(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
【発明を実施するための形態】
【0008】
以下において、本発明の内容について詳細に説明する。尚、本願明細書において「〜」とはその前後に記載される数値を下限値及び上限値として含む意味で使用される。
【0009】
本発明の圧力容器は、ライナーと、前記ライナーの外層を有し、前記外層が、連続繊維と、前記連続繊維に含浸したポリアミド樹脂を含む複合材料から構成され、前記ポリアミド樹脂が、ジアミン由来の構成単位とジカルボン酸由来の構成単位を含み、前記ジアミン由来の構成単位の50モル%以上がキシリレンジアミンに由来することを特徴とする。このような複合材料を外層として用いることにより、外層のガスバリア性を向上させることができる。
このメカニズムは定かではないが、ポリアミド樹脂のメタキシリレン骨格が、ガスバリア性の向上に寄与すると推定される。
以下、本発明の構成について、
図1を例に、詳細に説明する。
【0010】
<ライナー>
ライナー1は、内部に気体が充填される空間を備えるものであり、通常、中空状に形成される。ライナーの材質は、本発明の趣旨を逸脱しない限り特に定めるものではないが、樹脂を主成分とするライナー(以下、「樹脂製ライナー」ということがある)および金属を主成分とするライナー(以下、「金属製ライナー」ということがある)が例示され、樹脂製ライナーが好ましい。
ここで、樹脂を主成分とするライナーとは、ライナーを構成する材料のうち、最も多い成分が樹脂であることを言い、通常は、50質量%以上が樹脂であることをいい、好ましくは80質量%以上が樹脂であることをいう。金属製ライナーにおける主成分についても同様の趣旨である。
【0011】
樹脂製ライナーに用いる樹脂としては、熱可塑性樹脂および熱硬化性樹脂が例示され、ポリオレフィン樹脂、ポリエチレン樹脂、ポリプロピレン樹脂、ポリアミド樹脂、アクリロニトリル−ブタジエン−スチレン共重合体(ABS)樹脂、ポリブチレンテレフタレート樹脂、ポリアセタール樹脂、ポリカーボネート樹脂等が例示され、ポリアミド樹脂が好ましい。ポリアミド樹脂を用いることにより、外層との馴染みが良くなり、樹脂製ライナーと外層の密着性を向上させることができる。特に、樹脂製ライナーに含まれる最も含有量の多い樹脂と、外層に含まれる最も含有量が多い樹脂が同じ樹脂であることが好ましい。
樹脂製ライナーは、ダイレクトブロー成形や射出成形によって成形できる。射出成形によって成形する場合、例えば、ライナーを長手方向に分割した部品(好ましくは2分割した半割部品)を成形し、前記部品を超音波融着などにより融着して中空容器を成形することができる。
金属製ライナーに用いる樹脂としては、アルミニウム合金やマグネシウム合金等の軽合金が例示される。
金属製ライナーを用いる場合、ライナーにピンホールが空いた場合などに、外層を設けておくと、圧力容器から気体が漏れ出すのを抑制でき、好ましい。
ライナーの厚みとしては、特に定めるものでは無いが、例えば、100μm〜2000μmとすることができ、さらには200μm〜1500μmとすることができ、特には、300μm〜1200μmとすることができる。特に、樹脂製ライナーを用いる場合に、該ライナーの厚みを上記範囲とすることが好ましい。
【0012】
本発明で用いるライナーの好ましい実施形態として、ポリアミド樹脂を主成分とするライナーが挙げられる。かかるライナーを構成するポリアミド樹脂は、ジアミン由来の構成単位とジカルボン酸由来の構成単位を含み、前記ジアミン由来の構成単位の50モル%以上がキシリレンジアミンに由来するポリアミド樹脂であることが好ましい。かかるライナーを構成するポリアミド樹脂の好ましい範囲は、後述する複合材料に用いられるポリアミド樹脂と同様である。特に、ライナーに用いられるポリアミド樹脂と複合材料に用いられるポリアミド樹脂の90質量%以上が同じポリアミド樹脂であることが好ましい。このような構成とすることにより、ライナーと外層の密着性をより向上させることができる。
【0013】
<外層>
外層2は、ライナー1の外周を覆うように形成されるものであり、連続繊維と、前記連続繊維に含浸したポリアミド樹脂を含む複合材料から構成される。すなわち、本発明の圧力容器は、通常、ライナー本体部分を、複合材料が隙間なく覆うように形成されている。
外層は、通常は、複合材料のみからなるが、本発明の趣旨を逸脱しない範囲で他の成分を含んでいることを排除するものではない。例えば、複合材料を貼り合せるための接着剤等が例示される。接着剤としては、エポキシ系接着剤が例示され、市販品としては、アラルダイト、Huntsman製等が例示される。
【0014】
本発明の圧力容器の外層は、温度23℃、相対湿度50%における気体透過係数が、0.10ml・mm/m
2・day・atm以下であることが好ましく、0.01ml・mm/m
2・day・atm以下とすることもできる。下限値は、特に定めるものではないが、実用性を考えると、例えば、0.0001ml・mm/m
2・day・atm以上とすることもできる。
気体透過係数における気体は、本発明の圧力容器に封入可能である気体である限り特に定めるものでは無いが、通常、25℃、1atmで気体であるガスをいい、反応性の低いものが好ましい。具体的には、酸素、二酸化炭素、窒素、アルゴン、LPG、代替フロン、メタン、水素が例示される。
【0015】
本発明の圧力容器の外層は、ボイド率が15%以下であることが好ましく、10%以下であることがより好ましく、8%以下であることがさらに好ましく、6%以下であることが一層好ましく、5%以下であることがより一層好ましく、4%以下とすることもできる。
本発明におけるボイド率とは、後述する実施例で定める方法で特定された値をいう。実施例で記載する測定機器等が、廃版等により入手困難な場合は、他の同等の性能を有する測定機器で測定することができる。以下の測定方法についても同様である。
