(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
質量を有する移動部と、前記移動部を所定の直線方向に移動可能に支持する支持部と、前記支持部に固定されている固定部と、前記固定部に対して傾き可変に連結されており、前記移動部の所定の位置に接して前記移動部の前記所定の直線方向への移動を抑制する抑制部と、を備え、前記抑制部が前記移動部の前記所定の直線方向への移動を抑制する力の最大の大きさが所定の大きさであり、前記移動部が前記抑制部から離れると、前記抑制部は自らの傾きを変化させる、地震検出装置を、前記支持部を水平に対して傾けて設置する設置ステップと、
前記移動部が前記移動部自らに作用する重力によって前記所定の直線方向へ移動する、前記支持部の水平に対する最小の傾き角度を求める角度測定ステップと、
前記角度測定ステップで測定した角度に基づいて、前記抑制部が前記移動部の前記所定の直線方向への移動を抑制する力の最大の大きさを求める力算出ステップと、
を含む力算出方法。
質量を有する移動部と、前記移動部を所定の直線方向に移動可能に支持する支持部と、前記支持部に固定されている固定部と、前記固定部に対して傾き可変に連結されており、前記移動部の所定の位置に接して前記移動部の前記所定の直線方向への移動を抑制する抑制部と、を備え、前記抑制部が前記移動部の前記所定の直線方向への移動を抑制する力の最大の大きさが所定の大きさであり、前記移動部が前記抑制部から離れると、前記抑制部は自らの傾きを変化させる、地震検出装置を、前記支持部を水平に対して傾けて設置する設置ステップと、
前記移動部が前記移動部自らに作用する重力によって前記所定の直線方向へ移動する、前記支持部の水平に対する最小の傾き角度を求める角度測定ステップと、
前記角度測定ステップで測定した角度に基づいて、前記抑制部が前記移動部の前記所定の直線方向への移動を抑制する力の最大の大きさを求める力算出ステップと、
前記所定の直線方向を水平方向に合わせて前記地震検出装置を設置した場合に、前記所定の直線方向における前記移動部の加速度が所定の大きさ以上になったときに前記移動部が前記所定の直線方向の移動を行うようにするための前記移動部の質量を、前記力算出ステップで算出した前記力の最大の大きさに基づいて算出する質量算出ステップと、
を含む質量算出方法。
【背景技術】
【0002】
地震後に鉄道の運行を再開する際、構造物や軌道に被害が生じていないことを確認する作業が行われている。具体的には、沿線に配置された地震計のデータ等から、強い揺れが生じた地域を割り出し、割り出した地域について構造物や軌道に被害が生じていないことを確認する作業が行われている。
ここで、地震計は、例えば20キロメートル(km)間隔などある程度の間隔をあけて設置されており、地震計が設置されていない位置の揺れの大きさについては、地震計の設置されている位置における揺れの大きさから推定するといった処理が行われている。
この場合、地震計の設置されていない位置の揺れの大きさを推定する手間がかかるとともに推定精度が低い。地震計の設置数を増やしてかかる手間を軽減させ精度を向上させるために、地震計の製造単価を低減させることが望まれる。
【0003】
ここで、特許文献1には、台座の上部に各震度に相当する丸穴径の丸穴があけられており、各丸穴の上に球が乗せられている簡易地震計が示されている。この簡易地震計は、震度に応じて球が落ちることで震度を示す。
特許文献1によれば、この簡易地震計は、高価なセンサーや信号処理器を必要とせず簡便・安価・正確であるとされている。
【発明を実施するための形態】
【0013】
以下、本発明の実施形態を説明するが、以下の実施形態は請求の範囲にかかる発明を限定するものではない。また、実施形態の中で説明されている特徴の組み合わせの全てが発明の解決手段に必須であるとは限らない。
図1は、本発明の一実施形態における地震検出装置が地震未検出を表示している場合の、当該地震検出装置の外観を示す概略外形図である。同図に示すように、地震検出装置1は、ガイドレール100と、移動部200と、表示装置300とを備える。移動部200は、スライダ201と、錘202と、磁性体203とを備える。表示装置300は、固定部301と、ヒンジ302と、回転板303と、永久磁石304と、表示板305とを備える。
地震検出装置1が地震未検出の状態では、磁性体203が永久磁石304に吸着されており、これによって移動部200が表示装置300に固定されている。
【0014】
地震検出装置1は、所定の大きさ以上の加速度を検出する装置である。特に、地震検出装置1は、地震の際に所定の大きさ以上の加速度を検出することで、所定の大きさ以上の地震を検出する。以下では、地震検出装置1が所定の大きさ以上の地震を検出することを、地震検出装置1が地震を検出すると表記する。
ガイドレール100は、直線状のレールである。ガイドレール100は、ガイドレール100自らに固定されている固定部301を支持する。また、ガイドレール100は、スライダ201をガイドレール100の長手方向に移動可能に支持する。ガイドレール100は、指示部の例に該当する。ガイドレール100は支持部の例に該当し、ガイドレール100の長手方向は所定の直線方向の例に該当する。
