(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
前記転調装置はさらに、前記楽曲データにおいて、前記転調が指示された区間内の末尾の所定区間内の1つ以上のコードデータを、前記転調の前の調性に対応する音階のダイアトニックコードにおける前記トニックコードデータ以外のコードデータに変更する第2の円滑転調部をさらに有し、
前記出力部は、前記第1の円滑転調部および前記指示区間転調部に加えて、前記第2の円滑転調部によって変更が行われた楽曲データを転調された楽曲データとして出力する、請求項1に記載の転調装置。
第1の調性を第2の調性に転調するときの当該第2の調性に対応する音階のダイアトニックコードにおける前記トニックコードデータ以外のコードデータを円滑転調リストデータとして記憶する円滑転調リスト記憶部をさらに備え、
前記第1の円滑転調部は、前記転調の前の調性を前記第1の調性として指定するとともに前記転調の後の調性を前記第2の調性として指定して、前記円滑転調リスト記憶部が記憶する前記円滑転調リストデータを参照することにより、前記転調の後の調性に対応する音階のダイアトニックコードにおける前記トニックコードデータ以外のコードデータを決定し、
前記第2の円滑転調部は、前記転調の後の調性を前記第1の調性として指定するとともに前記転調の前の調性を前記第2の調性として指定して、前記円滑転調リスト記憶部が記憶する前記円滑転調リストデータを参照することにより、前記転調の前の調性に対応する音階のダイアトニックコードにおける前記トニックコードデータ以外のコードデータを決定する、
ことを特徴とする請求項2に記載の転調装置。
前記円滑転調リストデータは、前記第1の調性および前記第2の調性の組ごとに、当該第1の調性および第2の調性が参照されるときの優先順位を示す優先順位データを含み、
前記転調指示部はさらに、演奏するユーザに転調の効果を指示させ、
前記第1の円滑転調部または前記第2の円滑転調部は、前記指示された転調の効果に対応する優先順位データを有する前記円滑転調リストデータを参照する、
ことを特徴とする請求項4に記載の転調装置。
前記トニックコードデータ以外のコードデータによる変更は、前記5度のコードデータによる変更の手前に、当該コードデータが属する音階のダイアトニックコードにおける2度のコードデータによる変更をさらに含む、
ことを特徴とする請求項6に記載の転調装置。
前記転調指示部はさらに、前記転調が指示された区間の直前の区間および末尾の区間ごとに、前記5度のコードデータのみによる変更の指示、前記2度のコードデータによる変更および当該変更に続けて前記5度のコードデータによる変更の指示、または前記2度および前記5度のどちらの変更も行わない指示のいずれかを演奏するユーザに行わせる、
ことを特徴とする請求項7に記載の転調装置。
【発明を実施するための形態】
【0012】
以下、本発明を実施するための形態について図面を参照しながら詳細に説明する。
図1は、本発明による転調装置の実施形態の構成図である。転調装置100は例えば、MIDI(Musical Instrument Digital Interface)規格に基づいて構成される楽曲データの編集を行う装置における転調機能、あるいは、カラオケ装置の転調機能を実現する装置である。この転調装置100は、転調指示部101、第1の円滑転調部102、第2の円滑転調部103、指示区間転調部104、出力部105、円滑転調リスト記憶部108を備える。
【0013】
転調指示部101は、楽曲データ106の任意の区間に対する任意の調性への転調をユーザに指示させる。ここで、ユーザとは、楽曲の編集装置において編集を行う編集者、あるいは、カラオケ装置においてカラオケを歌う利用者である。
【0014】
第1の円滑転調部102は、楽曲データ106において、転調指示部101で転調が指示された区間(例えば楽曲の特定のパートを構成する複数小節)の直前の所定区間(例えば直前の1小節)内の1つ以上のコードデータを、転調の後の調性に対応する音階のダイアトニックコードにおけるトニックコードデータ以外のコードデータで書き換える。楽曲データ106は、例えばMIDIデータである。
【0015】
第2の円滑転調部103は、楽曲データ106において、転調指示部101で転調が指示された区間内の末尾の所定区間(例えばその区間内の最終小節)内の1つ以上のコードデータを、転調の前の調性に対応する音階のダイアトニックコードにおけるトニックコードデータ以外のコードデータで書き換える。
【0016】
上記トニックコードデータ以外のコードデータによる書換えは、そのコードデータが属する音階のダイアトニックコードにおける5度のコードデータによる書換えを含んでよい。さらに、その書換えは、上記5度のコードデータによる書換えの手前に、上記音階のダイアトニックコードにおける2度のコードデータによる書換えを含んでよい。
【0017】
この場合、転調指示部101はさらに、転調が指示された区間の直前の区間および末尾の区間ごとに、上記5度のコードデータのみによる書換えの指示、上記2度のコードデータによる書換えおよびその書換えに続けて上記5度のコードデータによる書換えの指示、または上記2度および5度のどちらの書換えも行わない指示のいずれかをユーザに行わせるようにしてよい。
【0018】
指示区間転調部104は、楽曲データ106において、転調指示部101で転調が指示された区間のコードデータを、転調の後の調性に対応するコードデータに書き換える。
出力部105は、第1の円滑転調部102、第2の円滑転調部103、および指示区間転調部104によって書換えが行われた楽曲データを転調された楽曲データ107として出力する。
【0019】
円滑転調リスト記憶部108については、後述する。
【0020】
図1に示される転調装置100の動作原理について説明する前に、まず、本実施形態を説明するために必要ないくつかの音楽の基本知識について説明する。
【0021】
楽曲データ106によって表現される楽曲は、その楽曲イメージを決定づける楽音のグループによって構成されており、それを調(キー)と呼ぶ。明るいイメージを与える調を長調(メジャーキー)という。切ないまたは悲しいイメージを与える調を短調(マイナーキー)という。
【0022】
調の中の楽音を1オクターブ(8度)内で音程順に第1音から第7音まで並べたもの(以降、各音をI、II、III、IV、V、VI、VIIと記載する)を音階(スケール)という。
