【新規性喪失の例外の表示】特許法第30条第2項適用 発行者名:公益社団法人精密工学会、 刊行物名:2014年度精密工学会春季大会学術講演会講演論文集(CD−ROM)、 発行年月日:平成26年3月1日
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
被加工物及び砥石車を回転させつつ前記被加工物に対して前記砥石車を相対的に前進させ、前記被加工物を研削する工作機械における前記被加工物のたわみを測定する方法であって、
前記工作機械は、前記被加工物の外周面と前記被加工物の回転中心を通る直線との2つの交点間距離を2つの測定点の間の距離として測定する測定器を備え、
前記被加工物のたわみ測定方法は、
前記測定器の2つの測定点のうち、前記被加工物の回転中心より下側の前記測定点において、前記被加工物の研削点を基準として前記被加工物の回転方向と逆方向の位相を第一回転位相として設定する設定工程と、
前記測定器の2つの測定点の前記被加工物の外周上における中央に位置する点のうち、前記被加工物の回転中心に対し前記砥石車とは反対側に位置する点において、前記被加工物の研削点を基準として前記被加工物の回転方向の位相を第二回転位相として取得する取得工程と、
前記砥石車の送り速度が一定であって、前記被加工物の回転支持部材の回転中心と、前記砥石車と前記被加工物の外周面が接触する研削点との第一距離の変化量が、前記2つの測定点の間の距離の半分である第二値の変化量と一致している整定状態で、前記砥石車が所定の研削指令位置に位置する場合に、前記第一距離を演算する第一演算工程と、
前記整定状態で前記砥石車が前記所定の研削指令位置に位置するときの前記被加工物の研削点が、前記第二回転位相だけ回転したときに、前記測定器により前記2つの測定点の間の距離を測定する第一測定工程と、
前記第一距離と前記2つの測定点の間の距離とに基づいて前記被加工物のたわみ量を推定する推定工程と、
を備える、被加工物のたわみ測定方法。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
上述の特許文献1,2に記載の方法では、研削抵抗測定装置や、押圧装置及び変位計測装置を追加する必要があるため、コストアップとなり、また被加工物の変更時の段取り調整が必要になる。また、特許文献3に記載の方法では、研削抵抗が変化している状態のモータ電流値であるため、位相ずれの影響で被加工物の剛性の測定精度が低下する。
【0005】
本発明は、このような事情に鑑みてなされたものであり、簡易な構成で高精度な被加工物のたわみ及び剛性を測定できる方法、並びに簡易な構成で高精度な被加工物のたわみ及び剛性の測定が可能な工作機械を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
(請求項1)本手段に係る被加工物のたわみ測定方法は、被加工物及び砥石車を回転させつつ前記被加工物に対して前記砥石車を相対的に前進させ、前記被加工物を研削する工作機械における前記被加工物のたわみを測定する方法であって、前記工作機械は、前記被加工物の外周面と前記被加工物の回転中心を通る直線との2つの交点間距離を
2つの測定点の間の距離として測定する測定器を備え、前記被加工物のたわみ測定方法は、
前記測定器の2つの測定点のうち、前記被加工物の回転中心より下側の前記測定点において、前記被加工物の研削点を基準として前記被加工物の回転方向と逆方向の位相を第一回転位相として設定する設定工程と、
前記測定器の2つの測定点の前記被加工物の外周上における中央に位置する点のうち、前記被加工物の回転中心に対し前記砥石車とは反対側に位置する点において、前記被加工物の研削点を基準として前記被加工物の回転方向の位相を第二回転位相として取得する取得工程と、
前記砥石車の送り速度が一定であって、前記被加工物の回転支持部材の回転中心と、前記砥石車と前記被加工物の外周面が接触する研削点との第一距離の変化量が、前記2つの測定点の間の距離の半分の第二値の変化量と一致している整定状態で
、前記砥石車が所定の研削指令位置に位置する場合に、前
記第一距離を演算する第一演算工程と、前記整定状態で前記砥石車が前記所定の研削指令位置に位置するときの前記被加工物の研削点が、前記第二回転位相だけ回転したときに、前記測定器により前記2
つの測定点の間の距離を測定する第一測定工程と、前記第一距離と前記2
つの測定点の間の距離とに基づいて前記被加工物のたわみ量を推定する推定工程と、を備える。
【0007】
