(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
【発明を実施するための形態】
【0012】
<感放射線性樹脂組成物>
本発明の感放射線性樹脂組成物は、[A]重合体及び[B]感光剤を含有する。当該感放射線性樹脂組成物は、さらに他の成分を含有していてもよい。
【0013】
<[A]重合体>
[A]重合体は、通常アルカリ可溶性樹脂とされ、第1構造単位、第2構造単位及び第3構造単位を有する。また、[A]重合体を構成する全構造単位に対する第1構造単位の含有割合が5モル%以上80モル%以下である。当該感放射線性樹脂組成物においては、[A]重合体における第1構造単位の含有割合を上記範囲としているため、得られる硬化膜の低誘電率化及び低吸水化を図ることができる。従って、当該感放射線性樹脂組成物によれば、絶縁性や腐食防止性に優れる硬化膜を形成することができる。以下、詳説する。
【0014】
[第1構造単位]
第1構造単位は、下記式(a−1)で表される構造単位である。
【0016】
式(a−1)中、R
1は、水素原子又はメチル基である。R
1としては、水素原子が好ましい。
【0017】
R
2は、水素原子、ヒドロキシ基、炭素数1〜12のアルキル基、炭素数1〜12のアルコキシ基、炭素数1〜12のヒドロキシアルキル基、又は炭素数1〜12のフッ素化ヒドロキシアルキル基である。
【0018】
炭素数1〜12のアルキル基としては、メチル基、エチル基、プロピル基、ブチル基、オクチル基等を挙げることができ、炭素数1〜8のアルキル基が好ましい。
【0019】
炭素数1〜12のアルコキシ基としては、メトキシ基、エトキシ基等を挙げることができ、炭素数1〜8のアルコキシ基が好ましく、炭素数1〜3のアルコキシ基がより好ましい。
【0020】
炭素数1〜12のヒドロキシアルキル基としては、ヒドロキシメチル基、1−ヒドロキシエチル基、2−ヒドロキシエチル基等を挙げることができ、炭素数1〜8のヒドロキシアルキル基が好ましく、炭素数1〜3のヒドロキシアルキル基がより好ましい。また、モノヒドロキシアルキル基が好ましい。
【0021】
炭素数1〜12のフッ素化ヒドロキシアルキル基としては、ジフルオロ−ヒドロキシメチル基、2,2−ジフルオロ−2−ヒドロキシエチル基、1,1,2,2−テトラフルオロ−2−ヒドロキシエチル基、1,1,1,3,3,3−ヘキサフルオロ−2−ヒドロキシプロパン−2−イル基等を挙げることができ、炭素数1〜8のフッ素化ヒドロキシアルキル基が好ましく、炭素数1〜3のフッ素化ヒドロキシアルキル基がより好ましい。また、フッ素化モノヒドロキシアルキル基が好ましく、1,1,1,3,3,3−ヘキサフルオロ−2−ヒドロキシプロパン−2−イル基がより好ましい。
【0022】
R
2としては、水素原子、炭素数1〜8のアルキル基、炭素数1〜8のアルコキシ基、炭素数1〜8のヒドロキシアルキル基及び炭素数1〜8のフッ素化ヒドロキシアルキル基が好ましく、水素原子、炭素数1〜8のアルキル基、炭素数1〜3のアルコキシ基、炭素数1〜3のヒドロキシアルキル基及び炭素数1〜3のフッ素化ヒドロキシアルキル基がより好ましい。
【0023】
[A]重合体を構成する全構造単位に対する第1構造単位の含有割合の下限は、5モル%であり、25モル%が好ましい。一方、この上限は、80モル%であり、70モル%が好ましい。第1構造単位の含有割合をこのような範囲とすることで、当該感放射線性樹脂組成物の感度や得られる硬化膜の絶縁性、低吸水性等をバランスよく高めることができる。第1構造単位の含有割合が上記下限未満の場合、得られる硬化膜の絶縁性等が低下する。一方、第1構造単位の含有割合が上記上限を超える場合、硬化反応に寄与する構造単位の含有割合が低下し、放射線感度が低下する。
【0024】
[第2構造単位]
第2構造単位は、下記式(a−2)で表される構造単位である。
【0026】
(a−2)中、R
3は、水素原子又はメチル基である。R
3としては、水素原子が好ましい。
【0027】
R
4は、単結合、メチレン基(メタンジイル基:−CH
2−)又は炭素数2〜12のアルキレン基である。炭素数2〜12のアルキレン基としては、エチレン基(エタン−1,2−ジイル基:−CH
2CH
2−)等の−(CH
2)
n−(nは2〜12の整数)で表される基を挙げることができる。R
4としては、メチレン基が好ましい。
【0028】
Xは、オキセタニル基(1,3−エポキシ構造)、オキシラニル基(1,2−エポキシ構造)、下記式(2)で表される基、下記式(3)で表される基、下記式(4)で表される基又はこれらの組み合わせを含む炭素数2〜20の1価の有機基である。
【0030】
Xとしては、オキセタニル基、オキシラニル基、上記式(2)で表される基、上記式(3)で表される基又は上記式(4)で表される基(以下、「反応性環状エーテル基」ともいう。)のみからなる基、1又は複数の反応性環状エーテル基と連結基とが連結してなる基等を挙げることができる。1の反応性環状エーテル基と連結する2価の連結基としては、メチレン基、炭素数2〜12のアルキレン基、フェニレン基等の2価の炭化水素基、カルボニル基等を挙げることができる。例えばオキシラニル基とメチレン基とが連結することで、グリシジル基となる。2価の連結基としては、2価の炭化水素基が好ましく、メチレン基及び炭素数2〜4のアルキレン基がより好ましく、メチレン基(−CH
2−)及びエチレン基(−CH
2CH
2−)がさらに好ましい。
【0031】
第2構造単位は、反応性環状エーテル基を有するため、例えば第3構造単位が有するカルボキシ基等と架橋反応することができる。これにより、得られる硬化膜の強度を高めることなどができる。
【0032】
[A]重合体を構成する全構造単位に対する第2構造単位の含有割合の下限は、0.5モル%が好ましく、3モル%がより好ましい。一方、この上限は、45モル%が好ましく、30モル%がより好ましい。第2構造単位の含有割合をこのような範囲とすることで、当該感放射線性樹脂組成物の感度や得られる硬化膜の絶縁性、低吸水性、硬度等をバランスよく高めることができる。
【0033】
[第3構造単位]
第3構造単位は、下記式(a−3)で表される構造単位である。
