(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
混繊不織布に含まれるポリオレフィン系樹脂成分Aからなる繊維とポリオレフィン系樹脂成分Bからなる繊維の体積割合A:Bが、20:80〜90:10の範囲にあることを特徴とする請求項1から4のいずれかに記載の混繊不織布。
2種類の異なるポリオレフィン系樹脂成分Aおよびポリオレフィン系樹脂成分Bを、同一ダイに設けられた別々の吐出孔から吐出し、混繊不織布を製造する方法であって、前記ポリオレフィン系樹脂成分Aの融点が、前記ポリオレフィン系樹脂成分Bの融点よりも5〜40℃高く、かつ、前記ポリオレフィン系樹脂成分Aのメルトフローレートが、前記ポリオレフィン系樹脂成分Bのメルトフローレートよりも5〜100倍高く、前記ポリオレフィン系樹脂成分Aからなる繊維の見かけの紡糸速度が、前記ポリオレフィン系樹脂成分Bからなる繊維の見かけの紡糸速度に比べ、20〜500倍早いことを特徴とする混繊不織布の製造方法。
【発明を実施するための形態】
【0030】
次に、本発明の混繊不織布の実施の形態について説明する。
【0031】
本発明の混繊不織布は、少なくとも2種類の繊維を含む繊維群からなる不織布であって、第1の繊維群はポリオレフィン系樹脂成分Aからなる繊維によって構成されており、第2の繊維群はポリオレフィン系樹脂成分Bからなる繊維によって構成されている。
【0032】
本発明の混繊不織布を構成する第1の繊維群および第2の繊維群は、上記のとおり、いずれもポリオレフィン系樹脂成分によって構成される。ここでポリオレフィン系樹脂とは、脂肪族不飽和炭化水素化合物を繰り返し単位として重合された高分子化合物からなる熱可塑性樹脂を指す。ポリオレフィン系樹脂は、体積抵抗率が高く、また吸湿性が低いため、繊維化したときの帯電性および電荷保持性が強い。本発明の混繊不織布は、この効果によって、高い捕集効率を達成することができる。
【0033】
ポリオレフィン系樹脂成分Aとして用いられる樹脂の種類としては、ポリエチレン、ポリプロピレン、ポリブテンおよびポリメチルペンテン等のホモポリマーなどが挙げられる。また、これらのホモポリマーに異なる成分を共重合したコポリマーや、異なる2種以上のポリマーブレンドを用いても良い。これらの中でも、帯電保持性の観点から、ポリプロピレンおよびポリメチルペンテンが好ましく用いられる。また、安価に利用できるという観点から、ポリプロピレンがさらに好ましく用いられる。
【0034】
本発明で用いられる第一の繊維群を構成する、ポリオレフィン系樹脂成分Aは、極細繊維を紡糸し易いように、メルトフローレート(MFR)の大きい成分を用いることが好ましい。230℃の温度で21.18N荷重条件におけるMFRの値は、例えば、200g/10min以上のものを用いることが好ましく、より好ましくは500g/10min以上である。MFRがこの値よりも大きい原料を使用することによって、繊維を細化することが容易となり、目的とする繊維径範囲の繊維を好ましく得ることができる。また、MFRの上限値としては、2000g/10minであることが好ましい。MFRがこの値を超えると、紡糸時の溶融粘度が低くなりすぎるため、ショットと呼ばれるポリマー塊状欠点が多発しやすくなる等、紡糸性に問題が発生する場合がある。
【0035】
原料のMFRは、一般にポリマーの分子量によって変化する。分子量が大きければMFRが小さく、分子量が小さければMFRが大きくなる。所望のMFRの原料を得るための方法としては、分子量の小さいポリマーを直接重合してもよく、事前に分子量の大きいポリマーを重合し、その後の工程にて減性剤を反応させることによって分子量を低下させ、所望の範囲のものを得てもよい。また、高分子量のポリマーチップに未反応の減性剤を添加し、溶融紡糸時に反応させ、分子量を低下させるプロセスであってもよい。
【0036】
本発明の混繊不織布を構成する第2の繊維群は、ポリオレフィン系樹脂成分Aよりも融点が5〜40℃低いポリオレフィン系樹脂成分Bで構成されている。ポリオレフィン系樹脂成分Aとポリオレフィン系樹脂成分Bの融点差は、好ましくは10〜35℃であり、より好ましくは15〜30℃である。
【0037】
本発明の混繊不織布では、上述の融点差を持つ2種類のポリオレフィン系樹脂成分Aからなる繊維とポリオレフィン系樹脂成分Bからなる繊維を混繊することによって、高い捕集効率を達成することができる。このメカニズムは明らかではないが、次のように推定される。
【0038】
すなわち、本発明の混繊不織布をメルトブロー法によって製造する場合、単繊維繊度が比較的細く高融点であり、固化が早い第1の繊維群を、単繊維径が太く低融点であり、半溶融状態の第2の繊維群が、絡め取りながらシート化されるため、フライの発生が抑制され、結果として単繊維繊度の細い繊維を多く含む、捕集効率の高い混繊不織布が得られる。
【0039】
フライは、細繊維が多い紡糸条件で発生しやすく、これは口金から吐出された繊維が細繊維であるほど繊維がもつ熱量が少なく比較的早く固化されるため、繊維間融着が減少するためである。このような紡糸条件としては、例えば、紡糸温度を高くしたり、吐出量を少なくしたり、高温加圧空気の圧力を大きくしたりすることが挙げられる。
【0040】
また、フライ発生が多いと、不織布表面に付着する束状の繊維ロープ(風綿)が多くなり、風綿が多く付着した不織布は表面外観の点から好ましくない態様である。特に、捕集コンベアに接する側の不織布表面は、繊維間融着が比較的進みやすく風綿は発生しにくいが、その反対の不織布表面(捕集コンベアに直接接しない面)は、比較的繊維間融着が進みにくく、かつ繊維を噴射させた高温加圧空気の影響により繊維が吹き流れやすく、風綿が発生しやすい。
【0041】
本発明の混繊不織布は、10cm×10cmあたりの風綿の数が5個以下であることが好ましく、さらに好ましくは2個以下である。ここでいう風綿とは、不織布表面から手で簡単に剥ぎ取るとこが可能であり、長さが1cm以上である束状となった繊維のことをいう。当業者であれば、風綿の有無を容易に確認することができる。
【0042】
ポリオレフィン系樹脂成分Aおよびポリオレフィン系樹脂成分Bの融点差が5℃よりも小さい場合、絡め取りの効果が得られないため、細繊維を多く含む混繊不織布が得られず、捕集効率が低下する。一方、融点差が40℃より大きい場合、繊維間融着が強くなりすぎるため、フィルムライクとなり捕集効率が低下し圧損が上昇する。また、ポリオレフィン系樹脂成分AおよびBの融点が低すぎる場合には、混繊不織布全体の耐熱性が低下するため、実用上の問題が生じ得る。好ましいポリオレフィン系樹脂成分AおよびBの融点は100℃以上であり、より好ましくは120℃以上であり、さらに好ましくは130℃以上である。
【0043】
ポリオレフィン系樹脂成分AおよびBの融点の上限値に特に制限は無いが、230℃以下であることが好ましく、200℃以下であることがより好ましく、180℃以下であることがさらに好ましい。融点のこの値よりも高い樹脂成分を使用する場合、溶融に必要なエネルギーが多くなる場合があり、経済的に不利となることがある。