本手段では、研削中に得られる情報から被加工物のたわみを測定しているので、追加の測定装置は不要であり、簡易な構成とすることができる。また、整定状態の信号を用いているので、位相ずれに起因する誤差を低減し、被加工物のたわみの推定精度を向上できる。
【0008】
(請求項2)前記推定工程は、前記第一測定工程にて測定される前記2
つの測定点の間の距離の半分である
前記第二値を演算する第二演算工程と、前記第一距離と前記第二値との差を前記被加工物のたわみ量として演算する第二演算工程と、を備えるとよい。これにより、被加工物のたわみ量を精度よく求めることができる。
(請求項3)前記第一演算工程は、前記第一回転位相を90度として演算するようにしてもよい。これによれば、被加工物の径の測定点の設定が、容易となる。
(請求項4)前記被加工物のたわみ測定方法は、前記被加工物の粗研削時に行うようにしてもよい。粗研削時は、精研削時や微研削時より大きな加工力が発生するので、被加工物のたわみ量も大きくなりやすく、誤差要因の影響の比率が小さくなるので、高精度な被加工物のたわみを測定できる。
【0009】
(請求項5)前記第一測定工程は、接触式の測定装置により前記被加工物の径を測定するようにしてもよい。定寸装置が使用可能となるので、簡易な構成とすることができる。
(請求項6)本手段に係る研削時における前記被加工物の剛性を測定する方法は、前記たわみ測定方法によってたわみ量を測定するたわみ測定工程と、前記砥石車に発生する研削抵抗を測定する第二測定工程と、前記たわみ量及び前記研削抵抗に基づいて、前記被加工物の剛性を演算する第三演算工程と、を備えるようにしてもよい。
本手段は、被加工物の状態モニタリングや被加工物の支持系の異常検知等に使用可能である。
【0010】
(請求項7)本手段に係る工作機械は、被加工物の外周面と前記被加工物の回転中心を通る直線との2つの交点間距離を
2つの測定点の間の距離として測定する測定器を備え、前記被加工物及び砥石車を回転させつつ前記被加工物に対して前記砥石車を相対的に前進させ、前記被加工物を研削する工作機械であって、
前記測定器の2つの測定点のうち、前記被加工物の回転中心より下側の前記測定点において、前記被加工物の研削点を基準として前記被加工物の回転方向と逆方向の位相を第一回転位相として設定する設定手段と、
前記測定器の2つの測定点の前記被加工物の外周上における中央に位置する点のうち、前記被加工物の回転中心に対し前記砥石車とは反対側に位置する点において、前記被加工物の研削点を基準として前記被加工物の回転方向の位相を第二回転位相として取得する取得手段と、
前記砥石車の送り速度が一定であって、前記被加工物の回転支持部材の回転中心と、前記砥石車と前記被加工物の外周面が接触する研削点との第一距離の変化量が、前記2つの測定点の間の距離の半分の第二値の変化量と一致している整定状態で
、前記砥石車が所定の研削指令位置に位置する場合に、前
記第一距離を演算する第一演算手段と、前記整定状態で前記砥石車が前記所定の研削指令位置に位置するときの前記被加工物の研削点が、前記第二回転位相だけ回転したときに、前記測定器により前記2
つの測定点の間の距離を測定する第一測定手段と、前記第一距離と前記2
つの測定点の間の距離とに基づいて前記被加工物のたわみ量を推定する推定手段と、前記砥石車に発生する研削抵抗を測定する第二測定手段と、前記たわみ量及び前記研削抵抗に基づいて、前記被加工物の剛性を演算する第二演算手段と、を備える。
本手段に係る工作機械では、研削時における被加工物のたわみを補償することにより、加工時間の短縮や加工精度の向上を図ることができる。
【発明の効果】
【0011】
本発明では、研削中に得られる情報から被加工物のたわみを測定しているので、追加の測定装置は不要であり、簡易な構成とすることができる。また、整定状態の信号を用いているので、位相ずれに起因する誤差を低減し、被加工物のたわみの推定精度を向上できる。
【発明を実施するための形態】
【0013】
(工作機械の構成)
本実施形態では、研削時における被加工物のたわみ及び剛性の測定が可能な工作機械の一例として、砥石台トラバース型円筒研削盤を例に挙げて
図1を参照して説明する。そして、当該研削盤1の加工対象の被加工物Wは、カムシャフトやクランクシャフトなどの円筒状被加工物を例に挙げる。ただし、被加工物Wは、円筒状であれば、カムシャフトやクランクシャフトの他にも適用可能である。
【0014】
