特許第6390046号(P6390046)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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特許6390046構造物の固有振動数推定方法および構造物の固有振動数推定プログラム
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6390046
(24)【登録日】2018年8月31日
(45)【発行日】2018年9月19日
(54)【発明の名称】構造物の固有振動数推定方法および構造物の固有振動数推定プログラム
(51)【国際特許分類】
   G01H 13/00 20060101AFI20180910BHJP
   G01M 7/02 20060101ALI20180910BHJP
【FI】
   G01H13/00
   G01M7/02 H
【請求項の数】2
【全頁数】9
(21)【出願番号】特願2015-133467(P2015-133467)
(22)【出願日】2015年7月2日
(65)【公開番号】特開2017-15589(P2017-15589A)
(43)【公開日】2017年1月19日
【審査請求日】2017年8月10日
(73)【特許権者】
【識別番号】000173784
【氏名又は名称】公益財団法人鉄道総合技術研究所
(74)【代理人】
【識別番号】100064908
【弁理士】
【氏名又は名称】志賀 正武
(74)【代理人】
【識別番号】100108578
【弁理士】
【氏名又は名称】高橋 詔男
(74)【代理人】
【識別番号】100094400
【弁理士】
【氏名又は名称】鈴木 三義
(74)【代理人】
【識別番号】100108453
【弁理士】
【氏名又は名称】村山 靖彦
(72)【発明者】
【氏名】後藤 恵一
【審査官】 福田 裕司
(56)【参考文献】
【文献】 特開平07−198473(JP,A)
【文献】 特開2003−315204(JP,A)
【文献】 特開2012−208043(JP,A)
【文献】 特開平07−128182(JP,A)
【文献】 特開2008−255570(JP,A)
【文献】 特開2008−169543(JP,A)
【文献】 特開2003−072544(JP,A)
【文献】 米国特許出願公開第2010/0262390(US,A1)
【文献】 特開2016−194442(JP,A)
【文献】 山本 亨輔 他,停車車両と走行車両の応答値に基づく橋梁の振動特性推定法,土木学会第64回年次学術講演会講演概要集,2009年 9月,829〜830頁
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G01H 13/00
G01M 7/02
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
車両が走行する際の構造物の固有振動数を推定する構造物の固有振動数推定方法であって、
前記構造物の単位長さあたりの質量と前記車両の前記単位長さあたりの質量との質量比を求めるステップと、
前記質量比および前記構造物の支持スパン毎に、前記車両の走行速度と該走行速度で前記車両が走行することにより前記構造物に生じるたわみ量との関係を、走行する前記車両の質量および挙動を考慮した場合と、走行する前記車両の挙動を考慮せずに前記車両の質量が前記構造物上を前記走行速度で移動しているものとした場合と、のそれぞれにおいて求めるステップと、
前記質量比および前記構造物の支持スパン毎に、走行する前記車両の質量および挙動を考慮した場合の前記車両が走行する際の前記構造物の固有振動数と、走行する前記車両の質量および挙動を考慮せずに前記車両の質量に相当する荷重が前記構造物上を前記走行速度で移動しているものとした場合の前記車両が走行する際の前記構造物の固有振動数と、の固有振動数比を求めるステップと、
前記質量比、前記構造物の支持スパンおよび前記固有振動数比の関係を求めるステップと、を有することを特徴とする構造物の固有振動数推定方法。
【請求項2】
車両が走行する際の構造物の固有振動数を推定するコンピュータに、
