特許第6390614号(P6390614)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6390614
(24)【登録日】2018年8月31日
(45)【発行日】2018年9月19日
(54)【発明の名称】着色組成物、着色硬化膜及び表示素子
(51)【国際特許分類】
   C08L 101/00 20060101AFI20180910BHJP
   C08F 220/38 20060101ALI20180910BHJP
   C09B 67/20 20060101ALI20180910BHJP
   C09B 69/10 20060101ALI20180910BHJP
   C09B 69/06 20060101ALI20180910BHJP
   G02B 5/20 20060101ALI20180910BHJP
   G03F 7/004 20060101ALI20180910BHJP
   G03F 7/033 20060101ALI20180910BHJP
   G03F 7/038 20060101ALI20180910BHJP
【FI】
   C08L101/00
   C08F220/38
   C09B67/20 F
   C09B69/10 B
   C09B69/06
   G02B5/20 101
   G03F7/004 505
   G03F7/033
   G03F7/038 503
【請求項の数】5
【全頁数】50
(21)【出願番号】特願2015-521395(P2015-521395)
(86)(22)【出願日】2014年5月26日
(86)【国際出願番号】JP2014063818
(87)【国際公開番号】WO2014196396
(87)【国際公開日】20141211
【審査請求日】2017年1月6日
(31)【優先権主張番号】特願2013-118891(P2013-118891)
(32)【優先日】2013年6月5日
(33)【優先権主張国】JP
(73)【特許権者】
【識別番号】000004178
【氏名又は名称】JSR株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110000084
【氏名又は名称】特許業務法人アルガ特許事務所
(74)【代理人】
【識別番号】100077562
【弁理士】
【氏名又は名称】高野 登志雄
(74)【代理人】
【識別番号】100096736
【弁理士】
【氏名又は名称】中嶋 俊夫
(74)【代理人】
【識別番号】100117156
【弁理士】
【氏名又は名称】村田 正樹
(74)【代理人】
【識別番号】100111028
【弁理士】
【氏名又は名称】山本 博人
(72)【発明者】
【氏名】米田 英司
(72)【発明者】
【氏名】江幡 敏
(72)【発明者】
【氏名】倉 怜史
(72)【発明者】
【氏名】成瀬 秀則
【審査官】 久保 道弘
(56)【参考文献】
【文献】 特開2012−252319(JP,A)
【文献】 特開2009−242566(JP,A)
【文献】 特開昭63−309503(JP,A)
【文献】 特開2002−347338(JP,A)
【文献】 国際公開第2012/050015(WO,A1)
【文献】 国際公開第2010/110236(WO,A1)
【文献】 特開2009−098509(JP,A)
【文献】 特開2007−197718(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C08L 1/00−101/14
C08F 220/00−220/70
C09B 67/00−67/54
G02B 5/00−5/32
G03F 7/00−7/42
CAplus/REGISTRY(STN)