【0044】
本発明で用いられるポリオレフィン系樹脂成分Bとしては、ポリエチレン、ポリプロピレン、ポリブテンおよびポリメチルペンテン等のホモポリマーや、これらのポリマーに異なるオレフィン成分を共重合したコポリマーを使用することができる。特に、2種類以上のオレフィン成分を共重合したコポリマーを使用することが好ましい。コポリマーは、共重合成分の配合比や配列の制御によって、様々な融点のポリマーを得ることができる。結果として、本発明の目的とする低圧損・高捕集効率の達成がより容易になる。
【0045】
また、望ましい融点が得やすいという観点から、コポリマーの中でも、ポリプロピレン系のコポリマーであることが好ましく、プロピレン成分とエチレン成分を共重合した、プロピレンーエチレン共重合体であることがさらに好ましい態様である。共重合成分には、本発明の効果を失わない範囲において、他のオレフィン成分やオレフィン以外の成分が含まれていても構わない。また、共重合形態としては、ランダム共重合、ブロック共重合等が挙げられるが、ランダム共重合体であることが、より好ましい態様である。
【0046】
また、本発明で用いられるポリオレフィン系樹脂成分Bは、エラストマーでないことが好ましい。本発明の混繊不織布において、エラストマーを用いた場合、混繊不織布全体が伸縮性の高いものとなる。伸縮性の高い混繊不織布は、工程張力によって引き伸ばされたときに嵩が減少し、圧損が増大する場合がある。
【0047】
本発明において、ポリオレフィン系樹脂成分Bに使用されるポリマーとしては、必ずしも帯電保持性が高いものを使用する必要はない。また、帯電処理を行う場合には、帯電時の捕集効率向上の観点から、疎水性のポリマーであることが好ましい。
【0048】
本発明の混繊不織布を製造するにあたり、特に第1の繊維群と第2の繊維群を同一口金から紡糸する場合には、ポリオレフィン系樹脂成分Bとして、紡糸口金温度における溶融粘度が、ポリオレフィン系樹脂成分Aの溶融粘度よりも大きい樹脂を使用することが好ましい。具体的には、230℃の温度で21.18N荷重条件におけるメルトフローレート(MFR)は200g/10min未満であることが好ましく、より好ましくは100g/10min未満である。ポリスチレン系樹脂成分Bに粘度の高い樹脂を用いることによって、数平均繊維径が0.3μm〜7.0μmである極細繊維からなる混繊不織布中に、単繊維径が15μm〜100μmである極太な第2の繊維群が混合された状態を達成し易くなる。
【0049】
ポリオレフィン系樹脂成分Bの好ましいMFRの下限値は、3g/10min以上であることが好ましく、5g/10min以上であることがより好ましく、10g/10min以上であることがさらに好ましい。ポリオレフィン系樹脂成分BのMFRがこの値よりも小さい場合、紡糸時の口金背圧が高くなり過ぎるため、ポリマー漏れや口金の変形等が発生する場合がある。
【0050】
本発明の混繊不織布を構成するポリオレフィン系樹脂成分Aのメルトフローレートには、ポリオレフィン系樹脂成分Bのメルトフローレートよりも、5〜100倍高いものを用いることが好ましく、より好ましくは10〜50倍高いものを用いることである。
【0051】
ここで、メルトフローレートは、上記のように、230℃の温度で21.18N荷重条件における条件で測定した値をいう。このような、メルトフローレートの大きく異なる原料を使用することによって、本発明の混繊不織布を構成する、単繊維径の大きくことなる2種類の繊維群を同時に得ることが可能となる。
【0052】
本発明の混繊不織布を構成するポリオレフィン系樹脂成分Aおよびポリオレフィン系樹脂成分Bのどちらか一方に、もしくは両方に、帯電性、耐候性、熱安定性、機械的特性、着色、表面特性、またはその他の特性を強化・改良するために添加剤を加えても良い。特に、混繊不織布に帯電処理を行う場合には、帯電性を強化する目的で、エレクトレット添加剤を含むことが好ましい態様である。
【0053】
特に、エレクトレット添加剤として、ヒンダードアミン系化合物およびトリアジン系化合物からなる群から選ばれる少なくとも一種が含まれていることが好ましい。
【0054】
ヒンダードアミン系化合物としては、ポリ[(6−(1,1,3,3−テトラメチルブチル)イミノ−1,3,5−トリアジン−2,4−ジイル)((2,2,6,6−テトラメチル−4−ピペリジル)イミノ)ヘキサメチレン((2,2,6,6−テトラメチル−4−ピペリジル)イミノ)](BASF・ジャパン社製、“キマソーブ”(登録商標)944LD)、コハク酸ジメチル−1−(2−ヒドロキシエチル)−4−ヒドロキシ−2,2,6,6−テトラメチルピペリジン重縮合物(BASF・ジャパン社製、“チヌビン”(登録商標)622LD)、および2−(3,5−ジ−t−ブチル−4−ヒドロキシベンジル)−2−n−ブチルマロン酸ビス(1,2,2,6,6−ペンタメチル−4−ピペリジル)(BASF・ジャパン社製、および“チヌビン”(登録商標)144)などが挙げられる。
【0055】
また、トリアジン系化合物としては、前述のポリ[(6−(1,1,3,3−テトラメチルブチル)イミノ−1,3,5−トリアジン−2,4−ジイル)((2,2,6,6−テトラメチル−4−ピペリジル)イミノ)ヘキサメチレン((2,2,6,6−テトラメチル−4−ピペリジル)イミノ)](BASF・ジャパン社製、“キマソーブ”(登録商標)944LD)、および2−(4,6−ジフェニル−1,3,5−トリアジン−2−イル)−5−((ヘキシル)オキシ)−フェノール(BASF・ジャパン社製、および“チヌビン”(登録商標)1577FF)などを挙げることができる。
【0056】
これらのエレクトレット添加剤の中でも、特にヒンダードアミン系化合物が好ましく用いられる。
【0057】
ヒンダードアミン系化合物および/またはトリアジン系化合物の含有量は、混繊不織布全質量に対して0.1〜5.0質量%の範囲であることが好ましく、より好ましくは0.5〜3質量%の範囲であり、さらに好ましくは0.8〜2.0質量%の範囲である。また、これらのヒンダードアミン系化合物やトリアジン系化合物を、不織布もしくは繊維表面に付着させるなどの場合は、不織布全質量に対して0.1〜5.0質量%の範囲で付着させることが好ましい。
【0058】
また、本発明の混繊維不織布には、上記の化合物の他に、熱安定剤、耐候剤および重合禁止剤等の一般にエレクトレット加工品の不織布に使用されている通常の添加剤を添加してもよい。
【0059】
本発明の混繊不織布における、好ましいポリオレフィン系樹脂成分Aからなる繊維とポリオレフィン系樹脂成分Bからなる繊維の体積比A:Bは、20:80〜90:10である。体積比A:Bは、より好ましくは30:70〜80:20であり、さらに好ましくは40:60〜70:30である。
【0060】
