(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
前記自機に直接無線接続している他の無線中継装置から、この他の無線中継装置と、この他の無線中継装置に直接無線接続されている無線中継装置とが使用可能な通信チャンネルのリストである、チャンネル・リストを受信するチャンネル・リスト受信部をさらに備え、
前記チャンネル選択更新部は、前記チャンネル判定部による判定結果と、前記チャンネル・リスト受信部により受信したチャンネル・リストとに基づいて、自機と、前記他の無線中継装置と、この他の無線中継装置に直接無線接続されている無線中継装置の全てが使用可能な通信チャンネルを求め、これらの通信チャンネルの中から、自機が前記他の無線中継装置との無線通信に使用する通信チャンネルを選択することを特徴とする請求項3に記載の無線中継装置。
前記3台以上の無線中継装置間の無線通信に使用する通信チャンネルを設定し直す必要が生じたとき、これらの無線中継装置を前回無線接続した際に、自機が、これらの無線中継装置のうち、最も多くの無線中継装置と直接無線接続した無線中継装置である場合に、前記記憶部に記憶された自機の優先度情報を、前記3台以上の無線中継装置のうち、最も高い優先度を示す優先度情報に書き替える優先度情報更新部をさらに備えることを特徴とする請求項1乃至請求項4のいずれか一項に記載の無線中継装置。
【発明を実施するための形態】
【0020】
以下、本発明を具体化した実施形態による無線中継装置について、図面を参照して説明する。
【0021】
A.第1実施形態
A−1.ネットワークの構成
本発明の第1の実施形態の無線中継装置である無線LAN(Local Area Network)アクセスポイント(以下、「AP」という)について説明する。
図1は、第1の実施形態のAP1〜3の周辺におけるネットワークの例の構成図である。無線LANシステム10は、無線LANアクセスポイント(以下、APとも記載する)である、3つのAP(AP1、AP2、AP3)と、無線LANクライアントである無線端末4〜6とを備えている。無線LANシステム10は、3つの無線LAN7〜9から構成されている。無線LAN7には、AP1と無線端末4とが接続されており、無線LAN8には、AP2と無線端末5とが接続されており、無線LAN9には、AP3と無線端末6とが接続されている。各無線LAN7〜9における各AP1〜3と各無線端末4〜6とは、IEEE802.11におけるインフラクトラクチャモードで通信を行う。
【0022】
上記のAP1〜3は、有線LANと無線LANとを接続するブリッジ機能と、AP間でAPの所属する無線LAN間の通信を中継する機能であるWDS(Wireless Distribution System)機能とを有している。AP1〜3間は、上記のWDS機能を用いて、相互に無線で接続されている。詳細は後述するが、3台のAP1〜3は、ディジーチェーン方式で無線接続(WDS接続)されている。AP1〜3は、いずれも、同じネットワークセグメント(以下、「セグメント」と略す)を有する(同じサブネットに属する)APである。各無線LAN7〜9は、BSSID(Basic Servive Set Identifier)が異なる。無線LANシステム10では、無線LAN7〜9間の通信(例えば、無線LAN7に接続された無線端末4と、無線LAN9に接続された無線端末6との間の通信)を行うことができる。
【0023】
上記のAP1は、有線でルータRTと接続されており、ルータRTを介してインターネットINTに接続されている。また、AP2は、AP1とルータRTを介してインターネットINTに接続されており、AP3は、AP2、AP1、及びルータRTを介してインターネットINTに接続されている。
【0024】
本実施形態では、上記の各無線LAN7〜9内の無線通信(各無線LAN7〜9内のAPと無線端末との間の通信)は、IEEE802.11における2.4GHz帯の周波数帯域を用いて行われ、AP1〜3間のWDS通信は、IEEE802.11における5GHz帯(W53またはW56を含む)の周波数帯域を用いて行われる場合を例にして、説明する。
【0025】
A−2.AP1〜3の概略構成
図2は、上記の各AP1〜3の概略の電気的ブロック構成を示す。AP1〜3は、全て同様の電気的ブロック構成を有しているので、ここでは、AP1の電気的ブロック構成についてのみ説明する。AP1は、CPU(Central Processing Unit)11と、フラッシュROM(Read Only Memory)12と、RAM(Random Access Memory)13と、無線LANインタフェース(無線LAN I/F)14と、有線LANインタフェース(有線LAN I/F)15と、バス16と、無線LANインタフェース14に接続されたアンテナ29とを備えている。CPU11と、フラッシュROM12と、RAM13と、無線LANインタフェース14と、有線LANインタフェース15とは、バス16を介して相互に接続されている。
【0026】
上記のフラッシュROM12は、不揮発性のメモリであり、後述するAP1〜3間のWDS通信に使用する通信チャンネルを決定するためのプログラムである通信チャンネル決定プログラム17等の各種のプログラムや、初期設定データを格納している。フラッシュROM12は、図中の破線で示す記憶部20を含んでいる。記憶部20は、自機(AP1)の優先度を示す優先度情報18と、自機が自機に直接無線接続している他のAP(AP2及びAP3)との無線通信に使用する自機使用通信チャンネル19とを格納(記憶)する。上記の優先度情報18としては、例えば、自機(AP1)が属する無線LAN(無線LAN7)のBSSID(すなわち、自機のMACアドレス)が用いられる。
【0027】
上記のCPU11は、優先度判定部21と、チャンネル更新部22と、チャンネル判定部23と、チャンネル選択更新部24とを有している。CPU11は、AP1の全体の動作を制御する。また、CPU11は、フラッシュROM12に格納された通信チャンネル決定プログラム17をRAM13に展開して実行することにより、上記の優先度判定部21、チャンネル更新部22、チャンネル判定部23、及びチャンネル選択更新部24として機能する。優先度判定部21、チャンネル更新部22、及びチャンネル選択更新部24の詳細については、後述する。チャンネル判定部23は、自機(AP1)が使用可能な通信チャンネルを判定する。なお、上記の通信チャンネル決定プログラム17の実行時には、フラッシュROM12に格納された優先度情報18及び自機使用通信チャンネル19も、RAM13に読み出されて用いられる。
【0028】
上記の無線LANインタフェース14は、無線LANの規格(IEEE802.11)に準拠した無線通信を行うための通信制御回路であり、IEEE802.11のインフラストラクチャーモードにおいてステーションとの無線通信を行うための機能と、WDSモードにおいてAP間の無線通信(WDS通信)を行うための機能とを併せ持っている。なお、上記のステーションとの無線通信を行うための機能と、AP間のWDS通信を行うための機能とは、1つのモジュールで構成されていてもよいし、別のモジュールで構成されていてもよい。無線LANインタフェース14は、優先度情報送信部26と、優先度情報受信部27と、チャンネル・リスト受信部28とを含んでいる。優先度情報送信部26は、記憶部20に記憶された自機の優先度情報18を、自機に直接無線接続している他のAP(AP2)に送信する。優先度情報受信部27は、上記の自機(AP1)に直接無線接続している他のAPに含まれる比較対象のAP(AP2:請求項における比較対象無線中継装置)から、この比較対象のAPの優先度情報を受信する。チャンネル・リスト受信部28は、上記の比較対象のAP(AP2)から、この比較対象のAPと、この比較対象のAPに直接無線接続されているAP(AP3)とが使用可能な通信チャンネルのリストである、チャンネル・リストを受信する。
【0029】