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
(A)着色剤及び(B)重合性化合物を含む着色組成物であって、
前記着色剤が、下記式(1)で表される構造単位xと、該構造単位x以外の構造単位yとを有する化合物を含該化合物の重量平均分子量が3,000〜50,000であり、かつ全構造単位中の前記構造単位xと前記構造単位yとの割合がモル比(x/y)で1/1.5〜1/9である、
着色組成物。
【化1】
〔式(1)において、
1は、水素原子、メチル基又はトリフルオロメチル基を示し、
2及びR3は、相互に独立に、フッ素原子又はパーフルオロアルキル基を示す
Aは、2価の基を示し、
Gは、2価の炭化水素基又は単結合を示す。但し、2価の炭化水素基は、C−C結合間に−O−基、−S−基、−CO−基、−NR7−基から選ばれる連結基を有していてもよい。R7は、水素原子、又は置換若しくは非置換の炭化水素基を示す。
m+は、カチオン性発色団を示し、
mは、1〜3の自然数を示し、
pは、1〜8の自然数を示す。〕
【請求項2】
前記Aが−O−基、−(CO)O−基、−O(CO)−基、−CO−基、−CONH−基、又は−SO2−基である、請求項1に記載の着色組成物。
【請求項3】
更に(C)バインダー樹脂を含む、請求項1又は2に記載の着色組成物。
【請求項4】
請求項1〜3のいずれか1項に記載の着色組成物を用いて形成された着色硬化膜。
【請求項5】
請求項4に記載の着色硬化膜を具備する表示素子。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、着色組成物、着色硬化膜及び表示素子に関わり、より詳しくは、透過型あるいは反射型のカラー液晶表示素子、固体撮像素子、有機EL表示素子、電子ペーパー等に用いられる着色硬化膜の形成に用いられる着色組成物、当該着色組成物を用いて形成された着色硬化膜、並びに当該着色硬化膜を具備する表示素子に関する。
【背景技術】
【0002】
着色感放射線性組成物を用いてカラーフィルタを製造するに当たっては、基板上に、顔料分散型の着色感放射線性組成物を塗布して乾燥したのち、乾燥塗膜を所望のパターン形状に放射線を照射(以下、「露光」という。)し、現像することにより、各色の画素を得る方法(例えば、特許文献1〜2参照。)が知られている。また、カーボンブラックを分散させた光重合性組成物を利用してブラックマトリックスを形成する方法(例えば、特許文献3参照。)も知られている。さらに、顔料分散型の着色樹脂組成物を用いてインクジェット方式により各色の画素を得る方法(例えば、特許文献4参照。)も知られている。
【0003】
近年では、液晶表示素子の高コントラスト化や固体撮像素子の高精細化が強く求められており、これらを実現するために、着色剤として染料の適用が検討されている。しかしながら、一般的に言えば、着色剤として顔料を適用した場合と比べて、染料を適用した場合には耐熱性や耐溶剤性などに問題が生じる場合が多い。
【0004】
このような背景の下、耐熱性に優れる画素を形成可能な染料含有着色組成物として、例えば、特許文献5において、アルキルスルホニルイミドアニオンを有するトリアリールメタン系染料の使用が提案されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開平2−144502号公報
【特許文献2】特開平3−53201号公報
【特許文献3】特開平6−35188号公報
【特許文献4】特開2000−310706号公報
【特許文献5】特開2012−83652号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかしながら、特許文献5に提案されている染料においては、画素の耐熱性と耐溶剤性のバランスが悪いことが判明した。
