特許第6389998号(P6389998)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B1)
(11)【特許番号】6389998
(24)【登録日】2018年8月31日
(45)【発行日】2018年9月19日
(54)【発明の名称】LC共振素子および共振素子アレイ
(51)【国際特許分類】
   H01F 27/00 20060101AFI20180910BHJP
   H03H 7/075 20060101ALI20180910BHJP
   H01G 4/40 20060101ALI20180910BHJP
【FI】
   H01F27/00 S
   H03H7/075 Z
   H01G4/40 321A
【請求項の数】7
【全頁数】12
(21)【出願番号】特願2018-528811(P2018-528811)
(86)(22)【出願日】2017年11月28日
(86)【国際出願番号】JP2017042513
【審査請求日】2018年6月1日
【早期審査対象出願】
(73)【特許権者】
【識別番号】591074091
【氏名又は名称】株式会社野田スクリーン
(74)【代理人】
【識別番号】110001036
【氏名又は名称】特許業務法人暁合同特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】吉澤 正充
【審査官】 右田 勝則
(56)【参考文献】
【文献】 特開2007−300002(JP,A)
【文献】 特開平10−79469(JP,A)
【文献】 特開平11−121264(JP,A)
【文献】 特公昭59−008054(JP,B2)
【文献】 特開平10−150337(JP,A)
【文献】 特開2016−39283(JP,A)
【文献】 特許第6078765(JP,B1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H01F 27/00
H01G 4/40
H03H 7/075
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
薄膜キャパシタと薄膜インダクタの並列回路からなるLC共振素子であって、
上面と、前記上面に対向する下面とを有する誘電体膜と、
前記下面上に薄膜導体によって形成された共通電極と、
前記共通電極を介して直列接続され、前記薄膜キャパシタを構成する第1キャパシタおよび第2キャパシタと、
前記上面上に形成された第1外部接続端子および第2外部接続端子と、
前記上面上の、平面視における前記共通電極の外側に位置する領域に形成され、前記薄膜インダクタを構成するとともに、前記第1外部接続端子と第2外部接続端子とを結ぶ薄膜導線部と、
前記第1外部接続端子に接続された第1上部電極であって、前記上面上の、平面視において前記共通電極と重なる領域に形成され、前記共通電極および前記誘電体膜とともに前記第1キャパシタを形成する第1上部電極と、
前記第2外部接続端子に接続された第2上部電極であって、前記上面上の、平面視において前記共通電極と重なる領域に形成され、前記共通電極および前記誘電体膜とともに前記第2キャパシタを形成する第2上部電極と、を備える、LC共振素子。
【請求項2】
請求項1に記載のLC共振素子において、
前記薄膜導線部は、ループ状に形成されている、LC共振素子。
【請求項3】
請求項2に記載のLC共振素子において、
前記薄膜導線部は、前記共通電極の外周に沿ってループ状に形成されている、LC共振素子。
【請求項4】
請求項1から請求項3のいずれか一項に記載のLC共振素子において、
前記第1外部接続端子および第2外部接続端子は、
前記上面上の、平面視において前記共通電極の外側に位置する領域に形成されている、LC共振素子。
【請求項5】
請求項1から請求項4のいずれか一項に記載のLC共振素子において、
前記第1上部電極と前記第1外部接続端子とを接続する第1接続部と、
前記第2上部電極と前記第2外部接続端子とを接続する第2接続部と、を備え、
前記第1、第2上部電極、前記第1、第2外部接続端子、前記第1、第2接続部および前記薄膜導線部は、同一の薄膜導体によって前記上面上に一体形成されている、LC共振素子。
【請求項6】
複数個の、請求項1から請求項5のいずれか一項に記載のLC共振素子を備え、
前記誘電体膜が各LC共振素子に共通化されている、共振素子アレイ。
【請求項7】
請求項6に記載に共振素子アレイおいて、
