特許第6390320号(P6390320)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6390320
(24)【登録日】2018年8月31日
(45)【発行日】2018年9月19日
(54)【発明の名称】非水系インクジェットインキ
(51)【国際特許分類】
   C09D 11/322 20140101AFI20180910BHJP
   C09D 11/40 20140101ALI20180910BHJP
   C09D 11/36 20140101ALI20180910BHJP
   B41M 5/00 20060101ALI20180910BHJP
   B41J 2/01 20060101ALI20180910BHJP
【FI】
   C09D11/322
   C09D11/40
   C09D11/36
   B41M5/00 120
   B41J2/01 501
【請求項の数】6
【全頁数】22
(21)【出願番号】特願2014-203579(P2014-203579)
(22)【出願日】2014年10月2日
(65)【公開番号】特開2016-69607(P2016-69607A)
(43)【公開日】2016年5月9日
【審査請求日】2017年7月6日
(73)【特許権者】
【識別番号】000222118
【氏名又は名称】東洋インキSCホールディングス株式会社
(73)【特許権者】
【識別番号】711004436
【氏名又は名称】東洋インキ株式会社
(72)【発明者】
【氏名】鈴木 紀雄
(72)【発明者】
【氏名】鶴谷 進典
【審査官】 ▲吉▼澤 英一
(56)【参考文献】
【文献】 特開平09−176531(JP,A)
【文献】 特開平06−240192(JP,A)
【文献】 特開平04−202385(JP,A)
【文献】 特開平05−320551(JP,A)
【文献】 特開2007−254700(JP,A)
【文献】 米国特許出願公開第2015/0368486(US,A1)
【文献】 特開平08−174997(JP,A)
【文献】 特開2009−263447(JP,A)
【文献】 特開2010−024352(JP,A)
【文献】 国際公開第2009/123008(WO,A1)
【文献】 特開2011−252057(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C09D 11/00−11/54
B41J 2/01
B41M 5/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
イエローインキと、少なくともマゼンタインキとを含むことを特徴とする非水系インクジェットインキセットであって、
前記イエローインキが、着色剤、バインダー樹脂、有機溶剤を含み、かつ、イエローインキに含まれる着色剤が、ベンジジン系ジスアゾイエロー顔料(A)を含み、
前記マゼンタインキが、着色剤、バインダー樹脂、有機溶剤を含み、かつ、マゼンタインキに含まれる着色剤が、C.I.ピグメントバイオレット19、C.I.ピグメントレッド122,146,および、184から選択される少なくとも1種類以上を含むマゼンタ顔料(B)を含み、
各インキが、塩基性分散剤を含むことを特徴とする、非水系インクジェットインキセット。
【請求項2】
前記イエローインキが、イエローインキ全体に対してベンジジン系ジスアゾイエロー顔料(A)を0.5〜7.5重量%含み、かつ、イエローインキに含まれる着色剤全体に対して、ベンジジン系ジスアゾイエロー顔料(A)を50重量%以上含有することを特徴とする請求項1記載の非水系インクジェットインキセット
【請求項3】
ベンジジン系ジスアゾイエロー顔料(A)が、C.I.ピグメントイエロー83であることを特徴とする、請求項1または2に記載の非水系インクジェットインキセット
【請求項4】
各インキに含まれる塩基性分散剤の重量平均分子量(Mw)が、それぞれ独立に、20,000以上55,000以下であることを特徴とする、請求項1〜3いずれか記載の非水系インクジェットインキセット。
【請求項5】
非吸収シート基材へ、請求項1〜4いずれか記載の非水系インクジェットインキセットを用いて印刷してなる印刷物。
【請求項6】
非吸収シート基材へ、請求項1〜4いずれか記載の非水系インクジェットインキセットを用いて印刷することを特徴とする印刷物の製造方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、良好な発色性や色再現性を示し、また保存安定性に優れた非水系インクジェットイエローインキ、および前記非水系インクジェットイエローインキを含有する非水系インクジェットインキセットに関する。
【背景技術】
【0002】
インクジェット印刷に用いられるインキは、その組成によって溶剤(非水系)型・水性型・活性エネルギー線硬化型等に分類される。このうち非水系型のインクジェットインキは、他のインキと比較して、保存安定性に優れる、耐擦過性や耐候性といった印刷物の塗膜耐性が良好である、等の特徴があり、屋外広告用途をはじめ様々な用途で用いられている。
【0003】
当然ながら、インクジェット印刷物においても印刷物の発色性や色再現性は重要であり、これまでにも、前記特性を向上させるべく様々な検討がなされている。例えば特許文献1では、オレンジインキやバイオレットインキといった、特色インキを搭載することで、印刷物の色再現性の拡大を図っている。
しかしながら特色インキを使用するためには、インキを充填するためのインクジェットヘッドが余計に必要となり、それらを搭載したプリンターは必然的にサイズやコストが大きくなってしまう。従って、特色インキを使用することなく、プロセスカラーのみで前記問題点を解決できることが好ましいといえる。
【0004】
プロセスカラーのうちイエローは、マゼンタとの混色である赤色、およびシアンとの混色である緑色の発現に関与するものであり、前記色再現性の発現・拡大において重要な役割を果たしている。従来、インクジェットイエローインキでは、モノアゾイエロー顔料、ジスアゾイエロー顔料、縮合アゾイエロー顔料といったアゾ顔料がイエロー顔料として使用されていた。一方で近年では、アゾ基に加えてベンツイミダゾロン基やキノキサリンジオン基を導入した顔料(特許文献2、3参照)や、ニッケル系アゾ顔料のような金属−アゾ錯体顔料が選択されることが多い。特に後者はC.I.ピグメントイエロー150として一般に知られている顔料であり、印刷物の耐光性に優れていることもあって、近年、特に非水系インクジェットイエローインキにおいてよく使用される顔料である。
【0005】
しかしながら前記顔料は、いずれも発色性に劣るという問題点がある。そのためこれらの顔料を使用する場合、インキ中の顔料濃度を大きくする必要があるが、同時にインキ中の固形成分の量を増加させることになるため、インキの粘度もまた増加してしまう。一方で、インクジェットインキとしての特性を発現させる、すなわちインキの射出特性や印字特性を維持・向上させるためには、インキの粘度を好適な範囲に収める必要があり、従ってバインダー樹脂など、他の特性に影響を与える固形成分の量を減らさなければならなくなる。また一般に、顔料成分が多いほど、インキの保存安定性が悪化することが知られており、この点でも、インキ中の顔料濃度の増加は好ましいものではない。
