(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
【発明を実施するための形態】
【0009】
以下、本発明の実施形態を図面に基づいて説明する。
【0010】
図1は本発明の実施形態に係る充電システムのブロック図である。本例の充電システムは、給電車両100から充電車両200へ直流で給電することで、給電車両のバッテリの電力で、充電車両のバッテリを充電するためのシステムである。なお、給電車両100及び充電車両200が電気自動車であることを前提に説明するが、給電車両100及び充電車両200は電気自動車に限らず、例えばプラグインハイブリッド車両でもよい。なお、
図1において、太い点線はバッテリ101とバッテリ201との間の電力の流れを示しており、細い点線は、制御ライン又は通信ラインを示している。
図6及び
図8も同様に図示している。
【0011】
給電車両100は、バッテリ101と、コンデンサ102と、インバータ103と、モータ104と、追加リアクトル105と、コンバータ106と、コンタクタ107と、充電ポート108と、配線109a、109bと、給電側コントローラ110と、通信部120を備えている。
【0012】
バッテリ101は、複数の二次電池を接続することで構成されている。バッテリ101は、モータ104に電力を供給するための電力源である。コンデンサ102は、一対の電源ラインを介して、バッテリ101の両端子間に接続されている。コンデンサ102はバッテリ101からインバータ103に出力される電圧を平滑するためのコンデンサである。
【0013】
インバータ103は、バッテリ101の直流電力を交流電力に変換して、変換した電力をモータ104に出力する電力変換回路である。インバータ103は、U、V、W相の各相に直列に接続された複数のスイッチング素子と、複数のスイッチング素子にそれぞれ並列接続されたダイオードとを備えている。ダイオードは、スイチング素子の電流の導通方向に対して逆向きになるように接続されている。直列に接続されたスイッチング素子の両端は、バッテリ101の両端と一対の電源ラインで接続されている。また、各相の複数のスイッチング素子の接続点は、モータ104の各相のコイルにそれぞれ接続されている。インバータ103は、給電側コントローラ110から送信されるスイッチング信号により、スイッチング素子のオン、オフを切り替えて、電力を変換する。
【0014】
モータ104は、バッテリ101の電力により駆動するモータであり、給電車両100の駆動源となる。モータ104は、各相に対応する3つのコイルを有している。3つのコイルの両端のうち、一端は、配線を介してインバータ103の各相に接続されている。他端は中性点Aに接続されている。モータ104はインバータ103を介してバッテリ101に接続されている。
【0015】
追加リアクトル105は、モータ104の中性点Aとコンタクタ107との間に接続されている。コンバータ106は、給電車両100のバッテリ101から充電車両200に電力を供給する際に、インバータ103及びモータ104から出力される電圧を昇圧しつつ、昇圧された電圧を充電車両200に出力するための電力変換回路(変換器)である。コンバータ106は、入力側に直列接続された複数のスイッチング素子(ハーフブリッジ)と、複数のスイッチング素子にそれぞれ並列接続されたダイオードと、出力側に接続されたコンデンサとを備えている。ダイオードは、スイチング素子の電流の導通方向に対して逆向きになるように接続されている。
【0016】
コンタクタ107は、一対の配線109a、109bにそれぞれ接続された一対のスイッチである。配線109aに接続されたコンタクタ107はコンバータ106とモータ104の中性点Aとの間に接続されている。配線109bに接続されたコンタクタ107はコンバータ106と、インバータ103の負の電源ラインに接続されている。コンタクタ107は、バッテリ101の電力を充電ポート108から出力する導通経路のオン、オフを切り替えるためのスイッチである。コンタクタ107のオン、オフは給電側コントローラ110により制御される。
【0017】
充電ポート108は、充電ケーブル300の接続口であり、充電ケーブル300の先端部分のコネクタと嵌合するように構成されている。充電ポート108はコンバータ106の出力側に接続されている。配線109aは、モータ104の中性点Aと、複数のスイッチング素子の接続点との間に接続されている。複数のスイッチング素子は、コンバータ106の入力側に直列接続されている素子である。配線109bは、インバータ103の負側の電源ラインと、コンバータ106の負側の配線との間を接続するため配線である。
