(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
【発明を実施するための形態】
【0015】
以下に添付図面を参照しながら、本発明の好適な実施形態について詳細に説明する。かかる実施形態に示す寸法、材料、その他具体的な数値等は、発明の理解を容易とするための例示にすぎず、特に断る場合を除き、本発明を限定するものではない。なお、本明細書および図面において、実質的に同一の機能、構成を有する要素については、同一の符号を付することにより重複説明を省略し、また本発明に直接関係のない要素は図示を省略する。
【0016】
近年、石炭、石油コークス(ペトロコークス)、バイオマス、タイヤチップ等のガス化原料からガス化ガスを生成するガス化技術が開発されている。このようにして生成されたガス化ガスは、発電システムや、水素の製造、合成燃料(合成石油)の製造、化学肥料(尿素)等の化学製品の製造等に利用されている。
【0017】
ガス化技術として、加熱した流動媒体が有する熱を利用して、ガス化原料をガス化するガス化ガス生成装置が開発されている。このようなガス化ガス生成装置によって生成されたガス化ガスには、ガス化原料由来のタールおよび灰、流動媒体が含まれる。このため、ガス化ガスからタールを分解し、灰、および、流動媒体を除去するために改質炉(溶融炉システム)が利用されている。以下、ガス化原料由来の灰および流動媒体を併せて灰分と称する。
【0018】
以下、まず、改質炉として機能する溶融炉システムを含んで構成されるガス化ガス生成ユニットについて説明し、続いてガス化ガス生成ユニットを構成する、ガス化ガス生成装置、溶融炉システム、精製装置について詳述する。
【0019】
(ガス化ガス生成ユニット100)
図1は、ガス化ガス生成ユニット100を説明するための図である。
図1に示すようにガス化ガス生成ユニット100は、ガス化ガス生成装置110と、溶融炉システム120と、精製装置130とを含んで構成される。ガス化ガス生成装置110は、ガス化原料をガス化させてガス化ガスX1を生成する。生成されたガス化ガスX1は、溶融炉システム120に導入され、ガス化ガスX1に含まれる可燃性ガス(例えば、水素)の一部を燃焼させることにより、ガス化ガスX1に含まれる灰分を溶融させて溶融スラグを生成し、ガス化ガスX1から灰分を除去して、ガス化ガスX2を生成する。ガス化ガスX2は、溶融炉システム120の水槽上部の空間を通過することで抜熱され、抜熱されたガス化ガスX3は下流機器である精製装置130に送出される。精製装置130は、ガス化ガスX3を精製する。以下、ガス化ガス生成装置110、溶融炉システム120、精製装置130の具体的な構成について説明する。
【0020】
(ガス化ガス生成装置110)
図2は、ガス化ガス生成装置110を説明するための図である。
図2中、ガス化原料、ガス、水蒸気、空気、酸化剤の流れを実線の矢印で、流動媒体(砂)の流れを一点鎖線の矢印で示す。
【0021】
ガス化ガス生成装置110は、燃焼炉112と、媒体分離装置(サイクロン)114と、ガス化炉116とを含んで構成される。ガス化ガス生成装置110は、循環流動層式ガス化システムであり、全体として、粒径が300μm程度の硅砂(珪砂)等の砂で構成される流動媒体を熱媒体として循環させている。具体的に説明すると、まず、流動媒体は、燃焼炉112で900℃〜1000℃程度に加熱され、燃焼排ガスEXとともに媒体分離装置114に導入される。媒体分離装置114においては、高温の流動媒体と燃焼排ガスEXとが分離され、当該分離された燃焼排ガスEXは、不図示の熱交換器(例えば、ボイラー)等で熱回収された後、外部へ排出される。
【0022】
一方、媒体分離装置114で分離された高温の流動媒体は、ガス化炉116に導入される。そして、ガス化炉116に導入された流動媒体は、ガス化炉116の底面から導入されるガス化剤(例えば、水蒸気)によって流動層化された後、最終的に、燃焼炉112に戻される。
【0023】
