特許第6390218号(P6390218)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6390218
(24)【登録日】2018年8月31日
(45)【発行日】2018年9月19日
(54)【発明の名称】水性インクジェット用インキセット
(51)【国際特許分類】
   C09D 11/40 20140101AFI20180910BHJP
   B41J 2/01 20060101ALI20180910BHJP
   B41M 5/00 20060101ALI20180910BHJP
【FI】
   C09D11/40
   B41J2/01 501
   B41M5/00 120
【請求項の数】6
【全頁数】24
(21)【出願番号】特願2014-139266(P2014-139266)
(22)【出願日】2014年7月7日
(65)【公開番号】特開2016-17103(P2016-17103A)
(43)【公開日】2016年2月1日
【審査請求日】2017年5月12日
【前置審査】
(73)【特許権者】
【識別番号】000222118
【氏名又は名称】東洋インキSCホールディングス株式会社
(73)【特許権者】
【識別番号】711004436
【氏名又は名称】東洋インキ株式会社
(72)【発明者】
【氏名】高橋 征寿
(72)【発明者】
【氏名】杉原 真広
(72)【発明者】
【氏名】鈴木 義人
【審査官】 林 建二
(56)【参考文献】
【文献】 特開2009−120693(JP,A)
【文献】 特開2003−192957(JP,A)
【文献】 特開2006−056916(JP,A)
【文献】 特開2003−041172(JP,A)
【文献】 特開2013−027979(JP,A)
【文献】 特開2003−176431(JP,A)
【文献】 特開2004−067861(JP,A)
【文献】 特開2003−292840(JP,A)
【文献】 特開2005−153315(JP,A)
【文献】 国際公開第2014/017082(WO,A1)
【文献】 特開2002−201389(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C09D 11/00−13/00
B41J 2/01
B41M 5/00
JSTPlus/JMEDPlus/JST7580(JDreamIII)
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
少なくとも相互に同一色相であるが色濃度の異なる濃色インキと淡色インキとを含む水性インクジェット用インキセットであって、
前記各インキは少なくとも着色剤、沸点が200℃以上280℃以下かつ表面張力が20mN/m以上30mN/m以下である有機溶剤(A)、および、水を含み、
淡色インキは更に沸点が50℃以上180℃以下である水溶性の有機溶剤(B)を含み、
淡色インキが含む全ての有機溶剤の合計含有率(ST2)が、濃色インキが含む全ての有機溶剤の合計含有率(ST1)よりも6〜20重量%大きく、
濃色インキと淡色インキの着色剤の含有率の比が、1:0.1〜1:0.2であり、
濃色インキと淡色インキの25℃における粘度差が3.5mPa・s以下であることを特徴とした水性インクジェット用インキセット。
【請求項2】
濃色インキが含む沸点が200℃以上280℃以下かつ表面張力が20mN/m以上30mN/m以下である有機溶剤(A)の含有率(SA1)と、淡色インキが含む沸点が200℃以上280℃以下かつ表面張力が20mN/m以上30mN/m以下である有機溶剤(A)の含有率(SA2)との比が6:10〜10:6であることを特徴とする請求項1記載の水性インクジェット用インキセット
【請求項3】
淡色インキが含む沸点が50℃以上180℃以下である水溶性の有機溶剤(B)の含有率(SB2)が5〜20重量%であることを特徴とする請求項1または2記載の水性インクジェット用インキセット。
【請求項4】
濃色インキが含む固形分の含有率(W1)と、淡色インキが含む固形分の含有率(W2)との比が7:10〜10:7であることを特徴とする請求項1〜3いずれか記載の水性インクジェット用インキセット。
【請求項5】
濃色インキ、および、淡色インキの着色剤が顔料分散樹脂により分散された顔料であり、前記顔料分散樹脂は炭素数10以上のアルキル鎖を有することを特徴とする請求項1〜4いずれか記載の水性インクジェット用インキセット。
【請求項6】
濃色インキと淡色インキの組み合わせとして、シアンインキとライトシアンインキ、マゼンタインキとライトマゼンタインキ、および、ブラックインキとライトブラック(グレー)インキのいずれかの組み合わせを含むことを特徴とする請求項1〜5いずれか記載の水性インクジェット用インキセット。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、一般の印刷媒体、特にコート紙、アート紙や塩化ビニルシートなどの吸水性の低い印刷媒体への印刷適性に優れ、高い品質の画像を得ることが可能な水性インクジェット用インキセットに関する。
【背景技術】
【0002】
インクジェット記録方式は、非常に微細なノズルからインク液滴を記録部材に直接吐出し、付着させて文字や画像を得る記録方式である。この方式によれば、使用する装置の騒音が小さく、操作性がよいという利点を有するのみならず、カラー化が容易であり、かつ記録部材として普通紙を使用することができるという利点があるため、オフィスや家庭での出力機として広く用いられている。
【0003】
一方、産業用途においても、インクジェット技術の向上によりデジタル印刷の出力機としての利用が期待され、溶剤インキやUVインキによる非吸収性の印刷媒体(PVC、PETなどのプラスチック基材)に対しても印刷が可能な印刷機が実際に市販されてきた。しかし、近年、環境面への対応といった点から水性インキの需要が高まっている。
【0004】
インクジェット用の水性インキとしては特許文献1、2、3のように印刷対象を普通紙や写真光沢紙のような専用紙としたインキの開発が古くからなされている。一方では近年インクジェット記録方式の用途拡大が期待されており、コート紙のような塗工紙や屋外広告などに使用されるような非吸収性の印刷媒体への直接印刷のニーズが高まっている。従来のインキは紙へ液滴を吸収させて描画を行うため、吸水性の低い印刷媒体へ印刷すると画像が滲んでしまい使用することができなかった。
【0005】
吸水性の低い印刷媒体への印刷を目的に特許文献4、5のようなインキが開示されている。これらで開示されているように特定の溶剤を使用し、場合によっては印刷条件を調整することで吸水性の低い印刷媒体への印刷を行うことが可能となっている。更にはこのような低吸収性、非吸収性の印刷媒体への印刷用インキにおいても、吸収性の印刷媒体への印刷用インキと同様にハイライト部の粒状感を低減し画質を向上させるために、濃度の低い淡色インキの開発が望まれていた。
【0006】
淡色インキは濃色インキと比べて色濃度を低くするために、インキ中に含有する顔料分を少なくする必要がある。これにより濃色インキと同じ組成でインキを作成すると、淡色インキの粘度は低くなり吐出性などに悪影響を与えることがあった。また、粘度を濃色インキと同程度まで高めるために溶剤量を増やすと、濃色インキと淡色インキの乾燥性のバランスが崩れ、吸水性の低い印刷媒体上では画質が低下してしまう場合があった。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0007】