【0035】
(a−3)中、R
5は、水素原子又はメチル基である。R
5としては、水素原子が好ましい。
【0036】
R
6は、単結合、メチレン基又は炭素数2〜12のアルキレン基である。炭素数2〜12のアルキレン基としては、R
4で表される基として例示したものを挙げることができる。R
6としては、単結合、メチレン基(−CH
2−)及び−(CH
2)
n−(nは2〜4の整数)で表される基が好ましく、単結合、メチレン基及びエチレン基がより好ましい。
【0037】
R
7は、水素原子又は炭素数1〜3のアルキル基である。炭素数1〜3のアルキル基としては、メチル基、エチル基、n−プロピル基及びi−プロピル基が挙げられる。R
7としては、水素原子及びメチル基が好ましい。
【0038】
第3構造単位は、例えば第2構造単位が有する反応性環状エーテル基等と架橋反応することができる。これにより、得られる硬化膜の強度を高めることなどができる。
【0039】
[A]重合体を構成する全構造単位に対する第3構造単位の含有割合の下限は、0.5モル%が好ましく、5モル%がより好ましい。一方、この上限は、60モル%が好ましく、45モル%がより好ましい。第3構造単位の含有割合をこのような範囲とすることで、当該感放射線性樹脂組成物の感度や、得られる硬化膜の絶縁性、低吸水性、硬度等をバランスよく高めることができる。
【0040】
[第4構造単位]
[A]重合体は、第1〜第3構造単位に加えて、第4構造単位をさらに有することが好ましい。第4構造単位は、下記式(a−4)で表される構造単位である。
【0042】
式(a−4)中、R
8は、水素原子又はメチル基である。R
8としては、メチル基が好ましい。
【0043】
Yは、オキセタニル基、オキシラニル基、上記式(2)で表される基、上記式(3)で表される基、上記式(4)で表される基又はこれらの組み合わせを含む炭素数2〜20の1価の有機基である。Yで表されるこれらの具体的な基及びこの好ましい基としては、式(a−2)中のXで表される基として例示したものと同様のものを挙げることができる。
【0044】
第4構造単位は、反応性環状エーテル基を有するため、例えば第3構造単位が有するカルボキシ基等と架橋反応することができる。これにより、得られる硬化膜の強度を高めることなどができる。
【0045】
[A]重合体を構成する全構造単位に対する第4構造単位の含有割合の下限は、0.5モル%が好ましく、3モル%がより好ましい。一方、この上限は、45モル%が好ましく、30モル%がより好ましい。第4構造単位の含有割合をこのような範囲とすることで、当該感放射線性樹脂組成物の感度や得られる硬化膜の絶縁性、低吸水性、硬度等をバランスよく高めることができる。
【0046】
[その他の構造単位等]
[A]重合体は、第1〜第4構造単位以外のその他の構造単位を有していてもよい。その他の構造単位としては、p位以外の位置に置換基を有するスチレン系モノマーに由来する構造単位、主鎖に直結するベンゼン環以外の芳香環を有する構造単位(例えばビニルナフタレンに由来する構造単位など)、第4構造単位以外の(メタ)アクリル酸エステル(例えば(メタ)アクリル酸メチルに由来する構造単位など)、(メタ)アクリル酸等の不飽和カルボン酸に由来する構造単位などを挙げることができる。
【0047】
<[A]重合体の合成方法>
[A]重合体は、例えば所定の各構造単位に対応する単量体を、ラジカル開始剤を使用し、適当な溶媒中で重合することにより製造できる。例えば単量体及びラジカル開始剤を含有する溶液を、反応溶媒又は単量体を含有する溶液に滴下して重合反応させる方法、単量体を含有する溶液と、ラジカル開始剤を含有する溶液とを各別に、反応溶媒又は単量体を含有する溶液に滴下して重合反応させる方法、各々の単量体を含有する複数種の溶液と、ラジカル開始剤を含有する溶液とを各別に、反応溶媒又は単量体を含有する溶液に滴下して重合反応させる方法等の方法で合成することが好ましい。
【0048】
第1構造単位を与える単量体としては、スチレン、4−ヒドロキシスチレン、4−メチルスチレン、4−エチルスチレン、4−t−ブチルスチレン、4−オクチルスチレン、4−デシルスチレン、4−メトキシスチレン、4−t−ブトキシスチレン、4−ビニルベンジルアルコール(4−ヒドロキシメチルスチレン)、1,1,1,3,3,3−ヘキサフルオロ−2−(4−ビニルフェニル)−プロパン−2−オール等を挙げることができる。
【0049】
第2構造単位を与える単量体としては、p−ビニルベンジルグリシジルエーテル、p−ビニルベンジロキシエチルオキセタン、p−ビニルベンジロキシメチルオキセタン、p−ビニルベンジロキシ−3,4−エポキシシクロヘキシルメタン、p−ビニルベンジロキシ−3,4−エポキシシクロヘキシルエタン、p−ビニルベンジロキシ−3,4−エポキシノルボルニルメタン等を挙げることができる。
【0050】
第3構造単位を与える単量体としては、4−ビニル安息香酸、4−ビニル安息香酸メチル、4−ビニル安息香酸エチル、4−ビニルフェニルプロピオン酸、4−ビニルフェニルプロピオン酸メチル、4−ビニルフェニルプロピオン酸エチル等を挙げることができる。
【0051】
第4構造単位を与える単量体としては、グリシジル(メタ)アクリレート、(3−エチルオキセタン−3−イル)(メタ)アクリレート、3,4−エポキシシクロヘキシルメチル(メタ)アクリレート、3,4−エポキシノルボルニル(メタ)アクリレート等を挙げることができる。
【0052】
[A]重合体の重合に使用される全単量体100質量部に対する第1〜第3構造単位を与える単量体の合計使用量(仕込量)の下限としては、50質量部が好ましく、55質量部がより好ましい。一方、この上限は、100質量部とすることができる。また、[A]重合体の重合に使用される全単量体100質量部に対する、主鎖に直結する芳香環を有する構造単位を与える単量体の合計使用量(仕込量)の下限は、50質量部が好ましく、55質量部がより好ましく、60質量部がさらに好ましい。主鎖に直結する芳香環を有する構造単位を与える単量体とは、第1〜第3構造単位を与える単量体の他、p位以外の位置に置換基を有するスチレン系モノマー、主鎖に直結するベンゼン環以外の芳香環を有する構造単位を与える単量体(ビニルナフタレン、ビニルアントラセン等)などが含まれる。このように、第1〜第3構造単位を与える単量体の合計使用量、又は主鎖に直結する芳香環を有する構造単位を与える単量体の合計使用割合を高めることにより、得られる硬化膜の低吸水性等を高めることなどができる。
