(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
前記複数の前記角部のうち、前記すり板片における前記鉄道用車両の走行方向一方側であって前記幅方向他方側の前記角部、及び前記すり板片における前記走行方向他方側であって前記幅方向一方側の前記角部に形成され、前記摺接面部から前記側面部に向かうとともに、前記走行方向に対して傾斜する平面状の面取り部を有する請求項3に記載のすり板。
前記摺接面部上における前記曲面部の始点は、平面視で前記トロリ線の延在方向に直交する方向における寸法よりも大きい距離だけ前記側面部から離間した位置に形成される請求項1から4のいずれか一項に記載のすり板。
前記すり板支持部に設けられ、前記トロリ線との摺接に伴って前記すり板片を上下方向に揺動可能に支持する弾性部材を備える請求項1から5のいずれか一項に記載のすり板。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、上記特許文献1に記載された集電舟では、上記の面取り部の稜線部が依然として角部を形成することから、この角部が接触することに起因してトロリ線にキズが生じる可能性がある。トロリ線にキズが生じた場合、すり板との接触面積がわずかながらも減少することから集電性能に影響を与えてしまう。さらに、光学装置によるトロリ線表面の検査を行う場合に、検査光がキズによって乱反射されるため、検査精度の劣化にもつながってしまう。
【0006】
本発明は、上記の事情を考慮してなされたものであり、トロリ線にキズを与えにくいすり板、パンタグラフを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上記課題を解決するため、本発明は以下の手段を採用している。
本発明の一態様に係るすり板は、鉄道用車両の走行に伴ってトロリ線に摺接することで該トロリ線から集電する集電装置のすり板であって、前記鉄道用車両の幅方向に配列された複数のすり板片と、前記複数のすり板片を支持するすり板支持部と、を備え、前記すり板片は、前記トロリ線の下部表面に摺接する摺接面部と、前記摺接面部に交差する方向に延びる側面部と、前記摺接面部の端縁の少なくとも一部に連続して形成されるとともに、前記摺接面部から前記側面部に向かって湾曲する曲面部と、を有する。
【0008】
上述のような構成によれば、摺接面部に連続して曲面部が形成されていることにより、鉄道用車両の走行に伴ってトロリ線がすり板上で変位する際に、すり板片の稜線によってトロリ線にキズが付く可能性を低減することができる。
【0009】
本発明の一態様に係るすり板では、前記すり板片は、平面視で角部を有し、前記曲面部は、前記角部のみに形成されてもよい。
【0010】
上述のような構成によれば、トロリ線との接触が集中する角部のみに曲面部が形成されることから、すり板片の全ての端縁に曲面部を形成した場合に比べて、製造に要する時間、コストを削減することができる。
【0011】
本発明の一態様に係るすり板では、前記すり板片は、平面視で複数の前記角部を有する矩形をなし、前記曲面部は、前記すり板片における前記鉄道用車両の走行方向一方側であって前記幅方向一方側の前記角部と、前記すり板片における前記走行方向他方側であって前記幅方向他方側の前記角部とに設けられてもよい。
【0012】
上述のような構成によれば、矩形のすり板片における対角線上に位置する一対の角部にそれぞれ曲面部が形成されるため、鉄道用車両の走行方向を区別することなくすり板片を取り付けることができる。
【0013】
本発明の一態様に係るすり板では、前記複数の前記角部のうち、前記すり板片における前記鉄道用車両の走行方向一方側であって前記幅方向他方側の前記角部、及び前記すり板片における前記走行方向他方側であって前記幅方向一方側の前記角部に形成され、前記摺接面部から前記側面部に向かうとともに、前記走行方向に対して傾斜する平面状の面取り部を有してもよい。
【0014】
上述のような構成によれば、矩形のすり板片における対角線上に位置する一対の角部にそれぞれ面取り部が形成されるため、鉄道用車両の走行方向を区別することなくすり板片を取り付けることができる。
加えて、このような構成によれば、すり板片の全ての角部に曲面部を設けた場合に比べて、製造コストを低減することができる。
【0015】
本発明の一態様に係るすり板では、前記摺接面部上における前記曲面部の始点は、平面視で前記トロリ線の延在方向に直交する方向における寸法よりも大きい距離だけ前記側面部から離間した位置に形成されてもよい。
