特許第6390370号(P6390370)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

知財求人 - 知財ポータルサイト「IP Force」

▶ 住友電気工業株式会社の特許一覧

<>
  • 特許6390370-アダプタと光コネクタ結合システム 図000002
  • 特許6390370-アダプタと光コネクタ結合システム 図000003
  • 特許6390370-アダプタと光コネクタ結合システム 図000004
  • 特許6390370-アダプタと光コネクタ結合システム 図000005
  • 特許6390370-アダプタと光コネクタ結合システム 図000006
  • 特許6390370-アダプタと光コネクタ結合システム 図000007
  • 特許6390370-アダプタと光コネクタ結合システム 図000008
  • 特許6390370-アダプタと光コネクタ結合システム 図000009
  • 特許6390370-アダプタと光コネクタ結合システム 図000010
  • 特許6390370-アダプタと光コネクタ結合システム 図000011
  • 特許6390370-アダプタと光コネクタ結合システム 図000012
  • 特許6390370-アダプタと光コネクタ結合システム 図000013
  • 特許6390370-アダプタと光コネクタ結合システム 図000014
  • 特許6390370-アダプタと光コネクタ結合システム 図000015
  • 特許6390370-アダプタと光コネクタ結合システム 図000016
< >
(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6390370
(24)【登録日】2018年8月31日
(45)【発行日】2018年9月19日
(54)【発明の名称】アダプタと光コネクタ結合システム
(51)【国際特許分類】
   G02B 6/36 20060101AFI20180910BHJP
   G02B 6/40 20060101ALI20180910BHJP
   G02B 6/32 20060101ALI20180910BHJP
【FI】
   G02B6/36
   G02B6/40
   G02B6/32
【請求項の数】6
【全頁数】30
(21)【出願番号】特願2014-232172(P2014-232172)
(22)【出願日】2014年11月14日
(65)【公開番号】特開2016-95432(P2016-95432A)
(43)【公開日】2016年5月26日
【審査請求日】2017年6月22日
(73)【特許権者】
【識別番号】000002130
【氏名又は名称】住友電気工業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110001416
【氏名又は名称】特許業務法人 信栄特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】佐々木 大
(72)【発明者】
【氏名】島川 修
(72)【発明者】
【氏名】荒生 肇
(72)【発明者】
【氏名】渡邊 卓朗
(72)【発明者】
【氏名】木村 元佳
【審査官】 野口 晃一
(56)【参考文献】
【文献】 特開平11−344642(JP,A)
【文献】 特開昭57−029023(JP,A)
【文献】 特開2004−145140(JP,A)
【文献】 特表2008−535037(JP,A)
【文献】 国際公開第92/011556(WO,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G02B 6/24
6/255−6/27
6/30−6/34
6/36−6/43
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
第1前端部を有する第1光コネクタが収容される第1キャビティと、
第2前端部を有する第2光コネクタが収容される第2キャビティと、
前記第1キャビティと前記第2キャビティとの間に形成され、第1内壁面と、第2内壁面とを有する第3キャビティと、
を備えた光コネクタ収容部と、
前記第3キャビティに収容されたスペーサと、
を備え、
前記スペーサは、
前記第1前端部と当接するように構成された第1面を有する第1スペーサ部と、
前記第1面と反対側に位置しており、前記第2前端部と当接するように構成された第2面を有する第2スペーサ部と、
前記第1スペーサ部と前記第2内壁面とを弾性的に連結すると共に、前記第2スペーサ部と前記第1内壁面とを弾性的に連結する弾性部材と、
前記第1前端部に設けられた第1光インターフェース部と前記第2前端部に設けられた第2光インターフェース部との間を伝搬する光ビームを透過させるように構成された透光部と、
を有し、
前記第1面は前記第1内壁面に対向すると共に、前記第2面は前記第2内壁面に対向し、
前記第1前端部が前記第1面と当接し、前記第2前端部が前記第2面に当接した状態で、前記第1光インターフェース部と前記第2光インターフェース部は、所定の間隔で互いに対向し、
前記第1光コネクタと前記第2光コネクタが前記スペーサを介して互いに位置決めされる前の第1状態では、前記第1面は前記第1内壁面に当接すると共に、前記第2面は前記第2内壁面に当接し、
前記第1光コネクタと前記第2光コネクタが前記スペーサを介して互いに位置決めされた後の第2状態では、前記第1面は前記第1内壁面から離間すると共に、前記第2面は前記第2内壁面から離間する、
アダプタ。
【請求項2】
前記第2状態における前記第1面と前記第2面との間の距離は、前記第1状態における前記第1面と前記第2面との間の距離よりも小さい請求項に記載のアダプタ。
【請求項3】
前記スペーサは、ガイドピンをさらに有し、
前記ガイドピンが、前記第1光コネクタに形成されたガイド穴と前記第2光コネクタに形成されたガイド穴に挿入された状態で、前記第1光コネクタと前記第2光コネクタは互いに位置決めされている請求項1又は2に記載のアダプタ。
【請求項4】
第1光ファイバの端部を保持する第1保持部と、
前記第1光ファイバと光学的に結合された第1光インターフェース部を有する第1前端部と、を備える第1フェルールと、
前記第1フェルールを収容する第1ハウジングと、
を備えた第1光コネクタと、
第2光ファイバの端部を保持する第2保持部と、
前記第2光ファイバと光学的に結合された第2光インターフェース部を有する第2前端部と、を備える第2フェルールと、
前記第2フェルールを収容する第2ハウジングと、
を備え、前記第1光コネクタと対向配置される第2光コネクタと、
請求項1から3うちのいずれか一項に記載のアダプタと、
を備え、
前記第1光インターフェース部は、前記第1光コネクタが前記アダプタに挿入される挿入方向において、前記第1ハウジングから突出しており、
前記第2光インターフェース部は、前記第2光コネクタが前記アダプタに挿入される挿入方向において、前記第2ハウジングから突出している光コネクタ結合システム。
【請求項5】
前記アダプタは、前記第1ハウジング及び前記第2ハウジングと係合しており、
前記第1フェルールと前記第2フェルールが互いに位置決め及び結合された状態で、前記第1フェルールは、前記第1ハウジングに対して相対移動可能となるように前記第1ハウジングに収容されていると共に、前記第2フェルールは、前記第2ハウジングに対して相対移動可能となるように前記第2ハウジングに収容されている請求項に記載の光コネクタ結合システム。
【請求項6】
前記第1光インターフェース部は、前記第1光ファイバと光学的に結合され、前記第1光ファイバから出射された光ビームを拡大するように構成され、
前記第2光インターフェース部は、前記第2光ファイバと光学的に結合され、前記第1光インターフェース部から出射された光ビームを前記第2光ファイバに集光するように構成され、
前記第1光ファイバおよび前記第2光ファイバは、シングルモード光ファイバであり、
前記スペーサは、マルチモード光ファイバ用のガイドピンをさらに有し、
前記ガイドピンが、前記第1光コネクタに形成されたガイド穴と前記第2光コネクタに形成されたガイド穴に挿入された状態で、前記第1光コネクタと前記第2光コネクタは互いに位置決めされる請求項又はに記載の光コネクタ結合システム。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、アダプタと光コネクタ結合システムに関する。
【背景技術】
【0002】
複数の光ファイバを保持する2つのフェルールと、2つのフェルールを対向配置した状態で、2つのフェルールを収容するアダプタとを備えたマルチファイバレンズ付きフェルールアセンブリが知られている(例えば、特許文献1参照)。特許文献1に開示されたフェルールアセンブリでは、2つのフェルールは、各フェルールの端面が互いに当接するように対向配置されることで、互いに位置決めされる。
一方、光ファイバと光学的に結合されるレンズが形成された2つの光インターフェース部を互いに光学的に結合するためには、両者の間に所定の間隔が必要となるため、各光インターフェース部は、フェルール端面から凹んだ位置に設ける必要がある。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】国際公開第2012/174227号
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、特許文献1に開示されたフェルールアセンブリのフェルールでは、光インターフェース面がフェルール端面から凹んだ位置に設けられているため、光インターフェース面に溜まったゴミ等を除去することが困難となり、光インターフェース面の清掃に大きな手間がかかってしまう。このように、フェルールのメンテナンスに大きな負荷がかかってしまう。さらに、このようなフェルールアセンブリでは、フェルールの端面に凹部を設ける必要があるといった制約がある。