本発明で用いられる第1の繊維群を構成するポリオレフィン系樹脂成分Aからなる繊維の体積比(vol%)が20よりも少ない場合、混繊不織布中の繊維表面積が小さくなり、目的とする高い捕集効率を達成することが難しいことがある。また、本発明の第2の繊維群の少なくとも一部を構成するポリオレフィン系樹脂成分Bからなる繊維の体積比(vol%)が10よりも少ない場合、ポリオレフィン系樹脂成分Bからなる繊維の存在による捕集効率の向上効果を十分に得られないため、目的とする高捕集を達成することが難しいことがある。また、本発明の混繊不織布には、本発明の効果を損なわない範囲で、ポリオレフィン系樹脂成分AおよびB以外の成分が含まれていても構わない。例えば、混繊不織布にプリーツ可能な剛性や、強度を付与する等の目的で、成分Aよりもさらに高融点な成分Cからなる繊維が含まれていても構わない。
【0061】
次に、本発明の混繊不織布の製造方法について説明する。
【0062】
本発明の混繊不織布の製造方法としては、例えば、メルトブロー法、スパンボンド法、エレクトロスピニング法、および別個に製造された短繊維もしくは長繊維を交絡もしくは混合後、必要に応じて接着する方法などが挙げられる。また、第1の繊維群と第2の繊維群を製造する工程が必ずしも同一種類である必要はない。例えば、第1の繊維群をエレクトロスピニング法によって紡糸し、第2の繊維群をメルトブロー法によって紡糸する方法や、第1の繊維群をメルトブロー法によって紡糸し、第2の繊維群をスパンボンド法で紡糸する方法、第1の繊維群をメルトブロー法で紡糸し、第2の繊維群として別個に製造された短繊維を吹き込むことによって混合する方法など、2種類以上の方法を組み合わせることもできる。
【0063】
これらの方法の中でも、複雑な工程を必要とせず、繊維径が5倍以上異なる繊維群を同時に紡糸製造することができるという観点から、メルトブロー法を用いることが好ましい態様である。メルトブロー法における紡糸条件としては、ポリマー吐出量、ノズル温度、加圧空気圧力および加圧空気温度等があるが、これら紡糸条件の最適化を行うことにより、所望の単繊維径と繊維本数割合を有する混繊不織布を得ることができる。
【0064】
具体的に好適には、(1)第1の繊維群の原料として溶融粘度の小さい原料を使用し、第2の繊維群の原料として溶融粘度の大きい原料を使用すること、(2)第1の繊維群の吐出孔からのポリマー単孔吐出量を小さくし、第2の繊維群の吐出孔からのポリマー単孔吐出量を大きく設定すること、および(3)第1の繊維群の吐出孔の数を第2の繊維群の吐出孔の数に比べて多くすること、を適宜組み合わせることにより、所望の繊維径と繊維本数割合を有する混繊不織布を得ることができる。
【0065】
本発明の混繊不織布を製造する設備としては、メルトブロー法を採用する場合の設備には、例えば、米国特許第3981650号明細書に記載されている、混繊メルトブロー法の紡糸口金を使用することができる。ここで得られる繊維ウェブでは、2種の繊維がより均一に混合される。
【0066】
また、例えば、特開平8−13309号公報に記載されているような、第1の繊維群と第2の繊維群を異なる紡糸口金によって紡糸し、混合させる方法を使用することもできる。また、別個に製造した第1の繊維群からなる不織布と第2の繊維群からなる不織布を積層し、その後ニードルパンチ等の交絡処理を施しても良い。単一の工程によって2種類の繊維がより均一に混合された不織布が得られることから、1つの紡糸口金に異種の樹脂が流れ出す紡糸孔が一列で並んだ構造の紡糸口金を使用する混繊メルトブロー法がより好ましい態様である。
【0067】
これらメルトブロー法による紡糸方法の中でも、細繊維と太繊維を同時に紡糸することにより、繊維の自己融着によるフライの抑制やシート強度の上昇の効果が得られやすい、混繊メルトブロー法がさらに好ましい。
【0068】
本発明の混繊不織布を混繊メルトブロー法によって製造する場合、第1の繊維群と第2の繊維群を吐出する口金の孔数(個)の比は、1:15〜15:1であることが好ましく、より好ましくは1:1〜11:1であり、さらに好ましくは2:1〜7:1である。第1の繊維群の吐出孔の数が少ない場合、本発明が好ましいとする繊維本数の比を達成することが困難となる。また、第2の繊維群の吐出孔の数が、第1の繊維群の吐出孔の数に比べて少なすぎる場合、第1の繊維群を混繊不織布の平面上に均一に分散させることが困難となる。第1の繊維群の吐出孔と第2の繊維群の吐出孔を一列に配置する場合、2種の吐出孔は交互に配列しても良く、その代わりの所望の方法で配列しても良い。例えば、2種の吐出孔aとbを、abba、aabbbaa、aaaabbbaaaa、というような配列を取ることもできる。均一な不織布を得るという観点からは、2種の吐出孔が交互に配列されている形態が好ましい。また、必要に応じて、第1の繊維群および第2の繊維群以外の、第3の繊維の吐出孔を備えていてもよい。
【0069】
本発明の混繊不織布を、混繊メルトブロー法によって紡糸する場合、ポリオレフィン系樹脂成分Aからなる繊維の見かけの紡糸速度は、ポリオレフィン系樹脂成分Bからなる繊維の見かけの紡糸速度に比べて、20〜500倍速いことが好ましい。ポリオレフィン系樹脂成分Aからなる繊維の見かけの紡糸速度は、より好ましくは、25〜200倍であり、さらに好ましくは、30〜100倍である。
【0070】
同一の口金から紡糸速度の大きく異なる繊維を同時に吐出することによって、所望の繊維径と繊維本数割合を備えた混繊不織布を、単一のステップで得ることができる。見かけの紡糸速度の比がこれよりも小さい場合、所望の繊維径と繊維本数割合の達成には、2種のポリマーの吐出孔数の比を大きくする必要が生じ、混繊不織布中に2種の繊維を均一に分散させることが困難となることがある。
【0071】
上記の見かけの紡糸速度は、次の式で算出される。
【0073】
ここで、見かけ紡糸速度は、一般的な溶融紡糸で使用される紡糸速度の算出方法と同一であるが、繊維がメルトブロー法によって紡糸されている場合には、実際の紡糸速度とは必ずしも一致しない。これは、メルトブロー法では、溶融状態の吐出ポリマーが慣性によって引き伸ばされる現象が発生することによる。
【0074】
同一ダイから吐出される繊維において、見かけの紡糸速度の差を大きくすることは、使用する樹脂原料の溶融粘度の差を大きくすることによって達成される。本発明の混繊不織布においては、前述のように、ポリオレフィン系樹脂成分Aとして低粘度原料を用い、ポリオレフィン系樹脂成分Bとして高粘度原料を使用することが好ましい態様である。
【0075】
本発明の混繊不織布を、混繊メルトブロー法によって紡糸する場合、ポリオレフィン系樹脂成分Aの吐出孔aの孔径d
a(mm)はφ0.10〜0.40mmであることが好ましく、より好ましくはφ0.15〜0.30mmの範囲である。粘度の低いポリオレフィン系樹脂成分Aを用いて、目的とする繊維径の繊維を紡糸するとき、孔径d
