特許第6390206号(P6390206)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6390206
(24)【登録日】2018年8月31日
(45)【発行日】2018年9月19日
(54)【発明の名称】圧電発振器
(51)【国際特許分類】
   H03B 5/32 20060101AFI20180910BHJP
   H03H 9/19 20060101ALI20180910BHJP
   H03H 9/215 20060101ALI20180910BHJP
   H03H 3/04 20060101ALI20180910BHJP
【FI】
   H03B5/32 H
   H03B5/32 E
   H03H9/19 J
   H03H9/215
   H03H3/04 B
【請求項の数】1
【全頁数】10
(21)【出願番号】特願2014-130532(P2014-130532)
(22)【出願日】2014年6月25日
(65)【公開番号】特開2015-89105(P2015-89105A)
(43)【公開日】2015年5月7日
【審査請求日】2017年2月14日
(31)【優先権主張番号】特願2013-202406(P2013-202406)
(32)【優先日】2013年9月27日
(33)【優先権主張国】JP
(73)【特許権者】
【識別番号】000149734
【氏名又は名称】株式会社大真空
(72)【発明者】
【氏名】古城 琢也
【審査官】 橋本 和志
(56)【参考文献】
【文献】 特開2005−167792(JP,A)
【文献】 特開2007−274610(JP,A)
【文献】 国際公開第2012/115239(WO,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H03B 5/32
H03H 3/04
H03H 9/19
H03H 9/215
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
上方に開口した凹部を有する容器に、音叉型圧電振動片と集積回路素子とを収容し、容器に蓋を接合することによって前記凹部を気密に封止した圧電発振器であって、
前記音叉型圧電振動片は、基部と、基部の一端側から同方向に伸長する一対の振動腕とを少なくとも有し、
前記一対の振動腕の各先端側には、音叉型圧電振動片の周波数調整が行われる周波数調整部が設けられ、
当該周波数調整部に対して振動腕の根元側には、音叉型圧電振動片を屈曲振動させるための励振電極が形成された振動部が設けられてなり、
前記凹部の内底面に集積回路素子が搭載され、凹部の内底面から上方に突出した段部の上面に音叉型圧電振動片が接合されることにより、
前記周波数調整部全体と、前記振動部の周波数調整部に近い側にある一部の領域とが、平面視で集積回路素子と重畳し、前記振動部と集積回路素子とが平面視で重畳する領域のうち、前記振動腕の伸長方向における長さが、振動部の振動腕の伸長方向における長さに対して50%以下であることを特徴とする圧電発振器。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は各種電子機器に用いられる圧電発振器に関する。
【背景技術】
【0002】
発振回路や温度補償回路、温度センサ等を集積化した集積回路素子(以下、ICと称す)と、圧電振動片とを1つのパッケージに収容し、これらの素子を気密に封止した圧電発振器は各種通信機器等、様々な分野で用いられている。
【0003】
前記圧電発振器として圧電振動片に水晶振動片を使用した水晶発振器を例に挙げる。水晶発振器の構成の例として、パッケージ(容器)に設けられた凹部の内底面にICを搭載した後、凹部の内底面から上方に突出した段部の上面に水晶振動片の一端側を接合することによって、ICの上方に水晶振動片が位置する、いわゆる「2階建て構造」のものがある。このような構成の水晶発振器は例えば特許文献1に開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2002−118423号
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら前述した「2階建て構造」の温度補償型の水晶発振器では、水晶振動片の有する周波数温度特性を高精度に温度補償する上で次の問題が存在する。
【0006】
