特許第6390468号(P6390468)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6390468
(24)【登録日】2018年8月31日
(45)【発行日】2018年9月19日
(54)【発明の名称】製造ラインの作業指示システム
(51)【国際特許分類】
   G05B 19/418 20060101AFI20180910BHJP
   G06Q 50/04 20120101ALI20180910BHJP
【FI】
   G05B19/418 Z
   G06Q50/04
【請求項の数】4
【全頁数】13
(21)【出願番号】特願2015-42224(P2015-42224)
(22)【出願日】2015年3月4日
(65)【公開番号】特開2016-162335(P2016-162335A)
(43)【公開日】2016年9月5日
【審査請求日】2017年3月6日
(73)【特許権者】
【識別番号】501137636
【氏名又は名称】東芝三菱電機産業システム株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100082175
【弁理士】
【氏名又は名称】高田 守
(74)【代理人】
【識別番号】100106150
【弁理士】
【氏名又は名称】高橋 英樹
(72)【発明者】
【氏名】岩本 邦生
【審査官】 山村 秀政
(56)【参考文献】
【文献】 特開平02−285403(JP,A)
【文献】 特開平01−181103(JP,A)
【文献】 特開2002−006922(JP,A)
【文献】 特開平05−143148(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G05B 19/418
G06Q 50/04
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
計算機と、複数の工程それぞれにコントローラおよび製造装置とを備える製造ラインの作業指示システムであって、
前記計算機は、前記複数の工程それぞれのコントローラが作業指示情報を作成するために必要な製品情報を第1工程のコントローラに送信し、
前記第1工程のコントローラは、
前記計算機から受信した前記製品情報から第1工程作業指示を作成して前記第1工程の製造装置に送信し、
前記第1工程作業指示を前記第1工程の製造装置に送信した後、第1工程完了情報を送信する前に、第2工程のコントローラに前記製品情報を送信し、
前記第1工程の製造装置が前記第1工程作業指示に応じた作業を完了した後に、前記第1工程完了情報を前記第2工程のコントローラに送信し、
前記第2工程のコントローラは、
前記第1工程完了情報を受信する前に、前記第1工程のコントローラから受信した前記製品情報に基づいて前記第2工程における作業の準備を指示する準備指示を作成して、前記第2工程の製造装置に送信し、
前記第1工程完了情報を受信した場合に、前記第1工程のコントローラから受信した前記製品情報から第2工程作業指示を作成して前記第2工程の製造装置に送信すること、
を特徴とする製造ラインの作業指示システム。
【請求項2】
前記第1工程のコントローラは、前記計算機から受信した前記製品情報から前記第1工程作業指示を作成するのみに必要な情報を削除した製品情報を前記第2工程のコントローラに送信すること、
を特徴とする請求項1に記載の製造ラインの作業指示システム。
【請求項3】
前記複数の工程の数はN(N>2、Nは自然数)であって、
第i工程(2≦i<N、iは自然数)のコントローラは、
第i−1工程完了情報を受信する前に、第i−1工程のコントローラから受信した前記製品情報に基づいて前記第i工程における作業の準備を指示する準備指示を作成して、前記第i工程の製造装置に送信し、
前記第i−1工程完了情報を受信した場合に、前記第i−1工程のコントローラから受信した前記製品情報から第i工程作業指示を作成して前記第i工程の製造装置に送信し、
前記第i工程のコントローラは、前記第i工程作業指示を前記第i工程の製造装置に送信した後、第i工程完了情報を送信する前に、第i+1工程のコントローラに前記製品情報を送信し、
前記第i工程の製造装置が前記第i工程作業指示に応じた作業を完了した後に、前記第i工程完了情報を前記第i+1工程のコントローラに送信し、
第N工程のコントローラは、
第N−1工程完了情報を受信した場合に、第N−1工程のコントローラから受信した前記製品情報から第N工程作業指示を作成して前記第N工程の製造装置に送信し、
前記第N工程の製造装置が前記第N工程作業指示に応じた作業を完了した後に、第N工程完了情報を前記計算機に送信すること、
を特徴とする請求項1又は2に記載の製造ラインの作業指示システム。
【請求項4】
前記第i工程のコントローラは、前記第i−1工程のコントローラから受信した前記製品情報から前記第i工程作業指示を作成するのみに必要な情報を削除した製品情報を前記第i+1工程のコントローラに送信すること、
を特徴とする請求項3に記載の製造ラインの作業指示システム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この発明は、製造ラインの作業指示システムに関する。