詳細に説明すると、このチャンネル・リストは、有効チャンネル情報と、無効チャンネル情報とを含んでいる。上記の有効チャンネル情報は、このチャンネル・リストの送信元のAP(上記の「比較対象のAP」)が選択可能(変更可能)な通信チャンネルのリストである。無効チャンネル情報は、上記の有効チャンネル情報に含まれているチャンネルのうち、使用できない通信チャンネルのリストである。この使用できない通信チャンネルのリストには、上記のチャンネル・リストの送信元のAP(「自機に直接無線接続している他のAP」の一つ)が使用できない通信チャンネル(のリスト)と、この送信元のAPに直接無線接続されているAPが使用できない通信チャンネル(のリスト)とが含まれている。無効チャンネル情報は、上記の送信元のAPが使用できない通信チャンネルと、この送信元のAPに直接無線接続されているAPが使用できない通信チャンネルとを判別するための識別情報を含んでいる。
【0030】
また、無線LANインタフェース14は、自機(AP1)が使用する通信チャンネルにおけるレーダ波等の干渉波を検出する機能も有している。上記のチャンネル判定部23は、無線LANインタフェース14が有する上記の干渉波検出機能を用いた、レーダ波等の干渉波の検出結果や、ユーザによる使用チャンネルの制限の設定(例えば、屋外で使用するので、屋外で使用可能なW56の周波数帯域のみを使用するように制限する等の設定)等に基づいて、自機(AP1)が使用可能な通信チャンネルを判定する。
【0031】
上記の有線LANインタフェース15は、有線LANの規格に準拠した通信を行うための通信制御回路であり、LANケーブルを介して、ルータRTに接続されている。なお、
図1の例に示されるように、AP1のみを有線でルータRTに接続し、AP2とAP3は無線でAP1に接続する場合は、AP2〜3は、必ずしも有線LANインタフェース15を有する必要がない。
【0032】
A−3.通信チャンネル決定処理
次に、
図3及び
図4を参照して、上記のAP1〜3間で行われる、WDS通信に使用する通信チャンネルの決定処理について説明する。
図3は、各AP1〜3の配置の例と、これらのAP1〜3がWDS通信に使用する通信チャンネルの遷移を示す。また、
図4は、各APにおいて行われる通信チャンネル決定処理のフローチャートを示す。
【0033】
図3において、破線で示されるZAとZCは、それぞれ、AP1の電波の受信可能範囲と、AP3の電波の受信可能範囲を示す。これらの破線ZA及びZCに示されるように、AP2は、AP1とAP3の両方の電波(ビーコン含む)を受信可能なエリアに存在する。一方、AP1及びAP3は、いずれもAP2の電波を受信可能なエリアに存在する。また、AP1には、AP2がWDS通信の相手として登録されており、AP2には、AP1及びAP3が、WDS通信の相手として登録されており、AP3には、AP2がWDS通信の相手として登録されているものとする。また、
図3に示されるように、AP1、AP2、AP3の(優先度情報が示す)優先度は、それぞれ、1、2、3であり、AP1〜3のうち、AP1の優先度が最も高く、AP3の優先度が最も低いものとする。
【0034】
上記の前提条件の下に、今、上記のAP1〜3が、例えば、チャンネル52(CH52)を用いて、WDS通信を行っており、各AP1〜3は、このCH52で、所定の時間毎に、ビーコンを送信しているものとする。このビーコンには、フラッシュROM12に記憶された自機の優先度情報18と、自機のチャンネル・リスト(自機と、自機に直接無線接続しているAPとが使用可能な通信チャンネルのリスト)とが含まれている。このチャンネル・リストは、各AP1〜3が、自機の設定に基づいて判定した、自機が選択(変更)可能な通信チャンネルのリスト(上記の「有効チャンネル情報」に相当)と、無線LANインタフェース14によるレーダ波の検出結果等に基づいて判定した、自機が使用できない通信チャンネルのリスト(上記の「無効チャンネル情報」の一部に相当)と、自機に直接無線接続しているAPのチャンネル・リストとに基づいて作成し、RAM13に記憶したものである。
【0035】
A−3−1.
図3中のAP1の通信チャンネル決定処理
上記のように、AP1〜3が、CH52でWDS通信を行っているときに、AP1が、(最初に)レーダ波を検出して、DFS(Dynamic Frequency Selection)機能による干渉回避等のために、WDS通信に使用する通信チャンネルを変更する(再設定する)必要が生じたとする。この場合(
図4のS1でYES)、AP1のCPU11は、パッシブスキャン等のチャンネルスキャンを行って(S3)、比較対象のAP2から送信されたビーコンを無線LANインタフェース14により受信する。そして、AP1のCPU11(の優先度判定部21)は、受信したビーコンに含まれる比較対象のAP2の優先度情報と、RAM13上の(フラッシュROM12からRAM13に読み出した)自機の優先度情報とを比較して、自機(AP1)とAP2のいずれの優先度が高いかを判定する(S4)。
図3に示される例では、自機(AP1)の方が、AP2よりも優先度が高いので(S4でYES)、AP1のCPU11は、S5に進む。そして、自機(AP1)の優先度(優先度1)が、AP1〜3のうち、最も高いので(S5でYES)、S6に進んで、自機とAP2の両方が使用可能な通信チャンネル(望ましくは、後述するように、AP1〜3の全てが使用可能な通信チャンネル)を求める。
【0036】
具体的には、AP1のCPU11(のチャンネル判定部23)は、自機の無線LANインタフェース14によるレーダ波の検出結果や、ユーザによる使用チャンネルの制限の設定等に基づき、自機(AP1)が使用可能な通信チャンネルを判定する。そして、AP1のCPU11(のチャンネル選択更新部24)は、この判定結果(現時点において、AP1が使用可能な通信チャンネルの判定結果)と、上記のAP2から無線LANインタフェース14により受信したビーコンに含まれる、AP2のチャンネル・リスト(AP2と、AP2に直接無線接続されているAP(AP1及びAP3)とが使用可能な通信チャンネルのリスト)とに基づいて、自機(AP1)と、チャンネル・リストの送信元のAP2と、このAP2に直接無線接続されているAP3の全てが使用可能な通信チャンネルを求める。そして、これらの使用可能な通信チャンネルのうち、空いている通信チャンネルのいずれか(自機の周辺の電波状況から見て使用に適した空きチャンネル)を、自機(AP1)がWDS通信(自機(AP1)に直接無線接続している他のAP2との無線通信)に使用する通信チャンネルとして選択して(S6)、自機の記憶部20に記憶されている自機使用通信チャンネル19を、上記の選択した通信チャンネルに書き替える。
【0037】
なお、AP1のCPU11は、AP1〜3の全てが使用可能な通信チャンネルが存在しない場合には、上記の自機(AP1)が使用可能な通信チャンネルの判定結果と、AP2のチャンネル・リストに含まれる、有効チャンネル情報(AP2が選択可能な通信チャンネルのリスト)と、無効チャンネル情報に含まれる、AP2自身が使用できない通信チャンネルのリストとに基づいて、AP1とAP2が使用可能な通信チャンネルを求める。そして、AP1とAP2が使用可能な通信チャンネルのうち、空いている通信チャンネルのいずれかを、自機(AP1)がWDS通信(自機に直接無線接続している他のAP2との無線通信)に使用する通信チャンネルとして選択して(S6)、自機の記憶部20に記憶されている自機使用通信チャンネル19を、上記の選択した通信チャンネルに書き替える。
【0038】
上記S6で選択した通信チャンネルが、例えば、チャンネル64(CH64)であったとすると、AP1のCPU11は、自機がWDS通信に使用する通信チャンネルをCH64に変更して、
図3の(1)の矢印に示されるように、CH64で、自機の(優先度1を示す)優先度情報を含むビーコンを送信する(S7)。上記のように、各AP1〜3の優先度情報としては、例えば、各AP1〜3が属する無線LANのBSSIDが用いられるが、本実施形態では、各AP1〜3が送信するビーコンには、上記の各AP1〜3の属する無線LANのBSSIDに加えて(とは別に)、各AP1〜3の優先度情報が含まれる。なお、
図4中のS1における、「WDS通信に使用する通信チャンネルを変更する(再設定する)必要」がある場合には、上記のDFS機能による干渉回避等のために通信チャンネルを変更する(選択し直す)必要がある場合に加えて、自APに直接無線接続されているAPのチャンネル・リストが更新された場合が含まれる。
【0039】
A−3−2.