aが前記の範囲よりも大きい場合、背圧が小さくなり、吐出が不安定になる場合がある。また、孔径d
aが前記の範囲よりも小さい場合、孔に異物詰まりなどが発生し、吐出が不安定になる場合がある。
【0076】
また、ポリオレフィン系樹脂成分Bの吐出孔bの孔径d
bは、φ0.40mm〜1.2mmの範囲であることが好ましく、より好ましくはφ0.50〜1.0mmの範囲である。
【0077】
粘度の高いポリオレフィン系樹脂成分Bを用いて、目的とする繊維径の繊維を紡糸するとき、孔径d
bが前記の値よりも小さい場合、背圧が高くなり過ぎるため、ポリマー漏れや口金の変形等が発生する場合がある。孔径d
bが前記の値よりも大きい場合、背圧が小さくなり、吐出が不安定になる場合がある。また、孔aの孔深度をl
a(mm)とし、孔bの孔深度をl
b(mm)としたとき、次式で定義されるXの値が、5.0以上である紡糸口金を用いることが好ましい。
【0079】
ここで、Xの値は、両孔に同一のポリマーを同一量吐出量で吐出したときに生じる、吐出孔流路での圧損比に相当する。
【0080】
本発明の混繊不織布を紡糸する場合、低粘度原料を用いて繊維径の小さい繊維を、粘度の高い原料を用いて繊維径の大きい繊維を同時に紡糸する必要がある。前者の繊維を紡糸する上では、背圧不足による紡糸不安定化が、後者の繊維を紡糸する上では、背圧過剰によるポリマー漏れや口金変形等が問題となり易い。このような性質の大きく異なる繊維を、同時に紡糸するためには、Xの値を大きく設計した口金を用いることが好ましい。より好ましいXの値は10以上であり、さらに好ましくは20以上である。
【0081】
本発明の混繊不織布をメルトブロー法によって製造する場合、捕集距離(口金吐出孔とコレクタ間の距離、DCD)は、5cm〜40cmの範囲であることが好ましく、さらに好ましくは10cm〜30cmである。
【0082】
捕集距離が大きくなった場合、紡糸された繊維同士の絡みあいが増え、フィルターとして有効に機能する繊維表面積が減少する。また、混繊不織布の目付斑も悪化するため、フィルター濾材としては不適となる。
【0083】
また、捕集距離を小さくとりすぎた場合、繊維の固化が十分に進まないままシート化することになるため、繊維間融着が増加し、繊維表面積の減少と圧損の上昇を招くことがある。
【0084】
コレクタの形態としては、例えば、ドラム方式、コンベア方式、特開2011−168903号公報に開示されているようなドラム・コンベアを組み合わせた方式、あるいは米国特許第5783011号明細書等に開示されているような円筒フィルター状のコレクタ等を用いることができる。
【0085】
本発明の混繊不織布は、少なくとも2種類の異なる繊維分布を持つ繊維が混合されてなることによって、高いフィルター性能を達成する。このメカニズムは明らかではないが、次のように推定される。
【0086】
2種類の繊維のうち、繊維径の小さい第1の繊維群は、本発明の混繊不織布において、捕集効率を向上させる機能を担う。また、繊維径の大きい第2の繊維群は、本発明の混繊不織布において、主に圧損を低減させる機能を担う。
【0087】
すなわち、繊維径の小さい第1の繊維群は、比表面積が大きいため粒子を繊維表面に効率よく捕集することができる。この第1の繊維群のネットワーク中に、繊維径の大きい第2の繊維群が混合されていることによって、第1の繊維群の間に大きい空隙が生成する。この繊維間空隙の存在によって、不織布の通気性が向上し、圧損が小さくなる。この効果をより効率よく発揮するためには、2種類の繊維が、不織布の厚み方向にわたって均一に混合された状態であることがより好ましい。
【0088】
本発明における数平均繊維径は、混繊不織布表面または断面の顕微鏡写真を撮影し、像中に存在する繊維の繊維径を計測し、その平均値を算出することによって得ることができる。
【0089】
本発明の混繊不織布は、第1の繊維群として、ポリオレフィン系樹脂成分Aからなる繊維の群を含むことが重要である。第1の繊維群の数平均繊維径は、0.3μm〜7.0μmであり、好ましくは0.5μm〜4.0μmであり、さらに好ましくは1.0μm〜2.0μmの範囲である。数平均繊維径が大きい場合、繊維の比表面積が小さくなり、十分な粒子捕集能力を得られないことがある。第1の繊維群は、捕集効率を向上させる目的で、帯電処理されていることがより好ましい態様である。
【0090】
本発明の混繊不織布は、第2の繊維群として、ポリオレフィン系樹脂成分Bからなり、繊維径が15〜100μmでありかつ前記第1の繊維群の数平均繊維径よりも5倍以上大きい繊維からなる群を含むことが重要である。これは、第1と第2の繊維群の繊維径分布が明確に異なることによって、2種類の繊維群が、それぞれの機能を明確に分担し、捕集効率の向上と圧損の低減が両立できるからである。第2の繊維群の繊維径は、好ましくは20〜100μmである。また、第2の繊維群の繊維径の、第1の繊維群の数平均繊維径に対する比は、10倍以上大きいことがより好ましい態様である。第2の繊維群の繊維径の、第1の繊維群の数平均繊維径に対する比の上限値は、150倍以下であることが好ましい態様であり、100倍以下であることがより好ましい態様であり、30倍以下であることがさらに好ましい態様である。第1のポリオレフィン系樹脂成分Bからなる繊維の繊維径範囲がこれより小さい場合、繊維間の空隙を支持する効果が小さくなる。また、ポリオレフィン系樹脂成分Bからなる繊維の繊維径範囲がこれよりも大きい場合、不織布の製造に多くの樹脂原料が必要となるため、経済的に不利となる。ただし、本発明の混繊不織布は、本発明の効果を損なわない範囲において、前記した第2の繊維群の繊維径範囲に属さない、ポリオレフィン系樹脂成分Bからなる繊維等を含んでいてもよい。
【0091】
本発明の混繊不織布は、第2の繊維群を構成する繊維を、不織布の断面中、断面長1mmあたり7.0本以上含む。この繊維の本数は、より好ましくは10本以上であり、さらに好ましくは15本以上である。
【0092】
ここで、混繊不織布の断面長1mmあたりの繊維本数とは、混繊不織布面に直交し、かつ互いに直交する2つの不織布断面を顕微鏡で観察し、それぞれの断面について、不織布断面上に切断面を有する繊維の、不織布断面長あたりの本数を計測し、さらにそれぞれの断面での値を平均することにより得ることができる。混繊不織布中に、上記割合の第2の繊維を含まない場合、繊維間の空隙を支持する効果が小さくなるか、もしくは効果を得ることができない。また、第2の繊維群の断面長1mmあたりの繊維本数の上限値としては、500本以下であることが好ましく、200本以下であることがさらに好ましい。第2の繊維群の断面長1mmあたりの繊維本数がこれよりも大きい値となる場合、不織布全体の目付が大きくなり、コスト面で不利となる場合がある。
【0093】
この混繊不織布の断面長1mmあたりの繊維本数の測定評価方法は、実施例のところに記載されている。
【0094】