【背景技術】
【0002】
従来、例えば特許文献1に開示されるように、作業対象物に対して作業者が順次作業を行う作業ラインの作業指示システムが開示されている。この作業指示システムは、作業指示サーバと、複数の作業ステーションを備える。この作業指示システムは、後工程において、前工程から作業対象物の型式等の検索キーを受信し、受信した検索キーを用いて作業指示サーバに問い合わせて作業指示情報を取得する。
【0003】
尚、出願人は、本発明に関連するものとして、上記の文献を含めて、以下に記載する文献を認識している。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開平11−305641号公報
【特許文献2】特開2007−257010号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、上記従来の作業指示システムでは、各作業ステーションは型式等の検索キーを用いて作業指示サーバから作業指示情報を取得する必要があるため、上位の計算機である作業指示サーバがダウンしてしまうと後工程の作業ステーションは作業指示情報を取得できず、製造を継続することができないという問題がある。
【0006】
この発明は、上述のような課題を解決するためになされたもので、計算機に異常が生じた場合においても、作業対象物の製造を継続できる製造ラインの作業指示システムを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上記の目的を達成するため、本発明に係る製造ラインの作業指示システムは以下のように構成される。
【0008】
本発明に係る製造ラインの作業指示システムは、計算機と、複数の工程それぞれにコントローラおよび製造装置とを備える。計算機は、プロセッサの他、プログラムやデータを保存するハードディスク、ファン等のような回転機を有する。各コントローラは、プロセッサの他、プログラムやデータを保存するRAMディスク等を備え、ハードディスクやファンなどの回転機を有さないプログラマブルコントローラである。各コントローラは、回転機を有さないため計算機と比べて故障頻度が低い。
【0009】
計算機は、製品情報を第1工程のコントローラに送信する処理を実行する。製品情報は、各工程のコントローラが作業指示情報を作成するために必要な最小限の情報(シリアル番号、各工程における作業に必要なデータ)である。
【0010】
第1工程のコントローラは、計算機から受信した製品情報から第1工程作業指示を作成して第1工程の製造装置に送信する処理と、計算機から受信した製品情報を第2工程のコントローラに送信する処理と、第1工程の製造装置が第1工程作業指示に応じた作業を完了した後に、第1工程完了情報を第2工程のコントローラに送信する処理とを実行する。
【0011】
第2工程のコントローラは、第1工程完了情報を受信した場合に、第1工程のコントローラから受信した製品情報から第2工程作業指示を作成して第2工程の製造装置に送信する処理を実行する。
【0012】
好ましくは、第1工程のコントローラは、第1工程作業指示を第1工程の製造装置に送信した後、第1工程完了情報を送信する前に、第2工程のコントローラに前記製品情報を送信する。加えて、第2工程のコントローラは、第1工程完了情報を受信する前に、第1工程のコントローラから受信した製品情報に基づいて第2工程における作業の準備を指示する準備指示を作成して、第2工程の製造装置に送信する。このように、現工程内に滞留している半製品のうち、次に次工程へ搬送される半製品が確定したタイミングで製品情報を送信することで、次工程において作業準備を開始することができる。
【0013】
好ましくは、第1工程のコントローラは、計算機から受信した製品情報から第1工程作業指示を作成するのみに必要な情報を削除した製品情報を前記第2工程のコントローラに送信する。このように、次工程に送信する製品情報を最小化することでコントローラのメモリ量を低減できる。
【発明の効果】
【0014】
本発明によれば、コントローラが作業指示情報を作成するために必要な製品情報を受信した後は、計算機を介さずに、コントローラ間で製品情報を送受信することができる。そのため、計算機に異常が生じた場合においても、当該製品情報に関する作業対象物の製造を継続することができ、製造ラインの稼働率を向上させることができる。
【図面の簡単な説明】
【0015】
図1】本発明の実施の形態1に係る製造ラインの構成を説明するための概念構成図である。
図2】複数の工程を有する製造ラインのブロック図である。
図3】本発明の実施の形態1に係る製造ラインにおいて実行される制御ルーチンのフローチャートである。
図4】本発明の実施の形態2に係る製造ラインにおいて実行される制御ルーチンのフローチャートである。
図5】本発明の実施の形態3に係る製造ラインの構成を説明するための概念構成図である。
【発明を実施するための形態】
【0016】
以下、図面を参照して本発明の実施の形態について詳細に説明する。尚、各図において共通する要素には、同一の符号を付して重複する説明を省略する。
【0017】
実施の形態1.