【0023】
長調(メジャーキー)の音階(スケール)では、第3音IIIと第4音IV、第7音VIIと第8音Iの間の音程が半音になり、それ以外の隣り合う音程が全音になる。このような長調の音階を長音階(メジャースケール)という。短調(マイナーキー)の音階(スケール)では、第2音IIと第3音III、第5音Vと第6音VIの間の音程が半音になり、それ以外の隣り合う音程が全音になっている音階(スケール)を短音階(マイナースケール)という。
【0024】
楽曲には、調によって決まる音域が存在する。例えばカラオケ演奏において、利用者がその楽曲の調の音域を出せない場合に、歌手が出せる音域になるようにその楽曲の調を変更する転調が行われる。
【0025】
前述したように、従来、楽曲の全体を転調することは行われていた。この場合には、単純に楽曲全体にわたって転調元の調性が転調先の調性に平行移動されていた。しかし、平行移動だけだと、音楽的に違和感が発生する場合もあった。本実施形態では、例えばサビパートの区間で音域がかなり広くなってうまく歌えないような場合にその区間の小節群だけ転調することを可能にする。この場合、転調前の調性を有する小節からいきなり転調後の調性を有する小節が来ると、音楽的に大きな違和感を生じる。そこで、本実施形態では、
図1に示される転調装置100により、円滑な転調を実現する。
【0026】
例えばカラオケにおける歌の伴奏では、一般的に決められた調性の中で時間的に進行するメロディー音に対して、ある瞬間において同時またはほぼ同時に発音される複数音からなる和音(コード)が用いられる。和音(コード)は、根音に対して3度ずつ異なる音程の音を堆積した複数音をいう。根音と、根音に対して音程が3度高い第3音と、第3音に対して3度音程が高い第5音との3つの音による3度堆積の和音をトライアド(3和音)という。このうち、根音から長3度、短3度の順に堆積されている和音を長3和音(メジャートライアド)という。根音から短3度、長3度の順に堆積されている和音を短3和音(マイナートライアド)という。根音から長3度、長3度の順に堆積されている和音を増3和音(オーギュメントトライアド)という。根音から短3度、短3度の順に堆積されている和音を減3和音(ディミニッシュトライアド)という。すなわち、トライアド(3和音)には、
図2(a)に示されるように、4種類が存在する。
【0027】
上記4種類のトライアド(3和音)の最高音に対して、それぞれ、長3度、短3度、または例外的に減3度の音を堆積させて得られる4和音を、セブンスという。セブンス(4和音)には、
図2(b)に示されるような種類が存在する。
図2(b)において、空白の部分は、4音目を堆積すると元のコードのルート音に戻ってしまうため、新たなセブンス(4和音)にはならない。
【0028】
図3(a)は、Cメジャースケールの上に、スケールノート(音階構成音)だけで、3度ずつ隔たる音程の3音を堆積したトライアドのグループを示し、
図3(b)は、同じくCメジャースケールの上にスケールノートだけで、3度ずつ隔たる音程の4音を堆積した
セブンス系のグループを示したものである。これらはダイアトニックコードと呼ばれる。これらの図を見るとわかるように、 メジャースケールのトライアド(3和音)では、IとIVとVは必ずメジャートライアドとなり、II、III、VIは必ずマイナートライアドとなり、VIIは必ずディミニッシュトライアドとなる。また、メジャースケールのセブンス系コードは、IとIVは必ずメジャーセブンスとなり、II,III、VIは必ずマイナーセブンスとなり、Vは必ずセブンスとなり、VIIは必ずマイナーセブンスフラッテドファイブとなる。これらの関係は、調性が変わっても同じである。そこで、調性に関係無く、メジャースケールのダイアトニックコードを、
図3(a)の301:トライアドでは「I、IIm、IIIm、IV、V、VIm、VIIdim」、または
図3(b)の302:セブンス系では「Imaj7、IIm7、IIIm7、IVmaj7、V7、VIm7、VIIm7(♭5)」として表現する。このような表現を度数表記といい、それぞれのアラビア数字は、音階(スケール)上の根音からの度数を示す。
【0029】
マイナースケールにおいても同様な度数表記が可能であるが、ここでは省略する。
【0030】
楽曲の伴奏演奏においてコード進行を行う場合、音階(スケール)上のそれぞれの度数のコードには、このコードを使うと落ち着くとか、緊張感が出るとかの雰囲気(性格)を示す役割がある。この役割を音楽理論上、コードの「機能」という。
図4は、メジャースケールにおける度数ごとのコードの機能の一覧を示す図である。
【0031】
まず、度数Iまたは度数Imaj7(およびIIImまたはIIIm7とVImまたはVIm7)は、トニックと呼ばれる機能を有し、主音の性格を強く持っていてその調の中で一番安定した感じを与えるコードである。特に、度数IおよびImaj7は、主和音(トニックコード)と呼ばれる。
【0032】
次に、度数Vまたは度数V7(およびIIImまたはIIIm7とVIIdimまたはVIIm7(♭5))は、ドミナントと呼ばれる機能を有し、主和音(I)へ進もうとする性格が強く、この性格によってトニックが決められる。特にこの働きが強いのは、度数Vのコードであり、度数V7はその働きがさらに強くなる。
【0033】
度数IVまたはIVmaj7(およびIImまたはIIm7)は、サブドミナントと呼ばれる機能を有し、ドミナントへの足がかり的な性格を持つコードである。
【0034】
以上のメジャースケールにおけるコードの機能において、いわゆるトゥー・ファイブ・ワンと言われる「IIm7(サブドミナント)→V7(ドミナント)→I(トニック)」と変化するコード進行は、聴取者に非常に自然な感じを与えるコード進行である。
【0035】
そこで、
図1の実施形態では、このようなコードの機能に着目し、指示区間転調部104が指示された区間の転調を行うのに合わせて、第1の円滑転調部102が、転調が指示された区間の直前の所定区間(例えば直前の小節)内の1つ以上のコードデータを、転調の後の調性に対応する音階のダイアトニックコードにおけるトニックコードデータ以外のコードデータで書き換える。特に例えば、第1の円滑転調部102が、その直前の所定区間において、転調の後の調性に対応する音階のダイアトニックコードの「IIm7→V7」というコード進行になるようにコードを書き換える。これにより、直前の所定区間から転調が指示された区間の先頭の転調の後のダイアトニックコードのIのコードへの、非常に滑らかなコード進行が実現される。