ガス化炉116は、例えば、気泡流動層(バブリング流動層)ガス化炉であり、褐炭等の石炭、石油コークス、バイオマス、タイヤチップ等の固体原料や、黒液等の液体原料といったガス化原料を700℃〜900℃でガス化させてガス化ガスを生成する。本実施形態では、ガス化炉116に水蒸気を供給することにより、ガス化原料をガス化させてガス化ガスを生成する(水蒸気ガス化)。
【0024】
なお、ここでは、ガス化炉116として、循環流動層方式を例に挙げて説明したが、ガス化原料をガス化することができれば、ガス化炉116は、単なる流動層方式や、砂が自重で鉛直下方向に流下することで移動層を形成する移動層方式であってもよい。
【0025】
ガス化炉116で生成されたガス化ガスX1には、タール、灰分、水蒸気等が含まれているため、下流の溶融炉システム120、精製装置130に送出され、精製される。
【0026】
(溶融炉システム120)
図3は、溶融炉システム120を説明するための図である。溶融炉システム120は、溶融炉210と、酸化剤導入部240と、水槽250と、輻射防止板260と、スラグ排出機構270とを含んで構成される。
図3中、ガス、スラグ、水等の物質の流れを実線の矢印で、信号の流れを破線の矢印で示す。
【0027】
図3に示すように、溶融炉210は、主に溶融スラグMS(
図3中、黒い塗りつぶしで示す)を生成する本体上部220と、本体上部220の鉛直下方(
図3中、Z軸方向)に接続される本体下部230とを含んで構成される。
【0028】
本体上部220は、中心軸が鉛直方向(
図3中、Z軸方向)にある筒形状(例えば、円筒形状)であり、上部側壁にガス導入口222aが形成されるとともに、下部(底部)に下部開口222bが形成された炉本体222と、炉本体222の下部開口222bを形成する縁部から中空断面積が鉛直下方向に向かって漸減するように傾斜した傾斜部224とを含んで構成される。また、傾斜部224の下部(底部)には、通過口224aが形成されている。
【0029】
本体下部230は、上部に傾斜部224の通過口224aと連通する上部開口230aと、上部開口230aより下方に配され鉛直下方に延在した延在部230bと、延在部230bの側壁に形成されたガス送出口230cと、延在部230bの下端に形成された下端開口230dとを含んで構成される。また、延在部230bの下端開口230dは、後述する水槽250によって水封される。
【0030】
本体上部220(炉本体222、傾斜部224)は、アルミナやシリカからなる耐火材で構成され、本体下部230は、金属で構成される。また、本体下部230には高温化を抑制するため、水を流通させることで壁面を冷却する冷却管が配される。なお、当該壁面は、耐熱性を有すれば、金属壁で構成されてもよい。
【0031】
ここで、溶融炉210におけるガス化ガスX1の処理について説明すると、炉本体222の上部側壁に設けられたガス導入口222aを通じて、ガス化炉116から炉本体222(本体上部220)にガス化ガスX1が導入される。また、炉本体222の上部には、酸化剤導入部240が設けられており、酸化剤導入部240は、本体上部220に酸化剤(例えば、酸素)を導入する。
【0032】
このように、ガス導入口222aを通じてガス化ガスX1が導入されるとともに、酸化剤導入部240によって酸化剤が導入されると、酸化剤によってガス化ガスX1中の可燃性ガス(例えば、水素)の一部が燃焼し(酸化され)、ガス化ガスX1が900℃〜1500℃程度に昇温されて、ガス化ガスX1に含まれるタールが改質(酸化改質)される。
【0033】
また、タールとともにガス化ガスX1に含まれる灰分は、ガス化ガスX1の燃焼熱によってスラグ化し、溶融スラグMSとなって、ガス化ガスX1から分離される。
【0034】
