特許第6390025号(P6390025)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6390025
(24)【登録日】2018年8月31日
(45)【発行日】2018年9月19日
(54)【発明の名称】高周波振動検出装置
(51)【国際特許分類】
   G01V 1/40 20060101AFI20180910BHJP
【FI】
   G01V1/40
【請求項の数】4
【全頁数】15
(21)【出願番号】特願2014-105482(P2014-105482)
(22)【出願日】2014年5月21日
(65)【公開番号】特開2015-219220(P2015-219220A)
(43)【公開日】2015年12月7日
【審査請求日】2017年2月22日
(73)【特許権者】
【識別番号】514127909
【氏名又は名称】株式会社エスジオップ
(73)【特許権者】
【識別番号】501254955
【氏名又は名称】川崎地質株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100077827
【弁理士】
【氏名又は名称】鈴木 弘男
(72)【発明者】
【氏名】野口 静雄
(72)【発明者】
【氏名】山田 茂治
(72)【発明者】
【氏名】吉田 潔
【審査官】 安田 明央
(56)【参考文献】
【文献】 特開2005−223925(JP,A)
【文献】 特開2010−249537(JP,A)
【文献】 特開平02−216084(JP,A)
【文献】 実開平01−128133(JP,U)
【文献】 特開2001−166060(JP,A)
【文献】 特開平02−008716(JP,A)
【文献】 特開昭59−024281(JP,A)
【文献】 特開2000−178955(JP,A)
【文献】 特開昭51−081701(JP,A)
【文献】 特開2009−074910(JP,A)
【文献】 特開2000−214268(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G01V 1/00−15/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
振動を検出する複数の振動センサーを有するゾンデ部と、前記複数の振動センサーによる検出結果を収録する収録部と、前記複数の振動センサーのそれぞれと前記収録部とを接続して前記検出結果を前記収録部に伝送する出力信号ケーブルと、を備えた高周波振動検出装置であって、
前記ゾンデ部は、前記複数の振動センサーを直線上に配置してなり、
前記複数の振動センサーのそれぞれと隣接する振動センサーとの間、および前記複数の振動センサーそれぞれと前記出力信号ケーブルとの間に、柔軟な弾性体を配置し、前記ゾンデ部のハウジングに前記振動センサーが直接に接触しないようにした、
ことを特徴とする高周波振動検出装置。
【請求項2】
請求項1に記載の高周波振動検出装置において、
前記ゾンデ部は、長手方向直線上に複数の金属突起部を有し、前記金属突起部の背面側にエアーパッカーを有し、
前記エアーパッカーにエアーを供給することで該エアーパッカーが膨らんで前記金属突起部をボーリング孔の側面に圧着させる、
ことを特徴とする高周波振動検出装置。
【請求項3】
振動を検出する複数の振動センサーを有するゾンデ部と、前記複数の振動センサーによる検出結果を収録する収録部と、前記複数の振動センサーのそれぞれと前記収録部とを接続して前記検出結果を前記収録部に伝送する出力信号ケーブルとを備え、前記ゾンデ部の長手方向直線上に複数の振動センサーを配置した高周波振動検出装置であって、
前記ゾンデ部は、長手方向直線上に金属突起部を有し、前記金属突起部の背面側にエアーパッカーを有し、
前記エアーパッカーにエアーを供給することで該エアーパッカーが膨らんで前記金属突起部をボーリング孔の側面に圧着させる、
ことを特徴とする高周波振動検出装置。
【請求項4】
請求項2または3に記載の高周波振動検出装置であって、
前記ゾンデ部はボーリング孔に挿入されるものであり、
前記振動センサーは、前記ボーリング孔の側壁に接する前記金属突起部を介して前記ボーリング孔周辺の振動を検出する、