【0016】
上述のような構成によれば、鉄道用車両の走行に際して、すり板片同士の間の間隙にトロリ線が落ち込んでしまう可能性を低減することができる。
【0017】
本発明の一態様に係るすり板は、前記すり板支持部に設けられ、前記トロリ線との摺接に伴って前記すり板片を上下方向に揺動可能に支持する弾性部材を備えてもよい。
【0018】
上述のような構成によれば、鉄道用車両の走行に伴うトロリ線との摺接に伴って、すり板片が揺動する。これにより、摺接面部とトロリ線の摺接状態を良好に維持することができる。
【0019】
本発明の一態様に係るパンタグラフは、上記いずれか一の態様に係るすり板と、前記すり板を支持するアーム部と、前記アーム部を支持する台枠と、を備える。
【0020】
上述のような構成によれば、トロリ線にキズを与える可能性が低減されたすり板を備えるパンタグラフを提供することができる。
【発明の効果】
【0021】
本発明に係るすり板、パンタグラフ、及び鉄道用車両によれば、トロリ線のキズが生じる可能性を低減することができる。
【発明を実施するための形態】
【0023】
以下、本発明の実施形態について図面を参照して説明する。
図1、
図2に示すように、本実施形態に係るパンタグラフ3は、軌道(レール)上を走行する鉄道用車両1に適用される。より詳細には、この鉄道用車両1は、貨客を搭載可能な箱状の車両本体2と、この車両本体2の天井部21に設けられ、トロリ線90から集電するパンタグラフ3と、を備えている。なお、詳しくは図示しないが、車両本体2には、パンタグラフ3によって集電された負荷電流によって車両本体2を走行させる駆動部及び台車等が設けられる。
【0024】
図1に示すように、トロリ線90は鉄道用車両1の軌道に沿っておおむね等間隔に配置された複数の架線柱92によって空中に架設されている。互いに隣り合う一対の架線柱92の間(セクションS)では、トロリ線90は軌道の延在方向(鉄道用車両1の走行方向)に対して、平面視でわずかに傾斜した状態で張られている。トロリ線90の単位長さ当たりの水平方向における傾斜量を偏位と呼ぶ。一例として、セクションSの距離が50mである場合、トロリ線90の偏位は50cm程度とされる。このような水平方向(左右方向)への偏位を隣り合うセクションSごとに交互に設けることで、トロリ線90は全体として平面視ジグザグ状をなしている。
【0025】
以上のように架設されたトロリ線90に対して、鉄道用車両1のパンタグラフ3の一部が摺接することで集電が行われる。特に、トロリ線90が上記のように走行方向に対して傾斜して架設されていることから、該トロリ線90とパンタグラフ3(すり板7)との接触部位は鉄道用車両1の走行に伴って変化する。これにより、パンタグラフ3に局所的な摩耗が生じる可能性が低減されている。
【0026】
図2、
図3に示すように、パンタグラフ3は、トロリ線90に当接する舟体4と、この舟体4を上下方向に揺動可能に支持するアーム部5と、碍子61を介して鉄道用車両1の天井部21でこのアーム部5を支持する台枠6と、を備えている。碍子61は、台枠6と天井部21との間を絶縁するために設けられる絶縁性の部材である。
【0027】
舟体4は、トロリ線90の下部表面91に摺接するすり板7と、このすり板7を下方から支持するすり板支持部9と、を有している。すり板7は、鉄道用車両1の幅方向に配列された複数(本実施形態では8個)のすり板片8と、個々のすり板片8とすり板支持部9とを互いに接続する弾性部材10(
図7参照)と、を有している。
【0028】
互いに隣り合う2つのすり板片8同士の間には間隙が形成されている。すなわち、本実施形態では、8個のすり板片8によって7個の間隙が形成される。これら間隙の幅方向における寸法は互いに等しく設定される。具体的には、この寸法は2〜3cm程度とされる。
【0029】
すり板片8の下部(後述する下面部82)と、すり板支持部9との間には、上下方向に付勢された弾性部材10が取り付けられる。弾性部材10の具体例としてはコイルバネ等が好適に用いられる。この弾性部材10の弾性復元力により、すり板片8はすり板支持部9に対して上下方向に揺動可能とされる。これにより、例えばトロリ線90における上下方向のわずかな変位が生じた場合、個々のすり板片8はこのトロリ線90の変位に追従する。
【0030】
さらに、個々のすり板片8は、
図4から
図6に示すように、平面視で矩形に形成されている。すり板片8にはトロリ線90に摺動した状態で大電流が流されることから、導電性に加えて耐摩耗性、及び機械的強度が特に要求される。このような材料としては、例えば鉄系の金属を主成分とする焼結合金などが好適に用いられる。