【0018】
給電側コントローラ110は、インバータ103、コンバータ106、及びコンタクタ107を制御するためのコントローラである。通信部120は、充電車両200と通信するための通信機である。充電ケーブル300には通信線が含まれている。そして、充電ケーブル300が充電ポート108と充電ポート208に接続されることで、給電車両100側の通信部120は、通信線と通じて、充電車両200側の通信部220と通信可能な状態となる。
【0019】
充電車両200は、バッテリ201と、コンデンサ202と、インバータ203と、モータ204と、コンタクタ207と、充電ポート208と、充電側コントローラ210と、通信部220を備えている。バッテリ201、コンデンサ202、206、インバータ203、モータ204、充電ポート208、充電側コントローラ210、及び、通信部220の各構成は、バッテリ101、コンデンサ102、インバータ103、モータ104、充電ポート108、給電側コントローラ110、及び通信部120の構成とそれぞれ同様であるため、説明を省略する。
【0020】
コンタクタ207は、バッテリ201とコンデンサ202との間に接続されており、バッテリ201と充電ポート208との間に接続されている。コンタクタ207は、バッテリ201の電力をモータ204に出力する導通経路と、給電車両100から充電ケーブル300を介して供給される電力をバッテリ201に直接出力する導通経路とを切り替えるためのスイッチである。
【0021】
次に、給電車両100の走行中の給電側コントローラ110の制御を説明する。車両の走行中、給電側コントローラ110はコンタクタ107をオフ状態にする。給電側コントローラ110は、アクセル操作によるアクセル開度、モータの回転数等によりトルク指令値を演算しつつ、当該トルク指令値に相当するトルクをモータ104から出力させるように、インバータ103のスイッチング信号を生成し、各スイッチング素子に出力する。モータ104の力行時には、インバータ103は、バッテリ101の直流電力を交流電力に変換しつつ、モータに出力する。またモータ104の回生時には、インバータ103はモータ104から入力される交流電力を直流電力に変換して、バッテリ101に出力する。給電車両100の走行中、コンタクタ107はオフ状態になっているため、モータ104の駆動中の中性点Aの電位はコンバータ106及び充電ポート108に印加されない。また、コンバータ106は駆動していない。
【0022】
次に、給電車両100から充電車両200へ直流で電力を供給する際の給電側コントローラ110の制御と充電側コントローラ210の制御を、それぞれ説明する。
図2は給電側コントローラ110の制御フローを示すフローチャートである。
図3は充電側コントローラ210の制御フローを示すフローチャートである。
【0023】
まず、給電車両100と充電車両200との間の充電ポート108、208が充電ケーブル300で接続されると、給電側コントローラ110は充電ケーブル300の接続を確認する(ステップS11)。
【0024】
ステップS12にて、給電側コントローラ110は、通信部120を用いて、充電車両200との通信を開始する。給電側コントローラ110は、バッテリ201の情報を充電車両200から取得する。バッテリ201の情報は、バッテリ201の現在の状態(充電を行う前の状態)を示す情報であって、バッテリ201の電圧、SOC等である。また、充電車両200側の充電側コントローラ210が、給電車両100から充電車両200への出力電力となる目標値を管理している場合には、給電側コントローラ110は、当該目標値を取得してもよい。
【0025】
ステップS13にて、給電側コントローラ110は、バッテリ101に接続された電圧センサを用いて、バッテリ101の電圧を検出する。そして、給電側コントローラ110は、給電車両100のバッテリ101の電圧と、充電車両200のバッテリ201の電圧に基づいて目標電圧を設定する。目標電圧は、コンバータ106の出力電圧の目標値となる。給電側コントローラ110は、バッテリ201の電圧以上の電圧を目標電圧に設定する。また、
図1に示すように、給電車両100と充電車両200との間で電力を供給する場合に、コンバータ106の電力はバッテリ201に直接供給される。そのため、目標電圧はバッテリ101の充電電圧となる。
【0026】