したがって、本発明の課題は、耐熱性と耐溶剤性を両立できる着色硬化膜の形成に好適な着色組成物を提供することにある。さらに、本発明の課題は、当該着色組成物を用いて形成された着色硬化膜、及びそれを具備する表示素子を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明者らは、鋭意検討の結果、特定の構造を有する着色剤を用いることによって、上記課題を解決できることを見出した。
【0008】
即ち、本発明は、(A)着色剤及び(B)重合性化合物を含む着色組成物であって、前記着色剤が、下記式(1)で表される構造単位を有する化合物(以下、「本着色剤」とも称する。)を含有する、着色組成物を提供するものである。
【0009】
【化1】
【0010】
〔式(1)において、
1は、水素原子、メチル基又はトリフルオロメチル基を示し、
2及びR3は、相互に独立に、水素原子、ハロ基、又は置換若しくは非置換の炭化水素を示す。但し、R2及びR3のうち少なくとも1つは、ハロ基又はハロ基置換炭化水素基である。
Aは、2価の基を示し、
Gは、2価の炭化水素基又は単結合を示す。但し、2価の炭化水素基は、C−C結合間に−O−基、−S−基、−CO−基、−NR7−基から選ばれる連結基を有していてもよい。R7は、水素原子、又は置換若しくは非置換の炭化水素基を示す。
m+は、カチオン性発色団を示し、
mは、1〜3の自然数を示し、
pは、1〜8の自然数を示す。〕
【0011】
また、本発明は、上記着色組成物を用いて形成された着色硬化膜、及び該着色硬化膜を具備する表示素子を提供するものである。ここで、「着色硬化膜」とは、表示素子や固体撮像素子に用いられる各色画素、ブラックマトリックス、ブラックスペーサー等を意味する。
【発明の効果】
【0012】
本発明の着色組成物を用いれば、耐熱性と耐溶剤性を高い水準で両立する着色硬化膜を形成することができる。
したがって、本発明の着色組成物は、カラー液晶表示素子、有機EL表示素子、電子ペーパー等の表示素子、CMOSイメージセンサ等の固体撮像素子の作製に極めて好適に使用することができる。
【発明を実施するための形態】
【0013】
以下、本発明について詳細に説明する。
着色組成物
以下、本発明の着色組成物の構成成分について詳細に説明する。
【0014】
−(A)着色剤−
本発明の着色組成物は、着色剤として本着色剤を含有する。本着色剤は、下記式(1)で表される構造単位を有する化合物であり、該化合物は、末端にSO3-基を有するアニオン部と、発色団を構成するカチオン部が塩を形成するものである。
【0015】
【化2】
【0016】
〔式(1)において、
1は、水素原子、メチル基又はトリフルオロメチル基を示し、
2及びR3は、相互に独立に、水素原子、ハロ基、又は置換若しくは非置換の炭化水素基を示す。但し、R2及びR3のうち少なくとも1つは、ハロ基又はハロ基置換炭化水素基である。
Aは、2価の基を示し、
Gは、2価の炭化水素基又は単結合を示す。但し、2価の炭化水素基は、C−C結合間に−O−基、−S−基、−CO−基、−NR7−基から選ばれる連結基を有していてもよい。R7は、水素原子、又は置換若しくは非置換の炭化水素基を示す。
m+は、カチオン性発色団を示し、
mは、相互に独立に、1〜3の自然数を示し、
pは、1〜8の自然数を示す。〕
【0017】
1は、水素原子又はメチル基が好ましく、メチル基がより好ましい。
【0018】
2及びR3におけるハロ基としては、例えば、フッ素原子、塩素原子、臭素原子、ヨウ素原子が挙げられ、中でも、フッ素原子が好ましい。
2、R3及びR7に係る炭化水素基としては、直鎖、分岐鎖及び環状のいずれでもよく、また橋かけ構造を有していてもよい。具体的には、脂肪族炭化水素基、脂環式炭化水素基、芳香族炭化水素基が挙げられる。また、該炭化水素基は、飽和炭化水素基でも不飽和炭化水素基でもよく、不飽和結合を分子内及び末端のいずれに有していてもよい。