【0031】
本実施形態におけるすり板片8は、平面視で平行四辺形の板状部材である。すり板片8の厚さ方向(鉄道用車両1に設置された状態における上下方向)を向く両面のうち、一方側の面は、トロリ線90の下部表面91に摺接する摺接面部81とされている。この摺接面部81に対して上下方向の反対側に位置する面は下面部82とされている。摺接面部81はトロリ線90との円滑な摺接と、良好な電気伝導性とを確保するために平滑に形成されている。摺接面部81と下面部82との間の面(すなわち、これら一対の面を上下方向に接続する面)は側面部83とされている。
【0032】
上記の摺接面部81の外形をなす4辺のうち、鉄道用車両1の幅方向を向く2つの長辺部L1は、幅方向に直交する方向を向く残余の2辺(短辺部L2)に比べて大きな寸法を有している。さらに、上記の各辺によって形成される4つの角部のうち、鋭角をなす角部は鋭角部θ1とされている。一方で、鈍角をなす角部は鈍角部θ2とされている。
【0033】
鋭角部θ1を含む2つの領域(すなわち、すり板片8における鉄道用車両1の走行方向一方側であって幅方向一方側の角部を含む領域と、走行方向他方側であって幅方向他方側の角部を含む領域)には、それぞれ曲面部Xが形成されている。なお、これら2つの曲面部Xは互いに同等の寸法と形状を有することから、以下では代表的に一方の曲面部Xについてのみ説明する。
【0034】
図4から
図6に示すように、曲面部Xはすり板片8の厚さ方向の一方側から他方側に向かって湾曲する曲面である。より詳細には、曲面部Xは摺接面部81上で鋭角部θ1を囲むようにして短辺部L2と長辺部L1との間に延びる直線状の湾曲開始線X1を始点として形成され、湾曲開始線X1から上記幅方向の一方側から他方側に向かうにしたがって、厚さ方向の一方側から他方側に円弧状に湾曲している。言い換えると、この曲面部Xは摺接面部81から側面部83に向かって湾曲する曲面をなしている。
【0035】
図5に示すように、短辺部L2に近接する領域(
図4のV−V線に示す領域)では、曲面部Xの断面はおおむね90°の中心角をなす。一方で、この短辺部L2から離間した領域(
図4のVI−VI線に示す領域)に向かうに従って、曲面部Xの断面の中心角は減少する(
図6)。
【0036】
さらに、曲面部Xの幅方向における両端縁のうち、湾曲開始線X1と反対側の端縁は湾曲終息線X2とされる。上述のように曲面部Xの断面をなす円弧の中心角は、短辺部L2から幅方向に離間するにしたがって次第に減少することから、湾曲終息線X2は下面部82側から摺接面部81側に向かって斜めに延びる直線状をなしている。
【0037】
また、
図4に示すように、本実施形態に係るすり板片8では、短辺部L2上における湾曲開始線X1の端部と、鋭角部θ1との離間距離Lは、トロリ線90の直径Dよりも大きく設定されている。
【0038】
なお、本実施形態では、曲面部Xの断面は一定の曲率を有している。しかしながら、曲面部Xの態様はこれに限定されるものではなく、例えば上記の湾曲開始線X1から離間するにしたがって次第に曲率が変化する曲面であってもよい。
【0039】
上記のように鋭角部θ1に曲面部Xが形成される一方で、摺接面部81の鈍角部θ2にはそれぞれ面取り部Yが形成されている。より具体的には、面取り部Yは、すり板片8の角部のうち、すり板片8における鉄道用車両1の走行方向一方側であって幅方向他方側の角部、及びすり板片8における走行方向他方側であって幅方向一方側の角部にそれぞれ設けられている。
【0040】
面取り部Yは、
図4と
図5に示すように、摺接面部81から側面部83に向かうにしたがって、すり板片8の厚さ方向一方側から他方側に傾斜する平面である。言い換えれば、面取り部Yは、摺接面部81から側面部83に向かうとともに、走行方向に対して傾斜する平面状をなしている。
【0041】
曲面部Xと同様に、面取り部Yも摺接面部81上で鈍角部θ2を囲むようにして短辺部L2と長辺部L1との間に延びる直線状の面取り部開始線Y1を始点として形成される。この面取り部開始線Y1に対して幅方向における反対側に位置する端縁は面取り部終息線Y2とされる。
【0042】
上記のような曲面部X、及び面取り部Yは、それぞれ摺接面部81の対角線上に設けられる。さらに、すり板片8はそれぞれの長辺部L1を幅方向から対向させるようにしてすり板支持部9上で組上げられる。これにより、隣接するすり板片8同士のうち、一方側のすり板片8の曲面部Xは、他方のすり板片8の面取り部Yと隣接する。