前記構造物の単位長さあたりの質量と前記車両の前記単位長さあたりの質量との質量比を求めるステップと、
前記質量比および前記構造物の支持スパン毎に、前記車両の走行速度と該走行速度で前記車両が走行することにより前記構造物に生じるたわみ量との関係を、走行する前記車両の質量および挙動を考慮した場合と、走行する前記車両の質量および挙動を考慮せずに前記車両の質量に相当する荷重が前記構造物上を前記走行速度で移動しているものとした場合と、のそれぞれにおいて求めるステップと、
前記質量比および前記構造物の支持スパン毎に、走行する前記車両の質量および挙動を考慮した場合の前記車両が走行する際の前記構造物の固有振動数と、走行する前記車両の質量および挙動を考慮せずに前記車両の質量に相当する荷重が前記構造物上を前記走行速度で移動しているものとした場合の前記車両が走行する際の前記構造物の固有振動数と、の固有振動数比を求めるステップと、
前記質量比、前記構造物の支持スパンおよび前記固有振動数比の関係を求めるステップと、を実行させることを特徴とする構造物の固有振動数推定プログラム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、車両が走行している状態における桁などの構造物の固有振動数を推定できる構造物の固有振動数推定方法および構造物の固有振動数推定プログラムに関する。
【背景技術】
【0002】
車両が桁などの構造物上を走行する場合、構造物の固有振動数と走行する列車による加振振動数とが一致すると共振が発生し、構造物の動的な応答が増大している。
車両が走行する構造物を設計する際には、構造物が車両の質量に対する構造物の質量の比率が比較的大きいコンクリート構造などの場合は、車両の質量の影響を考慮せずにその強度が設計されている(例えば、非特許文献1参照)。これに対し、構造物が車両の質量に対する構造物の質量の比率が比較的小さい鋼構造などの場合は、構造物に車両の質量に対応する等分布質量が載荷されていると相当してその強度が設計されている(例えば、非特許文献2参照)。
【先行技術文献】
【非特許文献】
【0003】
【非特許文献1】「鉄道構造物等設計標準・同解説 コンクリート構造物、国土交通省鉄道局監修、鉄道総合技術研究所編」、丸善株式会社、平成16年4月
【非特許文献2】「鉄道構造物等設計標準・同解説 鋼・合成構造物、国土交通省鉄道局監修、鉄道総合技術研究所編」、丸善株式会社、平成21年7月
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
このように、走行する車両の質量や挙動による構造物への影響については、定量的な評価が行われておらず、車両の質量に対する構造物の質量の比率が比較的小さい鋼構造など構造物では、共振が発生する振動数を小さく設定し、その強度が過剰となる傾向があった。
【0005】
そこで、本発明は、適切な強度の構造物を設計することができる構造物の固有振動数推定方法および構造物の固有振動数推定プログラムを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上記目的を達成するため、本発明に係る構造物の固有振動数推定方法は、車両が走行する際の構造物の固有振動数を推定する構造物の固有振動数推定方法であって、前記構造物の単位長さあたりの質量と前記車両の前記単位長さあたりの質量との質量比を求めるステップと、前記質量比および前記構造物の支持スパン毎に、前記車両の走行速度と該走行速度で前記車両が走行することにより前記構造物に生じるたわみ量との関係を、走行する前記車両の質量および挙動を考慮した場合と、走行する前記車両の質量および挙動を考慮せずに前記車両の質量に相当する荷重が前記構造物上を前記走行速度で移動しているものとした場合と、のそれぞれにおいて求めるステップと、前記質量比および前記構造物の支持スパン毎に、走行する前記車両の質量および挙動を考慮した場合の前記車両が走行する際の前記構造物の固有振動数と、走行する前記車両の質量および挙動を考慮せずに前記車両の質量に相当する荷重が前記構造物上を前記走行速度で移動しているものとした場合の前記車両が走行する際の前記構造物の固有振動数と、の固有振動数比を求めるステップと、前記質量比、前記構造物の支持スパンおよび前記固有振動数比の関係を求めるステップと、を有することを特徴とする。