【0006】
以上のように、保存安定性などインクジェットインキとして必要な特性を持ちながら、プロセスカラーのみで発色性や色再現性に優れた印刷物を得ることができるインキ、特に非水系インクジェットイエローインキはいまだ見出せていない現状である。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0007】
【特許文献1】特許第4253840号公報
【特許文献2】特開2007−308712号公報
【特許文献3】特開2009−001691号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
本発明は、良好な発色性や色再現性を示し、また保存安定性に優れた非水系インクジェットイエローインキ、および前記非水系インクジェットイエローインキを含有する非水系インクジェットインキセットを提供するものである。本発明のイエローインキは、従来用いられているイエローインキよりも、インキ中のベンジジン系ジスアゾイエロー顔料(A)の配合量が少ないにもかかわらず、十分な発色性を有し、特に、赤色領域の良好な色再現性を示すことを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明者は、非水系インクジェットイエローインキ、および前記非水系インクジェットイエローインキを含有する非水系インクジェットインキセットであって、良好な発色性や色再現性を示し、また保存安定性に優れたインキを提供するべく鋭意検討を行った結果、前記イエローインキ中に含有するイエロー顔料としてベンジジン系ジスアゾイエロー顔料(A)を選択することで、また、前記インキセットを構成するマゼンタインキに含有する顔料として好適なものを選択することで、前記問題点が解決されることを見出して本発明を成したものである。
【0010】
すなわち本発明の非水系インクジェットインキは、以下の構成からなることを特徴とする。
【0011】
本発明はイエローインキと、少なくともマゼンタインキとを含むことを特徴とする非水系インクジェットインキセットであって、
前記イエローインキが、着色剤、バインダー樹脂、有機溶剤を含み、かつ、イエローインキに含まれる着色剤が、ベンジジン系ジスアゾイエロー顔料(A)を含み、
前記マゼンタインキが、着色剤、バインダー樹脂、有機溶剤を含み、かつ、マゼンタインキに含まれる着色剤が、C.I.ピグメントバイオレット19、C.I.ピグメントレッド122,146,および、184から選択される少なくとも1種類以上を含むマゼンタ顔料(B)を含み、
各インキが、塩基性分散剤を含むことを特徴とする、非水系インクジェットインキセットに関する。
【0012】
また本発明は、前記イエローインキが、イエローインキ全体に対してベンジジン系ジスアゾイエロー顔料(A)を0.5〜7.5重量%含み、かつ、イエローインキに含まれる着色剤全体に対して、ベンジジン系ジスアゾイエロー顔料(A)を50重量%以上含有することを特徴とする上記非水系インクジェットインキセットに関する。
【0013】
また本発明は、ベンジジン系ジスアゾイエロー顔料(A)が、C.I.ピグメントイエロー83であることを特徴とする、上記非水系インクジェットインキセットに関する。
【0016】
また本発明は、各インキに含まれる塩基性分散剤の重量平均分子量(Mw)が、それぞれ独立に、20,000以上55,000以下であることを特徴とする、上記非水系インクジェットインキセットに関する。
【0017】
また本発明は、非吸収シート基材へ、上記非水系インクジェットインキセットを用いて印刷してなる印刷物に関する。
【0018】
また本発明は、非吸収シート基材へ、上記非水系インクジェットインキセットを用いて印刷することを特徴とする印刷物の製造方法に関する。

【発明の効果】
【0019】
イエローインキ中に含有するイエロー顔料としてベンジジン系ジスアゾイエロー顔料(A)を選択することで、また、前記インキセットを構成するマゼンタインキに含有する顔料として好適なものを選択することで、非水系インクジェットイエローインキ、および前記非水系インクジェットイエローインキを含有する非水系インクジェットインキセットであって、良好な発色性や赤色領域の良好な色再現性を示し、また保存安定性に優れたインキを得ることができた。
【発明を実施するための最良の形態】
【0020】
以下に、好ましい実施の形態を挙げて、本発明について説明する。なお、以下、特にことわりのない限り、「部」「%」は、「重量部」「重量%」をあらわす。
【0021】
また本明細書において「非水系」とは、インキに意図的に水や重合性モノマーを含有させないことを意味するものであり、各配合成分中に含まれる微量の水分や重合性モノマー分を除外するものではない。
【0022】
本発明は、非水系インクジェットイエローインキ、および前記非水系インクジェットイエローインキを含有する非水系インクジェットインキセットであって、好適な顔料を選択し組み合わせることによって、優れた発色性、色再現性を有する印刷物を得ることができる、というものである。特に本発明のイエローインキは、従来用いられているイエローインキよりも、インキ中のベンジジン系ジスアゾイエロー顔料(A)の配合量が少ないにもかかわらず、十分な発色性や色再現性を示すことを特徴とする。
【0023】
本発明のイエローインキにおいて、好適に使用されるベンジジン系ジスアゾイエロー顔料(A)は、下記一般式(1)で示されるものである。
【0024】
【化1】
一般式(1)
【0025】
ただし、一般式(1)においてR1〜R6は、いずれも独立にH原子、Cl原子、炭素数1〜2のアルキル基、または炭素数1〜2のアルコキシ基を表す。
【0026】
前述の通り、本発明で使用されるベンジジン系ジスアゾイエロー顔料は、従来の非水系インクジェットイエローインキにおいて使用されるイエロー顔料に比べ、インキ中の配合量が少なくても、優れた発色性を示すという特徴を持つ。また、イエロー顔料の配合量を抑えられることから、顔料以外の固形成分、すなわちバインダー樹脂の量を増やすことができる。その結果、バインダー樹脂によって発現される、耐擦性や耐溶剤性などの印刷物の塗膜特性もまた、従来のインキ以上に向上させることができる。
【0027】
一般式(1)で表されるベンジジン系ジスアゾイエロー顔料(A)をカラーインデックス(C.I.)ナンバーで例示すると、C.I.ピグメントイエロー12、13、14、15、16、17、55、83、87、124、170、171、172、174、176、188等が挙げられる。
本発明では、インキセットとしてマゼンタインキとともに使用した際、赤色領域の色再現性に優れる点から、発色性、色再現性の点から、C.I.ピグメントイエロー12,13,14,17,55,83,174,176,188が好ましく使用される。また、耐光性や色再現性の点から、特にC.I.ピグメントイエロー83が好ましく使用される。
【0028】
印刷物の発色性をより向上させるため、またインクジェットインキとして優れた吐出・印字特性を発現させるためには、ベンジジン系ジスアゾイエロー顔料(A)の粒度分布を好適な範囲に制御する必要がある。本発明において好適なベンジジン系ジスアゾイエロー顔料(A)は、平均粒径(D50)が50〜400nm、かつ99%粒径(D99)が100〜800nmとなるものである。より好ましくは、D50が100〜300nm、D99が300〜700nmの場合である。