脂肪族炭化水素基としては、アルキル基が好ましく、アルキル基の炭素数は1〜20が好ましく、1〜12がより好ましく、1〜6が更に好ましい。具体例としては、メチル基、エチル基、イソプロピル基、プロピル基、ブチル基、2−ブチル基、t−ブチル基、ペンチル基、ヘキシル基、ヘプチル基、オクチル基等が挙げられる。
脂環式炭化水素としては、シクロアルキル基が好ましく、シクロアルキル基の炭素数は3〜20が好ましく、3〜12がより好ましく、3〜6が更に好ましい。具体例としては、シクロプロピル基、シクロブチル基、シクロペンチル基、シクロヘキシル基、シクロヘプチル基、シクロオクチル基等を挙げることができる。
芳香族炭化水素基としては、アリール基、アラルキル基が好ましく、アリール基の炭素数は6〜20が好ましく、6〜10がより好ましく、またアラルキル基の炭素数が7〜20が好ましく、7〜16がより好ましい。ここで、本明細書において「アリール基」とは、単環〜3環式芳香族炭化水素基をいい、例えば、フェニル基、ナフチル基、ビフェニル基、アントラニル基等が挙げられる。アラルキル基の具体例としては、ベンジル基、フェネチル基、α−メチルベンジル基、2−フェニルプロパン−2−イル基等が挙げられる。
炭化水素基が有する置換基としては、ハロ基、水酸基、炭素数1〜6のアルコキシ基等が挙げられ、炭化水素基が脂環式炭化水素基、芳香族炭化水素基である場合、置換基として炭素数1〜6のアルキル基を有することもできる。ハロ基、炭素数1〜6のアルキル基の具体例としては、前述と同様のものが挙げられる。炭素数1〜6のアルコキシ基の具体例としては、例えば、メトキシ基、エトキシ基、プロポキシ基、イソプロポキシ基、ブトキシ基、ペンチルオキシ基等を挙げることができる。中でも、炭化水素基の置換基としては、ハロ基が好ましく、フッ素原子が更に好ましい。
【0019】
中でも、R2及びR3としては、ハロ基又はハロ基置換炭化水基が好ましく、フッ素原子又はフッ素原子置換アルキル基がより好ましく、フッ素原子又はパーフルオロアルキル基が更に好ましい。パーフルオロアルキル基は、炭素数が1〜12であることが好ましく、炭素数が1〜6であることがより好ましい。具体的には、トリフルオロメチル基、ペンタフルオロエチル基、ヘプタフルオロプロピル基、ノナフルオロブチル基、ウンデカフルオロペンチル基、トリデカフルオロヘキシル基、ペンタデカフルオロヘプチル基、ヘプタデカフルオロオクチル基、ノナデカフルオロノニル基、ヘンエイコサデシル基、(1−トリフルオロメチル)テトラフルオロエチル基、(1−トリフルオロメチル)ヘキサフルオロプロピル基、1,1−ビストリフルオロメチル−2,2,2−トリフルオロエチル基等を挙げることができる。
なお、R2及びR3のうち少なくとも1つは、ハロ基又はハロ基置換炭化水基であるが、R2及びR3は、ともにハロ基であることが好ましく、ともにフッ素原子であることが更に好ましい。
また、R7としては、水素原子又は炭素数1〜6のアルキル基が好ましく、該アルキル基は、フッ素原子で置換されていてもよい。
【0020】
Aに係る2価の基としては、ヘテロ原子を含む2価の基が好ましく、例えば、−O−基、−(CO)O−基、−O(CO)−基、−CO−基、−CONH−基、又は−SO2−基を挙げることができる。中でも、−O−基、−(CO)O−基、−CONH−基が好ましい。
【0021】
Gにおける2価の炭化水素基としては、例えば、2価の脂肪族炭化水素基、2価の脂環式炭化水素基、2価の芳香族炭化水素基を挙げることができる。2価の脂肪族炭化水素基は直鎖及び分岐鎖のいずれの形態でもよく、また2価の脂肪族炭化水素基及び2価の脂環式炭化水素基は飽和炭化水素基でも不飽和炭化水素基でもよい。