【0007】
また、本発明に係る構造物の固有振動数推定プログラムは、車両が走行する際の構造物の固有振動数を推定するコンピュータに、前記構造物の単位長さあたりの質量と前記車両の前記単位長さあたりの質量との質量比を求めるステップと、前記質量比および前記構造物の支持スパン毎に、前記車両の走行速度と該走行速度で前記車両が走行することにより前記構造物に生じるたわみ量との関係を、走行する前記車両の質量および挙動を考慮した場合と、走行する前記車両の質量および挙動を考慮せずに前記車両の質量に相当する荷重が前記構造物上を前記走行速度で移動しているものとした場合と、のそれぞれにおいて求めるステップと、前記質量比および前記構造物の支持スパン毎に、走行する前記車両の質量および挙動を考慮した場合の前記車両が走行する際の前記構造物の固有振動数と、走行する前記車両の質量および挙動を考慮せずに前記車両の質量に相当する荷重が前記構造物上を前記走行速度で移動しているものとした場合の前記車両が走行する際の前記構造物の固有振動数と、の固有振動数比を求めるステップと、前記質量比、前記構造物の支持スパンおよび前記固有振動数比の関係を求めるステップと、を実行させることを特徴とする。
【0008】
本発明では、走行する車両の質量および挙動を考慮した場合の車両が走行する際の構造物の固有振動数と、走行する車両の質量および挙動を考慮せずに車両の質量に相当する荷重が構造物上を走行速度で移動しているものとした場合の車両が走行する際の構造物の固有振動数と、の固有振動数比が質量比および構造物の支持スパン毎に求められることにより、車両の走行による構造物への影響を定量的に評価することができる。
これにより、比較的質量比の小さい鋼構造などの構造物を過剰な強度の構造とせずに適度な強度に設計することができる。
【発明の効果】
【0009】
本発明によれば、比較的質量比の小さい鋼構造などの構造物を過剰な強度の構造とせずに適度な強度に設計することができる。
【図面の簡単な説明】
【0010】
図1】本発明の実施形態による構造物の固有振動数推定方法および構造物の固有振動数推定プログラムの一例をフローチャートである。
図2】桁に作用する車両の荷重を説明する図である。
図3】桁の支持スパンと単位長さあたりの質量との関係を示すグラフである。
図4】(a)は質量比αが3、桁の支持スパンが10mの場合の走行速度と桁のたわみ量との関係を示すグラフ、(b)は質量比αが5、桁の支持スパンが10mの場合の走行速度と桁のたわみ量との関係を示すグラフ、(c)は質量比αが10、桁の支持スパンが10mの場合の走行速度と桁のたわみ量との関係を示すグラフ、(d)は質量比αが20、桁の支持スパンが10mの場合の走行速度と桁のたわみ量との関係を示すグラフである。
図5】(a)は質量比αが3、桁の支持スパンが20mの場合の走行速度と桁のたわみ量との関係を示すグラフ、(b)は質量比αが5、桁の支持スパンが20mの場合の走行速度と桁のたわみ量との関係を示すグラフ、(c)は質量比αが10、桁の支持スパンが20mの場合の走行速度と桁のたわみ量との関係を示すグラフ、(d)は質量比αが20、桁の支持スパンが20mの場合の走行速度と桁のたわみ量との関係を示すグラフである。
図6】(a)は質量比αが3、桁の支持スパンが25mの場合の走行速度と桁のたわみ量との関係を示すグラフ、(b)は質量比αが5、桁の支持スパンが25mの場合の走行速度と桁のたわみ量との関係を示すグラフ、(c)は質量比αが10、桁の支持スパンが25mの場合の走行速度と桁のたわみ量との関係を示すグラフ、(d)は質量比αが20、桁の支持スパンが25mの場合の走行速度と桁のたわみ量との関係を示すグラフである。
図7】(a)は質量比αが3、桁の支持スパンが25mの場合の走行速度と桁のたわみ量との関係を示すグラフ、(b)は質量比αが5、桁の支持スパンが25mの場合の走行速度と桁のたわみ量との関係を示すグラフ、(c)は質量比αが10、桁の支持スパンが25mの場合の走行速度と桁のたわみ量との関係を示すグラフ、(d)は質量比αが20、桁の支持スパンが25mの場合の走行速度と桁のたわみ量との関係を示すグラフである。