次に、ステップS14にて、給電側コントローラ110はコンタクタ107をオフ状態からオン状態に切り替える。コンタクタ107がオフ状態からオン状態に切り替わる時に、コンバータ106の出力側のコンデンサには電圧が印加されていない。
【0027】
次に、ステップS15にて、給電側コントローラ110は、インバータ103のスイッチング素子を制御して、バッテリ101の電圧を、インバータ103及びモータ104により降圧させる。また、給電側コントローラ110は、コンバータ106のスイッチング素子を制御して、インバータ103及びモータ104により降圧した電圧を昇圧させる。給電側コントローラ110は、インバータ103の三相のうち、二相のスイッチング素子をオフ状態にしつつ、一相のスイッチング素子のオン、オフを切り替える。このとき、一相のスイッチング素子、当該一相のスイッチング素子の接続点に接続されたモータ104のコイル、及び、追加リアクトル105は降圧回路として動作する。インバータ103及びモータ104により降圧された電圧は、コンバータ106の入力側に印加される。
【0028】
また、給電側コントローラ110は、コンバータ106の複数のスイッチング素子のオン、オフを切り替えることで、コンバータ106を昇圧回路として動作させて、コンバータ106の出力電圧を目標電圧にする。これにより、給電側コントローラ110は、コンバータ106の出力電圧が目標電圧になるように、インバータ103及びコンバータ106を制御して、バッテリ101の電圧を目標電圧まで昇降圧させることで、バッテリ101の電圧制御を行う。
【0029】
ステップS16にて、給電側コントローラ110は、通信部120を用いて、充電車両200から充電停止信号を受信したか否か判定する。充電停止信号は、充電を停止するための指令信号である。充電停止信号を受信していない場合には、ステップS15に戻る。そして、ステップS15、S16の制御ループが繰り返されることで、給電車両100から充電車両200への電力供給が継続される。
【0030】
一方、充電停止信号を受信した場合には、給電側コントローラ110はインバータ103及びコンバータ106のスイッチング素子の切り替え動作を停止させることで、電力供給を停止する(ステップS17)。そして、給電側コントローラ110はコンタクタ107をオン状態からオフ状態に切り替え(ステップS18)、給電車両100側の制御フローが終了する。
【0031】
次に、充電側コントローラ210の制御を説明する。ステップS21及びステップS22の制御は、ステップS11及びステップS12の制御と同様である。
【0032】
ステップS23にて、充電側コントローラ210はコンタクタ207をオフ状態からオン状態に切り替えて、充電ポート208とバッテリ201との間を導通させる。
【0033】
コンタクタ207がオン状態になり、充電ポート208から電力が供給されると、充電ポート208への入力電圧はバッテリ201に直接、印加されることで、バッテリ201が充電される。そして、充電側コントローラ210は、バッテリ201の充電中、バッテリ201に接続された電圧センサを用いてバッテリ201の状態を管理することで、バッテリ201の充電を制御する(ステップS24)。
【0034】
ステップS25にて、充電側コントローラ210は、バッテリ201の電圧と、充電の終了を示す閾値電圧とを比較する。バッテリ201の電圧が閾値電圧未満である場合には、充電は終了しておらず、ステップS24に戻る。そして、ステップS24、S25の制御ループが繰り返されることで、バッテリ201の充電制御が継続される。一方、バッテリ201の電圧が閾値電圧以上である場合には、充電終了となり、ステップS26に進む。
【0035】
ステップS26にて、充電側コントローラ210は、通信部220により充電停止信号を給電車両100に送信する。そして、充電側コントローラ210はコンタクタ207をオン状態からオフ状態に切り替え(ステップS27)、充電車両200側の制御フローが終了する。なお、バッテリ201の充電制御は、給電側コントローラ110により行われてもよい。
【0036】
上記のように、本発明は、モータ104及びインバータ103を降圧回路として動作させてバッテリ101の電圧を所定の電圧に降圧し、コンバータ106を昇圧回路として動作させて当該所定の電圧を昇圧し、昇圧された電圧を給電車両100から充電車両200に出力することで、バッテリ201を充電する。これにより、給電車両100側の構成要素を効率的に活用でき、さらに充電効率も高めることができる。また、コンバータ106は、車両間で電力を供給するときの変換器として対応すれば十分なため、コンバータ106の容量を抑えることができる。その結果として、不要に大きなコンバータを給電車両100に搭載する必要がないため、安価に車両間の充電システムを構成できる。