【0053】
一方、[A]重合体の重合に使用される全単量体100質量部に対する(メタ)アクリル酸系モノマーの使用量(仕込量)の上限としては、45質量部が好ましく、40質量部がより好ましい。一方、この下限としては、0質量部であってよい。(メタ)アクリル酸系モノマーとは、第4構造単位を与える単量体及びその他の(メタ)アクリロイル基を有するモノマーをいう。このように、(メタ)アクリル酸系モノマーの使用割合を低くすることにより、得られる硬化膜の低吸水性等を高めることができる。
【0054】
これらの方法における反応温度は開始剤種によって適宜決定すればよいが、通常30℃以上180℃以下である。滴下時間は、反応温度、開始剤の種類、反応させる単量体等の条件によって異なるが、通常、30分以上8時間以下である。また、滴下時間を含む全反応時間も、滴下時間と同様に条件により異なるが、通常30分以上8時間以下である。
【0055】
上記重合に使用されるラジカル開始剤としては、アゾビスイソブチロニトリル(AIBN)、2,2’−アゾビス(4−メトキシ−2,4−ジメチルバレロニトリル)、2,2’−アゾビス(2−シクロプロピルプロピオニトリル)、2,2’−アゾビス(2,4−ジメチルバレロニトリル)、2,2’−アゾビス(2−メチルプロピオニトリル)等が挙げられる。これらの開始剤は、単独で又は2種以上を組み合わせて用いてもよい。
【0056】
重合溶媒としては、重合を阻害する溶媒(重合禁止効果を有するニトロベンゼン、連鎖移動効果を有するメルカプト化合物等)以外の溶媒であって、その単量体を溶解可能な溶媒であれば限定されない。重合溶媒としては、例えばアルコール系溶媒、エーテル系溶媒、ケトン系溶媒、アミド系溶媒、エステル・ラクトン系溶媒、ニトリル系溶媒等が挙げられる。これらの溶媒は、単独で又は2種以上を組み合わせて用いてもよい。
【0057】
重合反応により得られた重合体は、再沈殿法により回収することができる。すなわち、重合反応終了後、重合体溶液を再沈溶媒に投入することにより、目的の重合体を粉体として回収する。再沈溶媒としては、アルコール類やアルカン類等を単独で又は2種以上を混合して使用することができる。再沈殿法の他に、分液操作やカラム操作、限外ろ過操作等により、単量体、オリゴマー等の低分子成分を除去して重合体を回収することもできる。
【0058】
[A]重合体を製造するための重合反応においては、分子量を調整するために、分子量調整剤を使用できる。分子量調整剤としては、例えばクロロホルム、四臭化炭素等のハロゲン化炭化水素類;n−ヘキシルメルカプタン、n−オクチルメルカプタン、n−ドデシルメルカプタン、t−ドデシルメルカプタン、チオグリコール酸等のメルカプタン類;ジメチルキサントゲンスルフィド、ジイソプロピルキサントゲンジスルフィド等のキサントゲン類;ターピノーレン、α−メチルスチレンダイマー等が挙げられる。
【0059】
[A]重合体のゲルパーミエーションクロマトグラフィ(GPC)によるポリスチレン換算重量平均分子量(Mw)としては、特に限定されないが、下限として1,000が好ましく、5,000がより好ましい。一方、この上限としては、30,000が好ましく、20,000がより好ましい。また、[A]重合体のMwとGPCによるポリスチレン換算数平均分子量(Mn)との比(Mw/Mn)の下限としては、1.5が好ましい。この上限としては、3が好ましく、2.5がより好ましい。
【0060】
<[B]感光剤>
[B]感光剤(感放射線性化合物)は、放射線の照射に感応し、当該感放射線性樹脂組成物の現像液に対する溶解性を変化させる成分である。上記放射線としては、可視光線、紫外線、遠紫外線、X線、荷電粒子線等が挙げられる。[B]感光剤としては、キノンジアジド化合物、その他の光酸発生剤、光重合開始剤等を挙げることができるが、キノンジアジド化合物が好ましい。キノンジアジド化合物を用いることで、通常、露光部のアルカリ現像液に対する溶解性が高まり、ポジ型のフォトレジスト材料として好適に用いることができる。
【0061】
キノンジアジド化合物としては、フェノール性化合物又はアルコール性化合物(以下、「母核」という。)と1,2−ナフトキノンジアジドスルホン酸ハライドとの縮合物を用いることができる。
【0062】
上記母核としては、例えばトリヒドロキシベンゾフェノン、テトラヒドロキシベンゾフェノン、ペンタヒドロキシベンゾフェノン、ヘキサヒドロキシベンゾフェノン、(ポリヒドロキシフェニル)アルカン、その他の母核を挙げることができる。
【0063】
これらの母核としては、
トリヒドロキシベンゾフェノンとして、例えば2,3,4−トリヒドロキシベンゾフェノン、2,4,6−トリヒドロキシベンゾフェノン等;
テトラヒドロキシベンゾフェノンとして、例えば2,2’,4,4’−テトラヒドロキシベンゾフェノン、2,3,4,3’−テトラヒドロキシベンゾフェノン、2,3,4,4’−テトラヒドロキシベンゾフェノン、2,3,4,2’−テトラヒドロキシ−4’−メチルベンゾフェノン、2,3,4,4’−テトラヒドロキシ−3’−メトキシベンゾフェノン等;
ペンタヒドロキシベンゾフェノンとして、例えば2,3,4,2’,6’−ペンタヒドロキシベンゾフェノン等;
ヘキサヒドロキシベンゾフェノンとして、例えば2,4,6,3’,4’,5’−ヘキサヒドロキシベンゾフェノン、3,4,5,3’,4’,5’−ヘキサヒドロキシベンゾフェノン等;