図8】桁の支持スパン毎の固有振動数、1〜3次共振速度、および走行する車両の質量および挙動を考慮せずに車両の質量に相当する荷重が桁上を走行速度で移動しているものとした場合における共振速度を示す表である。
図9】桁の支持スパン毎の質量比αと固有振動数との関係を説明する図である。
【発明を実施するための形態】
【0011】
以下、本発明の実施形態による構造物の固有振動数推定方法および構造物の固有振動数推定プログラムについて、図1乃至図9に基づいて説明する。
図1に示す本実施形態による構造物の固有振動数推定方法は、図2に示す車両1が桁(構造物)2上を走行する際の桁2の固有振動数を推定するための方法である。構造物の固有振動数推定プログラムは、コンピュータに構造物の固有振動数推定方法を実行させて、車両1が走行する際の桁2の固有振動数を推定するプログラムである。
【0012】
まず、車両1が走行する桁2の支持スパンLおよび質量を設定する(S−1)。
続いて、桁2の単位長さあたりの質量Wと車両1の単位長さあたりの質量Wとの質量比αを求める(S−2)。本実施形態では、車両1の単位長さあたりの質量Wsに対する桁2の単位長さあたりの質量Wの比率を求める。
図3には、桁2の支持スパンLと桁2の単位長さあたりの質量Wとの関係を示している。ここでは、車両1の単位長さあたりの質量wを20kN/mとしている。
【0013】
続いて、質量比αおよび桁2の支持スパンL毎に、車両1の走行速度と車両1が走行することにより桁2に生じるたわみ量との関係を求める(S−3,S−4)。このとき、走行する車両1の質量および挙動を考慮した場合の車両1の走行速度と車両1が走行することにより桁2に生じるたわみ量との関係を求める(S−3)とともに、走行する車両1の質量および挙動を考慮せずに車両1の質量に相当する荷重が桁2上を走行速度で移動しているものとした場合の車両1の走行速度と走行速度で車両1が走行することにより桁2に生じるたわみ量との関係を求める(S−4)。
【0014】
走行する車両1の質量および挙動を考慮した場合とは、走行する車両1の振動や、車両1の車輪3と桁2に設けられたレール(不図示)との間の荷重移動などを考慮した場合としている。
また、走行する車両1の質量および挙動を考慮せずに車両1の質量に相当する荷重が桁2上を走行速度で移動しているものとした場合では、車両1の質量が車輪3から桁2に作用し、車輪3それぞれから桁2に作用する車両1の質量は、車両1の質量を車輪3の数で割った値としている。
本実施形態では、車両1には車輪3が走行方向(桁2の長さ方向)に4つ設けられており、車両1が4点支持されているものとしている。
【0015】
図4乃至図7に、質量比αおよび桁2の支持スパンL毎の車両1の走行速度と車両1が走行することにより桁2に生じるたわみ量との関係を示している。図4乃至図7では、点線が走行する車両1の質量および挙動を考慮した場合を示し、実線が走行する車両1の質量および挙動を考慮せずに車両1の質量に相当する荷重が桁2上を走行速度で移動しているものとした場合を示している。
図4乃至図7より、質量比が大きくなるに従って、走行する車両1の質量および挙動を考慮した場合の桁2のたわみ量と、走行する車両1の質量および挙動を考慮せずに車両1の質量が桁2上を走行速度で移動しているものとした場合の桁2のたわみ量との差が小さくなることがわかる。また、桁2の支持スパンLbが大きくなるに従って、走行する車両1の質量および挙動を考慮した場合の桁2のたわみ量と、走行する車両1の質量および挙動を考慮せずに車両1の質量に相当する荷重が桁2上を走行速度で移動しているものとした場合の桁2のたわみ量との差が大きくなることがわかる。
【0016】
続いて、共振が生じる際に桁2たわみ量がピークとなることから、走行する車両1の質量および挙動を考慮した場合、および走行する車両1の質量および挙動を考慮せずに車両1の質量に相当する荷重が桁2上を走行速度で移動しているものとした場合それぞれにおいて、たわみ量がピークとなる走行速度もとに固有振動数を求め、これらの固有振動数の比率(固有振動数比)を求める(S−5)。