【0015】
移動部200は、地震検出装置1が地震未検出を表示している状態では、上記のように表示装置300に固定されている。一方、地震の際には移動部200の質量によって移動部200に水平荷重が生じる。磁性体203に作用している永久磁石304の吸着力(磁力)に対して逆向きに、当該吸着力の大きさよりも大きい加速度の水平荷重が生じた場合、移動部200は表示装置300から離れていく。
【0016】
スライダ201は、上記のようにガイドレール100の長手方向に移動可能に、ガイドレール100に支持されている。
錘202は、スライダ201の上部に設けられている。錘202の質量を調整することで移動部200の質量を調整することができる。移動部200の質量を調整することで、地震検出装置1が検出する加速度の大きさを調整することができる。
磁性体203は、地震検出装置1が地震未検出を表示している状態では、上記のように永久磁石304に吸着されている。一方、磁性体203に作用している永久磁石304の吸着力(磁力)に対して逆向きに、当該吸着力の大きさよりも大きい加速度の水平荷重が生じた場合、磁性体203は、永久磁石304から離れる。
【0017】
表示装置300は、地震検出装置1が地震を検出したか否か(所定の大きさ以上の加速度を検出したか否か)を、表示板305の姿勢によって表示する。ここでいう表示板305の姿勢は、ガイドレール100に対する表示板305の角度である。
固定部301は、ガイドレール100に固定されている。
ヒンジ302は、回転板303が固定部301に対して相対的に回転可能となるように、固定部301と回転板303とを連結している。
【0018】
回転板303は、上記のように、ヒンジ302を介して固定部301に連結されている。
また、回転板303には永久磁石304が設置されている。上記のように磁性体203が永久磁石304に吸着されており、地震の際に移動部200が表示装置300から離れていく場合、回転板303は永久磁石304を介して移動部200に引っ張られてガイドレール100に向かって倒れるように回転する。回転板303と永久磁石304との組み合わせは抑制部の例に該当し、永久磁石304が磁性体203を吸着することで、移動部200のガイドレール100の長手方向への移動を抑制する。
さらに、回転板303には、表示板305が設置されている。回転板303が固定部301に対して相対的に回転することで、表示板305の姿勢が変化する。地震検出装置1が地震未検出の状態では、表示板305は、ガイドレール100に対して平行になっている。
【0019】
図2は、地震検出装置1が地震検出を表示している場合の、当該地震検出装置1の外観を示す概略外形図である。
上記のように、磁性体203に作用している永久磁石304の吸着力(磁力)に対して逆向きに、当該吸着力の大きさよりも大きい加速度の水平荷重が生じた場合、移動部200は、表示装置300から離れる。その際、表示装置300が移動部200に引っ張られ、回転板303はガイドレール100に向かって倒れて、おおよそガイドレール100に平行になる。
【0020】
回転板303がガイドレール100に向かって倒れると、永久磁石304がガイドレール100に接する。ガイドレール100のうち永久磁石304と接する部分には磁性体が設けられており、永久磁石304はガイドレール100に吸着する。
移動部200が表示装置300から離れた後、表示装置300の方へ戻ってきた場合でも、永久磁石304とガイドレール100との間の吸着力(磁力)と、回転板303および表示板305の重力と、表示装置300の形状とにより、地震検出装置1は、地震未検出を表示する状態(
図1)には戻らない。
【0021】
具体的には、永久磁石304とガイドレール100との間の吸着力(磁力)、回転板303および表示板305の重力は、いずれも下向きに作用する。この力は、移動部200が回転板303を立たせる(
図2の状態から
図1の状態へ戻す)のを阻止する力として作用する。
また、
図1および
図2に示すように、回転板303と表示板305とが直角をなす形状となっている。このため、仮に、移動部200が表示板305を押して回転板303が多少し立った(回転板303がガイドレール100におおよそ平行な状態から、垂直な状態に少し近づいた)場合、表示板305の移動部200に対する向きが変化し、また、回転板303の固定部301に対する角度が変化する。この向きおよび角度の変化により、移動部200が表示板305を押す力に対して表示板305が移動部200を押し返す力(応力)が生じるようになる。移動部200が表示板305を押す力と、表示板305が移動部200を押し返す力とが均衡する位置以上には、表示板305は立たない。
【0022】
このようにして、地震検出装置1が地震検出を表示している状態(
図2)では、地震検出装置1が地震未検出を表示している場合(