(ポリヒドロキシフェニル)アルカンとして、例えばビス(2,4−ジヒドロキシフェニル)メタン、ビス(p−ヒドロキシフェニル)メタン、トリス(p−ヒドロキシフェニル)メタン、1,1,1−トリス(p−ヒドロキシフェニル)エタン、ビス(2,3,4−トリヒドロキシフェニル)メタン、2,2−ビス(2,3,4−トリヒドロキシフェニル)プロパン、1,1,3−トリス(2,5−ジメチル−4−ヒドロキシフェニル)−3−フェニルプロパン、4,4’−〔1−〔4−〔1−〔4−ヒドロキシフェニル〕−1−メチルエチル〕フェニル〕エチリデン〕ビスフェノール、ビス(2,5−ジメチル−4−ヒドロキシフェニル)−2−ヒドロキシフェニルメタン、3,3,3’,3’−テトラメチル−1,1’−スピロビインデン−5,6,7,5’,6’,7’−ヘキサノール、2,2,4−トリメチル−7,2’,4’−トリヒドロキシフラバン等;
その他の母核として、例えば2−メチル−2−(2,4−ジヒドロキシフェニル)−4−(4−ヒドロキシフェニル)−7−ヒドロキシクロマン、1−[1−(3−{1−(4−ヒドロキシフェニル)−1−メチルエチル}−4,6−ジヒドロキシフェニル)−1−メチルエチル]−3−(1−(3−{1−(4−ヒドロキシフェニル)−1−メチルエチル}−4,6−ジヒドロキシフェニル)−1−メチルエチル)ベンゼン、4,6−ビス{1−(4−ヒドロキシフェニル)−1−メチルエチル}−1,3−ジヒドロキシベンゼン等が挙げられる。
【0064】
これらの母核のうち、(ポリヒドロキシフェニル)アルカンが好ましく、1,1,1−トリ(p−ヒドロキシフェニル)エタン及び4,4’−〔1−〔4−〔1−〔4−ヒドロキシフェニル〕−1−メチルエチル〕フェニル〕エチリデン〕ビスフェノールがより好ましい。
【0065】
また、1,2−ナフトキノンジアジドスルホン酸ハライドとしては、1,2−ナフトキノンジアジドスルホン酸クロリドが好ましい。1,2−ナフトキノンジアジドスルホン酸クロリドの具体例としては、1,2−ナフトキノンジアジド−4−スルホン酸クロリド及び1,2−ナフトキノンジアジド−5−スルホン酸クロリドを挙げることができる。この中でも、1,2−ナフトキノンジアジド−5−スルホン酸クロリドを使用することが特に好ましい。
【0066】
フェノール性化合物又はアルコール性化合物と1,2−ナフトキノンジアジドスルホン酸ハライドとの縮合物の好適例としては、1,1,1−トリ(p−ヒドロキシフェニル)エタンと1,2−ナフトキノンジアジド−5−スルホン酸クロリドとの縮合物、4,4’−〔1−〔4−〔1−〔4−ヒドロキシフェニル〕−1−メチルエチル〕フェニル〕エチリデン〕ビスフェノールと1,2−ナフトキノンジアジド−5−スルホン酸クロリドとの縮合物が挙げられる。
【0067】
フェノール性化合物又はアルコール性化合物(母核)と、1,2−ナフトキノンジアジドスルホン酸ハライドとの縮合反応においては、フェノール性化合物又はアルコール性化合物中のOH基数に対して、好ましくは30モル%以上85モル%以下に相当する1,2−ナフトキノンジアジドスルホン酸ハライドを用いることができる。縮合反応は、公知の方法によって実施することができる。
【0068】
また、キノンジアジド化合物としては、上記例示した母核のエステル結合をアミド結合に変更した1,2−ナフトキノンジアジドスルホン酸アミド類、例えば2,3,4−トリアミノベンゾフェノン−1,2−ナフトキノンジアジド−4−スルホン酸アミド等も好適に使用される。
【0069】
これらの[B]感光剤は、単独で又は2種類以上を組み合わせて用いることができる。
【0070】
[B]感光剤の含有量は、特に限定されないが、キノンジアジド化合物を用いる場合、下限としては[A]重合体100質量部に対して、5質量部が好ましく、10質量部がより好ましく、20質量部がさらに好ましい。一方、この上限としては、80質量部が好ましく、60質量部がより好ましく、40質量部がさらに好ましい。[B]感光剤(キノンジアジド化合物)の含有量を上記範囲とすることにより、十分な感度を発揮できると共に、現像液となるアルカリ水溶液に対する放射線の照射部分と未照射部分との溶解度の差が大きく、パターニング性能が良好となる。また、得られる硬化膜の強度、絶縁性、低吸水性等もより良好となる。
【0071】
[B]感光剤として用いられる、光酸発生剤(キノンジアジド化合物以外の酸発生剤)としては、ジフェニルヨードニウム塩、トリフェニルスルホニウム塩、スルホニウム塩、ベンゾチアゾニウム塩、アンモニウム塩、ホスホニウム塩、テトラヒドロチオフェニウム塩等のオニウム塩、スルホンイミド化合物等が挙げられる。光酸発生剤を用いる場合、照射部に生じる酸により[A]重合体の硬化を促進させること、あるいは[A]重合体の第3構造単位中のR
7を解離させることなどにより、[A]重合体の溶解性を変化させることができる。また、例えば当該感放射線性樹脂組成物が後述する重合性化合物を含有する場合などは、[B]感光剤として、光重合開始剤等を用いることもできる。この光重合開始剤により照射部の硬化が生じ、溶解性を低下させることができる。光重合開始剤としては、例えばオキシムエステル化合物、アセトフェノン化合物、ビイミダゾール化合物等が挙げられる。
【0072】
<その他の成分>
当該感放射線性樹脂組成物は、[A]重合体及び[B]感光剤以外の成分を含有することができる。このような成分としては、後述する溶媒の他、密着助剤、重合性化合物、界面活性剤等を挙げることができる。
【0073】
<密着助剤>
接着助剤は、得られる硬化膜と基板との接着性を向上させる成分である。接着助剤としては、カルボキシ基、メタクリロイル基、ビニル基、イソシアネート基、オキシラニル基等の反応性官能基を有する官能性シランカップリング剤が好ましい。
【0074】
上記官能性シランカップリング剤としては、例えばトリメトキシシリル安息香酸、γ−メタクリロキシプロピルトリメトキシシラン、ビニルトリアセトキシシラン、ビニルトリメトキシシラン、γ−イソシアナートプロピルトリエトキシシラン、γ−グリシドキシプロピルトリメトキシシラン、β−(3,4−エポキシシクロヘキシル)エチルトリメトキシシラン等が挙げられる。
【0075】
接着助剤の含有量の下限としては、[A]重合体100質量部に対して、0.1質量部が好ましく、0.5質量部がより好ましく、1質量部がさらに好ましい。一方、この上限としては、10質量部が好ましく、5質量部がより好ましい。
【0076】
<重合性化合物>
重合性化合物は、通常、エチレン性不飽和結合を有する化合物が用いられる。重合性化合物は、単独で又は2種以上を組み合わせて用いてもよい。