各LC共振素子内においては前記第1上部電極および前記第2上部電極の面積が等しいとともに、各LC共振素子間においては前記第1上部電極および前記第2上部電極の面積が異なる、共振素子アレイ。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、LC共振素子、および当該LC共振素子を複数個備えた共振素子アレイに関し、詳しくは、薄膜キャパシタと薄膜インダクタとによって構成されたLC共振素子に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、薄膜キャパシタと薄膜インダクタとによって構成されたLC共振素子として、例えば、特許文献1に開示された技術が知られている。特許文献1では、薄膜形成技術を用いて、同一誘電体基板上にインダクタンス(インダクタ)Lおよび容量(キャパシタ)Cを一体形成することによってLC共振器の小型化を図る技術が開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開平4−213208号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、上記の従来技術では、誘電体基板上においてインダクタとキャパシタの形成領域が全く異なる領域とされている。また、外部電極が誘電体基板上の領域には形成されていない。そのため、さらなるLC共振素子の小型化の余地があった。
【0005】
また、上記の従来技術では、インダクタとキャパシタの並列回路を形成するために誘電体基板に貫通孔が形成されている(特許文献1の図7参照)。そのため、構造が複雑化するという不都合があった。
【0006】
そこで、本明細書では、さらなる小型化が可能で、かつ構造が簡素なLC共振素子、および共振素子アレイを提供する。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本明細書によって開示されるLC共振素子は、薄膜キャパシタと薄膜インダクタの並列回路からなるLC共振素子であって、上面と、前記上面に対向する下面とを有する誘電体膜と、前記下面上に薄膜導体によって形成された共通電極と、前記共通電極を介して直列接続され、前記薄膜キャパシタを構成する第1キャパシタおよび第2キャパシタと、前記上面上に形成された第1外部接続端子および第2外部接続端子と、前記上面上の、平面視における前記共通電極の外側に位置する領域に形成され、前記薄膜インダクタを構成するとともに、前記第1外部接続端子と第2外部接続端子とを結ぶ薄膜導線部と、前記第1外部接続端子に接続された第1上部電極であって、前記上面上の、平面視において前記共通電極と重なる領域に形成され、前記共通電極および前記誘電体膜とともに前記第1キャパシタを形成する第1上部電極と、前記第2外部接続端子に接続された第2上部電極であって、前記上面上の、平面視において前記共通電極と重なる領域に形成され、前記共通電極および前記誘電体膜とともに前記第2キャパシタを形成する第2上部電極と、を備える。
本構成によれば、薄膜キャパシタは、共通電極を介して直列接続された第1キャパシタと第2キャパシタとから構成される。このような薄膜キャパシタの構成によって、薄膜インダクタは、上面上の、平面視における共通電極の外側に位置する領域に形成された薄膜導線部によって形成される。また、第1外部接続端子および第2外部接続端子は、誘電体膜の上面上に形成されている。そのため、このような構成によって、LC共振素子がさらに小型化され、かつ構造が簡素化される。
また、平面視において薄膜インダクタと共通電極とが重なっている場合、薄膜インダクタと共通電極の間で静電容量が形成されLC並列共振回路におけるQ値が低下することになるが、薄膜インダクタが共通電極の外側に位置しているため、Q値の低下を避けることができる。
【0008】
上記LC共振素子において、前記薄膜導線部は、ループ状に形成されているようにしてもよい。
本構成によれば、薄膜導線部は、ループ状に形成されているため、直線状に形成されている場合と比べ、所望のインダクタンスを得やすくなる。
【0009】
また、上記LC共振素子において、前記薄膜導線部は、前記共通電極の外周に沿ってループ状に形成されているようにしてもよい。
本構成によれば、薄膜導線部は、共通電極の外周に沿って形成されているため、平面視において共通電極は薄膜インダクタループ内に位置する。それによってLC共振素子の平面面積を縮小化できる。
【0010】
また、上記LC共振素子において、前記第1外部接続端子および第2外部接続端子は、前記上面上の、平面視において前記共通電極の外側に位置する領域に形成されているようにしてもよい。