本発明の混繊不織布において、第2の繊維群は、繊維の形態を保持していることが重要である。ここで、「繊維の形態を保持している」とは、製布後の熱処理などによって、繊維が融解していないことを指す。例えば、特開平7−82649号公報には、低融点繊維を融点以上の温度で熱処理することによって融解させ、バインダー繊維として使用し、不織布の強度を向上させる方法が開示されている。しかしながら、このように、低融点繊維を融解させた場合、繊維間空隙が減少し、圧損が増大するだけでなく、繊維表面積が減少し、捕集効率が低下するという問題が発生する。本発明の混繊不織布では、低融点である第2の繊維群が、繊維の形態を保持した状態で存在することによって、低圧損と高捕集の効果を発揮することができる。
【0095】
本発明の混繊不織布は、不織布を構成する繊維全体の数平均繊維径が0.3μm〜10μmの範囲であり、より好ましくは、0.5μm〜7.0μmであり、より好ましくは1.0μm〜3.0μmである。本発明の混繊不織布は、より小さい数平均繊維径を有する第1の繊維群の本数が、繊維径15μmを超える第2の繊維群の本数に比べて圧倒的に多い構成である。このため、不織布全体での数平均繊維径は小さくなる。不織布を構成する繊維全体の数平均繊維径がこの範囲となるように、第1の繊維群と第2の繊維群の繊維径と繊維本数を設計することにより、低圧損と高捕集効率を両立する混繊不織布を得ることができる。混繊不織布を構成する繊維全体の数平均繊維径が、この値よりも大きくなると、繊維の比表面積が小さくなり、特に混繊不織布を低目付としたときに、十分な捕集効率を得ることができない。また、この数平均繊維径が、この範囲よりも小さくなると圧損が増大する。
【0096】
第2の繊維群は、ポリオレフィン系樹脂成分Bによって構成される。第2の繊維群が、低融点であるポリオレフィン系樹脂成分Bを含むことによって、第1の繊維群を効率よくシート状に含有することが可能となるため、高い捕集効率が得られる。第2の繊維群は、繊維の一部にポリオレフィン系樹脂成分Bを含んでいれば、本発明の効果を失わない範囲で、他の成分を含んでいても構わない。例えば、第2の繊維群として、ポリオレフィン系樹脂成分Bを芯に用い、別の樹脂成分を鞘として用いて複合した繊維や、ポリオレフィン系樹脂成分Bを鞘に用い、別の樹脂成分を芯として用いて複合した繊維を用いてもよい。前者の場合は、第2の繊維群の効果として、少なくとも繊維変形を抑える効果を得られる。後者の場合は、第2の繊維群の効果として、少なくとも繊維間融着を抑える効果が得られる。
【0097】
また、複合させる場合には、ポリオレフィン系樹脂成分Aとポリオレフィン系樹脂成分Bの複合や、ポリオレフィン系樹脂成分Aおよびポリオレフィン系樹脂成分Bと他の第3成分の3成分複合などであってもよい。複合の形状としては、芯鞘型のほか、サイドバイサイド型、偏心芯鞘型および海島型などの複合形態を含め、その他の公知の複合形態を取ることができる。また、第2の繊維群の断面形状は任意の形状を取ることができ、丸型のほかに、三角型、Y型、扁平型、多葉型および扁平型などの形状であっても良い。
【0098】
本発明の混繊不織布において、第1の繊維群の本数Xが第2の繊維群の本数Yに対して、その比X/Yが50倍〜5000倍多いことが好ましく、より好ましくは60倍〜1000倍であり、さらに好ましくは90倍〜500倍である。ここで、繊維の本数の比は、混繊不織布において、任意の不織布面に直交し、かつ互いに直交する2つの断面を取ったときに、その断面を通過する繊維の本数の比の平均値を計測することにより得ることができる。
【0099】
本発明の混繊不織布は、上記のようなX/Y比をとることで15μm以上という極太繊維を含みながら、不織布の比表面積を大きくすることができる。この効果によって、本発明の混繊不織布をフィルターとして用いたとき、高い捕集効率を達成することができる。また、第1の繊維群の本数が第2の繊維群の本数に比べて極めて多く、第2の繊維群の繊維径が第1の繊維群の数平均繊維径に比べて極めて大きいという、特徴的な繊維構成によって、混繊不織布の表面積の大部分を第1の繊維群が占める状態とできる。このため、混繊不織布に帯電処理を施す場合、第2の繊維群が電荷保持性の低い成分を含んでいる場合であっても、不織布全体としては高い帯電性・電荷保持性を有することができる。第2の繊維群の本数に対する第1の繊維群の本数が、前記の値よりも少ない場合、目的とする高い捕集効率が得られず、特に帯電処理時にその性能低下が顕著となる。
【0100】
本発明の混繊不織布の含有する第1の繊維群と第2の繊維群の繊維径、数平均繊維径および繊維本数比を決定するにあたり、両繊維を判別する方法としては、種々の方法を使用することができる。例えば、2種類の繊維の融点差や、薬液への耐性差を利用し、一方の繊維だけを消失させ、残留した繊維について、光学顕微鏡・走査型電子顕微鏡などの各種顕微鏡を用いて繊維径を測定する方法を用いることができる。また、顕微ラマン分光法、顕微赤外分光法、電子線マイクロアナライザ、あるいは飛行時間型二次イオン質量分析法などの、各種微小領域の物質分布が分析可能な手法を用いて、繊維の成分を判別しながら計測する方法を用いてもよい。例えば、本発明の混繊不織布において、第2の繊維群と第1の繊維群の繊維径分布の差異を確かめるには、混繊不織布を2つの成分の融点の間の温度で熱処理し、一方の繊維を融解させたときの不織布全体の数平均繊維径を、熱処理前の平均繊維径と比較する方法を取ることもできる。
【0101】
本発明の混繊不織布の目付は、5g/m
2以上であることが好ましく、より好ましくは10g/m
2以上であり、エアフィルター用の濾材として用いる場合には15g/m
2以上であることがさらに好ましい態様である。目付が小さすぎる混繊不織布は、強度が低下するため、製造時の不織布の搬送性に問題を生じ得る。また、混繊不織布の目付は、1000g/m
2以下であることが好ましく、より好ましくは200g/m
2以下であり、エアフィルター用の濾材として用いる場合には、40g/m
2以下であることがさらに好ましい態様である。目付が大きすぎる混繊不織布は、製造コスト面において不利となる場合がある。
【0102】
本発明の混繊不織布においては、単位断面長と目付あたりの第2の繊維群の本数が、0.1(本・m
2/g・mm)以上であることが好ましく、より好ましくは0.2(本・m
2/g・mm)以上であり、さらに好ましくは0.3(本・m
2/g・mm)以上である。単位断面と目付あたりの繊維本数は、次の式で定義される。単位断面・目付あたりの第2の繊維群の本数が少なすぎると、第2の繊維群の効果を不織布全面にわたって得ることができなくなる場合がある。
【0104】
本発明の混繊不織布の長さ方向伸度は、30%未満であることが好ましく、より好ましくは20%未満である。長さ方向の伸度がこの値よりも大きく、伸びやすいシートは、工程張力によって伸び潰されて、フィルターとして用いたときの圧損が増大する場合がある。
【0105】