【0036】
なお、転調が指示された区間から次の区間に移るときにも、転調されていた調性から元の調性への調性の変更が発生し、これも転調である。そこで、本実施形態では、第2の円滑転調部103が、転調が指示された区間内の末尾の所定区間(例えばその区間内の最終小節)内の1つ以上のコードデータを、転調の前の調性に対応する音階のダイアトニックコードにおけるトニックコードデータ以外のコードデータで書き換える。特に例えば、第2の円滑転調部103が、その末尾の所定区間において、転調の前の調性に対応する音階のダイアトニックコードの「IIm7→V7」というコード進行になるようにコードを書き換える。これにより、末尾の所定区間から転調が終了した直後の区間の先頭の転調の前のダイアトニックコードのIのコードへの、非常に滑らかなコード進行が実現される。
【0037】
ここで、書き換えられた後のコードデータは、必ずしも「IIm7→V7」というコード進行になる必要はなく、「V7」のコードのみで書換えが行われてもよいし、全く書換えが行われなくてもよい。そして、このような書換えの様々なパターンを、ユーザが転調指示部101から指示できるようにしてもよい。これにより、転調において、さまざまな音楽の転調効果を付加することが可能となる。
【0038】
図5は、
図1に示される転調装置100の実施形態の動作説明図である。501は、楽曲の小節を表している。他の部分も同様であるが番号501は省略してある。502は、パートを表している。503および504は、楽曲の進行方向を表している。楽曲は、504に示されるように上から下のパート502に向かって進行し、1つのパート502内では503に示されるように左端の小節501から右端の小節501に向かって進行する。いま、楽曲がある調性で始まり、A→A′→B→A′という順でパートが進んでゆき、Cパートでサビに入り、その後、B→A′→A′とパートが進むケースを考える。
【0039】
サビは通常、楽曲が展開していって音程が高くなったりする場合が多く、歌いづらくなったりする。そこで、
図1の転調装置100において、ユーザが転調指示部101から、506で示される「C」パートの4小節分を転調するように指示したとする。この場合に、その手前の505で示されるA′パートの末尾から急に転調すると、音を捉えることができなくなってしまう。
【0040】
そこで、本実施形態では、転調されたCパートに円滑に移行できる円滑転調処理を、直前の小節で円滑転調処理を施す。事前にそのような円滑転調処理を施すことにより、自然に転調されたCパートに移行することができる。具体的には、
図1の第1の円滑転調部102が、Cパートでの転調に向けて、転調後の新しい調性の音階におけるダイアトニックコード中のV7コードで、直前の小節505lastの後半の拍部分のコードを書き換える。これにより、直前の小節505lastから506のCパートの先頭の転調の後のダイアトニックコードのIのコードへの、聴感上自然なコード進行が実現される。
【0041】
転調された506のCパートに続く507のBパートでは、もとの調性に戻る。この場合も、
図1の第2の円滑転調部103が、転調が指示されたCパートの末尾の小節506last内の後半の2拍分のコードデータを、転調前のもとの調性に対応する音階のダイアトニックコード中のIIm7コードとV7コードで書き換える。これにより、Cパートの最終小節506lastから転調が終了した直後のBパートの先頭の転調の前のダイアトニックコードのIのコードへの、聴感上自然な転調が可能となる。
【0042】
さらに、Bパートに続く508のA′パートとその次の509のA′パートは同じ演奏の繰り返し区間であるため、変化を持たせるために、ユーザが509のA′パートに対して
図1の転調指示部101から転調を指示することも可能である。これにより、
図1の第1の円滑転調部102が、509のA′パートでの転調に向けて、転調後の新しい調性の音階におけるダイアトニックコード中のV7コードで、直前の小節508lastの後半の拍部分のコードを書き換える。これにより、同じA′パートの繰り返しでも、聴感上自然な転調効果を付加することが可能となる。
【0043】
以上説明したようにして、
図1に示される転調装置100の実施形態により、ユーザによる転調指示部101からの楽曲データ106内の任意の区間に対する任意の転調指示に対して、自然な転調を自動的に実現することが可能となる。
【0044】
図1において、第1の円滑転調部102および第2の円滑転調部103による上述の転調動作を実現するために、円滑転調リスト記憶部108を設けてよい。この円滑転調リスト記憶部108は、第1の調性を第2の調性に転調するときの第2の調性に対応する音階のダイアトニックコードにおけるトニックコードデータ以外のコードデータ、例えばIIm(7)のコードデータまたはV(7)のコードデータを、円滑転調リストデータとして記憶する。この場合、第1の円滑転調部101は、転調の前の調性を第1の調性として指定するとともに転調の後の調性を第2の調性として指定して、円滑転調リスト記憶部108が記憶する円滑転調リストデータを参照することにより、書換えの対象となるコードデータを決定する。また、第2の円滑転調部103は、転調の後の調性を第1の調性として指定するとともに転調の前の調性を第2の調性として指定して、円滑転調リスト記憶部108が記憶する円滑転調リストデータを参照することにより、書換えの対象となるコードデータを決定する。
【0045】
この場合、第1の調性と第2の調性の組合せは、長調と長調、長調と短調、短調と長調、および短調と短調の組合せを含んでよい。
【0046】
さらに上述の円滑転調リストデータは、第1の調性および第2の調性の組ごとに、それらの組が参照されるときの優先順位を示す優先順位データを含んでよい。この場合、転調指示部はさらに、ユーザに転調の効果を指示させてよい。転調の効果とは、例えば普遍的な感じ、意外な感じ、上昇する感じなどである。これらの転調の効果が、おすすめ効果として転調指示部101で表示等されてもよい。これに対して、第1の円滑転調部102または第2の円滑転調部103は、転調指示部101で指示された転調もとの調性と転調先の調性に対応する第1の調性および第2の調性を有する1つ以上の円滑転調リストデータのうち、転調指示部101で指示された転調の効果に対応する優先順位データを有する円滑転調リストデータを参照するように動作してよい。
