだけ目立たない。
【0015】
一方、灯室内側に蓄積した溶着バリの量は、灯室外側に蓄積した溶着バリの量よりも多いが、前面カバーで隠れて目立たない。
【0016】
また、当接部の灯室内側と外側における溶着バリ発生のメカニズムに差が生じ、溶着工程(振動伝達)開始当初の当接部に発生する粉バリが灯室外側だけに飛散し、灯室内側には飛散しない。
【0017】
詳しくは、当接部の灯室内側寄りでは、
図4(a)に示すように、当接部が隙間のない状態、即ち、シール山が灯具ハウジングの接合面と確実に接触した状態で縦方向に振動加圧されるため、当接部における振動エネルギーの摩擦熱への変換効率が高く、当接部が高温となって溶融するまでの時間が短い。一方、当接部の灯室外側寄りでは、
図4(a)に示すように、当接部が隙間のある状態、即ち、シール山が灯具ハウジングの接合面と隙間のある状態(シール山が灯具ハウジングの接合面に接近するが確実には接触できない状態)で縦方向に振動加圧されるため、当接部における振動エネルギーの摩擦熱への変換効率が低く、当接部がすぐには高温とならず溶融するまでに時間がかかる。
【0018】
このため、当接部の灯室内側寄りでは、当接部がすぐに高温(溶融温度)となって、溶着工程(振動伝達)開始当初から、
図4(b)に示すように、直ちに溶着バリが蓄積するのに対し、当接部の灯室外側寄りでは、当接部がすぐには高温(溶融温度)とならないため、当接部が擦れて粉バリが発生し、その後、当接部が高温(溶融温度)となった段階で、
図4(c)に示すように、溶着バリが蓄積する。
【0019】
そして、当接部を構成するシール山は上を向いており、この溶着工程(振動伝達)開始当初に当接部の灯室外側寄りで発生した粉バリは、
図4(b)に示すように、シール山の傾斜面に沿って落下して灯室外に飛散する。
【0020】
即ち、当接部における灯室内側寄りでは、振動伝達開始当初から直ちに溶着バリが蓄積し、この当接部の灯室内側寄りに蓄積する溶着バリが、溶着工程(振動伝達)開始当初の当接部の灯室外側寄りに発生する粉バリの灯室内側への飛散(侵入)を抑制する障壁として作用する。
【0021】
また、当接部の灯室外側寄りで発生し飛散した粉バリは、その後、当接部に蓄積する溶着バリに取り込まれることがないので、当接部の灯室外側に蓄積する溶着バリの量がいっそう低減する。
【0022】
請求項2は、請求項1に記載の車両用灯具のシール脚の振動溶着方法において、
前記一方の灯具構成部材を前記シール脚が上方を向くように受け治具に収容して固定し、その上方に前記他方の灯具構成部材を、前記一方の灯具構成部材に対し横方向に位置決めするとともに、振動伝達部材であるホーンを介して前記シール山に付勢当接するように配置し、該ホーンを介して前記当接部に超音波振動を作用させるように構成した。
【0023】
(作用)上下に対向するように配置した灯具構成部材間の当接部の下方にホーンを配置し、ホーンを介して上方の当接部に超音波振動を作用させる方法では、例えば灯具構成部材の寸法誤差が原因で、上方の灯具構成部材と受け治具間に隙が形成されて密着性が不十分であると、当接部に超音波振動が作用する際に、上方の灯具構成部材が受け治具に対し振動し、当接部における振動エネルギーの摩擦熱への変換効率がそれだけ低下するおそれがある。
【0024】
然るに、請求項2では、重量のあるホーンを上方に配置したことで、シール脚を形成した灯具構成部材が上方から押圧されて受け治具に確実に密着保持されるため、当接部に超音波振動が作用する際に、灯具構成部材の受け治具に対する振動が確実に抑制される。
【0025】
即ち、シール山(の頂点)と他方の灯具構成部材の接合面の接触が常に確保された状態で当接部が縦方向に振動加圧されるため、当接部における振動エネルギーの摩擦熱への変換効率が高く、当接部が高温となって溶融するまでの時間がいっそう短縮されて、当接部の灯室外側寄りで発生する粉バリも少なくなる。
【0026】
また、人の目に触れる前面カバーはできるだけ傷つけたくないので、灯具ハウジングをホーンと接触する振動伝達側として振動溶着することが望ましい。
【0027】
請求項3は、請求項1または2に記載の方法により灯具ハウジングと前面カバーとが溶着一体化された灯具であって、前記一方の灯具構成部材に形成されたシール脚先端部と前記他方の灯具構成部材との溶着部には、灯室内側および外側にそれぞれ膨出する溶着バリが形成され、前記溶着バリの灯室外側への膨出量が灯室内側への膨出量よりも小さくなるように構成した。
【発明の効果】
【0028】
本発明(請求項1)によれば、一方の灯具構成部材のシール脚のシール山と他方の灯具構成部材の対向する接合面の当接部が縦方向に
超音波振動加圧され、発生した摩擦熱で該当接部が溶融することで、シール脚の先端部が他方の灯具構成部材の対向する接合面に溶着されるため、溶着部の灯室内側および外側に蓄積する溶着バリは、それぞれ巾が狭く、しかも溶着部に沿ってそれぞれ一定の巾となるので、見栄えのよい灯具を提供できる。
【0029】
また、当接部を構成するシール山の頂点が灯室内側にオフセットするため、溶着部の灯室外側の溶着バリの膨出量が灯室内側の溶着バリの膨出量よりも小さく、それだけ溶着バリが目立たないことから、いっそう見栄えのよい灯具を提供できる。
【0030】
また、当接部の灯室内側寄りに蓄積する溶着バリが、溶着工程(振動伝達)開始当初の当接部の灯室外側寄りで発生する粉バリの灯室内側への飛散(侵入)を抑制するので、適正な配光を妨げるおそれのある異物(粉バリ)が灯室内に残らず、灯具を製造する上での歩留まりが著しく向上する。即ち、
超音波振動溶着工程で発生した粉バリが灯室内に異物として残らないので、溶着工程後の粉バリ除去工程を簡略化したり、省略することができ、溶着工程により灯室が密閉されて、溶着工程後に光源を後付けできない灯具構造の場合に、特に有効である。
【0031】
請求項2によれば、当接部における振動エネルギーの摩擦熱への変換効率が高いので、溶着工程時間が短縮されるとともに、当接部で発生する粉バリの量が低減する分、適正な配光を妨げるおそれのある異物(粉バリ)が灯室内に残らず、灯具を製造する上での歩留まりがさらにいっそう向上する。
【0032】
請求項3によれば、溶着部の灯室内側および外側に膨出する溶着バリは、それぞれ巾が狭く、しかも溶着部に沿ってそれぞれ一定の巾となるので、灯具の見栄えが向上する。
【0033】
特に、灯室外側の溶着バリの膨出量が灯室内側の溶着バリの膨出量よりも小さく、それだけ溶着バリが目立たないことから、灯具の見栄えがいっそう向上する。