ここでイエロー顔料(A)のD50が50nm以上の場合は、顔料の粒径に依存する耐光性や発色性が十分に発現する。またD99が800nm以下の場合は、インクジェットノズルやフィルター内での詰まり発生を抑制し、吐出安定性が良好になる。
【0029】
なお前記D50やD99は、例えば、インキを酢酸エチルで200〜1000倍に希釈し、マイクロトラックUPA150(日機装株式会社製)を使用することで測定できる。
【0030】
本発明において、インキに対するベンジジン系ジスアゾイエロー顔料(A)の配合量は、発色性、保存安定性、吐出・印字特性などから決定される。前述の通り、本発明で使用されるベンジジン系ジスアゾイエロー顔料(A)は、従来使用される顔料に比べ発色性が良好であり、その分配合量を抑えることができる。本発明のインキにおけるベンジジン系ジスアゾイエロー顔料(A)の好適な配合量は、インキ全量に対し0.5〜7.5重量%であり、より好適には1〜5重量%、更に好適には1.5〜3重量%である。
また、イエローインキに含まれる着色剤全体に対して、ベンジジン系ジスアゾイエロー顔料(A)が50重量%以上含有することが好ましい。より好ましくは、90重量%以上である。
【0031】
本発明のイエローインキがインキセットとして使用される場合、前記インキセットは、前述のイエローインキに加え、マゼンタインキ、シアンインキ、ブラックインキ等を含む。
なお、他にライトシアンインキ、ライトマゼンタインキ、グレーインキ、ライトグレーインキといった画像粒状感を低減するための淡色インクも含むことができる。
【0032】
本発明では、印刷物、特に赤色領域における色再現性を向上させるため、特にマゼンタインキの構成成分として好適なものを選択することが好ましい。すなわち、マゼンタインキ中に含まれるマゼンタ顔料(B)として、少なくともキナクリドン顔料、およびナフトールAS顔料から選択される1種類以上の顔料を含有することが好ましい。前記顔料はいずれも、色再現性および印刷物の耐光性に優れるという特徴があり、本発明のインキセットを使用することで、長期にわたり発色性や色再現性に優れた印刷物が得られるという点で好ましく用いられる。
【0033】
前記マゼンタ顔料(B)として好適に使用されるキナクリドン顔料は、下記一般式(2)で示されるものである。
【0034】
【化2】
一般式(2)
【0035】
ただし、一般式(2)においてR7〜R8は、いずれも独立にH原子、Cl原子、CH3基を表す。
【0036】
また、ナフトールAS顔料は下記一般式(3)で示されるものである。
【0037】
【化3】
一般式(3)
【0038】
ただし、一般式(3)においてR9〜R11は、いずれも独立に水素原子、Cl原子、炭素数1〜2のアルキル基、炭素数1〜2のアルコキシ基、NO2基、SO2−N(C252基、CONH2基、CONH−C65基、CONH−C64−CONH2基、またはCONH−C63Cl2基を表す。またR12〜R14はいずれも独立にH原子、Cl原子、炭素数1〜2のアルキル基、炭素数1〜2のアルコキシ基、またはNO2基を表す。
【0039】
前記マゼンタ顔料(B)として好適に使用されるキナクリドン顔料のうち、前記一般式(2)で表されるものとして、C.I.ピグメントレッド122、202、207、209、C.I.ピグメントバイオレット19が挙げられる。また一般式(3)で表されるものとして、C.I.ピグメントレッド2、5、7、8、9、12、23、32、112、114、146、147、148、170、176、184、185、187、188、245、261、269が挙げられる。本発明では、インキセットとして前記イエローインキとともに使用した際、赤色領域の色再現性に優れる点、および耐光性が特に優れる点から、C.I.ピグメントバイオレット19、C.I.ピグメントレッド122、146、184等が好ましく、C.I.ピグメントバイオレット19、C.I.ピグメントレッド146が特に好ましく用いられる。また前記顔料の中でも、発色性に優れる点から、C.I.ピグメントレッド146が更に好ましく用いられる。
【0040】
前記マゼンタ顔料(B)の、インキ中全量に対する配合量は、着色力、保存安定性、吐出・印字特性の点などから、1〜12重量%が好ましく、2〜10重量%がより好ましい。配合量が1重量%以上だと、印刷時の発色性や色再現性が十分に発揮しやすい。12重量%以下であれば、保存安定性が良好で、吐出可能な粘度に調整するためバインダー樹脂の配合量を増やすことが出来、結果として印刷物の耐擦性や耐溶剤性が向上しやすい。
【0041】
前述の通り、本発明のインキがインクジェット用途に使用されるためには、インキの粘度や粒度分布を好適な範囲内に収める必要がある。また、より好適に使用されるためには、インキを長期間保存したあとであっても、粘度や粒度分布が好適な範囲内に安定に維持される必要がある。例えばインキの保存中に、分散された顔料同士が凝集してしまうと、粘度や粒度分布の増加を招いてしまい好ましくない。
【0042】
そこで本発明では、前述のようにベンジジン系ジスアゾイエロー顔料(A)、およびマゼンタ顔料(B)に対し好適な分散剤を選択することによって、前記保存安定性の確保を図っている。以下に、本発明において好ましく選択される分散剤について説明する。
【0043】
分散剤は一般的に、顔料吸着サイトとして酸性基をもつ酸性分散剤と、塩基性基をもつ塩基性分散剤とに分類される。本発明では、ベンジジン系ジスアゾイエロー顔料(A)、マゼンタ顔料(B)、有機溶剤に対する親和性の点から、塩基性分散剤を選択することが好ましい。また塩基性分散剤の中には、分子中に酸性基も有するもの(両性分散剤)が存在しており、これらの分散剤もまた好適に使用される。
【0044】
分散剤中の酸性基、塩基性基の量は、それぞれ酸価(mgKOH/g)およびアミン価(mgKOH/g)によって表される。ここで「酸価」とは、分散剤固形分1gあたりの酸価を表し、JIS K 0070に準じ、電位差滴定法によって求めることが出来る。また「アミン価」とは、分散剤固形1gあたりのアミン価を表し、0.1Nの塩酸水溶液を用い、電位差滴定法によって求めた後、水酸化カリウムの当量に換算した値をいう。
【0045】
本発明では、前記塩基性分散剤の酸価としては0〜40が好ましく、5〜20がより好ましい。またアミン価は1〜50が好ましく、5〜40がより好ましい。
【0046】
塩基性分散剤の酸価、アミン価が前記範囲内である場合、顔料分散工程において、顔料分散体の粘度がインクジェットインキとしてふさわしい程度の低粘度になるまでの時間が短くなり、かつ、インキの保存安定性が良好になる。保存安定性が良好で無い場合、プリンター内流路における流動性が低下し、インクジェットヘッドからの吐出不良につながる事が懸念される。上記範囲外においては、顔料分散体の粘度が高くなり、バインダー樹脂を添加することが出来なくなり、求める印刷物の耐性を得ることが出来ない。
【0047】