図3中のAP2の通信チャンネル決定処理
一方、AP2の方は、AP1と異なり、レーダ波を検出しておらず、自機はWDS通信に使用する通信チャンネルを変更する(再設定する)必要がないかもしれないが(
図4のS1でNO)、上記のように、AP1が、WDS通信に使用する通信チャンネルを、CH52からCH64に変更すると、AP2は、CH52で行っていたAP1との通信が途絶えるので(S2でYES)、AP1と同様に、上記S3のチャンネルスキャンを行う。
【0040】
AP2のCPU11(の優先度判定部21)は、上記S3のチャンネルスキャンにおいて、上記S7で比較対象のAP1が送信したビーコンを受信すると、受信したビーコンに含まれる比較対象のAP1の優先度情報と、(フラッシュROM12の記憶部20から読み出された、)RAM13上の自機(AP2)の優先度情報とを比較して、自機(AP2)と比較対象のAP1のいずれの優先度が高いかを判定する(S4)。
図3に示される例では、AP1(比較対象無線中継装置)の方が、自機(AP2)よりも優先度が高いので(S4でNO)、AP2のCPU11(のチャンネル判定部23)は、自機の無線LANインタフェース14によるレーダ波の検出結果等に基づいて、相手機(AP1)が自機とのWDS通信に使用している通信チャンネル(CH64)が、自機が合わせることができる通信チャンネル(自機が使用可能な通信チャンネル)であるか否かを判定する(S8)。
【0041】
この結果、合わせることができる通信チャンネルである場合には(S8でYES)、AP2のCPU11(のチャンネル更新部22)は、自機の記憶部20に記憶されている自機使用通信チャンネル19を、比較対象のAP1が自機との無線通信に使用している通信チャンネルに書き替えて、自機が(自機に直接無線接続している他のAP1及びAP3との)WDS通信に使用する通信チャンネルを、相手機(比較対象のAP1)が自機とのWDS通信に使用している通信チャンネル(CH64)に合わせるように制御する(S9)。すなわち、AP2のCPU11は、自機がWDS通信に使用する通信チャンネルをCH64に変更して、
図3の(2)の矢印に示されるように、CH64で、自機の(優先度2を示す)優先度情報と、自機のチャンネル・リストとを含むビーコンを送信する(S10)。
【0042】
A−3−3.
図3中のAP3の通信チャンネル決定処理
また、AP2と同様に、AP3も、WDS通信の相手機(比較対象のAP2)が、WDS通信に使用する通信チャンネルを、CH52からCH64に変更すると、CH52で行っていたAP2との通信が途絶えるので(S2でYES)、上記S3のチャンネルスキャンを行う。このチャンネルスキャンにおいて、上記S10でAP2がCH64で送信したビーコンを受信すると、AP3のCPU11(の優先度判定部21)は、受信したビーコンに含まれる比較対象のAP2の優先度情報と、RAM13上の自機(AP3)の優先度情報とを比較して、自機(AP3)と比較対象のAP2のいずれの優先度が高いかを判定する(S4)。
図3に示される例では、AP2(比較対象の無線中継装置)の方が、自機(AP3)よりも優先度が高いので(S4でNO)、AP3のCPU11(のチャンネル判定部23)は、自機の無線LANインタフェース14によるレーダ波の検出結果に基づいて、相手機(比較対象のAP2)が自機とのWDS通信に使用している通信チャンネル(CH64)が、自機が合わせることができる通信チャンネル(自機が使用可能な通信チャンネル)であるか否かを判定する(S8)。
【0043】
この結果、合わせることができる通信チャンネルである場合には(S8でYES)、AP3のCPU11(のチャンネル更新部22)は、自機の記憶部20に記憶されている自機使用通信チャンネル19を、比較対象のAP2が自機との無線通信に使用している通信チャンネルに書き替えて、自機が(自機に直接無線接続している他のAP2との)WDS通信に使用する通信チャンネルを、相手機(比較対象のAP2)が自機とのWDS通信に使用している通信チャンネル(CH64)に合わせるように制御する(S9)。すなわち、AP3のCPU11は、自機がWDS通信に使用する通信チャンネルをCH64に変更して、CH64で、自機の(優先度3を示す)優先度情報と、自機のチャンネル・リストとを含むビーコンを送信する(S10)。
【0044】
上記のAP3の通信チャンネル決定処理において、AP3がWDS通信に使用するようになったCH64は、AP2がAP3とのWDS通信に使用している通信チャンネルと同じであるので、上記のようにAP3がWDS通信に使用する通信チャンネルをCH64に変更しても、AP2がAP3と通信できなくなる(AP2とAP3との通信が途絶する)ことはない(S2でNO)。従って、上記のようにAP3がWDS通信に使用する通信チャンネルを変更したことに起因して、AP2が、
図4中のS3乃至S10の処理を繰り返すことはないので、変更後の(WDS通信に使用する)通信チャンネルを、AP1〜3のうち最も優先度が高いAP1が選択した(AP1がWDS通信に使用している)CH64に収束させることができる。
【0045】
A−3−4.優先度が低い方のAPが、チャンネルを合わせられない場合の処理
次に、上記
図4に加えて、
図5を参照して、優先度が低い方のAPが、優先度が高い方のAPの通信チャンネルに合わせられない場合(
図4中のS8でNOの場合)の処理について説明する。例えば、
図5のAP1〜3が、CH52でWDS通信を行っているときに、AP2が、(最初に)CH52でレーダ波を検出して、DFS機能による干渉回避のために、WDS通信に使用する通信チャンネルを変更する必要が生じたとする。この場合、AP2のCPU11は、チャンネルスキャンを行って(S3)、(未だ通信チャンネルを変更していない)比較対象のAP1からCH52で送信される(AP1の優先度情報を含む)ビーコンを受信し、自機(AP2)と比較対象のAP1のいずれの優先度が高いかを判定する(S4)。
【0046】