温度補償型の水晶発振器では温度補償を行うために、ICに実装されたEEPROM(Electrically Erasable Programmable Read−Only Memory)を読み書きする際には、通常時よりも高い電圧が印可されることがある。このときICが発熱して、その熱が水晶振動片に伝わり、通常発振状態よりも周波数が大きく変化してしまうことがある。各温度での周波数調整はROMの値を変化させて負荷容量を調整することによって行なわれるが、図7に示すようにROMの値を変える度に周波数が大きく変化してしまい、安定状態になるまで正確な周波数を測定することができないという問題が存在する。なお図7は縦軸が発振周波数に偏差を、横軸に時間(秒)をそれぞれ表した図であり、ROMにアクセスする際に周波数が変化していることが分かる。
【0007】
また、例えば特許文献1に示すような音叉型水晶振動片を用いた水晶発振器においては次の理由により、安定的な周波数の調整が困難になってくる。特許文献1において水晶振動片の周波数の調整は、ICを容器の空所の底面に固定した後に、水晶振動片の一端側を容器の第3層の上面に導電性接着剤を用いて片持ち接合している。このとき、平面視では水晶振動片の両振動腕の先端部分がICの上面をはみ出した状態となっている。水晶振動片の両振動腕の各先端部分には重り部が形成されており、当該重り部へエネルギビームが照射されることによって重り部がトリミングされ、周波数の調整が行なわれるようになっている。ここで、エネルギビームが照射される領域に、容器内底面に露出したIC搭載用の電極パターンが存在していると、トリミングされたIC搭載用の電極パターンの金属屑が飛散して、水晶振動片や他のIC搭載用電極パターンに付着するおそれがある。ここで音叉型水晶振動片は振動腕の先端部分である重り部の質量変化が周波数の変化に影響するため、前記先端部分に金属屑が付着すると周波数調整中に周波数が安定しないといった問題が生じる。またトリミングによって飛散した金属屑が電極パターン間に付着することによって、絶縁不良が発生するおそれがある。
【0008】
本発明は、かかる点に鑑みてなされたものであり、安定した周波数調整を行うことができるとともに、ICの発熱による圧電振動片の周波数変化を抑制した、より高精度な圧電発振器を提供することを目的とするものである。
【課題を解決するための手段】
【0009】
上記目的を達成するために本発明は、上方に開口した凹部を有する容器に、音叉型圧電振動片と集積回路素子とを収容し、容器に蓋を接合することによって前記凹部を気密に封止した圧電発振器であって、前記音叉型圧電振動片は、基部と、基部の一端側から同方向に伸長する一対の振動腕とを少なくとも有し、前記一対の振動腕の各先端側には、音叉型圧電振動片の周波数調整が行われる周波数調整部が設けられ、当該周波数調整部に対して振動腕の根元側には、音叉型圧電振動片を屈曲振動させるための励振電極が形成された振動部が設けられてなり、前記凹部の内底面に集積回路素子が搭載され、凹部の内底面から上方に突出した段部の上面に音叉型圧電振動片が接合されることにより、前記周波数調整部全体と、前記振動部の周波数調整部に近い側にある一部の領域とが、平面視で集積回路素子と重畳し、前記振動部と集積回路素子とが平面視で重畳する領域のうち、前記振動腕の伸長方向における長さが、振動部の振動腕の伸長方向における長さに対して50%以下となっている。
【0010】
上記発明によれば、前記音叉型圧電振動片は、基部と、基部の一端側から同方向に伸長する一対の振動腕とを少なくとも有し、前記一対の振動腕の各先端側には、音叉型圧電振動片の周波数調整が行われる周波数調整部が設けられ、当該周波数調整部に対して振動腕の根元側には、音叉型圧電振動片を屈曲振動させるための励振電極が形成された振動部が設けられてなり、前記凹部の内底面に集積回路素子(IC)が搭載され、凹部の内底面から上方に突出した段部の上面に音叉型圧電振動片が接合されることにより、前記周波数調整部全体が平面視で集積回路素子と重畳している。このような構成により、安定した周波数調整を行うことができる。
【0011】
これは、周波数調整部全体が平面視でICと重畳することによって、エネルギビームが照射される領域に、容器内底面のIC搭載用の電極パターンが位置しないようにすることができるためである。つまり、周波数調整部以外にエネルギビームが照射される領域をICの上面のみとすることによって、容器内底面に露出したIC搭載用の電極パターンからの金属屑の発生を防止することができる。これにより、トリミングされた電極パターンの金属屑の水晶振動片への付着を防止し、安定した周波数の調整を行うことができる。また飛散した金属屑の電極パターン間への付着による絶縁不良も防止することができる。
【0012】