本発明の塩基性分散剤の重量平均分子量(Mw)としては、5000以上70000以下であることが好ましく、10000〜60000であることがより好ましく、20000〜55000であることが特に好ましい。Mwが前記範囲に収まっている場合、塩基性分散剤がイエロー顔料に安定的に吸着され、結果として顔料分散体、およびインキの保存安定性が向上する。更に、この好ましい範囲においては、インクジェットインキとしてふさわしい程度の粘度範囲になるまでの顔料分散時間が短くなり、また、低粘度になることよって、印刷物の耐性に寄与するインキ中のバインダー樹脂比率を増やすことが出来るため、耐擦性や耐溶剤性が向上するといった利点がある。
【0048】
ここで塩基性分散剤のMwが5000以上の場合、顔料に対する塩基性分散剤の吸着が十分であり、結果としてインキの保存安定性が良好となる。Mwが70000以下であると、顔料に対する吸着性が良好で、分散剤によるインキの粘度上昇を抑えることができ、結果としてバインダー樹脂の量を増やすことができ、耐擦性や対溶剤性が良化する。
【0049】
なおMwは、一般的なゲルパーミッションクロマトグラフィー(以下GPC)によりスチレン換算分子量として求めることができる。
例えば、TSKgelカラム(東ソー社製)を用い、RI検出器を装備したGPC(東ソー社製、HLC−8320GPC)で、展開溶媒にDMFを用いたときのポリスチレン換算分子量で示すことができる。
【0050】
本発明で使用される塩基性分散剤の分子構造としては、顔料の吸着部位(主鎖)と分散安定化部位(側鎖)がバランスよく配列しているものであれば特に限定しないが、一般的に櫛型骨格と呼ばれるタイプの分散剤がより好ましく用いられる。
【0051】
また本発明においては、例えば、主鎖骨格にポリウレタン、ポリアクリル、ポリエステル、ポリアミド、ポリイミド、ポリウレア、ポリアリルアミン、ポリエチレンイミン等のアミン価を有する樹脂、側鎖骨格には、ポリウレタン、ポリアクリル、ポリカプロラクトン、ポリバレロラクトン等のポリエステル等の酸価を有する塩基性分散剤が好ましく用いられる。このうち顔料分散体の低粘度化や、インキの保存安定性の点で、主鎖としてポリアリルアミン、ポリエチレンイミン、側鎖としてポリカプロラクトン、ポリバレロラクトン等のポリエステルで変性することにより、オキシアルキレンカルボニル基を導入したものが特に好ましい。
【0052】
本発明において使用される分散剤は、公知の材料から選択することができる。具体的には、塩基性分散剤としてルーブリゾール社製のソルスパーズ11200、ソルスパーズ13240、ソルスパーズ13650、ソルスパーズ13940、ソルスパーズ16000、ソルスパーズ17000、ソルスパーズ18000、ソルスパーズ20000、ソルスパーズ24000SG、ソルスパーズ24000GR、ソルスパーズ28000、ソルスパーズ31845、ソルスパーズ32000、ソルスパーズ32500、ソルスパーズ32550、ソルスパーズ32600、ソルスパーズ33000、ソルスパーズ34750、ソルスパーズ35100、ソルスパーズ35200、ソルスパーズ37500、ソルスパーズ38500、ソルスパーズ39000、ソルスパーズ56000、ソルスパーズ71000、ソルスパーズ76400、ソルスパーズ76500、ソルスパーズX300、ソルスパーズ9000、ソルスパーズJ100、J180、J200、ビックケミー社製のDISPERBYK−108、DISPERBYK−109、DISPERBYK−112、DISPERBYK−116、DISPERBYK−130、DISPERBYK−161、DISPERBYK−162、DISPERBYK−163、DISPERBYK−164、DISPERBYK−166、DISPERBYK−167、DISPERBYK−168、DISPERBYK−182、DISPERBYK−183、DISPERBYK−184、DISPERBYK−185、DISPERBYK−2000、DISPERBYK−2008、DISPERBYK−2009、DISPERBYK−2022、DISPERBYK−2050、DISPERBYK−2150、DISPERBYK−2155、DISPERBYK−2163、DISPERBYK−2164、BYK−9077、味の素ファインテクノ社製のアジスパーPB821、PB822、PB823、PB824、PB827等が挙げられる。
本発明では、Mwなどの観点から、ルーブリゾール社製のソルスパーズ24000SG、24000GR、32000、33000、35000、39000、ソルスパーズJ100、J180、J200、味の素ファインテクノ社製のアジスパーPB821、PB822等が好ましく用いられる。
【0053】
また以上の分散剤は、単独で用いられてもよいし、2種以上併用されてもよい。
【0054】
前述の通り本発明では、ベンジジン系ジスアゾイエロー顔料(A)やマゼンタ顔料(B)と塩基性分散剤との組み合わせが、保存安定性や発色性・色再現性の向上に対して重要な要素となるが、これらの品質を更に有効に引き出すためには、各材料の配合量のコントロールもまた重要となる。ベンジジン系ジスアゾイエロー顔料(A)やマゼンタ顔料(B)に対する塩基性分散剤の配合量としては、ベンジジン系ジスアゾイエロー顔料(A)やマゼンタ顔料(B)の配合量を100部とした場合、25〜100部であることが好ましく、30〜80部であることが特に好ましい。この比率が25部以上の場合は、顔料に対する塩基性分散剤の絶対量が十分にあり、結果としてインキの保存安定性が良化する。100部以下の場合は、塩基性分散剤の量が過剰にならず、保存安定性に悪影響を及ぼす過剰に微細化された顔料を生じることがないため好ましい。
【0055】
本発明のインキには、ベンジジン系ジスアゾイエロー顔料(A)やマゼンタ顔料(B)と塩基性分散剤との吸着性を更に向上させ、保存安定性を良化させる目的で、さらに酸性基を有する顔料誘導体を含むことができる。本発明に使用される酸性基を有する顔料誘導体としては、下記一般式(4)で表される電荷を有さないものや、下記一般式(5)や(6)で表される電荷を有するものが挙げられる。
【0056】
一般式(4):
P−Z1
【0057】
ただし一般式(4)中、Pは有機顔料残基を、Z1はスルホン酸基またはカルボキシル基を表す。
【0058】
一般式(5):
(P−Z2)[N+(R15,R16,R17,R18)]
【0059】
ただし一般式(5)中、Pは有機顔料残基を、R15は、炭素数5〜20のアルキル基であり、R16、R17、およびR18は、それぞれ独立に、H原子または炭素数1〜20のアルキル基であり、Z2はSO3-またはCOO-を表す。
【0060】
一般式(6):
(P−Z2)M+
【0061】
ただし一般式(6)中、Pは有機顔料残基を、Mは、NaまたはK原子を、Z2はSO3-またはCOO-を表す。
【0062】
一般式(4)〜(6)で示される顔料誘導体中のPは、使用されるベンジジン系ジスアゾイエロー顔料(A)やマゼンタ顔料(B)の化学構造と、化学構造上必ずしも一致しなければいけないものではない。ただし、最終的に製造されるインキの色相を考慮すれば、使用される顔料と同色系のPを有する顔料誘導体を使用した方が、色相的に優れたインキを製造することができるため好ましい。
【0063】
前記酸性基を有する顔料誘導体の使用量としては、顔料全量に対して0.1重量%以上20重量%以下が好ましく、1重量%以上15重量%以下が特に好ましい。ここで0.1重量%以上であると、顔料誘導体を使用した効果があり、20重量%以下だとインキの粘度が好適な範囲で仕上がり、保存安定性が良好であるため好ましい。