図5に示される例では、AP1(比較対象の無線中継装置)の方が、自機(AP2)よりも優先度が高いので(S4でNO)、AP2のCPU11(のチャンネル更新部22)は、S8の判定処理がなければ、S9の処理に進んで、AP1がWDS通信に使用しているCH52が、自機(AP2)の周辺の電波環境においてレーダ波の干渉を受けている通信チャンネル(本来は、AP2が合わせることができない通信チャンネル)であるにも拘わらず、自機(AP2)がWDS通信に使用する通信チャンネルを、レーダ波の干渉を受けているCH52に合わせざるを得なくなる。
【0047】
このため、本実施形態における通信チャンネル決定処理では、
図4中のS8の判定処理を設けて、自機の方が相手機よりも優先度が低い場合でも、無条件に、自機がWDS通信に使用する通信チャンネルを、相手機(比較対象のAP)が自機とのWDS通信に使用している通信チャンネルに合わせるのではなく、相手機が自機とのWDS通信に使用している通信チャンネルが、自機が合わせることができる通信チャンネルである場合(自機の周辺の電波環境においてレーダ波の干渉を受けている等の使用不可能な通信チャンネルでない場合)に限り、相手機の通信チャンネルに合わせるようにした。
【0048】
具体的には、
図5に示される例の場合、比較対象のAP1の方が、自機(AP2)よりも優先度が高いので(S4でNO)、AP2のCPU11は、自機の無線LANインタフェース14によるレーダ波の検出結果に基づいて、相手機(比較対象のAP1)が自機とのWDS通信に使用している通信チャンネル(CH52)が、自機が合わせることができる通信チャンネルであるか否かを判定する(S8)。この結果、CH52がレーダ波の干渉を受けているため、自機が合わせることができない通信チャンネルであるので(S8でNO)、AP2のCPU11は、
図3中のAP1と同様に、チャンネル判定部23による判定結果(現時点において、AP2が使用可能な通信チャンネルの判定結果)と、自機(AP2)に直接無線接続されている他のAP(AP1及びAP3)から受信したビーコンに含まれる、AP1及びAP3のチャンネル・リストとに基づいて、AP1〜AP3の全てが使用可能な通信チャンネルを求めて、これらの通信チャンネルのうち、空いている通信チャンネルのいずれかを、自機が(直接無線接続している他のAP1及びAP3との)WDS通信に使用する通信チャンネルとして選択する(S6)。また、この際、AP2のCPU11は、上記の自機の無線LANインタフェース14によるレーダ波の検出結果に基づいて、RAM13に記憶している自機のチャンネル・リストの無効チャンネル情報に含まれる、自機が使用できない通信チャンネルのリストを更新する。
【0049】
上記の選択した通信チャンネルが、例えば、CH64であったとすると、AP2のCPU11は、自機がWDS通信に使用する通信チャンネルをCH64に変更して、
図5の(11)の矢印に示されるように、CH64で、自機の(優先度2を示す)優先度情報と、自機のチャンネル・リストとを含むビーコンを送信する(S7)。
【0050】
上記のように、AP2が、WDS通信に使用する通信チャンネルを、CH52からCH64に変更すると、AP1は、CH52で行っていたAP2との通信が途絶えるので(S2でYES)、上記「A−3−1」の処理と同様に、S3〜S6の処理を行って、自機(AP1)と相手機(AP2)の両方が使用可能な通信チャンネル(AP1〜AP3の全てが使用可能な通信チャンネルが存在する場合には、AP1〜AP3の全てが使用可能な通信チャンネル)を求める。そして、これらの通信チャンネルのうち、空いている通信チャンネルのいずれかを、自機がWDS通信に使用する通信チャンネルとして選択する(S6)。
【0051】
ただし、上記の自機(AP1)と相手機(AP2)の両方が使用可能な通信チャンネルは、AP2から受信したAP2のチャンネル・リストに含まれる、AP2の有効チャンネル情報、及びAP2自身が使用できない通信チャンネルのリスト(無効チャンネル情報の一部)と、自機(AP1)のチャンネル判定部23による(自機(AP1)が使用可能な通信チャンネルの)判定結果とに基づいて判定されるので、AP1とAP2の両方が使用可能な通信チャンネルに、これらのAPの周辺においてレーダ波の干渉を受けている通信チャンネル(例えば、上記のCH52)が含まれることはない。従って、AP1が、WDS通信の相手機であるAP2が合わせることができない(例えば、AP2の周辺の電波環境においてレーダ波の干渉を受けている)通信チャンネルを、自機がWDS通信に使用する通信チャンネルとして選択することはない。
【0052】
ここで、AP1により選択された通信チャンネルが、例えば、チャンネル104(CH104)であったとすると、AP1のCPU11は、自機がWDS通信に使用する通信チャンネルをCH104に変更して、
図5の(12)の矢印に示されるように、CH104で、自機の(優先度1を示す)優先度情報を含むビーコンを送信する(S7)。この後は、AP2が、上記A−3−2と同様な処理を行って、自機がWDS通信に使用する通信チャンネルを、相手機(比較対象のAP1)が自機とのWDS通信に使用している通信チャンネル(CH104)に合わせた後(S9)、
図5の(13)の矢印に示されるように、このCH104で、自機の(優先度2を示す)優先度情報と、自機のチャンネル・リストとを含むビーコンを送信する(S10)。これに伴い、AP3のCPU11が、上記A−3−3と同様な処理を行って、自機がWDS通信に使用する通信チャンネルを、相手機(比較対象のAP2)が自機とのWDS通信に使用している通信チャンネル(CH104)に合わせるように制御する。
【0053】
上記のように、
図4に示される本実施形態の通信チャンネル決定処理によれば、優先度が低い方のAPが、優先度が高い方のAPがWDS通信に使用している通信チャンネルに合わせられない場合でも、優先度が高い方のAPが、優先度が低い方のAPから送信されたビーコンに含まれるチャンネル・リストを用いて、自機と相手機(優先度が低い方のAP)の両方が使用可能な通信チャンネルの中から、自機がWDS通信に使用する通信チャンネルを選択し直す。これにより、上記の「優先度が低い方のAPが、優先度が高い方のAPの通信チャンネルに合わせられない」という状態を、自律的に解消することができる。
【0054】
A−3−5.