2価の脂肪族炭化水素基としては、例えば、アルカンジイル基、アルケンジイル基が挙げられ、その炭素数は、1〜20が好ましく、2〜12がより好ましく、2〜6が更に好ましい。具体例としては、メチレン基、エタン−1,1−ジイル基、エタン−1,2−ジイル基、プロパン−1,1−ジイル基、プロパン−1,2−ジイル基、プロパン−1,3−ジイル基、プロパン−2,2−ジイル基、ブタン−1,2−ジイル基、ブタン−1,3−ジイル基、ブタン−1,4−ジイル基、ペンタン−1,4−ジイル基、ペンタン−1,5−ジイル基、ヘキサン−1,5−ジイル基、ヘキサン−1,6−ジイル基、2−メチルプロパン−1,2−ジイル基、2,2−ジメチルプロパン−1,3−ジイル基、エテン−1,1−ジイル基、エテン−1,2−ジイル基、プロペン−1,2−ジイル基、プロペン−1,3−ジイル基、プロペン−2,3−ジイル基、1−ブテン−1,2−ジイル基、1−ブテン−1,3−ジイル基、1−ブテン−1,4−ジイル基、2−ペンテン−1,5−ジイル基、3−ヘキセン−1,6−ジイル基等を挙げることができる。
2価の脂環式炭化水素基としては、例えば、シクロアルキレン基、シクロアルケニレン基が挙げられ、その炭素数は、3〜20が好ましく、3〜12が更に好ましい。具体例としては、シクロプロピレン基、シクロブチレン基、シクロペンチレン基、シクロブテニレン基、シクロペンテニレン基、シクロヘキセニレン基等の単環式炭化水素環基、1,4−ノルボルニレン基、2,5−ノルボルニレン基等のノルボルニレン基、1,5−アダマンチレン基、2,6−アダマンチレン基等の架橋環式炭化水素環基等を挙げることができる。
中でも、Gに係る2価の炭化水素基としては、アルカンジイル基が好ましい。なお、Gに係る2価の炭化水素基は、C−C結合間に−O−基、−S−基、−CO−基、−NR7−基から選ばれる連結基を有してもよく、該連結基の結合位置は任意である。
【0022】
mは、1〜3の自然数を示すが、後述するカチオン性発色団の種類に応じてアニオン部と電気的に中性となるように適宜選択される。
pは、1〜8の自然数を示すが、1〜6の自然数が好ましく、2〜6の自然数が更に好ましい。
【0023】
次に、上記式(1)中のZm+について説明する。
m+は、カチオン性発色団である。Zm+に係るカチオン性発色団としては、前述のアニオン部とともに塩基性着色剤を形成し得るカチオンであれば特に限定されるものではないが、可視光領域に吸収極大を有するものが好ましく、360nm〜830nmに吸収極大を有するものがより好ましく、380nm〜780nmに吸収極大を有するものが更に好ましい。このようなカチオン性発色団としては、例えば、トリアリールメタン系発色団、メチン系発色団、アゾ系発色団、ジアリールメタン系発色団、キノンイミン系発色団、アントラキノン発色団、フタロシアニン系発色団、キサンテン系発色団等を挙げることができる。
【0024】
トリアリールメタン系発色団としては、下記式(3)で表わされるものが好ましい。なお、下記式(3)で表わされるカチオンには種々の共鳴構造が存在するが、本明細書においては、それら共鳴構造について下記式(3)で表わされるカチオンと同等のものとする。
【0025】
【化3】
【0026】
〔式(3)において、
Arは、置換又は非置換の芳香族炭化水素基を示す。
11〜R14は、相互に独立に、水素原子、炭素数1〜8のアルキル基、炭素数3〜8のシクロアルキル基、フェニル基又はエチレン性不飽和結合を有する基を示す。
15〜R22は、水素原子、炭素数1〜8のアルキル基、−COOR'又はハロ基を示す。但し、R'は、水素原子又は炭素数1〜8のアルキル基を示す。
Yは、水素原子又は下記式(4)で表される基を示す。〕
【0027】
【化4】
【0028】
〔式(4)において、R23及びR24は、相互に独立に、水素原子、炭素数1〜8のアルキル基、炭素数3〜8のシクロアルキル基、フェニル基又はエチレン性不飽和結合を有する基を示す。〕
【0029】