【0043】
続いて、本実施形態に係るすり板7、及びパンタグラフ3の作用効果について
図7と
図8を主に参照して説明する。
図7は、上記のパンタグラフ3を備える鉄道用車両1が軌道上を走行する際におけるトロリ線90と、すり板7との接触状態の変化を示す図である。なお、同図では互いに隣り合う2つのすり板片8の挙動のみを代表的に示す。これら2つのすり板片8のうち、走行方向の左側に位置するすり板片8を第一すり板片8Aと呼び、この第一すり板片8Aに対して走行方向の右側に位置するすり板片8を第二すり板片8Bと呼ぶ。
【0044】
図1に示すように、鉄道用車両1が進行するにつれて、すり板7上におけるトロリ線90との接触部位は徐々に変位する。これに伴って第一すり板片8A、及び第二すり板片8Bは
図7の(A)から(B)、(C)を経て(D)に至るまでの一連の挙動を示す。
【0045】
まず、
図7(A)の状態では、第一すり板片8Aにトロリ線90が摺接している。このとき、トロリ線90の張力によって第一すり板片8Aには下方に向かう押圧力が付加される。さらに、第一すり板片8Aは下方から弾性部材10によって支持されている。すなわち、トロリ線90による押圧力と、弾性部材10による弾性復元力とが拮抗した状態で、第一すり板片8Aは下方にわずかに変位している。
【0046】
上記の状態から、鉄道用車両1が進行することでトロリ線90は第一すり板片8Aの摺接面部81上を走行方向の右側に向かって移動して、
図7(B)に示す状態となる。同図に示す状態では、トロリ線90が第一すり板片8Aと第二すり板片8Bとの間に位置している。より詳細には、トロリ線90は第一すり板片8Aの面取り部Y上を通過した後、隣接する第二すり板片8Bの曲面部Xに対して走行方向の左側から接触する。このとき、第二すり板片8Bには上記の押圧力が付加されていないことから、第一すり板片8Aよりも上下方向における上側に位置している。
【0047】
なおも鉄道用車両1が進行することで、トロリ線90は走行方向の右側に向かって変位する。これにより、トロリ線90は第二すり板片8Bにおける曲面部Xの円弧に追従しながら、第二すり板片8Bの摺接面部81上に向かう。すなわち、トロリ線90が第二すり板片8Bの摺接面部81上に向かって徐々に乗り上がる。このとき、第二すり板片8Bには、トロリ線90の張力による下方への押圧力が付加されるとともに、第一すり板片8Aには弾性部材10による上方への弾性復元力が付加される。これにより、第一すり板片8Aは上方に変位することで初期位置に復元され、第二すり板片8Bは下方にわずかに変位する(
図7(C))。
【0048】
続いて、トロリ線90は第二すり板片8Bの摺接面部81上に移動する。以降、鉄道用車両1の進行中にわたって、
図7(A)から同図(D)に示す遷移が連続的に繰り返される。
【0049】
以上で説明したように、本実施形態に係るすり板7、及びパンタグラフ3では、曲面部Xが形成されていることにより、鉄道用車両1の走行に伴ってトロリ線90がすり板7上で変位する際に、トロリ線90にキズが付く可能性を低減することができる。一方で、曲面部Xが形成されず、摺接面部81と側面部83とが直線的な稜線を形成した場合、この稜線によってトロリ線90の下部表面91にキズが付いてしまう可能性がある。
【0050】
さらに、
図8に示すように、トロリ線90が曲面部X上を通過する際、トロリ線90と曲面部Xとの接点Pは、該トロリ線90の下部表面91の形状に沿って次第に上方に移動する。すなわち、上記の接点Pがトロリ線90の表面上の一点で維持されないことから、トロリ線90における局所的な応力集中と、これに起因する偏摩耗やキズを抑制することができる。
【0051】
加えて、矩形(平行四辺形)のすり板片8における対角線上に位置する一対の角部にそれぞれ曲面部Xが形成されるため、鉄道用車両1の走行方向を区別することなくすり板片8を取り付けることができる。
【0052】
一方で、すり板片8における対角線上に位置する一対の角部にそれぞれ面取り部Yが形成されるため、鉄道用車両1の走行方向を区別することなくすり板片8を取り付けることができるとともに、すり板片の全ての角部に曲面部を設けた場合に比べて、製造コストを低減することができる。
【0053】
加えて、上記のすり板片8では、4つの角部のうちの鋭角部θ1のみに曲面部Xが形成され、残余の角部(鈍角部θ2)には、平面状の面取り部Yが形成される。このような構成によれば、全ての角部に曲面部Xを形成する場合に比べて、製造に要する時間・コストを削減することができる。
【0054】