【0064】
本発明において、イエローインキ、およびマゼンタインキ以外の各色インキに使用される顔料は、印刷インキ、塗料等に使用される種々の顔料から選択することができる。すなわち、カーボンブラック、酸化チタン、炭酸カルシウム等の無彩色の顔料、あるいは有彩色の有機顔料を使用することができる。
【0065】
本発明において、イエローインキ以外のインキに含まれる有彩色の有機顔料として好ましく用いられるものをC.I.ナンバーで例示すると、C.I.ピグメントブルー15、15:1、15:3、15:4、15:6、22、60、64、C.I.ピグメントブラウン23、25、26、C.I.ピグメントオレンジ16、36、43、51、55、59、61、64、C.I.ピグメントグリーン7、36等が挙げられる。前記顔料の中で、フタロシアニン系顔料、アゾ系顔料などは耐光性、耐溶剤性、発色性等が優れており好ましい。
【0066】
特に本発明で使用される顔料の組み合わせとしては、シアン顔料として、フタロシアニン系有機顔料、ブラック顔料として、カーボンブラックが好ましく用いられる。
【0067】
これら顔料の、インキ中における配合量は、発色性、色再現性、保存安定性、インクジェットインキとしてふさわしい粘度範囲の点から、1〜15重量%が好ましく、1〜8重量%がより好ましい。また、ライトシアンインキ、ライトマゼンタインキ、グレーインキ、ライトグレーインキなど、画像粒状感を低減するため淡色インクを設定する場合、濃色インクに対して顔料の含有量率を1/5〜1/2とすることが好ましい。
【0068】
本発明においては、印刷物の基材密着性や塗膜耐性等を向上させる目的で、バインダー樹脂を併用することが好ましい。本発明において使用されるバインダー樹脂としては、インキ塗膜の耐擦性、耐溶剤性、延伸性、光沢性、基材汎用性などの機能を発揮するものであれば制限されるものでない。例えば、アクリル系樹脂、スチレン−アクリル系樹脂、スチレン−マレイン酸系樹脂、塩酢ビ系樹脂、ロジン系樹脂、ロジンエステル系樹脂、エチレン−酢ビ系樹脂、石油樹脂、クマロンインデン系樹脂、テルペンフェノール系樹脂、フェノール樹脂、ウレタン樹脂、メラミン樹脂、尿素樹脂、エポキシ系樹脂、セルロース系樹脂、キシレン樹脂、アルキッド樹脂、脂肪族炭化水素樹脂、ブチラール樹脂、マレイン酸樹脂、フマル酸樹脂等一般的に使用される樹脂が使用できる。これらバインダー樹脂は、単独で使用しても、2種類以上を混合しても良い。
【0069】
バインダー樹脂の具体例としては、三菱レイヨン社製のアクリル系樹脂として、BR−50、BR−52、MB−2539、BR−60、BR−64、BR−73、BR−75、MB−2389、BR−80、BR−82、BR−83、BR−84、BR−85、BR−87、BR−88、BR−90、BR−95、BR−96、BR−100、BR−101、BR−102、BR−105、BR−106、BR−107、BR−108、BR−110、BR−113、MB−2660、MB−2952、MB−3012、MB−3015、MB−7033、BR−115、MB−2478、BR−116、BR−117、BR−118、BR−122、ER−502、ウイルバー・エリス社製のアクリル系樹脂として、A−11、A−12、A−14、A−21、B−38、B−60、B−64、B−66、B−72、B−82、B−44、B−48N、B−67、B−99N、DM−55、BASF社製のスチレン−アクリル系樹脂として、JONCRYL67、678、586、611、680、682、683、690、819、JDX−C3000、JDX−C3080、日信化学工業製の塩酢ビ系樹脂として、ソルバインCL、CNL、C5R、TA3、TA5R、ワッカー社製の塩酢ビ系樹脂として、VINNOL E15/45、H14/36、H40/43、E15/45M、E15/40M、荒川化学社製のロジンエステル系樹脂として、スーパーエステル75、エステルガムHP、マルキッド 33、安原ケミカル社製のテルペンフェノール系樹脂として、YSポリスター T80、サートマー社製のスチレン−マレイン酸系樹脂として、SMA2625P等が挙げられる。
【0070】
前記バインダー樹脂は、印刷物の耐溶剤製、耐擦性、光沢等の点から、塩酢ビ樹脂、アクリル系樹脂が好ましい。また、塩酢ビ樹脂およびアクリル系樹脂をそれぞれ単独で使用しても、2種類混合しても良い。
【0071】
前記バインダー樹脂は、重量平均分子量Mw3,000〜70,000が好ましく、更に、5,000〜60,000が好ましい。Mwが3,000以上であれば、インキ塗膜の耐性が十分に発揮され、70,000以下であれば、微小なインクジェットプリンターヘッドからの吐出に負荷がかからず好ましい。上記好ましい範囲においては、分散剤との相溶性に優れ、白化現象を抑制する事が可能となる。
本発明においてバインダー樹脂として塩酢ビ樹脂を使用する場合、前記重量平均分子量Mwは、特に30,000〜70,000の範囲であることが好ましく、40,000〜65,000の範囲であることが最も好ましい。またアクリル系樹脂を使用する場合、Mwは、特に3,000〜50,000の範囲であることが好ましく、4,000〜40,000の範囲であることが最も好ましい。Mwを前記範囲内に収めることで、分散剤や有機溶剤との相溶性が良好となり、結果としてインクジェットヘッドからの吐出性や印刷物の発色性や色再現性に優れたインキを得ることができる。
【0072】
前記バインダー樹脂は、インキ総量中に1〜20重量%含まれることが好ましく、3〜10重量%が更に好ましい。インキ中に1重量%以上含まれると、記録媒体表面へのインキの密着性が向上し、インキ塗膜の耐性が良化する。20重量%以下では、インキ粘度が低粘度となり、インクジェット吐出適性が向上するために好ましい。逆に添加量が1重量%未満であると、印刷媒体表面への密着が悪く、塗膜の耐性が低下してしまい、20重量%を超えると粘度が高すぎるため、印刷適性が低下してしまうために好ましくない。
【0073】
本発明においてバインダー樹脂を併用する場合、その配合量は、同じく高粘度成分である塩基性分散剤(B)の配合量を鑑みたうえで決定する必要がある。塩基性分散剤(B)に対するバインダー樹脂の配合量としては、塩基性分散剤(B)の配合量を1部とした場合、1〜30部であることが好ましく、1.5〜20部であることがより好ましく、2〜10部であることが特に好ましい。
ここで、塩基性分散剤(B)に対するバインダー樹脂の配合量が1部よりも小さい場合は、バインダー樹脂の配合量が少なすぎるため、印刷物の密着性や塗膜強度が不足してしまうことがある。逆に30部よりも多い場合は、塩基性分散剤(B)の配合量が少なすぎるために、十分な顔料分散性が得られなくなることがある。
【0074】
本発明のインキは、有機溶剤として下記一般式(7)〜(10)より選ばれる少なくとも1種以上の化合物を含有する。
21CO(OR22ZOR23 一般式(7)
24CO(OR25ZOCOR26 一般式(8)
27(OR28ZOR29 一般式(9)
30(OR31ZOR32 一般式(10)