本構成によれば、外部接続端子に係るLC共振素子の信頼性を向上させることができる。すなわち、外部接続端子には、外部回路との接続時や接続後に熱や応力がかかるため、外部接続端子の真下に誘電体膜を介して共通電極がある場合、共通電極とのショート、または、外部接続端子の誘電体膜からの剥離により容量値変化等のリスクが考えられる。しかしながら、本構成によれば、外部接続端子の下には共通電極がない構造であるため、そのようなリスクを回避することができる。また、第1外部接続端子および第2外部接続端子の双方が誘電体膜の上面上に形成されているため、第1外部接続端子および第2外部接続端子と外部との接続が容易となる。
【0011】
また、上記LC共振素子において、前記第1上部電極と前記第1外部接続端子とを接続する第1接続部と、前記第2上部電極と前記第2外部接続端子とを接続する第2接続部と、を備え、前記第1、第2上部電極、前記第1、第2外部接続端子、前記第1、第2接続部および前記薄膜導線部は、同一の薄膜導体によって前記上面上に一体形成されているようにしてもよい。
本構成によれば、誘電体膜の上面上に形成された各部を、一回の薄膜形成によって簡易に形成できる。
【0012】
本明細書によって開示される共振素子アレイは、複数個の、上記いずれかに記載のLC共振素子を備え、前記誘電体膜が各LC共振素子に共通化されている。
本構成によれば、コンパクトな共振素子アレイを形成できる。
【0013】
上記共振素子アレイにおいて、各LC共振素子内においては前記第1上部電極および前記第2上部電極の面積が等しいとともに、各LC共振素子間においては前記第1上部電極および前記第2上部電極の面積が異なるようにしてもよい。
本構成によれば、各LC共振素子間においては第1上部電極および第2上部電極の面積が異なるため、各LC共振素子間においてはキャパシタの容量が異なる。それによって各LC共振素子の共振周波数が異なる。それによって、通信機器等で、複数の連続して異なる共振周波数のフィルタを、回路切替で選択可能となる。
【発明の効果】
【0014】
本明細書によって開示されるLC共振素子、および共振素子アレイによれば、さらなる小型化が可能で、かつ構造が簡素なLC共振素子、および共振素子アレイを提供できる。
【図面の簡単な説明】
【0015】
図1】実施形態1に係るLC共振素子を示す斜視図
図2】LC共振素子の等価回路
図3】LC共振素子の平面図
図4図3のA−A線から見た断面図
図5】LC共振素子の周波数−インピーダンス特性を示すグラフ
図6】LC共振素子の製造工程を示す断面図
図7】LC共振素子の製造工程を示す断面図
図8】実施形態2に係る共振素子アレイを示す平面図
図9】共振素子アレイの各LC共振素子の特性を示す表
図10】各LC共振素子の周波数−インピーダンス特性を示すグラフ
【発明を実施するための形態】
【0016】
以下、図1から図10を参照して、実施形態を説明する。なお、図中、同一の符号は、同一又は相当部分を示す。
<実施形態1>
まず、図1から図7を参照して、実施形態1に係るLC共振素子10を説明する。
【0017】
1.LC共振素子の構成
図1および図2に示されるように、LC共振素子10は、薄膜キャパシタTCと薄膜インダクタTLの並列回路PCからなるLC共振素子である。すなわち、LC共振素子10は、言い換えれば、LC並列共振素子である。LC共振素子10は、主に、数GHz帯の高周波回路用の素子である。
【0018】
LC共振素子10は、共通電極11、誘電体膜12、第1上部電極13A、第2上部電極13B、第1キャパシタC1、第2キャパシタC2、第1外部接続端子14A、第2外部接続端子14B、および薄膜導線部16を含む。
【0019】
誘電体膜12は、例えば、STO(チタン酸ストロンチウム)膜からなり、上面12Uと、上面12Uに対向する下面12Dとを有する。
共通電極11は、矩形状の形状を有し、誘電体膜の下面12D上に薄膜導体、例えば、銅薄膜によって形成されている。
【0020】
第1キャパシタC1および第2キャパシタC2は、共通電極11を介して直列接続され、並列回路PCの薄膜キャパシタTCを構成している。すなわち、薄膜キャパシタTCは、直列接続された2個の薄膜キャパシタ(C1、C2)によって構成されている。すなわち、薄膜キャパシタTCの容量は、C1・C2/(C1+C2)となる。ここで、C1は第1キャパシタC1の容量とし、C2は第2キャパシタC2の容量とする。
【0021】
第1外部接続端子14Aおよび第2外部接続端子14Bは、図1および図3に示されるように、誘電体膜の上面12U上の、平面視において共通電極の外側に位置する領域R2に形成されている。この構成によって、外部接続端子(14A、14B)に係るLC共振素子10の信頼性を向上させることができる。すなわち、外部接続端子(14A、14B)には、外部回路との接続時や接続後に熱や応力がかかるため、外部接続端子の真下に誘電体膜12を介して共通電極11がある場合、共通電極11とのショート、または、外部接続端子の誘電体膜12からの剥離により容量値変化等のリスクが考えられる。しかしながら、本実施形態によれば、外部接続端子(14A、14B)の下には共通電極11がない構造であるため、そのようなリスクを回避することができる。