【特許文献1】特許第4764562号公報
【特許文献2】特許第4595281号公報
【特許文献3】特開2008−247941号公報
【特許文献4】特開2007−211081号公報
【特許文献5】特開2011−201228号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
本発明の目的は、一般の印刷媒体、特にコート紙、アート紙や塩化ビニルシートなどの吸水性の低い印刷媒体への印刷適性に優れ、高い品質の画像を得ることが可能な水性インクジェット用インキセットを提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0009】
すなわち本発明は、少なくとも相互に同一色相であるが色濃度の異なる濃色インキと淡色インキとを含む水性インクジェット用インキセットであって、
前記各インキは少なくとも着色剤、沸点が200℃以上280℃以下かつ表面張力が20mN/m以上30mN/m以下である有機溶剤(A)、および、水を含み、
淡色インキには更に沸点が50℃以上180℃以下である水溶性の有機溶剤(B)を含み、
淡色インキが含む全ての有機溶剤の合計含有率(ST2)が、濃色インキが含む全ての有機溶剤の合計含有率(ST1)よりも6〜20重量%大きく、
濃色インキと淡色インキの着色剤の含有率の比が、1:0.1〜1:0.2であり、
濃色インキと淡色インキの25℃における粘度差が3.5mPa・s以下であることを特徴とした水性インクジェット用インキセットに関する。

【0010】
また本発明は、濃色インキが含む沸点が200℃以上280℃以下かつ表面張力が20mN/m以上30mN/m以下である有機溶剤(A)の含有率(SA1)と、淡色インキが含む沸点が200℃以上280℃以下かつ表面張力が20mN/m以上30mN/m以下である有機溶剤(A)の含有率(SA2)との比が6:10〜10:6であることを特徴とする上記水性インクジェット用インキセットに関する。
【0012】
また本発明は、淡色インキが含む沸点が50℃以上180℃以下である水溶性の有機溶剤(B)の含有率(SB2)が5〜20重量%であることを特徴とする上記水性インクジェット用インキセットに関する。
【0013】
また本発明は、濃色インキが含む固形分の含有率(W1)と、淡色インキが含む固形分の含有率(W2)との比が7:10〜10:7であることを特徴とする上記水性インクジェット用インキセットに関する。
【0014】
また本発明は、濃色インキ、および、淡色インキの着色剤が顔料分散樹脂により分散された顔料であり、前記顔料分散樹脂は炭素数10以上のアルキル鎖を有することを特徴とする上記水性インクジェット用インキセットに関する。
【0015】
また本発明は、濃色インキと淡色インキの組み合わせとして、シアンインキとライトシアンインキ、マゼンタインキとライトマゼンタインキ、および、ブラックインキとライトブラック(グレー)インキのいずれかの組み合わせを含むことを特徴とする上記水性インクジェット用インキセットに関する。
【発明の効果】
【0016】
本発明により、一般の印刷媒体、特にコート紙、アート紙や塩化ビニルシートなどの吸水性の低い印刷媒体への印刷適性に優れ、高い品質の画像を得ることが可能な水性インクジェット用インキセットを提供することが可能となった。
【発明を実施するための形態】
【0017】
以下に、好ましい実施の形態を挙げて、本発明について説明する。
【0018】
本発明では濃色インキに沸点が200℃以上280℃以下かつ表面張力が20mN/m以上30mN/m以下である有機溶剤(A)を使用し、淡色インキに沸点が200℃以上280℃以下かつ表面張力が20mN/m以上30mN/m以下である有機溶剤(A)および沸点が50℃以上180℃以下である水溶性の有機溶剤(B)を使用することで吸水性の低い印刷媒体への印刷適性に優れ、高い品質の画像を得ることを可能にしている。
【0019】
従来、濃色インキと淡色インキの粘度を同等とするためには、上述の通り淡色インキの溶剤量を増やすことが一般に行われていた。しかし、吸水性の低い印刷媒体へ印刷する場合0には溶剤量の増加による乾燥性の低下により画質の低下を生じる場合がある。本発明者らは沸点が50℃以上180℃以下である水溶性の有機溶剤(B)を淡色インキに使用することで、乾燥性を低下させることなく淡色インキの粘度を濃色インキと同等にし、良質な印刷物を得ることを可能にした。
【0020】
以下に本発明の主要となる各成分について述べる。
【0021】
(有機溶剤)
本発明では少なくとも二種の特定の有機溶剤を使用する。第一の有機溶剤は沸点が200℃以上280℃以下かつ表面張力が20mN/m以上30mN/m以下である有機溶剤(以下、「溶剤A」と称す)である。第二の有機溶剤は沸点が50℃以上180℃以下である水溶性の有機溶剤(以下、「溶剤B」と称す)である。本発明では、色濃度の高い濃色インキに溶剤Aを、色濃度の低い淡色インキに溶剤Aと溶剤Bとを使用することで吸水性の低い印刷媒体へのインキの吐出性、乾燥性といった印刷適性を向上させ、高い品質の画像を得ることを可能にしている。これは以下の様な原理によるものであると考えられる。まず、淡色インキに使用される低沸点で乾燥の速い溶剤Bにより、乾燥性を濃色インキと同等に保ったまま溶剤量を増やすことができる。これにより淡色インキの粘度を濃色インキと同等まで高めることができ、良好な吐出性を得ることができる。また、濃色インキ、淡色インキの何れにも溶剤Aを使用することで吸水性の低い印刷媒体への印刷を可能としている。溶剤Aは高沸点であるため、インキが印刷媒体に着弾し、水、溶剤Bなどが揮発した後にもインキ滴中に残留する。更に溶剤Aは低表面張力であるため、インキ滴中に残留した溶剤Aによりインキ滴が印刷媒体へ濡れ広がり、均一な画像を形成することが可能となると考えられる。
【0022】
濃色インキ、及び淡色インキ中の溶剤Aの含有率は、インキの全重量を基準として、5〜30重量%であることが好ましい。含有率が5重量%以上であれば、印刷媒体に対して十分な濡れ性を確保することができ、印刷媒体の種類に影響されず高い印刷品質の画像を得ることができる。また、含有率が30重量%以下であれば、十分なインキの保存安定性を確保することができる。より好ましくは7〜25重量%であり、更に好ましくは9〜22重量%であり、最も好ましくは11〜18重量%である。
【0023】
また、濃色インキが含む溶剤Aの含有率(SA1)と淡色インキが含む溶剤Bの含有率(SA2)との比が6:10〜10:6の範囲であることが好ましい。この比が大きく外れる場合には濃色インキと淡色インキの濡れ性に差が生じ、画質が低下する場合がある。上記範囲内であればそれぞれのインキで同等の濡れ性を確保することができ、インキ滴同士が接触した場合にもインキ間の流動が起こりにくくなり、滲みのない良質な画像を得ることができる。より好ましくは7:10〜10:7の範囲であり、更に好ましくは8:10〜10:8の範囲であり、最も好ましくは9:10〜10:9の範囲である。
【0024】