上式中、R2、R5、R8は炭素数2〜4のアルキレン基を表し、R21、R23、R24、R26、R27、R29はそれぞれ独立して炭素数1〜4のアルキル基を表し、R30、R32は両方が水素原子かもしくは片方が水素原子で片方が炭素数1〜6のアルキル基を表し、R22、R25、R28、R31、は炭素数1〜10のアルキレン基を表し、Zは1〜6の整数を表す。前記アルキレン基およびアルキル基は直鎖状でも分岐状でもよい。
【0075】
前記の溶剤を使用することで、印刷時のミスト発生の抑制や、デキャップ性や印字安定性の向上を達成することができるだけでなく、優れた保存安定性や基材密着性を有するインキを得ることができる。
【0076】
本発明では、分散剤やバインダー樹脂の溶解性に優れる点、有機溶剤の乾燥速度に由来するインキ塗膜の乾燥性の点などから、前記一般式(7)または一般式(9)で表される化合物を少なくとも1種類以上使用することが好ましい。
【0077】
また、一般式(7)〜(10)で表される有機溶剤の含有量の総量は、インキ全量に対し50〜99重量%であることが好ましく、70〜98重量%であることがより好ましい。特に、一般式(7)または一般式(9)で表される有機溶剤については、インキ全量に対する配合量として70〜98重量%であることが好ましく、80〜95重量%であることが特に好ましい。
【0078】
一般式(7)に該当する溶剤の具体例としては、エチレングリコールモノメチルエーテルアセテート、エチレングリコールモノエチルエーテルアセテート、エチレングリコールモノブチルエーテルアセテート、ジエチレングリコールモノメチルエーテルアセテート、ジエチレングリコールモノエチルエーテルアセテート、ジエチレングリコールモノブチルエーテルアセテート、プロピレングリコールモノメチルエーテルアセテート、ジプロピレングリコールモノメチルエーテルアセテート、エチレングリコールモノメチルエーテルプロピオネート、エチレングリコールモノエチルエーテルプロピオネート、エチレングリコールモノブチルエーテルプロピオネート、ジエチレングリコールモノメチルエーテルプロピオネート、ジエチレングリコールモノエチルエーテルプロピオネート、ジエチレングリコールモノブチルエーテルプロピオネート、プロピレングリコールモノメチルエーテルプロピオネート、ジプロピレングリコールモノメチルエーテルプロピオネート、エチレングリコールモノメチルエーテルブチレート、エチレングリコールモノエチルエーテルブチレート、エチレングリコールモノブチルエーテルブチレート、ジエチレングリコールモノメチルエーテルブチレート、ジエチレングリコールモノエチルエーテルブチレート、ジエチレングリコールモノブチルエーテルブチレート、プロピレングリコールモノメチルエーテルブチレート、ジプロピレングリコールモノメチルエーテルブチレート、メトキシブチルアセテート等のグリコールモノアセテート類がある。
【0079】
前記溶剤のうち、バインダー樹脂溶解性や臭気の観点で、本発明ではエチレングリコールモノブチルエーテルアセテートが特に好適に用いられる。
【0080】
また一般式(8)に該当する溶剤としては、エチレングリコールジアセテート、ジエチレングリコールジアセテート、プロピレングリコールジアセテート、ジプロピレングリコールジアセテート、エチレングリコールアセテートプロピオネート、エチレングリコールアセテートブチレート、エチレングリコールプロピオネートブチレート、エチレングリコールジプロピオネート、エチレングリコールアセテートジブチレート、ジエチレングリコールアセテートプロピオネート、ジエチレングリコールアセテートブチレート、ジエチレングリコールプロピオネートブチレート、ジエチレングリコールジプロピオネート、ジエチレングリコールアセテートジブチレート、プロピレングリコールアセテートプロピオネート、プロピレングリコールアセテートブチレート、プロピレングリコールプロピオネートブチレート、プロピレングリコールジプロピオネート、プロピレングリコールアセテートジブチレート、ジプロピレングリコールアセテートプロピオネート、ジプロピレングリコールアセテートブチレート、ジプロピレングリコールプロピオネートブチレート、ジプロピレングリコールジプロピオネート、ジプロピレングリコールアセテートジブチレート等のグリコールジアセテート類がある。
【0081】
さらに一般式(9)に該当する溶剤としては、例えば、エチレングリコールジメチルエーテル、ジエチレングリコールジメチルエーテル、ジエチレングリコールジエチルエーテル、ジエチレングリコールジブチルエーテル、ジエチレングリコールメチルエチルエーテル、ジエチレングリコールメチルブチルエーテル、トリエチレングリコールジメチルエーテル、トリエチレングリコールジエチルエーテル、トリエチレングリコールメチルブチルエーテル、テトラエチレングリコールジメチルエーテル、ジプロピレングリコールジメチルエーテル、ジプロピレングリコールジエチルエーテル、トリプロピレングリコールジメチルエーテル、等のグリコールジアルキルエーテル類が挙げられる。前記溶剤のうち、本発明では、ジエチレングリコールジエチルエーテル、ジエチレングリコールメチルエチルエーテル、ジエチレングリコールジメチルエーテル、ジエチレングリコールジブチルエーテル、ジエチレングリコールメチルブチルエーテル、トリエチレングリコールメチルブチルエーテル、テトラエチレングリコールジメチルエーテル、テトラエチレングリコールジエチルエーテル等が好ましく用いられる。
【0082】
なお近年、アメリカ環境保護庁によると、グライム類(対称グリコールジエーテル類)の新規利用について、生殖および発達へ有害な影響を及ぼすおそれがあるとの懸念が発表されている。この点から、前記一般式(9)に該当し好ましく用いられる溶剤のうち、ジエチレングリコールメチルエチルエーテル、ジエチレングリコールメチルブチルエーテル、トリエチレングリコールメチルブチルエーテル等が特に好ましく選択される。
【0083】
一般式(10)に該当する溶剤としては、エチレングリコールモノメチルエーテル、エチレングリコールモノブチルエーテル、エチレングリコールモノイソプロピルエーテル、エチレングリコールモノヘキシルエーテル、エチレングリコールモノ2−エチルヘキシルエーテル、プロピレングリコールモノメチルエーテル(1−メトキシ−2−プロパノール)、プロピレングリコールモノブチルエーテル、プロピレングリコールn−プロピルエーテル、ジエチレングリコールモノメチルエーテル、ジエチレングリコールモノエチルエーテル、ジエチレングリコールモノブチルエーテル、ジエチレングリコールモノイソプロピルエーテル、ジエチレングリコールモノヘキシルエーテル、ジエチレングリコールモノ2−エチルヘキシルエーテル、ジプロピレングリコールモノメチルエーテル、ジプロピレングリコールモノエチルエーテル、ジプロピレングリコールn−プロピルエーテル、ジプロピレングリコールモノブチルエーテル、トリエチレングリコールモノメチルエーテル、トリエチレングリコールモノエチルエーテル、トリエチレングリコールモノブチルエーテル、トリプロピレングリコールモノメチルエーテル、トリプロピレングリコールモノブチルエーテル、3−メトキシ−3メチルブタノール、3−メトキシブタノール等のグリコールモノアルキルエーテル類、エチレングリコール、ジエチレングリコール、トリエチレングリコール、プロピレングリコール、ジプロピレングリコール、1,3−ブチレングリコール、1,2−ヘキサンジオール、2−エチル−1,3−ヘキサンジオール、2,5−ジメチルヘキサンジオール等のアルカンジオール等が挙げられる。
