(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
しかしながら、非特許文献1に開示された技術は、光による報知であるため、例えば、昼間の走行時には太陽光により見づらく、自動走行車の運転状態を確認することが困難な場合も考えられる。また、非特許文献1の発光システムは、移動体の底面に向けて光を照射するため、併走している車両の乗員には、見落としやすく、注意を喚起するまでには至らない可能性もある。また、人間には、そもそも自動運転に対する不安感があるため、自動運転車が普及するためには、自動運転の制御技術の信頼性向上と共に、周囲に圧倒的な安心感を与える工夫が重要である。すなわち、自動走行している移動体と併走して走行している車両の乗員や移動体の周囲の歩行者等に対し、より視認性及び認知性が高く、また安心感を与えるように、自動運転する移動体の状態を外部に報知する手段が求められている。
【0009】
そこで本発明では、上記のような課題に鑑み、自動走行する移動体の状態を外部から確認できるようにして周囲に安心感を与え、そのために移動体の状態を周囲に報知する様々な手段を有する自動走行移動体及び自動走行移動体による車両状態報知方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0010】
上記課題を解決するため、本発明の移動体は、以下のような解決手段を提供する。
【0011】
本発明の第一の態様は、自動運行交通システムにおいて、人又は荷物を運ぶ自動走行可能な移動体であって、前記移動体は、前記移動体からみて複数の方向の範囲領域に属し、前記移動体から所定距離内の周囲に動く物体を監視対象として検知する監視対象検知部と、前記監視対象検知部が検知した情報を外部に報知する報知手段と、を備え、前記報知手段は、前記監視対象検知部で検知された前記監視対象の物体が存在する前記範囲領域の方向のそれぞれに対して、前記監視対象の物体の存在を認識したという情報と、前記監視対象の物体をどのように認識しているかを示す情報を報知することを特徴とする。
【0012】
本発明の第二の態様は、自動運行交通システムにおいて、人又は荷物を運ぶ自動走行可能な移動体であって、前記移動体は、走行中又は待機中に自らの車両状態を診断する診断部と、前記診断部が診断した前記車両状態を外部に報知する報知手段と、前記移動体からみて複数の方向の範囲領域に属し、前記移動体から所定距離内の周囲に動く物体を監視対象として検知する監視対象検知部と、を備え、前記報知手段は、前記監視対象検知部で検知された前記監視対象が存在する前記範囲領域の方向のそれぞれに対して前記診断部が診断した診断結果を報知することを特徴とする。
【0013】
また、上記の移動体において、自らの移動方向と移動速度を含む移動状態を検知する移動状態検知部を更に有し、前記報知手段は、前記監視対象検知部で検知された前記監視対象が属する前記範囲領域の方向に対して前記移動状態を報知してもよい。
【0014】
また、上記の移動体において、前記監視対象検知部は、静止している人・動物・他の車両を画像認識により検知し、前記監視対象に加えてもよい。
【0015】
また、上記の移動体において、道路上に設置された信号機の表示状態を前記信号機と無線通信を行うことによって取得する信号機情報取得部を更に有し、前記報知手段は、所定の条件下で移動体の進行方向に設けられている前記信号機の前記表示状態を報知してもよい。
【0016】
また、上記の移動体において、前記報知手段は、文字、画像、光、音のうち少なくともいずれか1つの手段により報知してもよい。
【0017】
本発明の第3の態様は、自動運行交通システムにおいて、人又は荷物を運ぶ自動走行可能な移動体が行う車両状態報知方法であって、前記移動体からみて複数の方向の範囲領域に属し、前記移動体から所定距離内の周囲に動く物体を監視対象として検知する工程と、前記監視対象として検知する工程において検知した情報を外部に報知する工程と、前記報知する工程は、前記監視対象の物体が存在する前記範囲領域の方向のそれぞれに対して前記監視対象の物体の存在を認識したという情報と前記監視対象の物体をどのように認識しているかを示す情報を報知する工程と、を含むことを特徴とする。