ことを特徴とする高周波振動検出装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、高周波振動検出装置に関し、詳しくは、既設地下構造物等の基礎部の深度を求める際に用いることができる高周波振動検出装置に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、原位置における地下構造物等の基礎部の深度の測定方法には、PS検層による方法が知られている(例えば、非特許文献1)。このPS検層では、1個あるいは2個の受振器をボーリング孔内の任意の深度設定で挿入して、人工震源による振動波形を記録・解析する。
【先行技術文献】
【非特許文献】
【0003】
【非特許文献1】内山成和、「孔井内弾性波速度測定」、物理探鉱、昭和58年10月、第36巻、第5号、pp.276−293
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
従来のPS検層による方法は、ボーリング孔内で深度方向の測定間隔が一般に0.5m〜2mと粗くなっており、深度0.25m〜2m毎の発振・受振の時間を計測することが可能であるが、地下浅部の弾性波速度をより詳細に求めるには自から限界があり、地下深くの地層境界を把握するに適当であるが、測定間隔を細かく任意に設定しても地下浅部における構造物基礎部の深度調査に対して、評価が可能か否かという疑義が生じる。
【0005】
本発明は、既設地下構造物等の基礎部の深度測定を簡易に高精度で行うことができる高周波振動検出装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明は上記の目的を達成するために、高周波振動を検出する複数の振動センサーを有するゾンデ部と、前記複数の振動センサーによる検出結果を収録する収録部と、前記複数の振動センサーのそれぞれと前記収録部とを接続して前記検出結果を前記収録部に伝送する出力信号ケーブルと、を備えた高周波振動検出装置であって、前記ゾンデ部は、前記複数の振動センサーを直線上に配置して成り、前記複数の振動センサーのそれぞれと隣接する振動センサーとの間、および前記複数の振動センサーのそれぞれと前記出力信号ケーブルとの間に、柔軟な弾性体を配置して、前記ゾンデ部のハウジングに前記振動センサーが直接的に接触しないようにした、ことを特徴とする。
【発明の効果】
【0007】
本発明によれば、既設地下構造物等の基礎部の深度測定を簡易に高精度で行うことができる高周波振動検出装置を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0008】
図1】本発明の一実施の形態に係る高周波振動検出装置のゾンデ部を示す図であり、(a)は側面図であり、(b)は(a)の右方向から見た背面図であり、(c)は平面図であり、(d)は(c)の右方向から見た背面図である。
図2図1(a)のA−A断面図である。
図3図1(a)のB−B断面図である。
図4図1(a)のC−C断面図である。
図5図1(c)のD−D断面図である。
図6図1(c)の範囲Eを拡大して示す図である。
図7】本発明の一実施の形態に係る高周波振動検出装置の構成を示す概略図である。
図8】本発明の一実施の形態に係る高周波振動検出装置によって測定する対象の構造物の一例を示す図であり、(a)は正面図(地中断面)であり、(b)は上空から見た平面図である。
図9】本発明の一実施の形態に係る高周波振動検出装置による深度計測、解析結果を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0009】
以下、本発明の実施形態について詳細に説明する。
【0010】
ところで、本発明によれば、既設地下構造物等の基礎部に近接するボーリング孔内に固定設置されているゾンデ部(48個の振動センサーを直線上に3cmの等間隔で配置)を利用して、構造物の地表に露出した部分に設けた人工震源を用いて、人工震源による振動の高周波数成分の波形を一括で高サンプリングのデータを検出・収録する、原位置で簡単に地下構造物基礎部の深度測定を行うことができるようにすることができる。
【0011】
既設地下構造物等の基礎部の深度を求める上で、地盤と構造物の伝播特性である弾性波速度は重要なパラメータとなる。地盤の伝搬特性パラメータである弾性波速度は、人工震源による発振(起振)から受振までの時間を計測することにより推定される。
【0012】
原位置において、複数の振動センサーによって同時に振動波形を収録し、可視画像表示しながらの高精度の測定方法を本発明は提供する。本発明によれば、より確かな弾性波速度が求められ、既設地下基礎構造物の基礎部の境界深度が詳細に判断評価される。このことにより構造物等の保守・点検に際しては、原位置での品質管理やコスト低減に対しても期待が大きい。また、既設構造物等の基礎部調査は、その耐久性および耐震性の検討を行う際にも必要となり、その調査は、年々増加する傾向にあると考えられる。