【0005】
本発明は、光コネクタの設計自由度を高くすることができるアダプタを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明の一態様のアダプタは、
第1前端部を有する第1光コネクタが収容される第1キャビティと、
第2前端部を有する第2光コネクタが収容される第2キャビティと、を備えた光コネクタ収容部と、
前記第1前端部と当接するように構成された第1面と、
前記第1面と反対側に位置しており、前記第2前端部と当接するように構成された第2面と、
前記第1前端部に設けられた第1光インターフェース部と前記第2前端部に設けられた第2光インターフェース部との間を伝搬する光ビームを透過させるように構成された透光部と、
を有し、前記第1キャビティと前記第2キャビティとの間に配置されるスペーサと、
を備え、
前記第1前端部が前記第1面と当接し、前記第2前端部が前記第2面に当接した状態で、第1光インターフェース部と第2光インターフェース部は、所定の間隔で互いに対向する。
【発明の効果】
【0007】
本発明によれば、光コネクタの設計自由度を高くすることができるアダプタを提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0008】
図1】本発明の第1実施形態に係るアダプタを備えた光コネクタ結合システムを示す分解斜視図である。
図2】第1光コネクタを示す分解斜視図である。
図3図2に示された第1フェルール及びその近傍を示す拡大斜視図である。
図4】第1光インターフェース部を第1フェルールに固定する工程を説明するための斜視図である。
図5】第1実施形態に係るアダプタを示す分解斜視図である。
図6】第1実施形態に係るアダプタにおけるスペーサの分解斜視図である。
図7】第1光コネクタと第2光コネクタがスペーサを介して互いに位置決めされる前の状態(第1状態)を示す光コネクタ結合システムの断面図である。
図8】第1光コネクタと第2光コネクタがスペーサを介して互いに位置決めされた後の状態(第2状態)を示す光コネクタ結合システムの断面図である。
図9図8に示した第1光ファイバと第2光ファイバとの間の光結合を説明するための模式図である。
図10】第1実施形態に係るアダプタの第1変形例におけるスペーサの分解斜視図である。
図11】第1変形例に係るアダプタを示す断面図であって、(a)第1光コネクタと第2光コネクタがスペーサを介して互いに位置決めされる前の状態(第1状態)におけるアダプタを示す断面図であり、(b)第1光コネクタと第2光コネクタがスペーサを介して互いに位置決めされた後の状態(第2状態)におけるアダプタを示す断面図である。
図12】第1実施形態に係るアダプタの第2変形例を示す断面図であって、(a)第1状態におけるアダプタを示す断面図であり、(b)第2状態におけるアダプタを示す断面図である。
図13】第1実施形態に係るアダプタの第3変形例を示す断面図である。
図14】第3変形例に係るアダプタに収容される第1光コネクタの第1フェルール及びその近傍を示す斜視図である。
図15図14に示した第1フェルール及びその近傍の断面斜視図である。
【発明を実施するための形態】
【0009】
[本発明の実施形態の説明]
本発明の実施形態の概要を説明する。
(1)第1前端部を有する第1光コネクタが収容される第1キャビティと、
第2前端部を有する第2光コネクタが収容される第2キャビティと、を備えた光コネクタ収容部と、
前記第1前端部と当接するように構成された第1面と、
前記第1面と反対側に位置しており、前記第2前端部と当接するように構成された第2面と、
前記第1前端部に設けられた第1光インターフェース部と前記第2前端部に設けられた第2光インターフェース部との間を伝搬する光ビームを透過させるように構成された透光部と、
を有し、前記第1キャビティと前記第2キャビティとの間に配置されるスペーサと、
を備え、
前記第1前端部が前記第1面と当接し、前記第2前端部が前記第2面に当接した状態で、第1光インターフェース部と第2光インターフェース部は、所定の間隔で互いに対向するアダプタ。
【0010】
上記構成によれば、光コネクタの設計自由度を高くすることができるアダプタを提供することができる。
【0011】
(2)前記光コネクタ収容部は、前記第1キャビティと前記第2キャビティとの間に形成された第3キャビティをさらに備え、
前記スペーサは、前記第3キャビティに収容されており、
前記第1光コネクタと前記第2光コネクタが前記スペーサを介して互いに位置決めされる前の第1状態では、前記スペーサの第1面及び第2面は、前記第3キャビティを規定する内壁面と当接し、
前記第1光コネクタと前記第2光コネクタが前記スペーサを介して互いに位置決めされた後の第2状態では、前記スペーサの第1面及び第2面は、前記内壁面から離間する項目(1)に記載のアダプタ。
【0012】
上記構成によれば、外力に対する信頼性が改善されたアダプタを提供することができる。
【0013】
(3)前記第2状態における前記第1面と前記第2面との間の距離は、前記第1状態における前記第1面と前記第2面との間の距離よりも小さい項目(2)に記載のアダプタ。
【0014】
上記構成によれば、外力に対する信頼性が改善されたアダプタを提供することができる。
【0015】
(4)前記スペーサは、
前記第1面を有する第1スペーサ部と、
前記第2面を有する第2スペーサ部と、
前記第1スペーサ部と前記第2スペーサ部とを弾性的に連結するスペーサ弾性部材と、をさらに有する項目(2)又は項目(3)に記載のアダプタ。
【0016】
上記構成によれば、比較的簡易なスペーサ構造によって、スペーサの第1面及び第2面が第3キャビティの内壁面から当接する状態又は離間する状態を実現することができる。
【0017】
(5)前記第3キャビティの内壁面は、前記第1面と対向する第1内壁面と、前記第2面と対向する第2内壁面とを有し、
前記スペーサは、
前記第1面を有する第1スペーサ部と、
前記第2面を有する第2スペーサ部と、
前記第1スペーサ部と前記第2内壁面とを弾性的に連結すると共に、前記第2スペーサ部と前記第1内壁面とを弾性的に連結する弾性部材と、をさらに有する項目(2)又は項目(3)に記載のアダプタ。
【0018】
上記構成によれば、取扱いが容易なアダプタを提供することができる。
【0019】
(6)前記スペーサは、ガイドピンをさらに有し、
前記ガイドピンが、前記第1光コネクタに形成されたガイド穴と前記第2光コネクタに形成されたガイド穴に挿入された状態で、第1光コネクタと第2光コネクタは互いに位置決めされている項目(1)から項目(5)のいずれか一に記載のアダプタ。
【0020】
上記構成によれば、このようなアダプタを用いることで、光コネクタの設計自由度をさらに高くすることができる。
【0021】
(7)第1光ファイバの端部を保持する第1保持部と、
前記第1光ファイバと光学的に結合された第1光インターフェース部を有する第1前端部と、を備える第1フェルールと、
前記第1フェルールを収容する第1ハウジングと、
を備えた第1光コネクタと、
第2光ファイバの端部を保持する第2保持部と、
前記第2光ファイバと光学的に結合された第2光インターフェース部を有する第2前端部と、を備える第2フェルールと、
前記第2フェルールを収容する第2ハウジングと、
を備え、前記第1光コネクタと対向配置される第2光コネクタと、
項目(1)から項目(6)のいずれか一に記載のアダプタと、
を備え、
前記第1光インターフェース部は、前記第1光コネクタが前記アダプタに挿入される挿入方向において、前記第1ハウジングから突出しており、
前記第2光インターフェース部は、前記第2光コネクタが前記アダプタに挿入される挿入方向において、前記第2ハウジングから突出している光コネクタ結合システム。
【0022】
上記構成によれば、光コネクタの設計自由度を高くすることができる光コネクタ結合システムを提供することができる。
【0023】
(8)前記アダプタは、前記第1ハウジング及び前記第2ハウジングと係合しており、
前記第1フェルールと前記第2フェルールが互いに位置決め及び結合された状態で、前記第1フェルールは、前記第1ハウジングに対して相対移動可能となるように前記第1ハウジングに収容されていると共に、前記第2フェルールは、前記第2ハウジングに対して相対移動可能となるように前記第2ハウジングに収容されている項目(7)に記載の光コネクタ結合システム。
【0024】
上記構成によれば、信頼性が改善されたアダプタを提供することができる。
【0025】
(9)前記第1光インターフェース部は、前記第1光ファイバと光学的に結合され、前記第1光ファイバから出射された光ビームを拡大するように構成され、
前記第2光インターフェース部は、前記第2光ファイバと光学的に結合され、前記第1光インターフェース部から出射された光ビームを前記第2光ファイバに集光するように構成され、
前記第1光ファイバおよび前記第2光ファイバは、シングルモード光ファイバであり、
前記スペーサは、マルチモード光ファイバ用のガイドピンをさらに有し、
前記ガイドピンが、前記第1光コネクタに形成されたガイド穴と前記第2光コネクタに形成されたガイド穴に挿入された状態で、第1光コネクタと第2光コネクタは互いに位置決めされる項目(7)又は項目(8)に記載の光コネクタ結合システム。
【0026】
上記構成によれば、製造コストを低減できる光コネクタ結合システムを提供することができる。
【0027】
(10)前記アダプタは項目(4)に記載のアダプタであって、
前記第1光コネクタは、前記第1前端部が前記スペーサの第1面と当接するように前記第1フェルールを押圧するように構成された第1弾性部材をさらに有し、
前記第2光コネクタは、前記第2前端部が前記スペーサの第2面と当接するように前記第2フェルールを押圧するように構成された第2弾性部材をさらに有し、