Arに係る芳香族炭化水素基は、炭素数が6〜20であることが好ましく、炭素数が6〜10であることがより好ましい。具体例としては、フェニレン基、ナフチレン基、ビフェニレン基、アントリレン基等を挙げることができる。芳香族炭化水素基の置換基としては、炭素数1〜6のアルキル基が好ましく、その具体例としては、前述と同様のものを挙げることができる。中でも、Arに係る芳香族炭化水素基としては、フェニレン基、ナフチレン基、炭素数1〜6のアルキル基で置換されたフェニレン基、炭素数1〜6のアルキル基で置換されたナフチレン基が好ましい。
11〜R24(R15〜R22に係る−COOR'のR'を含む)における炭素数1〜8のアルキル基は直鎖でも分岐鎖でもよく、具体例としては、前述と同様のものを挙げることができる。中でも、炭素数1〜6のアルキル基が好ましく、炭素数1〜4のアルキル基がより好ましく、メチル基又はエチル基が特に好ましい。
11〜R14に係る炭素数3〜8のシクロアルキル基の具体例としては、前述と同様のものを挙げることができる。中でも、炭素数3〜6のシクロアルキル基が好ましく、シクロヘキシル基が特に好ましい。
11〜R14に係るエチレン性不飽和結合を有する基としては、例えば、ビニル基、プロペニル基、スチリル基、(メタ)アクリロイルオキシエチル基、(メタ)アクリロイルオキシプロピル基、(メタ)アクリロイルアミドエチル基、(メタ)アクリロイルアミドプロピル基等を挙げることができる。
15〜R22に係るハロ基の具体例としては、前述と同様のものを挙げることができる。中でも、塩素原子が好ましい。
【0030】
本発明においては、上記式(3)で表されるカチオンの中でも、耐熱性及び耐溶剤性の観点から、特に下記式(5−1)又は(5−2)で表されるカチオンが好ましい。
【0031】
【化5】
【0032】
〔式(5−1)、(5−2)において、
25及びR26は、相互に独立に、水素原子、ハロ基又は炭素数1〜8のアルキル基を示す。
11〜R14、R23及びR24は、上記式(3)及び(4)に係るR11〜R14、R23及びR24と同義である。〕
【0033】
上記式(5−1)及び(5−2)において、R11、R12、R23及びR24としては、炭素数1〜6のアルキル基が好ましく、R13としては、炭素数1〜6のアルキル基、炭素数3〜6のシクロアルキル基又はフェニル基が好ましい。また、R14としては、水素原子又は炭素数1〜6のアルキル基が好ましく、R25及びR26としては、水素原子、ハロ基又は炭素数1〜6のアルキル基が好ましい。
【0034】
上記式(3)で表されるカチオンの代表例としては、例えば、下記式で表されるカチオンを挙げることができる。
【0035】
【化6】
【0036】
【化7】
【0037】
メチン系発色団としては、下記式(6−1)〜(6−3)で表わされるものが好ましく、下記式(6−1)で表わされるものがより好ましい。
【0038】
【化8】
【0039】
〔式(6−1)〜(6−3)において、
31は、水素原子又はハロ基を示す。
32、R33、R34及びR35は、相互に独立に、炭素数1〜6のアルキル基を示す。
36は、置換又は非置換の炭素数1〜6のアルキル基を示す。
Eは、−CH=CH−、−CH=CH−CH=、−CH=CH−NR37−、−CH=N−NR37−又は−N=N−NR37−を示す。但し、R37は、水素原子又は炭素数1〜6のアルキル基を示す。
aは、置換若しくは非置換の芳香族炭化水素基、又は置換若しくは非置換の複素環基を示す。〕
【0040】
ハロ基、及び炭素数1〜6のアルキル基の具体例としては、前述と同様のものを挙げることができる。また、アルキル基の置換基としては、ハロ基、シアノ基、水酸基等が挙げられる。
aとしては、下記式(6a)〜(6h)で表される基が好ましく、下記式(6b)又は(6h)で表される基がより好ましい。
【0041】
【化9】
【0042】
〔式(6a)〜(6h)において、