【0037】
ここで、バッテリ101、201の性質について、
図4を用いて説明する。
図4は、バッテリ101、201の充電状態(SOC)に対するバッテリ101、201の電圧の特性を示すグラフである。
図4において、グラフaはバッテリ101、201に負荷が加わっていない時(非充電時)の特性を示し、グラフbはバッテリ101、201の放電時の特性を示し、グラフcはバッテリ101、201の充電時の特性を示す。なお、上記と同様に、バッテリ101は給電側の二次電池とし、バッテリ201は充電側の二次電池とする。
【0038】
図4に示すように、バッテリ101、201の特性として、放電時にはバッテリ101、201の電圧は無負荷時よりも低下する。また、充電時にはバッテリ101、201の電圧は無負荷時よりも上昇する。そのため、例えばバッテリ101のSOCが80%とし、バッテリ201のSOCが35%とした場合に、バッテリ101の電圧はバッテリ201の電圧よりも高くなっている。一方、バッテリ101、201間で充電を行う場合には、給電側のバッテリ101の電圧は低下し、充電側のバッテリ201の電圧が上昇するため、バッテリ101の電圧はバッテリ201の電圧とほぼ同じになる。
【0039】
そして、本発明とは異なり、バッテリ101とバッテリ201との間に昇圧コンバータとして機能する構成要素がない場合には、バッテリ101からバッテリ201に充電できなくなってしまう。さらに、充電開始時はバッテリ101のSOCが高い状態であったとしても、充電が進むにつれて、バッテリ101のSOCが低下するため、充電できなくなってしまう。そして、
図4のグラフの例で、充電側のバッテリ201が充電対象として取り得るSOCの範囲を35%未満とした場合に、全ての範囲で充電可能とするためには、給電側のバッテリ101のSOCは80%以上にしなければならない。そのため、給電側のバッテリ101はSOC80%以上とし、充電側のバッテリ201はSOC35%未満としなければ、バッテリ間で充電することはできない。そして、SOC35%以上からSOC80%未満は、充電不可領域となってしまう。
【0040】
一方、本発明は、インバータ103、モータ104及びコンバータ106を、昇降圧回路として動作させている。これにより、バッテリ101とバッテリ201との間の電位差に関わらず、バッテリ101からバッテリ201に電力を供給することができるため、広範囲のSOCで充電を行うことができる。
【0041】
また本発明は、コンバータ106の出力側に充電ポート108を接続し、コンバータ106の入力側とモータ104との間にコンタクタ107を接続し、モータ104を駆動させる場合にはコンタクタ107をオフ状態にする。これにより、モータを駆動させる際には、インバータ103による電力変換だけでよいため、電力効率を高めることができる。また、コンバータ106を、モータ駆動用の変換器としなくてもよいため、コンバータ106の容量を抑えることができる。
【0042】
また本発明は、通信部120により充電車両200から取得した情報に基づき、バッテリ201の充電電圧を設定し、コンバータ106の出力電圧が当該充電電圧になるようインバータ103及びコンバータ106を制御する。これにより、コンバータ106の出力電圧をバッテリ201に直接印加させることができ、給電車両100と充電車両200との間で直流充電を行うことができる。
【0043】
なお、本発明の変形例として
図5に示すように、給電車両100は、外部充電装置400から入力される電力を、バッテリ101に直接流すような回路を備えてもよい。給電車両100は、コンタクタ111と、配線112a、112bとを備えている。コンタクタ111は、バッテリ101の電力をインバータ103に流す導通経路と、充電ポート108に入力された電力をバッテリ101に流す導通経路を切り替えるためのスイッチである。コンタクタ111は、バッテリ101とインバータ103の入力側との間、及び、バッテリ101と充電ポート108との間に接続されている。配線112a及び配線112bの一端はコンタクタ111に接続されている。配線112a及び配線112bの他端は充電ポート108とコンバータ106との間に接続されている。そして、配線112a、112bが、充電ポート108に入力された電力をバッテリ101に流す導通経路となる。そして、充電ポート108は、コンバータ106の出力側と、配線112a、112bに接続されている。