ボイド率を低くすることにより、ガスバリア性をより向上させることができる。ボイド率を低くする手段としては、複合材料のボイド率を低くすることが挙げられる。
外層の厚さは、特に定めるものではないが、100〜4000μmであることが好ましく、400〜2000μmであることがより好ましい。
外層における連続繊維の割合は、10V/V%以上であることが好ましく、20V/V%以上がより好ましく、30V/V%以上であることがさらに好ましく、さらには、40V/V%以上とすることもでき、特には、45V/V%以上とすることもできる。また、80V/V%以下であることが好ましく、70V/V%以下がより好ましく、さらには、60V/V%以下とすることもでき、特には、55V/V%以下とすることもできる。
ここで、V/V%とは、外層における全体積に対する、連続繊維の体積の割合をいう。
後述する実施例で述べる方法で測定した値をいう。
ここで、V/V%とは、外層の体積に対する、該外層中の連続繊維の体積の割合を示す単位であり、外層における連続繊維の割合は、後述する実施例で述べる方法で測定した値をいう。
【0016】
本発明における外層は、連続繊維が規則的に配列していることが好ましい。規則的に配列しているとは、外層に含まれる連続繊維の70質量%以上が、一定の方向性を持って並んでいることをいう。一定の方向性とは、螺旋状、縦方向、横方向またはこれらの組み合わせが例示される。尚、本発明でいう螺旋状、縦方向、横方向は、厳密な螺旋状等の配列に加え、当業者に一般的に解釈される程度の誤差を含む趣旨である。
【0017】
<<複合材料>>
複合材料は、連続繊維と、前記連続繊維に含浸したポリアミド樹脂を含み、連続繊維と連続繊維に含浸したポリアミド樹脂組成物からなっていてもよい。
本発明で用いる複合材料は、連続繊維とポリアミド樹脂が全体の80質量%以上を占めることが好ましい。
【0018】
複合材料は、ポリアミド樹脂またはポリアミド樹脂組成物を連続繊維に含浸させて得られる。本発明における複合材料は、圧力容器の状態となったときに、ポリアミド樹脂が連続繊維に含浸した状態となっていればよい。従って、ポリアミド樹脂またはポリアミド樹脂組成物を連続繊維に含浸した状態の複合材料をライナーの外周に適用して形成してもよいし、ポリアミド樹脂繊維と連続繊維からなる織物や混繊糸などをライナーの外周に適用してから加熱して、ポリアミド樹脂を連続繊維に含浸させてもよい。さらには、連続繊維をライナーの外周に適用した後、ポリアミド樹脂を含浸させる態様であってもよい。
【0019】
ポリアミド樹脂またはポリアミド樹脂組成物を連続繊維に含浸させた複合材料をライナーの外周に適用する場合の、複合材料の製造方法については、公知の方法を採用できる。具体的には、一方向に引き揃えた連続繊維を開繊しながら、溶融ポリアミド樹脂を含浸させる方法や、一方向に引き揃えた連続繊維(例えば、炭素繊維シート)にポリアミド樹脂フィルムを重ねて加熱して含浸させる方法が例示される。含浸温度は、ポリアミド樹脂またはポリアミド樹脂組成物が、溶融する温度以上とする必要があり、ポリアミド樹脂の種類や分子量によっても異なるが、一般に(融点+10℃以上)から(熱分解温度−20℃の温度)が好ましい。また、加圧してもよく、加圧する際のプレス圧力は1MPa以上が好ましく、5MPa以上がより好ましく、10MPa以上が特に好ましい。加熱加圧は、減圧下、特には真空下で行うのが好ましい。このような条件で行うと、得られる外層中のボイド率を低くすることができる。
加熱加圧の際に、例えば、ローラーを用いると、テープ状のものが構成できる。テープ状の複合材料における、テープ幅は、例えば、120〜250mmとすることができる。
ライナーの外周に複合材料を適用してから、ポリアミド樹脂を連続繊維に含浸させる態様については、後述の圧力容器の製造方法の説明にて述べる。
以下、ポリアミド樹脂および連続繊維について説明する。
【0020】
<<ポリアミド樹脂>>
複合材料に含まれるポリアミド樹脂は、ジアミン由来の構成単位とジカルボン酸由来の構成単位を含み、ジアミン由来の構成単位の50モル%以上がキシリレンジアミンに由来する。
ジアミン由来の構成単位は、70モル%以上がキシリレンジアミン由来の構成単位であることが好ましく、80モル%以上がキシリレンジアミン由来の構成単位であることがさらに好ましい。キシリレンジアミンは、メタキシリレンジアミン、パラキシリレンジアミンおよびこれらの混合物のいずれでも良いが、少なくともメタキシリレンジアミンを含むことが好ましく、ジアミン由来の構成単位の70モル%以上がメタキシリレンジアミン由来の構成単位であることが好ましく、80モル%以上がメタキシリレンジアミン由来の構成単位であることがさらに好ましい。
【0021】
ジアミン由来の構成単位を構成するキシリレンジアミン以外のジアミンとしては、テトラメチレンジアミン、ペンタメチレンジアミン、2−メチルペンタンジアミン、ヘキサメチレンジアミン、ヘプタメチレンジアミン、オクタメチレンジアミン、ノナメチレンジアミン、デカメチレンジアミン、ドデカメチレンジアミン、2,2,4−トリメチル−ヘキサメチレンジアミン、2,4,4−トリメチルヘキサメチレンジアミン等の脂肪族ジアミン、1,3−ビス(アミノメチル)シクロヘキサン、1,4−ビス(アミノメチル)シクロヘキサン、1,3−ジアミノシクロヘキサン、1,4−ジアミノシクロヘキサン、ビス(4−アミノシクロヘキシル)メタン、2,2−ビス(4−アミノシクロヘキシル)プロパン、ビス(アミノメチル)デカリン、ビス(アミノメチル)トリシクロデカン等の脂環式ジアミン、ビス(4−アミノフェニル)エーテル、パラフェニレンジアミン、ビス(アミノメチル)ナフタレン等の芳香環を有するジアミン等を例示することができ、1種又は2種以上を混合して使用できる。
ジアミン成分として、キシリレンジアミン以外のジアミンを用いる場合、その割合は、全ジアミン由来の構成単位の50モル%未満であり、30モル%以下であることが好ましく、より好ましくは1〜25モル%、特に好ましくは5〜20モル%の割合で用いる。