上記溶剤Aは、沸点が200℃以上、280℃以下であり、かつ表面張力が20mN/m以上、30mN/m以下である有機溶剤であれば、どのような溶剤でも使用可能である。ここで、上記「表面張力」とは、25℃の条件下にてウィルヘルミー法(プレート法、垂直板法)によって測定された値を意味する。具体的には、高精度表面張力計DY−700(協和界面科学社製)などの装置を用いて測定することができる。特に限定するものではないが、溶剤Aとして、例えば、1,2−ペンタンジオール、1,2−ヘキサンジオール、1,2−オクタンジオール、エチレングリコールモノヘキシルエーテル、エチレングリコール−2−エチルヘキシルエーテル、ジエチレングリコールモノブチルエーテル、ジエチレングリコールモノヘキシルエーテル、ジエチレングリコール−2−エチルヘキシルエーテル、トリエチレングリコールモノブチルエーテル、ジプロピレングリコールモノプロピルエーテル、ジプロピレングリコールモノブチルエーテル、トリプロピレングリコールモノメチルエーテル、トリプロピレングリコールモノブチルエーテル、ジエチレングリコールメチルブチルエーテル、トリエチレングリコールメチルブチルエーテル、及びトリプロピレングリコールジメチルエーテル、等が挙げられる。これらの中でも、アルカンジオール系溶剤、及び/又は末端の炭素鎖の炭素数が3以上のグリコールエーテル系溶剤が好ましい。より好ましくは、アルカンジオール系溶剤であり、さら好ましくは1,2−ヘキサンジオールである。
【0025】
淡色インキ中の溶剤Bの含有率(SB2)は、インキの全重量を基準として、3〜30重量%であることが好ましい。含有率が3重量%以上であれば、十分な粘度を得ることができ、濃色インキと淡色インキの吐出液適量の差を小さくし良質な画像を得ることができる。また、含有率が30重量%以下では適切な乾燥性となり、吐出時にインキ乾燥によるノズルづまりによる不吐出を生じず、また、印刷媒体上でも滲みが生じることなく光沢度の高い良質な画像を得ることができる。より好ましくは5〜20重量%であり、更に好ましくは8〜18重量%であり、最も好ましくは10〜15重量%である。
【0026】
上記溶剤Bは、沸点が50℃以上、180℃以下である水溶性の有機溶剤であれば、どのような溶剤でも使用可能である。特に限定するものではないが、上記溶剤Bとして、例えば、メタノール、エタノール、1−プロパノール、2−プロパノール、エチレングリコールモノメチルエーテル、エチレングリコールモノエチルエーテル、エチレングリコールモノプロピルエーテル、エチレングリコールモノブチルエーテル、プロピレングリコールモノメチルエーテル、プロピレングリコールモノエチルエーテル、プロピレングリコールモノプロピルエーテル、メトキシブタノール、3−メチル−3−メトキシブタノール、ジエチレングリコージメチルエーテル、ジエチレングリコールメチルエチルエーテル、ジエチレングリコールメチルエーテルアセテート、及び乳酸エチル、等が挙げられる。これらの中でも、エタノール、2−プロパノール、プロピレングリコールモノメチルエーテル、プロピレングリコールモノエチルエーテル、プロピレングリコールモノプロピルエーテル、メトキシブタノール、3−メチル−3−メトキシブタノールからなる群から選択される少なくとも1種が、乾燥性及び印刷品質の点から好ましい。また、吐出安定性の点から沸点が100℃以上、180℃以下である水溶性の有機溶剤が好ましい。より好ましくは、プロピレングリコールモノメチルエーテル、メトキシブタノール、及び3−メチル−3−メトキシブタノールからなる群から選択される少なくとも1種である。さらに好ましくは、プロピレングリコールモノメチルエーテル及び/又はメトキシブタノールである。最も好ましくは、プロピレングリコールモノメチルエーテルである。
【0027】
濃色インキ、及び淡色インキ中の有機溶剤として、上記2種の溶剤A及びBに加えて、粘度の調整、又は吐出性の改良を目的として、他の溶剤を使用することも可能である。使用可能な他の溶剤としては、グリセリン、両末端ジオール、2−ピロリドン、N−メチルピロリドン、N−エチルピロリドン、N−メチルオキサゾリジノン、N−エチルオキサゾリジノン、γ−ブチロラクトン、ε−カプロラクトン、及びN,N−ジメチル−β−メトキシプロピオンアミド等が挙げられる。
【0028】
濃色インキ、及び淡色インキ中の上記全ての有機溶剤の合計含有率としては10〜45重量%であることが好ましい。上記合計含有量があまりにも少ない場合は、乾燥性、及び印刷媒体への濡れ性が乏しくなり、印刷媒体によっては印刷品質が低下する場合がある。また、上記合計含有量が45重量%よりも多い場合には、インキの保存安定性が低下する場合がある。濃色インキの全ての溶剤の合計含有率(ST1)として、より好ましくは12〜40重量%であり、更に好ましくは14〜35重量%であり、最も好ましくは17〜28重量%である。淡色インキの全ての溶剤の合計含有率(ST2)として、より好ましくは14〜42重量%であり、更に好ましくは19〜39重量%であり、最も好ましくは24〜36重量%である。
【0029】
淡色インキの全ての溶剤の合計含有率(ST2)は、濃色インキの全ての溶剤の合計含有率(ST1)よりも5〜20重量%大きいことが好ましい。この範囲であれば、濃色インキと淡色インキの粘度差を小さく保つことができ、濃色インキと淡色インキの吐出液適量の差を小さくし良質な画像を得ることができる。また、濃色インキと淡色インキの乾燥性も均一になり、モットリングが生じにくくなる。より好ましくは6〜18重量%であり、更に好ましくは8〜16重量%であり、最も好ましくは9〜14重量%である。
【0030】
(着色剤)
本発明ではそれぞれのインキに着色剤を使用する。着色剤としては、例えば、染料、顔料等が挙げられる。これらの着色剤は1種類を単独で使用してもよく、2種類以上を併用してもよい。印刷物の耐性を向上させるためにも顔料を使用することが好ましい。
【0031】
染料を使用する場合には、直接染料、酸性染料、食用染料、塩基性染料、反応性染料、分散染料、建染染料等の通常インクジェット記録に使用する各種染料を使用することができる。
【0032】
更に詳しくは、シアン染料としてはC.I.Acid Blue 1、7、9、15、22、23、25、27、29、40、41、43、45、54、59、60、62、72、74、78、80、82、83、90、92、93、100、012、103、104、112、113、117、120、126、127、129、130、131、138、140、142、143、151、154、158、161、166、167、168、170、171、182、183、184、187、192、199、203、204、205、229、234、236、249、C.I.Direct Blue 1,2、6、15、22、25、41、71、76、77、78、80、86、87、90、98、106、108、120、123、158、160、163、165、168、192、193、194、195、196、199、200、201、202、203、207、225、226、236、237、246、248、249、C.I.Reactive Blue 1、2、3、4、5、7、8、9、13、14、15、17、18、19、20、21、25、26、27、28、29、31、32、33、34,37、38、39、40、41、43、44、46、C.I.Food Blue 1、2、C.I.Basic Blue 9、25,28、29、44等が挙げられる。