【発明の効果】
【0018】
本発明によれば、自動走行する移動体の状態を外部から確認できるようにしして周囲に安心感を与えるように、移動体の状態を周囲に報知する様々な手段を有する自動走行移動体及び自動走行移動体による車両状態報知方法を提供することができる。
【発明を実施するための形態】
【0020】
以下、添付図面を参照して、本発明を実施するための形態(以下、実施形態)について詳細に説明する。なお、実施形態の説明の全体を通して同じ要素には同じ番号または符号を付している。
【0021】
(交通システム)
図1は、本発明が適用される交通システムの概念を説明する図である。
図2は、本発明が適用される交通システムの全体概要を説明する図である。自動運行交通システム(以下、交通システム1)は、地域における交通の利便性を向上し、当該地域における住民やサービサ(サービス提供者、例えば、公共交通機関、役所、病院、地域企業、スーパやコンビニ等の小売店等)における人や物の移動需要を喚起し、当該地域を活性化することを目的としたものである。
【0022】
交通システム1は、交通システム1の中心となる移動体管理システムは、提供する各種サービスに適合したサブシステムとして、サーバ又は管理装置等で構成される。管理装置10は、このサブシステムとしてのサーバの一つであり、管理装置10にネットワークを介して接続されたサービサにより操作されるサービサシステム20(
図1ではビルのイラストで表す)と、地域住民であるユーザにより操作されるユーザ端末30(
図1では家のイラストで表す)と、管理装置10の指示に基づきユーザ又は荷物を運ぶ、電気で駆動され自動走行可能な移動体40と、を備える。
【0023】
管理装置10は、サービサシステム20からサービサ情報を受信し、ユーザ端末30からユーザ情報を受信する。管理装置10は、サービサ情報及びユーザ情報を収集し、これらの情報をマッチングし、例えば、ユーザの外出を促すスケジュール情報を所定のユーザ端末30に提供し、所定のユーザ情報を所定のサービサシステム20に提供する。そして、管理装置10は、サービサシステム20やユーザ端末30から受信した移動体40の配車依頼情報に基づき、移動体40に、運行の日時やルートを示す配車指示情報を生成し、送信する。
【0024】
サービサシステム20は、各サービサに適したシステムで構成され(例えば、複数の端末とサーバとからなるシステム、携帯端末、スマートフォン、タブレット端末、パーソナルコンピュータ等)、各サービサの要望に基づくサービサ情報を、管理装置10に送信する。サービサ情報は、例えば、サービサが小売店であれば、サービサの在庫を示す在庫情報、特売品の特売日やセール時間や品目や数量や価格や想定商圏を示す特売品情報、来店して欲しい客の人数、喫煙の有無、来店時に受けられるサービスのクーポンに関する店内空き情報等が含まれる。また、サービサ情報には、移動体40の配車を依頼する配車依頼情報等も含まれる。
【0025】
ユーザ端末30は、各ユーザに適した機器で構成され(例えば、携帯端末、スマートフォン、タブレット端末、パーソナルコンピュータ、ゲーム機器、ネットワークに接続可能なテレビ、オーディオ機器、冷蔵庫等の情報家電等)、各ユーザの要望に基づくユーザ情報を、管理装置10に送信する。ユーザ端末30は、上記のような機器そのものであってもよいし、上記の複数の機器と家庭内等のローカルネットワークを介して、情報交信可能な制御機器(ホームコントローラ等)であってもよい。ユーザ情報は、ユーザを特定するユーザIDや名前や住所やメールアドレス等の個人情報、ユーザが購入を希望する商品を示す購入希望情報、特定の日時に乗車位置から目的地まで移動体40の運行を依頼する配車依頼情報、配車依頼情報に基づく配車の予定を確定する予定確定情報、所定の期間において所定の時間に乗車位置から目的地まで移動体40の運行を依頼するユーザ定期配車依頼情報等が含まれる。
【0026】