また、第1外部接続端子14Aおよび第2外部接続端子14Bの双方が、同一面である誘電体膜の上面12U上に形成されているため、第1外部接続端子14Aおよび第2外部接続端子14Bと外部との接続が容易となる。
【0022】
薄膜導線部16は、図1および図3に示されるように、誘電体膜の上面12U上の、平面視における共通電極の外側に位置する領域R2において共通電極11の外周に沿ったループ状に形成され、並列回路PCの薄膜インダクタTLを構成する。通常、平面視において薄膜インダクタHLと共通電極11とが重なっている場合、薄膜インダクタHLと共通電極11の間で静電容量が形成されLC並列共振回路LCPにおけるQ値が低下することになる。しかしながら、本実施形態では薄膜インダクタHLが共通電極11の外側に位置しているため、そのようなQ値の低下を避けることができる。また、薄膜導線部16は、誘電体膜の上面12U上において共通電極11の外周に沿って形成されているため、LC共振素子の平面面積を縮小化できる。
また、薄膜導線部16は、第1外部接続端子14Aと第2外部接続端子14Bとを結んでいる。すなわち、薄膜導線部16の一端は第1外部接続端子14Aに接続され、薄膜導線部16の他端は第2外部接続端子14Bに接続されている。
【0023】
第1上部電極13Aは、第1外部接続端子14Aに接続され、誘電体膜の上面12U上の、平面視において共通電極11と重なる領域R1に形成されている。第1上部電極13Aは、共通電極11(詳しくは、共通電極11の第1上部電極13Aと重なる部分)および誘電体膜12とともに第1キャパシタC1を形成している。
【0024】
第2上部電極13Bは、第2外部接続端子14Bに接続され、誘電体膜の上面12U上の、平面視において共通電極11と重なる領域R1に形成されている。第2上部電極13Bは、共通電極11(詳しくは、共通電極11の第2上部電極13Bと重なる部分)および誘電体膜12とともに第2キャパシタを形成している。なお、本実施形態では、第1上部電極13Aと第2上部電極13Bの面積は等しい。そのため、第1キャパシタC1と第2キャパシタC2の容量は等しい。なお、これに限られず、第1上部電極13Aと第2上部電極13Bの面積は異なるようにしてもよい。
【0025】
また、LC共振素子10は、第1上部電極13Aと第1外部接続端子14Aとを接続する第1接続部15Aと、第2上部電極13Bと第2外部接続端子14Bとを接続する第2接続部15Bと、を含む。そして、第1、第2上部電極(13A、13B)、第1、第2外部接続端子(14A、14B)、第1、第2接続部(15A、15B)および薄膜導線部16は、同一の薄膜導体によって誘電体膜の上面12U上に一体形成されている。そのため、誘電体膜の上面12U上に形成される上記各部を、一回の薄膜形成によって形成できる。それによって、LC共振素子10の製造工程が削減される。
【0026】
なお、これに限られず、誘電体膜の上面12U上に形成される上記各部は、同一の薄膜導体によって誘電体膜の上面12U上に一体形成されていなくてもよい。例えば、薄膜導線部16は他の部とは異なる薄膜導体によって形成されていてもよい。
また、図1等において共通電極11に接続された、素子検査用の検査端子11Tが示されるが、検査端子11Tは検査終了後に削除される。すなわち、検査端子11Tは、LC共振素子10の完成品には含まれない。
【0027】
このような構成のLC共振素子10の周波数−インピーダンス特性が図5に示される。なお、図5のグラフは、有限要素法による電磁界シミュレーションからLCのデータを抽出した数値をもとに、SPICEシミュレータにて計算した結果を描画したものである。
【0028】
2.LC共振素子の製造方法
次に、図6および図7を参照して、LC共振素子10の製造方法の概要を説明する。
【0029】
同製造方法では、まず、図6(a)に示されるように、例えば、ドライ洗浄された基材41の表面に、例えば、AS(エアロゾル)CVD法によってSTO膜21MBを形成する。STO膜11MBの膜厚は、例えば、0.1μmから0.4μmまでの間の値である。STO膜12MBは、薄膜キャパシタ(C1、C2)の誘電体膜12となる。また、基材41は、本実施形態ではアルミ箔で構成される。なお、基材としての金属箔はアルミ箔に限られず、銅、ニッケル等の金属箔であってもよい。また、誘電体膜もSTO膜11MBに限られない。
【0030】