38及びR45は、相互に独立に、炭素数1〜6のアルキル基を示す。
39は、置換又は非置換の炭素数1〜6のアルキル基を示す。
40、R42、R43、R44、R47、R48及びR49は、相互に独立に、水素原子又は炭素数1〜6のアルキル基を示す。
41、R46及びR50は、相互に独立に、水素原子、ハロ基、炭素数1〜6のアルコキシ基、置換若しくは非置換の炭素数1〜6のアルキル基、ニトロ基、水酸基又はシアノ基を示す。〕
【0043】
ハロ基、炭素数1〜6のアルキル基及び炭素数1〜6のアルコキシ基の具体例としては、前述と同様のものを挙げることができる。また、アルキル基の置換基としては、ハロ基、シアノ基、水酸基等が挙げられる。
中でも、R32〜R50におけるアルキル基は、炭素数1〜4のアルキル基が好ましく、メチル基又はエチル基がより好ましい。また、R41、R46及びR50におけるアルコキシ基としては、炭素数1〜4のアルコキシ基が好ましく、メトキシ基又はエトキシ基がより好ましい。
【0044】
上記式(6−1)〜(6−3)で表されるカチオンの代表例としては、例えば、下記式で表されるカチオンを挙げることができる。
【0045】
【化10】
【0046】
アゾ系発色団としては、下記式(7−1)〜(7−6)で表わされるものが好ましい。
【0047】
【化11】
【0048】
〔式(7−1)〜(7−6)において、
51、R52、R53、R54、R55及びR57は、相互に独立に、置換若しくは非置換の炭素数1〜6のアルキル基を示す。
56及びR60は、相互に独立に、水素原子、ハロ基、炭素数1〜6のアルキル基、炭素数1〜6のアルコキシ基、ニトロ基、水酸基又はシアノ基を示す。
58は、炭素数1〜6のアルキル基を示す。
59は、4級アンモニウムを形成する基を示す。
bは、置換若しくは非置換の芳香族炭化水素基、又は置換若しくは非置換の複素環基を示す。〕
【0049】
ハロ基、炭素数1〜6のアルキル基及び炭素数1〜6のアルコキシ基の具体例としては、前述と同様のものを挙げることができる。また、アルキル基の置換基としては、ハロ基、シアノ基、水酸基等が挙げられる。
【0050】
59としては、−NR61r2r+626364、−COCr2r+626364、−Cr2r+(NH2)R7475、又は下記式(7−i)若しくは(7−ii)で表される基が好ましい。
ここで、R61は、水素原子又は炭素数1〜6のアルキル基を示し、R62、R63及びR64は、相互に独立に、炭素数1〜6のアルキル基を示し、R74及びR75は、相互に独立に、炭素数1〜6のアルキル基を示し、rは、相互に独立に、1〜5の整数を示す。
【0051】
【化12】
【0052】
〔式(7−i)及び(7−ii)において、R61及びrは前記と同義である。〕
【0053】
bとしては、下記式(7a)〜(7e)で表される基、置換若しくは非置換のフェニル基が好ましい。
【0054】
【化13】
【0055】
〔式(7a)〜(7d)において、
65は、水素原子、炭素数1〜6のアルキル基、フェニル基又はベンジル基を示す。
66は、水素原子又は置換若しくは非置換の炭素数1〜6のアルキル基を示す。
67は、水素原子、炭素数1〜6のアルキル基又はフェニル基を示す。
68は、水素原子又は炭素数1〜6のアルキル基を示す。
69は、水素原子又は炭素数1〜6のアルキル基を示す。
70〜R73は、相互に独立に、水素原子、ハロ基、炭素数1〜6のアルキル基、炭素数1〜6のアルコキシ基、ニトロ基、水酸基又はシアノ基を示す。〕
【0056】
ハロ基、炭素数1〜6のアルキル基及び炭素数1〜6のアルコキシ基の具体例としては、前述と同様のものを挙げることができる。また、アルキル基の置換基としては、ハロ基、水酸基、シアノ基、−CONH2基等が挙げられる。フェニル基の置換基としては、ハロ基、炭素数1〜6のアルキル基、炭素数1〜6のアルコキシ基、水酸基、シアノ基、ニトロ基等が挙げられる。