移動体40は、電気で駆動され自動走行可能な車両であり、自動運転に関する周知のシステムを備えた電気自動車であり、管理装置10から受信した配車指示情報に示された日時において、配車指示情報に示されたルートを自動運転により運行する。また、移動体40は、移動体の現在位置、目的地、電池残量を示す情報を含む移動体情報を管理装置10に送信する。また、移動体40は、電池残量が所定値以下となった場合、最寄りの充電ステーション90で充電する。充電ステーション90は、移動体40が配車される地域において、例えば、所定範囲毎に設けられ、複数台の移動体40が同時に充電できる構成を備える。なお、充電ステーション90は、例えば、移動体40を利用するユーザの自宅や、サービサの店舗に、1台用として簡易的に設けてもよい。なお、移動体40は、他の移動体40とも相互に無線通信が可能である。
【0027】
このような交通システム1によれば、サービサ及びユーザの都合と目的に合わせた時間と場所に、自動運転する移動体40を運行することで、移動体40の利用料を低廉にすることができる。
【0028】
交通システム1において、そのサブシステムであり、以下に説明する車両状態報知システムでは、移動体40からみて複数の方向の範囲領域の範囲領域に属し、移動体から所定距離内の周囲に動く物体を監視対象として検知する監視対象検知部(後述の周囲監視センサ42a及び周囲監視用のカメラ42b)を含む)を設ける。監視対象検知部が監視対象の物体(車両、人、動物)を検知(認識)すると、その存在を認識したという情報と、どのようにその物体を認識しているかを示す情報を周囲に報知する。ここで、「どのように物体を認識しているかを示す情報」とは、移動体40が検知した物体の詳細な情報であり、移動体40が周囲を検知した結果、検知された物体が歩行者や動物や他の車両であると認識した場合、例えば、「左斜め前方に歩行者と犬を検知」、「左後方に子供を発見!」、「車間距離注意!」等のように、自らが検知した情報を周囲の人間や車両に伝わるようなかたちに加工したものである。また、走行中又は待機中の移動体40の車両状態を駆動部内に設けられた複数の駆動系診断センサを用いて自らを診断し、診断結果を車内の乗員又は周囲に報知することもできる。また、自らの移動方向、移動速度、移動計画等を含む移動状態を周囲に報知するようにしてもよい。このようにすることで、移動体40が周囲の人間や車両等を確実に認識していることや移動体の各種機能が正常に動作していることを、周囲の人間や車両に向かって知らせることができ、自動走行車に対する周囲の安心感を高めることができる。
【0029】
図3に示すように、移動体40には、周囲の全方向が監視対象の範囲領域となるように複数の周囲監視センサ42aが備えられている。各周囲監視センサ42aの近傍には、後述する様々な報知手段である装置が備えられており、周囲監視センサ42aが検知すると、反応した周囲監視センサ42aの近傍にある報知手段によって、走行する移動体40の周囲を歩行している人又は走行する車両に報知する。このようにすることで、監視対象検知部(複数の周囲監視センサ42aおよび周囲監視用のカメラを含む)の範囲領域に動く物体(人、車両(自転車を含む)、動物)を検知すると、周囲監視センサ42aによって検知された監視対象物の方向にのみ報知することが可能となる。例えば、単体の周囲監視センサ42aが反応した場合を人とし、同時に所定間隔の複数の周囲監視センサ42aが反応した場合を車両として判断するようにしてもよい。人、車両以外にイヌやネコ等の動物も監視対象としてもよい。
【0030】
また、静止する物体、例えば静止している人・動物・他の車両の検知手段として、周囲監視センサ42aの近傍に備えられているカメラによって、周囲監視センサ42aで検知された方向を撮影し、画像認識機能を用いることで、画像解析して特徴を抽出し,対象物の認識を行うことで静止する物体と判断するようにしてもよい。なお、カメラは周囲監視センサ42aに内蔵されていてもよい。
【0031】
次に、移動体40の報知手段として、文字で報知する一例を説明する。