前記第2状態において、前記第1弾性部材及び前記第2弾性部材の弾性力は、前記スペーサ弾性部材の弾性力よりも大きい項目(7)又は項目(8)に記載の光コネクタ結合システム。
【0028】
上記構成によれば、互いに対向配置された光コネクタ間の光結合を確実に行うことができる光コネクタ結合システムを提供することができる。
【0029】
[本発明の実施形態の詳細]
(第1実施形態)
以下、本発明の第1実施形態について図面を参照しながら説明する。尚、本実施形態の説明において既に説明された部材と同一の参照番号を有する部材については、説明の便宜上、その説明は省略する。また、本図面に示された各部材の寸法は、説明の便宜上、実際の各部材の寸法とは異なる場合がある。
【0030】
また、本実施形態の説明では、本実施形態の理解を容易にするために、適宜、X軸方向、Y軸方向、Z軸方向について言及する。尚、これらの方向は、図1に示された光コネクタ結合システム1に設定された相対的な方向である。従って、図1に示された光コネクタ結合システム1が所定方向に回転した場合には、それに従って、X軸方向、Y軸方向、Z軸方向のうち少なくとも一つの軸方向が変化することに留意が必要である。
【0031】
ここで、X軸方向は、+X方向(+方向をベクトルの向きとする)及び−X方向を含む方向である。同様に、Y軸方向は、+Y向及び−Y方向を含む方向であって、Z軸方向は、+Z方向及び−Z方向を含む方向である。尚、特定の方向(ベクトル)を説明する場合には、適宜、+X方向、−Y方向等として明示する。
【0032】
図1は、本発明の第1実施形態に係るアダプタ2を備えた光コネクタ結合システム1を示す分解斜視図である。図1に示すように、光コネクタ結合システム1は、光ケーブル50と、光ケーブル150と、第1光コネクタ10と、第2光コネクタ100と、アダプタ2とを備える。
【0033】
第1光コネクタ10は、ブーツ20と、第1ハウジング30と、第1フェルール40とを備える。第2光コネクタ100は、ブーツ120と、第2ハウジング130と、第2フェルール140とを備える。本実施形態では、第2光コネクタ100は、第1光コネクタ10と同一の構成を有する。従って、以下の説明では、第1光コネクタ10の構造についてのみ説明する。また、第1光コネクタ10に接続される光ケーブル50は、第2光コネクタ100に接続される光ケーブル150と同一の構成を有する。
【0034】
アダプタ2は、第1光コネクタ10及び第2光コネクタ100が互いに対向した状態で、第1光コネクタ10及び第2光コネクタ100を収容するように構成されている。第1光コネクタ10及び第2光コネクタ100がアダプタ2に収容された状態で、第1ハウジング30と第2ハウジング130はアダプタ2に係合される。
【0035】
図2は、第1光コネクタ10を示す分解斜視図である。図2に示すように、第1光コネクタ10は、バネ70(第1弾性部材)と、ラッチ90とをさらに備えている。
【0036】
ラッチ90は、ブーツ20と接続されており、第1ハウジング30と係合するように構成されている。バネ70は、第1フェルール40に弾性力を+Z方向に付与するように構成されている。第1ハウジング30がラッチ90と係合することで、第1ハウジング30は、第1フェルール40及びバネ70を収容する。
【0037】
次に、図3及び図4を参照して、第1フェルール40について説明する。図3は、図2に示された第1フェルール40及びその近傍を示す拡大斜視図である。図4は、第1レンズアレイ80を第1フェルール40に固定する工程を説明するための斜視図である。
【0038】
光ケーブル50は、X軸方向に平行に配列された複数の第1光ファイバ52と、複数の第1光ファイバ52を一体的に被覆する被覆53とを備えている。本実施形態では、光ケーブル50は、Y軸方向において2段に積み重ねられた状態で第1フェルール40によって保持されている。尚、以下の説明では、説明の便宜上、2段に積み重ねられた光ケーブル50は、特に区別することなく、単に光ケーブル50として説明する。
【0039】
光ケーブル50の端部では、複数の第1光ファイバ52は、被覆53から露出している。第1光ファイバ52は、光が伝搬するコア層と、コア層を覆うクラッド層から構成される。本実施形態では、第1光ファイバ52はシングルモード光ファイバであるが、マルチモード光ファイバを適用してもよい。
【0040】
第1フェルール40は、第1光ファイバ52の端部を保持する第1本体部45と、第1レンズアレイ80(第1前端部)とを備える。第1本体部45は、窓部41と、X軸方向に平行に配列した複数の光ファイバ保持孔42と、一対のガイドピン挿入穴44と、後端部47とを有する。図3に示された第1本体部45は、MT型フェルールであるが、第1本体部45の形状はこれには限定されない。後端部47は、略直方体形状に形成されており、光ケーブル50が挿入される挿入口(図示せず)が光ファイバ保持孔42と連通するように設けられている。
【0041】
図4に示すように、各光ファイバ保持孔42及び一対のガイドピン挿入穴44は、Z軸方向に延びるように第1本体部45に形成されている。被覆53から露出し単芯分離した各第1光ファイバ52は、対応する光ファイバ保持孔42に挿通されることで、第1本体部45の前面48に向けてガイドされる。各第1光ファイバ52は、窓部41から供給された接着剤によって第1フェルール40に固定される。このように、各第1光ファイバ52は、対応する光ファイバ保持孔42によって保持される。
また、前面48が例えば研磨処理されることにより、各第1光ファイバ52の端面が第1フェルール40の前面48と面一とされる。
【0042】
第1レンズアレイ80は、第1光ファイバ52から出射された光ビームを拡大して出射する第1光インターフェース部IF−1と、一対のガイド穴84とを有する。第1光インターフェース部IF−1は、X軸方向に平行に配列した複数のGRIN(Gradient−Index)レンズ82を有する。また、第1レンズアレイ80は、前面88aと、前面88aと反対側に位置する後面88bとを有する。GRINレンズ82は、Z軸方向において前面88aから後面88bまで延びるように第1レンズアレイ80内に保持されている。前面88aと後面88bは、研磨等の平滑化処理がなされている。
【0043】
第1レンズアレイ80は、後面88bが第1本体部45の前面48と接触するように、第1本体部45上に配置される。第1レンズアレイ80が前面48上に配置された状態では、各GRINレンズ82は、対応する光ファイバ保持孔42に収容された第1光ファイバ52の端面に対して位置決めされている。
【0044】
GRINレンズ82は、その中心部分から外周に向かって徐々に屈折率が変化するように構成されている。また、GRINレンズ82は、第1光ファイバ52から出射された光ビームを拡大するように構成されている。例えば、GRINレンズ82は、第1光ファイバ52から出射された発散光をコリメートし、平行光を+Z方向に向けて出射するように構成されている。さらに、GRINレンズ82は、第2光インターフェース部IF−2から第1光インターフェース部IF−1のGRINレンズ82に入射した平行光である光ビームを集光し、第1光ファイバ52に結合させるように構成されている。
【0045】
次に、図4を参照して、第1レンズアレイ80を第1本体部45の前面48上に配置する工程を説明する。一対の治具ガイドピン12の各々を、対応するガイドピン挿入穴44とガイド穴84に挿入した状態で、第1レンズアレイ80を前面48上に仮置きする。この状態で、各GRINレンズ82は、対応する第1光ファイバ52の端面と位置決めされている。その後、第1レンズアレイ80の後面88bと第1本体部45の前面48との間に接着剤を供給することで、接着剤を介して第1レンズアレイ80を第1本体部45に固定する。最後に、一対の治具ガイドピン12の各々を、対応するガイドピン挿入穴44とガイド穴84から取り出す。
【0046】
このように、各GRINレンズ82は、対応する第1光ファイバ52の端面に対して位置決めされるので、各GRINレンズ82は、対応する第1光ファイバ52と光学的に結合される。さらに、各ガイド穴84は、対応するガイドピン挿入穴44に対して位置決めされるので、各ガイド穴84は、対応するガイドピン挿入穴44と連通する。
【0047】
第1光ファイバ52とGRINレンズ82との間の軸ずれは、GRINレンズ82から出射する光ビーム若しくはGRINレンズ82から第1光ファイバ52に入射する光ビームの角度ずれを引き起こすので、光学特性への影響が大きい。従って、治具ガイドピン12としては、シングルモード光ファイバ用のガイドピンが使用されることが好ましい。
【0048】
シングルモード光ファイバ用のガイドピンは、ガイドピンの軸方向の各位置における外径の所定の設計値に対する誤差が±0.5μm以下となるような精度で製造されている。治具ガイドピン12の直径は、軸方向において外径変動が生じた場合には軸方向の外径の平均値を指す。このように、シングルモード光ファイバ用のガイドピンを用いることで、第1光ファイバ52の端面とGRINレンズ82との間の位置ずれを±0.5μm以内に抑えることができる。このとき、治具ガイドピン12の直径とガイドピン挿入穴44及びガイド穴84の内径との差は、例えば1μm以下とすることができる。これにより、第1本体部45のガイドピン挿入穴44と第1レンズアレイ80のガイドピン挿入穴44の中心位置のずれを例えば1μm以下とし、第1本体部45と第1レンズアレイ80とを精度良く位置決めできる。また、このように高精度な治具ガイドピン12であっても、第1フェルール40を製造した後に、別の第1フェルール40の製造に再使用できるので、製造コストの低減が可能である。
【0049】