また上記発明によれば、前記周波数調整部全体と、前記振動部の周波数調整部に近い側にある一部の領域とが、平面視で集積回路素子と重畳しているため、ROMアクセス時のICの発熱による音叉型圧電振動片の周波数変化を抑制することができる。一対の振動腕の屈曲振動の振動源となる部位は、励振電極が形成された領域(振動部)である。この振動部は熱による周波数変化の影響を受けやすい領域であるが、本発明では振動部のうち、周波数調整部に近い側にある一部の領域だけが集積回路素子と平面視で重畳している。これにより、熱源となるICからの熱の音叉型圧電振動片への伝導を抑制することができるので、ROMアクセス時のICからの発熱による音叉型圧電振動片の周波数変化を抑制することができる。これによって、より高精度な温度補償を行なうことができる。
【0013】
また上記発明によれば、振動部と集積回路素子とが平面視で重畳する領域のうち、振動腕の伸長方向における長さが、振動部の振動腕の伸長方向における長さに対して50%以下とすることによって、ROMアクセス時のICの発熱による音叉型圧電振動片の周波数変化をより効果的に抑制することができる。なお振動部と集積回路素子とが平面視で重畳する領域の振動腕の伸長方向における長さが、振動部の振動腕の伸長方向における長さに対して50%を超えると、振動部とICとが平面視で重畳領域が増大し過ぎてしまうため、ICからの熱の音叉型圧電振動片への伝導抑制効果を得られ難くなってしまう。したがって、振動部と集積回路素子とが平面視で重畳する領域の振動腕の伸長方向における長さは、振動部の振動腕の伸長方向における長さに対して50%以下が好ましく、27%以下がより効果的である。
【発明の効果】
【0014】
以上のように、本発明によれば、安定した周波数調整を行うことができるとともに、ICの発熱による圧電振動片の周波数変化を抑制した、より高精度な圧電発振器を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0015】
図1】本発明の実施形態に係る水晶発振器の上面模式図
図2図1のA−A線における断面模式図
図3図1のB部の拡大模式図
図4図3のC−C線における断面模式図
図5図3のD−D線における断面模式図
図6図1のA−A線における断面模式図
図7】従来の水晶発振器における周波数変化を表す図
【発明を実施するための最良の形態】
【0016】
以下、本発明の実施形態を図面を参照しながら説明する。本実施形態では圧電発振器として、音叉型水晶振動片とICとを1つのパッケージに収容した温度補償機能を有する水晶発振器(温度補償型水晶発振器)を例に挙げて説明する。なお図1は本発明の実施形態に係る水晶発振器の上面模式図であり、説明の便宜上、凹部9を覆うための蓋が接合されていない状態を表している。図2および図6図1のA−A線における断面模式図であり、蓋が容器に接合された状態を表している。
【0017】
本発明に係る水晶発振器1は、容器2と、水晶振動片3と、集積回路素子(以下、ICと略)4と、蓋5が主な構成部材となっている(図2参照)。本実施形態では水晶発振器1の出力周波数は32.768kHzとなっている。
【0018】
図1において容器2は上方に開口した凹部9を有する略直方体状の容器であり、絶縁性材料を基材として構成されている。具体的には容器2は4枚のセラミックグリーンシート(下層側から順に第1層20、第2層21、第3層22、第4層23)の積層体であり、焼成によって一体成形されている。そして図2に示すように、容器2の第4層23の上面には枠状の金属製リング6が取り付けられている。この金属製リング6の上面には封止材7が周状に形成されており、容器2は封止材7を介して金属製の蓋5とシーム溶接法によって接合される。なお本実施形態では容器2と蓋5との接合は真空下で行われる。このように真空下で凹部9を気密封止することによって、凹部9内に不活性化ガス等の気体が充填された場合に比べて等価直列抵抗値を低下させることができる。
【0019】
図1に示すように容器2は平面視では略矩形であり、その外形寸法は3.2mm×2.5mmとなっている。凹部9も平面視略矩形となっており、凹部9の内部には内底面210から上方に突出した段部8が形成されている。この段部8は第3層22の一部が凹部9内に露出したものであり、周状に形成されている。段部8の一端側80(水晶振動片3の固定端側)は平面視矩形状の凹部9の一方の短辺に沿って形成され、当該短辺の中央部分が抉られた形状となっている。段部8の他端側81(水晶振動片の自由端に近い側)は平面視矩形状の凹部9の他方の短辺に沿って形成されている。
【0020】