【0084】
さらに本発明では、一般式(7)〜(10)で示したもの以外であっても有機溶剤として使用することができる。本発明のインキに使用できる溶剤は、インクジェットヘッドを腐蝕したり、顔料を溶解させたりするようなもの以外であれば特に制限なく選択することができる。
【0085】
その他の溶剤として例えば、メチルアルコール、エチルアルコール、n−プロピルアルコール、イソプロピルアルコール、n−ブチルアルコール等のアルコール類、アセトン、メチルエチルケトン、メチル−n−プロピルケトン、メチルイソプロピルケトン、メチル−n−ブチルケトン、メチルイソブチルケトン、メチル−n−アミルケトン、メチルイソアミルケトン、ジエチルケトン、エチル−n−プロピルケトン、エチルイソプロピルケトン、エチル−n-ブチルケトン、エチルイソブチルケトン、ジ−n−プロピルケトン、ジイソブチルケトン、シクロヘキサノン、メチルシクロヘキサノン、イソホロン等のケトン類、酢酸メチル、酢酸エチル、酢酸−n−プロピル、酢酸イソプロピル、酢酸−n−ブチル、酢酸イソブチル、酢酸ヘキシル、酢酸オクチル等の酢酸エステル類、乳酸メチル、乳酸エチル、乳酸ブチル、乳酸プロピル、乳酸エチルヘキシル、乳酸アミル、乳酸イソアミル等の乳酸エステル類、エチレングリコール、ジエチレングリコール、トリエチレングリコール、プロピレングリコール、ジプロピレングリコール等のグリコール類、n−ヘキサン、イソヘキサン、n−ノナン、イソノナン、ドデカン、イソドデカン等の飽和炭水素類、1−ヘキセン、1−ヘプテン、1−オクテン等の不飽和炭化水素類、シクロヘキサン、シクロヘプタン、シクロオクタン、シクロデカン、デカリン等の環状飽和炭化水素類、シクロヘキセン、シクロヘプテン、シクロオクテン、1,1,3,5,7−シクロオクタテトラエン、シクロドデセン等の環状不飽和炭化水素類、ベンゼン、トルエン、キシレン等の芳香族炭化水素類、3−メチル−2−オキサゾリジノン、3−エチル−2−オキサゾリジノン等の3−アルキル−2−オキサゾリジノン類、N−メチル−2−ピロリドン、N−エチル−2−ピロリドン等のN−アルキルピロリドン類、γ−ブチロラクトン、ε−カプロラクトン等のラクトン類、β−アルコキシプロピオンアミド等の含窒素溶剤、テルペン系溶剤、エーテル系溶剤、および環状イミドなど、一般的な有機溶剤を挙げることができる。
【0086】
中でも、印刷媒体表面を溶解させ、インキの定着性、耐候性等を向上させる点から、3−メチル−2−オキサゾリジノン、3−エチル−2−オキサゾリジノン、N−メチル−2−ピロリドン、N−エチル−2−ピロリドン、γ−ブチロラクトン、ε−カプロラクトン、β−アルコキシプロピオンアミド(エクアミドM100,B100:出光興産社製)が好ましい。
【0087】
前記その他の溶剤の、インキ全量に対する添加量としては1〜12重量%が好ましく、3〜10重量%がより好ましい。
ここで1重量%以上であると、前記溶剤がインキに対し十分であり、インキの定着性、耐候性が良好となる。12重量%以下だと、顔料や分散剤といった材料を溶解することなく、結果としてインキの保存安定性を保つことができるため好ましい。
【0088】
本発明のインキについては、印刷適性や印刷物耐性を高めるため、表面調整剤、スリップ剤、紫外線防止剤、光安定化剤、酸化防止剤、加水分解防止剤といった添加剤を必要に応じて使用することができる。
【0089】
本発明のインキは、顔料、顔料分散剤、有機溶剤の一部をサンドミル等の通常の分散機を用いてよく分散することで、あらかじめ顔料を高濃度に含有する濃縮液を作成したのち、残りの有機溶剤で希釈するとともに、必要に応じてバインダー樹脂やその他の添加剤を混合・溶解させて製造することが好ましい。この方法により通常の分散機による分散においても十分な分散が可能となり、過剰な分散エネルギーを必要とせず、また多大な分散時間を必要としないため、分散時の材料の変質を招きにくく、結果として安定性に優れたインキを作成することができる。
【0090】
本発明のインキは、ヘッドでの詰まりを防止するため、分散後および/またはバインダー樹脂の溶解後に、孔径3μm以下、好ましくは孔径1μm以下のフィルターにて濾過することが好ましい。
【0091】
本発明のインキは、25℃での粘度を3〜20mPa・s、表面張力を15〜40mN/mに調整することが好ましい。この粘度領域であれば、特に通常の4〜10KHzの周波数を有するヘッドから10〜50KHzの高周波数のヘッドにおいても安定した吐出特性を示す。
粘度が3mPa・s以上であれば、高周波数のインクジェットヘッドにおいて、吐出の追随性を保つことができ、20mPa・s以下であれば、吐出量の低下を生じることなく吐出安定性が良好になる。
【0092】
本発明で用いられる印刷基材については特に限定はなく、例えば軟質塩ビ、硬質塩ビ、ポリスチレン、発泡スチロール、PMMA、ポリプロピレン、ポリエチレン、PET、ポリカーボネート等のプラスチック基材やこれらの混合品または変性品、上質紙、アート紙、コート紙、キャストコート紙等の紙基材、ガラス、ステンレス等の金属基材等が挙げられる。本発明では特に、非吸収シート基材に対して好適に用いられ、例えば、軟質塩ビや硬質塩ビといったポリ塩化ビニルシート基材に対して好適に用いられる。
【0093】
本発明のインキのインクジェット記録方法において、例えば、インキを充填したインクジェットプリンター等により、デジタル信号に基づきインクジェットヘッドよりインキ液滴を吐出し、記録媒体に該液滴を付着させることで、インクジェット記録画像が得られる。前記インクジェットプリンターとしては、ドロップオンデマンド型のインクジェット記録装置が好ましい。
【0094】
記録媒体に付着させたインクを素早く確実に乾燥させるため、記録媒体の表面温度を高めて画像形成する方法が好ましい。表面温度は、記録媒体の耐久性や、インキの乾燥性に応じて調節することができ、35〜100℃が好ましく、40〜80℃であることがより好ましい。
【実施例】
【0095】
以下実施例および比較例により本発明をさらに具体的に説明するが、本発明の態様がこれらの例に限定されるものではない。なお以下については、部数は全て重量部を表す。また下記の実施例、比較例の詳細な条件を以下の表1に、結果を表2に示す。
【0096】
また表1に記載した略称は、それぞれ以下の材料を表すものである。
PY83: C.I.ピグメントイエロー83
PY12: C.I.ピグメントイエロー12
PY13: C.I.ピグメントイエロー13
PY14: C.I.ピグメントイエロー14
PY17: C.I.ピグメントイエロー17
PY55: C.I.ピグメントイエロー55
PY174: C.I.ピグメントイエロー174
PY176: C.I.ピグメントイエロー176
PY188: C.I.ピグメントイエロー188
PY150: C.I.ピグメントイエロー150
PY74: C.I.ピグメントイエロー74
PY120: C.I.ピグメントイエロー120
PY151: C.I.ピグメントイエロー151
PV19: C.I.ピグメントバイオレット19
PR122: C.I.ピグメントレッド122
PR146: C.I.ピグメントレッド146
PR48:3: C.I.ピグメントレッド48:3