このようにして、タール、灰分が除去されたガス化ガスX2は、延在部230b内の空間(後述する水槽250上部の空間)を通過することで抜熱され、抜熱されたガス化ガスX3は、延在部230bの側壁に設けられたガス送出口230cを通じて、後段の精製装置130に送出される。一方、ガス化ガスX1の燃焼熱によってスラグ化した溶融スラグMSは、傾斜部224において集められ、傾斜部224を伝って流下し、水槽250に落下することとなる。
【0035】
水槽250は、水を貯留し、貯留された水で、溶融炉210の本体下部230の下端開口230dを水封部として下端開口230dから外部へのガス化ガスX3の漏洩を防止する。また、水槽250は、通過口224aを通じて落下した溶融スラグMSを急冷して固化し、固化スラグSS(
図3中、ハッチングで示す)とする。
【0036】
このような水槽250で溶融炉210を水封する構成では、水槽250に貯留された水が、溶融炉210内の1000℃以上の高温のガス化ガスX2からの輻射熱を受けるため、ガス化ガスX3の温度が低下し、かつ、ガス化ガスX3には、蒸発した水分(水蒸気)が含まれることになる。そうすると、溶融炉システム120の下流に配される精製装置130の熱回収部において回収されるガス化ガスX3の熱量が低減してしまったり、ガス化ガスX3中に余計な水蒸気が追加されてしまったりするという問題が生じる。
【0037】
そこで、本実施形態では、溶融炉システム120は、輻射防止板260を備え、ガス化ガスX2から水槽250の水面への輻射を低減して、ガス化ガスX3の温度低下を抑制し、スラグ排出機構270によって溶融スラグMSを溶融炉システム120の外部へ排出する。以下、輻射防止板260、および、スラグ排出機構270の具体的な構成について説明する。
【0038】
(輻射防止板260、スラグ排出機構270)
図4は、輻射防止板260およびスラグ排出機構270を説明するための図である。
図4中、冷却水、固化スラグSS等の物質の流れを実線の矢印で、信号の流れを破線の矢印で、領域Dを白抜き矢印で示す。
図4に示すように、輻射防止板260は、例えば、ステンレス等の金属で構成され、水平方向(
図4中、XY平面方向)に延在した板形状であり、少なくとも上面が、水槽250に貯留された水の水面のうち下端開口230dに囲繞された水面を覆うように、水面の上方に位置するように設けられる。
【0039】
輻射防止板260を備える構成により、本体上部220内の1000℃以上の高温のガス化ガスX2からの輻射を、輻射防止板260で遮断し、水面の加熱を抑制することができる。これにより、ガス化ガスX3の温度低下、および、ガス化ガスX3中への余計な水蒸気の追加を抑制することが可能となる。
【0040】
また、
図4(a)に示すように、輻射防止板260は、下端開口230dに囲繞された水面のうち、少なくとも通過口224aに対応する領域Dを含む水面の上方に設けられる。詳細に説明すると、輻射防止板260は、水面における、通過口224aを鉛直下方向に移動させた仮想面(通過口224aの投影面)を覆うように水面の上方に設けられる。換言すれば、鉛直方向(
図3中、Z軸方向)から見た場合に、通過口224aの占める領域が、輻射防止板260の占める領域内に含まれるように、輻射防止板260が水面の上方に配される。かかる構成により、通過口224aを通じて落下した溶融スラグMSを輻射防止板260上で一時的に受け止めることが可能となる。なお、輻射防止板260は、落下した溶融スラグMSを一時的に受け止める強度を有している。
【0041】
そして、輻射防止板260上に受け止められた溶融スラグMSは、輻射防止板260によってある程度冷却されることにより、その一部は固化が始まり(流動性が失われ始め)、固化スラグSSとなる。そして、後述するスラグ排出機構270によって輻射防止板260を水槽250中に移動させることによって、輻射防止板260上に受け止められた溶融スラグMSおよび固化スラグSSが急冷され、すべて固化スラグSSの状態となって、スラグ排出機構270によって外部に排出される。
【0042】