段部8の一端側の上面800には、音叉型水晶振動片と導電接合される2つの振動片搭載電極10a,10bが容器短辺方向に並列して形成されている。振動片搭載電極10a,10bは異なる面積で形成されており、振動片搭載電極10aの平面視の面積の方が、振動片搭載電極10bの平面視の面積よりも大きくなっている。そして、振動片搭載電極10a,10bの互いに対向する辺の一部からは、互いに近接するように(2つの振動片搭載電極の間の隙間が狭くなるように)容器短辺方向に突出した突出部101a,101bが形成されている。このように2つの振動片搭載電極10a,10bの対向辺の容器長辺の中央に近い側を局所的に幅狭にすることによって、突出部と幅広の領域(振動片搭載電極の対向辺のうち突出部が形成されていない領域)との境界が略直角となる。当該直角部分を画像認識のポイントとして活用することにより、水晶振動片を容器へ位置決め搭載する際の画像認識の精度を向上させることができる。これにより、水晶発振器がより小型化になったとしても、容器への水晶振動片の位置決め搭載を高精度に行なうことができる。
【0021】
振動片搭載電極10a,10bは、容器内部に設けれらた内部配線(図示省略)とビア(図示省略)を介して、内底面210の複数の電極パッド(図示省略)の一部と、容器外底面201に設けれらた複数の外部接続端子(図示省略)の一部とに電気的に接続されている。前記複数の外部接続端子は、平面視矩形状の容器外底面201の4隅に4つ形成されている。これら4つの外部接続端子は、OE(Output Enable)端子、グランド端子、出力用端子、電源端子となっている。
【0022】
容器2の内底面210には、図示しない複数の電極パッドが露出した状態で形成されている。これら複数の電極パッドは、IC4の複数の機能端子とそれぞれ対応しており、当該電極パッドには所定形状の配線パターンが接続されている。前記複数の電極パッドと配線パターンとは容器の第2層21の上面に形成されており、第3層22が第2層21上に積層されることにより、複数の電極パッドと配線パターンの一部とが凹部9内に露出するようになっている。なお本実施形態の説明において、以下、前記電極パッドおよび前記配線パターンとを含めて電極パターンと呼ぶ。前記電極パターンは容器内底面側から、タングステン、ニッケルメッキ、金メッキの順で積層された構成となっている。電極パターンは振動片搭載電極10(10a,10b)と一括同時に形成される。
【0023】
IC4は、発振回路や温度補償回路やEEPROM、温度センサ等を集積化した平面視矩形状のベアチップICである。IC4は、その機能端子面が容器内底面210に対面するように、ICの各機能端子が容器内底面の複数の電極パッド上に一対一で金属製のバンプB2を介して超音波接合される(いわゆるFCB接合(Flip Chip Bonding))。
【0024】
図1において水晶振動片3は、屈曲振動を行なう音叉型の水晶振動片である。水晶振動片3は図3に示すように、基部31と、基部31の一端側310から一方向に伸長する一対の振動腕30,30と、基部31の他端側311から基部の幅方向(振動腕の伸長方向と略直交する方向)に突出する突出部32とを備えている。振動腕30はさらに、腕部301(301a、301b)とテーパー部303と幅広部302(302a、302b)とから構成されている。テーパー部303は腕部301の終端側から離間する方向に連続的に拡幅する部位である。幅広部302はテーパー部303の終端側につながっており、腕部301の幅よりも幅広に形成されている。
【0025】
水晶振動片3は1枚の水晶ウエハから多数個の音叉型水晶振動片が一括で成形されている。具体的に水晶振動片の外形は、フォトリソグラフィ技術を用いてレジストまたは金属膜をマスクとしてウエットエッチング法によって一括的に成形されている。なお水晶振動片3の最大長さ寸法は、幅広部302の先端部から基部の他端側311までの寸法であり、本実施形態では1.2mmとなっている。一方、水晶振動片3の最大幅寸法は、基部の幅方向に最も幅広となる領域の端縁から、突出部32の先端までの寸法までの寸法であり、本実施形態では0.38mmとなっている。
【0026】
一対の腕部301a,301bの表裏主面には、平面視略長方形の一条の溝Gが形成されている。この溝G(G1〜G4)は、図4に示すように腕部301の表裏で互いに対向するように形成されている。このような溝を形成することによって水晶振動片の直列抵抗値を低下させることができる。なお本実施形態では、平面視略長方形の溝G(G1〜G4)は、基部の一端側310まで及ばない長さで、かつテーパー部303との接続点まで及ばない長さで腕部301の表裏主面に形成されている。