【0013】
図1は、本発明の一実施の形態に係る高周波振動検出装置のゾンデ部を示す図であり、(a)は側面図であり、(b)は(a)の右方向から見た背面図であり、(c)は平面図であり、(d)は(c)の右方向から見た背面図である。
【0014】
図2は、図1(a)のA−A断面図である。
【0015】
図3は、図1(a)のB−B断面図である。
【0016】
図4は、図1(a)のC−C断面図である。
【0017】
図5は、図1(c)のD−D断面図である。
【0018】
図6は、図1(c)の範囲Eを拡大して示す図である。
【0019】
図7は、本発明の一実施の形態に係る高周波振動検出装置の構成を示す概略図である。
【0020】
本実施の形態の高周波振動検出装置は、ゾンデ部100と、ゾンデ部100で検出したデータを収録する収録部とで構成されている(図7参照)。
【0021】
ゾンデ部100は、48個の振動センサー1と、弾性体と、支持体と、保護体とを組付けて一体化した構成になっている。
【0022】
複数の振動センサー1のそれぞれは、弾性体と、支持体と、保護体との内側に形成され、一直線の水平方向で、互いの間隔が3cmの等間隔になるように配列されている。
【0023】
弾性体は、ガラス繊維シート部2と、シリコンゴム成型部3と、オスネジ付金属板部4と、メスネジ金属突起部5とで構成されている。ガラス繊維シート部2は、シリコンゴム成型部3に重畳されている。
【0024】
支持体は、弾性体の各部材により形成されており、予め振動センサー1とオスネジ付金属板部4とを接着して、オスネジ付金属板部4とメスネジ付金属突起部5とでガラス繊維シート部2を挟み、オスネジ付金属板部4のオスネジとメスネジ付金属突起部5のメスネジとを螺合させ、振動センサー1が締め付け支持により取り付けられている。
【0025】
保護体は、振動センサー1と、弾性体と、支持体とを保護する金属部材と生ゴム部材とで構成され、振動センサー1と直接的に接触がないように形成されている。弾性体の金属突起部5の先端は、円弧状に形成され、シリコンゴム成型部3の弾性で押し込みが可能となっている。
【0026】
原位置においては、ゾンデ部100に対するボーリング孔壁との密着性を確保することが重要となる。その方法として、ゾンデ部100の長手方向を3分割する位置であってメスネジ金属突起部5の反対側に生ゴムチューブパッカー17を配置し、この生ゴムチューブパッカー17において、ゾンデ部100の長手方向に行き亘る管であるエアー管部9のエアー吹出し口10からエアーを噴き出して生ゴムチューブ11、12を膨らませることによりゾンデ部100をボーリング孔壁に圧着させる方法を適用している。さらに、振動センサー1は、フレキシブル性の高いシリコンゴム成型部3とガラス繊維シート2で支持固定され、柔軟性を持った構成としていることより、ボーリング孔壁の凹凸状態の不均質を補い、振動センサー1全体の圧着性を高め、均質なデータの収集を可能としている。
【0027】
また収録部は、収録器18と可視画像出力モニター19とから成り、収録器18でゾンデ部100の48個の振動センサー1の出力信号を一括同時に検出・収録して、例えばパソコン(PC)の可視画像モニター19により波形記録を確認することができるようになっている。
【0028】
ゾンデ部100の48個の振動センサー1の出力信号の波形記録は、同時に最大10μSec(マイクロセカンド)のサンプリングにより最大40mSec(ミリセカンド)の記録長が確保されている。データ収録の形式には、ノーマルとプリトリガの2種類が用意されており、計測手法により、トリガ発生時、あるいは、トリガ発生以前からの起動時の何れかを同時サンプリングするよう選択が可能になっている。データ収録容量は、各モードとも1成分当たり、最大4096個のデジタルデータとし保存・確保されている。またチャンネル個別にアッテネータと増幅器(最大増幅度100倍)を備えており、様々な出力振幅を持つ前置増幅器との接合が可能となっている。さらに、収録データの管理用の走時処理ツールを備えている。
【0029】