本実施形態では、固有振動数比は、走行する車両1の質量および挙動を考慮せずに車両1の質量に相当する荷重が桁2上を走行速度で移動しているものとした場合の桁2の固有振動数に対する走行する車両1の質量および挙動を考慮した場合の桁2の固有振動数の比率としている。
なお、桁2の固有振動数fは以下の式で求める。
【0017】
【数1】
【0018】
図8では、支持スパンLごとの桁2の固有振動数、1〜3次共振が生じる車両1の走行速度、および走行する車両1の質量および挙動を考慮せずに車両1の質量に相当する荷重が桁2上を走行速度で移動しているものとした場合の共振が生じる走行速度と、を表に示している。
【0019】
続いて、質量比α、桁2の支持スパンLおよび固有振動数比の関係を求める(S−6)。図9では、質量比α、桁2の支持スパンLおよび固有振動数比の関係を示している。
図9より、質量比αが小さくなるに従って固有振動数比が小さくなり、質量比αが大きくなるに従って固有振動数比が大きくなり1に近付くことがわかる。
このため、質量比αが小さくなる鋼構造などの場合では、固有振動数として、走行する車両1の質量および挙動を考慮せずに車両1の質量に相当する荷重が桁2上を走行速度で移動しているものとした場合の桁2の固有振動数を採用すると、走行する車両1の質量および挙動を考慮した場合の桁2の固有振動数よりも小さくなり、桁2の設計を行う際に過剰な強度となる。これに対し、固有振動数として走行する車両1の質量および挙動を考慮した場合の桁2の固有振動数を採用することで適切な強度の桁2を設計することができる。
【0020】
桁2の設計を行う際には、質量比α、桁2の支持スパンLおよび固有振動数比の関係から、固有振動数として走行する車両1の質量および挙動を考慮した場合の桁2の固有振動数を容易に割り出すことができる。
なお、質量比αが大きくなるに従って、走行する車両1の質量および挙動を考慮せずに車両1の質量に相当する荷重が桁2上を走行速度で移動しているものとした場合の桁2の固有振動数と、走行する車両1の質量および挙動を考慮した場合の桁2の固有振動数との値が略等しくなるため、梁の設計の際に、固有振動数を走行する車両1の質量および挙動を考慮せずに車両1の質量に相当する荷重が桁2上を走行速度で移動しているものとした場合の桁2の固有振動数を採用する場合と、固有振動数を走行する車両1の質量および挙動を考慮せずに車両1の質量に相当する荷重が桁2上を走行速度で移動しているものとした場合の桁2の固有振動数から固有振動数として走行する車両1の質量および挙動を考慮した場合の桁2の固有振動数を割り出して採用する場合との質量比αの閾値を設定してもよい。
【0021】
次に、上述した固有振動数推定方法および構造物の固有振動数推定プログラムの作用・効果について図面を用いて説明する。
上述した本実施形態による固有振動数推定方法および構造物の固有振動数推定プログラムでは、走行する車両1の質量および挙動を考慮した場合の車両1が走行する際の桁2の固有振動数と、走行する車両1の質量および挙動を考慮せずに車両1の質量に相当する荷重が桁2上を走行速度で移動しているものとした場合の車両1が走行する際の桁2の固有振動数と、の固有振動数比が質量比αおよび桁2の支持スパンLb毎に求められることにより、車両1の走行による桁2への影響を定量的に評価することができる。
これにより、比較的質量比の小さい鋼構造などの桁2を過剰な強度の構造とせずに適度な強度に設計することができる。
【0022】
以上、本発明による固有振動数推定方法および構造物の固有振動数推定プログラムの実施形態について説明したが、本発明は上記の実施形態に限定されるものではなく、その趣旨を逸脱しない範囲で適宜変更可能である。
例えば、上記の実施形態では、走行する車両1の質量および挙動を考慮した場合とは、走行する車両1の振動や、車両1の車輪3と桁2に設けられたレールとの間の荷重移動などを考慮した場合としているが、その他の条件を考慮してもよい。
また、車両1および桁2の形態は適宜設定されてよい。
【符号の説明】
【0023】
1 車両
2 桁(構造物)
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9