マゼンタ染料としてはC.I.Acid Red 1、6、8、9、13、14、18、26、27、32、35、37、42、51、52、57、75、77、80、82、85、87、88、89、92、94、97、106、111、114、115、117、118、119、129、130、131、133、134、138、143、145、154、155、158、168、180、183、184、186、194、198、209、211、215、219、249、252、254、262、265、274、282、289、303、317、320、321、322、C.I.Direct Red 1、2、4、9、11、13、17、20、23、24、28、31、33、37、39、44、46、62、63、75、79、80、81、83、84、89、95、99、113、197、201、218、220、224、225、226、227、228、229、230、231、C.I.Reactive Red 1、2、3、4、5、6、7、8、11、12、13、15、16、17、19、20、21、22、23、24、28、29、31、32、33、34,35、36、37、38、39、40、41、42、43、45、46、49、50、58、59、63、64、C.I.Food Red 7、9、14等が挙げられる。イエロー染料としてはC.I.Acid Yellow 1、3、11、17、19、23、25、29、36、38、40、42、44、49、59、61、70、72、75、76、78、79、98、99、110、111、127、131、135、142、162、164、165、C.I.Direct Yellow 1、8、11、12、24、26、27、33、39、44、50、58、85、86、87、88、89、98、110、132、142、144、Reactive Yellow 1、2、3、4、6、7、11、12、13、14、15、16、17、18、22、23、24、25、26、27、37、42、C.I.Food Yellow 3、4等が挙げられる。ブラック染料としてはC.I.Direct Black 1、7、19、32、51、71、108、146、154、166等が挙げられる。
【0033】
シアン、マゼンタ、イエロー、ブラック以外の染料としてはC.I.Acid Green 7、12、25、27、35、36、40、43、44、65、79、C.I.Direct Green 1、6、8、26、28、30、31、37、59、63、64、C.I.Reactive Green 6、7、C.I.Direct Violet 2、48、63、90、C.I.Reactive Violet 1、5、9、10等が挙げられる。
【0034】
顔料を使用する場合には、無機顔料、有機顔料の何れも使用することができる。無機顔料としては、酸化チタン、亜鉛華、硫化亜鉛、鉛白、炭酸カルシウム、沈降性硫酸バリウム、ホワイトカーボン、アルミナホワイト、カオリンクレー、タルク、ベントナイト、黒色酸化鉄、カドミウムレッド、べんがら、モリブデンレッド、モリブデートオレンジ、クロムバーミリオン、黄鉛、カドミウムイエロー、黄色酸化鉄、チタンイエロー、酸化クロム、ビリジアン、チタンコバルトグリーン、コバルトグリーン、コバルトクロムグリーン、ビクトリアグリーン、 群青、紺青、コバルトブルー、セルリアンブルー、コバルトシリカブルー、コバルト亜鉛シリカブルー、マンガンバイオレット、コバルトバイオレット等を 挙げることができる。
【0035】
有機顔料としてはアゾ顔料、フタロシアニン顔料、アントラキノン顔料、キナクリドン顔料、イソインドリノン顔料、キノフタロン顔料、染料レーキ顔料、蛍光顔料等が挙げられる。
【0036】
更に詳しくは、シアン顔料としてはC.I.Pigment Blue 1、2、3、15:1、15:3、15:4、15:6、16、21、22、60、64等が挙げられる。
【0037】
マゼンタ顔料としてはC.I.Pigment Red 5、7、9、12、31、48、49、52、53、57、97、112、120、122、146、147、149、150、168、170、177、178、179、184、188、202、206、207、209、238、242、254、255、264、269、282、C.I.Pigment Violet 19、23、29、30、32、36、37、38、40、50等が挙げられる。
【0038】
イエロー顔料としてはC.I.Pigment Yellow 1、2、3、12、13、14、16、17、20、24、74、83、86、93、94、95、109、110、117、120、125、128、129、137、138、139、147、148、150、151、154、155、166、168、180、185、213等が挙げられる。
【0039】
ブラック顔料としては、ファーネス法、チャネル法で製造されたカーボンブラックが挙げられる。例えば、これらのカーボンブラックであって、一次粒子径が11〜40nm、BET法による比表面積が50〜400m2/g、揮発分が0.5〜10%、pH値が2〜10等の特性を有するものが好適である。このような特性を有する市販品としては下記のものが挙げられる。例えば、No.33、40、45、52、900、2200B、2300、MA7、MA8、MCF88(以上、三菱化学製)、RAVEN1255(コロンビアンカーボン製)、REGA330R、400R、660R、MOGUL L、ELFTEX415(以上、キャボット製)、Nipex90、Nipex150T、Nipex160IQ、Nipex170IQ、Nipex75、Printex85、Printex95、Printex90、Printex35、PrintexU(以上、エボニックデグサ製)等があり、何れも好ましく使用することができる。
【0040】
シアン、マゼンタ、イエロー、ブラック以外の顔料としてはC.I.Pigment Green 7、10、36、C.I.Pigment Brown 3、5、25、26、C.I.Pigment Orange 2、5、7、13、14、15、16、24、34、36、38、40、43、62、63、64、71等が挙げられる。
【0041】
これらの顔料を使用する場合には長期間のインキ安定性を維持するためにも、インキ媒体中に分散して使用することが好ましい。顔料の分散方法としては、顔料を酸化処理等により表面改質し、分散剤なしで顔料を分散させる方法や、界面活性剤や樹脂を分散剤として顔料を分散させる方法がある。より安定なインキとするためにも分散樹脂を使用して顔料を分散させることが好ましい。
【0042】
着色剤の含有率としてはインキの全重量を基準として0.01重量%以上15重量%以下が好ましい。より好ましくは0.05重量%以上10重量%以下である。また、濃色インキの場合には、0.5重量%以上9重量%以下が好ましく、1重量%以上8重量%以下がより好ましく、2重量%以上7重量%以下が更に好ましい。淡色インキの場合には0.1重量%以上5重量%以下が好ましく、0.15重量%以上3重量%以下がより好ましく、0.2重量%以上1重量%以下が更に好ましい。
【0043】