次いで、図6(b)に示されるように、STO膜12MB上に薄膜キャパシタ(C1、C2)の共通電極11となる金属薄膜11MAを形成する。金属薄膜11MAは、例えば、Cu(銅)薄膜によって構成される。Cu薄膜は、例えば、蒸着法によって成膜される。金属薄膜13MAの膜厚は、例えば、2μm以下である。
ここで金属薄膜11MAをフォトリソグラフィー等の手法でパターニングすることによって、共通電極11を形成する。
【0031】
次いで、図6(c)に示されるように、保持材となる樹脂フィルム42を金属薄膜11MA上に貼り付ける。次いで、図6(d)に示されるように、アルミ基材41を、例えばエッチングによって除去し、STO膜12MBの、金属薄膜11MAが形成される面とは反対側の面を露出させる。なお、図6(d)以下の図は、図6(c)の上下を反転させたものである。
【0032】
次いで、図7(e)に示されるように、露出されたSTO膜12MB上に薄膜キャパシタ(C1、C2)の上部電極(13A、13B)、第1外部接続端子14A、第2外部接続端子14B、および薄膜導線部16等となる金属薄膜13MCを形成する。金属薄膜13MCは、金属薄膜11MAと同様に、例えば、Cu(銅)薄膜によって構成される。Cu薄膜は、例えば、蒸着法によって成膜される。金属薄膜13MCの膜厚は、例えば、2μm以下である。
【0033】
次いで、図7(f)に示されるように、金属薄膜13MCおよびSTO膜12MBをパターニングして、上部電極(13A、13B)、第1外部接続端子14A、第2外部接続端子14B、および薄膜導線部16等を形成し、STO膜12MBをパターニングして誘電体膜12を形成する。これによって、薄膜キャパシタ(C1、C2)が形成される。
【0034】
次に、誘電体膜12上にソルダーレジスト(図示せず)を形成し、ソルダーレジストの第1外部接続端子14Aおよび第2外部接続端子14Bに相当する部分を開口する。次いで、必要なサイズにダイサーにて切断して、樹脂フィルム42を除去すると、図1および図4に示されるようなLC共振素子10が形成される。なお、樹脂フィルム42は、素子保護のため、実装時に除去される。
【0035】
3.実施形態1の効果
上記したように、薄膜キャパシタTCは、共通電極11を介して直列接続された第1キャパシタC1と第2キャパシタとC2とによって構成されている。このように2個のキャパシタ(C1、C2)が直列接続された薄膜キャパシタTCの構成によって、薄膜インダクタTL(16)は、誘電体膜の上面12U上の、平面視における共通電極の外側に位置する領域R2において共通電極11の外周に沿うループ状に形成された薄膜導線部16によって形成することができる。すなわち、平面視において共通電極11を薄膜インダクタループ内に位置させることができる。
上記薄膜キャパシタTCの構成、および共通電極11と薄膜インダクタループの配置構成によって、第1上部電極13Aおよび第2上部電極13Bを、誘電体膜の上面12U上の薄膜インダクタループ内であって、平面視において共通電極11と重なる領域R1に形成することができる。
また、第1外部接続端子14Aおよび第2外部接続端子14Bは、誘電体膜の上面12U上に形成されている。
そのため、上記した各部の配置構成によって、LC共振素子10をさらに小型化でき、かつ、誘電体膜12にビア等の形成が不要で構造を簡素化することができる。
【0036】
<実施形態2>
次いで、図8から図10を参照して、実施形態2に係る共振素子アレイ20を説明する。
【0037】
図8に示されるように、共振素子アレイ20は、複数個(本実施形態では10個)の、上記実施形態1で記載したLC共振素子(10A−10J)を備え、ほぼ2mm*3mmの矩形状の形状を有する。なお、共振素子アレイ20では、誘電体膜12Aが各LC共振素子に(10A−10J)共通化されている。この構成によって、コンパクトな共振素子アレイ20を形成できる。
【0038】
また、各LC共振素子(10A−10J)内においては第1上部電極13Aおよび第2上部電極13Bの面積が等しいとともに、各LC共振素子(10A−10J)間においては第1上部電極13Aおよび第2上部電極13Bの面積が異なる。本実施形態では、図8に示されるように、LC共振素子10AからLC共振素子10Jの順に、第1上部電極13Aおよび第2上部電極13Bの面積が増加している。
【0039】
このように共振素子アレイ20では、各LC共振素子(10A−10J)間においては第1上部電極13Aおよび第2上部電極13Bの面積が異なるため、各LC共振素子(10A−10J)間においてはキャパシタ(C1、C2)、すなわち、薄膜キャパシタTCの容量が異なる。それによって各LC共振素子(10A−10J)の共振周波数が異なる。それによって、通信機器等で、複数の連続して異なる共振周波数のフィルタを、回路切替で選択可能となる。