【0044】
外部充電装置400によりバッテリ101を充電する場合には、外部充電装置400と充電ポート108との間が、充電ケーブル300により接続される。給電側コントローラ110は、充電ポート108とバッテリ101との間を導通するように、コンタクタ111をオン状態にし、コンタクタ107をオフ状態にする。コントローラ110は、バッテリ101に接続された電圧センサを用いて、充電中のバッテリ101の状態を管理する。
【0045】
これにより、充電ポート108を、外部充電装置400によりバッテリ101を充電するときのポートと、車両間の電力供給によりバッテリ201を充電するときのポートを、充電ポート108で共通化できる。
【0046】
上記のインバータ103が本発明の「第1電力変換手段」に相当し、給電側コントローラ110が本発明の「制御手段」に相当し、通信部120が本発明の「通信手段」に相当し、コンバータ106が本発明の「第2電力変換手段」に相当する。
【0047】
《第2実施形態》
図6は、発明の他の実施形態に係る充電システムのブロック図である。本例では上述した第1実施形態に対して、モータ104の構成が異なり、またコンタクタ113、116、インバータ114、及びコンデンサ115を設ける点が異なる。これ以外の構成は上述した第1実施形態と同じであり、その記載を援用する。
【0048】
給電車両100は、コンデンサ102、115と、インバータ103、114と、モータ104と、コンタクタ113、116と、充電ポート108と、給電側コントローラ110と、通信部120とを備えている。
【0049】
モータ104は、例えば多重巻線を有する同期モータ或いは誘導モータであって、インバータ103、114の交流側に接続されている。モータ104は、インバータ103に接続された一方の巻線(コイル104a〜104cに相当)と、インバータ114に接続された他方の巻線(コイル104d〜104fに相当)とを備えている。
【0050】
一方の巻線はスター状に結線した3つのコイル104a〜104cで構成され、他方の巻線はスター状に結線した3つのコイル104d〜104fで構成されている。3つのコイル104a、104b、104c及び3つのコイル104d、104e、104fは、インバータ103、114のu、v、w相のアーム回路と対応している。
【0051】
一方の巻線と他方の巻線との間は、直流的には導通していないが、各相のコイル間で、磁気的に結合されている。そのため、交流電流が一方巻線に流れると、他方の巻線に誘導電流が発生し、誘導電流がインバータ114の交流側に流れる。すなわち、モータ104はトランスとして作用し、インバータ103、114は一方の巻線及び他方の巻線52に対して独立したインバータになっている。
【0052】
コンタクタ113は、バッテリ101とインバータ103の間に接続されている。インバータ114は、バッテリ101の電力を交流電力に変換してモータ104に出力する電力変換回路である。インバータ114の回路構成は、インバータ103と同様である。コンデンサ115はバッテリ101からインバータ114の直流側に入力される電圧を平滑するためのコンデンサであって、インバータ114の直流側に接続されている。
【0053】
コンタクタ116は、バッテリ101からインバータ114に電力を供給する導通経路と、インバータ114の直流側と充電ポート108との間の導通経路とを、切り替えるためのスイッチである。充電ポート108は、コンタクタ116及びコンデンサ115を介して、インバータ114の直流側に接続されている。
【0054】
次に、給電車両100の走行中の給電側コントローラ110の制御を説明する。車両の走行中、給電側コントローラ110はコンタクタ113をオン状態にしつつ、バッテリ101とインバータ114の直流側とを導通させるように、コンタクタ116をオン状態にする。充電ポート108とインバータ114の直流側との間は遮断されている。そして、給電側コントローラ110は、バッテリ101からインバータ103、114に入力される電力に対して、モータ104から指令値に応じたトルクを出力させるように、インバータ103、114のPWM制御を行う。
【0055】
次に、給電車両100から充電車両200へ直流で電力を供給する際の給電側コントローラ110の制御を説明する。
図7は給電側コントローラ110の制御フローを示すフローチャートである。なお、充電側コントローラ210の制御は、第1実施形態に係る充電側コントローラ210の制御と同様であるため、説明を省略する。