図3中のAP3がWDS通信に使用する通信チャンネルを変更する必要が生じた場合の処理
次に、AP1〜3が、
図3のように配置されている時に、AP3が、WDS通信に使用する通信チャンネルを変更する必要が生じた場合の処理について、上記
図4に加えて、
図6を参照して、説明する。例えば、
図6のAP1〜3が、CH52でWDS通信を行っているときに、AP3が、(最初に)CH52でレーダ波を検出して、DFS機能による干渉回避のために、WDS通信に使用する通信チャンネルを変更する必要が生じたとする。この場合、AP3のCPU11は、チャンネルスキャンを行って(S3)、(未だ通信チャンネルを変更していない)比較対象のAP2からCH52で送信される(AP2の優先度情報を含む)ビーコンを受信し、自機(AP3)と比較対象のAP2のいずれの優先度が高いかを判定する(S4)。
【0055】
図6に示される例では、比較対象のAP2(他の無線中継装置)の方が、自機(AP3)よりも優先度が高いので(S4でNO)、AP3のCPU11は、自機の無線LANインタフェース14によるレーダ波の検出結果に基づいて、相手機(AP2)が自機とのWDS通信に使用している通信チャンネル(CH52)が、自機が合わせることができる通信チャンネルであるか否かを判定する(S8)。この結果、CH52がレーダ波の干渉を受けているため、自機が合わせることができない通信チャンネルであるので(S8でNO)、AP3のCPU11は、チャンネル判定部23による判定結果(現時点において、AP3が使用可能な通信チャンネルの判定結果)と、自機(AP3)に直接無線接続されているAP2から受信したビーコンに含まれる、AP2のチャンネル・リストとに基づいて、少なくとも自機(AP3)とAP2が使用可能な通信チャンネルを求めて、これらの通信チャンネルのうち、空いている通信チャンネルのいずれかを、自機が(直接無線接続しているAP2との)WDS通信に使用する通信チャンネルとして選択する(S6)。また、この際、AP3のCPU11は、上記の自機の無線LANインタフェース14によるレーダ波の検出結果に基づいて、RAM13に記憶している自機のチャンネル・リストの無効チャンネル情報に含まれる、自機が使用できない通信チャンネルのリストを更新する。
【0056】
上記の選択した通信チャンネルが、例えば、CH104であったとすると、AP3のCPU11は、自機がWDS通信に使用する通信チャンネルをCH104に変更して、
図6の(15)の矢印に示されるように、CH104で、自機の(優先度3を示す)優先度情報と、自機のチャンネル・リストとを含むビーコンを送信する(S7)。
【0057】
上記のように、AP3が、WDS通信に使用する通信チャンネルを、CH52からCH104に変更すると、AP2のCPU11は、CH52で行っていたAP3との通信が途絶えるので(S2でYES)、チャンネルスキャンを行って(S3)、AP3からCH104で送信されるビーコンを受信する。そして、AP2のCPU11は、このビーコンに含まれるAP3のチャンネル・リストにおける、AP3自身が使用できない通信チャンネルのリスト(無効チャンネル情報の一部)に基づいて、AP3がCH52を使用できなくなったことを検出して、自機(AP2)のチャンネル・リストにおける無効チャンネル情報(AP3が使用できない通信チャンネルのリスト)を更新する。また、AP2のCPU11は、上記のAP3から受信したビーコンに含まれるAP3の優先度情報と、RAM13上の自機(AP2)の優先度情報とを比較して、自機(AP2)とAP3のいずれの優先度が高いかを判定する(S4)。そして、AP2のCPU11は、自機(AP2)の方が、AP3よりも優先度が高いが(S4でYES)、自機の優先度(優先度2)が、AP1〜3のうち、最高の優先度ではないので(S5でNO)、自機がWDS通信に使用する通信チャンネルを変更せず、
図6の(16)の矢印に示されるように、元の通信チャンネル(CH52)で、自機の(優先度2を示す)優先度情報とチャンネル・リストを含むビーコンを送信する(S7)。
【0058】
AP1のCPU11は、AP2からビーコンを受信すると、このビーコンに含まれているAP2のチャンネル・リストが更新されたことを検出し、自機(AP1)のWDS通信に使用する通信チャンネルを変更する(再設定する)必要があると判断する(S1でYES)。そして、AP1のCPU11は、上記A−3−1の場合と同様に、
図4中のS3〜S7の処理を行って、
図6の(17)の矢印に示されるように、CH64で、自機の(優先度1を示す)優先度情報を含むビーコンを送信する(S7)。また、AP2のCPU11も、上記A−3−2と同様な処理を行って、自機(AP2)よりもAP1の方が、優先度が高いので(S4でNO)、相手機(AP1)が自機とのWDS通信に使用している通信チャンネル(CH64)が、自機が合わせられない通信チャンネルでなければ(S8でYES)、自機(AP2)がWDS通信に使用する通信チャンネルを、上記の相手機の通信チャンネル(CH64)に変更する(S9)。そして、AP2は、
図6の(18)の矢印に示されるように、CH64で、自機の(優先度2を示す)優先度情報を含むビーコンを送信する(S10)。また、AP3のCPU11も、上記
図3の場合(A−3−3)と同様な処理を行って、自機が(直接無線接続しているAP2との)WDS通信に使用する通信チャンネルを、相手機(AP2)が自機とのWDS通信に使用している通信チャンネル(CH64)に合わせる(S9)。
【0059】
A−4.第1の実施形態のまとめ
上記のように、本実施形態の無線中継装置であるAP1〜3によれば、ディジーチェーン方式で無線接続されたAP1〜3の各々が、自機と比較対象のAPのいずれの優先度が高いかを判定して、比較対象のAPの優先度が高いときに、自機の記憶部20に記憶されている自機使用通信チャンネル19を、(自機よりも優先度が高い)比較対象のAPが自機との無線通信に使用している通信チャンネルに書き替える。これにより、3台のAPが、ディジーチェーン方式で無線接続(WDS接続)されているときに、AP間の無線通信(WDS通信)に使用している通信チャンネルを変更する(選択し直す)必要がある場合でも、変更後(再選択後)のWDS通信に使用する通信チャンネルを、上記の3台のAPのうち最も優先度が高いAP(
図3に示される例では、AP1)がWDS通信に使用している通信チャンネル(最も優先度が高いAPが、(自機に直接無線接続している他のAPとの)WDS通信に使用する通信チャンネルとして選択した通信チャンネル)に収束させることができる可能性が高くなる。
【0060】