本発明に係る地下構造物基礎部の深度を計測する調査方法としては、構造物地上部をハンマー21で打撃する人工震源を適用し、この構造物基礎部に可能な限り近接するボーリング孔内にゾンデ部100を端部100b側から挿入し、エアーパッカー17により複数の振動センサー(48個、3cmの等間隔)を突起部5を介してボーリング孔壁に密着させて衝撃振動の波形を一括検出する。この衝撃振動の波形収録には、高周波成分を同時に高分解能、高サンプリングで計測ができるデータ収録器18により、構造物基礎部の深度を的確に評価することができる。また本発明は、ゾンデ部100を挿入する計測用のボーリング孔が必要不可欠であるが、ゾンデ部100の出力信号ケーブル15と収録器18、生ゴムチューブ11、12を膨らませるエアーを供給するエアーホース16とエアーポンプ20のそれぞれを繋ぎ、可視画像モニター19で波形確認をしながらハンマー打撃するだけでよく、また収録器18には、収録データの走時処理ツールを備えて、原位置で可視画像モニターに速度走時曲線を描くことで、構造物基礎部の概略的な深度(弾性波速度の変曲点)を簡単に判別することができる特徴があり、費用対効果の大きい調査が実施できる。ハンマー21で打撃したタイミング(トリガ)は、トリガ線22を介して収録器18に伝達される。
【0030】
本実施例の高周波振動検出装置のゾンデ部100は、図1(a)〜(d)に示すように、長手方向(ボーリング孔への挿入方向)の全長約1700mm、外径長辺φ65mm、外径短辺φ50mmを有している。
【0031】
ゾンデ部100の構成を説明すると、48個の振動センサー1と、弾性体及び支持体2、3、4、5と、保護体6、7、8とを組付けて一体化している。また、その他ゾンデ部100の圧着部に係る各部9、10、11、12、13、16、17と、ハウジング等に係る固定ネジ14と、出力信号ケーブル15とで形成している。
【0032】
ハウジング部6は、ゾンデ部100の長手方向に延伸する底板部材6cの両側に、やはりゾンデ部100の長手方向に延伸し振動センサー1の側に湾曲する側板部材6a、6bを溶接して形成される。
【0033】
ハウジング部7は、ゾンデ部100の長手方向に延伸する底板部材7cの両側に、やはりゾンデ部100の長手方向に延伸し振動センサー1の側に湾曲する側板部材7a、7bを溶接して形成される。
【0034】
ハウジング部6とハウジング部7とは固定ネジ14によって留められ、その外側にハウジングカバー部8が被せられる。
【0035】
振動センサー1は、ゾンデ部100の弾性体と、支持体と、保護体との内側に形成され、シリコン成型部3の円筒枠内に一直線上の3等間隔で水平方向に配列し、この内の弾性体は、第1弾性体と第2弾性体とで構成している。
【0036】
第1弾性体は、振動センサー1に全体で共用するガラス繊維シート部2と、シリコンゴム成型部3とで重畳されている。一方、第2弾性体は、振動センサー1の個別に対するオスネジ付金属板部4と、メスネジ付金属突起部5とで構成されている。また、支持体は、これらの弾性体により構成されて、予め振動センサー1とメスネジ付金属板部4と接着して、メスネジ付金属突起部5でガラス繊維シート部2をネジ止で挟み、振動センサー1を支持固定している。
【0037】
メスネジ付金属突起部5は、円弧状に形成しており、ガラス繊維シート部2とシリコンゴム成型部3の柔軟性によって押し込みができるようになっている。
【0038】
保護体は、振動センサー全体と、弾性体と、支持体とを保護する金属製ハウジング部6、7と、最外周の生ゴム製のハウジングカバー部8とで構成し、振動センサー1と直接的な接触がないように形成されている。また、金属製のハウジング部6と7は、分離できる構成とし、複数の固定ネジ14により留められている。
【0039】
使用している振動センサー1は、外径φ19で固有周波数28Hzの動コイル型速度計とし、複数のセンサー1のそれぞれをシリコンゴム成型部3の円筒枠内に収納し、また出力信号ケーブル15はシリコンゴム成型部3に埋め込まれ、各センサー1の出力信号端子1aに結線し、振動センサー1間の緩衝を避けるようにゾンデ部100の端部100a(ゾンデ部100をボーリング孔に挿入したときの最上部)まで挿通している。
【0040】
48個の振動センサー1の背面側には、これらを4等分する中央部の3箇所にエアーパッカー部17を備えて、弾性体のメスネジ付金属突起部5を一定圧力(0.15MPa〜0.20MPa)でボーリング孔の側壁に圧着することができる生ゴムチューブ製のボーリング孔壁圧着部11、12が固定装置として保護体の中に配置されている。図2では、破線により、ボーリング孔壁圧着部11、12にエアーを供給したエアー充填状態13を示している。
【0041】
次に、高周波振動検出装置の本実施例によるデータ収録について、図7に示した計測方法の概要を参照して説明する。
【0042】