【0047】
これにより、さらにユーザの意向を反映した転調の効果を得ることが可能となる。
【0048】
図6は、
図1の転調装置100の機能を備えたカラオケ装置600の実施形態であるコンピュータシステムのブロック図である。このカラオケ装置600は、CPU601、メモリ602、音源603、音響装置604、操作部605、表示部606、およびMIC(マイク)入力607が、バス609によって相互に接続された構成を有する。
図6に示される構成はカラオケ装置600を実現できるコンピュータシステムの一例であり、そのようなコンピュータシステムはこの構成に限定されるものではない。
【0049】
CPU601は、当該カラオケ装置600全体の制御を行う。メモリ602は、
図1の転調装置100の機能や楽曲再生の機能を含むカラオケ制御プログラムを記憶する。CPU601は、メモリ602に記憶された上記カラオケ制御プログラムを実行することにより、カラオケ装置600に対する制御機能を実現する。また、メモリ602は、楽曲データ(
図1の106に対応)を記憶する。CPU601は、カラオケ制御プログラムを実行することにより、操作部605からのユーザによる転調指定に基づいて、メモリ602から楽曲データを読み出しながら、
図1の転調装置100の機能を実行し、転調された楽曲データ(
図1の107に対応)をメモリ602に書き戻す。
【0050】
ユーザが表示部606にカラオケ曲の候補を表示させながら操作部605からカラオケ曲の再生を指示すると、CPU601は、上記カラオケ制御機能に含まれる楽曲再生機能により、メモリ602から楽曲データを読み出しながら、読み出した楽曲データに基づいて音源603に対して楽音の再生指示を行う。音源603は、例えばMIDIデータに基づいて音楽を再生可能な電子楽器音源等である。音源603から再生された楽音データは、音響装置604を介して放音される。音響装置604は、バス609から入力される楽音データをアナログの楽音信号に変換し、増幅を行って、スピーカから放音する。このとき、ユーザが歌った歌声は、MIC入力607から入力され、音響装置604を介して、楽音データとミキシングされた放音される。
【0051】
通信インターフェース(I/F)608は、例えばLAN(ローカルエリアネットワーク)又はWAN(ワイドエリアネットワーク)の通信回線を接続するための装置である。本実施形態によるカラオケ装置600は、
図8から
図10のフローチャート等で実現される
図1の転調装置100の機能を搭載したプログラムをCPU601が実行することで実現される。そのプログラムは、特には図示しない可搬記録媒体等に記録して配布してもよく、或いはI/F608によりネットワークから取得できるようにしてもよい。
【0052】
図1の転調装置100の機能に関連するものとして、操作部605は、曲指定SW610(「SW」はスイッチの意味)、転調モードSW611、転調範囲指定SW612、転調先の調指定SW613、その他SW614、およびオススメ進行決定SW615などを備える。これらのスイッチ類の機能については、後述する。
【0053】
図7は、
図6のメモリ602が記憶する楽曲データ700(
図1の106に対応)のデータ構成例を示す図である。701、702、703、・・・等は、ノートオンデータであり、例えば、タイミングデータtimeと、音程データnoteと、音量データvelocityを含む。その他の制御データを含んでもよい。タイミングデータtimeは、楽曲がスタートしてからの絶対時間とする。また、楽曲データ700のヘッダ部704には、楽曲の構造に関するデータ、例えば、基本の調(調性)、小節区切りデータ、コード進行情報、Aメロ、Bメロ、Cサビ等のパート情報等が予め記憶してある。これにより、ユーザによる後述する転調を行いたいと考える楽曲の範囲を指定しやすくしている。
【0054】
図8は、
図6のCPU601がメモリ602に記憶されたカラオケ制御プログラムを実行することにより実現されるカラオケ制御処理の例を示すフローチャートである。
【0055】
カラオケ装置600の電源が入ると、CPU601は、メモリ602の初期化等のイニシャライズ処理を実行した後(ステップS801)、スイッチ処理(ステップS802)、
図1の転調装置100の機能を実現する楽音変更処理(ステップS803)、楽音の再生を行う音源処理(ステップS804)、および表示処理などを含むその他の処理(ステップS804805)を、繰り返し実行する状態となる。
【0056】
図9は、
図8のステップS802のスイッチ処理の詳細例を示すフローチャートである。
【0057】
まず、CPU601は、ユーザが
図6の操作部605の曲指定SW610を操作することにより指定された楽曲の指定情報を入力する処理を実行する(ステップS901)。
【0058】
次に、CPU601は、
ユーザが
図6の操作部605の転調範囲指定SW612を操作して指定した楽曲中の転調範囲を入力する処理を実行する(ステップS902)。転調範囲の指定は、
図9のステップS901で指定された楽曲に対して、その楽曲中のパートを
図6の表示部606に表示させてユーザに転調範囲となるパートを指定させたり、その楽曲の楽譜を表示部606に表示させてユーザに楽譜上の転調範囲を指定させる等によって、実現される。
【0059】
次に、CPU601は、ユーザが
図6の操作部605の転調先の調指定SW613を操作して指定した転調の後の調性を入力する処理を実行する(ステップS903)。
【0060】
続いて、CPU601は、転調モードSW611がオン(on)されたか否かを判定する(ステップS904)。
【0061】
ステップS904の判定がYESならば、CPU601は、メモリ602に記憶されている転調フラグをオン(on)し、ノーマルモードフラグをオフ(off)する(ステップS905)。
【0062】
ステップS904の判定がNOならば、CPU601は、転調モードSW611がオフ(off)されたか否かを判定する(ステップS906)。
【0063】