また、輻射防止板260の近傍には、冷却水を輻射防止板260の底面に吹き付ける冷却機構262が設けられている。冷却機構262を備える構成により、輻射防止板260の熱変形を抑制することが可能となる。また、輻射防止板260が冷却されることにより、輻射防止板260への溶融スラグMSの付着性を低下させることが可能となる。
【0043】
スラグ排出機構270は、制御部272と、移動部280と、スラグ排除部290と、搬送部300とを含んで構成される。
【0044】
制御部272は、CPU(中央処理装置)を含む半導体集積回路で構成され、ROMからCPU自体を動作させるためのプログラムやパラメータ等を読み出し、ワークエリアとしてのRAMや他の電子回路と協働してスラグ排出機構270全体を管理および制御する。本実施形態において、制御部272は、後述する移動部280、スラグ排除部290、搬送部300を制御する。制御部272による移動部280、スラグ排除部290、搬送部300の制御については後に詳述する。
【0045】
移動部280は、制御部272による制御指令に応じて、輻射防止板260の上面が下端開口230dに囲繞された水面の上方に位置する水上位置(
図4(a)参照)と、輻射防止板260の上面が水槽250に貯留された水中に位置する水中位置(
図4(b)参照)とに、輻射防止板260を昇降移動させる。
【0046】
具体的に説明すると、移動部280は、金属で形成された複数(例えば4本)のロッド282と、ロッド282を鉛直方向(
図4中、Z軸方向)に伸縮させる昇降機構284とを含んで構成される。移動部280のロッド282の上端には、輻射防止板260が固定され、輻射防止板260が固定された状態で、制御部272による制御指令に応じて昇降機構284がロッド282を伸縮することにより、輻射防止板260を、水上位置と水中位置とに昇降移動させる。
【0047】
移動部280が輻射防止板260を水上位置に移動させる構成により、ガス化ガスX2から水面へ直接輻射することがなくなるため、ガス化ガスX3の温度低下を抑制することができる。また、水面からの水の蒸発量を低減することができる。さらに、輻射防止板260上で溶融スラグMSを受け止めることが可能となる。
【0048】
また、移動部280における輻射防止板260と接触するロッド282を、熱伝導率が高い金属で構成することにより、水上位置において、常時水に浸漬されたロッド282で輻射防止板260を冷却することができる。これにより、輻射防止板260の熱変形を抑制することが可能となる。また、輻射防止板260が冷却されることにより、輻射防止板260への溶融スラグMSの付着性を低下させることが可能となる。
【0049】
そして、移動部280が、溶融スラグMSを受け止めた輻射防止板260を水中位置に移動させる構成により、水槽250に貯留された水で溶融スラグMSを急冷し、固化させて、固化スラグSSとすることができる。
【0050】
スラグ排除部290は、ハンマー292と、駆動部294と、バルブ296とを含んで構成される。スラグ排除部290は、制御部272の制御指令に応じて、ハンマー292を水槽250外に保持する収納状態と(
図4(a)参照)、固化スラグSSの打破を試みて、ハンマー292を水槽250内に突出させる突出状態(
図4(b)参照)とに変移する。本実施形態において、スラグ排除部290は、輻射防止板260が水上位置にある場合には収納状態となり、輻射防止板260が水中位置にある場合に突出状態に変移する。
【0051】
ハンマー292は、金属で構成された棒形状の部材である。駆動部294は、水槽250外に配され、制御部272による制御指令に応じて、ハンマー292を直線的に移動させることで、ハンマー292を水槽250内に突出させる(
図4(b)に示す突出状態)。詳細に説明すると、水槽250の側壁には貫通路252が設けられており、ハンマー292は貫通路252を通じて、水槽250外と水槽250内とを往復することとなる。
【0052】