本発明の混繊不織布は、帯電処理(エレクトレット処理)されていることが望ましい。特に、エレクトレット化不織布シートにすれば、静電気吸着効果により更に圧損と高捕集効率を得ることができる。エレクトレット化の方法としては、高性能を有する不織布を得る上で、水を不織布に付与した後に乾燥させることによりエレクトレット化する方法が好ましく用いられる。水を混繊不織布に付与する方法としては、水の噴流もしくは水滴流を不織布内部まで水が浸透するのに十分な圧力にて噴霧する方法や、水を付与した後もしくは付与しながら混繊不織布の片側から吸引して不織布内に水を浸透させる方法や、イソプロピルアルコール、エチルアルコールおよびアセトンなどの水溶性有機溶剤と水との混合溶液に混繊不織布を浸漬させて水を不織布内部まで浸透させる方法等がある。
【0106】
本発明の混繊不織布は、フィルターの濾材として用いる目的に適した、高い捕集効率を示す。帯電処理後の捕集効率の値としては、風速4.5m/minにおける空気中の0.3〜0.5μmポリスチレン粒子の捕集効率が、90%以上であることが好ましく、99%以上であることがより好ましく、99.9%以上であることがさらに好ましい態様である。特に、99.9%以上の捕集効率を示す混繊不織布は、高精度エアフィルターの濾材として好適に用いることができる。
【0107】
また、一般に、捕集効率は目付と相関する。本発明の混繊不織布は、次の式で算出される目付10g/m
2相当の捕集効率が、50%以上であることが好ましく、75%以上であることがより好ましく、90%以上であることがさらに好ましい態様である。目付10g/m
2相当の捕集効率が高いほど、目的とする捕集効率を達成する目付を小さく抑えることができるため、コスト面で有利である。
【0109】
本発明の混繊不織布は、高い捕集効率を低い圧損で達成できるという特徴を持つ。本発明の混繊不織布は、次の式で定義されるQF値が、0.10Pa
−1以上であることが好ましく、0.15Pa
−1以上であることがより好ましく、0.18Pa
−1以上であることがさらに好ましい態様である。QF値の値が大きいほど、同じ捕集効率を低い圧損で達成することができる。
【0111】
さらに、本発明の混繊不織布は、他のシートと積層して積層繊維不織布にしてもよい。たとえば、不織布シートとそれよりも剛性の高いシートを積層して製品強力を向上させて使用することや、脱臭や抗菌等の機能性を有するシートと組み合わせて使用することが好ましい。積層方法としては、接着剤を用いて2種類の不織布を貼り合わせる方法や、メルトブロー法以外の製法で製造した不織布シートの上にメルトブロー法により積層する方法が挙げられる。その他、2種類の不織布を貼り合わせる方法としては、湿気硬化型ウレタン樹脂をスプレー法で散布する方法、熱可塑性樹脂、熱融着繊維を散布し熱路を通して貼り合わせる方法などある。
【0112】
しかしながら、本発明の混繊不織布の主要使用用途がフィルターに使用する混繊不織布であるので、圧損上昇が生じる貼合わせ方法は好ましくない。その点で、湿気硬化型ウレタン樹脂によるスプレー法は、2枚の不織布をプレスすることなく貼り合わせることが可能なため、貼り合わせ時の圧損の上昇が少なく好ましい方法である。
【0113】
本発明により、圧損が低く、高い捕集効率を有する混繊不織布が得られ、この混繊不織布は濾材として、特にエアフィルターに好適に用いることができる。
【0114】
すなわち、本発明の混繊不織布は、フィルターの濾材として好適に用いることができる。この濾材は、エアフィルター全般、なかでも空調用フィルター、空気清浄機用フィルター、および自動車キャビンフィルターの高性能用途に好適であるが、その応用範囲はこれらに限られるものではない。
【実施例】
【0115】
次に、実施例を挙げて本発明の混繊不織布とその製造方法についてより具体的に説明する。実施例において使用する特性値は、次の測定法により測定したものである。
【0116】
(1)混繊不織布の目付
タテ×ヨコ=15cm×15cmの不混繊織布の質量を3点測定し、それぞれ得られた値を1m
2当たりの値に換算し、その平均値を取って不織布の目付(g/m
2)とした。
【0117】
(2)数平均繊維径
混繊不織布の任意の場所から、タテ×ヨコ=3mm×3mmの測定サンプルを12個採取し、走査型電子顕微鏡で倍率を調節して、採取したサンプルから繊維表面写真を各1枚ずつ、計12枚を撮影した。倍率は、200〜3000倍とした。写真の中の繊維直径がはっきり確認できる繊維について、すべて繊維径を測定した。各繊維径は、有効数字0.1μmの測定精度にて行った。この値を合計し、測定した繊維本数で割った値を数平均繊維径とした。数平均繊維径は、1.0μm以上は有効数字2桁とし、1.0μm未満は有効数字1桁として算出した。
【0118】
(3)混繊不織布の断面中に含まれる、断面長1mmあたりの繊維本数
混繊不織布の任意の場所から、縦×横=20mm×5mmの混繊不織布片12個を採取し、片にエポキシ樹脂を含浸し固化させた。この混繊不織布を片刃カミソリによって切断し、縦×横=1mm×5mmの断片を得た。この断片の切断面について、走査型電子顕微鏡によって撮影し、計12枚の混繊不織布断面写真を得た。倍率は200倍〜1000倍とし、写真の中の繊維断面形状がはっきり確認できるものについては、すべて計数した。
【0119】
(4)繊維の体積割合
ポリオレフィン系樹脂成分Aからなる繊維とポリオレフィン系樹脂成分Bからなる繊維の体積割合は、得られた繊維径の値を用い、次式により算出した。ここで、各繊維群に含まれる繊維の長さは一定(α)と仮定して、体積を算出している。
・各繊維の体積 :β=π(繊維径/2)
2×α
・ポリオレフィン系樹脂成分Aからなる繊維の体積
γ(A)=ポリオレフィン系樹脂成分Aからなる繊維のβの総和
・ポリオレフィン系樹脂成分Bからなる繊維の体積
γ(B)=ポリオレフィン系樹脂成分Aからなる繊維のβの総和
・ポリオレフィン系樹脂成分Aからなる繊維の体積割合(vol%)
=γ(A)/[γ(A)+γ(B)]
・ポリオレフィン系樹脂成分Bからなる繊維の体積割合(vol%)
=γ(B)/[γ(A)+γ(B)]
(5)QF値
濾過性能の指標となるQF値は、前記の捕集効率および圧損を用いて、次の式により計算される。低圧損かつ高捕集効率であるほどQF値は高くなり、濾過性能が良好であることを示す。
【0120】
【数6】
【0121】
(6)捕集効率と圧損
混繊不織布の縦方向5カ所でタテ×ヨコ=15cm×15cmの測定用サンプルを採取し、それぞれのサンプルについて、
図1に示す捕集効率測定装置で測定した。この捕集効率測定装置は、測定サンプルMをセットするサンプルホルダー1の上流側にダスト収納箱2を連結し、下流側に流量計3、流量調整バルブ4、およびブロワ5が連結されている。また、サンプルホルダー1にパーティクルカウンター6を使用しており、切替コック7を介して、測定サンプルMの上流側のダスト個数と下流側のダスト個数をそれぞれ測定することができる。さらに、サンプルホルダー1は圧力計8を備え、測定サンプルMの上流と下流での静圧差を読み取ることができる。