上記の「AP間のWDS通信に使用している通信チャンネルを変更する必要がある場合」には、(1)上記のDFS機能による干渉回避等のために通信チャンネルを変更する(選択し直す)必要がある場合に加えて、(2)APの起動時、(3)APの増設を含む設置状態の変更時、(4)設定変更のためにAPの使用する通信チャンネルを変更する必要がある場合、及び(5)自APに直接無線接続されているAPのチャンネル・リストが更新された場合が含まれる。そして、上記(1)〜(5)のいずれの場合も、各AP1〜3が起動を完了して、自機の優先度情報を含むビーコンを送信するようになった後は、各AP1〜3が、上記S3乃至S10の処理を実行することにより、変更後(再選択後)のWDS通信に使用する通信チャンネルを、上記の3台のAPのうち最も優先度が高いAPが、WDS通信に使用する通信チャンネルとして選択した通信チャンネルに収束させることができる可能性が高くなる。
【0061】
また、この第1の実施形態の通信チャンネル決定処理には、B−3で後述する問題(WDS通信に使用する通信チャンネルを収束させられない場合があるという問題)があるが、例えば、ディジーチェーン方式でWDS接続されているAPの数が3台の場合には、真ん中に配置するAP(他の2つのAPの両方にWDS接続するAP:
図3中のAP2に相当)を、優先度が最も低いAPにしなければ、変更後の通信チャンネルを、3台のAPのうち最も優先度が高いAPがWDS通信に使用している通信チャンネルに収束させることができる。
【0062】
A−5.第1の実施形態の変形例
上記の説明では、各AP1〜3が送信するビーコンに、各AP1〜3の属する無線LANのBSSIDとは別に、各AP1〜3の優先度情報を付加した場合の例を示したが、各AP1〜3の優先度情報を付加せずに、各AP1〜3が送信するビーコンに(一般的に)含まれる、無線LANのBSSID(すなわち、各AP1〜3のMACアドレス)を、直接、各AP1〜3の優先度情報として用いてもよい。
【0063】
B.第2実施形態
B−1.ネットワーク構成、及びAP1〜3の概略構成
次に、本発明の第2の実施形態の無線中継装置であるAP1〜3について説明する。第2の実施形態のAP1〜3は、WDS通信に使用する通信チャンネルの決定処理のみが、第1の実施形態のAP1〜3と異なっており、AP1〜3の周辺のネットワーク構成、及びAP1〜3の回路構成(電気的ブロック構成)は、第1の実施形態のAP1と基本的に同じである。従って、
図1及び
図2に付した符号と同じ符号を用いて、以下の説明を行う。
【0064】
B−2.第2の実施形態の通信チャンネル決定処理の第1の実施形態との相違点
図7は、第2の実施形態の各AP1〜3において行われる通信チャンネル決定処理のフローチャートを示す。第2の実施形態における(WDS通信に使用する)通信チャンネルの決定処理は、優先度の低い方のAPが、優先度の高い方のAPの優先度情報を、自機の優先度情報としてビーコンに乗せて送信する点が、第1の実施形態の通信チャンネルの決定処理と異なっており、それ以外の点は、基本的に、第1の実施形態と同様である。具体的には、
図7に示される第2の実施形態の通信チャンネル決定処理におけるS11〜S19の処理は、
図4に示される第1の実施形態の通信チャンネル決定処理におけるS1〜S9の処理と同様である。そして、
図7の処理と
図4の処理の相違点は、
図4のS10では、優先度の低い方のAPによってビーコンに含めて送信される優先度情報が、自機の優先度情報であったのに対して、
図7のS20では、優先度の低い方のAPによってビーコンに含めて送信される優先度情報が、相手機(優先度の高い方のAP)の優先度情報であるという点である。
【0065】
B−3.第1の実施形態の通信チャンネル決定処理における問題点
上記のように、第1の実施形態の通信チャンネル決定処理によれば、3台以上のAPが、ディジーチェーン方式でWDS接続されているときに、AP間のWDS通信に使用している通信チャンネルを変更する(選択し直す)必要がある場合でも、変更後(再選択後)の通信チャンネルを、収束させることができる可能性が高い。しかしながら、第1の実施形態の通信チャンネル決定処理では、例えば、
図8に示されるように、3台のAPが、ディジーチェーン方式でWDS接続されているときに、優先度が最も低いAP(AP2)を、真ん中に配置した(AP1とAP3の両方にWDS接続するAPとした)場合には、以下のような問題が起きる。この問題について、上記
図4のフローチャートと
図8を参照して説明する。
【0066】
上記
図3の場合と同様に、
図8中のAP1〜3が、CH52でWDS通信を行っているときに、AP1が、レーダ波を検出して、DFS機能による干渉回避等のために、WDS通信に使用する通信チャンネルを変更する必要が生じたとする。この場合(
図4のS1でYES)、AP1のCPU11は、上記
図4中のS3〜S7の処理を行って、
図8の(21)の矢印に示されるように、CH64で、自機の(優先度1を示す)優先度情報を含むビーコンを送信する(S7)。また、AP2のCPU11も、上記
図3の場合と同様な処理を行って、自機(AP2)よりもAP1の方が、優先度が高いので(S4でNO)、相手機(AP1)が自機とのWDS通信に使用している通信チャンネル(CH64)が、自機が合わせられない通信チャンネルでなければ(S8でYES)、自機の記憶部20に記憶されている自機使用通信チャンネル19を、(比較対象の)AP1が自機との無線通信に使用している通信チャンネルに書き替えて、自機(AP2)がWDS通信に使用する通信チャンネルを、上記の相手機(AP1)の通信チャンネル(CH64)に変更する(S9)。そして、AP2は、
図8の(22)の矢印に示されるように、CH64で、自機の(優先度3を示す)優先度情報を含むビーコンを送信する(S10)。
【0067】
しかしながら、
図3に示されるケースと異なり、
図8に示されるケースでは、AP2から送信されたビーコンを受信するAP3の方が、ビーコンの送信元のAP2よりも、優先度が高いので(S4でYES)、AP3は、WDS通信に使用する通信チャンネルを、相手機(AP2)が自機とのWDS通信に使用している通信チャンネル(CH64)に合わせない。具体的には、AP3のCPU11は、自機の優先度(優先度2)が、AP1〜3のうち、最高の優先度ではないので(S5でNO)、自機がWDS通信に使用する通信チャンネルを変更せず、
図8の(23)の矢印に示されるように、CH52で、自機の(優先度2を示す)優先度情報を含むビーコンを送信する(S7)。
【0068】
上記のAP3の通信チャンネル決定処理において、AP3がWDS通信に使用するCH52は、AP2がAP3とのWDS通信に使用している通信チャンネル(CH64)とは異なるので、AP3がWDS通信に使用する通信チャンネルを変更したことに起因して、AP2は、AP3との通信ができなくなる(S2でYES)。このため、AP2が、
図4中のS3以降の処理を繰り返す。具体的には、AP2のCPU11は、S3のチャンネルスキャンを行って、AP3から受信したビーコンに含まれるAP3の優先度情報と、自機(AP2)の優先度情報とを比較して、自機(AP2)よりもAP3の方が、優先度が高いので(S4でNO)、相手機(AP3)が自機とのWDS通信に使用している通信チャンネル(CH52)が、自機が合わせられない通信チャンネルでなければ(S8でYES)、自機(AP2)がWDS通信に使用する通信チャンネルを、このCH52に変更する(S9)。