なお、貫通路252における水槽250の外側には、玉形弁やストップ弁からなるバルブ296が設けられており、ハンマー292の突出状態においては、制御部272による制御指令に応じてバルブ296が開かれて、貫通路252(水槽250内)と水槽250外とが連通され、ハンマー292の収納状態においては、制御部272による制御指令に応じてバルブ296が閉じられて、貫通路252と水槽250外とが遮断される。
【0053】
このように、ハンマー292が収納状態から突出状態に変移すると、ハンマー292によって輻射防止板260に受け止められた固化スラグSSが打破され、輻射防止板260から固化スラグSS(溶融スラグMS)が排除される。なお、固化スラグSSは、溶融スラグMSと比較して、衝撃によって打破されやすい。したがって、移動部280によって水中位置に移動されることによって生成された固化スラグSSをハンマー292によって打破する構成により、輻射防止板260から容易に固化スラグSS(溶融スラグMS)を排除することが可能となる。
【0054】
そして、輻射防止板260から固化スラグSSが排除された後、制御部272は、駆動部294およびバルブ296を制御してハンマー292を収納状態に変移させ、昇降機構284を制御して輻射防止板260を水上位置に移動させ、以下、上記処理を繰り返す。
【0055】
搬送部300は、例えば、コンベアで構成され、水槽250において固化された固化スラグSSを外部に送出する。このようにして、送出された固化スラグSSは、粒度調整などの工程を経て、セメント原料、土木建材用資材、ガラス原料等として再利用される。
【0056】
以上説明したように、本実施形態にかかる溶融炉システム120によれば、下端開口230dに囲繞された水面の上方に輻射防止板260を設けるといった簡易な構成で、ガス化ガスX2から水槽250の水面への輻射を低減して、ガス化ガスX3の温度低下を抑制することが可能となる。
【0057】
(精製装置130)
図5は、精製装置130を説明するための図である。
図5に示すように、精製装置130は、熱回収部132と、第1冷却器134と、第2冷却器136と、昇圧器138と、排水処理器140と、脱硫器142と、脱アンモニア器144と、脱塩器146とを含んで構成される。なお、脱硫器142、脱アンモニア器144、脱塩器146はガス化ガスX3の用途およびガス化原料の種類に応じて、設置順序および設置有無を変更することができる。
【0058】
熱回収部132は、溶融炉システム120から導入されたガス化ガスX3と水蒸気との熱交換を行い、すなわち、ガス化ガスX3の顕熱を水蒸気で回収し、ガス化ガスX3の出口温度を300℃〜600℃にする。
【0059】
第1冷却器134は、水をスプレー噴霧することにより、300℃〜600℃となったガス化ガスX3をさらに冷却する。これにより、ガス化ガスX3に残存するタールや粉塵(灰)が凝縮し、ガス化ガスX3から除去される。
【0060】
第2冷却器136は、海水、ブライン等を用いて、ガス化ガスX3を30℃以下にさらに冷却し、さらに残存するタールや粉塵を凝縮して除去する。なお、第2冷却器136の後段に電機集塵機等で構成されるミスト・粉塵除去器を設け、タールや粉塵をさらに除去することもできる。
【0061】
昇圧器138は、ブロワや圧縮機、ターボ型のポンプ、容積型のポンプ等で構成され、第2冷却器136を通過したガス化ガスX3を0.1MPa〜5MPaに昇圧する。なお、昇圧器138の後段にガス化ガスX3を30℃以下に冷却する冷却器を設け、タールや粉塵をさらに除去することもできる。
【0062】
排水処理器140は、第1冷却器134、第2冷却器136、昇圧器138で発生するタールや粉塵を含有する排水からタールや粉塵を除去する処理を行う。排水処理器140で処理した後の水(処理後水)は、熱回収部132や第1冷却器134等で再利用される。
【0063】
脱硫器142は、ガス化ガスX3に残存する硫黄や硫黄化合物を除去する。脱アンモニア器144は、ガス化ガスX3中のアンモニア等の窒素化合物を除去する。脱塩器146は、ガス化ガスX3中の塩素や塩素化合物を除去する。
【0064】