[実施の形態1のシステム構成]
図1は、本発明の実施の形態1に係る製造ラインの構成を説明するための概念構成図である。図1に示す製造ライン1は、多品種少量生産の製造ラインである。例えば、自動車の製造ラインも、車種、カラー、オプションなどの組み合わせが多岐にわたり、多品種少量生産の製造ラインといえる。製造ライン1は、計算機10を備える。計算機10は、プロセッサの他、プログラムやデータを保存するハードディスク、ファン等のような故障頻度が高い回転機を有する計算機である。
【0018】
また、製造ライン1は、複数の工程で構成される。例えば、自動車の製造ラインの場合、各工程は、ドアを取り付ける工程、タイヤを取り付ける工程などである。図1には3つの工程が示されているが、工程数はこれに限定されるものではない。
【0019】
複数の工程のそれぞれには、コントローラ、製造装置、識別手段が設けられる。図1に示す例では、第1工程にコントローラ11、製造装置12、識別手段13が、第2工程にコントローラ21、製造装置22、識別手段23が、第3工程にコントローラ31、製造装置32、識別手段33が設けられる。各コントローラは、プロセッサの他、プログラムやデータを保存するRAMディスク等を備え、ハードディスクやファンなどの回転機を有さないプログラマブルコントローラである。各コントローラ11、21、31は、回転機を有さないため計算機10と比べて故障頻度が低い。
【0020】
製造ライン1の作業指示システムは、コンピュータネットワーク2、計算機10、および各工程のコントローラ、製造装置、識別手段により構成される。
【0021】
また、製造ライン1は、作業対象物である半製品を搬送する搬送装置40を備える。図1に示す製造ライン1は、各工程において半製品41〜43を加工し、最終的に製品44を製造する。
【0022】
計算機10は、コンピュータネットワーク2を介して第1工程のコントローラ11に接続している。コントローラ11は、コンピュータネットワーク2を介して第2工程のコントローラ21に接続している。コントローラ21は、コンピュータネットワーク2を介して第3工程のコントローラ31に接続している。コントローラ31は、コンピュータネットワーク2を介して計算機10に接続している。
【0023】
各工程の基本構成について説明する。第1工程のコントローラ11は、計算機10と第2工程のコントローラ21と第1工程の製造装置12と識別手段13とに接続している。製造装置12は、識別手段13に接続している。製造装置12は、搬送装置40に搬送される半製品41に対して作業可能な位置に配置される。また、製造装置12は、作業者に対する指示装置である場合と、作業対象物(半製品)に作用する装置である場合があり、これらの組み合わせであってもよい。識別手段13は、第1工程の作業が完了したことをコントローラ11に送信する装置であり、コントローラ11又は製造装置12に組み込まれてもよい。
【0024】
第2工程のコントローラ21は、第1工程のコントローラ11と第3工程のコントローラ31と第2工程の製造装置22と識別手段23とに接続している。製造装置22は、識別手段23に接続している。製造装置22は、搬送装置40に搬送される半製品42に対して作業を実行可能な位置に配置される。製造装置22は製造装置12と同様の機能を有するため説明は省略する。識別手段23は、第2工程の作業が完了したことをコントローラ21に送信する装置であり、コントローラ21又は製造装置22に組み込まれてもよい。
【0025】
第3工程のコントローラ31は、第2工程のコントローラ21と計算機10と第3工程の製造装置32と識別手段23とに接続している。製造装置32は識別手段33に接続している。製造装置32は、搬送装置40に搬送される半製品43に対して作業を実行可能な位置に配置される。製造装置32は製造装置12と同様の機能を有するため説明は省略する。識別手段33は、第3工程の作業が完了したことをコントローラ31に送信する装置であり、コントローラ31又は製造装置32に組み込まれてもよい。
【0026】
[実施の形態1における特徴的構成]
図2は、複数の工程を有する製造ラインのブロック図である。図2では、一般化して工程数をN(N>2、Nは自然数)とするが、本発明は、2工程のみの製造ラインにも適用できる。
【0027】
図2に示す、計算機10、各コントローラ、各製造装置、各識別手段は、後述する各処理に対応するプログラムとプロセッサを備え、プログラムがプロセッサによって実行されることによって各処理が実現される。
【0028】