【0077】
重合性化合物としては、例えばω−カルボキシポリカプロラクトンモノ(メタ)アクリレート、2−(2’−ビニロキシエトキシ)エチル(メタ)アクリレート等の単官能(メタ)アクリレート化合物;エチレングリコールジ(メタ)アクリレート、1,6−ヘキサンジオールジ(メタ)アクリレート、1,9−ノナンジオールジ(メタ)アクリレート、テトラエチレングリコールジ(メタ)アクリレート、ポリエチレングリコールジ(メタ)アクリレート、ポリプロピレングリコールジ(メタ)アクリレート、ビスフェノキシエタノールフルオレンジ(メタ)アクリレート、ジメチロールトリシクロデカンジ(メタ)アクリレート、2−ヒドロキシ−3−(メタ)アクリロイロキシプロピルメタクリレート、トリメチロールプロパントリ(メタ)アクリレート、ペンタエリスリトールトリ(メタ)アクリレート、ペンタエリスリトールテトラ(メタ)アクリレート、ジペンタエリスリトールペンタ(メタ)アクリレート、ジペンタエリスリトールヘキサ(メタ)アクリレート、トリ(2−(メタ)アクリロイロキシエチル)フォスフェート、エチレンオキサイド変性ジペンタエリスリトールヘキサアクリレート、コハク酸変性ペンタエリスリトールトリアクリレート、直鎖アルキレン基及び脂環式構造を有し、かつ2個以上のイソシアネート基を有する化合物と、分子内に1個以上の水酸基を有し、かつ3個〜5個の(メタ)アクリロイロキシ基を有する化合物とを反応させて得られるウレタン(メタ)アクリレート化合物等の多官能(メタ)アクリレート化合物等が挙げられる。
【0078】
<界面活性剤>
界面活性剤は、膜形成性を向上させる成分である。界面活性剤としては、例えばフッ素系界面活性剤、シリコーン系界面活性剤、及びその他の界面活性剤が挙げられる。
【0079】
<感放射線性樹脂組成物の調製方法>
当該感放射線性樹脂組成物は、[A]重合体及び[B]感光剤、並びに必要に応じてその他の成分を所定の割合で混合し、好ましくは適当な溶媒に溶解して調製できる。調製した感放射線性樹脂組成物は、例えば孔径0.2μm程度のフィルタでろ過することが好ましい。
【0080】
当該感放射線性樹脂組成物の調製に用いられる溶媒としては、当該感放射線性樹脂組成物が含有する各成分を均一に溶解又は分散し、上記各成分と反応しないものが用いられる。このような溶媒としては、例えばアルコール系溶媒、エーテル系溶媒、ケトン系溶媒、アミド系溶媒、エステル系溶媒、炭化水素系溶媒等が挙げられる。
【0081】
上記アルコール系溶媒としては、例えば
モノアルコール系溶媒として、メタノール、エタノール、n−プロパノール、i−プロパノール、n−ブタノール、i−ブタノール、sec−ブタノール、tert−ブタノール、n−ペンタノール、i−ペンタノール、2−メチルブタノール、sec−ペンタノール、tert−ペンタノール、3−メトキシブタノール、n−ヘキサノール、2−メチルペンタノール、sec−ヘキサノール、2−エチルブタノール、sec−ヘプタノール、3−ヘプタノール、n−オクタノール、2−エチルヘキサノール、sec−オクタノール、n−ノニルアルコール、2,6−ジメチル−4−ヘプタノール、n−デカノール、sec−ウンデシルアルコール、トリメチルノニルアルコール、sec−テトラデシルアルコール、sec−ヘプタデシルアルコール、フルフリルアルコール、フェノール、シクロヘキサノール、メチルシクロヘキサノール、3,3,5−トリメチルシクロヘキサノール、ベンジルアルコール、ジアセトンアルコール等;
多価アルコール系溶媒として、エチレングリコール、1,2−プロピレングリコール、1,3−ブチレングリコール、2,4−ペンタンジオール、2−メチル−2,4−ペンタンジオール、2,5−ヘキサンジオール、2,4−ヘプタンジオール、2−エチル−1,3−ヘキサンジオール、ジエチレングリコール、ジプロピレングリコール、トリエチレングリコール、トリプロピレングリコール等;
多価アルコール部分エーテル系溶媒として、エチレングリコールモノメチルエーテル、エチレングリコールモノエチルエーテル、エチレングリコールモノプロピルエーテル、エチレングリコールモノブチルエーテル、エチレングリコールモノヘキシルエーテル、エチレングリコールモノフェニルエーテル、エチレングリコールモノ−2−エチルブチルエーテル、ジエチレングリコールモノメチルエーテル、ジエチレングリコールモノエチルエーテル、ジエチレングリコールモノプロピルエーテル、ジエチレングリコールモノブチルエーテル、ジエチレングリコールモノヘキシルエーテル、プロピレングリコールモノメチルエーテル、プロピレングリコールモノエチルエーテル、プロピレングリコールモノプロピルエーテル、プロピレングリコールモノブチルエーテル、ジプロピレングリコールモノメチルエーテル、ジプロピレングリコールモノエチルエーテル、ジプロピレングリコールモノプロピルエーテル等が挙げられる。
【0082】
上記エーテル系溶媒としては、例えばジエチルエーテル、ジプロピルエーテル、ジブチルエーテル、ジフェニルエーテル、ジエチレングリコールジメチルエーテル、ジエチレングリコールメチルエチルエーテル(エチレンジグリコールメチルエチルエーテル)、ジエチレングリコールジエチルエーテル、テトラヒドロフラン等が挙げられる。
【0083】
上記ケトン系溶媒としては、例えばアセトン、メチルエチルケトン、メチル−n−プロピルケトン、メチル−n−ブチルケトン、ジエチルケトン、メチル−i−ブチルケトン、メチル−n−ペンチルケトン、エチル−n−ブチルケトン、メチル−n−ヘキシルケトン、ジ−i−ブチルケトン、トリメチルノナノン、シクロペンタノン、シクロヘキサノン、シクロヘプタノン、シクロオクタノン、メチルシクロヘキサノン、2,4−ペンタンジオン、アセトニルアセトン、アセトフェノン等が挙げられる。
【0084】
上記アミド系溶媒としては、例えばN,N’−ジメチルイミダゾリジノン、N−メチルホルムアミド、N,N−ジメチルホルムアミド、N,N−ジエチルホルムアミド、アセトアミド、N−メチルアセトアミド、N,N−ジメチルアセトアミド、N−メチルプロピオンアミド、N−メチルピロリドン等が挙げられる。
【0085】