次に、図5を参照して、アダプタ2について説明する。図5は、図1に示したアダプタ2の分解斜視図である。図5に示すように、アダプタ2は、光コネクタ収容部28と、スペーサ60とを有する。光コネクタ収容部28は、第1光コネクタ収容部21と、第2光コネクタ収容部22とを有する。第1光コネクタ収容部21は、第1光コネクタ10が収容される第1キャビティ25を有する。第2光コネクタ収容部22は、第2光コネクタ100が収容される第2キャビティ23を有する。第1光コネクタ収容部21と第2光コネクタ収容部22は、スペーサ60を収容するように互いに位置決め及び固定されることで、光コネクタ収容部28を形成する。
【0050】
スペーサ60は、第1キャビティ25と第2キャビティ23との間に配置されるように、光コネクタ収容部28に収容される。スペーサ60は、第1スペーサ部61aと、第2スペーサ部61bと、一対のガイドピン63とを備える。また、スペーサ60は、Z軸方向に延びる開口部65(透光部の一例)を有する。
【0051】
図6及び図7を参照してスペーサ60の構造についてさらに説明する。図6は、スペーサ60の分解斜視図を示している。図6に示すように、第1スペーサ部61aと第2スペーサ部61bは同一の構成を有する。第1スペーサ部61aは、外面64a(スペーサ60の第1面)と、内面66aと、凹部68aと、開口部65aとを有する。スペーサ60の第1面として機能する外面64aは、最外面64aAと、凹部68aの底面64aBとを有する。
【0052】
内面66aは、外面64aとは反対側に位置している。略直方体形状の凹部68aは、第1スペーサ部61aの最外面64aAに形成されており、開口部65aと連通している。開口部65aのX軸方向における両端には、ガイドピン63を保持するためのガイドピン保持穴69aが形成されており、各ガイドピン保持穴69aは、開口部65aと連通している。開口部65aは、スペーサ60の開口部65の一部を構成する。
【0053】
第2スペーサ部61bは、外面64b(スペーサ60の第2面)と、内面66bと、凹部68b(図7参照)と、開口部65bと、板バネ収容部62bとを有する。スペーサ60の第2面として機能する外面64bは、図7に示すように、最外面64bAと、凹部68bの底面64bBとを有する。
【0054】
内面66bは、外面64bとは反対側に位置していると共に、第1スペーサ部61aの内面66aと対向している。凹部68aと同じ形状を有する凹部68b(図7参照)は、第2スペーサ部61bの最外面64bAに形成されており、開口部65bと連通している。開口部65bのX軸方向における両端には、ガイドピン63を保持するためのガイドピン保持穴69bが形成されており、各ガイドピン保持穴69bは、開口部65bと連通している。開口部65bは、スペーサ60の開口部65の一部を構成する。
【0055】
また、スペーサ60は、凸状に折れ曲がっており弾性を呈する板バネ67c,67d(スペーサ弾性部材)をさらに備える。板バネ67c,67dは、第1スペーサ部61aと第2スペーサ部61bとを弾性的に連結するように構成されている。
【0056】
第1スペーサ部61aと第2スペーサ部61bがガイドピン63を介して互いに連結されると、第2スペーサ部61bの2つの板バネ収容部62bと第1スペーサ部61aの2つの板バネ収容部(図示せず)によって、板バネ67c,67dを収容する2つの板バネ収容空間が形成される。このように、板バネ67c,67dが板バネ収容空間に収容された状態で、第1スペーサ部61aと第2スペーサ部61bは、板バネ67c,67dを介して互いに弾性的に連結される。
【0057】
また、スペーサ60において、Z軸方向の押圧力が第1スペーサ部61aと第2スペーサ部61bに付与されない場合、第1スペーサ部61aと第2スペーサ部61bは互いに離間した状態で対向配置されている。一方、+Z方向の押圧力が第1スペーサ部61aに付与される及び/又は−Z方向の押圧力が第2スペーサ部61bに付与されると、板バネ67c,67dは弾性変形して、X軸方向に伸長すると共にZ軸方向の幅寸法が小さくなる。このように、板バネ67c,67dの弾性変形によって、第1スペーサ部61aと第2スペーサ部61bとの間の距離を縮めることができる。
【0058】
Z軸方向の押圧力をさらに大きくしていくと、板バネ67c,67dはさらにX軸方向に伸長するように弾性変形する。この結果、第1スペーサ部61aの内面66aと第2スペーサ部61bの内面66bが互いに当接する。この状態で、板バネ67c,67dは板バネ収容空間に完全に収容される。
【0059】
また、ガイドピン63は、マルチモード光ファイバ用のガイドピンであって、ガイドピンの軸方向の各位置における外径の所定の設計値に対する誤差が±1.0μm以下となるような精度で製造されている。マルチモード光ファイバ用のガイドピンを用いる利点については後述する。
【0060】
次に、図7及び図8を参照して、第1光コネクタ10の第1フェルール40と第2光コネクタ100の第2フェルール140が互いに位置決めされる前後の状態について説明する。図7は、光コネクタ結合システム1のY軸方向に垂直な断面図であって、第1フェルール40と第2フェルール140がスペーサ60を介して互いに位置決めされる前の状態(単に、「第1状態」と称することがある)を示している。図8は、光コネクタ結合システム1のY軸方向に垂直な断面図であって、第1フェルール40と第2フェルール140がスペーサ60を介して互いに位置決めされた後の状態(単に、「第2状態」と称することがある)を示している。
【0061】
図7に示すように、第1光コネクタ収容部21と第2光コネクタ収容部22が連結されると、第3キャビティ26が形成される。このように、光コネクタ収容部28は、第1キャビティ25と第2キャビティ23との間に第3キャビティ26をさらに備える。
図5及び図7に示すように、第3キャビティ26は、第1内壁面26aと、第2内壁面26bと、第3内壁面26cと、第4内壁面26dと、第5内壁面26eと、第6内壁面26fとを有している。第3内壁面26c及び第5内壁面26eは、第1内壁面26aに対して傾斜しており、第1内壁面26aから連続的に形成されている。第4内壁面26d及び第6内壁面26fは、第2内壁面26bに対して傾斜しており、第2内壁面26bから連続的に形成されている。第3内壁面26cと第4内壁面26dは、第1光コネクタ収容部21と第2光コネクタ収容部22との間の境界部分において交差する。第3キャビティ26のX軸方向における幅は、Z軸方向において第1光コネクタ収容部21と第2光コネクタ収容部22との間の境界部分に近づくにつれて、大きくなるように設定されている。第3キャビティ26はYZ面内においても同様の形状を有しており、第3キャビティ26のY軸方向における幅は、Z軸方向において当該境界部分に近づくにつれて、大きくなるように設定されている。
【0062】
スペーサ60は、第3キャビティ26内に収容されている。第1スペーサ部61aの最外面64aAは、第1内壁面26aと対向している。一方、第2スペーサ部61bの最外面64bAは、第2内壁面26bと対向している。
【0063】
図7に示された光コネクタ結合システム1では、第1光コネクタ10は、第1キャビティ25に収容されている。第2光コネクタ100は、第2キャビティ23に収容されている。第1光コネクタ10と第2光コネクタ100は、スペーサ60を介して対向している。第2光コネクタ100は、第1光コネクタ10と同一の構成を有する。
【0064】
第2光コネクタ100は、第1光コネクタ10と同様に、第2フェルール140と、第2ハウジング130と、バネ170(第2弾性部材)とを備える。第2フェルール140は、第2本体部145と、第2レンズアレイ180とを備える。第2ハウジング130は、第2フェルール140及びバネ170を収容する。
【0065】
光ケーブル150は、X軸方向に平行に配列された複数の第2光ファイバ152と、複数の第2光ファイバ152を一体的に被覆する被覆153とを有する。第2フェルール140は、第2光ファイバ152の端部を保持する光ファイバ保持孔(図示せず)を有する第2本体部145を備える。第2本体部145は、前端に一対のガイドピン挿入穴144を有する。第2レンズアレイ180は、Z軸方向において第2本体部145上に配置されており、第2光ファイバ152から出射された光ビームを拡大して出射する第2光インターフェース部IF−2(図9を参照)と、一対のガイド穴184(第2ガイド部)とを有する。第2光インターフェース部IF−2は、GRINレンズ182(図9を参照)を有する。各ガイド穴184は、Z軸方向において第2レンズアレイ180を貫通し、対応するガイドピン挿入穴144に対して位置決めされて連通している。
【0066】
第1状態では、スペーサ60は、第3キャビティ26内で、X軸方向,Y軸方向,Z軸方向における位置が規制されている。図7に示すように、第1スペーサ部61aの最外面64bAと第2スペーサ部61bの最外面64aAは、第3キャビティ26を規定する第1内壁面26a及び第2内壁面26bとそれぞれ当接し、Z軸方向における位置が規制されている。また、第1スペーサ部61aと第2スペーサ部61bは、第3内壁面26cおよび第4内壁面26dによってX軸方向における位置がそれぞれ規制されていると共に、第5内壁面26e及び第6内壁面26fによってY軸方向における位置がそれぞれ規制されている。
スペーサ60の外面64aと外面64bとの間のZ軸方向における距離(具体的には、最外面64aAと最外面64bAとの間の距離)は、d1となっている。また、第1状態では、第1スペーサ部61aと第2スペーサ部61bは、板バネ67c,67dを介して互いに離間している。
【0067】