計算機10は、製品情報を第1工程のコントローラ11に送信する処理を実行する。製品情報は、各工程のコントローラが作業指示情報を作成するために必要な最小限の情報(製品固有のシリアル番号、各工程における作業に必要なデータを含む)である。また、計算機10は、第N工程完了情報を受信して当該製品の製造が完了したことを認識する。
【0029】
(第1工程)
最初の工程である第1工程の処理について説明する。第1工程のコントローラ11は、計算機10から受信した製品情報から第1工程作業指示を作成して第1工程の製造装置12に送信する処理を実行する。また、計算機10から受信した製品情報を第2工程のコントローラ21に送信する処理を実行する。好ましくは、計算機10から受信した製品情報から第1工程作業指示を作成するのみに必要な情報を削除した製品情報を第2工程のコントローラに送信する。また、第1工程の製造装置12が第1工程作業指示に応じた作業を完了した後に、第1工程完了情報を第2工程のコントローラ21に送信する処理を実行する。第1工程完了情報にはシリアル番号が含まれ、第1工程に複数の作業対象物がある場合であっても、第2工程に搬送される作業対象物を特定して第2工程に知らせることができる。なお、第1工程のコントローラ11が製品情報を第2工程のコントローラ21に送信するのは、第1工程完了情報をコントローラ21に送信する前又は同時とする。
【0030】
第1工程の製造装置12は、上述したように作業者に対する指示装置である場合と、作業対象物(半製品)に作用する装置である場合がある。製造装置12が作業者に対する指示装置である場合、製造装置12は、受信した第1工程作業指示を画面表示等により作業者に通知する処理を実行する。また、製造装置12が作業対象物に作用する装置である場合、製造装置12は、受信した第1工程作業指示に基づいて作業対象物を加工する処理を実行する。また、第1工程における作業が完了し作業対象物が第1工程を通過したことを示す信号を識別手段13に送信する処理を実行する。
【0031】
第1工程の識別手段13は、製造装置12が第1工程作業指示に応じた作業を完了した後に、第1工程完了情報をコントローラ11に送信する処理を実行する。具体的には、製造装置12が作業者に対する指示装置である場合、識別手段13は作業者に操作される装置であり、例えば、作業者が画面上の工程完了ボタンを押下することで、第1工程完了情報がコントローラ11に送信される。また、製造装置12が作業対象物に作用する装置である場合、識別手段13は、第1工程作業指示に応じた作業が完了し作業対象物が第1工程を通過したことを示す信号を製造装置12から受信し、第1工程完了情報をコントローラ11に送信する。
【0032】
(第i工程)
次に、中間工程である第i工程の処理について説明する。第i工程(2≦i<N、iは自然数)のコントローラi1は、第i−1工程完了情報を受信した場合に、第i−1工程のコントローラから受信した製品情報から第i工程作業指示を作成して第i工程の製造装置i2に送信する処理を実行する。また、第i−1工程のコントローラから受信した製品情報を第i+1工程のコントローラに送信する処理を実行する。好ましくは、第i−1工程のコントローラから受信した製品情報から第i工程作業指示を作成するのみに必要な情報を削除した製品情報を第i+1工程のコントローラに送信する。また、第i工程の製造装置i2が第i工程作業指示に応じた作業を完了した後に、第i工程完了情報を第i+1工程のコントローラに送信する処理を実行する。
【0033】
第i工程の製造装置i2は、第i工程作業指示に応じた処理を実行し、コントローラi1や識別手段i3と送受信する点を除き、上述した製造装置12と同様の処理を実行するため、その説明は省略する。
【0034】
第i工程の識別手段i3は、製造装置i2やコントローラi1と送受信する点を除き、上述した識別手段i3と同様の処理を実行するため、その説明は省略する。
【0035】
(第N工程)
次に、最終工程である第N工程の処理について説明する。第N工程のコントローラn1は、第N−1工程完了情報を受信した場合に、第N−1工程のコントローラから受信した製品情報から第N工程作業指示を作成して第N工程の製造装置n2に送信する処理を実行する。また、第N工程の製造装置n2が第N工程作業指示に応じた作業を完了した後に、第N工程完了情報を計算機10に送信する処理を実行する。
【0036】
第N工程の製造装置n2は、第N工程作業指示に応じた処理を実行し、コントローラn1や識別手段n3と送受信する点を除き、上述した製造装置12と同様の処理を実行するため、その説明は省略する。
【0037】
第N工程の識別手段n3は、製造装置n2やコントローラn1と送受信する点を除き、上述した識別手段13と同様の処理を実行するため、その説明は省略する。
【0038】
(フローチャート)