【0022】
ジカルボン酸由来の構成単位は、50モル%以上が炭素原子数4〜20のα,ω−直鎖脂肪族ジカルボン酸由来の構成単位であることが好ましく、70モル%以上が炭素原子数4〜20のα,ω−直鎖脂肪族ジカルボン酸由来の構成単位であることがより好ましく、80モル%以上が炭素原子数4〜20のα,ω−直鎖脂肪族ジカルボン酸由来の構成単位であることがさらに好ましい。
炭素原子数4〜20のα,ω−直鎖脂肪族ジカルボン酸は、炭素数6〜9のα,ω−直鎖脂肪族ジカルボン酸由来の構成単位がより好ましい。炭素原子数4〜20のα,ω−直鎖脂肪族ジカルボン酸の具体例としては、コハク酸、グルタル酸、ピメリン酸、スベリン酸、アゼライン酸、アジピン酸、セバシン酸、ウンデカン二酸、ドデカン二酸等の脂肪族ジカルボン酸が例示でき、1種又は2種以上を混合して使用できるが、これらの中でもポリアミド樹脂の融点が成形加工するのに適切な範囲となることから、アジピン酸またはセバシン酸が好ましく、アジピン酸が特に好ましい。
【0023】
上記炭素原子数4〜20のα,ω−直鎖脂肪族ジカルボン酸以外のジカルボン酸成分としては、イソフタル酸、テレフタル酸、オルソフタル酸等のフタル酸化合物、1,2−ナフタレンジカルボン酸、1,3−ナフタレンジカルボン酸、1,4−ナフタレンジカルボン酸、1,5−ナフタレンジカルボン酸、1,6−ナフタレンジカルボン酸、1,7−ナフタレンジカルボン酸、1,8−ナフタレンジカルボン酸、2,3−ナフタレンジカルボン酸、2,6−ナフタレンジカルボン酸、2,7−ナフタレンジカルボン酸といった異性体等のナフタレンジカルボン酸等を例示することができる。
これらのジカルボン酸成分は、1種又は2種以上を混合して使用できる。
【0024】
さらに、ジアミン成分、ジカルボン酸成分以外にも、ポリアミド樹脂を構成する成分として、本発明の効果を損なわない範囲でε−カプロラクタムやラウロラクタム等のラクタム類、アミノカプロン酸、アミノウンデカン酸等の脂肪族アミノカルボン酸類も共重合成分として使用できる。
【0025】
本発明で用いるポリアミド樹脂の第一の実施形態として、ジアミン由来の構成単位の70モル%以上がメタキシリレンジアミンに由来し、ジカルボン酸由来の構成単位の70モル%以上が、アジピン酸およびセバシン酸の少なくとも一方(さらに好ましくは、アジピン酸)に由来するポリアミド樹脂が例示される。このような構成とすることにより、ガスバリア性が向上する傾向にある。
【0026】
また、本発明で用いるポリアミド樹脂の第二の実施形態として、ジアミン由来の構成単位の70モル%以上がキシリレンジアミンに由来し、ジカルボン酸由来の構成単位の70モル%以上が、炭素原子数4〜20のα,ω−直鎖脂肪族ジカルボン酸および/またはイソフタル酸に由来し、炭素原子数4〜20のα,ω−直鎖脂肪族ジカルボン酸由来の構成単位とイソフタル酸由来の構成単位のモル比率が30:70〜100:0であるポリアミド樹脂が例示される。このような構成とすることにより、成形加工性がより向上する。イソフタル酸由来の構成単位を含む場合、その割合は、全ジカルボン酸由来の構成単位の好ましくは1〜30モル%、特に好ましくは5〜20モル%の範囲である。
【0027】
また、本発明で用いるポリアミド樹脂の第三の実施形態として、上記第一または第二の実施形態において、ポリアミド樹脂の数平均分子量(Mn)が6,000〜30,000であり、ポリアミド樹脂の0.5〜5質量%が、分子量が1,000以下のポリアミド樹脂である態様が例示される。
【0028】
数平均分子量(Mn)を6,000〜30,000の範囲の範囲とすることにより、複合材料の強度を向上させることができる。好ましい数平均分子量(Mn)は8,000〜28,000であり、より好ましくは9,000〜26,000であり、さらに好ましくは10,000〜24,000であり、特に好ましくは11,000〜22,000であり、特に好ましくは12,000〜20,000である。このような範囲であると、耐熱性、弾性率、寸法安定性、成形加工性が良好である。
【0029】
なお、ここでいう数平均分子量(Mn)とは、ポリアミド樹脂の末端アミノ基濃度[NH
2](μ当量/g)と末端カルボキシル基濃度[COOH](μ当量/g)から、次式で算出される。
数平均分子量(Mn)=2,000,000/([COOH]+[NH
2])
【0030】
また、第三の実施形態におけるポリアミド樹脂は、分子量が1,000以下の成分を0.5〜5質量%含有することが好ましい。このような低分子のポリアミド樹脂成分を所定の範囲で含有することにより、ポリアミド樹脂の含浸性が良好となり、ポリアミド樹脂の強化繊維間での流動性が良好となるため、成形加工時にボイドの発生を抑制することができる。
分子量が1,000以下の成分の好ましい含有量は、0.6〜4.5質量%であり、より好ましくは0.7〜4質量%であり、さらに好ましくは0.8〜3.5質量%であり、特に好ましくは0.9〜3質量%であり、一層好ましくは1〜2.5質量%である。
【0031】
分子量が1,000以下の低分子量成分の含有量の調整は、ポリアミド樹脂重合時の温度や圧力、ジアミンの滴下速度などの溶融重合条件を調節して行うことができる。特に溶融重合後期に反応装置内を減圧して低分子量成分を除去し、任意の割合に調節することができる。また、溶融重合により製造されたポリアミド樹脂を熱水抽出して低分子量成分を除去してもよいし、溶融重合後さらに減圧下で固相重合して低分子量成分を除去してもよい。固相重合に際しては、温度や減圧度を調節して、低分子量成分を任意の含有量に制御することができる。また、分子量が1,000以下の低分子量成分を後からポリアミド樹脂に添加することでも調節可能である。
【0032】