図1に示すように、研削盤1は、床上に固定されたベッド11と、ベッド11に固定された被加工物Wを回転可能に両端支持する主軸12(本発明の「被加工物Wの回転支持部材」に相当)及び心押装置13と、ベッド11上をZ軸方向及びX軸方向に移動可能な砥石台14と、砥石台14に回転可能に支持される砥石車15と、砥石台14をX軸方向に送るモータ16と、被加工物Wの外径を測定する定寸装置17(本発明の「測定器」に相当)と、主軸12及び砥石車15を回転し且つ被加工物Wに対する砥石車15の位置を制御する制御装置18等とを備える。
【0015】
砥石車15と被加工物Wの外周面とが接触する点、すなわち研削点Pgは、砥石車15の回転中心Ogと被加工物Wの回転中心Owとを結ぶ線Lh上に存在する。定寸装置17は、
図6に示すように、一対のプローブ17a,17bを備え、被加工物Wの外周面と被加工物Wの回転中心Owを通る直線との2つの交点をプローブ17a,17bの接触点Pa,Pbとし、被加工物Wの外周面を一対のプローブ17a,17bで挟み込むことで被加工物Wの外径を測定する。ここで、研削点Pgを基準として被加工物Wの回転方向とは逆回転方向に位置するプローブ17bの接触点Pb、すなわち被加工物Wの回転方向に対し研削点Pgの上流側に位置するプローブ17bの接触点Pbの位相を第一回転位相θとする。ここでいう研削点Pgの上流側とは、研削点Pgから見て回転する被加工物Wの外周面が研削点Pgに近づいてくる側のことである。定寸装置17は、第一回転位相θ(本実施形態では、θは90度)における2点Pa,Pbの間の距離2Tを測定する。
【0016】
(研削方法)
次に、制御装置18による研削方法の概略について、
図2、
図5及び
図6を参照して説明する。本実施形態においては、粗研削工程(
図5の時点t1〜t5)→精研削工程(
図5の時点t5〜t6)→微研削工程(
図5の時点t6〜t7)→スパークアウト工程(
図5の時点t7〜t8)の順に実行する。
【0017】
なお、
図5においては、各工程において砥石車15が被加工物Wに接触(時点t1、
図6の状態)してからX方向の研削指令位置に従って被加工物Wに向かって前進するときの、
図6に示す被加工物Wの回転中心Ow(主軸12の回転中心Os)と砥石車15の外周面(研削点Pg)との距離(第一距離Sとする)の経時変化、及び
図6に示す定寸装置17により測定される被加工物Wの2点Pa,Pbの間の距離2Tの半分の値(第二値Tとする)の経時変化、並びに各工程においてモータ16の電流値から求められる砥石車15に発生する研削抵抗Rを示す。
【0018】
ここで、第一距離Sは、例えば、砥石車15の直径と回転支持部材である主軸12の回転中心Osの指令位置、砥石台14の指令位置(砥石車15の回転中心の指令位置)等の情報を基に演算する。すなわち、第一距離Sは、主軸12の回転中心Osの指令位置と砥石車15の回転中心の指令位置との距離から砥石車15の直径の半分を
引き算することで求められる。また、研削抵抗Rは、モータ16の電流値から求めるようにしたが、公知の他の測定手法、例えばひずみ計等による測定で求めるようにしてもよい。
【0019】
まず、制御装置18は、被加工物Wに対して砥石車15をX軸方向に前進させ、被加工物Wに砥石車15を接触させることで粗研削工程を開始する(
図2のステップS1、
図5の時点t1)。この粗研削工程の開始時点t1は、研削抵抗Rが0から立ち上がることにより判断できる。
【0020】
図5に示すように、粗研削工程において、時点t1から時点t2に至るまでの間は、研削抵抗Rは急激に増加する。続いて、時点t2から時点t5に至るまでの間は、研削抵抗Rは一定となる。このように、砥石車15の送り速度が一定であって、研削抵抗Rの変化が無くなる状態、もしくは砥石車15の送り速度が一定であって、第一距離Sの変化量と第二値Tの変化量とが一致している状態を整定状態という。この整定状態では、定寸装置17の測定信号やモータ16の電流信号が安定しているので、整定状態での信号を用いて演算することにより高精度化を図ることができる。
【0021】
次に、制御装置18は、粗研削工程を行っている間、第二値Tが予め設定された値Taに達したか否かを判定する(
図2のステップS2)。制御装置18は、第二値Tが設定値Taに達していなければ(
図2のステップS2:N)、粗研削工程を継続する。一方、制御装置18は、第二値Tが設定値Taに達した場合には(
図2のステップS2:Y、
図5の時点t5)、粗研削工程から精研削工程へ移行する(
図2のステップS3)。
【0022】