既設構造物の基礎部が地上に露出している場合において、その近傍にボーリング孔を設け、その孔内にゾンデ部100を挿入し、48個の振動センサー1(3cm均等間隔配置)の単位で所定の深度に至った時点で、エアー管部9にエアーホース16を介して地上のポンプ20からエアーを供給し、エアー管部9のエアー吹出し口10からエアーを吹き出してエアーパッカー17を膨らませ、メスネジ金属突起部5の先端をボーリング孔の側壁に圧着して固定する。
【0043】
次に、露出した構造物基礎上面を打撃用ハンマー21で起振して、この時に発生する衝撃振動が構造物と地盤に伝播する弾性波を48個の振動センサー1のそれぞれで受信し、出力信号ケーブル15と、ショット時を検出するトリガ線22を通じて地上部の収録部18、19で計測する方法である。
【0044】
この計測方法によるデータ収録は、48個の振動センサー1のそれぞれからの出力信号を収録器18と、パソコン(PC)の可視画像モニター19とにより、従来の一般的なPS検層によるデータ収録装置に比較して、サンプリング間隔が約5倍高く、48個の振動センサー1からのデータを一括検出で同時に10μSec(マイクロセカンド)でA/D変換し、最大記録長40mSec(ミリセカンド)を有する連続収録でメモリ保存ができるとともに、波形記録のモニターができるようになっている。
【0045】
データ収録の形式は、2種類の仕方があり、一方のノーマル形式では、トリガが発生すると同時にサンプリングを開始して、データを収録することができる。他方のプリトリガ形式では、起動と同時にサンプリングを開始してトリガが発生すると、トリガ発生以前からのデータを収録することができる。この各形式のデータ収録容量は、振動センサー1成分当たり、最大4096個のデジタルデータである。またチャンネル個別にアッテネータと増幅器(最大増幅度100倍)があり、様々な出力振幅を持つ前置増幅器と接合ができる。さらに、原位置でのデータ収録に対する管理用の走時処理ツールが備えてあり、構造物基礎部の概略的な深度が判別することができる。
【0046】
収録データの解析方法については、図7の符号に示すように、構造物基礎部の深度は、地盤を伝播する弾性波速度(V2,V3)と構造物を伝播する弾性波速度(V1)の相違により、振動センサー1同士の間隔の3cm単位で判定し評価する。基礎上端部及び下端部の深度の判定評価には、スネルの法則を基本とする、次の諸式から求める。
【0047】
上端深度は、sinθ1=V2/V1とする、X1=A×tanθ1で、Z1=Z1’−X1とで推定する。
【0048】
下端深度は、sinθ2=V3/V1とする、X2=A×tanθ2で、Z2=Z2’−X2とで推定する。
【0049】
次に、実際の構成において測定した結果を説明する。
【0050】
原位置において、本実施例の高周波振動検出装置を使用したL型擁壁の底盤部の深度調査を実施し、基礎底盤部の深さの詳細について検討を行った。図8は、測定対象のL型擁壁の底盤部の形状を示す図である。(a)は正面図(地中断面)であり、(b)は上空から見た平面図である。
【0051】
計測を実施するに際して、ゾンデ部100を挿入するボーリング孔(外径φ76mm、深さL=3m)を掘削した。なお、調査地の地盤は、地表から深さ3mまでローム層からなっている。
【0052】
調査対象のL型擁壁は、高さH2000mm、W2005mm、D1300mmの大きさで、基礎底盤がGL−1612mmに埋設されている。ボーリング孔は、擁壁(底板上図)の中央付近、D1300mmの端部から112mm離れた位置にある。計測方法については、ボーリング孔内にゾンデ部100を挿入し、ゾンデ部100の最上部の振動センサーが深さ0.8mの位置でエアーパッカー17により位置固定された状態とし、擁壁上面中央部をハンマー打撃で起振を行った。
【0053】
図9は、本実施例の高周波振動検出装置によりデータ収録された衝撃振動波形である。図中に、この波形データについて、管理用の走時処理ツールを用いて弾性波速度曲線を解析し、その結果の実施例も示した図でもある。ch.1は最上部の振動センサー1で検出した信号であり、順に、ch.48が最下部の振動センサー1で検出した信号である(深度GL−0.8m〜GL−2.21m)。
【0054】
この実施例で得られた収録データは、48成分の信号(48個の振動センサー1のそれぞれからの出力信号)を一括検出で収録し、同時に10μSec(マイクロセカンド)のサンプリング間隔でA/D変換し、記録長40mSec(ミリセカンド)で行ったものである。
【0055】
データ収録の方法は、起動と同時にサンプリングを開始してトリガが発生すると、トリガ発生以前からのデータが収録できるプリトリガモードで行った。全成分とも振動センサー1からの出力信号の1成分当たり、記録容量は4096個のデジタルデータとした。また収録器18に備えたアッテネータは使用せず、増幅器の増幅度は100倍で行った。