なお、分子量1,000以下の成分量の測定は、東ソー社(TOSOH CORPORATION)製「HLC−8320GPC」を用いて、ゲルパーミエーションクロマトグラフィー(GPC)測定による標準ポリメチルメタクリレート(PMMA)換算値より求めることができる。なお、測定用カラムとしては「TSKgel SuperHM−H」を2本用い、溶媒にはトリフルオロ酢酸ナトリウム濃度10mmol/lのヘキサフルオロイソプロパノール(HFIP)を用い、樹脂濃度0.02質量%、カラム温度は40℃、流速0.3ml/分、屈折率検出器(RI)にて測定することができる。また、検量線は6水準のPMMAをHFIPに溶解させて測定し作成する。
【0033】
本発明で用いるポリアミド樹脂は、分子量分布(重量平均分子量/数平均分子量(Mw/Mn))が、好ましくは1.8〜3.1である。分子量分布は、より好ましくは1.9〜3.0、さらに好ましくは2.0〜2.9である。分子量分布をこのような範囲とすることにより、機械特性に優れた複合材が得られやすい傾向にある。
ポリアミド樹脂の分子量分布は、例えば、重合時に使用する開始剤や触媒の種類、量及び反応温度、圧力、時間等の重合反応条件などを適宜選択することにより調整できる。また、異なる重合条件によって得られた重量平均分子量または数平均分子量の異なる複数種のポリアミド樹脂を混合したり、重合後のポリアミド樹脂を分別沈殿させることにより調整することもできる。
【0034】
分子量分布は、GPC測定により求めることができ、具体的には、装置として東ソー製「HLC−8320GPC」、カラムとして、東ソー製「TSK gel Super HM−H」2本を使用し、溶離液トリフルオロ酢酸ナトリウム濃度10mmol/lのヘキサフルオロイソプロパノール(HFIP)、樹脂濃度0.02質量%、カラム温度40℃、流速0.3ml/分、屈折率検出器(RI)の条件で測定し、標準ポリメチルメタクリレート換算の値として求めることができる。また、検量線は6水準のPMMAをHFIPに溶解させて測定し作成する。
【0035】
本発明で用いるポリアミド樹脂は、100μm単層フィルムにおける、JIS K−7127に準拠した引張弾性率が、1.2GPa以上であることが好ましく、1.5〜4.0GPaであることがより好ましい。
また、100μm単層フィルムにおける、JIS K−7127に準拠した引張破断強度が、3MPa以上であることが好ましく、5〜100MPaであることがより好ましい。
【0036】
ポリアミド樹脂の融点は、耐熱性及び溶融成形性の観点から、好ましくは170〜330℃の範囲、より好ましくは200〜320℃の範囲である。
なお、融点とは、DSC(示差走査熱量測定)法により観測される昇温時の吸熱ピークのピークトップの温度である。また、ガラス転移点とは、試料を一度加熱溶融させ熱履歴による結晶性への影響をなくした後、再度昇温して測定されるガラス転移点をいう。測定には、例えば、島津製作所社(SHIMADZU CORPORATION)製「DSC−60」を用い、試料量は約5mgとし、雰囲気ガスとしては窒素を30ml/分で流し、昇温速度は10℃/分の条件で室温から予想される融点以上の温度まで加熱し溶融させた際に観測される吸熱ピークのピークトップの温度から融点を求めることができる。次いで、溶融したポリアミド樹脂を、ドライアイスで急冷し、10℃/分の速度で融点以上の温度まで再度昇温し、ガラス転移点を求めることができる。
【0037】
ポリアミド樹脂の製造は、特に限定されるものではなく、任意の方法、重合条件により行うことができる。例えば、ジアミン成分(メタキシリレンジアミン等のジアミン)とジカルボン酸成分(炭素数4〜20のα,ω−直鎖脂肪族ジカルボン酸等のジカルボン酸)とからなる塩を水の存在下に加圧状態で昇温し、加えた水及び縮合水を除きながら溶融状態で重合させる方法によりポリアミド樹脂を製造することができる。また、ジアミン成分(キシリレンジアミン等のジアミン)を溶融状態のジカルボン酸成分(炭素数4〜20のα,ω−直鎖脂肪族ジカルボン酸等のジカルボン酸)に直接加えて、常圧下で重縮合する方法によってもポリアミド樹脂を製造することができる。この場合、反応系を均一な液状態で保つために、ジアミン成分をジカルボン酸成分に連続的に加え、その間、反応温度が生成するオリゴアミド及びポリアミドの融点よりも下回らないように反応系を昇温しつつ、重縮合が進められる。
【0038】
本発明で用いる複合材料は、上記キシリレンジアミン系ポリアミド樹脂以外の、他のポリアミド樹脂やエラストマー成分を含むいわゆるポリアミド樹脂組成物を連続繊維に含浸させたものであってもよい。
他のポリアミド樹脂としては、ポリアミド66、ポリアミド6、ポリアミド46、ポリアミド6/66、ポリアミド10、ポリアミド612、ポリアミド11、ポリアミド12、ヘキサメチレンジアミン、アジピン酸およびテレフタル酸からなるポリアミド66/6T、ヘキサメチレンジアミン、イソフタル酸およびテレフタル酸からなるポリアミド6I/6Tなどが挙げられる。他の樹脂としては、配合する場合、ポリアミド66およびポリアミド6の少なくとも1種が好ましい。
ポリアミド樹脂組成物が、他のポリアミド樹脂を含む場合、その含有量は、上記キシリレンジアミン系ポリアミド樹脂と他のポリアミド樹脂の質量比が、95:5〜25:75であることが好ましく、95:5〜51:49であることがより好ましく、95:5〜60:40であることがさらに好ましく、90:10〜70:30であることが特に好ましい。
また、他の実施形態として、ポリアミド樹脂組成物が他のポリアミド樹脂を実質的に含まない構成とすることもできる。実質的に含まないとは、例えば、ポリアミド樹脂組成物に含まれるポリアミド樹脂の5質量%以下であることをいい、さらには、1質量%以下であることをいう。
【0039】