図4に示すように、移動体40の前方部、側面部、後方部に車外ディスプレイ443bを設けることによって、周囲監視センサ42aによって検知された方向に対してのみ、車外ディスプレイ443bから移動体40の診断状態を報知することが可能となる。例えば、上記センサがなんら異常を検知しなければ、車外ディスプレイ443b上に、「正常走行中」又は「快適走行中」と表示され、上記センサがなんらかの異常や警戒すべき事象を検知すれば、「異常検知!」又は「確認のため減速走行中」などと表示されるようにすれば、移動体40が、正常と認識している状態なのか、なんらかの警戒をしている状態なのかを周囲から一目で確認することができる。
【0032】
また、移動体40には、自己診断機能を備えているので、予め定められた一連の診断を何回クリアしている状態なのかを車体に報知するようにしてもよい。例えば、加速、減速、音響、登坂、等の診断項目をすべてクリアしたら「★」マークを1つ車体に表示し、すべてを3回クリアしたら「★★★」を車体に表示するなどしてもよい(
図4(d)参照)。また、サーバ側若しくはメンテナンス工場で、移動体40が行った診断結果を検証し、すべて問題がなければ、上記の「★」マークを「◆」マークに変えるなどしてお墨付きを与えるようにしてもよい。このようにすることで、移動体の診断状況が周囲からも一目でわかる。
【0033】
次に、移動体40の移動状態、例えば走行時、停車時に周囲監視センサ42aによって検知された監視対象物の方向にのみ報知する例を説明する。
図5(a)に示すように、例えば、移動体40の前方左側の周囲監視センサ42aが歩行中の人を検知したとする。移動体40は、反応した周囲監視センサ42aの近傍にある報知手段であるLED441又はスピーカ442で報知する。すなわち、周囲監視センサ42aによって検知した方向にLED441によって、監視対象物の方向を発光し、スピーカ442によって、移動体40の移動状態を音声で報知する。移動状態とは、移動体40の移動方向と移動速度を含み、例えば、移動体40が停車するときは、「停車します」、発車するときは、「発車します」、道路を左折するときは、「左折します」等の音声を出力する。また、
図5(b)に示すように、LED441を移動体40全体に帯状に備えることで、周囲監視センサ42aで検知した方向のLEDを点灯させることが可能となる。この場合、監視対象物の存在を検知した方向にピンポイントでLEDを点灯させてもよいし、検知した方向の一定範囲に帯状にLEDを点灯させてもよい。また、このとき、例えば、「左後方に子供を発見」のように音声で報知してもよい。また、検知した方向の車体部分に、同様のメッセージを表示するようにしてもよい。このようにすることで、移動体40の乗員、周囲の車両又は歩行者に、自分の存在を自動走行車が確実に認識しているとビジュアルにかつ認知性を高くして知らせることができるので、自動走行車に対して安心感を与えることが可能となる。また、
図6に示すように、前方部の車外ディスプレイ443bにホログラム映像として、人を映し出すことによって、あたかも人が運転しているかのように報知するようにしてもよい。
【0034】
図7は、車両状態報知システム100の別の実施形態として、併走する周囲の車両に、自車が監視対象物の存在を認識したという情報、及びその存在をどのように認識しているか示す情報を報知する例をあげる。この図では、移動体40の後方に別の車両が走行しており、移動体40が後方車両50を認識していることを後方車両50のカーナビ等に報知している様子を示す。後述するように、移動体40の監視対象検知部42(周囲監視センサ42a及び後述のカメラ42b)が、後方車両50が接近中であることを検知すると、例えば、「(あなたの前を走る)登録番号○○○○の移動体です。貴車を認識しました。貴車との距離15m。ただ今0.5m/secで接近中!」のようなメッセージを後方車両50に無線通信で送信する。また逆に、後方車両50から、悪天候時などに、移動体40に対して、「私の存在を認識しているか?認識していたら返答願います」のような呼びかけに対して、移動体40が応答するようにしてもよい。このようにすることで、自分の前や後ろや横を走る自動運転車の機能が正常な状態であり、周囲を認識して走行中であることが分かるので、周囲に併走する車両に対して安心感を与えることができる。
【0035】