【0056】
図9により、上層地盤の弾性波平均速度(V2)は、460m/secを示す結果を得、下層地盤の弾性波平均速度(V3)は、864m/secを示す結果を得た。L型擁壁の基礎部からの弾性波による計測走時が乱れる振動センサーの深さ(測定深度)は1.46mと1.67mに変曲点(Z1’、Z2’)が確認できる。ここで得られた地盤の弾性波速度と変曲点により、スネルの法則を適用する解析手法により、L型擁壁の実深度を求めた。
【0057】
表1には、この計測・解析結果を示した。この結果によると、基礎底盤上端が1.392mで、下端が1.612mであった。本実施例では、コンクリートの弾性波平均速度(V1)を3500m/secと仮定した場合、上端及び下端の深度が概ね3cm〜5cmの精度で推定された。
【0058】
【表1】

このように、本発明に係る高周波振動検出装置を利用した計測及び解析方法の適用は、構造物基礎部に可能な限りボーリング孔を近接させて掘削することにより、特に基礎部下端の深さの詳細調査の有効性が示された。
【0059】
また、原位置での複数のボーリング孔の掘削が必要不可欠であるが、ボーリング孔の容易な掘削方法が確立されることにより、迅速かつ簡便に構造物等の基礎深さを判定・評価できること、さらに本発明の高周波振動検出装置を提供することにより、費用対効果が大きく、高精度の計測・解析が実施できることが示された。
【0060】
すなわち、本発明の高周波振動検出装置を利用して、L型擁壁の構造物基礎部の深度が詳細に求められることを実施例で確認することができた。この実施例の結果によって、L型擁壁の基礎部からの弾性波による計測走時が乱れる変曲点が波形記録上で明瞭に示され、この波形記録から得られた上層、下層地盤の弾性波平均速度と仮定したコンクリートの弾性波平均速度でスネルの法則を適用する解析手法により、L型擁壁基礎部の上端と下端の実深度が概ね3cm〜5cmの精度で推定できることが確認された。
【0061】
ここで、本発明の一実施の形態に係る高周波振動検出装置のゾンデ部の製造方法について説明する。
【0062】
ゾンデ部の製造、組み立ての手順は、シリコン成型部3の製作を一とし、複数の振動センサー1の配置を二とし、ハウジング部6、7、8の外装を三として、それぞれを仕立て上げる。
【0063】
上記各部における組み立て詳細手順と留意点は、次のとおりである。
【0064】
(1)柔軟性があるシリコン成型部3の製作時には、複数の振動センサー1の形状の円筒穴を正確に3cm間隔の直線上に配置する、かつガラス繊維シート部2をシリコン成型部3内に介在するに、複数の振動センサー1を支持する平坦面を形成し、出力信号ケーブル15に複数の振動センサー1が直接的に触れない形態とすること、
(2)ガラス繊維シート部2への複数の振動センサー1の取り付け支持する時には、シリコンゴム成型部3の養生後、予めオスネジ金属板部4に複数の振動センサー1を接着して置き、シリコン成型部3の円筒穴内に各振動センサー1を押し込みガラス繊維シート部2の平坦面に突出たオスネジ金属板部4のオスネジとメスネジ金属突起部5をねじ込みながら緩みがない形態とすること、
(3)複数の振動センサー1がシリコン成型部3に配置取り付け支持後には、それぞれの振動センサー1の出力端子1a(極性±)に出力信号ケーブル15(極性±)を半田上げし、この時、信号の極性(±)とチャンネル番号順(ch.1〜ch.48)の取り違いがないこと、
(4)複数の振動センサー1の保護体であるハウジング部の金属製カバー(ハウジング部6、ハウジング部7)とゴムカバー(ハウジングカバー部8)の成形時には、シリコンゴム成型部3の形状に合致した金属製カバーと、この金属製カバーに合したゴムカバーとを作製して、直接的に複数の振動センサー1に接触しない形態にすること、などの注意工夫が必要である。
【0065】
本発明の一実施の形態に係る高周波振動検出装置のゾンデ部は、保守メンテナンスが簡単にできるように構成されており、ハウジング部6、6の固定ネジを取り外すことにより、また、シリコン成型部3内にある複数の振動センサー1もガラス繊維シート部2に支持固定するメスネジ金属突起部5を緩め取外すことで、弾性体と支持体とを容易に個別分解が可能になっている。
【0066】
以下に、本発明について再度説明する。
【0067】