濃色インキと淡色インキの着色剤の含有率の比を調整することで、グラデーション印刷などを階調飛びを起こすことなく、滑らかに再現することができる。着色剤の含有率の比としては、1:0.01〜1:0.4が好ましく、1:0.05〜1:0.3がより好ましく、1:0.08〜1:0.25が更に好ましく、1:0.1〜1:0.2が最も好ましい。
【0044】
なお、本発明で定義される「相互に同一色」とは、濃色インキと淡色インキを白色印刷媒体上へウェット膜厚が6〜10μmとなるように塗工した印刷物を、D50光源、2°視野の条件で測定されたL*a*b*値から算出される彩度C*(C*=√(a*^2+b*^2))が10以上の有彩色インキの場合には色相角h(h=tan−1(b*/a*)が濃色インキと淡色インキで30°以内であることを示す。また、彩度C*が10未満である無彩色インキの場合には全て同一色相とみなす。これを満たすために濃色インキと淡色インキに同一の着色剤を使用することが好ましい。
【0045】
(顔料分散樹脂)
着色剤を顔料とし、顔料分散樹脂にて分散を行う場合には例えば、アクリル樹脂、スチレンアクリル樹脂、マレイン酸樹脂、スチレンマレイン酸樹脂、αオレフィンマレイン酸樹脂、ウレタン樹脂、エステル樹脂等を使用することができる。なかでもアクリル樹脂、スチレンアクリル樹脂を使用することが好ましい。
【0046】
ここで、本明細書に記載する「アクリル樹脂」とは、(メタ)アクリル酸及び(メタ)アクリル酸エステルの少なくとも1つを重合して得られる構造単位を含む重合体を意味する。一実施形態において、上記「アクリル樹脂」は、炭素数1以上のアルキル基を有する(メタ)アクリル酸エステルを重合して得られる構造部位を有する重合体であってよい。このような実施形態において、重合体は、炭素数8以上のアルキル基を有することが好ましく、炭素数10以上のアルキル鎖を有することがより好ましい。上記重合体は、炭素数8以上のアルキル基を有する(メタ)アクリル酸エステルの単独重合体、又は上記エステルと、(メタ)アクリル酸等の他の重合性モノマー化合物との共重合体であってもよい。いずれの実施形態においても、上記重合体が、炭素数8以上のアルキル基を有することによって、上記インキの分散安定性を高めることが容易である。また、分散安定性の向上に伴い、吐出性、印刷品質及び光沢の向上効果をさらに高めることができる。したがって、一実施形態において、顔料分散樹脂は、炭素数8以上のアルキル基を有することが好ましい。
【0047】
上記炭素数8以上のアルキル基は、直鎖であっても分岐していてもよい。アルキル基の具体例として、オクチル基(C8)、2−エチルヘキシル基(C8)、ノニル基(C9)、デシル基(C10)、ラウリル基(C12)、ミリスチル基(C14)、セチル基(C16)、ステアリル基(C18)、アラキル基(C20)、ベヘニル基(C22)、リグノセリル基(C24)、セロトイル基(C26)、モンタニル基(C28)、メリッシル基(C30)、ドトリアコンタノイル基(C32)、テトラトリアコンタノイル基(C34)、及びヘキサトリアコンタノイル基(C36)等が挙げられる。これらのなかでも、直鎖のアルキル基が好ましく、炭素数10以上の直鎖のアルキル基がより好ましい。顔料分散樹脂として使用する上記重合体が炭素数8以上のアルキル基を有する場合、印刷品質及び印刷物の光沢を向上することが容易である。また、炭素数10以上のアルキル基を有する場合には、上記特性のさらなる向上効果が得られる。一方、上記重合体におけるアルキル基が、あまりにも長鎖となると、インクの吐出安定性が悪化する場合がある。そのため、上記アルキル基の炭素数は、好ましくは12〜30であり、より好ましくは18〜24である。
【0048】
上記顔料分散樹脂の酸価は、50〜400mgKOH/gであることが好ましい。酸価が50mgKOH/gよりも小さいと、上記顔料分散樹脂が水に対して溶解し難くなるため、上記インキの粘度が高くなり、吐出に影響が出る場合がある。また、酸価が400mgKOH/gよりも大きい場合であっても、上記樹脂間での相互作用が強まり、上記インクの粘度が高くなる場合がある。このような観点から顔料分散樹脂の酸価は、より好ましくは100〜350mgKOH/gであり、さらに好ましくは150〜300mgKOH/gである。
【0049】
上記顔料分散樹脂の重量平均分子量は、5000〜100000であることが好ましい。上記分子量を5000以上に調整することによって、優れた分散安定性を容易に得ることができる。また、上記分子量を100000以下にすることによって、吐出への影響を容易に抑制することができる。より好ましくは分子量10000〜50000であり、さらに好ましくは分子量15000〜30000である。
【0050】
上記顔料分散樹脂は芳香族基を有することが好ましい。重合体に上記芳香族基を導入することによって、顔料分散性を高め、分散安定性、光沢を向上させることが容易となる。上記芳香族基の一例として、フェニル基、ナフチル基、アントリル基、トリル基、キシリル基、メシチル基、アニシル基等が挙げられる。なかでも、上記芳香族基は、フェニル基又はトリル基であることが好ましい。より具体的には、上記顔料分散樹脂は芳香族基を有するアクリル樹脂が好ましく、本明細書では「スチレンアクリル樹脂」と記載する。「スチレンアクリル樹脂」は、スチレン及び/又はスチレン誘導体と、(メタ)アクリル酸及び/又は(メタ)アクリル酸エステルとを重合して得られる構造単位を含む重合体を意味する。上記スチレン誘導体の一例として、メチルスチレン、及びビニルナフタレン等が挙げられる。
【0051】
特に限定するものではないが、本発明の好ましい実施形態において、顔料分散樹脂は、(i)(メタ)アクリル酸と、(ii)炭素数8以上のアルキル基を有する(メタ)アクリル酸エステルと、さらに必要に応じて、(iii)芳香族基を有する重合性モノマー化合物とを重合して得られる共重合体である。一実施形態において、上記共重合体を構成する各モノマー成分の配合率は、全モノマー成分の全量を基準として、(i)が10〜50重量%、好ましくは20〜40重量%、(ii)が10〜70重量%、好ましくは20〜50重量%、及び(iii)が0〜50重量%、好ましくは10〜40重量%である。
【0052】
本発明で使用する顔料分散樹脂は、水への溶解度を向上させるために、分散樹脂中の酸基が塩基で中和されていることが好ましい。上記塩基としては、ジメチルアミノエタノール、ジエタノールアミン、トリエタノールアミン等の有機塩基やアンモニア水、水酸化リチウム、水酸化ナトリウム、水酸化カリウム等の無機塩基等を使用することができる。なかでも、有機塩基を使用した場合は、インキ乾燥時に塩基が揮発し、印刷物の耐水性が向上する傾向があるため好ましい。
【0053】
顔料と顔料分散樹脂の重量比率は2/1以上100/1以下であることが好ましい。顔料分散樹脂の重量比率が2/1以上であるとインキの粘度を低く抑えることが容易である。また、100/1以下であると分散安定性が良化し、インキの安定性を向上させることが容易である。顔料と顔料分散樹脂の重量比率としてより好ましくは4/1以上50/1以下、更に好ましくは5/1以上25/1以下であり、最も好ましくは10/1以上20/1以下である。
【0054】
(バインダー樹脂)