図8では、車両状態報知システム100のさらに別の実施形態として、周囲の車両、特に周囲の車両に報知する例をあげる。
図8に示すように、例えば、移動体40の進行方向の前方に大型車が走行しており、大型車の後ろ又は隣り合う車両からは道路上に設置された信号機の表示状態の確認できない状況であるとする。このような場合、移動体40は、周囲の状況を判断し、前方の信号機と無線通信によって通信を行い、信号機の表示状態を取得することができる。移動体40は、所定の条件下で移動体40の進行方向に設けられている信号機の表示状態を報知する。所定の条件下とは、例えば、移動体40に内蔵されている周囲監視センサ42aが大型車の後方又は側方に他の車両を検知した場合である。
【0036】
大型車の判別方法として、例えば、前方に備えられている周囲監視センサ42aを並列に複数設け、下部に設置されている周囲監視センサ42aは通常の監視範囲に、上部に設置されている周囲監視センサ42aの監視範囲の角度を上げることで、通常の監視領域と併せて車両の高さを検知することが可能となる。また、内蔵されているカメラ42bによる画像認識機能を用いて、前方に大型車の存在を検知するようにしてもよい。このようにすることで、並列に設けられている周囲監視センサ42aが同時の検知した場合を大型車と判別することが可能となる。また、周囲監視センサ42aによって検知された方向に存在する車両に無線通信で信号機の表示状況を送信し、例えば、車両のカーナビゲーション等に信号機の表示状況を報知するようにしてもよい。
【0037】
(車両状態報知システムの構成)
図9は、本実施形態に係る車両状態報知システム(以下、本システム100という)の機能ブロックを示す図である。本システム100は、地域における交通の利便性を向上することを目的とし、本システムの移動体40の配車時の制御中枢となる管理装置10と、この管理装置10にネットワークを介して接続され、管理装置10の指示に基づき自動走行する移動体40と、を備える。
【0038】
(移動体の構成)
移動体40は、診断部41と、前述した監視対象検知部42と、移動状態検知部43と、報知手段44と、駆動手段45と、信号機情報取得部46と、移動体情報取得手段47と、充電池48と、ライト49を備える。以下、各機能ブロックについて順に説明する。
【0039】
診断部41は、走行中又は待機中に自らの車両状態を診断する。すなわち、診断部41の制御の元、後述する駆動手段45に内蔵されている各種の駆動系診断センサ45b、位置情報検出部47a、電池残量計測部47b、及びライト49からの信号に基づいて各機能の正常性を診断し、診断結果を診断情報データベース(以降、診断情報DB101という)に格納し、報知手段44及び管理装置10へ診断結果を送信する。
【0040】
図10に示すように、診断情報DB101は、移動体40の移動体ID、診断日時、移動体40の駆動手段45に内蔵されている各種の駆動系診断センサ(例えば、加速センサ、ブレーキセンサ、ステアリングセンサ、タイヤ空気圧センサ、衝突検知センサ、駆動系温度センサ等)、及び電池残量、各項目から判別する移動体40の車両状態を格納する。例えば、移動体No.0001は、2014年2月1日の14:00に車両の診断を行い、加速センサ、ブレーキセンサ、ステアリングセンサ、タイヤ空気圧センサ、衝突検知センサ、駆動系温度センサが共に良好で、電池残量も通常走行に支障がないため、結果、車両状態は正常と判断されている。なお、車両状態欄に記載の正常とは、自動走行に支障がない状態を意味し、注意とは、現在のところは走行には問題はないが、近いうちに走行不良になる虞がある状態を意味し、警告とは、単体で走行するには支障がある状態を意味し、至急メンテナンスを行わなければならないレベルの状態をいう。
【0041】
監視対象検知部42は、周囲監視センサ42aと、カメラ42bから構成される。周囲監視センサ42aは、例えば、光センサや超音波センサを利用し、人や車両を検知する機能をもつ。カメラ42bは、例えば周囲監視センサ42aの近傍に設置され、周囲監視センサ42aで検知した監視対象物を撮影し、監視対象物を判別する画像認識機能をもつ。