このように、ガス化ガス生成装置110で生成され、溶融炉システム120でタール、燃焼灰、流動媒体が除去されたガス化ガスX3は、熱回収部132、第1冷却器134、第2冷却器136、昇圧器138においてタール、燃焼灰、流動媒体が除去され、脱硫器142で硫黄や硫黄化合物が、脱アンモニア器144でアンモニアやアンモニア化合物が、脱塩器146で塩素や塩素化合物がそれぞれ除去されることにより精製され、精製ガス化ガスとなる。
【0065】
(第1の変形例)
上記実施形態では、輻射防止板260を昇降移動させる移動部280を含んで構成されるスラグ排出機構270について説明した。しかし、スラグ排出機構は、少なくとも輻射防止板260上に受け止められた溶融スラグMSを外部に排出することができれば構成に限定はない。
【0066】
図6は、第1の変形例にかかるスラグ排出機構470を説明するための図である。
図6中、冷却水、固化スラグSS等の物質の流れを実線の矢印で、信号の流れを破線の矢印で、領域Dを白抜き矢印で示す。
図6に示すように、スラグ排出機構470は、制御部472と、移動部480と、搬送部300とを含んで構成される。なお、搬送部300は、上述した実施形態で説明した搬送部300と実質的に機能が等しいため、ここでは、同一の符号を付して説明を省略する。
【0067】
制御部472は、CPU(中央処理装置)を含む半導体集積回路で構成され、ROMからCPU自体を動作させるためのプログラムやパラメータ等を読み出し、ワークエリアとしてのRAMや他の電子回路と協働してスラグ排出機構470全体を管理および制御する。本実施形態において、制御部472は、後述する移動部480、搬送部300を制御する。制御部472による移動部480の制御については後に詳述する。
【0068】
移動部480は、制御部472による制御指令に応じて、輻射防止板260の面上に水平方向(
図6中、Y軸方向)に配された任意の軸を回転軸480aとして、輻射防止板260の上面が下端開口230dに囲繞された水面の上方に位置する水上位置(
図6(a)参照)と、輻射防止板260の少なくとも一部が水槽250に貯留された水中に位置する水中位置(
図6(b)参照)とに輻射防止板260を回動させる。具体的に説明すると、移動部480は、輻射防止板260の円周近傍に設けられ、水平方向を回転軸480aとして輻射防止板260を回動自在に保持する、金属で形成された保持棒482と、金属で形成された1本のロッド484と、ロッド484を鉛直方向(
図6中、Z軸方向)に伸縮させる伸縮機構486とを含んで構成される。移動部480のロッド484の上端には、輻射防止板260が載置され、輻射防止板260が載置された状態で、制御部472による制御指令に応じて伸縮機構486がロッド484を伸縮することにより、輻射防止板260を、水上位置と水中位置とに回動させる。なお、本実施形態において、回転軸480aおよび保持棒482は、ロッド484および伸縮機構486より、搬送部300の搬送方向の上流側に配される。
【0069】
移動部480が輻射防止板260を水上位置に移動させる構成により、ガス化ガスX2から水面へ直接輻射することがなくなるため、ガス化ガスX3の温度低下を抑制することができる。また、水面からの水の蒸発量を低減することができる。さらに、輻射防止板260上で溶融スラグMSを受け止めることが可能となる。
【0070】
また、移動部480における輻射防止板260と接触する、保持棒482およびロッド484を、熱伝導率が高い金属で構成することにより、水上位置において、常時水に浸漬された保持棒482およびロッド484で輻射防止板260を冷却することができる。これにより、輻射防止板260の熱変形を抑制することが可能となる。また、輻射防止板260が冷却されることにより、輻射防止板260への溶融スラグMSの付着性を低下させることが可能となる。
【0071】