【0056】
ステップS31、S32の制御は、第1実施形態に係るステップS11、S12の制御と同様であるため説明を省略する。
【0057】
ステップS33にて、給電側コントローラ110は、バッテリ101に接続された電圧センサを用いて、バッテリ101の電圧を検出する。そして、給電側コントローラ110は、バッテリ101の電圧と、充電車両200のバッテリ201の電圧に基づいて、チャージ電圧を設定する。
【0058】
給電側コントローラ110は、バッテリ201の現在の電圧をチャージ電圧に設定する。コンデンサ115は、コンタクタ116を介してバッテリ101とインバータ114との間に接続されている。そして、モータ104の駆動時に、コンデンサ115はチャージされている。そのため、コンデンサ115の電圧と、バッテリ201の電圧は異なっている場合がある。電圧が異なる状態で、充電ケーブル300を介して、コンデンサ115とバッテリ201が接続されると、大きな電流(突入電流)が瞬間的に流れる可能性がある。
【0059】
そのため、コンデンサ115とバッテリ201が接続されるときの電位差を抑えるために、チャージ電圧が設定され、以下のステップでコンデンサ115が充電される。
【0060】
ステップS34にて、給電側コントローラ110は、コンタクタ113をオン状態し、コンタクタ116をオフ状態にする。コンタクタ116はオフ状態のため、インバータ114の直流側は、バッテリ101と遮断され、充電ポート108とも遮断されている。
【0061】
ステップS35にて、給電側コントローラ110は、インバータ103とインバータ114を制御して、コンデンサ115の電圧をチャージ電圧まで充電する(以下、プリチャージとも称す。)。
【0062】
ステップS36にて、給電側コントローラ110は、バッテリ101とインバータ114の直流側との間を遮断しつつ、充電ポート108とインバータ114の直流側との間を導通させるように、コンタクタ116をオン状態に切り替える。
【0063】
ステップS37にて、給電側コントローラ110は、インバータ103からモータ104の1次側の巻線(コイル104a、コイル104b及びコイル104c)に対して、10kHz程度の交流電圧が印加されるように、インバータ103を制御する。また、給電側コントローラ110は、モータ104の2次側の巻線(コイル104d、コイル104e及びコイル104f)の交流電圧が、1次側の巻線に対して所定の位相差をもつように、インバータ114を制御する。そして、給電側コントローラ110は、フィードバック制御により交流電圧の位相差を制御することで、インバータ114の出力電圧がバッテリ201の充電電圧となるように、インバータ114を制御する。
【0064】
ステップS38にて、給電側コントローラ110は、通信部120を用いて、充電車両200から充電停止信号を受信したか否か判定する。充電停止信号を受信していない場合には、ステップS37に戻る。そして、ステップS37、S38の制御ループが繰り返されることで、給電車両100から充電車両200への電力供給が継続される。充電停止信号を受信した場合にはステップS39に進む。ステップS39、S40の制御は、第1実施形態に係るステップS17、18の制御と同様であるため説明を省略する。
【0065】
上記のように、本発明は、バッテリ101の電圧を降圧させて、さらに昇圧させるように、インバータ103、114、モータ104を動作させている。これにより、車両間で電力を供給する際に、モータ104の駆動用のインバータ103、114を利用できるため、別途コンバータを設けなくてもよい。その結果として、コストを抑制した車両間の充電システムを実現できる。
【0066】
また本発明は、インバータ103、114及びモータ104を、昇降圧回路として動作させている。これにより、バッテリ101とバッテリ201との間の電位差に関わらず、バッテリ101からバッテリ201に電力を供給することができるため、広範囲のSOCで充電を行うことができる。
【0067】
また本発明は、バッテリ101の電力を充電車両200に供給する場合に、モータ104の多重巻線をトランスとして動作させている。これにより、バッテリ101とバッテリ201との間を、直流的に絶縁させることができる。
【0068】
また本発明は、バッテリ101の電力を充電車両200に供給する前に、バッテリ101の電力でコンデンサ115の電圧を所定の電圧(チャージ電圧)に充電する。これにより、バッテリ間で充電する際に、コンデンサ115とバッテリ201を接続しても、大きな電流が瞬間的に流れることを防止できる。