【0042】
移動状態検知部43は、自らの移動方向と移動速度を含む移動状態を駆動部45aから受信することで移動状態を判定し、判定結果を報知手段44に送信する。
【0043】
報知手段44は、LED441と、スピーカ442と、ディスプレイ443から構成される。LED441は、周囲監視センサ42aの近傍に設置され、周囲監視センサ42aによって検知した方向に光を点灯させる。スピーカ442は、周囲監視センサ42aの近傍に設置され、周囲監視センサ42aによって検知した方向に、移動状態検知部43によって、判定された移動状態を音声によって出力する。
【0044】
ディスプレイ443は、車内ディスプレイ443aと、車外ディスプレイ443bから構成される。車内ディスプレイ443aは、例えば、カーナビゲーション装置であり、例えば、
図7で示した、信号機情報取得部46から受信された信号の表示状況が映し出される。車外ディスプレイ443bは、例えば、LCD(Liquid Crystal Display)や、有機EL(Organic Electro-Luminescence)等により構成されており、例えば、移動体40の前方部、側面部、後方部の車体のボディ、又はフロントガラス、ウィンドウガラス、リアガラス等に埋め込まれ、移動体40の車両状態が表示される。
【0045】
駆動手段45は、駆動部45aと、駆動系診断センサ45bから構成される。駆動部45aは、移動体40が電気で駆動するために必要な公知の構成(バッテリー、インバータ、モータ、ブレーキ等)を備える。また、駆動手段45は、自動運転に必要な公知の構成として、GPS(Global Positioning Systems)等の位置情報取得手段、移動体40の周囲を検知する駆動系の周囲監視センサ(報知用の周囲監視センサ42aと兼用してもよい)、GPS及び周囲監視センサからの情報に基づき車輪を操舵するアクチュエータ等を備える。
【0046】
駆動系診断センサ45bは、駆動部45aの電気で駆動するために必要な構成の各構成に設けられており、各構成の正常性を駆動系診断センサ45bによって検知し、結果を診断部41に送信する。
【0047】
信号機情報取得部46は、道路上に設置された信号機の表示状況を無線通信によって取得する。信号機の表示状況を取得するには、信号機と直接、無線通信を行ってもよいし、信号機管理センタ等と無線通信を行ってもよい。あるいは進行方向と交差する道路側の信号機の映像を利用してもよい。
【0048】
移動体情報取得手段47は、GPS等により自移動体の位置情報を検出する位置情報検出部47aと、自らの電池残量を計測する電池残量計測部47bと、自移動体の移動スケジュールを管理するスケジュール管理部47cとから構成される。
【0049】
位置情報検出部47aは、移動体40が現在位置する位置情報を検出(取得)する。電池残量計測部47bは、自らの内蔵されている充電池48の電池残量を計測する。スケジュール管理部47cは、自らの稼動状況や稼働スケジュール、例えば稼動の有無、運行時に関しては目的地及び目的地到着時間を管理する。
【0050】
(管理装置の構成)
管理装置10は、診断情報収集部11と、移動体情報収集部12と、配車指示部13とを備える。
【0051】
診断情報収集部11は、移動体40の診断部41によって受信された各移動体40の診断情報を取得し、診断情報データベース201(以降、診断情報DB201という)へ格納する。
【0052】
図11(a)に示すように、診断情報DB201は、各移動体の移動体ID、移動体40の駆動手段45に内蔵されている各種の駆動系診断センサ、電池残量、各項目から判別する移動体40の車両状態が格納されている。各移動体40の車両状態を一括で管理することが可能となり、配車指示時若しくは、移動体40のメンテナンス時期の目安とすることが可能となる。
【0053】
移動体情報収集部12は、各移動体40と通信を行い、移動体40ごとの移動体情報を取得し、移動体情報データベース202(以降、移動体情報DB202という)へ格納する。
【0054】