図1)とは異なり、表示板305が立った状態(ガイドレール100に対しておおよそ垂直な状態)になっている。地震検出装置1のユーザ(例えば、地震検出装置1が設置されている線路区間を保守する鉄道保守作業員)は、表示板305が倒れた状態(ガイドレール100に対して平行な状態)か、表示板305が立った状態(ガイドレール100に対しておおよそ垂直な状態)かを確認することで、所定の大きさ以上の地震の有無を判定することができる。
【0023】
なお、地震検出装置1は、ガイドレール100の長手方向の水平荷重を検出するが、ガイドレール100の長手方向に直角な方向の水平荷重は検出しない。すなわち、地震検出装置1は、ガイドレール100の長手方向の地震の揺れを検出するが、ガイドレール100の長手方向と直角な方向の地震の揺れは検出しない。
これに対し、複数の地震検出装置1を互いに異なる方向(2つの場合は直角が好ましい)に配置しておくことで、これら複数の地震検出装置1の組み合わせにて様々な方向の地震の揺れを検出することができる。例えば、地震検出装置1のユーザは、ガイドレール100の長手方向を東西に向けて、地震検出装置1を設置し、ガイドレール100の長手方向を南北に向けて、もう1つの地震検出装置1を設置する。そして、ユーザは、2つの地震検出装置1のうちいずれか1つでも地震検出を表示している状態になっていれば、所定の大きさ以上の地震があったと判定する。
【0024】
次に、
図3を参照して、地震検出装置1が検出する加速度の大きさの設定方向について説明する。
図3は、ガイドレール100を水平から傾けた場合に移動部200に生じる力の向きを示す説明図である。同図の例では、ガイドレール100の長手方向が水平方向から角度θだけ傾いている。なお、ガイドレール100は、表示装置300の側よりも移動部200の側の方が下になる向きに傾いている。
【0025】
また、ベクトルB11は移動部200に作用する重力の大きさ及び向きを示し、ベクトルB12及びB13は、ベクトルB11を分解したベクトルを示している。ベクトルB12は、ガイドレール100の長手方向に平行なベクトルであり、ベクトルB13は、ガイドレール100の長手方向に直角なベクトルである。
移動部200に作用する重力(ベクトルB11)は、ガイドレール100の長手方向に平行な成分(ベクトルB12)と、ガイドレール100の長手方向に直角な成分(ベクトルB13)とに分解できる。このうち、ガイドレール100の長手方向に直角な成分は、ガイドレール100からの応力によって打ち消される。
【0026】
また、ガイドレール100の長手方向に平行な成分が、永久磁石304の吸着力以下である場合、移動部200は表示装置300に固定されている。一方、ガイドレール100の長手方向に平行な成分が、永久磁石304の吸着力より大きくなると、移動部200は、表示装置300から離れガイドレール100に沿って滑り落ちるようになる。従って、ガイドレール100の長手方向に平行な成分の大きさを算出することで、地震検出装置1が検出する加速度の大きさを求めることができる。
【0027】
ここで、スライダ201の質量をmとし、錘202の質量をMとし、移動部200が滑り始める角度(移動部200が表示装置300から離れガイドレール100に沿って滑り落ちるようになる最小の角度)をθとする。また、重力加速度をgとする。
すると、永久磁石304の吸着力(磁性体203に作用する磁力)の大きさFは、式(1)のように示される。
【0029】
また、地震検出装置1が検出する加速度の大きさをαとすると、永久磁石304の吸着力(磁性体203に作用する磁力)の大きさFは、式(2)のように示される。
【0031】
式(1)及び式(2)より、地震検出装置1が検出する加速度の大きさαは、式(3)のように示される。
【0033】
なお、ばね秤等を用いて永久磁石304の吸着力の大きさFを測定した場合、地震検出装置1が検出する加速度の大きさαは、式(4)を用いて算出することができる。
【0035】
地震の際、地震検出装置1が所定の大きさαの加速度を検出するよう、永久磁石304の吸着力Fまたは錘202の質量Mを調整する。
例えば、使用する永久磁石304を複数の永久磁石304から選択する場合など、永久磁石304の吸着力Fを調整する場合、永久磁石304の吸着力は式(2)を用いて求められる。
また、地震検出装置1に使用する永久磁石304が決まっており、錘202の質量を調整する場合、錘202の質量は式(5)を用いて算出することができる。
【0037】
図4は、錘202の質量を調整することで地震検出装置1が所定の大きさαの加速度を検出するよう調整する場合の処理手順の例を示すフローチャートである。
同図の処理にて、調整者は、
図3のように、表示装置300の側よりも移動部200の側が下になるようにガイドレール100を水平に対して傾けて、地震検出装置1を設置する(ステップS101)。
そして、調整者は、ガイドレール100の傾きを変えて、移動部200が滑り始める角度(移動部200が表示装置300から離れガイドレール100に沿って滑り落ちるようになる最小の角度)θを求める(ステップS102)。