図3は、本発明の実施の形態1に係る製造ラインにおいて実行される制御ルーチンのフローチャートである。図3に示す例では、工程数を3とする。なお、上述したように、製造ラインの各工程に設けられる製造装置は、作業者に対する指示装置である場合と、作業対象物(半製品)に作用する装置である場合があるが、図3では、一例として作業対象物に作用する装置である場合として説明する。本ルーチンの各処理は、製品毎(シリアル番号毎)に実行される。また、作業対象物はシリアル番号で区別可能であるため、複数の作業対象物が製造ラインに混在してもよい。
【0039】
図3に示すルーチンでは、まず、ステップS101において、計算機10は、製品情報を第1工程のコントローラ11に送信する処理を実行する。なお、複数の製品情報が第1工程に送信されてもよい。第1工程のコントローラ11は取得した製品情報を順に処理する。工程での作業内容によっては、次工程に進む作業対象物の順番が前後する場合もあるが、各工程作業指示、各工程完了情報にはシリアル番号が含まれるため、作業対象物を区別して適切に処理可能である。
【0040】
ステップS201において、コントローラ11は、計算機10から送信された製品情報を受信する処理を実行する。ステップS202において、コントローラ11は、計算機10から受信した製品情報から第1工程作業指示を作成して第1工程の製造装置12に送信する処理を実行する。
【0041】
ステップS203において、製造装置12は、受信した第1工程作業指示に基づいて作業対象物を加工する処理を実行する。作業完了後、ステップS204において、製造装置12は、第1工程における作業が完了し作業対象物が第1工程を通過したことを示す信号を第1工程の識別手段13に送信する処理を実行する。識別手段13は、第1工程作業指示に応じた作業が完了し作業対象物が第1工程を通過したことを示す信号を製造装置12から受信し、第1工程完了情報をコントローラ11に送信する処理を実行する。
【0042】
ステップS205において、コントローラ11は、製品情報および第1工程完了情報を第2工程のコントローラ21に送信する処理を実行する。
【0043】
ステップS301において、第2工程のコントローラ21は、第1工程のコントローラ11から送信された製品情報および第1工程完了情報を受信する処理を実行する。ステップS302において、コントローラ21は、第1工程完了情報を受信したことを条件として、コントローラ11から受信した製品情報から第2工程作業指示を作成して第2工程の製造装置22に送信する処理を実行する。
【0044】
ステップS303において、製造装置22は、受信した第2工程作業指示に基づいて作業対象物を加工する処理を実行する。作業完了後、ステップS304において、製造装置22は、第2工程における作業が完了し作業対象物が第2工程を通過したことを示す信号を第2工程の識別手段23に送信する処理を実行する。識別手段23は、第2工程作業指示に応じた作業が完了し作業対象物が第2工程を通過したことを示す信号を製造装置22から受信し、第2工程完了情報をコントローラ21に送信する処理を実行する。
【0045】
ステップS305において、コントローラ21は、製品情報および第2工程完了情報を第3工程のコントローラ31に送信する処理を実行する。
【0046】
ステップS401において、第3工程のコントローラ31は、第2工程のコントローラ21から送信された製品情報および第2工程完了情報を受信する処理を実行する。ステップS402において、コントローラ31は、第2工程完了情報を受信したことを条件として、コントローラ21から受信した製品情報から第3工程作業指示を作成して第3工程の製造装置32に送信する処理を実行する。
【0047】
ステップS403において、製造装置32は、受信した第3工程作業指示に基づいて作業対象物を加工する処理を実行する。作業完了後、ステップS404において、製造装置32は、第3工程における作業が完了し作業対象物が第3工程を通過したことを示す信号を第3工程の識別手段33に送信する処理を実行する。識別手段33は、第3工程作業指示に応じた作業が完了し作業対象物が第3工程を通過したことを示す信号を製造装置32から受信し、第3工程完了情報をコントローラ31に送信する処理を実行する。
【0048】
ステップS405において、コントローラ31は、第3工程完了情報を計算機10に送信する処理を実行する。
【0049】
ステップS102において、計算機10は、第3工程完了情報を受信して、第3工程完了情報に含まれるシリアル番号に係る製品の製造が完了したことを認識する。
【0050】