制御装置18は、精研削工程における砥石車15の送り速度を、粗研削工程における砥石車15の送り速度より小さくする。これにより、精研削工程では、被加工物Wに研削焼けを生じないようにできる。制御装置18は、精研削を行っている間、第二値Tが、予め設定された値Tbに達したか否かを判定する(
図2のステップS4)。制御装置18は、第二値Tが設定値Tbに達していなければ(
図2のステップS4:N)、精研削工程を継続する。一方、制御装置18は、第二値Tが設定値Tbに達した場合には(
図2のステップS4:Y、
図5の時点t6)、精研削工程から微研削工程へ移行する(
図2のステップS5)。
【0023】
次に、制御装置18は、微研削を行っている間、第二値Tが、予め設定された値Tcに達したか否かを判定する(
図2のステップS6)。制御装置18は、第二値Tが設定値Tcに達していなければ(
図2のステップS6:N)、微研削工程を継続する。一方、制御装置18は、第二値Tが設定値Tcに達した場合には(
図2のステップS6:Y、
図5の時点t7)、微研削工程からスパークアウト工程に移行する(
図2のステップS7)。
【0024】
スパークアウト工程は、砥石車15を被加工物Wに対する切込量をゼロの状態として行う。つまり、スパークアウト工程においては、微研削工程において研削残しの分を研削することになる。そして、このスパークアウト工程は、予め設定された被加工物Wの回転数だけ行う。そこで、制御装置18は、被加工物Wが設定回数だけ回転したか否かを判定し(
図2のステップS8)、設定回数回転した場合には、スパークアウトを終了する(
図2のステップS9、
図5の時点t8)。そして、制御装置18は、砥石車15を被加工物Wから離して、処理を終了する。
【0025】
(たわみの測定)
研削盤1におけるたわみは、砥石車15を被加工物Wへ押し付けて研削するときの研削抵抗により発生する。なお、研削盤1におけるたわみは、研削液の供給圧によっても生じるが、本実施形態では考慮しないものとする。本実施形態の研削時における被加工物Wのたわみの測定は、たわみが無いという仮定で整定状態になると、第一距離Sと第二値Tとの位相差が所定角度になるということを利用している。この第一距離Sと第二値Tとの位相差は、
図6に示すように、第一回転位相θにおける定寸装置17の2つの測定点Pa,Pbの被加工物Wの外周上における中央に位置する点のうち、研削点Pgとは異なる点の研削点Pgを基準とした位相φ(第二回転位相φという)である。第二回転位相φは、第一回転位相θを含む式(360度−(θ+90度))で表される。本実施形態では、第一回転位相θが90度であることから、第二回転位相φは180度となる。
【0026】
例えば、
図7に示すように、砥石車15が、研削点Pgに位置しているときの研削点Pgと被加工物Wの回転中心Owとの距離をr、被加工物Wの一回転当たりの砥石車15の切込量をλとすると、定寸装置17の一対のプローブ17a,17bのうち、上側のプローブ17aの測定点Paと被加工物Wの回転中心Owとの距離は、r+λ/4、下側のプローブ17bの測定点Pbと被加工物Wの回転中心Owとの距離は、r+3λ/4となる。よって、定寸装置17で測定される2点Pa,Pbの間の距離は、2r+λとなる。すなわち、第一距離は、rとなり、第二値は、r+λ/2となる。
【0027】
そして、
図8に示すように、被加工物Wが、180度回転したとすると、砥石車15は、時点t3の研削点Pgからλ/2だけ切り込むことになるので、定寸装置17の上側のプローブ17aの測定点Paと被加工物Wの回転中心Owとの距離は、r−λ/4、下側のプローブ17bの測定点Pbと被加工物Wの回転中心Owとの距離は、r+λ/4となる。よって、定寸装置17で測定される2点Pa,Pbの間の距離は、2rとなる。すなわち、第一距離は、r−λ/2となり、第二値は、rとなる。
【0028】
以上より、第一距離と第二値との位相差、すなわち第二回転位相φは、180度になる。従って、たわみが有る場合には、第一距離と第二値とを180度の位相合わせを行うことで差分が生じるので、その差分が被加工物Wのたわみ量の推定値に相当する。このように、整定状態の信号を用いているので、位相ずれに起因する誤差を低減し、被加工物Wのたわみ量の推定精度を向上できる。
【0029】
次に、制御装置18による研削時における被加工物Wのたわみの測定方法について、
図3及び
図5を参照して説明する。
制御装置18は、被加工物Wの研削点Pgを基準として被加工物Wの回転方向とは逆回転方向に位置する定寸装置17の測定点Pa,Pbの位相を第一回転位相θとして設定する(設定工程)(