【0122】
捕集効率の測定にあたっては、ポリスチレン0.309U10%溶液(メーカー:ナカライテスク社)を蒸留水で200倍まで希釈し、ダスト収納箱2に充填する。次に、測定サンプルMをサンプルホルダー1にセットし、風量をフィルター通過速度が4.5m/minになるように流量調整バルブ4で調整し、ダスト濃度を1万〜4万個/2.83×10
−4m
3(0.01ft
3)の範囲で安定させ、測定サンプルMの上流のダスト個数Dおよび下流のダスト個数dをパーティクルカウンター6(リオン社製、KC−01B)で1個の測定サンプル当り3回測定し、JIS K0901(1991年度版)に基づいて、下記の計算式を用いて0.3〜0.5μm粒子の捕集効率(%)を求めた。5個の測定サンプルの平均値を最終的な捕集効率とした。
・捕集効率(%)=〔1−(d/D)〕×100
ただし、
d:下流ダストの3回測定トータル個数
D:上流のダストの3回測定トータル個数
である。
【0123】
高捕集の不織布ほど、下流のダスト個数が少なくなるため、捕集効率の値は高くなる。また、圧損は、捕集効率測定時のサンプルMの上流と下流の静圧差を圧力計8で読み取り求めた。5個の測定サンプルの平均値を、最終的な圧損とした。
【0124】
[実施例1]
ポリオレフィン系樹脂成分Aとして、温度230℃で21.18N負荷時におけるMFRが860g/10minのポリプロピレン(PP)樹脂に、“キマソーブ”(登録商標)944(BASF・ジャパン(株)製)を1質量%添加したものを使用し、ポリオレフィン系樹脂成分Bとして、日本ポリプロ(株)製“ウィンテック”(登録商標)WMG03(プロピレン・エチレンランダム共重合体・温度230℃におけるMFRが30g/10min、融点142℃)を使用し、2機の押出機およびギヤポンプ、2種類の吐出a、bを備えた混繊紡糸用メルトブロー口金(a孔径:0.25mm、b孔径:0.6mm、a孔深度:2.5mm、b孔深度:3.5mm、a孔数:95ホール、b孔数:20ホール、口金幅150mm、a−a孔ピッチ:1mm、a−b孔ピッチ:2mm、孔配列:b孔の間に5つのa孔を挿入して一列に配列)、圧縮空気発生装置および空気加熱機、捕集コンベア、および巻取機からなる装置を用いて、メルトブロー不織布の製造を行った。
【0125】
それぞれの押出機に、上記のポリオレフィン系樹脂成分Aの樹脂ペレットと上記のポリオレフィン系樹脂成分Bの樹脂ペレットをそれぞれ投入し、265℃の温度で加熱溶融させ、ギヤポンプを上記のポリオレフィン系樹脂成分A:ポリオレフィン系樹脂成分Bの質量比(%)を6:4となるように設定し、上記のポリオレフィン系樹脂成分Aおよびポリオレフィン系樹脂成分Bを、それぞれ混繊紡糸用メルトブロー口金のa孔およびb孔に導き、それぞれ0.15g/min/ホール、0.48g/min/ホールの単孔吐出量でノズル温度265℃の温度条件で吐出した。この吐出ポリマーを、圧力0.10MPa、温度285℃の温度の加圧空気で細化し、口金吐出孔から20cmの距離に設置した捕集コンベアに吹き付けることによりシート化した。捕集コンベア速度を調整し、目付が30g/m
2の混繊不織布を得た。
【0126】
実施例1で得られた混繊不織布から、混繊不織布全体の数平均繊維径を測定し、表1に示した。また、混繊不織布全体の単位断面長あたりの繊維本数を計測した。
【0127】
次に、実施例1で得られた混繊不織布を、ポリオレフィン系樹脂成分Aとポリオレフィン系樹脂成分Bの融点の間の温度で熱処理を行うことによって、ポリオレフィン系樹脂成分Bからなる繊維を融解させた。この混繊不織布について、数平均繊維径を計測し、第1の繊維群の数平均繊維径とし、表1に示した。また、熱処理を行った混繊不織布について、単位断面長あたりの第1の繊維群の繊維本数を計測した。各繊維径区間について、熱処理前の混繊不織布全体の単位断面長あたりの繊維本数と、熱処理後の単位断面長あたりの第1の繊維群の繊維本数の差を取り、ポリオレフィン系樹脂成分Bからなる繊維の単位断面長あたりの繊維本数として算出し、さらにポリオレフィン系樹脂成分Bからなり各々の繊維径が15〜100μmである第2の繊維群の単位断面長あたりの繊維本数を算出し、ポリオレフィン系樹脂成分Aからなる繊維とポリオレフィン系樹脂成分Bからなる繊維の体積割合とともに、表1に示した。
【0128】
次に、実施例1の条件において、孔aのみ、孔bのみから吐出したサンプルをそれぞれ採取し、数平均繊維径を測定した。この値をもとに、ポリオレフィン系樹脂成分Aからなる繊維とポリオレフィン系樹脂成分Bからなる繊維の見かけの紡糸速度比を算出した。この結果を表1に示した。
【0129】
次に、実施例1で得られた混繊不織布において、捕集コンベアに着地した面と反対側に対応する不織布表面10cm×10cm中に含まれる風綿の数を計測し、5枚の計測サンプルの平均値により風綿の個数を算出し、表1に示した。
【0130】
次に、実施例1で得られた混繊不織布を、純水とイソプロピルアルコールの成分重量比が70:30である混合水溶液に含浸させ、次いで自然乾燥することにより、エレクトレット化メルトブロー混繊不織布を得た。このエレクトレットメルトブロー混繊不織布の特性値を測定し、表1に示した。
【0131】
[実施例2]
ポリオレフィン系樹脂成分Aとポリオレフィン系樹脂成分Bの質量比(%)を55:45とし、孔bの単孔吐出量を0.60g/minとし、加圧空気の圧力を0.13MPaとしたこと以外は、実施例1と同じ方法によって混繊不織布を製造した。実施例2で得られた不織布について、実施例1と同じ方法で各種特性値を計測し、表1に示した。
【0132】
[実施例3]
混繊紡糸用口金として、b孔間に2つのa孔が挿入された孔配列の口金を用い、ポリオレフィン系樹脂成分Aとポリオレフィン系樹脂成分Bの質量比(%)を33:67とし、孔aの単孔吐出量を0.60g/min/holeとし、加圧空気の圧力を0.19MPaとしたこと以外は、実施例1と同じ方法によって不織布を製造した。実施例3で得られた混繊不織布について、実施例1と同じ方法で各種特性値を計測し、表1に示した。
【0133】
[実施例4]
ポリオレフィン系樹脂成分Bとして、プライムポリマー(株)製“プライムポリプロ”(登録商標)J229E(プロピレン・エチレンランダム共重合体・温度230℃におけるMFRが50g/10min、融点:155℃)を使用し、ポリオレフィン系樹脂成分Aと樹脂成分Bの質量比(%)を54:46とし、孔aの単孔吐出量を0.15g/min/holeとし、孔bの単孔吐出量を0.60g/minとし、加圧空気の圧力を0.13MPaとしたこと以外は、実施例3と同じ方法によって不織布を製造した。実施例4で得られた混繊不織布について、実施例1と同じ方法で各種特性値を計測し、表1に示した。
【0134】
[実施例5]