上記エステル系溶媒としては、例えば酢酸メチル、酢酸エチル、酢酸n−プロピル、酢酸i−プロピル、酢酸n−ブチル、酢酸i−ブチル、酢酸sec−ブチル、酢酸n−ペンチル、酢酸sec−ペンチル、酢酸3−メトキシブチル、酢酸3−メチル−3−メトキシブチル、酢酸メチルペンチル、酢酸2−エチルブチル、酢酸2−エチルヘキシル、酢酸ベンジル、酢酸シクロヘキシル、酢酸メチルシクロヘキシル、酢酸n−ノニル、アセト酢酸メチル、アセト酢酸エチル、酢酸エチレングリコールモノメチルエーテル、酢酸エチレングリコールモノエチルエーテル、酢酸エチレングリコールモノ−n−プロピルエーテル、酢酸エチレングリコールモノ−n−ブチルエーテル、酢酸ジエチレングリコールモノメチルエーテル、酢酸ジエチレングリコールモノエチルエーテル、酢酸ジエチレングリコールモノ−n−プロピルエーテル、酢酸ジエチレングリコールモノ−n−ブチルエーテル、酢酸プロピレングリコールモノメチルエーテル、酢酸プロピレングリコールモノエチルエーテル、酢酸プロピレングリコールモノプロピルエーテル、酢酸プロピレングリコールモノブチルエーテル、酢酸ジプロピレングリコールモノメチルエーテル、酢酸ジプロピレングリコールモノエチルエーテル、ジ酢酸グリコール、酢酸メトキシトリグリコール、プロピオン酸エチル、プロピオン酸n−ブチル、プロピオン酸i−アミル、シュウ酸ジエチル、シュウ酸ジ−n−ブチル、乳酸メチル、乳酸エチル、乳酸n−ブチル、乳酸n−アミル、マロン酸ジエチル、フタル酸ジメチル、フタル酸ジエチル等が挙げられる。
【0086】
上記炭化水素系溶媒としては、例えば
脂肪族炭化水素系溶媒として、n−ペンタン、i−ペンタン、n−ヘキサン、i−ヘキサン、n−ヘプタン、i−ヘプタン、2,2,4−トリメチルペンタン、n−オクタン、i−オクタン、シクロヘキサン、メチルシクロヘキサン等;
芳香族炭化水素系溶媒として、ベンゼン、トルエン、キシレン、メシチレン、エチルベンゼン、トリメチルベンゼン、メチルエチルベンゼン、n−プロピルベンゼン、i−プロピルベンゼン、ジエチルベンゼン、i−ブチルベンゼン、トリエチルベンゼン、ジ−i−プロピルベンセン、n−アミルナフタレン等が挙げられる。
【0087】
また、上記溶媒は、カプロン酸、カプリル酸、炭酸エチレン、炭酸プロピレン等の高沸点溶媒をさらに含有してもよい。
【0088】
当該感放射線性樹脂組成物の固形分濃度としては、特に限定されないが、例えば10質量%以上50質量%以下とすることができる。
【0089】
<硬化膜の形成方法>
本発明の硬化膜の形成方法は、
(1)当該感放射線性樹脂組成物を用い、基板上に塗膜を形成する工程(以下、「工程(1)」ともいう)、
(2)上記塗膜の少なくとも一部に放射線を照射する工程(以下、「工程(2)」ともいう)、
(3)放射線照射後の上記塗膜を現像する工程(以下、「工程(3)」ともいう)、及び
(4)現像後の上記塗膜を加熱する工程(以下、「工程(4)」ともいう)
を備える。
当該感放射線性樹脂組成物を用いた硬化膜の形成方法によれば、十分な放射線感度で、絶縁性や腐食防止性に優れる硬化膜を形成することができる。以下、各工程について詳述する。
【0090】
[工程(1)]
本工程では、当該感放射線性樹脂組成物を用い、基板上に塗膜を形成する。具体的には、当該感放射線性樹脂組成物の溶液を基板表面に塗布し、好ましくはプレベークを行うことにより溶媒を除去して塗膜を形成する。上記基板としては、例えばガラス基板、シリコンウエハ、プラスチック基板、これらの表面に各種金属薄膜が形成された基板等が挙げられる。上記プラスチック基板としては、例えばポリエチレンテレフタレート(PET)、ポリブチレンテレフタレート(PBT)、ポリエーテルスルホン、ポリカーボネート、ポリイミド等のプラスチックからなる樹脂基板が挙げられる。
【0091】
塗布方法としては、例えばスプレー法、ロールコート法、回転塗布法(スピンコート法)、スリットダイ塗布法、バー塗布法、インクジェット法等の適宜の方法を採用することができる。これらの中で、塗布方法としては、スピンコート法、バー塗布法及びスリットダイ塗布法が好ましい。上記プレベークの条件としては、各成分の種類、使用割合等によっても異なるが、例えば60℃以上130℃以下で30秒間以上10分間以下程度とすることができる。形成される塗膜の平均膜厚は、プレベーク後の値として、0.1μm以上8μm以下が好ましい。
【0092】
[工程(2)]
本工程では、上記塗膜の少なくとも一部に放射線を照射する。具体的には、工程(1)で形成した塗膜に所定のパターンを有するマスクを介して放射線を照射する。このとき用いられる放射線としては、例えば紫外線、遠紫外線、X線、荷電粒子線等が挙げられる。
【0093】
上記紫外線としては、例えばg線(波長436nm)、i線(波長365nm)等が挙げられる。遠紫外線としては、例えばKrFエキシマレーザー光等が挙げられる。X線としては、例えばシンクロトロン放射線等が挙げられる。荷電粒子線としては、例えば電子線等が挙げられる。これらの放射線のうち、紫外線が好ましく、紫外線の中でもg線、h線及び/又はi線を含む放射線がより好ましい。放射線の露光量としては、0.1J/m
2以上10,000J/m
2以下が好ましい。
【0094】
[工程(3)]
本工程では、上記放射線が照射された塗膜を現像する。具体的には、工程(2)で放射線が照射された塗膜に対して現像液により現像を行って、ポジ型の場合、放射線の照射部分を除去する。上記現像液としては、例えば水酸化ナトリウム、水酸化カリウム、炭酸ナトリウム、ケイ酸ナトリウム、メタケイ酸ナトリウム、アンモニア、エチルアミン、n−プロピルアミン、ジエチルアミン、ジエチルアミノエタノール、ジ−n−プロピルアミン、トリエチルアミン、メチルジエチルアミン、ジメチルエタノールアミン、トリエタノールアミン、テトラメチルアンモニウムヒドロキシド(TMAH)、テトラエチルアンモニウムヒドロキシド、ピロール、ピペリジン、1,8−ジアザビシクロ〔5,4,0〕−7−ウンデセン、1,5−ジアザビシクロ〔4,3,0〕−5−ノナンなどのアルカリ(塩基性化合物)の水溶液等が挙げられる。また、上記アルカリの水溶液にメタノール、エタノール等の水溶性有機溶媒や界面活性剤を適当量添加した水溶液、又は当該感放射線性樹脂組成物を溶解可能な各種有機溶媒を少量含むアルカリ水溶液を現像液として用いてもよい。