【0027】
図1乃至3では記載を省略しているが、基部31と一対の振動腕30,30と突出部32には所定形状の各種電極(金属膜)が、真空蒸着法とフォトリソグラフィ技術を用いてパターン形成されている。これを具体的に図4乃至5を用いて説明する。前記各種電極のうち、一対の腕部301a,301bの各々の外周面に形成されている電極は水晶振動片を駆動させるための励振電極となっている(図4参照)。つまり、腕部301a(302b)の対向する2つの主面に設けられた一対の主面電極E1,E2(E5,E6)と、腕部301a(302b)の対向する2つの側面に設けられた一対の側面電極E7,E8(E3,E4)とが励振電極となっている。そして第1の励振電極は、腕部301aの主面電極E1,E2と、腕部301bの側面電極E3,E4とで構成され、それぞれが接続されている。同様に、第2の励振電極は、腕部301bの主面電極E5,E6と、腕部301aの側面電極E7,E8とで構成され、それぞれが接続されている。第1の励振電極と第2の励振電極とは異極となっておりこのような構成の電極に電界を与えることにより一対の振動腕が屈曲振動する。なお主面電極E1,E2(E5,E6)は、溝G1〜G4の内周面にも及んで形成されている。
【0028】
前記第1の励振電極と第2の励振電極は、クロムを下地層とし、当該下地層の上層の金層が積層された構成となっており、フォトリソグラフィ技術によって形成されている。前記第1の励振電極と第2の励振電極は、基部の側面および基部に設けられた図示しないスルーホールを介して基部31および突出部32の表裏面に導出されている。
【0029】
図5に示すように、幅広部302a,302bを構成する外周面(表裏で対向する2つの主面と、内側面と外側面で対向する2つの側面)の全周には、腕部301a,301bの側面電極E3とE4、側面電極E7とE8とを相互に共通接続する金属膜312が形成されている(図5では幅広部302aのみを表示し、幅広部302bの表示は省略)。つまり、幅広部302には異極の電極が形成されていない。なお本実施形態では、金属膜312はクロムからなる下地層、その上に金層が積層された膜構成となっている。
【0030】
幅広部302の外周に形成された金属膜312のうち、幅広部の表裏主面上に対応する領域には、周波数調整用の銀等からなる錘(金属膜)Wが蒸着法によって形成されている(図5)。音叉型水晶振動片の周波数の微調整は、この錘の質量をイオンビーム等の照射によって削減することによって行なわれる。なお図3では説明の便宜上、溝G1,G3に形成された励振電極(主面電極E1,E5)と周波数調整用錘Wのみを表示している。
【0031】
音叉型の水晶振動片は、前記第1の励振電極と前記第2の励振電極振動に電界を与えることによって振動腕が屈曲振動する。したがって、音叉型の水晶振動片において屈曲振動の振動源となる部位は、一対の振動腕のうち励振電極E1〜E8が形成された領域となる。以下、屈曲振動の振動源となる当該領域のことを振動部と称する。なお本実施形態では振動部は平面視では振動腕の伸長方向を長手方向とする略長方形となっており、前記長手方向の範囲を図3において符号Lで表記している。
【0032】
水晶振動片3の基部31の他端側311と突出部32の各々には、外部と導電接合される接続電極(図示省略)が形成されている。これらの接続電極はクロムの下地層の上層に金が積層された構成であり、振動腕の励振電極E1〜E8の形成と同時に形成される。そして前記接続電極の上には、電解めっき法によって金属製のバンプB1(B1a,B1b)が形成され、容器2の段部8の振動片搭載電極10a,10bとFCB接合される(図2乃至3参照)。
【0033】
以上のように、凹部9の内底面210にはIC4が搭載される。そして段部8の上面800に設けられた振動片搭載電極10a,10bには水晶振動片3の接続電極がバンプを介して導電接合される。これにより、IC4の上方に一対の振動腕30,30の一部が位置することになる。具体的には図3に示すように、水晶振動片3とIC4の容器2への搭載後における平面視の相対位置関係は、周波数調整部302の全体と、振動部のうち周波数調整部302に近い側にある一部の領域とが、IC4と重畳した状態となっている。
【0034】