次に、調整者は、ステップS102で求まった角度θに基づいて、永久磁石304の吸着力Fの大きさを、式(1)を用いて算出する(ステップS103)。ステップS101〜S103の処理は、力算出方法における処理の例に該当する。
そして、調整者は、ステップS103で算出した角度θに基づいて、錘202の質量を、式(5)を用いて算出する(ステップS104)。ステップS101〜S104の処理は、質量算出方法処理の例に該当する。
そして、調整者は、錘202の質量をステップS104で得られた質量にする調整を行う(ステップS105)。錘202の質量の調整は、錘202を削ることや、新たな錘を錘202に付加する(例えば貼り付ける)ことで行われる。
ステップS105の後、
図4の処理を終了する。
【0038】
図5は、鉄道路線における地震検出装置1の配置箇所の例を示す説明図である。同図の例では、高架の上部や、橋脚の上部および下部など色々な位置に、また、比較的狭い間隔で地震検出装置1が設置されている。地震検出装置1は構造が簡単であるため製造費用及び維持費用が安価であり、また、電源が不要である点で容易に設置することができる。このため、鉄道路線の管理者は色々な位置に比較的狭い間隔で地震検出装置1を設置することができる。
【0039】
地震計などの地震検出装置が比較的広い間隔で設置されている場合、地震の際、地震検出装置が設置されていない位置の揺れの大きさは、地震検出装置が設置さている位置の揺れの大きさから推定する必要がある。この点で、地震検出装置が設置されていない位置における地震の揺れの大きさを正確に把握することができない。
一方、地震検出装置1の場合、上記のように比較的狭い間隔で設置することができ、設置位置では揺れの大きさが所定の大きさ以上か否かを直接的に判定することができる。この点で、地震検出装置1によれば、ある位置での地震の揺れの大きさが所定の大きさ以上か否かをより正確に判定することができる。
【0040】
以上のように、ガイドレール100は、移動部200をガイドレール100の長手方向に移動可能に支持し、また、固定部301は、ガイドレール100に固定されている。また、回転板303は、ヒンジ302を介して固定部301に対して傾き可変に連結されており、回転板303に設置されている永久磁石304が、磁性体203を吸着することで、移動部200のガイドレール100の長手方向への移動を抑制する。そして、永久磁石304の吸着力(したがって、永久磁石304が移動部200のガイドレール100の長手方向への移動を抑制する力)の大きさの最大値は所定の大きさ(永久磁石304毎に決まる磁力の大きさ)になっている。また、移動部200が永久磁石304から離れると、回転板303は自らの傾きを変化させる。
地震検出装置1は、これら各部を組み合わせた簡単な構造とすることができる。また、錘202の重さを調整するという比較的簡単な調整方法にて、地震検出装置1が検出する加速度の大きさを調整することができる。
【0041】
なお、抑制部(例えば、回転板303と永久磁石304との組み合わせ)が移動部200のガイドレール100の長手方向への移動を抑制する方法は、磁力を用いる方法に限らない。例えば、回転板303、移動部200それぞれに面ファスナーが設けられており、これら面ファスナーの接着にて移動部200のガイドレール100の長手方向への移動を抑制するようにしてもよい。あるいは、回転板303が移動部200と接着剤で接着されて、移動部200のガイドレール100の長手方向への移動を抑制するようにしてもよい。
【0042】
一方、永久磁石304が、磁力に磁性体203を吸着することで、抑制部が移動部200のガイドレール100の長手方向への移動を抑制する力の最大値を一定にすることが容易になる。かつ、永久磁石304と磁性体203とが離れている場合(地震検知を表示している状態にある場合)、地震検出装置1のユーザは、容易に永久磁石304と磁性体203とくっつける(地震未検出を表示している状態にする)ことができる。
【0043】
また、地震検出装置1の調整者は、ガイドレール100を水平に対して傾けて地震検出装置1を設置し、移動部200が滑り始める角度(移動部200が表示装置300から離れガイドレール100に沿って滑り落ちるようになる最小の角度)を求めることで、式(1)のように簡単な式で、永久磁石304が磁性体203を吸着する力(磁力)の最大の大きさを求めることができる。
【0044】
また、地震検出装置1の調整者は、永久磁石304が磁性体203を吸着する力(磁力)の最大の大きさに基づいて、式(5)のように簡単な式で、錘202の質量を求めることができる。
また、地震検出装置1の調整者は、錘202の質量を求めた質量に合わせる簡単な加工にて地震検出装置1が所定の大きさの加速度を検出するように調整することができる。
【0045】
以上、本発明の実施形態について図面を参照して詳述してきたが、具体的な構成はこの実施形態に限られるものではなく、この発明の要旨を逸脱しない範囲の設計変更等も含まれる。