そして、移動部480が、溶融スラグMSを受け止めた輻射防止板260を水上位置から水中位置に回動させる構成により、輻射防止板260に受け止められた溶融スラグMSを、水槽250の水で急冷して固化させ固化スラグSSとすることができる。固化スラグSSは、溶融スラグMSと比較して、粘性が極めて低く、自重で容易に流下(落下)する。したがって、移動部480が、溶融スラグMSごと輻射防止板260を水中位置に回動させるだけで、溶融スラグMSを固化スラグSSとし、自重で水中に移動させることができる。
【0072】
さらに、第1の変形例において、冷却機構262は、保持棒482における輻射防止板260を保持する箇所や、輻射防止板260における常時水上に位置する箇所の底面に冷却水を吹き付ける。
【0073】
このように、輻射防止板260および保持棒482を冷却することにより、輻射防止板260および保持棒482の耐久性を向上させることが可能となる。また、輻射防止板260が冷却されることにより、輻射防止板260への溶融スラグMSの付着性を低下させることが可能となる。
【0074】
そして、輻射防止板260から固化スラグSSが排除された後、制御部472は、伸縮機構486を制御して輻射防止板260を水上位置に移動させ、以下、上記処理を繰り返す。
【0075】
(第2の変形例)
図7は、第2の変形例にかかるスラグ排出機構570を説明するための図である。
図7中、固化スラグSSの流れを実線の矢印で、信号の流れを破線の矢印で示す。
図7に示すように、スラグ排出機構570は、制御部572と、移動部580と、搬送部590とを含んで構成される。
【0076】
制御部572は、CPU(中央処理装置)を含む半導体集積回路で構成され、ROMからCPU自体を動作させるためのプログラムやパラメータ等を読み出し、ワークエリアとしてのRAMや他の電子回路と協働してスラグ排出機構570全体を管理および制御する。本実施形態において、制御部572は、後述する移動部580、搬送部590を制御する。制御部572による移動部580、搬送部590の制御については後に詳述する。
【0077】
移動部580は、制御部572による制御指令に応じて、輻射防止板260の上面が下端開口230dに囲繞された水面の上方に位置する水上位置(
図7(a)参照)と、輻射防止板260の上面が水槽250に貯留された水中に位置する水中位置(
図7(b)参照)とに、輻射防止板260を昇降移動させる。具体的に説明すると、移動部580は、金属で形成された複数(例えば4本)のロッド582と、ロッド582を鉛直方向(
図7中、Z軸方向)に伸縮させる昇降機構584とを含んで構成される。移動部580のロッド582の上端には、輻射防止板260が着脱自在に載置され、輻射防止板260が載置された状態で、制御部572による制御指令に応じて昇降機構584がロッド582を伸縮することにより、輻射防止板260を、水上位置と水中位置とに昇降移動させる。ここで、移動部580は、輻射防止板260を水中位置に移動させた際に、輻射防止板260を搬送部590に載置する。
【0078】
搬送部590は、例えば、搬送面から鉛直上方に向かって立設したスクレパー592を有するスクレパーコンベアで構成され、移動部580によって水中位置に移動された溶融スラグMS(固化スラグSS)を輻射防止板260ごと水槽250から外部へ搬送する。
【0079】
具体的に説明すると、固化スラグSSごと輻射防止板260を水槽250から搬送する際には、まず、溶融炉システム120の下方に配される搬送部590Aの上流側に配される搬送部590Bに新たな輻射防止板260を載置する。そして、制御部572は、移動部580を駆動させて輻射防止板260を固化スラグSSごと水中位置に移動させ、輻射防止板260を搬送部590Aに載置する。
【0080】
続いて、制御部572は、搬送部590A、590B、搬送部590Aの下流側に配される搬送部590Cを駆動させる。そうすると、搬送部590Aに載置された輻射防止板260は、搬送部590Aのスクレパー592によって搬送され、搬送部590Cに受け渡されて外部に排出される。この外部に排出された輻射防止板260は上面(溶融スラグMSを受け止めていた面)に付着したスラグ(固化スラグSS)を取り除いて再利用可能な状態であれば、後述する新たな輻射防止板260として再利用することもできる。