以上説明したように、図3に示すルーチンによれば、計算機10は、ステップS101の処理後、各工程の処理に関与しない。また、型式などの検索キーではなく、製品情報(コントローラが作業指示情報を作成するために必要な最小限の情報)を、計算機10を介さずに各コントローラ間で送受信する。そのため、計算機10に異常が生じた場合においても、各工程のコントローラは前工程から受信した製品情報から作業指示情報を生成でき、作業対象物の製造を継続することができる。その結果、製造ライン1の稼働率を工場させることができる。
【0051】
(変形例)
ところで、上述した図3のステップS205、S305においては、製品情報と各工程完了情報を同時期に次工程のコントローラに送信することとしているが、送信タイミングは、これに限定されるものではない。例えば、製品情報を各工程完了情報の前に送信することとしてもよい。
【0052】
また、上述した図3のステップS205、S305においては、各工程で受信した製品情報をそのまま次工程に送信しているが、送信する製品情報はこれに限定されるものではない。好ましくは、受信した製品情報から現工程の作業指示情報を作成するのみに必要な情報を削除した製品情報を次工程のコントローラに送信することとしてもよい。これにより、次工程に送信する製品情報を最小化することでコントローラのメモリ量を低減できる。
【0053】
実施の形態2.
[実施の形態2のシステム構成]
次に、図4を参照して本発明の実施の形態2について説明する。本実施形態のシステムは図1図2に示す構成において、システムに後述する図4のルーチンを実施させることで実現することができる。
【0054】
[実施の形態2における特徴的構成]
上述した実施の形態1の製造ラインでは、各工程における作業が完了した後に製品情報を次工程のコントローラに送信している。しかしながら、製品情報を事前に次工程のコントローラに送信しておけば、各工程での作業に用いられる部品等を事前に準備できる。
【0055】
そこで、実施の形態2の製造ラインでは、第1工程のコントローラ11は、第1工程作業指示を第1工程の製造装置12に送信した後、第1工程完了情報を送信する前に、第2工程のコントローラ21に製品情報を送信する処理を実行する。
【0056】
また、第2工程のコントローラ21は、第1工程完了情報を受信する前に、第1工程のコントローラ11から受信した製品情報に基づいて第2工程における作業の準備を指示する準備指示を作成して、第2工程の製造装置22に送信する処理を実行する。
【0057】
他の処理については実施の形態1の図2に関して説明した内容と同様であるため、その説明は省略する。
【0058】
図4は、本発明の実施の形態2に係る製造ラインにおいて実行される制御ルーチンのフローチャートである。図4では一例として、3つの工程を有する製造ラインにおける処理について説明する。なお、上述したように、製造ラインの各工程に設けられる製造装置は、作業者に対する指示装置である場合と、作業対象物(半製品)に作用する装置である場合があるが、図4に示す例では作業対象物に作用する装置である場合として説明する。本ルーチンの各処理は、製品毎(シリアル番号毎)に実行される。また、作業対象物はシリアル番号で区別可能であるため、複数の作業対象物が製造ラインに混在してもよい。
【0059】
図4に示すルーチンの説明において、図3に示すステップと同様のステップについては同一の符号を付してその説明を省略又は簡略する。
【0060】
図4に示すルーチンでは、まず、ステップS101において、計算機10は、製品情報を第1工程のコントローラ11に送信する処理を実行する。
【0061】
ステップS201において、コントローラ11は、計算機10から送信された製品情報を受信する処理を実行する。ステップS202において、コントローラ11は、計算機10から受信した製品情報から第1工程作業指示を作成して第1工程の製造装置12に送信する処理を実行する。
【0062】
ステップS202の処理後、ステップS211の処理が実行される。ステップS211において、コントローラ11は、製品情報を第2工程のコントローラ21に送信する処理を実行する。
【0063】
ステップS211の処理後、ステップS311の処理が実行される。ステップS311において、第2工程のコントローラ21は、第1工程のコントローラ11から送信された製品情報を受信する処理を実行する。
【0064】
ステップS311の処理後、ステップS312の処理が実行される。ステップS312において、第2工程のコントローラ21は、第1工程完了情報を受信する前に、第1工程のコントローラ11から受信した製品情報に基づいて第2工程における作業の準備を指示する準備指示を作成して、第2工程の製造装置22に送信する処理を実行する。