ステップS906の判定がYESならば、CPU601は、メモリ602に記憶されているノーマルモードフラグをオフ(on)し、転調フラグをオン(off)する(ステップS907)。
【0064】
ステップS906の判定がNOならば、CPU601は、
図9のフローチャートの処理を終了して、
図8のステップS802のスイッチ処理を終了する。
【0065】
図10のフローチャートの説明で後述するが、ユーザによって転調モードSW611がオンされてステップS905で転調フラグがオンになると、CPU601は、
図8のステップS803の楽音変更処理内の転調のための制御処理を実行する。ユーザによって転調モードSW611がオフされてステップS907で転調フラグがオフになると、CPU601は、
図8のステップS803の楽音変更処理内の転調のための制御処理を実行しない。また、特には図示しないが、ユーザによって転調モードSW611がオンされてステップS905でノーマルモードフラグがオフになると、CPU601は、
図8のステップS803の音源処理を実行せず、楽音の再生は行われない。ユーザによって転調モードSW611がオフされてステップS907でノーマルモードフラグがオンになると、CPU601は、
図8のステップS803の音源処理を実行して、楽音の再生を行う。
【0066】
ステップS905またはS907の処理の後、CPU601は、その他スイッチ処理を実行する(ステップS805)。ユーザが
図6の操作部605で音色、音量の変更などのその他SW614を操作すると、CPU601はステップS805で、
図6の音源603や音響装置604を制御して、音色、音量などを切り替えるその他の処理を実行する(ステップS908)。その後、
図9のフローチャートの処理を終了して、
図8のステップS802のスイッチ処理を終了する。
【0067】
図10は、
図8のステップS803の楽音変更処理の第1の実施形態を示すフローチャートである。
【0068】
まず、CPU601は、
図9のステップS901でユーザが指定した楽曲に対応する楽曲データ700(
図7)をメモリ上の記憶領域からワーク領域に取り込む(ステップS1001)。
【0069】
次に、CPU601は、メモリ602上の転調フラグがオンされているか否かを判定する(ステップS1002)。
【0070】
ステップS1002の判定がNOならば、
図10のフローチャートの処理を終了して
図8のステップS803の楽音変更処理を終了する。特には図示しないが、この場合には、CPU601は、ステップS1001でメモリ602のワーク領域に取り込んだ楽曲データ700に基づいて
図6の音源603に対して楽音の発音指示を行うための
図8のステップS804の音源処理を実行する。これにより、カラオケの楽音が再生され、
図6の音響装置604から放音される。
【0071】
ステップS1002の判定がYESならば、CPU601は、ステップS1003からS1007までの転調のための一連の制御処理を実行する。
【0072】
CPU601はまず、調判定処理を実行する(ステップS1003)。例えば、メモリ602は例えば、調性ごとに、前述した例えば
図3に示されるようなダイアトニックコードのデータを保持している。そして、CPU601は例えば、ステップS1001でメモリ602のワーク領域に取り込んだ楽曲データ700によって順次指定されるコードとメモリ602に保持している調性ごとのダイアトニックコードとを転回形等を考慮しながら順次比較する。この結果、CPU601は、比較結果が一致したダイアトニックコードに対応する調性を、楽曲データ700の調性であると判定する。
【0073】
次に、CPU601は、円滑転調自動生成処理を実行する(ステップS1004)。ここでは、CPU601は、
図1の第1の円滑転調部102の機能に対応する処理を実行する。すなわち、
図5等の説明で前述したように、CPU601は、ステップS1001でメモリ602のワーク領域に取り込んだ楽曲データ700において、
図10のステップS1001で取り込まれた転調範囲の手前の小節内の例えば最終拍のコードデータを、
図10のステップS1002で取り込んだ転調先(転調の後)の調性に対応する音階のダイアトニックコードにおけるV7のコードデータに変更する(ステップS1004)。
【0074】
次に、CPU601は、指定範囲を移調する(ステップS1005)。ここでは、CPU601は、
図1の指示区間転調部104の機能に対応する処理を実行する。すなわち、
図1の説明で前述したように、CPU601は、ステップS1001でメモリ602のワーク領域に取り込んだ楽曲データ700において、
図1のステップS1001で取り込まれた転調範囲のコードデータを、
図10のステップS1002で取り込んだ転調先(転調の後)の調性に対応するコードデータに書き換える。
【0075】
次に、CPU601は、もとの調に戻る手前の転調範囲の最終小節に対して円滑転調自動生成処理を実行する(ステップS1006)。ここでは、CPU601は、
図1の第2の円滑転調部103の機能に対応する処理を実行する。すなわち、
図5等の説明で前述したように、CPU601は、ステップS1001でメモリ602のワーク領域に取り込んだ楽曲データ700において、
図10のステップS1001で取り込まれた転調範囲の最終小節内の例えば最終拍のコードデータを、ステップS1003で判定された転調もと(転調の前)の調性に対応する音階のダイアトニックコードにおけるV7のコードデータに変更する(ステップS1006)。このようなV7のエリアを作成することの効果は、ステップS1004の場合と同様である。
【0076】
最後に、CPU601は、転調制御が完了したメモリ602内のワーク領域の楽曲データ700の全体を、メモリ602内の再生用バッファに書き込む(ステップS1007)。その後、ユーザが
図6の操作部605で転調モードSW611をオフすると、CPU601は、前述した
図9のステップS907でノーマルモードフラグをオンすることにより、
図8のステップS804の音源処理を実行する。特には図示しないが、CPU601は、この音源処理において、メモリ602の再生用バッファに書き込まれた楽曲データ700に対して再生処理を実行し、
図6の音源603に対して部分的に円滑な転調処理が施されたカラオケ楽曲の発音指示を行う。
【0077】