エラストマー成分としては、例えば、ポリオレフィン系エラストマー、ジエン系エラストマー、ポリスチレン系エラストマー、ポリアミド系エラストマー、ポリエステル系エラストマー、ポリウレタン系エラストマー、フッ素系エラストマー、シリコン系エラストマー等公知のエラストマーが使用でき、好ましくはポリオレフィン系エラストマー及びポリスチレン系エラストマーである。これらのエラストマーとしては、ポリアミド樹脂に対する相溶性を付与するため、ラジカル開始剤の存在下または非存在下で、α,β−不飽和カルボン酸及びその酸無水物、アクリルアミド並びにそれらの誘導体等で変性した変性エラストマーも好ましい。
【0040】
ポリアミド樹脂組成物が、エラストマーを含む場合、エラストマーの配合量は、ポリアミド樹脂組成物の5〜20質量%が好ましく、10〜15質量%がより好ましい。
また、他の実施形態として、ポリアミド樹脂組成物が、エラストマーを実質的に含まない構成とすることもできる。実質的に含まないとは、例えば、ポリアミド樹脂組成物の3質量%以下であることをいい、さらには、1質量%以下であることをいう。
【0041】
また、上記したポリアミド樹脂組成物は、一種類もしくは複数のポリアミド樹脂をブレンドして使用することもできる。本発明におけるポリアミド樹脂組成物は、ジアミン由来の構成単位とジカルボン酸由来の構成単位を含み、前記ジアミン由来の構成単位の50モル%以上がキシリレンジアミンであるポリアミド樹脂が全体の30質量%以上を占めることが好ましく、50質量%以上占めることがより好ましく、70質量%を占めることがさらに好ましい。
さらに、本発明の目的・効果を損なわない範囲で、本発明で用いるポリアミド樹脂組成物には、ポリエステル樹脂、ポリオレフィン樹脂、ポリフェニレンサルファイド樹脂、ポリカーボネート樹脂、ポリフェニレンエーテル樹脂、ポリスチレン樹脂等の樹脂を一種もしくは複数ブレンドすることもできる。これらの配合量はポリアミド樹脂組成物の10質量%以下であることが好ましく、1質量%以下であることがより好ましい。
【0042】
さらに、本発明の目的・効果を損なわない範囲で、本発明で用いるポリアミド樹脂組成物には、酸化防止剤、熱安定剤等の安定剤、耐加水分解性改良剤、耐候安定剤、艶消剤、紫外線吸収剤、核剤、可塑剤、分散剤、難燃剤、帯電防止剤、着色防止剤、ゲル化防止剤、着色剤、離型剤等の添加剤等を加えることができる。これらの詳細は、特許第4894982号公報の段落番号0130〜0155の記載を参酌でき、これらの内容は本願明細書に組み込まれる。
【0043】
<<連続繊維>>
本発明で用いる複合材料は連続繊維を含む。連続繊維とは、10cmを超える繊維長を有する繊維束をいう。本発明で使用する連続繊維束の平均繊維長に特に制限はないが、成形加工性を良好にする観点から、1〜10,000mの範囲であることが好ましく、より好ましくは100〜10,000m、さらに好ましくは1,000〜7,000mである。
【0044】
連続繊維束は、平均繊度が、50〜2000tex(g/1000m)であることが好ましく、60〜800texであることがより好ましく、60〜500texであることがさらに好ましい。このような範囲とすることにより、加工がより容易となり、得られる織物の弾性率・強度がより優れたものとなる。
連続繊維束の平均引張弾性率は、50〜1000GPaであることが好ましい。このような範囲とすることにより、成形品の強度がより優れたものとなる。
【0045】
連続繊維束の平均引張弾性率は、50〜1000GPaであることが好ましく、200〜700GPaであることがより好ましい。
【0046】
連続繊維としては、ガラス繊維、炭素繊維、金属繊維、ボロン繊維、セラミック繊維等の無機繊維または、アラミド繊維、ポリオキシメチレン繊維、芳香族ポリアミド繊維、ポリパラフェニレンベンゾビスオキサゾール繊維、超高分子量ポリエチレン繊維等の有機繊維;などが挙げられ、無機繊維が好ましい。なかでも、軽量でありながら、高強度、高弾性率であるという優れた特徴を有するため、炭素繊維およびガラス繊維が好ましく用いられ、炭素繊維がより好ましい。炭素繊維はポリアクリロニトリル系炭素繊維、ピッチ系炭素繊維を好ましく用いることができる。また、リグニンやセルロースなど、植物由来原料の炭素繊維も用いることができる。
【0047】
本発明で用いる連続繊維は、処理剤で処理されていてもよい。処理剤とは、表面処理剤または収束剤が例示される。前記処理剤の量は、連続繊維の0.001〜1.5質量%であることが好ましく、0.1〜1.2質量%であることがより好ましく、0.5〜1.1質量%であることがさらに好ましい。このような範囲とすることにより、本発明の効果がより効果的に発揮される。
【0048】
表面処理剤としては、例えば、エポキシ系化合物、アクリル系化合物、イソシアネート系化合物、シラン系化合物、チタネート系化合物等の官能性化合物からなるものが挙げられ、例えば、シラン系カップリング剤、チタネート系カップリング剤等であり、シラン系カップリング剤が好ましい。
シラン系カップリング剤としては、アミノプロピルトリエトキシシラン、フェニルアミノプロピルトリメトキシシラン、グリシジルプロピルトリエトキシシラン、メタクリロキシプロピルトリメトキシシラン、ビニルトリエトキシシラン等のトリアルコキシまたはトリアリロキシシラン化合物、ウレイドシラン、スルフィドシラン、ビニルシラン、イミダゾールシラン等が挙げられる。
【0049】
収束剤としては、ビスフェノールA型のエポキシ樹脂等のエポキシ系樹脂、1分子中にアクリル基またはメタクリル基を有するエポキシアクリレート樹脂であって、ビスフェノールA型のビニルエステル樹脂、ノボラック型のビニルエステル樹脂、臭素化ビニルエステル樹脂等のビニルエステル系樹脂が好ましく挙げられる。またエポキシ系樹脂やビニルエステル系樹脂のウレタン変性樹脂であってもよい。
【0050】
処理剤は1種類のみ用いても良いし、2種類以上用いても良い。
【0051】
連続繊維による処理剤による処理方法は、公知の方法を採用できる。例えば、連続繊維を、処理剤を含む液(例えば、水溶液)に浸漬し、連続繊維の表面に処理剤を付着させることが挙げられる。また、処理剤を連続繊維の表面にエアブローすることもできる。さらに、処理剤で処理されている連続繊維の市販品を用いてもよいし、市販品の処理剤を洗い落してから、再度、所望の量となるように、処理しなおしても良い。