図7に示す状態から、第1光コネクタ10を+Z方向に移動させると共に、第2光コネクタ100を−Z方向に移動させることで、第1光コネクタ10の一対のガイド穴84とガイドピン挿入穴44の各々に、対応するガイドピン63を挿入させると共に、第2光コネクタ100の一対のガイド穴184とガイドピン挿入穴144の各々に、対応するガイドピン63を挿入させる。さらに、第1光コネクタ10を+Z方向に移動させると、第1レンズアレイ80の前面88aは、第1スペーサ部61aの底面64aBに当接する。同様に、第2光コネクタ100を−Z方向に移動させると、第2レンズアレイ180の前面188aは、第2スペーサ部61bの底面64bBに当接する。
【0068】
このように、図8に示すように、第1レンズアレイ80が第1スペーサ部61aの底面64aBと当接し、第2レンズアレイ180が第2スペーサ部61bの底面64bBに当接した状態で、第1光インターフェース部IF−1と第2光インターフェース部IF−2は、所定の間隔で互いに対向配置される。所定の間隔は、例えばZ軸方向における第1スペーサ部61aの底面64aBと第2スペーサ部61bの底面64bBとの間の距離d3となる。
【0069】
この状態では、第1光コネクタ10と第2光コネクタ100は、スペーサ60のガイドピン63を介して互いに位置決めされている。さらに、第1光ファイバ52は、第1光インターフェース部IF−1、スペーサ60の開口部65及び第2光インターフェース部IF−2を介して、第2光ファイバ152に光学的に結合されている。ここで、スペーサ60の開口部65は、第1光インターフェース部IF−1と第2光インターフェース部IF−2との間を伝搬する光ビームを透過させるように構成されている。
【0070】
また、第2状態では、第1スペーサ部61aの最外面64aAと第2スペーサ部61bの最外面64bAは、第3キャビティ26を規定する第1内壁面26a及び第2内壁面26bとそれぞれ離間している。スペーサ60の外面64aと外面64bとの間のZ軸方向における距離(具体的には、最外面64aAと最外面64bAとの間の距離)は、d1よりも小さいd2となる。また、第3キャビティ26のX軸方向およびY軸方向における幅は、Z軸方向において第1光コネクタ収容部21と第2光コネクタ収容部22との間の境界部分に近づくにつれて、大きくなるように設定されている。従って、第1スペーサ部61aと第2スペーサ部61bは、第3内壁面26cおよび第4内壁面26dとX軸方向においてクリアランスを有するようにそれぞれ配置されていると共に、第5内壁面26eおよび第6内壁面26fとY軸方向においてクリアランスを有するようにそれぞれ配置されている。また、第1スペーサ部61aの内面66aと第2スペーサ部61bの内面66bは互いに当接している。
【0071】
このように、距離d3は、スペーサ部61a,61bの厚さ及び凹部68a,68bの深さによって適宜設定することが可能となる。
【0072】
また、第2状態では、第1ハウジング30の係合部34は、アダプタ2の第1係合部24aと互いに係合すると共に、第2ハウジング130の係合部134は、アダプタ2の第2係合部24bと互いに係合する。このように、第1光コネクタ10と第2光コネクタ100は、アダプタ2に係合される。
【0073】
また、第2状態では、第1光コネクタ10のバネ70は、第1レンズアレイ80がスペーサ60の外面64a(具体的には、底面64aB)と当接するように、第1フェルール40を押圧している。同様に、第2光コネクタ100のバネ170は、第2レンズアレイ180がスペーサ60の外面64b(具体的には、底面64bB)と当接するように、第2フェルール140を押圧している。
【0074】
(本実施形態に係るアダプタ2と光コネクタ結合システム1の作用効果)
次に、本実施形態に係るアダプタ2及び光コネクタ結合システム1の作用効果について以下に説明する。
【0075】
本実施形態に係るアダプタ2によれば、第1レンズアレイ80をスペーサ60の外面64a(第1面)と当接させると共に、第2レンズアレイ180をスペーサ60の外面64b(第2面)と当接させる。これにより、第1光インターフェース部IF−1と第2光インターフェース部IF−2を所定の間隔(本実施形態では距離d3)で互いに対向させた状態で、第1光コネクタ10と第2光コネクタ100とを光学的に結合させることができる。
【0076】
これにより、第1光インターフェース部IF−1及び第2光インターフェース部IF−2の形成位置に関係なく、第1光インターフェース部IF−1と第2光インターフェース部IF−2を所定の間隔で互いに対向させることができる。例えば、本実施形態のように、第1光インターフェース部IF−1及び第2光インターフェース部IF−2が、それぞれ光コネクタ10及び第2光コネクタ100の端面である前面88a及び前面188aと面一である場合でも、第1光インターフェース部IF−1と第2光インターフェース部IF−2を所定の間隔で互いに対向させることができる。従って、光コネクタの設計自由度を高くすることができるアダプタ2を提供することができる。
【0077】
また、図7及び図8に示す光コネクタ結合システム1では、第1レンズアレイ80は、第1光コネクタ10がアダプタ2に挿入される挿入方向(+Z方向)において、第1ハウジング30から突出している。また、第2レンズアレイ180は、第2光コネクタ100がアダプタ2に挿入される挿入方向(−Z方向)において、第2ハウジング130から突出している。このため、第1レンズアレイ80及び第2レンズアレイ180をそれぞれスペーサ60の外面64a,64bに確実に当接させることができる。
【0078】
また、図7に示された第1状態では、第1スペーサ部61aは、第3キャビティ26の第1内壁面26a、第3内壁面26c及び第5内壁面26eに当接している。さらに、第2スペーサ部61bは、第3キャビティ26の第2内壁面26b、第4内壁面26d及び第6内壁面26fと当接している。これにより、スペーサ60のX軸方向、Y軸方向、Z軸方向における収容位置を規制することができる。
一方、図8に示された第2状態では、第1スペーサ部61aは、第3キャビティ26の第1内壁面26a、第3内壁面26c及び第5内壁面26eとそれぞれクリアランスを有するように配置されている。さらに、第2スペーサ部61bは、第3キャビティ26の第2内壁面26b、第4内壁面26d及び第6内壁面26fとそれぞれクリアランスを有するように配置されている。これにより、スペーサ60は、アダプタ2に対してXYZ軸方向に相対移動可能にされる(以下、これをフローティング状態と称することがある。)。
【0079】
このため、アダプタ2に外力が加わった場合、外力がスペーサ60に伝わりにくくすることができる。これにより、光コネクタ10,100間の光結合が外力によって悪影響を受けることが抑えられる。従って、外力に対する信頼性が改善されたアダプタ2を提供することができる。
【0080】
また、スペーサ60の最外面64aAと最外面64bAとの間の距離は、第1状態ではd1となっている一方、第2状態ではd1よりも小さいd2となっている。また、第3キャビティ26のX軸方向およびY軸方向における幅は、Z軸方向において第1光コネクタ収容部21と第2光コネクタ収容部22との間の境界部分に近づくにつれて、大きくなるように設定されている。このように、スペーサ60の最外面64aAと最外面64bAとの間の距離の変化により、スペーサ60が第3キャビティ26に当接する状態又は離間する状態を実現することができる。
【0081】
ここで、スペーサ60は、第1スペーサ部61aと第2スペーサ部61bとを弾性的に連結する板バネ67c,67dを備えている。これにより、スペーサ60が第3キャビティ26に当接する状態又は離間する状態を容易に実現することができる。
【0082】
また、図8に示した第2状態において、バネ70及びバネ170の弾性力は、板バネ67c,67dの弾性力よりも大きい。このため、第1スペーサ部61aの内面66aと第2スペーサ部61bの内面66bとを互いに当接させることができるので、第1光コネクタ10と第2光コネクタ100間の間隔を所定の距離d3に設定することができる。このように、互いに対向配置された第1光コネクタ10と第2光コネクタ100との間の光結合を確実に行うことができる光コネクタ結合システム1を提供することができる。
【0083】
また、図7に示す第1状態では、バネ70が第1フェルール40に与える弾性力とバネ170が第2フェルール140に与える弾性力は略等しくなるように設定されている。この状態では、バネ70が第1フェルール40を+Z方向に押圧するが、第1フェルール40の後端部47が第1ハウジング30の内壁面36に当接しているため、第1フェルール40はバネ70から押圧力を受けた状態で静止している。同様に、バネ170が第2フェルール140を−Z方向に押圧するが、第2フェルール140の後端部147が第2ハウジング130の内壁面136に当接しているため、第2フェルール140はバネ170から押圧力を受けた状態で静止している。
【0084】
一方、バネ70が第1フェルール40に与える弾性力とバネ170が第2フェルール140に与える弾性力は略等しくなるように設定されている。これにより、図8に示す第2状態では、第1フェルール40は、僅かに−Z方向に後退すると共に、第2フェルール140は、僅かに+Z方向に後退する(この現象は、「フェルールバック」と称されることがある)。
【0085】
このとき、スペーサ60のZ軸方向における中心位置(第1スペーサ部61aと第2スペーサ部61bとの境界面)は、第3キャビティ26のZ軸方向における位置と略一致する。第1光コネクタ10と第2光コネクタ100は、対称的にアダプタ2内に配置されるので、結合状態が安定する。
【0086】