【0095】
現像方法としては、例えば液盛り法、ディッピング法、揺動浸漬法、シャワー法等の適宜の方法を採用することができる。現像時間としては、当該感放射線性樹脂組成物の組成によって異なるが、例えば30秒以上120秒以下とすることができる。なお、現像工程の後、パターニングされた塗膜に対して流水洗浄によるリンス処理を行い、次いで、高圧水銀灯等による放射線を全面に照射(後露光)することにより、塗膜中に残存する[B]感光剤の分解処理を行うことが好ましい。この後露光における露光量としては、2,000J/m
2以上5,000J/m
2以下が好ましい。
【0096】
[工程(4)]
本工程では、上記現像された塗膜を加熱する。具体的には、工程(3)で現像された塗膜を加熱するホットプレート、オーブン等の加熱装置を用い、この塗膜を加熱処理(ポストベーク)することによって塗膜の硬化を行う。加熱温度としては、120℃以上250℃以下が好ましい。加熱時間としては、加熱機器の種類により異なるが、例えばホットプレート上で加熱処理を行う場合には5分以上40分以下、オーブン中で加熱処理を行う場合には30分以上80分以下とすることができる。このようにして、目的とする層間絶縁膜等の硬化膜に対応するパターン状塗膜を基板上に形成することができる。
【0097】
<硬化膜>
本発明の硬化膜は、当該感放射線性樹脂組成物から形成される。当該硬化膜の形成方法としては、特に限定されないが、好ましくは上述の当該硬化膜の形成方法を用いて形成することができる。当該硬化膜は、当該感放射線性樹脂組成物から形成されているため、優れた絶縁性や腐食防止性等を発揮することができる。当該硬化膜は上記特性を有しているため、例えば表示素子の層間絶縁膜、スペーサー、保護膜、カラーフィルタ用着色パターン等として好適である。
【0098】
<表示素子>
本発明の表示素子は、当該硬化膜を有している。当該表示素子としては、例えば液晶表示素子等が挙げられる。上記液晶表示素子は、例えば液晶配向膜が表面に形成されたTFTアレイ基板が2枚、TFTアレイ基板の周辺部に設けられたシール剤を介して液晶配向膜側で対向して配置されており、これら2枚のTFTアレイ基板間に液晶が充填されている。上記TFTアレイ基板は、層状に配置される配線を有し、この配線間を層間絶縁膜としての当該硬化膜により絶縁しているものである。
【実施例】
【0099】
以下、本発明を実施例に基づいて更に具体的に説明する。但し、本発明は、下記実施例に限定されるものではない。各物性値の測定方法を以下に示す。
【0100】
<重量平均分子量(Mw)、数平均分子量(Mn)及び分子量分布(Mw/Mn)>
下記条件によるゲルパーミエーションクロマトグラフィー(GPC)によりMw及びMnを測定した。また、分子量分布(Mw/Mn)は得られたMw及びMnより算出した。
装置:昭和電工社の「GPC−101」
GPCカラム:GPC−KF−801、GPC−KF−802、GPC−KF−803及びGPC−KF−804を結合(島津ジーエルシー社製)
移動相:テトラヒドロフラン
カラム温度:40℃
流速:1.0mL/分
試料濃度:1.0質量%
試料注入量:100μL
検出器:示差屈折計
標準物質:単分散ポリスチレン
【0101】
<(a−1)成分含有量(モル%)>
下記条件による高速液体クロマトグラフィー(HPLC)により残存モノマーとしての(a−1)成分量を測定し、仕込み量からの差分により重合体中の(a−1)成分含有量(モル%)を算出した。
装置:shimadzu社の「LC−VP」
カラム:shimadzu社の「VP−ODS」長さ250mm 内径4.6mm
移動相:アセトニトリル/0.1質量%リン酸添加水=60/40(v/v)
流速:1.0mL/分
検出器:UV220nm
【0102】
<[A]重合体の合成>
[合成例1](重合体(A−1)の合成)
冷却管及び撹拌機を備えたフラスコに、2,2’−アゾビス(2,4−ジメチルバレロニトリル)10質量部及びジエチレングリコールメチルエチルエーテル200質量部を仕込んだ。引き続き、(a−1)成分としてのスチレン50質量部、(a−2)成分としてのp−ビニルベンジルグリシジルエーテル30質量部、(a−3)成分としての4−ビニル安息香酸20質量部を仕込み、窒素置換した後、緩やかに攪拌しつつ、溶液の温度を70℃に上昇させ、この温度を5時間保持して重合することにより、アルカリ可溶性樹脂である重合体(A−1)を含有する重合体溶液を得た。この重合体溶液の固形分濃度は、31.5質量%であり、重合体(A−1)のMwは6,500、分子量分布(Mw/Mn)は1.8であった。また、この重合体中の(a−1)成分含有量(第1構造単位の含有割合)は48モル%であった。なお、固形分濃度とは、重合体溶液の全質量に占める共重合体質量の割合を意味し、以下においても同様に定義される。
【0103】
[合成例2〜42](重合体(A−2)〜(A−42)の合成)
下記表1に示す種類及び配合量(質量部)の各成分を用いた以外は合成例1と同様の手法にて、重合体(A−1)と同等の固形分濃度、分子量及び分子量分布を有する重合体(A−2)〜(A−42)を含む重合体溶液を得た。表1において、「−」は該当する成分を使用しなかったことを示す。
【0104】
【表1】
【0105】
表1中に記載の各成分の略称は、以下の通りである。
(a−1):第1構造単位を与える単量体
ST:スチレン
pMeST:4−メチルスチレン
tBST:4−t−ブチルスチレン
pOcST:4−オクチルスチレン
pMOST:4−メトキシスチレン
pBOST:4−t−ブトキシスチレン
HFA:1,1,1,3,3,3−ヘキサフルオロ―2−(4−ビニルフェニル)−プロパン−2−オール
VBA:4−ビニルベンジルアルコール
【0106】
(a−2):第2構造単位を与える単量体
VBG:p−ビニルベンジルグリシジルエーテル
VBO:p−ビニルベンジロキシエチルオキセタン
VBEC:p−ビニルベンジロキシ−3,4−エポキシシクロヘキシルメタン
VBEN:p−ビニルベンジロキシ−3,4−エポキシノルボルニルメタン