【0065】
また、ステップS211の処理後、上述したステップS203、ステップS204の処理が実行される。ステップS204の処理後、ステップS212の処理が実行される。ステップS212において、コントローラ11は、第1工程完了情報を第2工程のコントローラ21に送信する処理を実行する。
【0066】
ステップS212の処理後、ステップS313の処理を実行する。ステップS313において、第2工程のコントローラ21は、第1工程のコントローラ11から送信された第1工程完了情報を受信する処理を実行する。
【0067】
ステップS313の処理後、上述したステップS302の処理を実行し、その後、ステップS314の処理を実行する。ステップS314において、コントローラ21は、製品情報を第3工程のコントローラ31に送信する処理を実行する。
【0068】
ステップS314の処理後、ステップS411の処理を実行する。ステップS411において、第3工程のコントローラ31は、第2工程のコントローラ21から送信された製品情報を受信する処理を実行する。
【0069】
ステップS411の処理後、ステップS412の処理を実行する。ステップS412において、第3工程のコントローラ31は、第2工程完了情報を受信する前に、第2工程のコントローラ21から受信した製品情報に基づいて第3工程における作業の準備を指示する準備指示を作成して、第3工程の製造装置32に送信する処理を実行する。
【0070】
また、ステップS314の処理後、上述したステップS303、ステップS304の処理が実行される。ステップS304の処理後、ステップS315の処理が実行される。ステップS315において、コントローラ21は、第2工程完了情報を第3工程のコントローラ31に送信する処理を実行する。
【0071】
ステップS315の処理後、ステップS413の処理を実行する。ステップS413において、第3工程のコントローラ31は、第2工程のコントローラ21から送信された第2工程完了情報を受信する処理を実行する。
【0072】
ステップS413の処理後、上述したステップS402〜ステップS404の処理を実行し、その後、ステップS414の処理を実行する。ステップS414において、コントローラ31は、第3工程完了情報を計算機10に送信する処理を実行する。
【0073】
以上説明したように、図4に示すルーチンによれば、現工程内に滞留している半製品のうち、次に次工程へ搬送される半製品が確定したタイミングで製品情報を送信する。工程完了情報を送信する前に、次工程において作業準備を開始することができる。特に多品種少量生産の製造ラインのように製品毎に各工程の作業が異なる場合には、製品毎に各工程で準備を要する場合もあるため有効である。
【0074】
実施の形態3.
[実施の形態3のシステム構成]
次に、図5を参照して本発明の実施の形態3について説明する。実施の形態1および実施の形態2では計算機10と各工程のコントローラはコンピュータネットワーク2により接続されている。計算機10に異常が発生した場合には製造を継続することができるが、コンピュータネットワーク2を構成するLANケーブルやHUB等の機器に異常が発生した場合は、第i工程のコントローラは、第i−1工程のコントローラから製品情報を受け取れないため、製造を継続することができない。
【0075】
[実施の形態3における特徴的構成]
実施の形態3では、各工程間のコントローラをコンピュータネットワーク2とは別の専用線で接続することにより、2重化を図る。コンピュータネットワーク2に異常が発生した場合は、第i工程のコントローラは、第i−1工程のコントローラから専用線を介して製品情報を受信して製造を継続することができる。
【0076】
図5は、本発明の実施の形態3に係る製造ラインの構成を説明するための概念構成図である。図5に示す製造ライン1は、第1工程のコントローラ11と第2工程のコントローラ21とが専用線51で接続され、第2工程のコントローラ21と第3工程のコントローラ31とが専用線52で接続されている。他の構成については図1と同一であるため、同一の符号を付してその説明を省略する。実施の形態3のシステムは、図5に示す構成において、コンピュータネットワーク2に異常が発生した場合に、専用線51、52を用いて上述した図3又は図4のルーチンを実施させることで実現することができる。
【符号の説明】
【0077】
1 製造ライン
2 コンピュータネットワーク
10 計算機
11、21、31、i1、n1 コントローラ
12、22、32、i2、n2 製造装置
13、23、33、i3、n3 識別手段
41、42、43 作業対象物(半製品)
44 製品
51、52 専用線
図1
図2
図3
図4
図5