以上の楽音変更処理の第1の実施形態により、ステップS1004またはS1006の円滑転調自動生成処理において、転調直前の小節にV7のコードデータをはめ込むことにより、ほとんどの場合、転調に違和感がなくなり、転調独特の「着地感」を楽曲に生成することができる。これにより、単純な楽曲に、現代風で違和感のない転調を付加して、有機的でリッチな楽曲に編曲することが可能になる。
【0078】
なお、V7のみのコードデータへの変更ではなく、IIm7+V7の2つのコードデータをはめ込むようにすれば、さらに自然な転調の効果を得ることができる。
【0079】
次に、
図8のステップS803の楽音変更処理の第2の実施形態について説明する。
【0080】
楽音変更処理の第2の実施形態に対応して、
図6のメモリ602は、
図1で説明した円滑転調リストデータを保持する。すなわち、メモリ602は、
図1の円滑転調リスト記憶部108として機能する。
【0081】
図11から
図14は、楽音変更処理の第2の実施形態に対応して、
図6のメモリ602は、
図1で説明した円滑転調リストデータのデータ構成例を示す図である。
図11は、左上に示されるように転調もと(転調の前)の調性である前述した第1の調性が長調(メジャーキー)のCであって、転調先(転調の後)の調性である前述した第2の調性が、B、B♭(A#)、A、A♭(G#)、G、G♭(F#)、F、E、E♭(D#)、D、D♭(C#)、およびCの長調(メジャーキー)である場合の円滑転調リストデータの例を示す図である。
図12は、左上に示されるように第1の調性が長調(メジャーキー)のCであって、第2の調性が、Bm、B♭m、Am、A♭m、Gm、F#m、Fm、Em、E♭m、Dm、C#m、およびCmの短調(マイナーキー)である場合の円滑転調リストデータの例を示す図である。
図13は、左上に示されるように第1の調性が短調(マイナーキー)のCmであって、第2の調性が、B、B♭(A#)、A、A♭(G#)、G、G♭(F#)、F、E、E♭(D#)、D、D♭(C#)、およびCの長調(メジャーキー)である場合の円滑転調リストデータの例を示す図である。そして、
図14は、左上に示されるように第1の調性が短調(マイナーキー)のCmであって、第2の調性が、Bm、B♭m、Am、A♭m、Gm、F#m、Fm、Em、E♭m、Dm、C#m、およびCmの短調(マイナーキー)である場合の円滑転調リストデータの例を示す図である。
【0082】
図10のフローチャートで示される楽音変更処理では、ステップS1004またはS1006として説明したように、転調範囲の直前および末尾の小節のコードデータが、単純にV7またはIIm7+V7のコードデータに書き換えられることによって、転調前後の自然なコード進行を実現している。これに対して、楽音変更処理の第2の実施形態では、
図11から
図14に示されるように、転調もと(転調の前)に対応する前述した第1の調性に対して、転調先(転調の後)に対応する前述した第2の調性で書換え先となるコードデータの組が、第2の調性の種類ごとに3組ずつ登録されている。第1の組は、IIm7+V7のいずれのコードデータでの書換えも行わないという組である。第2の組は、V7のコードデータのみでの書換えを行うという組である。そして、第3の組は、IIm7+V7のコードデータでの書換えを行うという組である。
【0083】
さらに、
図11に例示されるように、円滑転調リストデータは、第1の調性および第2の調性の組ごとに、それらの組が参照されるときの優先順位を示す優先順位データを保持している。この優先順位データは、第1の調性から第2の調性の上記3組ずつのコードデータ組への転調ごとに、それらの転調の円滑さに応じて「順当」「意外」「上昇」「唐突」といった言葉で転調の効果の度合いを保持している。
図12から
図14についても、優先順位データは、省略されているが、
図11の場合と同様に保持されている。
【0084】
楽音変更処理の第2の実施形態の全体的な処理は、
図10のフローチャートで示される楽音変更処理の第1の実施形態の場合と同様である。第2の実施形態が第1の実施形態と異なる点は、
図10のステップS1004およびS1006の処理である。
【0085】
図15は、
図10のステップS1004およびS1006の処理を置き換える円滑転調自動生成処理の詳細例を示すフローチャートである。
【0086】
まず、CPU601は、第1の調性を決定する(ステップS1501)。CPU601は、
図10のステップS1004において
図15のステップS1501の処理を実行するときには、
図10のステップS1003の調判定処理において判定された転調もと(転調の前)の調性を第1の調性として決定する。また、CPU601は、
図10のステップS1006において
図15のステップS1501の処理を実行するときには、
図10のステップS1002で取り込まれたユーザが指定した転調先(転調の後)の調性を第1の調性として決定する。
【0087】
次に、CPU601は、第1の調性を決定する(ステップS1502)。CPU601は、
図10のステップS1004において
図15のステップS1502の処理を実行するときには、
図10のステップS1002で取り込まれたユーザが指定した転調先(転調の後)の調性を第2の調性として決定する。また、CPU601は、
図10のステップS1006において
図15のステップS1502の処理を実行するときには、
図10のステップS1003の調判定処理において判定された転調もと(転調の前)の調性を第2の調性として決定する。
【0088】
その後、CPU601は、メモリ602に記憶されている
図11から
図14に例示される円滑転調リストデータのうち、ステップS1501で決定した第1の調性を有する円滑転調リストデータを選択する。そして、CPU601は、その円滑転調リストデータ中から、ステップS1502で決定した第2の調性を有する前述した3組のリストデータを選択する。このとき、CPU601は、各円滑転調リストデータ中の第1の調性がステップS1501で決定された第1の調性に一致するように各円滑転調リストデータの第2の調性をシフトさせて、そのシフト結果がステップS1502で決定された第2の調性に一致する3組のリストデータを選択する(以上、ステップS1503)。
【0089】
次に、CPU601は、
図6の表示部606に、ステップS1503で選択された3組のリストデータに対応する3つの優先順位(