【0069】
しかしながら、上記のようにして、AP2がWDS通信に使用するようになったCH52は、AP1がAP2とのWDS通信に使用している通信チャンネル(CH64)とは異なるので、AP2が通信チャンネルを変更したことに起因して、AP1は、AP2との通信ができなくなる(S2でYES)。これにより、AP1が、上記と同様な処理(
図4中のS3〜S7の処理)を繰り返して、再度、(自機の周辺の電波状況から見て使用に適した)CH64で、自機の(優先度1を示す)優先度情報を含むビーコンを送信する(S7)。これにより、CH52を使用しているAP2は、AP1との通信ができなくなるので(S2でYES)、上記と同様な処理を繰り返し、自機(AP2)よりもAP1の方が、優先度が高いので(S4でNO)、自機がWDS通信に使用する通信チャンネルを、AP1が自機とのWDS通信に使用している通信チャンネル(CH64)に戻す(S9)。このようにして、AP1〜3が、
図4中のS3〜S10の処理を繰り返すので、変更後の(WDS通信に使用する)通信チャンネルを、収束させることができない。
【0070】
B−4.第2の実施形態の通信チャンネル決定処理の詳細
上記
図7に示される第2の実施形態の通信チャンネル決定処理は、上記の第1の実施形態の通信チャンネル決定処理における問題点を解消する。以下に、
図9を参照して、上記
図7に示される通信チャンネル決定処理を採用した場合における、(WDS通信に使用する)通信チャンネル収束の仕組みについて説明する。
図9に示されるAP1〜3の優先度の並びは、上記
図8と同様であり、真ん中のAP(AP2)の優先度が、最も低い。
【0071】
図9において、上記
図8の場合と同様に、AP1〜3が、CH52でWDS通信を行っているときに、AP1が、レーダ波を検出して、DFS機能による干渉回避等のために、WDS通信に使用する通信チャンネルを変更する必要が生じたとする。この場合(
図7のS11でYES)、AP1のCPU11は、上記
図4中のS3〜S7と同様な処理(
図7のS13〜S17)を行って、
図9の(31)の矢印に示されるように、CH64で、自機の(優先度1を示す)優先度情報を含むビーコンを、無線LANインタフェース14により送信する。
【0072】
また、AP2のCPU11も、上記
図8の場合と同様な処理を行って、自機(AP2)よりもAP1の方が、優先度が高いので(S14でNO)、相手機(AP1)が自機とのWDS通信に使用している通信チャンネル(CH64)が、自機が合わせられない通信チャンネルでなければ(S18でYES)、自機がWDS通信に使用する通信チャンネルを、相手機(AP1)が使用している通信チャンネル(CH64)に変更する(合わせる)(S19)。ただし、第1の実施形態の通信チャンネル決定処理では、
図8中の(22)の矢印に示されるように、自機(AP2)が、変更後の(合わせた)通信チャンネル(CH64)で、自機の(優先度3を示す)優先度情報を含むビーコンを、送信した(
図4中のS10)のに対して、第2の実施形態の通信チャンネル決定処理では、
図9中の(32)の矢印に示されるように、自機(AP2)が、変更後の(合わせた)CH64で、相手機(AP1)の(優先度1を示す)優先度情報を含むビーコンを送信する(
図7中のS20)。すなわち、AP2のCPU11は、優先度判定部21による判定の結果、比較対象のAP1の優先度が高いときに、比較対象のAP1の優先度情報を、自機の優先度情報として、優先度情報送信部26により送信する。
【0073】
一方、AP3も、S13のチャンネルスキャン処理までは、第1の実施形態(
図8に示される例)と同様な処理を行う。けれども、
図9に示される例では、チャンネルスキャンにおいて、AP3がAP2から受信するビーコンに含まれる優先度情報は、上記のように、AP1の(優先度1を示す)優先度情報である。このため、S14の判定処理において、AP3のCPU11(の優先度判定部21)は、相手機(AP2)から受信したビーコンに含まれる(優先度1を示す)優先度情報と、RAM13上の自機の優先度情報とを比較して、相手機(AP2)の方が、自機(AP3)よりも優先度が高いと判定する(S14でNO)。従って、AP3のCPU11(のチャンネル更新部22)は、相手機(AP2)が自機とのWDS通信に使用している通信チャンネル(CH64)が、自機が合わせられない通信チャンネルでなければ(S18でYES)、自機がWDS通信に使用する通信チャンネルを、相手機(AP2)が自機とのWDS通信に使用している通信チャンネル(CH64)に合わせるように制御する(S19)。そして、AP3のCPU11は、自機がWDS通信に使用する通信チャンネルをCH64に変更して、CH64で、チャンネルを合わせた相手機(AP2)から受信した(優先度1を示す)優先度情報と、自機(AP3)のチャンネル・リストとを含むビーコンを、無線LANインタフェース14により送信する(S20)。
【0074】
上記のAP3の通信チャンネル決定処理において、AP3がWDS通信に使用するようになったCH64は、AP2がAP3とのWDS通信に使用している通信チャンネルと同じであるので、上記のように、AP3がWDS通信に使用する通信チャンネルをCH64に変更しても、AP2がAP3と通信できなくなる(AP2とAP3との通信が途絶する)ことはない(S12でNO)。従って、上記のようにAP3がWDS通信に使用する通信チャンネルを変更したことに起因して、AP2(及びAP1)が、
図7中のS13乃至S20の処理を繰り返すことはないので、変更後の(WDS通信に使用する)通信チャンネルを、AP1〜3のうち最も優先度が高いAP1が選択した(AP1がWDS通信に使用している)CH64に収束させることができる。
【0075】
上記のように、本実施形態のAP1〜3によれば、AP1〜3のうち、自機に直接無線接続している比較対象のAPから受信したビーコンに含まれる優先度情報と、自機の優先度情報とを比較して、自機と比較対象のAPのいずれの優先度が高いかを判定し、比較対象のAPの優先度が高いときに、比較対象のAPの優先度情報を、自機の優先度情報として、無線LANインタフェース14により送信するようにした。これにより、自機がWDS通信に使用する通信チャンネルを、最も優先度が高いAP(例えば、
図8中のAP1)が選択した通信チャンネルに合わせたAP(例えば、
図8中のAP2)が、自機がWDS通信に使用する通信チャンネルを、再度変更する(例えば、
図8中のAP3がWDS通信に使用しているCH52に合わせる)ことがなくなる。従って、3台以上のAPが、ディジーチェーン方式でWDS接続されているときに、AP間のWDS通信に使用している通信チャンネルを変更する(選択し直す)必要がある場合でも、変更後(再選択後)の通信チャンネルを、3台以上のAPのうち最も優先度が高いAP(例えば、