【0081】
また、搬送部590Bに設置された新たな輻射防止板260は、搬送部590Bのスクレパー592によって搬送され、搬送部590Aに受け渡されて、溶融炉システム120の下方に配されることとなる。そして、制御部572は、移動部580を駆動させて、新たな輻射防止板260を水上位置に移動させ、以下、上記処理を繰り返す。
【0082】
なお、固化スラグSSが受け止められた輻射防止板260が溶融炉システム120の下方から搬出された後であって、新たな輻射防止板260が溶融炉システム120の下方に搬入されるまでの間に、溶融スラグMSが水槽250に落下した場合であっても、溶融スラグMS(固化スラグSS)は、搬送部590Aのスクレパー592によって、外部に排出されることとなる。
【0083】
以上説明したように、変形例にかかるスラグ排出機構470、570によっても、輻射防止板260上に受け止められた溶融スラグMSを外部に排出することが可能となる。
【0084】
以上、添付図面を参照しながら本発明の好適な実施形態について説明したが、本発明はかかる実施形態に限定されないことは言うまでもない。当業者であれば、特許請求の範囲に記載された範疇において、各種の変更例または修正例に想到し得ることは明らかであり、それらについても当然に本発明の技術的範囲に属するものと了解される。
【0085】
例えば、上述した実施形態において、水上位置にある輻射防止板260の底面の位置については言及していないが、輻射防止板260の底面は、水中に配されても水上に配されてもよい。輻射防止板260は、水上位置において、少なくとも上面が、下端開口230dに囲繞された水面の上方に位置すればよい。
【0086】
また、上述した実施形態において、移動部280が、輻射防止板260の上面すべてが水槽250に貯留された水中に位置する水中位置に輻射防止板260を昇降移動させる構成を例に挙げて説明した。しかし、移動部280は、輻射防止板260を傾けて移動させる等して、輻射防止板260の上面の少なくとも一部が水槽250に貯留された水中に位置する水中位置に輻射防止板260を昇降移動させるとしてもよい。
【0087】
また、上述した第1の変形例において、移動部480が、水平方向に配された任意の軸を回転軸480aとして、水上位置と水中位置とに輻射防止板260を回動させる構成を例に挙げて説明した。しかし、輻射防止板260を水上位置と水中位置とに回動させることができれば、移動部480の回転軸は必ずしも水平方向に配されずともよい。
【0088】
また、上述した実施形態において、輻射防止板260の大きさは、移動部280、480、580が移動可能な程度に、下端開口230dに囲繞された水面をほぼすべて覆う大きさである構成を例に挙げて説明した。しかし、輻射防止板260は、水面における、少なくとも通過口224aに対応する領域の上方に設けられればよい。
【0089】
また、上述した実施形態において、溶融炉210が円筒形状である場合を例に挙げて説明したが、溶融炉210は中空形状であれば、円筒に限定されず、例えば、角柱の中空形状であってもよい。
【0090】
また、上記実施形態において、溶融炉システム120が冷却機構262を備える構成を例に挙げて説明したが、冷却機構262は、必須の構成ではない。
【0091】
また、上述した実施形態において、溶融炉システム120が、ガス化ガス中に含まれる灰を溶融する構成を例に挙げて説明した。しかし、溶融炉システム120は、例えば、工業原料、廃棄物、下水汚泥等を焼却することによって生じた灰を溶融してもよい。
【0092】
また、上述した実施形態において、駆動部294は、ハンマー292を直線的に移動させるとしたが、駆動部294は、ハンマー292を移動させられれば、どのような軌跡で移動させてもよい。