PB821: 味の素ファインテクノ社製 塩基性分散剤(Mw=45,000)
PB822: 味の素ファインテクノ社製 塩基性分散剤(Mw=50,000)
SP32000: ルーブリゾール社製 塩基性分散剤 ソルスパーズ32000 (Mw =25,000)
SPJ200: ルーブリゾール社製 塩基性分散剤 ソルスパーズJ200 (Mw=15,000)
BGAc: エチレングリコールモノブチルエーテルアセテート
DEDG: ジエチレングリコールジエチルエーテル
MEDG: ジエチレングリコールエチルメチルエーテル
DMTeG: テトラエチレングリコールジメチルエーテル
MOZ: 3−メチル−2−オキサゾリジノン
ECL: ε−カプロラクトン
GBL: γ−ブチロラクトン
E15/45: Wacker Chemie AG社製 塩酢ビ系樹脂
BR87: 三菱レイヨン社製 アクリル系樹脂
BR113: 三菱レイヨン社製 アクリル系樹脂
【0097】
[実施例1]
(イエロー顔料分散体の作成)
イエロー顔料としてC.I.ピグメントイエロー83を20部、塩基性分散剤としてPB821を12部、有機溶剤としてエチレングリコールモノブチルエーテルアセテートを68部混合し、ハイスピードミキサーで均一になるまで撹拌後、得られたミルベースを横型サンドミルで約30分間分散することで、イエロー顔料分散体を得た。
【0098】
(イエローインク組成物の作成)
上記イエロー分散体を10部、バインダー樹脂としてE15/45を5部、溶剤としてエチレングリコールモノブチルエーテルアセテートを80部、ε−カプロラクトンを5部、表2に記載した配合になるように材料を順次撹拌しながら添加・混合し、樹脂が溶解するまで穏やかに混合させた後、孔径1μmのメンブランフィルターで濾過を行い、粗大粒子を除去することでイエローインキを得た。
【0099】
[実施例2〜実施例17]
実施例1と同様に、表2記載の通りにイエローインキを作製した。
【0100】
[比較例1〜比較例4]
実施例1と同様に、表2記載の通りにイエローインキを作製した。なお、イエロー顔料分散体15については、顔料分散体粘度が著しく高く、前記イエロー顔料分散体15を使用したインキを作製することができなかった。
【0101】
(マゼンタ顔料分散体の作成)
表3に記載した材料をハイスピードミキサーで均一になるまで撹拌後、得られたミルベースを横型サンドミルで約30分間分散することで、マゼンタ顔料分散体1〜4を得た。
【0102】
(マゼンタ組成物1の作成)
表4に記載した材料を順次撹拌しながら添加・混合し、樹脂が溶解するまで穏やかに混合させた後、孔径1μmのメンブランフィルターで濾過を行い、粗大粒子を除去することでマゼンタインキ1〜4を得た。
【0103】
上記で作製したインキの評価方法は以下の通りである。
[顔料分散体粘度]
得られたイエロー顔料分散体1〜17を25℃に調整し、東機産業社製TVE25L型粘度計で粘度を測定した。このときの評価基準は以下の通りであり、△以上を顔料分散体粘度良好とする。粘度が低いものほど短時間で分散でき、バインダー樹脂を添加したインクジェットインキを作製することが出来るためである。
○:300mPa・s未満(十分に流動性あり)
△:300mPa・s以上600mPa・s未満(ある程度流動性あり)
×:600mPa・s以上(流動性がない)
【0104】
[インキ保存安定性]
前記インキをスクリュー管瓶(容量約20mL)に20mL取り分け密栓したのち、70℃環境下に1カ月間静置した後に測定した粘度を、作製直後の初期粘度と比較することで、保存安定性の評価を行った。粘度の測定には前記と同様、東機産業社製TVE25L型粘度計を使用した。またこのときの評価基準は以下の通りであり、△以上を経時安定性良好とする。
◎:経時試験後の粘度上昇が、初期粘度と比較して10%未満
○:経時試験後の粘度上昇が、初期粘度と比較して10%以上20%未満
△:経時試験後の粘度上昇が、初期粘度と比較して20%以上30%未満
×:経時試験後の粘度上昇が、初期粘度と比較して30%以上
【0105】
[発色性]
25℃環境下、ColorPainter64S(セイコーアイ・インフォテック社製、大判インクジェットプリンター)のヘッドに前記イエローインク組成物を充填し、表面が無処理のポリ塩化ビニルシート基材に、印字率100%、200%、400%のパッチを印刷した。得られたパッチ印刷物のそれぞれについて、X−Rite社製X−Rite528を使用し、フィルターT条件にて任意の5箇所のOD値を測定し、平均値を求めることで発色性の評価を行った。このときの評価基準は以下の通りとする。また、印字率100%のパッチ印刷物については△以上を、それ以外については○以上を良好と判断する。
◎:ODが1.5以上
○:ODが1.2以上1.5未満
△:ODが0.9以上1.2未満
×:ODが0.9未満
【0106】
[色再現性]
25℃環境下、ColorPainter64S(セイコーアイ・インフォテック社製、大判インクジェットプリンター)のヘッド2個に、それぞれ前記イエローインキ、および前記マゼンタインキを充填した。表面が無処理のポリ塩化ビニルシート基材上の同一箇所に、それぞれ印字率100%ずつベタ印刷を行い、赤色ベタ印刷物を作成した。
得られたベタ印刷物について、X−Rite社製X−Rite528を使用し、視野角2°、光源C、計算方法ハンターにて任意の5箇所のa値およびb値を測定し、平均値を求めた。得られたa値およびb値を用い、下記一般式(11)により彩度Cを算出した。
C=√(a2+b2) 一般式(11)
【0107】
算出した彩度Cを、マゼンタインキごとに比較することで、色再現性の評価を行った。具体的には、非水系インクジェットインキのイエロー顔料として一般的に使用されるPY150を使用したときの彩度(以下CSTDとする)との差分を求めた。このときの評価基準は以下の通りであり、△以上を良好とする。
○:2≦(C−CSTD
△:0≦(C−CSTD)<2
×:(C−CSTD)<0
【0108】
イエロー顔料分散体1〜17の顔料分散体粘度の評価結果を表1に、また実施例1〜17、比較例1〜3で作成した各インク組成物についての評価結果を表5に示した。
【0109】
表5から明らかなように、イエロー顔料としてベンジジン系ジスアゾイエロー顔料(A)を使用した実施例1〜17では、インキの保存安定性、印字率を変えたときの発色性、およびマゼンタインキを変えたときの色再現性のいずれについても良好な結果が得られた。また実施例2〜9では、顔料分散剤やインキ処方を変えたときの保存安定性を調査しているが、こちらについても良好な結果が得られている。
【0110】
一方、比較例1〜3を見ると、特に印字率100%パッチにおける発色性に劣る結果となっており、また比較例2では色再現性の一部についても劣る結果となった。これは、本発明のベンジジン系ジスアゾイエロー顔料(A)が発色性や色再現性の発現に有効であることを示すものである。
【0111】
【表1】
【0112】
【表2】
【0113】
【表3】
【0114】
【表4】
【0115】
【表5】
【産業上の利用可能性】
【0116】
本発明の非水系インクジェットインク組成物は、特に発色性や色再現性に優れていることから、例えば工業用途や産業用途でのインクジェット印刷、特に高画質、高色再現性が求められる印刷に好適に利用することができる。