図11(b)に示すように、移動体情報DB202は、各移動体の移動体ID、位置情報、稼動状況、電池残量のデータを格納する。例えば、移動体No.0001は、緯度35°32´5.10″、経度139°10´3.80″に位置し、現在、Aデパートまで運行中、16:00に運行終了予定であり、現在の電池残量は80%であることが分かる。移動体情報DB202に、各移動体40の移動体情報を格納することで、スムーズな配車指示が可能となる。
【0055】
図9に戻り、配車指示部13は、各移動体40から受信した移動体情報と、配車要求のあるユーザのスケジュール状況から各移動体40との無線通信によって、移動体40に対し、配車指示情報(配車先の位置及び配車時刻を含む)を生成し、配車指示を行う。
【0056】
上記の車両状態報知システム100の構成は、あくまで一例であり、一つの機能ブロック(データベース及び機能処理部)を分割し、あるいは複数の機能ブロックをまとめて一つの機能ブロックとして構成してもよい。各機能処理部は、装置に内蔵されたCPU(Central Processing Unit)が、ROM(Read Only Memory)、フラッシュメモリ、SSD(Solid State Drive)、ハードディスク等の記憶装置に格納されたコンピュータ・プログラムを読み出し、逐次実行することによって実現される。すなわち、各機能処理部は、このコンピュータ・プログラムが、記憶装置に格納されたデータベース(DB;Data Base)やメモリ上の記憶領域からテーブル等の必要なデータを読み書きし、場合によっては、関連するハードウェア(例えば、入出力装置、表示装置、通信インタフェース装置)を制御することによって実現される。また、本実施形態におけるデータベースは、商用データベースであってよいが、単なるテーブルやファイルの集合体をも意味し、データベースの内部構造自体は問わないものとする。
【0057】
(移動体の動作)
図12は、本実施形態の処理フローを示す図である。まず、移動体40の診断部41は、監視対象検知部42に内蔵されている周囲監視センサ42aと駆動系診断センサ45bをONにする(ステップS101)。次に、診断部41は、所定時間(例えば30分)おきに自らの車両状態を駆動手段45に内蔵されている駆動するために必要な構成の各構成に設けられた駆動系診断センサ45bから診断結果を受信(ステップS102)し、診断情報DB101に格納する。次に、診断部41は、各種の駆動系診断センサ45bから受信した診断結果から車両状態の正常性を算出し、移動体40のメンテナンスが必要か否か判定する(ステップS103)。なお、ここでいうメンテナンスとは、診断結果から移動体40が単独で走行することができなくなる虞がある移動体40を例えば修理工場へ出向させて修理を行うことをいう。移動体40の車両状態が正常でメンテナンスが不要の場合(ステップS103“NO”)、診断した診断結果と併せて正常判定を診断情報DB101に格納し、その情報を管理装置10へ送信する(ステップS104)。
【0058】
次に、移動体40の周囲監視センサ42aが監視対象物を検知する処理について説明する。移動体40は、内蔵されている複数の周囲監視センサ42aの監視領域に監視対象物が存在していることを検知する(ステップS105“YES”)と、複数の周囲監視センサ42aのうち、どの周囲監視センサ42aが検知したか特定する(ステップS106)。移動体40は、検知した周囲監視センサ42aの方向の近傍に設置されている報知手段44によって移動体40の車両状態を報知する(ステップS107)。
【0059】
なお、診断部41から受信した診断結果より、移動体40の車両状態が異常と判定し、メンテナンスが必要な場合(ステップS103“YES”)、診断情報に併せて、異常判定を診断情報DB101に格納し、管理装置10にその情報を送信する(ステップS108)。管理装置10は、受信した情報を診断情報DB201に格納し、該当する移動体40が、単独で走行可能であれば、修理工場へ出向するよう配車指示を行い、単独での走行が不可能であれば、正常な移動体40を配車させ、連結することで、修理工場へ出向させる(ステップ109)。
【0060】
次に、