また、第1フェルール40が僅かに−Z方向に後退したとき、第1フェルール40の後端部47と第1ハウジング30の内壁面36との間に、Z軸方向において僅かにクリアランスが生じる。同様に、第2フェルール140は僅かに+Z方向に後退したとき、第2フェルール140の後端部147と第2ハウジング130の内壁面136との間に、Z軸方向において僅かにクリアランスが生じる。これにより、第2状態では、第1フェルール40は、第1ハウジング30に対してXYZ軸方向に相対移動可能となるように第1ハウジング30に収容される。一方、第2フェルール140は、第2ハウジング130に対してXYZ軸方向に相対移動可能となるように第2ハウジング130に収容される。このように、第1フェルール40及び第2フェルール140は、フローティング状態でハウジングに収容される。さらに、前述のように、スペーサ60は、フローティング状態で、アダプタ2内に収容される。
【0087】
従って、アダプタ2に外力が加わった場合でも、スペーサ60と第1フェルール40と第2フェルール140は一緒になって動くので、第1光ファイバ52と第2光ファイバ152との間の光結合は、外力による悪影響を受けにくくなる。同様に、第1ハウジング30や第2ハウジング130に外力が加わった場合でも、第1光ファイバ52と第2光ファイバ152との間の光結合は、外力による悪影響を受けにくくなる。従って、外力に対する信頼性が改善された光コネクタ結合システム1を提供することができる。
【0088】
また、本実施形態に係る光コネクタ結合システム1によれば、スペーサ60に一対のガイドピン63を設けられている。これにより、第1光コネクタ10及び第2光コネクタ100を、ともに雌型光コネクタとすることができるので、製造コストを低減できる。さらに、光コネクタにガイドピンを設ける必要がないので、光コネクタの前端部の清掃を容易に行うことができる。
【0089】
(第1光ファイバ52と第2光ファイバ152との間の光結合)
次に、図9を参照して、第1光ファイバ52と第2光ファイバ152との間の光結合について以下に説明する。図9は、図8に示した第1光ファイバ52と第2光ファイバ152との間の光結合を説明するための模式図である。
【0090】
尚、第1フェルール40に保持される複数の第1光ファイバ52のうち、受信側光ファイバを第1光ファイバ52aと称し、送信側光ファイバを第1光ファイバ52bと称する。同様に、第2フェルール140に保持される複数の第2光ファイバ152のうち、送信側光ファイバを第2光ファイバ152aと称し、受信側光ファイバを第2光ファイバ152bと称する。第1光ファイバ52と第2光ファイバ152は、共にシングルモード光ファイバである。
【0091】
さらに、第1レンズアレイ80は、複数のGRINレンズ82を有し、第1光インターフェース部IF−1を構成する。複数のGRINレンズ82は、第1光ファイバ52aと光学的に接続されたGRINレンズ82aと、第1光ファイバ52bと光学的に接続されたGRINレンズ82bを含む。
【0092】
同様に、第2レンズアレイ180は、複数のGRINレンズ182を有し、第2光インターフェース部IF−2を構成する。複数のGRINレンズ182は、第2光ファイバ152aと光学的に接続されたGRINレンズ182aと、第2光ファイバ152bと光学的に接続されたGRINレンズ182bを含む。
【0093】
第1光ファイバ52b内を+Z方向に伝搬し、GRINレンズ82bに入射した光ビームは、GRINレンズ82bによって拡大されて、第1光インターフェース部IF−1から開口部62に向けて出射される。GRINレンズ82bは、第1光ファイバ52bから出射された発散光をコリメートし、略平行な光ビームに変換する。
【0094】
G第1光インターフェース部IF−1から出射された光ビームは、開口部62内を+Z方向に伝搬し、第2光インターフェース部IF−2に入射する。そして、GRINレンズ182bによって第2光ファイバ152bの端面に集光し、第2光ファイバ152b内を+Z方向に伝搬する。このように、第1光ファイバ52bと第2光ファイバ152bは、第1光インターフェース部IF−1と第2光インターフェース部IF−2を介して、互いに光学的に結合される。
【0095】
同様に、第2光ファイバ152aと第1光ファイバ52aも、第1光インターフェース部IF−1と第2光インターフェース部IF−2を介して、互いに光学的に結合される。
【0096】
本実施形態に係る光コネクタ結合システム1によれば、第1光インターフェース部IF−1と第2光インターフェース部IF−2との間では、光ビームは拡大されている。これにより、光結合方向(Z方向)と直交する面内(XY面内)における第1光コネクタ10と第2光コネクタ100との間の軸ずれによって生じる接続損失を抑えることができる。従って、軸ずれによる光学特性の低下が小さい(トレランスが大きい)光結合構造が提供される。
【0097】
また、これにより第1光コネクタ10と第2光コネクタ100との間を位置決めするガイドピンに高い寸法精度が要求されないので、光学特性の良い光コネクタ結合システム1を低コストに提供できる。本実施形態の一例では、第1ガイドピン64及び第2ガイドピン68としては、マルチモード光ファイバ用のガイドピンを適用することができる。マルチモード光ファイバ用のガイドピンは、マルチモード光ファイバ同士を光結合するための光コネクタに通常用いられるガイドピンであり、第1ガイドピン64の直径と一対のガイド穴184の内径との差、及び、第2ガイドピン68の直径と一対のガイド穴84の内径との差は、例えば2μm以下である。
【0098】
通常、シングルモード光ファイバ同士は、前述のシングルモード光ファイバ用のガイドピンを用いて光結合される。この場合には、ガイドピンの直径とガイド穴の内径との差は1μm以下とされる。一方、本実施形態の光コネクタ結合システム1によれば、第1ガイドピン64の直径と一対のガイド穴184の内径との差、及び、第2ガイドピン68の直径と一対のガイド穴84の内径との差が1μmより大きく2μm以下である場合でも、第2光ファイバ152aと第1光ファイバ52aとの間の光学特性の低下が小さい。このように、マルチモード光ファイバ用のガイドピンを用いてシングルモード光ファイバ同士を光結合することにより、光コネクタ結合システム1の製造コストを低減できる。
【0099】
(第1変形例)
次に、図10及び図11を参照して、第1実施形態に係るアダプタ2の第1変形例について説明する。図10は、第1変形例に係るアダプタ2Aにおけるスペーサ160の分解斜視図である。図11は、第1変形例に係るアダプタ2Aを示す断面図である。図11(a)は、第1光コネクタ10と第光コネクタ100がスペーサ160を介して互いに位置決めされる前の第1状態(以下、単に「第1状態」と称することがある)におけるアダプタ2Aを示す断面図である。図11(b)は、第1光コネクタ10と第2光コネクタ100がスペーサ160を介して互いに位置決めされた後の第2状態(以下、単に「第2状態」と称することがある)におけるアダプタ2Aを示す断面図である。
尚、第1実施形態で説明した部材と同一の参照番号を有する部材は同一の構成を有するので、その説明は省略する。
【0100】
図10に示すスペーサ160の構成は、第1実施形態で用いられた板バネ67c,67dの代わりに、つるまきバネ167c〜167f(弾性部材)を用いた点で、図6に示したスペーサ60と大きく異なる。スペーサ160は、第1スペーサ部161aと、第2スペーサ部161bと、一対のガイドピン163と、つるまきバネ167c〜167fとを備える。また、スペーサ160は、Z軸方向に延びる開口部165(透光部)を有する。第1スペーサ部161aと第2スペーサ部161bは同一の構成を有する。第1スペーサ部161aは、外面164a(スペーサ160の第1面)と、内面166aと、凹部171aと、開口部165aと、バネ固定部168aと、バネ挿入部162aとを有する。
【0101】
内面166aは、外面164aとは反対側に位置している。略直方体形状の凹部171aは、第1スペーサ部161aの外面164aに形成されており、開口部165aと連通している。開口部165aのX軸方向における両端には、ガイドピン163を保持するためのガイドピン保持穴169aが形成されており、各ガイドピン保持穴169aは、開口部165aと連通している。開口部165aは、スペーサ160の開口部165の一部を構成する。2つのバネ固定部168aと2つのバネ挿入部162aの各々が第1スペーサ部161aの四隅のうちの一つに配置されている。
【0102】
第2スペーサ部161bは、外面164b(スペーサ160の第2面)と、内面166bと、凹部(図示せず)と、開口部165bと、バネ固定部168bと、バネ挿入部162bとを有する。
【0103】
内面166bは、外面164bとは反対側に位置し、第1スペーサ部161aの内面166aと対向している。第2スペーサ部161bの外面164bには、凹部171aと同じ形状を有し、開口部165bと連通する凹部が形成されている。開口部165bのX方向における両端には、ガイドピン163を保持するためのガイドピン保持穴169bが形成されており、各ガイドピン保持穴169bは、開口部165bと連通している。開口部165bは、スペーサ60の開口部165の一部を構成する。2つのバネ固定部168bと2つのバネ挿入部162bの各々が第2スペーサ部161bの四隅のうちの一つに配置されている。
【0104】
つるまきバネ167cは、バネ固定部168bとバネ挿入部162aに対向している。つるまきバネ167dは、バネ挿入部162bとバネ固定部168aに対向している。つるまきバネ167eは、バネ挿入部162bとバネ固定部168a(図示せず)に対向している。つるまきバネ167fは、バネ固定部168bとバネ挿入部162aに対向している。
【0105】
次に、図11を参照して、スペーサ160を備えたアダプタ2Aについて説明する。アダプタ2Aは、スペーサ160と、光コネクタ収容部28Aとを備えている。尚、図11に示されたアダプタ2Aの断面図では、つるまきバネ167d,167fの切断面が現れるように、Y軸方向に直交する方向にアダプタ2Aが切断されている。光コネクタ収容部28Aは、複数のバネ収容部127c〜127fが設けられている点以外は、第1実施形態で説明した光コネクタ収容部28とほぼ同一の構成を有する。