【0040】
なお、この場合において、有限要素法による電磁界シミュレーションからLCのデータを抽出結果が図9の数値表に示される。図9の数値表では、各LC共振素子(10A−10J)における、共振周波数fo[Hz]、薄膜キャパシタTCの容量[pF]、および薄膜インダクタTLのインダクタンス[H]が示されている。また、この数値表の数値を基にSPICEシミュレータにて計算した結果が図10のグラフに示される。
【0041】
<他の実施形態>
本発明は上記記述及び図面によって説明した実施形態に限定されるものではなく、例えば次のような種々の態様も本発明の技術的範囲に含まれる。
【0042】
(1)上記実施形態2では、各LC共振素子(10A−10J)間においては第1上部電極13Aおよび第2上部電極13Bの面積が異なる例を示したが、これに限られない。例えば、各LC共振素子(10A−10J)間においては第1上部電極13Aおよび第2上部電極13Bの面積が等しい構成であってもよい。あるいは、数個単位のLC共振素子間において、第1上部電極13Aおよび第2上部電極13Bの面積が異なるようにしてもよい、すなわち、複数個のうちの数個単位のLC共振素子では、第1上部電極13Aおよび第2上部電極13Bの面積が等しい構成であってもよい。
【0043】
(2)上記各実施形態では、同一LC共振素子内の第1上部電極13Aと第2上部電極13Bの面積は等しい例を示したが、これに限られず、同一LC共振素子内の第1上部電極13Aと第2上部電極13Bの面積が異なるようにしてもよい。
【0044】
(3)上記各実施形態では、薄膜導線部16が共通電極11の外周に沿ったループ状に形成される例を示したが、薄膜導線部16が共通電極11の外周に沿うことに限られない。薄膜導線部16は、上面12U上の、平面視における共通電極11の外側に位置する領域R2においてループ状に形成されておればよい。さらには、薄膜導線部16は、必ずしもループ状に形成されていなくてもよく、例えば、平面視において共通電極側とは反対側の領域R2において、外部電極端子(14A、14B)を結ぶ直線状、あるいは三角波状に形成されていてもよい。
【0045】
(4)上記各実施形態では、第1外部接続端子14Aおよび第2外部接続端子14Bが、上面上の、平面視において共通電極の外側に位置する領域R2に形成されている例を示したが、これに限られない。第1外部接続端子14Aおよび第2外部接続端子14Bは、上面12U上に形成されていればよい。例えば、第1上部電極13A上に第1外部接続端子14Aが形成され、第2上部電極13B上に第2外部接続端子14Bが形成されるようにしてもよい。
【0046】
(5)上記各実施形態では、STO膜12をASCVD法によって成膜して、薄膜キャパシタTCの誘電体膜を形成する例を示したが、誘電体膜は、これに限られない。誘電体の組成は、例えば、ZnO、BTO、あるいはBSTであってもよいし、成膜方法は、スパッタ、スピンコート、あるいは蒸着であってもよい。
【符号の説明】
【0047】
10、10A−10J…LC共振素子
11…共通電極
12、12A…STO膜(誘電体膜)
12D…STO膜の下面
12U…STO膜の上面
13A…第1上部電極
13B…第2上部電極
14A…第1外部接続端子
14B…第2外部接続端子
15A…第1接続部
15B…第2接続部
16…薄膜導線部
20…共振素子アレイ
C1…第1キャパシタ(薄膜キャパシタ)
C2…第2キャパシタ(薄膜キャパシタ)
LCP…並列回路
R1…STO膜の上面上の、平面視において共通電極と重なる領域
R2…STO膜の上面上の、平面視における共通電極の外側に位置する領域
TC…薄膜キャパシタ
TL…薄膜インダクタ
【要約】
LC共振素子(10)は、誘電体膜(12)と、誘電体膜の下面(12D)上に薄膜導体によって形成された共通電極(11)と、共通電極(11)を介して直列接続され、薄膜キャパシタ(TC)を構成する第1キャパシタ(C1)および第2キャパシタ(C2)と、誘電体膜の上面(12U)上に形成された第1および第2外部接続端子(14A、14B)と、薄膜インダクタ(TL)を構成する薄膜導線部(16)と、上面(12U)上に形成された第1キャパシタの第1上部電極(13A)と、上面(12U)上に形成された第2キャパシタの第2上部電極(13B)と、を備える。薄膜導線部(16)は、誘電体膜の上面(12U)上の、平面視における共通電極(11)の外側に位置する領域(R2)に形成されている。
図1
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