図13に示す移動体の処理フローの別例を説明する。移動体40の進行方向の前方に大型車が走行しており、隣り合う車両からは道路上に設置された信号機の表示状態の確認がとれない状況である場合の例を説明する。移動体40は、予め周囲監視センサ42a及びカメラ42bをONにする(ステップS201)。移動体40は、自らの周囲監視センサ42a若しくはカメラ42bの画像認識機能を用いて、前方に大型車の存在を検知する(ステップS202“YES”)。大型車の存在を検知すると、信号機情報取得部46は、進行方向前方に設置されている信号機があれば、その信号機と無線通信によって、信号機の表示状態の取得要求を送信し、信号機の表示状態を受信する(ステップS203)。次に、移動体40に備えられている複数の周囲監視センサ42aによって、監視領域に監視対象物を検知した場合(ステップS204“YES”)、複数の周囲監視センサ42aの内、どの周囲監視センサ42aが検知したか特定する(ステップS205)。移動体40は、検知した周囲監視センサ42a方向の近傍に設置されている報知手段44によって信号機の表示状態を報知する(ステップS206)。なお、大型車を検知しない場合(ステップS202“NO”)は、本処理は終了する。
【0061】
(実施形態の効果)
以上説明のように本実施形態の車両状態報知システム100によれば、移動体40が、車両状態を外部に報知する信号を送信する報知手段44と、移動体40からみて複数の方向の範囲領域の範囲領域に属し、移動体から所定距離内の周囲に動く物体を監視対象として検知する監視対象検知部42と、走行中又は待機中に自らの車両状態を診断する診断部41と、を備え、監視対象検知部42で検知された監視対象が属する範囲領域の方向のそれぞれに対して監視対象検知部42が検知した情報や診断部が診断した診断結果を報知する。このようにすることで、移動体40が周囲の人間や車両等を確実に認識していることや移動体40の各種機能が正常に動作していることを、周囲の人間や車両に向かって知らせることができ、自動走行車に対して周囲が安心感を持つことができる。
【0062】
また、移動体40は、自らの移動方向及び移動速度を含む移動状態を検知する移動状態検知部43を更に有し、報知手段44が監視対象検知部42で検知された監視対象が属する範囲領域の方向のそれぞれに対して移動状態を報知する。このようにすることで、周囲に対して、各移動体40の次の行動を把握させることで、注意喚起を促すことが可能となる。
【0063】
また、移動体40は、周囲監視用のカメラ42bを備えるので、動く物体、すなわち、人、動物、車両(自転車を含む)だけでなく、静止する物体も画像認識により監視対象に含めることができる。
【0064】
また、移動体40は、道路上に設置された信号機の表示状態を信号機と無線通信を行うことによって取得する信号機情報取得部46を更に有しているので、移動体40の進行方向に設けられている信号機の表示状態を報知することができる。例えば、前方に大型車が存在し、前方の信号機の表示状態の確認が取れない場合であっても、監視対象検知部42で検知された方向に設置されているディスプレイに信号機の表示状態を報知することで、移動体40に隣接した車両は、信号機の表示状態を把握できるため安全に車両を走行することが可能となる。
【0065】
また、報知手段44は、文字、画像、光、音のうち少なくともいずれか1つ又はその組合せの手段により報知することで、多様な報知の手段を用いることが可能となるため、周囲に対してより視認性及び認知性を高めることが可能となる。
【0066】
以上、実施形態を用いて本発明を説明したが、本発明の技術的範囲は上記実施形態に記載の範囲には限定されないことは言うまでもない。上記実施形態に、多様な変更または改良を加えることが可能であることが当業者に明らかである。またその様な変更または改良を加えた形態も本発明の技術的範囲に含まれ得ることが、特許請求の範囲の記載から明らかである。なお、上記の実施形態では、本発明を物の発明として捉え、車両状態報知システム100の主に移動体40について説明したが、本発明は、車両状態報知システム100における移動体40の車両状態報知方法の発明として捉えることもできる。