【0069】
なお、給電車両100は、第1実施形態の変形例で示したように、外部充電装置400から充電ポート108に入力される電力を、バッテリ101に直接流すような回路を備えてもよい。
【0070】
上記のインバータ114が本発明の「第2電力変換手段」に相当する。
【0071】
《第3実施形態》
図8は、発明の他の実施形態に係る充電システムのブロック図である。本例では上述した第2実施形態に対して、モータ104の構成と、インバータ103、114の交流側とモータ104との接続部分が異なる。これ以外の構成は上述した第2実施形態と同じであり、第1実施形態及び第2実施形態の記載を適宜、援用する。
【0072】
モータ104は3つのコイル104a〜104cを有している。コイル104aの一端は、インバータ103のu相に相当する2つスイッチング素子の接続点に接続され、コイル104aの他端(中性点)は、インバータ114のu相に相当する2つスイッチング素子の接続点に接続されている。コイル104b、104cの一端は、インバータ103のv、w相の2つスイッチング素子の接続点にそれぞれ接続され、コイル104b、10cの他端(中性点)は、インバータ114のv、w相に相当する2つスイッチング素子の接続点に接続されている。
【0073】
次に、給電車両100の走行中の給電側コントローラ110の制御を説明する。車両の走行中、給電側コントローラ110はコンタクタ113をオン状態にしつつ、バッテリ101とインバータ114の直流側とを導通させるように、コンタクタ116をオン状態にする。充電ポート108とインバータ114の直流側との間は遮断されている。そして、給電側コントローラ110は、バッテリ101からインバータ103、114に入力される電力に対して、モータ104から指令値に応じたトルクを出力させるように、インバータ103、114を制御する。モータの104の駆動時には、インバータ103からモータ104に電力が供給され、モータ電流はモータ104の中性点を通って、インバータ114を介してバッテリ101に戻る。
【0074】
次に、給電車両100から充電車両200へ直流で電力を供給する際の給電側コントローラ110の制御を説明する。なお、充電側コントローラ210の制御は、第1実施形態に係る充電側コントローラ210の制御と同様であるため、説明を省略する。
【0075】
充電ケーブル300が給電車両100に接続されてから、プリチャージが完了し、コンタクタ116の状態が切り替えるまでの制御は、第2実施形態に係るステップS31〜S36の制御と同様である。
【0076】
コンタクタ116の状態が切り替わった後、給電側コントローラ110は、バッテリ101の電圧に対して降圧した電圧がモータ104に印加されるように、インバータ103及びモータ104を降圧回路として動作させる。給電側コントローラ110は、インバータ103及びモータ104の降圧回路によって降圧された電圧を昇圧するように、インバータ114及びモータ104を昇圧回路として動作させる。また、給電側コントローラ110は、インバータ114の出力電圧がバッテリ201の充電電圧となるように、インバータ114を制御する。
【0077】
給電側コントローラ110は、充電車両200から充電終了信号を受信するまで上記の制御を継続する。充電終了信号を受信した後の制御は、第2実施形態に係るステップS39、S40の制御と同様である。
【0078】
上記のように、本発明は、バッテリ101の電圧を降圧させて、さらに昇圧させるように、インバータ103、114、モータ104を動作させている。これにより、車両間で電力を供給する際に、モータ104の駆動用のインバータ103、114を利用できるため、別途コンバータを設けなくてもよい。その結果として、コストを抑制した車両間の充電システムを実現できる。
【0079】
また本発明は、モータ104の多重巻線の一方の端子をインバータ103に接続し、多重巻線の他方の端子をインバータ114に接続している。これにより、モータ104の相電圧の最大電圧がバッテリ101の電圧となるため、モータ104の線間電圧は、バッテリ101の電圧より大きくすることができる。その結果として、モータ104が駆動する際の回転数を高めることができる。
【0080】
なお、給電車両100は、第1実施形態の変形例で示したように、外部充電装置400から充電ポート108に入力される電力を、バッテリ101に直接流すような回路を備えてもよい。