【0052】
<口金、バルブ、ボス>
口金3は、例えば、略円筒状を成し、ライナー1と外層2との間に嵌入されて、固定されている。口金3の略円筒状の開口部が、圧力容器10の開口部として機能する。口金3は、ステンレス、アルミニウム等他の金属からなるものであってもよいし、樹脂製でもよい。バルブ5は、例えば、円柱状の部分に、雄ねじが形成された形状であり、口金3の内側面に形成されている雌ねじに螺合されることにより、バルブ5によって、口金3の開口部が閉じられる。ボス4は、例えば、アルミニウムから成り、一部分が外部に露出した状態で組みつけられ、タンク内部発熱および吸熱を、外部に導く働きをするものである。尚、本発明において、口金3、ボス4、バルブ5は、公知の他の手段によって置き換えたりすることもでき、本発明の圧力容器における必須構成要件ではない。
【0053】
<ライナーと外層の間の層>
本発明の圧力容器は、ライナー1と外層2の間に1層または2層以上の層を含んでいてもよい。このような層としては、ライナーを強化するための金属層、ライナーと外層の密着性を高めるための層等が例示される。
【0054】
<外層の外側の層>
本発明の圧力容器は、外層の外側にさらに1層または2層以上の層を含んでいてもよい。このような層としては、塗料や錆止めを含む層、断熱または断冷のための保護層等が例示される。
【0055】
圧力容器の製造方法
本発明の圧力容器の製造方法は、特に定めるものでは無く、公知の技術を採用することができる。
以下、本発明の圧力容器の製造方法の好ましい実施形態について述べるが、本発明がこれらの実施形態に限定されるものでないことは言うまでもない。
【0056】
本発明の圧力容器の製造方法の第一の実施形態は、ライナーの外周に、ポリアミド樹脂が連続繊維に含浸してなる複合材料を適用することを含み、前記ポリアミド樹脂が、ジアミン由来の構成単位とジカルボン酸由来の構成単位を含み、前記ジアミン由来の構成単位の50モル%以上がキシリレンジアミンに由来する、圧力容器の製造方法である。
【0057】
本実施形態では、通常、複合材料を加熱する。加熱することにより、外層がライナーに沿って硬化し、圧力容器の強度を向上させることができる。また、ライナーが樹脂製の場合や、ライナーの表面に熱可塑性樹脂層を設けている場合、これらとの熱融着により、ライナーと外層の密着性を向上させることができる。
加熱のタイミングについては、特にさだめるものではない。ライナーの外周に、複合材料を適用した後、加熱してもよいし、複合材料を加熱した直後に、ライナーの外周に適用してもよい。また、ライナーの外周に適用する前後に複合材料を加熱してもよい。ここで、直後とは、ポリアミド樹脂が溶融した状態が維持される時間をいい、例えば、1分以内が例示される。
本発明では、ライナーの外周に、ポリアミド樹脂が連続繊維に含浸してなる複合材料を適用した後、前記ポリアミド樹脂の融点以上の温度で前記複合材料を加熱する方が好ましい。
また、複合材料を加熱した直後に、ライナーの外周に適用する方法は、ライナーの外周に複合材料を適用してから、加熱をしないことも可能であるため、ライナーが熱に弱い材料の場合には好ましい。
【0058】
熱融着手段としては、超音波融着、振動融着、レーザー融着が例示される。
加熱温度は、ポリアミド樹脂の融点以上が好ましく、ポリアミド樹脂の融点+10℃以上がより好ましく、融点+20℃以上がさらに好ましい。加熱温度の上限値としては、ポリアミド樹脂の融点+100℃以下がより好ましく、融点+80℃以下がさらに好ましい。ここでのポリアミド樹脂は、複合材料を構成するポリアミド樹脂である。
加熱時間は特に定めるものではないが、通常は、10秒〜10分である。
また、ライナーの外周に、複合材料を適用した後に複合材料を加熱する場合、ライナーの内側から冷却しつつ外層を加熱することも好ましい。特に、熱に溶融しやすい樹脂製ライナーを用いる場合に有益である。
また、加熱時に加圧してもよく、プレス圧力は1MPa以上が好ましく、5MPa以上がより好ましく、10MPa以上が特に好ましい。加熱加圧は、減圧下、特には真空下で行うのが好ましい。このような条件で行うと、得られる外層中のボイド率を低くすることができる。
【0059】
ライナーの外周に複合材料を適用する方法としては、複合材料でライナーの外周を覆う限り、その方法は特に定めるものでは無いが、複合材料中の、連続繊維が、螺旋状になっているか、縦方向および/または横方向等、一定の方向性を持つように適用することが好ましい。
具体的な適用方法としては、複合材料をライナーの外周に巻く方法が好ましい。巻き方としては、複合材料の形態に応じて、フィラメントワインディング法やテープワインディング法を採用できる。これらの詳細は、特開平09−280496号公報の段落0031〜0037の記載を参酌でき、これらの内容は本願明細書に組み込まれる。
この場合の複合材料の形態としては、テープ状のものが例示される。また、後述する織物や編み物、混繊糸を加熱してポリアミド樹脂を連続繊維に含浸させたものを、ライナーの外周に適用してもよい。もちろん、テープ状の複合材料と、編み物等を併用してもよい。
また、これらの複合材料を適用するに際し、接着剤等を用いてもよい。
【0060】
複合材料は、ライナーの表面に適用してもよいし、ライナーの表面に、1層または2層以上の他の層を設け、他の層の表面に複合材料を適用してもよい。
例えば、ライナーと複合材料の密着性を向上させるため、ライナーの表面に樹脂層を設け、前記樹脂層の表面を酸性処理することが挙げられる。かかる樹脂層は、熱可塑性樹脂層が好ましい。
【0061】
樹脂製ライナーの表面に複合材料を適用する場合、樹脂製ライナーの表面を酸性処理してもよい。