図11参照)の情報を表示して、ユーザにそのうちの1つの選択を促す(ステップS1504)。
【0090】
CPU601は、ユーザによって優先順位が選択されるまで待機する(ステップS1505)。
【0091】
ステップS1505の判定がYESになると、CPU601は、選択された優先順位に対応するリストデータのコードデータ組で、書換え対象の小節のコードデータを書き換える(ステップS1506)。具体的には、CPU601は、
図10のステップS1004において
図15のステップS1506の処理を実行するときには、ステップS1001でメモリ602のワーク領域に取り込んだ楽曲データ700において、
図10のステップS1001で取り込まれた転調範囲の手前の小節内のコードデータを、ステップS1505で選択された優先順位に対応するステップS1503で取り込まれているリストデータを参照することにより、書換えの対象となるコードデータの組(V7、またはIIm7+V7、または無し)で書き換える。また、CPU601は、
図10のステップS1006において
図15のステップS1506の処理を実行するときには、ステップS1001でメモリ602のワーク領域に取り込んだ楽曲データ700において、
図10のステップS1001で取り込まれた転調範囲の最終小節内のコードデータを、ステップS1505で選択された優先順位に対応するステップS1503で取り込まれているリストデータを参照することにより、書換えの対象となるコードデータの組(V7、またはIIm7+V7、または無し)で書き換える。
【0092】
その後、CPU601は、
図15のフローチャートの処理を終了し、
図10のステップS1004またはS1006の部分での円滑転調自動生成処理を終了する。
【0093】
以上のようにして、楽音変更処理の第2の実施形態により、ユーザが所望する転調効果を有する転調を実現することが可能となる。
【0094】
また、第2の実施形態では、
図11から
図14に示されるような円滑転調リストデータにより、長調から長調、短調から短調だけでなく、長調から短調、あるいは短調から長調などの転調においても、聴感上自然な転調が可能となる。
【0095】
なお、上述したように、ユーザの転調先の調性の選択に基づいてユーザに優先順位に対応する転調の効果を
図6の表示部606に表示するのではなく、
図6の操作部605に例示されているオススメ進行決定SW615といったものにより、いくつかの転調のケースを予めユーザに転調の効果とともに提示し、ユーザーに転調先を選択させる、という方法をとってもよい。
【0096】
最後に、上述の楽音変更処理の第2の実施形態に基づく転調処理の具体的について、以下に説明する。
【0097】
図16は、転調処理の対象となる楽曲データ700に対応する楽譜例を示す図である。いま、1601に示されるCパートの音高が全体的に高くて歌いにくく、特に1602に示されるあたりがキーが高すぎて歌いにくいので、このCパートのキーを下げるように転調指定を行いたいとする。
【0098】
図17は、
図16の転調要求に対する転調先の調性の指定例の説明図である。CパートをCmajor(ハ長調)からGmajor(ト長調)に転調することを考える。これにより、転調前の最高音E5が転調後の最高音B4に下がるため、Cパートが歌唱可能な音域の範囲内に収まる。また、転調後のGmajor(ト長調)の調性は原曲のCmajor(ハ長調)の調性に対して違和感の少ない調であると考えられる。
【0099】
図18は、Cmajor(ハ長調)からGmajor(ト長調)への転調が指定された場合における楽音変更処理の第2の実施形態の動作例を示す図である。この例では、長調から長調への転調であるため、
図18(b)に示されるように、
図11の円滑転調リストデータが選択される。さらに、ユーザによる最も順当な優先順位の選択により、
図18(b)の1801に示されるリストデータが選択される。この結果、
図18(a)に示されるように、転送範囲となるCパートの直前のA′パートの最終小節の最終拍のコードが、転調先の調性Gmajor(ト長調)のV7のコードデータ=D7に書き換えられる。この結果、調性がCmajor(ハ長調)であるA′パートの最終拍のコードデータD7からGmajor(ト長調)に転調されたCパートの先頭のコードデータGへのコード進行が聴感上自然になり、違和感なく転調が行える。
【0100】
図19は、Gmajor(ト長調)に転調されたCパートが終わって、もとのBパートに戻る(再度転調される)場合における楽音変更処理の第2の実施形態の動作例を示す図である。この例では、Bパートの冒頭は、経過的にイ短調(ハ長調の平行調)に転調しておりそこからもとの調に戻る形でCmajor(ハ長調)に転調している。従って、CパートからBパートへの転調は、長調から短調への転調であるため、
図19(b)に示されるように、
図12の円滑転調リストデータが選択される。さらに、ユーザによる最も順当な優先順位の選択により、
図19(b)の1901に示されるリストデータが選択される。なお、
図19(b)の例では、Cパートがト(G)長調になっている。このGからAm(Aminor)への移行を、
図19の円滑転調リストデータの基調(第1の調性)=ハ(C)長調にスライドすると、CからDmへの転調という意味になる。そこで、DmのV7=A7を上記に合わせてスライドさせると、
図19(a)に示されるように、転送範囲となるCパートの最終小節の最終拍のコードが、Bパートの冒頭の調性Aminor(イ短調)のV7のコードデータ=E7に書き換えられる。この結果、Cパートの最終拍のコードデータE7からAminor(イ短調)に転調されたBパートの先頭のコードデータAm7へのコード進行が聴感上自然になり、違和感なく転調が行える。
【0101】
図20は、
図16の楽譜の最後のA′パートで、さらに変化をつけるため、A′パートを繰り返してCmajor(ハ長調)のA′パートから半音上のD♭major(変二長調)のA′パートへ転調する例における楽音変更処理の第2の実施形態の動作例を示す図である。この例では、長調から長調への転調であるため、
図20(b)に示されるように、
図11の円滑転調リストデータが選択される。さらに、ユーザによる最も順当な優先順位の選択により、
図20(b)の2001に示されるリストデータが選択される。この結果、