図3のステップS20)。制御装置18は、第一回転位相θにおける定寸装置17の2つの測定点Pa,Pbの被加工物Wの外周上における中央に位置する点のうち、研削点Pgとは異なる点の研削点Pgを基準とした位相を第二回転位相φとして取得する(取得工程)(
図3のステップS21)。
【0030】
そして、制御装置18は、第一距離Sの変化量と第二値Tの変化量とが一致して整定状態になっているか否かを判断し(
図3のステップS22)、整定状態になっていると判断したときは(
図3のステップS22:Yes)、制御装置18は、整定状態で砥石車15が所定の研削指令位置に位置する場合に、第一距離Sを演算する(第一演算工程)(
図3のステップS23)。例えば、
図5の時点t3における第一距離Srを演算する。なお、上述の所定の研削指令位置は、整定状態での研削指令位置であればどの加工点でもよく、特定の研削指令位置を指定するものではない。
【0031】
そして、制御装置18は、整定状態で砥石車15が所定の研削指令位置に位置するときの被加工物Wの研削点Pgが、第二回転位相φだけ回転したときに、定寸装置17により2点Pa,Pbの間の距離を測定し(第一測定工程)(
図3のステップS24)、測定した2点間距離の半分である第二値Tを演算する(第二演算工程)(
図3のステップS25)。例えば、
図5の時点t3から第二回転位相φずれた時点t4における第二値Trを演算する。そして、制御装置18は、第一距離Srと第二値Trとの差を被加工物Wのたわみ量Δとして推定し(推定工程)(
図3のステップS26)、処理を終了する。
【0032】
(剛性の測定)
次に、制御装置18による研削時における被加工物Wの剛性の測定方法について、
図4を参照して説明する。
制御装置18は、砥石車15に発生する研削抵抗Rを測定する(第二測定工程)(
図4のステップS31)。そして、制御装置18は、測定した被加工物の研削抵抗Rを、推定した被加工物Wのたわみ量Δで除算することにより、被加工物Wの剛性K(=R/Δ)を演算し(第三演算工程)(
図4のステップS32)、処理を終了する。
【0033】
以上のように、本実施形態の被加工物のたわみの測定方法では、研削中に得られる情報から被加工物Wのたわみを測定しているので、追加の測定装置は不要であり、簡易な構成とすることができる。また、本実施形態の被加工物のたわみの測定方法では、整定状態の信号を用いているので、位相ずれに起因する誤差を低減し、被加工物Wのたわみの推定精度を向上できる。そして、研削盤1においては、研削時における被加工物Wのたわみを補償することで、加工時間の短縮や加工精度の向上を図れる。
【0034】
また、本実施形態の被加工物の剛性の測定方法では、上述のたわみを利用しているので、被加工物のたわみの測定方法と同様の効果が得られ、また、被加工物Wの状態モニタリングや被加工物Wの支持系の異常検知等に使用可能である。
【0035】
なお、上記実施形態においては、第一距離Sと第二値Tとの差からたわみ量を演算する構成としたが、整定状態における第一距離S及び定寸装置17の2つの測定点Pa,Pb間の距離2Tに基づいて最終的にたわみ量を求められれば、どのような演算過程であってもよい。例えば、第一距離Sの2倍の値2Sと定寸装置17の2つの測定点Pa,Pb間の距離2Tとの差を求め、その差の半分をたわみ量として演算する構成としてもよい。また、第一回転位相θを90度に設定する構成としたが、第一回転位相θを任意の角度に設定する構成としても、360度−(θ+90度)で求まる第二回転位相φを設定すれば、同様の効果が得られる。
【0036】
また、整定状態において第一距離S=rである場合、2点の測定点Pa,Pb間距離2Tが2T=2rとなるのは、S=rの状態から第二回転位相φ=360度−(θ+90度)の回転が進んだときとなる。言い換えれば、第二回転位相φは、所定の状態での研削点Pgから被加工物Wの回転中心Owまでの距離の2倍の値と、前述の所定の状態から被加工物Wの回転が進んだ状態での第一回転位相θの位置における2点間距離と、が等しくなるときの回転位相である。なお、第一回転位相θと、第二回転位相φは、研削点Pgを基準(0度)としている。
【0037】
また、上記実施形態においては、粗研削工程において被加工物Wのたわみや剛性を測定する構成としたが、整定状態が得られれば精研削工程や微研削工程において被加工物Wのたわみや剛性を測定が可能である。また、上記実施形態においては、被加工物Wの径測定に接触式の定寸装置17を用いたが、非接触式の例えばレーザを用いた径測定装置でもよい。