また、金属製のライナーの表面に複合材料を適用する場合、複合材料に用いるポリアミド樹脂の末端アミノ基濃度を調整して、金属製ライナーとの密着性を向上させることができる。例えば、末端アミノ基濃度([NH
2])が5≦[NH
2]≦150(単位:μeq/g)であるポリアミド樹脂を用いることができる。また、金属製ライナーの表面を粗面化処理して密着性を向上させることもできる。金属製ライナーの表面を粗面化処理することにより、ポリアミド樹脂が浸透しやすくなると共に、金属製ライナーとポリアミド樹脂との接触面積が向上し、密着性を向上させることができる。
【0062】
ライナーおよび複合材料の詳細については、上述の圧力容器の説明における、ライナーおよび複合材料の記載と同義であり、好ましい範囲も同様である。
【0063】
圧力容器の製造方法の第二の実施形態では、ポリアミド樹脂繊維および連続繊維を含む、織物、編み物または混繊糸を、ライナーの外周に適用し、前記ポリアミド樹脂の融点以上の温度で加熱して、前記ポリアミド樹脂を連続繊維に含浸させることを含み、ジアミン由来の構成単位とジカルボン酸由来の構成単位を含み、前記ジアミン由来の構成単位の50モル%以上がキシリレンジアミンであることを特徴とする。
織物としては、経糸と緯糸の一方が、ポリアミド樹脂組成物からなる連続ポリアミド樹脂繊維であり、他方が連続繊維である織物が例示される。混繊糸としては、連続ポリアミド樹脂繊維と連続繊維からなる混繊糸が挙げられる。かかる混繊糸は、撚りが掛っていることが好ましい。また、混繊糸を用いた織物や編み物も好ましく採用できる。その他の要件については、上記圧力容器の製造方法の第一の実施形態と同様であり、好ましい範囲も同様である。
【0064】
本発明の圧力容器の製造方法の第三の実施形態は、ライナーの外周に、連続繊維を適用した後、ポリアミド樹脂を含浸させる工程を含み、前記ポリアミド樹脂が、ジアミン由来の構成単位とジカルボン酸由来の構成単位を含み、前記ジアミン由来の構成単位の50モル%以上がキシリレンジアミンである、圧力容器の製造方法である。
ライナーの外周に、連続繊維を適用した後、ポリアミド樹脂を含浸させる方法としては、連続繊維のみをワインドした後に、ポリアミド樹脂を真空下等で含浸させるレジントランスファーモールディング(RTM)法が採用できる。その他の要件については、上記圧力容器の製造方法の第一の実施形態と同様であり、好ましい範囲も同様である。
【実施例】
【0065】
以下に実施例を挙げて本発明をさらに具体的に説明する。以下の実施例に示す材料、使用量、割合、処理内容、処理手順等は、本発明の趣旨を逸脱しない限り、適宜、変更することができる。従って、本発明の範囲は以下に示す具体例に限定されるものではない。
【0066】
<ポリアミド樹脂MXD6の合成>
撹拌機、分縮器、全縮器、温度計、滴下ロート及び窒素導入管、ストランドダイを備えた内容積50リットルの反応容器に、精秤したアジピン酸15000g(102.6mol)、さらに次亜リン酸ナトリウム一水和物の配合量を12978mg(122.5mmol、ポリアミド中のリン原子濃度として151ppm)及び酢酸ナトリウムの配合量を6914mg(84.29mmol)になるよう入れ、十分に窒素置換した後、さらに少量の窒素気流下で系内を撹拌しながら170℃まで加熱した。これにメタキシリレンジアミン13895g(102.0mol)を撹拌下に滴下し、生成する縮合水を系外へ除きながら系内を連続的に昇温した。メタキシリレンジアミンの滴下終了後、内温を260℃として40分反応を継続した。その後、系内を窒素で加圧し、ストランドダイからポリマーを取り出してこれをペレット化し、約24kgのポリアミド樹脂MXD6を得た。
【0067】
<ポリアミド樹脂MXD6Iの合成>
ジカルボン酸成分として、アジピン酸のみに代わって、アジピン酸14094.3g(96.444mol)およびイソフタル酸1022.8g(6.156mol)を添加した以外は、上記ポリアミド樹脂MXD6の合成と同様に溶融重合して、ポリアミド樹脂MXD6Iを得た。
【0068】
<ポリアミド樹脂MP10の合成>
撹拌機、分縮器、冷却器、温度計、滴下装置及び窒素導入管、ストランドダイを備えた内容積50リットルの反応容器に、精秤したセバシン酸(伊藤製油製、セバシン酸TA)8950g(44.25mol)、次亜リン酸カルシウム12.54g(0.074mol)、酢酸ナトリウム6.45g(0.079mol)を秤量して仕込んだ。反応容器内を十分に窒素置換した後、窒素で0.4MPaに加圧し、撹拌しながら20℃から190℃に昇温して55分間でセバシン酸を均一に溶融した。次いでメタキシリレンジアミン4172g(30.63mol)とパラキシリレンジアミン1788g(13.13mol%)の混合ジアミンを撹拌下で滴下した。この間、反応容器内温は293℃まで連続的に上昇させた。滴下工程では圧力を0.42MPaに制御し、生成水は分縮器及び冷却器を通して系外に除いた。分縮器の温度は145〜147℃の範囲に制御した。混合ジアミン滴下終了後、反応容器内圧力0.42MPaにて20分間重縮合反応を継続した。この間、反応容器内温は296℃まで上昇させた。その後、30分間で反応容器内圧力を0.42MPaから0.12MPaまで減圧した。この間に内温は298℃まで昇温した。その後0.002MPa/分の速度で減圧し、20分間で0.08MPaまで減圧し、分子量1,000以下の成分量を調整した。減圧完了時の反応容器内の温度は301℃であった。その後、系内を窒素で加圧し、反応容器内温度301℃、樹脂温度301℃で、ストランドダイからポリマーをストランド状に取出して20℃の冷却水にて冷却し、これをペレット化し、約13kgのポリアミド樹脂を得た。
【0069】
<その他のポリアミド樹脂>
PA6:宇部興産製、ナイロン6 、UBEナイロン1022B。
【0070】
<連続繊維>
CF:炭素繊維、東レ製、エポキシ系樹脂で表面処理されているものを用いた。
【0071】
<その他の複合材料>