本発明は、高周波振動を検出する複数の振動センサーを有するゾンデ部と、前記複数の振動センサーによる検出結果を収録する収録部とを備えた高周波振動検出装置であって、前記ゾンデ部は、前記複数の振動センサーを直線上に配置して成り、前記複数の振動センサーのそれぞれと隣接する振動センサーとの間に弾性体を配置して成ることを特徴とする。
【0068】
また本発明は、ゾンデ部と、前記ゾンデ部で検出したデータを収録する収録部とを備えており、前記ゾンデ部は、振動センサー48個と、弾性体と、支持体と、保護体とで一体を構成しており、前記振動センサー48個は、前記弾性体と、前記支持体と、保護体とで形成され、一直線上、3cm等間隔に水平方向で配列されており、前記弾性体は、ガラス繊維シート部と、シリコンゴム成型部と、オスネジ付金属板部と、メスネジ付金属突起部とで形成されており、かつ前記ガラス繊維シート部は、前記シリコンゴム成型部に重畳されており、前記支持体は、前記弾性体の各部材で形成されており、かつ前記振動センサーを一直線上に固定するようになっており、また予め振動センサーと前記メスネジ付金属板部とを接着され、かつ前記メスネジ付金属突起部で前記ガラス繊維シート部を挟み、前記振動センサーが締め付け固定により、取り付けられており、前記保護体は、前記弾性体と、前記支持体とを保護する金属製部材と生ゴム製カバー部で構成されている。
【0069】
前記弾性体の金属突起部は、円弧状に形成されており、かつ前記シリコンゴム成型部の弾性で押し込みが可能となっている。
【0070】
また、前記収録部は、前記振動センサー48個の出力信号を一括で検出するデジタルデータの収録器となっており、前記収録器は、前記ゾンデ部の前記振動センサー48個の出力信号ケーブルに繋いでおり、チャンネル毎のアナログ/デジタル信号変換器(A/D変換器)と、増幅器と、減衰器と、パソコン(PC)とを備えて、走時処理ツールソフトにより収録データの品質管理と弾性波速度を求めることが可能となっている。
【0071】
また本発明は、前記振動センサー48個には、外径φ19mmを有する固有周波数28Hzの動コイル型速度計を使用しており、かつ、内径φ19mmのシリコンゴム成型枠中に収納し、出力端子に振動を検出する信号ケーブルを結線しており、前記信号ケーブルは、前記弾性体の前記シリコンゴム成型部の中に振動センサー間の緩衝を避けながら、4分割で配置、貫通して挿通されており、前記動コイル型速度計の固有周波数より高い周波数成分の速度出力を検出するようになっている。
【0072】
また本発明は、前記弾性体は、第1弾性体部材と、第2弾性体部材とを備えており、第1弾性体部材は、前記振動センサーの一体に対する前記ガラス繊維シート部と、前記シリコンゴム成型部とで構成されおり、一方、第2弾性体部材は、前記振動センサーの個別に対する前記オスネジ付金属板部と、前記メスネジ付金属突起部とで構成されており、かつ前記オスネジ付金属板部は、前記振動センサーと接着されている。
【0073】
また本発明は、前記振動センサー48個の背面側には、これらを4等分する中央部の3箇所にエアーパッカー部を備えており、弾性体のメスネジ付金属突起部を一定圧力(0.15MPa〜0.20MPa)で押し込むことができる生ゴムチューブ製のボーリング孔壁圧着部が固定装置として保護体の中に配置されている。
【0074】
また本発明は、前記保護体は、第1保護体と、第2保護体とを備えており、第1保護体は、前記振動センサーと固定装置の一体に対する金属製のハウジング部を形成しており、第2保護体は、この第1保護体の全体を覆う生ゴムチューブ製のハウジングカバー部となっており、前記保護体は、前記振動センサーに直接的に接触しないように成形されている。
【0075】
また本発明は、前記収録器は、前記振動センサー48個からの出力信号を一括検出し、同時に最大10μSec(マイクロセカンド)のサンプリング間隔で最大40mSec(ミリセカンド)の記録長でパソコン(PC)の可視画像モニターを確認しながらの収録としており、そのデータ収録の形式は、ノーマルとプリトリガの2種類の仕方が用意されており、ノーマル形式は、トリガが発生すると同時にサンプリングを開始して、データが収録されるようになっており、一方のプリトリガ形式は、起動と同時にサンプリングを開始して、トリガが発生すると、トリガ発生以前からのデータが収録されるようになっており、それぞれの形式のデータ収録容量は、振動センサー1成分当たり、最大4096個のデジタルデータとなっており、様々な出力振幅を持つ前置増幅器との接合ができるようになっており、チャンネル毎にアナログ/デジタル信号変換器(A/D変換器)を介して信号処理を行い、デジタルデータをパソコン(PC)のハードディスク(HDD)に保存するようになっており、かつパソコン(PC)の可視画像モニターにより収録データ波形の確認が可能となっている。