図9中のAP1)がWDS通信に使用している通信チャンネル(最も優先度が高いAPが、WDS通信に使用する通信チャンネルとして選択した通信チャンネル)に収束させることができる。
【0076】
D.変形例:
なお、本発明は、上記の各実施形態の構成に限られず、発明の趣旨を変更しない範囲で種々の変形が可能である。次に、本発明の変形例について説明する。
【0077】
D−1.変形例1:
上記の第1の実施形態では、各APの優先度情報として、フラッシュROM12から読み出した自機の(固有の)優先度情報を用いたが、ディジーチェーン方式でWDS接続された3台以上のAPのうち、前回のWDS接続時に最も多くのAPと直接WDS接続されたAPの優先度情報を、これらのAPのうち、最も高い優先度を示す優先度情報に設定してもよい。具体的には、前回のWDS接続時に、各AP間で、自機が直接WDS接続しているAPの数を、相互に通知し合って、この結果、最も多くのAPとWDS接続されているAPが、自機が最も多くのAPとWDS接続されたAPであるという情報(最多接続AP情報)を、フラッシュROM12に格納しておく。そして、これらのAP間のWDS通信に使用する通信チャンネルを変更する(再設定する)必要が生じたときに、上記の前回接続時に最も多くのAPと直接WDS接続されたAPが、自機の優先度情報を、上記のAPのうち、最も高い優先度を示す優先度情報(例えば、理論上の最高の優先度を表す優先度情報)に設定して、この優先度情報を、ビーコンに乗せて(含めて)、送信するようにさせる。
【0078】
図11は、変形例1の各AP1〜3の概略の電気的ブロック構成を示す。本変形例のAP1〜3の回路構成(電気的ブロック構成)は、CPU11が、優先度情報更新部51を有している点のみが、上記の各実施形態と異なり、その他の回路構成は、上記の各実施形態と同じである。
【0079】
例えば、前回のWDS接続時に、上記
図3で説明したような処理が行われたとすると、前回のWDS接続時に最も多くのAPとWDS接続されたAPは、AP2である。この場合、AP1〜3が、CH64でWDS通信を行っているときに、AP2が、(最初に)レーダ波を検出して、DFS機能による干渉回避のために、WDS通信に使用する通信チャンネルを変更する(再設定する)必要が生じたとする。このとき、AP2(の優先度情報更新部51)は、自機のフラッシュROM12に格納された上記の最多接続AP情報に基づいて、自機が前回のWDS接続時に最も多くのAPとWDS接続されたAPであると判定して、記憶部20に記憶された自機の優先度情報18を、AP1〜3のうち、最も高い優先度(優先度1)を示す優先度情報に書き替える。そして、
図10に示されるように、AP1〜3のうち、最も高い優先度(優先度1)を示す優先度情報を、自機が選択した通信チャンネル(CH52)で、ビーコンに乗せて、送信する。これにより、AP1側とAP3側の両方において、並行して、自機(AP1及びAP3)がWDS通信に使用する通信チャンネルを、相手機(AP2)が自機とのWDS通信に使用している通信チャンネル(CH52)に合わせる動作が行われる。従って、AP間のWDS通信に使用している通信チャンネルを変更する必要がある場合でも、変更後(再選択後)の通信チャンネルを、迅速に収束させることができる可能性を高めることができる。
【0080】
D−2.変形例2:
上記の各実施形態では、ディジーチェーン方式で無線接続されたAPが、3台の場合の例を示したが、ディジーチェーン方式で無線接続されたAPの数は、3台に限られず、4台以上であってもよい。
【0081】
D−2−1.変形例2−1:
また、上記の各実施形態では、ディジーチェーン方式で無線接続されるAP1、AP2、AP3が、それぞれ1台である場合の例を示したが、AP1〜3に対応する装置は、1台に限らない。例えば、AP2に接続されるAP1や、AP2に接続されるAP3に該当するAPは、その一方、或は両方が、複数台で構成されていてもよい。具体的には、例えば、
図12に示されるように、AP1が、AP1−1とAP1−2の2台のAPから構成され、AP3が、AP3−1とAP3−2の2台のAPから構成されていてもよい。この際に、例えば、
図12中のAP1−1とAP1−2が異なる優先度を持つ場合、AP1−1とAP1−2の優先度のうち高い方の優先度をAP1側の優先度として用いて、このAP1側の優先度とAP2の優先度とを比較し、この比較の結果、優先度が低い方のAPが、自機がWDS通信に使用する通信チャンネルを、優先度が高い方のAPがWDS通信に使用している通信チャンネルに合わせるようにすればよい。
図12に示される例では、AP1−1の優先度が最高の優先度(優先度:1)であるため、AP1−2の優先度aが、どんな値であっても、AP1側の優先度は、1になる。また、
図12中のAP2とAP3側の優先度の比較処理も、AP3−1とAP3−2の優先度のうち高い方の優先度をAP3側の優先度として用いて、AP3側の優先度とAP2の優先度の比較を行うようにする。例えば、
図12に示される例では、AP3−1の優先度が3であるため、AP3−2の優先度bが、3よりも低い場合には、AP3側の優先度は、3になる。なお、上記の説明では、AP1やAP3に相当する(対応する)APは複数あっても、AP1−1とAP2間の通信、及びAP1−2とAP2間の通信には、同一の通信チャンネルが用いられ、AP3−1とAP2間の通信、及びAP3−2とAP2間の通信にも、同一の通信チャンネルが用いらることが前提になっている。
【0082】
D−3.変形例3:
上記の各実施形態では、各AP1〜3の優先度情報として、各AP1〜3が属する無線LANのBSSID(すなわち、各AP1〜3のMACアドレス)を用いる場合の例を示したが、各APの優先度情報は、これに限られず、各AP毎にユニークな値を有する情報であればよい。
【0083】
D−4.変形例4:
上記第1の実施形態では、記憶部20に、自機の優先度情報18を格納(記憶)する場合の例を示したが、これに限られず、記憶部に、上記の自機の優先度情報の代わりに、又は自機の優先度情報に加えて、自機が直接無線接続されているAPの優先度情報や、以前の通信チャンネル決定処理において確認された他のAPの優先度情報を格納してもよい。
【0084】
D−5.変形例5:
上記の各実施形態では、2.4GHz帯の周波数帯域を用いて、各無線LAN内の無線通信(各無線LAN内のAPと無線端末との間の通信)を行い、5GHz帯の周波数帯域を用いて、AP間のWDS通信を行う場合の例を示したが、これに限られず、5GHz帯の周波数帯域を用いて、各無線LAN内の無線通信を行ってもよいし、2.4GHz帯の周波数帯域を用いて、AP間のWDS通信を行ってもよい。
【0085】
D−6.変形例6:
本発明は、種々の形態で実現することが可能であり、例えば、通信チャンネル決定方法、通信チャンネル決定プログラム、通信チャンネル決定プログラムを記録した記録媒体等の形態で実現することができる。