ポリアミド6(PA6)を含浸させた一方向炭素繊維テープ(carbon fiber unidirectional tape)、TenCate PERFORMANCE COMPOSITES社製、TenCate Cetex(登録商標)TC910 NYLON6
【0072】
<実施例1>
ポリアミド樹脂MXD6を30mmφのスクリューとTダイを備える単軸押出機にて押出成形し、20μm厚のキャストフィルムを得た。
連続繊維束として炭素繊維を、平均流速20m/秒で流れる空気流中へ、空気の流れ方向に対してほぼ直交する方向から、空気流中を通過する際に、通過方向に沿った長さ30mmに対して60mm(10mmに対して20mm)たるむようにたるみを与えながら導入して開繊処理を施し、炭素繊維シートを得た。
得られた炭素繊維シートを280℃に加熱しながら(以下、この温度を「含浸温度」という)、連続的に前記キャストフィルムと貼り合わせ、幅200mmのテープ状の複合材料を得た。
ポリアミド樹脂MXD6をブロー成形して、外径100mm、全長300mm、肉厚3mmのライナーを成形した。
得られたライナーの周りに、上記テープ状の複合材料をテープワインディング法によって、螺旋状に巻いた。テープは、2層以上となるように巻いた。その後、280℃で加熱して、圧力容器本体を得た。得られた圧力容器本体の上部および下部に金属蓋を取り付け、圧力容器を得た。
以下の方法に従って、外層のボイド率、外層における連続繊維の割合、外層の酸素透過係数、外層のアルゴン透過係数、外層の窒素透過係数、外層の水浸漬1ヶ月後の曲げ強度保持率を測定した。
【0073】
<<外層のボイド率の測定方法>>
外層のボイド率を以下の方法に従って測定した。
外層の一部を切り取り、エポキシ樹脂で包埋し、外層の厚み方向に沿った断面(本実施例では、
図1で示す断面とした)が露出するように研磨し、断面図を超深度カラー3D形状測定顕微鏡VK−9500(コントローラー部)/VK−9510(測定部)(キーエンス製)を使用して撮影した。得られた断面写真に対し、ボイド領域を、画像解析ソフトImageJを用いて選択し、その面積を測定した。測定値に基づいて、(外層の断面のボイド領域/外層の断面積)×100を算出した。1つの外層において、上記測定を3か所で行い、その平均値を小数点第一位で四捨五入して、ボイド率(単位%)とした。
【0074】
<<外層における連続繊維の割合の測定方法>>
外層における連続繊維の割合は、以下の方法に従って測定した。
ライナーにおける連続繊維の割合は、JIS 7075 燃焼法に従って測定した。
外層における連続繊維の割合の単位は、V/V%で示した。
【0075】
<<外層の酸素透過係数の測定方法>>
上記で得られた複合材料の温度23℃、相対湿度50%における酸素透過係数を以下の方法に従って測定した。
酸素透過率測定装置(モダンコントロール製、OX-TRAN2/21)を使用して、複合材料の酸素透過率を23℃、相対湿度60%の条件下で測定し、複合材料の酸素透過係数を以下の式を用いて計算した:
1/R
1 = DFT/P
P=R
1*DFT
ここで、
R
1 = 複合材料の酸素透過率(ml/m
2・day・MPa)
DFT = 複合材料の厚み(mm)
P = 複合材料の酸素透過係数
気体透過係数の単位は、ml/m
2・day・MPaおよびml・mm/m
2・day・atmに換算した値で示した。気体透過係数は、材料固有の値であり、厚さに関係しない値である。従って、複合材料の透過係数は、外層の気体透過係数に等しい。
【0076】
<<外層のアルゴン透過係数の測定方法>>
ガス透過測定装置(GTRテック社製)を用いて、温度23℃、相対湿度50%の雰囲気下にてJIS K7126−1:2006差圧法に準じて複合材料のアルゴンガス透過率を求め、上記外層の酸素透過係数の算出方法に準じて、アルゴン透過係数を測定した。
【0077】
<<外層の窒素透過係数の測定方法>>
ガス透過測定装置(GTRテック社製)を用いて、温度23℃、相対湿度50%の雰囲気下にてJIS K7126−1:2006差圧法に準じて複合材料の窒素ガス透過率を求め、上記外層の酸素透過係数の算出方法に準じて、窒素透過係数を測定した。
【0078】
<<水浸漬1ヶ月後の曲げ強度保持率>>
複合材料を連続繊維がほぼ直交するように交互に積層し、下記表に記載のライナーに巻いた後の含浸温度で加熱して、10mm×80mm×厚み4mmの試験片を作製した。得られた試験片について、JIS K6911に準じて、オートグラフ(株式会社島津製作所製、AG5000B)にて、常温で曲げ強度(MPa)を測定した。また、試験片を1ヵ月間、常温常圧で水に浸漬した後、同様にして曲げ強度を測定した。水浸漬前の曲げ強度/水浸漬後の曲げ強度×100を水浸漬1ヶ月後の曲げ強度保持率(%)とした。
【0079】
<実施例2〜8>
実施例1において、樹脂の種類、含浸温度、ライナーに巻いた後の加熱温度を下記表に示す通り変更し、他は同様に行って、実施例および比較例の圧力容器を得た。実施例7および実施例8はポリアミド樹脂MXD6とPA6をペレット状態で混合したものを30mmφのスクリューとTダイを備える単軸押出機にて押出成形し、20μm厚のキャストフィルムを得た以外は実施例1と同様にして実施した。
【0080】
<比較例1>
実施例1において、複合材料として、TenCate Cetex TC910 NYLON6を用い、他は同様に行って圧力容器を得た。
【0081】
結果を下記表に示す。
【表1】
上記結果から明らかなとおり、本発明の圧力容器の外層は、気体透過係数が低かった。一方、比較例の圧力容器の外層は、ポリアミド樹脂を用いているにもかかわらず、気体透過係数が高かった。特に、ボイド率を10%以下とすることにより、顕著に気体透過係数を低くすると共に、水浸漬一か月後の曲げ強度保持率を高く維持することが可能になった。
さらに、本発明の圧力容器は、ライナーと複合材料に同じポリアミド樹脂を用いているため、ライナーと外層の密着性も高かった。