本発明の水性インキは、印刷物の耐性を高めるために、上記インキに対してバインダー樹脂をさらに添加することができる。水性インキのバインダー樹脂としては、大別して、水溶性樹脂、及び樹脂微粒子が知られている。一般に、上記樹脂微粒子は上記水溶性樹脂と比較して高分子量であり、高い耐性を実現することができる。また、上記樹脂微粒子はインキ粘度を低くすることができ、インキ中に多量に配合することができることから、印刷物の耐性を高めるのに適している。上記樹脂微粒子の種類として、アクリル樹脂、ウレタン樹脂、スチレンブタジエン樹脂、塩化ビニル樹脂、ポリオレフィン樹脂等が挙げられる。インキの安定性、印刷物の耐性の面を考慮すると、アクリル樹脂の樹脂微粒子を使用することが好ましい。
【0055】
バインダー樹脂のガラス転移点温度(Tg)を高くすることで、耐擦性、及び耐薬品性等の耐性を向上させることが容易である。そのため、バインダー樹脂のTgは、好ましくは50〜120℃、より好ましくは80〜100℃の範囲とするのがよい。Tgが50℃よりも高い場合、十分な耐性が得られ、実用にて印刷物からインキ塗膜が剥がれる不具合を抑制することが容易である。また、Tgが120℃よりも低い場合、塗膜が硬くなり難く、印刷物を折り曲げた際に、印刷面にワレ及びヒビ等が生じる不具合を抑制することが容易である。
【0056】
上記インキ中の上記バインダー樹脂の含有率は、上記インキの全重量を基準として、固形分で2重量%以上30重量%以下の範囲であり、好ましくは3重量%以上20重量%以下の範囲であり、より好ましくは6重量%以上15重量%以下の範囲である。
【0057】
(固形分)
インキ中の固形分の含有率はインキ全量に対して5重量%以上20重量%以下とすることが好ましい。含有率が20重量%よりも少ない場合には、印刷物上のインクジェット印刷によるドット由来の凹凸を抑えることができ、画質の向上が容易である。含有率として好ましくは8重量%以上18重量%以下であり、より好ましくは10重量%以上15重量%以下である。
【0058】
本発明では濃色インキの固形分の含有率(W1)と淡色インキの固形分の含有率(W2)の比を7:10〜10:7にすることが好ましい。濃色インキと淡色インキの固形分の含有率に大きな差がある場合には、印刷物上で凹凸が生じ光沢の低下が引き起こされる場合がある。上記範囲内であれば高い光沢を得ることが容易となる。より好ましくは8:10〜10:8であり、更に好ましくは8.5:10〜10:8.5であり、最も好ましくは9:10〜10:9である。
【0059】
インキ中の固形分量は以下の通り測定することができる。ガラス製のシャーレに1〜3g程度のインキを量りとり、これを180℃のオーブンにて30分間乾燥させる。乾燥後の重量を量り、これを固形分として乾燥前後の重量からインキ中の割合を求める。
【0060】
(界面活性剤)
本発明では界面活性剤をインキに配合することも可能である。界面活性剤を使用することで高い濡れ広がり性を発揮し、良質な画像を得ることができる。
【0061】
界面活性剤としてはシリコン系界面活性剤、アセチレン系界面活性剤、フッ素系界面活性剤、グリコールエーテル系界面活性剤等が使用できる。中でもシリコン系界面活性剤、アセチレン系界面活性剤を使用することが好ましく、より好ましくはシリコン系界面活性剤である。
【0062】
シリコン系界面活性剤としては一般式1〜3で表される化合物を使用することが好ましい。より好ましくは一般式2または一般式3で表される化合物であり、更に好ましくは一般式2で表される化合物である。インキ中の界面活性剤の含有率としては0.1重量%以上5重量%以下が好ましく、より好ましくは0.5重量%以上3重量%以下であり、更に好ましくは0.8重量%以上2重量%以下であり、最も好ましくは1重量%以上1.5%重量以下である。

【0063】
[一般式1]
【化1】
(式中aは1〜500の整数、bは0〜10の整数。R1はアルキル基、またはアリール基を示す。R2は下記(A)、(B)、(C)、(D)の内の何れかの置換基で示され、R2の内、少なくとも一つは(A)を含む。)
【0064】
(A)
【化2】
(cは1〜20の整数であり、dは0〜50の整数であり、eは0〜50の整数である。R3は水素原子またはアルキル基を示し、R4は水素原子、アルキル基、アシル基の何れかを示す。)
【0065】
(B)
【化3】
(fは2〜20の整数である。R5は水素原子、アルキル基、アシル基、ジメチルプロピル骨格を有するエーテル基の何れかを示す。)
【0066】
(C)
【化4】
(gは2〜6の整数であり、hは0〜20の整数であり、iは1〜50の整数であり、jは0〜10の整数であり、kは0〜10の整数である。R6は水素原子、アルキル基、アシル基の何れかを示す。)
【0067】
(D)
アルキル基、またはアリール基である。
【0068】
一般式1で表される化合物の市販品としてはエボニックデグサ社製のTegotwin4000やTegotwin4100等が挙げられる。
【0069】
[一般式2]
【化5】
(式中lは10〜80の整数を示す。R7は下記(E)の置換基で示される。)
【0070】
(E)
【化6】
(mは1〜6の整数、nは0〜50の整数、oは0〜50の整数であり、n+oは1以上の整数で示される。R8は水素原子または炭素数1〜6のアルキル基、または(メタ)アクリル基である。)
【0071】
一般式2で表される化合物の市販品の例としては、東レ・ダウコーニング社製のBY16−201、SF8427、ビックケミー社製のBYK−331、BYK−333、BYK−UV3500、エボニックデグサ社製のTegoglide410、Tegoglide432、Tegoglide435、Tegoglide440、Tegoglide450等が挙げられる。
【0072】
[一般式3]
【化7】
(pおよびqは1以上の整数であり、p+qは3〜50の整数で示される。R9は下記(E)の置換基で示され、R10は炭素数1〜6のアルキル基で示される。)
【0073】
(F)
【化8】
(rは1〜6の整数、sは0〜50の整数、tは0〜50の整数であり、s+tは1以上の整数で示される。R11は水素原子または炭素数1〜6のアルキル基、または(メタ)アクリル基である。)
【0074】
一般式3で表される化合物の市販品の例としては、東レ・ダウコーニング社製のSF8428、FZ−2162、8032ADDITIVE、SH3749、FZ−77、L−7001、L−7002、FZ−2104、FZ−2110、F−2123、SH8400、SH3773M、ビックケミー社製のBYK−345、BYK−346、BYK−347、BYK−348、BYK−349、エボニックデグサ社製のTegowet250、Tegowet260、Tegowet270、Tegowet280、信越化学工業社製のKF−351A、KF−352A、KF−353、KF−354L、KF355A、KF−615A、KF−640、KF−642、KF−643等が挙げられる。
【0075】
アセチレン系界面活性剤としては一般式4で表される化合物を使用することが好ましい。一般式4で表される化合物の市販品としてはエアープロダクツ社製のサーフィノール104、サーフィノール420、サーフィノール440、サーフィノール465、サーフィノール485等が挙げられる。
【0076】
[一般式4]
【化9】
(式中uおよびvはそれぞれ独立に0〜50の整数を示す。)
【0077】
(水)
本発明の水性インクジェットインキに含まれる水としては、種々のイオンを含有する一般の水ではなく、イオン交換水(脱イオン水)を使用するのが好ましい。