【0076】
また本発明は、原位置で構造物基礎部の概略的な深度が判別することができる収録データの管理用の走時処理ツールソフトを備えている。
【0077】
また、前記高周波振動とは、地上部に露出する構造物をハンマー打撃する人工震源で起される高い周波数成分を前記ゾンデ部の前記振動センサー48個で検出される振動である。この振動は、既設地下構造物等の基礎部に近接するボーリング孔内に固定設置したゾンデ部等の前記高周波振動検出装置を利用して、収録した波形記録を原位置で簡単に弾性波速度を求め、既設地下構造物基礎部の深度を測定する。
【0078】
なお、本発明は、
1. 高周波振動を検出する複数の振動センサーを有するゾンデ部と、前記複数の振動センサーによる検出結果を収録する収録部と、前記複数の振動センサーのそれぞれと前記収録部とを接続して前記検出結果を前記収録部に伝送する出力信号ケーブルと、を備えた高周波振動検出装置であって、
前記ゾンデ部は、前記複数の振動センサーを直線上に配置して成り、
前記複数の振動センサーのそれぞれと隣接する振動センサーとの間、および前記複数の振動センサーのそれぞれと前記出力信号ケーブルとの間に、柔軟な弾性体を配置して、前記ゾンデ部のハウジングに前記振動センサーが直接的に接触しないようにした、
ことを特徴とする高周波振動検出装置、としたので、
既設地下構造物等の基礎部の深度測定を簡易に高精度で行うことができる高周波振動検出装置を提供することができる。
また本発明は、
2. 1.に記載の高周波振動検出装置であって、
前記ゾンデ部はボーリング孔に挿入されるものであり、
前記振動センサーは、前記ボーリング孔の側壁に接する金属突起部を介して前記ボーリング孔周辺の振動を検出する、
ことを特徴とする高周波振動検出装置、とした。
また本発明は、
3. 2.に記載の高周波振動検出装置であって、
前記ゾンデ部は、前記金属突起部の背面側にエアーパッカーを有し、
前記エアーパッカーにエアーを供給することで該エアーパッカーが膨らんで前記金属突起部を前記ボーリング孔の側壁に圧着させる、
ことを特徴とする高周波振動検出装置、とした。
【0079】
本発明の態様は、上述した個々の実施例に限定されるものではなく、個々の実施例の各要素のいかなる組合せも本発明に含み、また、当業者が想到しうる種々の変形も含むものであり、本発明の効果も上述した内容に限定されない。すなわち、特許請求の範囲に規定された内容およびその均等物から導き出される本発明の概念的な思想と趣旨を逸脱しない範囲で種々の追加、変更および部分的削除が可能である。
【産業上の利用可能性】
【0080】
本発明に係る高周波振動検出装置は、地下構造物等の基礎部の深度を求める際に用いることができるのはもちろんであるが、これ以外にも、振動の伝搬時間の差を利用して位置検出を行うあらゆる装置に適用可能である。
【符号の説明】
【0081】
1:振動センサー(動コイル型固有周波数:28Hz)
2:ガラス繊維シート部(2重ガラス繊維製)
3:シリコンゴム成型部
4:オスネジ付金属板部(SUS製)
5:メスネジ付金属突起部(SUS製)
6:振動センサー部、シリコン成型部のハウジング部(SUS製)
7:孔壁圧着部のハウジング部(SUS製)
8:ハウジングカバー部(生ゴム製φ50mm,t1.0mm)
9:エアー管部(アルミ製φ16mm)
10:エアー吹出し口
11:孔壁圧着部(生ゴム製φ16mm,t1.0mm)
12:孔壁圧着部(生ゴム製φ16mm,t1.0mm)
13:エアー充填状態(0.15〜0.20Mpa)
14:ハウジング固定ネジ(M3)
15:出力信号ケーブル(φ6mm)
16:エアーホース
17:エアーパッカー
18:収録器(A/D変換器、増幅器、減衰器)
19:可視画像出力モニター
20:エアーポンプ
21:打撃ハンマー
22:トリガ線
100:ゾンデ部
100a、100b:ゾンデ部の端部
V1:構造物の弾性波平均速度(m/sec)
V2:上層地盤の弾性波平均速度(m/sec)
V3:下層地盤の弾性波平均速度(m/sec)
A:ボーリング孔と構造物近接距離(m)
Z1:構造物上端深度(m)
Z2:構造物下端深度(m)
Z1’:上端変曲点深度(m)
Z2’:下端変曲点深度(m)
X1:上端屈折深度(m)
X2:下端屈折深度(m)
θ1:上端屈折角(度)
θ2:下端屈折角(度)
L:ボーリング孔の深さ(m)
φ:ボーリング孔の掘削口径(mm)
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9