特に、一様な曲面形状を形成するに当たっては、すり板片8ごとに切削・研磨を繰り返す必要があることから、上記のように曲面部Xを鋭角部θ1のみに形成することによる製造時間・コストへの影響は大きい。加えて、通勤路線に使用される鉄道用車両1では、日々の運行に伴って1〜数日間隔ですり板片8を点検・交換する必要があることから、上記のように製造加工の容易さを確保することで、さらに安定的かつ低廉にメンテナンスを行うことが可能となる。
【0055】
さらに、上記のすり板7では、曲面部Xの始点(湾曲開始線X1)は、摺接面部81上で側面部83からトロリ線90の幅寸法よりも大きい距離だけ離間した位置に形成されている。
【0056】
このような構成によれば、互いに隣り合うすり板片8同士の間の間隙にトロリ線90が落ち込んでしまう可能性を低減することができる。特に、鉄道用車両1が比較的に低速で進行する場合に、上記の間隙にトロリ線90が挟まる可能性が懸念されるが、各部寸法の相対関係を上記のように設定することで、このような可能性を低減することができる。
【0057】
さらに、上述のような構成によれば、弾性部材10が各すり板片8とすり板支持部9との間に設けられていることから、鉄道用車両1の走行に伴うトロリ線90との摺接に伴って、すり板片8が揺動する。これにより、摺接面部81とトロリ線90の摺接状態を良好に維持することができる。
【0058】
以上、本発明の実施形態について図面を参照して説明した。しかしながら、上記の説明は一例に過ぎず、本発明の要旨を逸脱しない限りにおいて種々の変更を施すことが可能でる。
【0059】
例えば、上記の実施形態では、曲面部Xの断面円弧の曲率は、その延在領域の全体にわたって一定であるものとした。しかしながら、この断面円弧の曲率は必ずしも一定である必要はなく、例えば側面部83から摺接面部81上に向かうにしたがって(すなわち、幅方向の一方側から他方側に向かうにしたがって)次第に増加、又は減少するように構成されてもよい。特に、曲率が次第に増加するように構成した場合、
図7(B)から(C)にかけての遷移に際して、第一すり板片8Aから第二すり板片8Bへのトロリ線90の乗り移りをさらに円滑にすることができる。これにより、すり板片8がトロリ線90に与える応力の集中と、偏摩耗やキズの発生とをより大きく低減することができる。
【0060】
さらに、上記実施形態では、摺接面部81から側面部83にかけての全体が湾曲する曲面部Xとされる構成について説明した。しかしながら、曲面部Xと側面部83との間に、他の平面部を設けることも可能である。
加えて、曲面部Xと摺接面部81とは互いに連続的に接続される一方で、曲面Xの湾曲終息線X2と側面部83との間は必ずしも連続的に接続されていなくてよく、曲面Xと側面部83とが、湾曲終息線X2に沿って稜線を形成していてもよい。
このような構成によれば、曲面部Xを形成するに当たって、切削・研磨を要する領域の面積が低減されるため、加工を容易に行うことができる。これにより、製造コストを低減することができる。
【0061】
上記実施形態では、個々のすり板片8は平面視で平行四辺形をなしている例について説明した。しかしながら、すり板片8は必ずしも平行四辺形である必要はなく、必要に応じて台形や、長方形、菱形等に形成されていてもよい。
【0062】
また、上記実施形態では、すり板7が8個のすり板片8を鉄道用車両1の幅方向に配列することで構成される例について説明した。しかしながら、すり板片8の数(すなわち、すり板7の分割数)は上記に限定されず、鉄道用車両1の寸法体格に応じて適宜に設定されてよい。
【0063】
加えて、
図2及びこれに伴う上記説明では、パンタグラフ3としてシングルアーム型の構成を例に挙げた。しかしながら、パンタグラフ3の態様はシングルアーム型に限定されず、菱形パンタグラフや下枠交差型パンタグラフ、又は路面電車等に多用されるビューゲル等の他の形式の集電装置であっても、上記実施形態で説明した構成を適用することが可能である。いずれの場合であっても、上記した作用効果を得ることができる。
【0064】
また、上記実施形態では、トロリ線90の断面形状がおおむね円形である例について説明した。しかしながら、上記パンタグラフ3、及びすり板7が適用可能なトロリ線90の態様は上記に限定されない。他の態様として具体的には、鋼線の側部(鉄道用車両1の幅方向を向く面)に溝が形成された溝付きトロリ線が挙げられる。この場合であっても、上述のように幅方向におけるトロリ線の寸法を基準として湾曲開始線X1の位置や曲面部Xの面積等を決定することができる。