【0078】
本発明で使用することができる水のインキ組成中における含有率は20重量%以上90重量%以下の範囲が好ましく、40重量%以上85重量%以下の範囲がより好ましく、60重量%以上80重量%以下の範囲が更に好ましい。
【0079】
(その他の成分)
本発明のインキは上記成分の他に、必要に応じて所望の物性値を持つインキとするために、消泡剤、増粘剤、pH調整剤、防腐剤等の添加剤を適宜添加することができる。これらの添加剤の添加量としては、インキの全重量に対して0.01重量%以上10重量%以下、好ましくは0.05重量%以上5重量%以下、より好ましくは0.1重量%以上3重量%以下である。
【0080】
(インキ粘度)
本発明のインキは粘度1〜20mPa・sであることが好ましい。この範囲であればインクジェットヘッドからの良好な吐出性を保つことが容易となる。より好ましくは2〜15mPa・sであり、更に好ましくは3〜12mPa・sである。また、濃色インキと淡色インキの粘度差は3.5mPa・s以内である必要がある。インキ間の粘度が大きく異なると、吐出される液滴量に差が生じる。液適量の差からドット径が不均一になり粒状感の発生、カラーバランスの乱れが生じるなど不具合が引き起こされる。粘度差が3.5mPa・s以内であれば良質な画像を得ることが可能である。より好ましくは2mPa・s以下であり、更に好ましくは1mPa・s以下であり、最も好ましくは0.5mPa・s以下である。
【0081】
(インキセット)
本発明のインキセットは相互に同一色相であるが色濃度の異なる濃色インキと淡色インキのセットであれば特に色相は限定されないが、印刷物のハイライト部の粒状感が顕著に現れやすい、シアン、マゼンタ、ブラックの色相を有するインキに適用することが好ましい。即ち、シアンインキとライトシアンインキのセット、マゼンタインキとライトマゼンタインキのセット、ブラックインキとライトブラック(グレー)インキのセットに適用されることが好ましい。
【0082】
また、複数の色相のインキを組み合わせたセットとすることもできる。例えば、シアンインキ、ライトシアンインキ、マゼンタインキ、ライトマゼンタインキ、イエローインキ、ブラックインキの6色のインキセット。これにライトブラック(グレー)インキを加えた7色のインキセット。更に特色としてレッド、グリーン、ブルー、オレンジ、ヴァイオレット、ホワイト等のインキを組み合わせたセットとすることも可能である。
【0083】
シアン、ライトシアン、マゼンタ、ライトマゼンタ、イエローの組合せを含むインキセットとして本発明のインキセットを使用する場合、好ましい顔料の一例は、以下のとおりである。シアン、ライトシアンの顔料として、C.I.Pigment Blue 15:3、15:4。マゼンタ、ライトマゼンタ顔料として、C.I.Pigment Red 122、150、202、209、269、C.I.Pigment Violet 19。イエロー顔料としてC.I.Pigment Yellow 74、120、150、155、185。これらから選ばれる顔料を組合せて使用することによって、高い色再現性を容易に得ることができる。
【0084】
(印刷方法)
本発明のインキセットでは印刷工程に先立ち、予め印刷媒体にインキ受容層等の機能層を設けることなく、印刷媒体に直接印刷を行うことによって、高品質の印刷物を得ることができる。印刷工程では印刷媒体を室温以上に加温しながら実施することが好ましい。上記加温は、好ましくは40〜80℃、より好ましくは45〜70℃、さらに好ましくは50〜60℃の範囲である。40℃以上の温度で加温を実施することによって、上記水性インキのインキ滴が印刷媒体へ着弾した後、直ちに、印刷面が乾燥するため、インキの色間での滲みの発生を容易に抑制することができる。さらに、滲みが抑制されることによって、より高い品質の印刷物を得ることが容易になる。また、80℃以下の温度で加温を実施することによって、インクジェットヘッドも加温され、ノズル周辺のインキが乾燥して吐出不能となる不具合を抑制することが容易となる。
【0085】
上記印刷媒体は特に限定されるものではなく、当技術分野で代表的な公知の印刷媒体を使用することができる。例えば、上質紙、コート紙、アート紙、キャスト紙、合成紙、及びインクジェット専用紙等の紙媒体が挙げられる。また、ポリ塩化ビニルシート、PETフィルム、及びPPフィルム等のプラスチック媒体が挙げられる。これら印刷媒体の表面は、滑らかであっても、凹凸が形成されたものであってもよい。また、印刷媒体は、透明、半透明、及び不透明のいずれであってもよい。さらに、印刷媒体の形状は、特に限定されることなく、シート形状の基材であっても板状の基材であってもよい。上記印刷媒体は、単独で使用しても、2種以上の印刷媒体を互いに貼り合わせて使用してもよい。上記印刷媒体に対して、印字面の反対側に、剥離シート等で表面を保護した粘着層等の機能層を設けてもよい。又は、印字後に、上記印刷媒体の印字面に上記粘着層等の機能層を設けてもよい。
【0086】
本発明では特にコート紙、アート紙、及びキャスト紙等の塗工紙、並びにポリ塩化ビニルシート、PETフィルム、及びPPフィルムなどのプラスチック媒体への印刷に適したものである。このような印刷媒体は、一般的な紙媒体よりも吸水性が低い。そのため、そのような吸水性が低い印刷媒体に従来の水性インキを使用して印刷を行った場合、画像の滲みが生じることが多い。しかし、本発明によれば画像の滲みが抑制されることで、品質の印刷物を容易に得ることができる。すなわち、本発明によれば、様々な印刷媒体に対して優れた印刷適性を有するインクジェット用水性インキが提供されるため、印刷媒体を限定することなく、様々な印刷媒体に対して高品質の印刷物を容易に形成することができる。
【実施例】
【0087】
以下、実施例及び比較例を挙げて本発明を更に具体的に説明する。尚、以下の記載において、「部」及び「%」とあるものは特に断らない限りそれぞれ「重量部」、「重量%」を表す。
【0088】
(顔料分散樹脂Aの製造例)
ガス導入管、温度計、コンデンサー、攪拌機を備えた反応容器に、ブタノール93.4部を仕込み、窒素ガスで置換した。反応容器内を110℃に加熱し、重合モノマーである2−エチルヘキシルメタクリレート70部、アクリル酸30部、および重合開始剤であるV−601(和光純薬製)6部の混合物を2時間かけて滴下し、重合反応を行った。滴下終了後、さらに110℃で3時間反応させた後、V−601(和光純薬製)0.6部を添加し、さらに110℃で1時間反応を続けて、分散樹脂Aの溶液を得た。さらに、室温まで冷却した後、ジメチルアミノエタノール37.1部添加し中和し、水を100部添加し、水性化した。その後、100℃以上に加熱し、ブタノールを水と共沸させてブタノールを留去し、固形分が50%になるように調整した。これより、顔料分散樹脂Aの固形分50%の水性化溶液を得た。
【0089】
(顔料分散樹脂B〜Dの製造例)
重合モノマーとして表1記載のモノマーを使用する以外は顔料分散樹脂Aと同様の操作にて顔料分散樹脂B〜Dの固形分50%の水溶化液を得た。
【0090】
【表1】
【0091】
表1に記載された略語は、以下の通りである。
2EHMA:2−エチルヘキシルメタクリレート
LMA:ラウリルメタクリレート
VA:ベヘニルアクリレート