【0107】
(a−3):第3構造単位を与える単量体
VBAD:4−ビニル安息香酸
VPPA:4−ビニルフェニルプロピオン酸
VBAM:4−ビニル安息香酸メチル
【0108】
(a−4):第4構造単位を与える単量体
GMA:グリシジルメタクリレート
OXMA:(3−エチルオキセタン−3−イル)メチルメタクリレート
ECHMA:3,4−エポキシシクロヘキシルメチルメタクリレート
ENMA:3,4−エポキシノルボルニルメタクリレート
【0109】
その他成分:その他の構造単位を与える単量体
TMeST:2,4,6−トリメチルスチレン
VB:4−ビニルビフェニル
2VN:2−ビニルナフタレン
2VA:2−ビニルアントラセン
pFST:4−フルオロスチレン
PFST:2,3,4,5、6−ペンタフルオロスチレン
FMST:2,4−ビス(トリフルオロメチル)スチレン
STS:1−スチリルトリメトキシシラン
MA:メタクリル酸
HEMA:メタクリル酸ヒドロキシルエチル
MMA:メタクリル酸メチル
THFMA:メタクリル酸テトラヒドロフルフリル
【0110】
<感放射線性樹脂組成物の調製>
実施例及び比較例の感放射線性樹脂組成物の調製に用いた[A]重合体、[B]感光剤、[C]密着助剤及び[D]溶媒を以下に示す。
[A]重合体
A−1〜A−42:合成例1〜42で合成した重合体(A−1)〜(A−42)
[B]感光剤
B−1:4,4’−[1−[4−[1−[4−ヒドロキシフェニル]−1−メチルエチル]フェニル]エチリデン]ビスフェノール(1.0モル)と1,2−ナフトキノンジアジド−5−スルホン酸クロリド(2.0モル)との縮合物
B−2:1,1,1−トリ(p−ヒドロキシフェニル)エタン(1.0モル)と1,2−ナフトキノンジアジド−5−スルホン酸クロリド(2.0モル)との縮合物
[C]密着助剤
C−1:3−グリシジルオキシプロピルトリメトキシシラン
C−2:2−(3,4−エポキシシクロヘキシル)エチルトリメトキシシラン
[D]溶媒
D−1:プロピレングリコールモノメチルエーテルアセテート(PGMEA)
D−2:エチレンジグリコールメチルエチルエーテル(EDM)
【0111】
<感放射線性樹脂組成物の調製>
[実施例1]
重合体(A−1)100質量部(固形分)に相当する量に対して、感光剤(B−1)30質量部及び密着助剤(C−1)3質量部を混合し、固形分濃度が30質量%となるように溶媒(D−1)に溶解させた後、孔径0.2μmのメンブランフィルタで濾過して、感放射線性樹脂組成物を調製した。
【0112】
[実施例2〜38及び比較例1〜4]
下記表2に示す種類の各成分を用いた以外は実施例1と同様に操作し、実施例2〜38及び比較例1〜4の感放射線性樹脂組成物を調製した。
【0113】
【表2】
【0114】
<評価>
実施例1〜38及び比較例1〜4の感放射線性樹脂組成物から硬化膜を形成し、以下に説明する手法により、放射線感度、絶縁性及び腐食防止性(配線腐食)を評価した。評価結果を表2に示す。
【0115】
[放射線感度]
スピンナーを用い、60℃で60秒間HMDS処理したシリコン基板上に感放射線性樹脂組成物を塗布した後、90℃にて2分間ホットプレート上でプレベークして平均膜厚3.0μmの塗膜を形成した。この塗膜に幅10μmのライン・アンド・スペースパターンを有するパターンマスクを介して、水銀ランプによって所定量の紫外線を照射した。次いで、テトラメチルアンモニウムヒドロキシド2.38質量%水溶液よりなる現像液を用い、25℃で60秒現像処理を行った後、超純水で1分間流水洗浄を行った。このとき、幅10μmのライン・アンド・スペースパターンを形成可能な最小露光量を測定した。この測定値が500J/m
2未満の場合に感度は良好であり、500J/m
2以上の場合に不良と評価できる。
【0116】
[絶縁性(比誘電率)]
スピンナーを用い、SUS基板上に感放射線性樹脂組成物を塗布した後、90℃にて2分間ホットプレート上でプレベークして平均膜厚3.0μmの塗膜を形成した。露光機(キャノン社の「MPA−600FA」)を用い、積算照射量が9,000J/m
2となるように上記塗膜を露光し、露光した基板をクリーンオーブン内にて200℃で30分加熱することにより、SUS基板上に絶縁膜を形成した。次いで、蒸着法により、上記絶縁膜上にPt/Pd電極パターンを形成して誘電率測定用サンプルを作製した。この電極パターンを有する基板について、電極(横河・ヒューレットパッカード社の「HP16451B」)及びプレシジョンLCRメーター(横河・ヒューレットパッカード社の「HP4284A」)を用い、周波数10kHzでCV法により比誘電率の測定を行った。このとき、比誘電率が3.6以下の場合に絶縁性が良好であると、3.6を超える場合に絶縁性が不良であると評価できる。
【0117】
[腐食防止性(配線腐食)]
スピンナーを用い、アルミで形成された櫛形の配線基板上に感放射線性樹脂組成物を塗布した後、90℃にて2分間ホットプレート上でプレベークして平均膜厚3.0μmの塗膜を形成した。露光機(キャノン社の「MPA−600FA」)を用い、積算照射量が9,000J/m
2となるように上記塗膜を露光し、露光した基板をクリーンオーブン内にて200℃で30分加熱することにより、配線基板上に絶縁膜を形成した。この配線基板について、65℃/90%の湿熱条件下にて、500時間放置し、配線腐食試験を実施した。試験後の基板について、配線腐食の有無を顕微鏡で観察して腐食防止性を以下の基準で評価した。
A:配線腐食なし(
図1(A)参照)
B:配線腐食あり(
図1(B)参照)
【0118】
表2に示されるように、実施例の各感放射線性樹脂組成物は良好な感度を有し、かつ得られた硬化膜の絶縁性及び腐食防止性のいずれも良好であることがわかる。一方、比較例の感放射線樹脂組成物においては、感度、絶縁性及び腐食防止性の全てが良好であるものはなかった。例えば比較例1の感放射線性樹脂組成物は、(a−1)成分に由来する第1構造単位の含有割合が5モル%未満であり、絶縁性が不良である。比較例2の感放射線性樹脂組成物は、(a−1)成分に由来する第1構造単位の含有割合が80モル%超であり、感度が不良である。