図20(a)に示されるように、転送範囲となる下側のA′パートの直前の上側のA′パートの最終小節の最終拍のコードが、転調先の調性D♭major(変二長調)のV7のコードデータ=A♭7に書き換えられる。この結果、調性がCmajor(ハ長調)であるA′パートの最終拍のコードデータA♭7からD♭major(変二長調)に転調されて繰り返されるA′パートの先頭のコードデータD♭へのコード進行により、半音あがって曲のテンションも上がり、さらに盛り上がる効果が得られる。
【0102】
以上のようにして、例えばカラオケの現場でサビで声が出ないということが多々あるが、
図6に示されるカラオケ装置600の実施形態により、あらかじめサビを自分が歌いやすい調(音域が収まる調)に設定することで、楽曲の全域を自分の安定した声で歌いきることが可能となる。
【0103】
本実施形態によれば、転調に違和感がなくなり、転調独特の「着地感」を楽曲に生成することができる。これにより、単純な楽曲を、現代風で、違和感のない転調を付加した、有機的でリッチな楽曲に編曲することが可能になる。
【0104】
以上の実施形態に関して、更に以下の付記を開示する。
(付記1)
楽曲データの任意の区間において任意の調性への転調を指示する転調指示部と、
前記楽曲データにおいて、前記転調が指示された区間の直前の所定区間内の1つ以上のコードデータを、前記転調の後の調性に対応する音階のダイアトニックコードにおけるトニックコードデータ以外のコードデータに変更する第1の円滑転調部と、
前記楽曲データにおいて、前記転調が指示された区間のコードデータを、前記転調の後の調性に対応するコードデータに変更する指示区間転調部と、
前記第1の円滑転調部および前記指示区間転調部によって変更が行われた楽曲データを転調された楽曲データとして出力する出力部と、
を備えることを特徴とする転調装置。
(付記2)
前記転調装置はさらに、前記楽曲データにおいて、前記転調が指示された区間内の末尾の所定区間内の1つ以上のコードデータを、前記転調の前の調性に対応する音階のダイアトニックコードにおける前記トニックコードデータ以外のコードデータに変更する第2の円滑転調部をさらに有し、
前記出力部は、前記第1の円滑転調部および前記指示区間転調部に加えて、前記第2の円滑転調部によって変更が行われた楽曲データを転調された楽曲データとして出力する、付記1に記載の転調装置。
(付記3)
前記トニックコードデータ以外のコードデータによる変更は、当該コードデータが属する音階のダイアトニックコードにおける5度のコードデータによる変更を含む、
ことを特徴とする付記1または2に記載の転調装置。
(付記4)
前記トニックコードデータ以外のコードデータによる変更は、前記5度のコードデータによる変更の手前に、当該コードデータが属する音階のダイアトニックコードにおける2度のコードデータによる変更をさらに含む、
ことを特徴とする付記3に記載の転調装置。
(付記5)
前記転調指示部はさらに、前記転調が指示された区間の直前の区間および末尾の区間ごとに、前記5度のコードデータのみによる変更の指示、前記2度のコードデータによる変更および当該変更に続けて前記5度のコードデータによる変更の指示、または前記2度および前記5度のどちらの変更も行わない指示のいずれかを前記ユーザに行わせる、
ことを特徴とする付記4に記載の転調装置。
(付記6)
第1の調性を第2の調性に転調するときの当該第2の調性に対応する音階のダイアトニックコードにおける前記トニックコードデータ以外のコードデータを円滑転調リストデータとして記憶する円滑転調リスト記憶部をさらに備え、
前記第1の円滑転調部は、前記転調の前の調性を前記第1の調性として指定するとともに前記転調の後の調性を前記第2の調性として指定して、前記円滑転調リスト記憶部が記憶する前記円滑転調リストデータを参照することにより、前記転調の後の調性に対応する音階のダイアトニックコードにおける前記トニックコードデータ以外のコードデータを決定し、
前記第2の円滑転調部は、前記転調の後の調性を前記第1の調性として指定するとともに前記転調の前の調性を前記第2の調性として指定して、前記円滑転調リスト記憶部が記憶する前記円滑転調リストデータを参照することにより、前記転調の前の調性に対応する音階のダイアトニックコードにおける前記トニックコードデータ以外のコードデータを決定する、
ことを特徴とする付記1ないし5のいずれかに記載の転調装置。
(付記7)
前記第1の調性と前記第2の調性の組合せは、長調と長調、長調と短調、短調と長調、および短調と短調の組合せを含む、
ことを特徴とする付記1ないし6のいずれかに記載の転調装置。
(付記8)
前記円滑転調リストデータは、前記第1の調性および前記第2の調性の組ごとに、当該第1の調性および第2の調性が参照されるときの優先順位を示す優先順位データを含み、
前記転調指示部はさらに、前記ユーザに転調の効果を指示させ、
前記第1の円滑転調部または前記第2の円滑転調部は、前記指示された転調の効果に対応する優先順位データを有する前記円滑転調リストデータを参照する、
ことを特徴とする付記7に記載の転調装置。
(付記9)
転調装置が、
楽曲データの任意の区間において任意の調性への転調を指示し、
前記楽曲データにおいて、前記転調が指示された区間の直前の所定区間内の1つ以上のコードデータを、前記転調の後の調性に対応する音階のダイアトニックコードにおけるトニックコードデータ以外のコードデータに変更し、
前記楽曲データにおいて、前記転調が指示された区間のコードデータを、前記転調の後の調性に対応するコードデータに変更し、
前記変更が行われた楽曲データを転調された楽曲データとして出力する、転調方法。
(付記10)
楽曲データの任意の区間において任意の調性への転調を指示する転調指示処理と、
前記楽曲データにおいて、前記転調が指示された区間の直前の所定区間内の1つ以上のコードデータを、前記転調の後の調性に対応する音階のダイアトニックコードにおけるトニックコードデータ以外のコードデータに変更する第1の円滑転調処理と、
前記楽曲データにおいて、前記転調が指示された区間のコードデータを、前記転調の後の調性に対応するコードデータに変更する指示区間転調処理と、
前記第1の円滑転調処理および前記指示区間転調処理によって変更が行われた楽曲データを転調された楽曲データとして出力する出力処理と、
をコンピュータに実行させるための転調プログラム。