St:スチレン
AA:アクリル酸
【0092】
(顔料分散液Aの製造例)
顔料としてピグメントブルー15:3を20部、顔料分散樹脂Aの水性化溶液を12部、水68部を混合し、ディスパーで予備分散した後、直径0.5mmのジルコニアビーズ1800gを充填した容積0.6Lのダイノーミルを用いて2時間本分散を行い、顔料分散液Aを得た。
【0093】
(顔料分散液B〜Dの製造例)
顔料分散樹脂として顔料分散樹脂B〜Dを使用する以外は顔料分散液Aと同様の操作にて顔料分散を行い、顔料分散液B〜Dを得た。
【0094】
(濃色インキ1の製造例)
顔料分散液Aを15部、1,2−ヘキサンジオール8部、樹脂微粒子の分散液(固形分40%、樹脂Tg80℃)20部、活性剤(エボニックデグサ社製シリコン系活性剤TegoGlide440)0.5部、残りを水としてインキ全体が100部になるように調整し、これをディスパーで十分に均一になるまで攪拌した。その後、メンブランフィルターで濾過を行い、ヘッドつまりの原因となる粗大粒子を除去し濃色インキ1を作成した。作成したインキの粘度をE型粘度計(東機産業社製TVE−20L)を用いて、25℃において回転数50rpmという条件で測定したところ、濃色インキ1の粘度は2.1mPa・sであった。
【0095】
(濃色インキ2〜14、淡色インキ1〜16の製造例)
表2、表3に記載の原料を用いて濃色インキ1の製造例と同様にしてインキの作成を行った。
【0096】
【表2】
【0097】
【表3】
【0098】
表2、表3に記載された略語は、以下の通りである。
HexD:1,2−ヘキサンジオール
BDG:ジエチレングリコールモノブチルエーテル
EtOH:エタノール
MP:プロピレングリコールモノメチルエーテル
MB:メトキシブタノール
BuD:1,2−ブタンジオール
樹脂微粒子:アクリルエマルジョン(固形分40%、樹脂Tg80℃)
活性剤:TegoGlide 440(エポニックデグサ社製、シリコン系活性剤)
【0099】
(実施例1)
作成した濃色インキ1、淡色インキ2をインキセットとして、VersaCAMM VS−540(ローランドディー・ジー社製インクジェットプリンタ)に充填し、印刷を行った。印刷は印刷媒体としてポリ塩化ビニルシートを用い、印刷媒体を40℃に加温しながら行った。使用したインキ、印刷条件、得られた印刷物に対して、以下のように各種特性を評価した。評価結果を表4に示す。なお、実施例3、6〜8、11、12、15、16、19、20は参考例である。


【0100】
(吐出性)
上記プリンタにて印字幅1mのベタ印字を行い、濃色インキ、淡色インキ共に印字長1m毎にノズルチェックパターンを印字してノズル抜け本数をカウントし、その本数で評価を行った。
A:印字長5mでノズル抜けなし
B:印字長2〜4mでノズル抜けなし
C:印字長1mでノズル抜け10本以下
D:印字長1mでノズル抜け11本以上
【0101】
(液滴量)
上記プリンタにて濃色インキ、淡色インキを各ノズル10万滴のインキを吐出、計量することで1滴当たりの液適量を計算により求めた。濃色インキと淡色インキの液適量の差で評価を行った。
A:濃色インキと淡色インキの液適量の差が0.3pL未満
B:濃色インキと淡色インキの液適量の差が0.3pL以上0.6pL未満
C:濃色インキと淡色インキの液適量の差が0.6pL以上1pL未満
D:濃色インキと淡色インキの液適量の差が1pL以上
【0102】
(乾燥性)
上記プリンタにて印刷パス数を変化させ、印字率5〜100%まで5%刻みの階調パターンの印刷を行った。それぞれの印刷物のモットリングの発生を観察し、乾燥性の評価を行った。
A:印刷パス数を4パスとして印刷したときにモットリングが発生しない
B:印刷パス数を8パスとして印刷したときにモットリングが発生しない
C:印刷パス数を16パスとして印刷したときにモットリングが発生しない
D:印刷パス数を32パスとして印刷したときにモットリングが発生しない
E:印刷パス数を32パスとして印刷したときでもモットリングが発生する
【0103】
(画像再現性)
上記プリンタにて濃色インキによるラインと淡色インキによるラインが交差するパターン、印字率5〜100%まで5%刻みの階調パターンの印刷を行い、画像評価を行った。交差パターンについては交差部の色間の滲み、階調パターンについては階調の再現性を評価した。
A:滲みがなく、階調が滑らかに再現された
B:滲みが僅かに見られるが、階調は滑らかに再現された
C:滲みが僅かに見られ、階調にも僅かに潰れが確認された
D:滲みが見られ、階調の潰れも確認された
E:滲みが著しく、階調の潰れも顕著であった
【0104】
(保存安定性)
評価インキを70℃の恒温機に保存し、経時促進させた後、インキの粘度を測定した。経時前後でのインキの粘度から粘度変化率を計算により求め、濃色インキ、淡色インキの内、粘度変化率の大きいものにより評価を行った。
A:二週間保存後の粘度変化率が±10%未満
B:一週間保存後の粘度変化率が±10%未満
C:一週間保存後の粘度変化率が±10%以上±20%未満
D:一週間保存後の粘度変化率が±20%以上
【0105】
(光沢)
乾燥性評価にてモットリングが発生しなかった条件の印刷物の60°光沢度を測定し、評価を行った。なお、乾燥性評価にて印刷パス数を32パスとしてもモットリングが発生した場合(評価E)には光沢を評価していない。
A:光沢度70以上
B:光沢度50以上70未満
C:光沢度30以上50未満
D:光沢度30未満
【0106】
(実施例2〜45、比較例1〜9)
実施例1と同様に表4記載の通りに濃色インキ、淡色インキを組み合わせてセットとし、評価を行った。
【0107】
【表4】
【0108】
表4記載のとおり、実施例では濃色インキに溶剤A、淡色インキに溶剤Aおよび溶剤Bを使用し、濃色インキと淡色インキの粘度差を3.5mPa・s以下にすることで、何れの評価も良好な結果を示している。特に粘度差が小さい実施例においてはインキ間での液滴量が同等となり、粒状感のない印刷物を得ることができた。インキ間の溶剤Aの含有率の比を調整することで、濃色インキと淡色インキの濡れ性が均一化し、インキが接したときの滲みの改善傾向が見られた。更に、淡色インキの溶剤Bの含有率、および淡色インキと濃色インキの有機溶剤の合計含有率を調整し、インキ間の乾燥性を均一にすることで、モットリングの抑制が可能である。また、濃色インキと淡色インキの固形分の含有率の差が小さいものは、印刷物上の凹凸が小さくなり、光沢の向上が見られた。
【0109】
分散剤を長鎖のアルキル鎖を有するものへ変更したところ、分散安定性が向上したことにより、インキの流動性が良化し、吐出性の改善傾向が見られた。また、更に分散剤へ芳香環基を導入したところ、印刷物の光沢も向上した。
【0110】
一方、比較例では全ての特性を満たすインキセットが得られていない。特に淡色インキに溶剤Bを使用しない場合には、濃色インキと淡色インキで乾燥性に差が生じるためモットリングの発生や、滲みや階調が潰れて滑らかに再現できないという不具合が発生するなど、良質な画像を得ることができなかった。
【0111】
上記の結果からわかるように、濃色インキに溶剤A、淡色インキに溶剤Aおよび溶剤Bを使用し、濃色インキと淡色インキの粘度差を3.5mPa・s以下にすることで、全ての特性を高いレベルで満たすインキを得ることができた。