上記構成によれば、安定した周波数調整を行うことができる。これは、周波数調整部302の全体が平面視でICと重畳することによって、エネルギビームが照射される領域に、容器の内底面210のIC搭載用の電極パターンが位置しないようにすることができるためである。つまり、周波数調整部302以外にエネルギビームが照射される領域をIC4の上面のみとすることによって、容器の内底面210に露出したIC搭載用の電極パターンからの金属屑の発生を防止することができる。これにより、トリミングされた電極パターンの金属屑の水晶振動片3への付着を防止し、安定した周波数の調整を行うことができる。また飛散した金属屑の電極パターン間への付着による絶縁不良も防止することができる。
【0035】
また上記構成によれば、周波数調整部302の全体と、前記振動部の周波数調整部302に近い側にある一部の領域とが、平面視でIC4と重畳しているため、ROMアクセス時のICの発熱による水晶振動片3の周波数変化を抑制することができる。一対の振動腕301a,301bの屈曲振動の振動源となる「振動部」は熱による周波数変化の影響を受けやすい領域であるが、本発明では振動部のうち、周波数調整部に近い側にある一部の領域だけがICと平面視で重畳している。これにより、熱源となるIC4からの熱の水晶振動片3への伝導を抑制することができ、ROMアクセス時のICからの発熱による水晶振動片3の周波数変化を抑制することができる。これによって、より高精度な温度補償を行なうことができる。
【0036】
本実施形態では、振動部とICとが平面視で重畳する領域の長さ方向の寸法Rは約0.193mmとなっており、振動部の振動腕の伸長方向における長さLは約0.71mmとなっている。振動部がICと平面視で重畳する長さRは、一対の振動腕301a,301bの伸長方向において、振動部の振動腕の伸長方向における長さLに対して約27%以下が好適である。
【0037】
本実施形態では、水晶振動片3の振動部の下面からIC4の上面400までの鉛直方向における隙間(図6における符号d)は、0.05mm以上(0.12mm以下)となっている。前記隙間「d」が0.05mm以下の場合、水晶振動片の振動部とICとが近接し過ぎてしまい、ROMアクセス時のICからの熱が水晶振動片へ伝導しやすくなる。これにより、水晶振動片の周波数が不安定な状態となりやすい。また記隙間「d」が0.05mm以下の場合、水晶振動片と振動片搭載電極との接合ばらつき等により、水晶発振器が外部衝撃等を受けることで水晶振動片とICとが接触する危険性が高まる。したがって隙間「d」は0.05mm以上確保することが望ましい。
【0038】
本実施形態では振動部がICとが平面視で重畳する領域の長さ方向の寸法Rが、一対の振動腕301a,301bの伸長方向において、振動部の振動腕の伸長方向における長さLに対して約27%以下となっているが、当該比率が27%以上であってもよい。例えば、前記比率が27%以上でかつ50%以下の場合は、振動部とICとが平面視で重畳する領域が前記比率が27%以下のときよりも増大するため、振動部とICとの隙間をできるだけ大きく設定することによってROMアクセス時のICからの発熱による水晶振動片の周波数変化を抑制することができる。
【0039】
本実施形態ではセラミックシートの積層体である容器の例として4層構成を例に挙げたが、容器は4層以下、あるいは4層以上で構成されていてもよい。また、本実施形態では水晶振動片と容器の振動片搭載電極との電気機械的な接合を、導電性のバンプを介して行なっているが、導電性のバンプの代わりに導電性接着剤を用いてもよい。また本実施形態では水晶振動片3は、基部と一対の振動腕と突出部とを有する形状の音叉型水晶振動片となっているが、基部と一対の振動腕のみを有し突出部を有さない形状であってもよい。また本実施形態では突出部は基部から一方向のみに突出した形状となっているが、基部の他端側から互いに遠ざかる方向に突出した形状であってもよい。あるいは、基部の他端側から互いに遠ざかる方向に突出した後、振動腕の伸長方向に平行に伸長するように屈曲した形状であってもよい。
【0040】
本発明は、その精神または主要な特徴から逸脱することなく、他のいろいろな形で実施することができる。そのため、上述の実施の形態はあらゆる点で単なる例示にすぎず、限定的に解釈してはならない。本発明の範囲は特許請求の範囲によって示すものであって、明細書本文には、なんら拘束されない。さらに、特許請求の範囲の均等範囲に属する変形や変更は、全て本発明の範囲内のものである。
【産業上の利用可能性】
【0041】
圧電発振器の量産に適用できる。
【符号の説明】
【0042】
1 水晶発振器
2 容器
3 水晶振動片
4 集積回路素子
5 蓋
6 金属製リング
7 封止材
8 段部
9 凹部
10 振動片搭載電極
301 腕部
302 周波数調整部
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7