【0106】
光コネクタ収容部28Aは、第1光コネクタ10(図7参照)が収容される第1キャビティ125と、第2光コネクタ100(図7参照)が収容される第2キャビティ123と、第1キャビティ125と第2キャビティ123との間に形成された第3キャビティ126とを有する。第3キャビティ126は、スペーサ160を収容するスペーサ収容部128と、複数のバネ収容部127c〜127fとを有する。スペーサ160は、スペーサ収容部128内に収容されている。スペーサ収容部128は、第1スペーサ部161aの外面164aと対向する内壁面128aと、第2スペーサ部161bの外面164bと対向する内壁面128bとを有している。各バネ収容部127c〜127fは、スペーサ収容部128と連通している。
【0107】
第3キャビティ126は、第1内壁面126aと、第2内壁面126bと、第3内壁面126cと、第4内壁面126dと、第5内壁面(図示せず)と、第6内壁面(図示せず)とを有する。第1内壁面126aは、第1スペーサ部161aの外面164aと対向している。一方、第2内壁面126bは、第2スペーサ部161bの外面164bと対向している。ここで、第1内壁面126aは、スペーサ収容部128の内壁面128aと、バネ収容部127cの底面127caと、バネ収容部127fの底面127faとを含む。また、第2内壁面126bは、スペーサ収容部128の内壁面128bと、バネ収容部127dの底面127dbと、バネ収容部127eの底面127ebとを含む。第3内壁面126c、第4内壁面126d、第5内壁面及び第6内壁面の構成及び機能は、第1実施形態で説明した第3内壁面から第6内壁面の構成及び機能と同様であるため、ここではその説明を省略する。
【0108】
つるまきバネ167cは、バネ収容部127cに収容されている。つるまきバネ167cは、第2スペーサ部161bのバネ固定部168bに固定され、第1スペーサ部161aのバネ挿入部162aを通って、バネ収容部127cの底面127caに当接する。このように、つるまきバネ167cは、第2スペーサ部161bと底面127caとを弾性的に連結している。
【0109】
つるまきバネ167dは、バネ収容部127dに収容されている。つるまきバネ167dは、第1スペーサ部161aのバネ固定部168aに固定され、第2スペーサ部161bのバネ挿入部162bを通って、バネ収容部127dの底面127dbに当接する。このように、つるまきバネ167dは、第1スペーサ部161aと底面127dbとを弾性的に連結している。
【0110】
つるまきバネ167eは、バネ収容部127eに収容されている。つるまきバネ167eは、第1スペーサ部161aのバネ固定部に固定され、第2スペーサ部161bのバネ挿入部162bを通って、バネ収容部127eの底面127ebに当接する。このように、つるまきバネ167eは、第1スペーサ部161aと底面127ebとを弾性的に連結している。
【0111】
つるまきバネ167fは、バネ収容部127fに収容されている。つるまきバネ167fは、第2スペーサ部161bのバネ固定部168bに固定され、第1スペーサ部161aのバネ挿入部162aを通って、バネ収容部127fの底面127faに当接する。このように、つるまきバネ167fは、第2スペーサ部161bと底面127faとを弾性的に連結している。
【0112】
図11(a)に示すように、第1状態では(第1光コネクタ10及び第2光コネクタ100の状態については図7を参照)、第1スペーサ部161aの外面164aと第2スペーサ部161bの外面164bは、スペーサ収容部128の内壁面128a及び内壁面128bとそれぞれ当接している。この第1状態では、スペーサ160の外面164aと外面164bとの間のZ軸方向における距離は、d4となっている。
【0113】
一方、図11(b)に示すように、第2状態では(第1光コネクタ10及び第2光コネクタ100の状態については図8を参照)、第1スペーサ部161aの外面164aと第2スペーサ部161bの外面164bは、スペーサ収容部128の内壁面128a及び内壁面128bとそれぞれ離間している。この第2状態における、スペーサ160の外面164aと外面164bとの間のZ軸方向における距離は、d4よりも小さいd5となっている。また、第2状態では、第1スペーサ部161aの内面166aと第2スペーサ部161bの内面166bは互いに当接している。
【0114】
(第1変形例に係るアダプタ2Aの作用効果)
第1変形例に係るアダプタ2Aも、第1実施形態に係るアダプタ2と同様の作用効果が得られる。
【0115】
さらに、つるまきバネ167c〜167fの構成によれば、スペーサ160が意図しない動作をすることが防止される。特に、つるまきバネ167c〜167fは、XY面内におけるスペーサ160の撓みをある程度規制できるので、スペーサ160がXY面内において意図しない動作をすることが防止される。これにより、第1光コネクタ10及び第2光コネクタ100のアダプタへの挿抜によって、スペーサ160の収容位置がずれることが防止される。従って、取扱いが容易なアダプタ2Aを提供することができる。
【0116】
(第2変形例)
次に、図12を参照して、第1実施形態に係るアダプタ2の第2変形例について説明する。図12は、第1変形例に係るアダプタ2Bを示す断面図である。図12(a)は、第1光コネクタ10と第2光コネクタ100がスペーサ260を介して互いに位置決めされる前の状態(第1状態)におけるアダプタ2Bを示す断面図である。図12(b)は、第1光コネクタ10と第2光コネクタ100がスペーサ260を介して互いに位置決めされた後の状態(第2状態)におけるアダプタ2Bを示す断面図である。尚、第1実施形態で説明した部材と同一の参照番号を有する部材は同一の構成を有するので、その説明は省略する。
【0117】
図12に示すアダプタ2Bは、スペーサ60の代わりに、スペーサ260を用いた点で、第1実施形態に係るアダプタ2と異なる。スペーサ260は、第1スペーサ部261aと、第2スペーサ部261bと、弾性体267(スペーサ弾性部材)が一体に構成されている。スペーサ260は、一対のガイドピン263と、Z軸方向に延びる開口部265(透光部)を有する。
【0118】
第1スペーサ部261aと第2スペーサ部261bは同一の構成を有する。第1スペーサ部261aは、外面264a(スペーサ260の第1面)と、開口部265の一部を形成する開口部265aと、ガイドピン挿入穴とを有する。第2スペーサ部261bは、外面264b(スペーサ260の第2面)と、開口部265の一部を形成する開口部265bと、ガイドピン挿入穴とを有する。弾性体267は、第1スペーサ部261aと第2スペーサ部261bとを連結している。
【0119】
図12(a)に示すように、第1状態では(第1光コネクタ10及び第2光コネクタ100については図7を参照)、第1スペーサ部261aの外面264aと第2スペーサ部261bの外面264bは、第3キャビティ26の第1内壁面26a及び第2内壁面26bとそれぞれ当接している。この第1状態では、スペーサ260の外面264aと外面264bとの間のZ軸方向における距離は、d6となっている。
【0120】
一方、図12(b)に示すように、第2状態では(第1光コネクタ10及び第2光コネクタ100については図8を参照)、第1スペーサ部261aの外面264aと第2スペーサ部261bの外面264bは、第3キャビティ26の内壁面26a,26bとそれぞれ離間している。この第2状態では、スペーサ260の外面264aと外面264bとの間のZ軸方向における距離は、d6よりも小さいd7となっている。
【0121】
(第2変形例に係るアダプタ2Bの作用効果)
第2変形例に係るアダプタ2Bも、第1実施形態に係るアダプタ2と同様の作用効果が得られる。本実施形態のアダプタ2Bによれば、スペーサ260を一体に構成したので、部品点数を削減することができる。
【0122】
(第3変形例)
次に、図13から図15を参照して、第1実施形態に係るアダプタ2の第3変形例について説明する。図13は、第3変形例に係るアダプタ2Cを示す断面図である。尚、第1実施形態で説明した部材と同一の参照番号を有する部材は同一の構成を有するので、その説明は省略する。
【0123】
図13に示すアダプタ2Cは、スペーサ60の代わりに、スペーサ360を用いた点で、第1実施形態に係るアダプタ2と異なる。アダプタ2Cは、光コネクタ収容部320と、光コネクタ収容部320と一体的に形成されたスペーサ360とを備える。
光コネクタ収容部320は、第1キャビティ325と、第2キャビティ323とを有する。スペーサ360は、第1キャビティ325と第2キャビティ323との間に配置されており、光コネクタ収容部320と一体的に形成されている。スペーサ360は、Z軸方向に延びる開口部365(透光部)と、外面364a(第1面)と、外面364aとは反対側に位置する外面364b(第2面)と、一対のガイドピン挿入穴363a,363bとを有する。
【0124】
次に、図14及び図15を参照して第3変形例に係るアダプタ2Cに収容される第1光コネクタ及び第2光コネクタについて説明する。図14は、第3変形例に係るアダプタ2Cに収容される第1光コネクタの第1フェルール240(以下、単に「第1光コネクタ」と称する)及びその近傍を示す斜視図である。第1光コネクタは、第1フェルール240を除いては、第1実施形態に係る第1光コネクタ10と略同じ構造を有する。また、アダプタ2Cに収容される第2光コネクタ(以下、単に「第2光コネクタ」と称する)は、第1光コネクタと同じ構造を有する。従って、以下では、第1フェルール240について説明する。
【0125】