ポリオレフィン系樹脂成分Aとポリオレフィン系樹脂成分Bの質量比(%)を61:39とし、孔aの単孔吐出量を0.47g/min/holeとし、孔bの単孔吐出量を0.60g/minとし、加圧空気の圧力を0.07MPaとしたこと以外は、実施例3と同じ方法によって混繊不織布を製造した。実施例5で得られた不織布について、実施例1と同じ方法で各種特性値を計測し、表1に示した。
【0135】
【表1】
【0136】
[比較例1]
ポリオレフィン系樹脂成分Bとして、温度230℃、21.18N荷重条件におけるMFRが60g/10minであるポリプロピレン樹脂(融点163℃)に、“キマソーブ”(登録商標)944(BASF・ジャパン(株)製)を1質量%添加したものを使用し、ポリオレフィン系樹脂成分Aと樹脂成分Bの質量比(%)を43:57とし、孔bの単孔吐出量を0.90g/min/holeとし、押出機温度を280℃とし、ノズル温度を280℃とし、加圧空気圧力を0.05MPaとし、加圧空気温度を300℃としたこと以外は、実施例1と同じ方法によって混繊不織布を製造した。
【0137】
比較例1で得られた不織布の断面について、走査型電子顕微鏡での観察を行い、孔aからの吐出繊維群の繊維径が10μm未満であり、孔bからの吐出繊維群の繊維径が10μm以上と、明確に異なる繊維径分布を有することを確認した。これを元に、繊維径10μm未満の繊維群と、繊維径10μ以上の繊維群について、数平均繊維径および繊維本数を測定した。さらに、比較例1で得られた混繊不織布を、実施例1と同じ方法でエレクトレット処理した後、特性値を測定し、表2に示した。
【0138】
[比較例2]
混繊紡糸用メルトブロー口金のb孔径を0.4mmとし、ポリオレフィン系樹脂成分Bとして温度230℃、21.18N荷重条件におけるMFRが860g/10minであるポリプロピレン樹脂(融点163℃)に“キマソーブ”(登録商標)944(BASF・ジャパン(株)製)を1質量%添加したものを使用し、ポリオレフィン系樹脂成分Aとポリオレフィン系樹脂成分Bの質量比(%)を40:60とし、孔aの単孔吐出量を0.19g/min/hole、bの単孔吐出量を1.39g/min/hole、押出機温度を265℃とし、ノズル温度を255℃とし、加圧空気圧力を0.15MPaとし、加圧空気温度を265℃としたこと以外は、実施例1と同じ方法によって混繊不織布を製造した。
【0139】
比較例2で得られた不織布の断面について、走査型電子顕微鏡での観察を行った。孔aからの吐出繊維と孔bからの吐出繊維の繊維径は近く、観察写真からはどちらの繊維かを判別することはできなかった。このため、2種の繊維の数平均繊維径をそれぞれに計測することはできなかった。また、15μmを超える繊維径を持つ繊維は観測されなかった。
【0140】
比較例2で得られた混繊不織布を、実施例1と同じ方法でエレクトレット処理した後、特性値を測定し、表2に示した。
【0141】
[比較例3]
混繊紡糸用メルトブロー口金のb孔径を0.4mmとし、ポリオレフィン系樹脂成分Bとして三井化学(株)製“ノティオ”(登録商標)PN−20300(ポリオレフィン共重合エラストマー・温度230℃におけるMFRが30g/10min、融点160℃)を使用し、ポリオレフィン系樹脂成分Aと成分Bの質量比(%)を75:25とし、孔aの単孔吐出量を0.19g/min/hole、bの単孔吐出量を0.31g/min/holeとしたこと以外は、実施例1と同じ方法によって混繊不織布を製造した。比較例3で得られた混繊不織布について、実施例1と同じ方法で各種特性値を計測し、表2に示した。
【0142】
[比較例4]
混繊紡糸用メルトブロー口金のb孔径を0.4mmとし、ポリオレフィン系樹脂成分Aとポリオレフィン系樹脂成分Bの質量比(%)を75:25とし、孔aの単孔吐出量を0.19g/min/hole、bの単孔吐出量を0.31g/min/holeとしたこと以外は、実施例1と同じ方法によって混繊不織布を製造した。比較例4で得られた混繊不織布について、実施例1と同じ方法で各種特性値を計測し、表2に示した。
【0143】
【表2】
【0144】
表1から明らかなように、実施例1において、混繊メルトブロー紡糸設備を用いて、2種類の原料種、吐出量、加圧空気圧力、およびノズル温度等を調整することにより得られた混繊不織布には、第1の繊維群として、ポリプロピレン系樹脂から構成され、数平均繊維径が1.6μmである第1の繊維の群を含んでいた。また、この混繊不織布は、ポリプロピレン系樹脂成分Bからなる繊維中に、第2の繊維群として、ポリプロピレン系樹脂よりも融点が21℃低いポリオレフィン系樹脂から構成され、単繊維径が15〜100μmであり、かつ前記ポリプロピレン繊維群の数平均繊維径よりも5倍以上大きい単繊維径の繊維を、この混繊不織布の断面長1mmあたり7.0本以上含んでいた。また、この混繊不織布は、帯電処理を施すことによって、低い圧損でありながら99.97%を超える高い捕集効率を示した。
【0145】
さらに、実施例3においては、紡糸口金の構成や、ポリマーの構成比率を変更した場合であっても、低い圧損でありながら高い捕集効率を示した。実施例4においては、使用するポリマー種を変更した場合であっても、低い圧損でありながら高い捕集効率を示した。これらの高いQF値を示す混繊不織布は、HEPAフィルター用の濾材として、好適に用いることができる。また、実施例5においては、紡糸口金の構成や、ポリマーの構成比率等の条件を変更することによって、フィルター性能の指標であるQF値が、極めて高い混繊不織布が得られた。
【0146】
一方、表2から明らかなように、比較例1に示された不織布は、繊維径が15μm〜100μmであり、かつポリプロピレン繊維群の数平均繊維径よりも5倍以上大きい繊維からなる繊維群が、ポリプロピレンよりも融点の5〜40℃低い成分を含まなかった。このため、近い繊維径の構成からなる実施例2に示された混繊不織布に比べて風綿の個数が多くなり、かつ低い捕集効率となった。
【0147】
比較例2に示された混繊不織布は、不織布中に繊維径15μm以上100μm以下の繊維を含まず、またポリプロピレンよりも融点の5〜40℃低い樹脂成分も含まなかった。このため、十分な捕集効率を達成することができなかった。
【0148】
比較例3に示された混繊不織布は、不織布中に繊維径15μm以上100μm以下の繊維を所定量含まなかった。また、ポリプロピレンよりも融点の5〜40℃低い樹脂成分も含まなかった。このため、十分な捕集効率を達成できず、また、高い圧損を示した。
【0149】
比較例4に示された混繊不織布は、不織布中に繊維径15μm以上100μm以下の繊維を所定量含まなかった。このため、十分な捕集効率を達成できず、また、高い圧損を示した。
【0150】
以上のように、繊維径分布の異なる2種の繊維が混繊された混繊不織布において、細繊維と太繊維の繊維径およびそれぞれの繊維の成分を特定のものとすることにより、圧損が低いうえに捕集効率に優れた混繊不織布を得ることができた。