図14及び図15に示されるように、第1フェルール240は、第1光ファイバ52の端部を保持する第1本体部245と、第1レンズアレイ280とを備える。第1本体部245は、窓部241と、X軸方向に平行に配列した複数の光ファイバ保持孔242と、後端部247と、窓部241と、接着剤導入部246とを有する。
【0126】
Z軸方向において、第1レンズアレイ280が第1本体部245上に配置されている。第1レンズアレイ280は、第1光ファイバ52から出射された光ビームを拡大して出射する第1光インターフェース部IF−1と、第1レンズアレイ280から−Z方向に延びるガイド穴284と、第1レンズアレイ280から+Z方向に突出するガイドピン283とを有する。第1光インターフェース部IF−1は、X軸方向に平行に配列した複数のコリメートレンズ282を有する。
【0127】
第1レンズアレイ280は、前面288aと、前面と反対側に位置する後面288bとを有する。第1レンズアレイ280の前面288aは、スペーサ360の外面364aと当接する面である。
【0128】
複数のコリメートレンズ282は、第1レンズアレイ280の後面288b上に形成されている。接着剤導入部246に接着剤を供給し、供給された接着剤を硬化させることで、各コリメートレンズ282と対応する第1光ファイバ52は接着剤を介して光学的に互いに接続される。
【0129】
コリメートレンズ282は、第1光ファイバ52から出射された光ビームを拡大するように構成されている。コリメートレンズ282は、第1光ファイバ52から出射された光ビームを拡大するように構成されている。例えば、コリメートレンズ282は、第1光ファイバ52から出射された発散光をコリメートし、平行光を+Z方向に向けて出射するように構成されている。さらに、コリメートレンズ282は、第2光インターフェース部IF−2から第1光インターフェース部IF−1のコリメートレンズ282に入射した平行光である光ビームを集光し、第1光ファイバ52に結合させるように構成されている。
【0130】
ガイドピン283は、マルチモード光ファイバ用のガイドピンであって、ガイドピンの軸方向の各位置における外径の所定の設計値に対する誤差が±1.0μm以下となるような精度で製造されている。マルチモード光ファイバ用のガイドピンを用いる利点は第1実施形態で説明した理由と同じである。
【0131】
尚、上述したように、第2光コネクタは、第1光コネクタと同一の構造を有するため、その説明はここでは省略する。
【0132】
(第3変形例に係るアダプタ2Cの作用効果)
本実施形態に係るアダプタ2Cも、第1実施形態に係るアダプタ2と同様の作用効果が得られる。本実施形態のアダプタ2Cによれば、スペーサ360をアダプタ2Cと一体に形成したので、部品点数をさらに削減できる。また、第1フェルール240によれば、ガイドピン283を第1レンズアレイ280と一体に形成したので、部品点数をさらに削減できる。
【0133】
以上、本発明の実施形態について説明をしたが、本発明の技術的範囲が本実施形態の説明によって限定的に解釈されるべきではないのは言うまでもない。本実施形態は一例であって、特許請求の範囲に記載された発明の範囲内において、様々な実施形態の変更が可能であることが当業者によって理解されるところである。本発明の技術的範囲は特許請求の範囲に記載された発明の範囲及びその均等の範囲に基づいて定められるべきである。
【0134】
例えば、第1実施形態では、第1光インターフェース部IF−1及び第2光インターフェース部IF−2はGRINレンズ含むが、GRINレンズの代わりに、第3変形例で説明したコリメートレンズ282を用いることができる。
【0135】
また、第1実施形態では、スペーサ60に一対のガイドピン63が設けられているが、第1光コネクタ10又は第2光コネクタ100に一対のガイドピンを設けることで、一方の光コネクタを雄型光コネクタとし、他方の光コネクタを雌型光コネクタとしてもよい。
【0136】
また、第1実施形態では、スペーサ60に凹部68a,68bが形成されているが、スペーサ60に凹部68a,68bを設けなくてもよい。例えば、第1光インターフェース部IF−1と第2光インターフェース部IF−2との間の所定の間隔を最外面64aAと最外面64bAとの間の距離d2にする必要がある場合には、スペーサ60に凹部68a,68bを設けなくてもよい。さらに、当該所定の間隔が距離d2よりも大きい場合には、スペーサ60に凸部を設けてもよい。このように、光インターフェース部に設けられるレンズの光学特性に応じて、当該所定の間隔を適宜設定することができる。また、当該所定の間隔に応じて、スペーサ60に凹部68a,68bの深さを適宜設定することができる。
【0137】
また、第1実施形態では、第2状態において、第1スペーサ部61aの内面66aと第2スペーサ部61bの内面66bは互いに当接しているが、設計に応じて第1スペーサ部61aの内面66aと第2スペーサ部61bの内面66bは当接していなくてもよい。
【0138】
また、第1実施形態及び第3変形例では、第1前端部として機能する第1レンズアレイ80,280は第1本体部45,245とそれぞれ別体として構成されているが、第1レンズアレイと第1本体部は一体形成されていてもよい。同様に、第2レンズアレイと第2本体部は一体形成されていてもよい。このように、第1前端部及び第2前端部は、第1フェルール及び第2フェルールの端部として理解されるべきであって、本実施形態における第1レンズアレイ80,280及び第2レンズアレイ180に限定的に解釈されるべきではない。
【0139】
さらに、第1光インターフェース部IF−1は、第1レンズアレイ80の前面88aと面一となっているが、第1光インターフェース部IF−1は、前面88aから凹んだ位置に設けられていてもよい。同様に、第2光インターフェース部IF−2は、第2レンズアレイ180の前面188aから凹んだ位置に設けられていてもよい。
【符号の説明】
【0140】
1:光コネクタ結合システム
2:アダプタ
2A:アダプタ
2B:アダプタ
2C:アダプタ
10:光コネクタ
12:治具ガイドピン
20:ブーツ
28:光コネクタ収容部
28A:光コネクタ収容部
21:第1光コネクタ収容部
22:第2光コネクタ収容部
23:第2キャビティ
24a:第1係合部
24b:第2係合部
25:第1キャビティ
26:第3キャビティ
26a:第1内壁面
26b:第2内壁面
26c:第3内壁面
26d:第4内壁面
26e:第5内壁面
26f:第6内壁面
30:第1ハウジング
34:係合部
36:内壁面
40:第1フェルール
41:窓部
42:光ファイバ保持孔
44:ガイドピン挿入穴
45:第1本体部
47:後端部
48:前面
50:光ケーブル
52:第1光ファイバ
52a:第1光ファイバ
52b:第1光ファイバ
53:被覆
60:スペーサ
61a:第1スペーサ部
61b:第2スペーサ部
62:開口部
62b:板バネ収容部
63:ガイドピン
64a:外面(第1面)
64aA:最外面
64aB:底面
64b:外面(第2面)
64bA:最外面
64bB:底面
65:開口部(透光部)
65a:開口部
65b:開口部
66a:内面
66b:内面
67c:板バネ(スペーサ弾性部材)
67d:板バネ(スペーサ弾性部材)
68a:凹部
68b:凹部
69a:ガイドピン保持穴
69b:ガイドピン保持穴
70:バネ(第1弾性部材)
80:レンズアレイ(第1前端部)
82:GRINレンズ
82a:GRINレンズ
82b:GRINレンズ
84:ガイド穴
88a:前面
88b:後面
90:ラッチ
100:光コネクタ
120:ブーツ
123:第2キャビティ
125:第1キャビティ
126:第3キャビティ
126a:第1内壁面
126b:第2内壁面
126c:第3内壁面
126d:第4内壁面
127c:バネ収容部
127ca:底面
127d:バネ収容部
127db:底面
127e:バネ収容部
127eb:底面
127f:バネ収容部
127fa:底面
128:スペーサ収容部
128a:内壁面
128b:内壁面
130:第2ハウジング
134:係合部
136:内壁面
140:第2フェルール
144:ガイドピン挿入穴
145:第2本体部
147:後端部
150:光ケーブル
152:第2光ファイバ
152a:第2光ファイバ
152b:第2光ファイバ
153:被覆
160:スペーサ
161a:第1スペーサ部
161b:第2スペーサ部
162a:バネ挿入部
162b:バネ挿入部
163:ガイドピン
164a:外面
164b:外面
165:開口部
165a:開口部
165b:開口部
166a:内面
166b:内面
167c:つるまきバネ
167d:つるまきバネ
167e:つるまきバネ
167f:つるまきバネ
171a:凹部
168a:バネ固定部
168b:バネ固定部
169a:ガイドピン保持穴
169b:ガイドピン保持穴
170:バネ(第2弾性部材)
180:レンズアレイ(第2前端部)
182:GRINレンズ
182a:GRINレンズ
182b:GRINレンズ
184:ガイド穴
188a:前面
240:第1フェルール
241:窓部
245:第1本体部
246:接着剤導入部
247:後端部
260:スペーサ
261a:第1スペーサ部
261b:第2スペーサ部
263:ガイドピン
264a:外面(第1面)
264b:外面(第2面)
265:開口部
265a:開口部
265b:開口部
267:弾性体(スペーサ弾性部材)
280:第1レンズアレイ
282:コリメートレンズ
283:ガイドピン
284:ガイド穴
288a:前面
288b:後面
320:光コネクタ収容部
323:第2キャビティ
325:第1キャビティ
360:スペーサ
363a:ガイドピン挿入穴
363b:ガイドピン挿入穴
364a:外面
364b:外面
365:開口部
IF−1:第1光インターフェース部
IF−2:第2光インターフェース部
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10
図11
図12
図13
図14
図15