【0057】
上記式(7−1)〜(7−6)で表されるカチオンの代表例としては、例えば、下記式で表されるカチオンを挙げることができる。
【0058】
【化14】
【0059】
【化15】
【0060】
ジアリールメタン系発色団としては、下記式(8−1)又は(8−2)で表わされるものが好ましい。
【0061】
【化16】
【0062】
〔式(8−1)及び(8−2)において、
81、R82、R83、R84、R86、R87、R88及びR89は、相互に独立に、炭素数1〜6のアルキル基を示す。
85、R90及びR91は、相互に独立に、水素原子又は炭素数1〜6のアルキル基を示す。〕
【0063】
上記式(8−1)〜(8−2)で表されるカチオンの代表例としては、例えば、下記式で表されるカチオンを挙げることができる。
【0064】
【化17】
【0065】
キノンイミン系発色団としては、下記式(9−1)〜(9−3)で表わされるものが好ましい。
【0066】
【化18】
【0067】
〔式(9−1)〜(9−3)において、
101、R102、R103、R104、R105、R106、R108、R109、R110、R111、R114、R115、R116、R117及びR118は、相互に独立に、水素原子、置換若しくは非置換の炭素数1〜6のアルキル基、炭素数1〜6のアルコキシ基、フェニル基又はベンジル基を示す。
107及びR113は、相互に独立に、炭素数1〜6のアルキル基又は炭素数6〜20のアリール基を示す。
112は、−NR119120、水酸基、ニトロ基又はシアノ基を示す。但し、R119及びR120は、相互に独立に、置換又は非置換の炭素数1〜6のアルキル基を示す。
Qは、酸素原子又は硫黄原子を示す。〕
【0068】
炭素数1〜6のアルキル基、炭素数1〜6のアルコキシ基及び炭素数6〜20のアリール基の具体例としては、前述と同様のものを挙げることができる。また、アルキル基の置換基としては、ハロ基、水酸基、シアノ基等が挙げられる。
【0069】
上記式(9−1)〜(9−3)で表されるカチオンの代表例としては、例えば、下記式で表されるカチオンを挙げることができる。
【0070】
【化19】
【0071】
アントラキノン系発色団としては、下記式(10−1)又は(10−2)で表わされるものが好ましい。
【0072】
【化20】
【0073】
〔式(10−1)及び(10−2)において、
131、R135及びR136は、相互に独立に、水素原子、置換若しくは非置換の炭素数1〜6のアルキル基、又は置換若しくは非置換のフェニル基を示す。
132、R133、R134、R138、R139及びR140は、相互に独立に、炭素数1〜6のアルキル基を示す。
137は、メチレン基又は置換若しくは非置換の炭素数2〜20のアルカンジイル基を示す。〕
【0074】
炭素数1〜6のアルキル基、炭素数1〜6のアルコキシ基及び炭素数2〜20のアルカンジイル基の具体例としては、前述と同様のものを挙げることができる。また、アルキル基及びフェニル基の置換基としては、ハロ基、水酸基、シアノ基等が挙げられ、フェニル基は、炭素数1〜6のアルキル基で置換されていてもよい。また、炭素数2〜20のアルカンジイル基の置換基としては、水酸基、シアノ基又はニトロ基等が挙げられる。
【0075】
上記式(10−1)又は(10−2)で表されるカチオンの代表例としては、例えば、下記式で表される示すカチオンを挙げることができる。
【0076】
【化21】
【0077】
フタロシアニン系発色団としては、下記式(11)で表わされるものが好ましい。
【0078】
【化22】
【0079】
〔式(11)において、
CuPcは、銅フタロシアニン残基を示す。
Tは、下記式(11a)又は(11b)で表される基を示す。〕
【0080】
【化23】
【0081】
〔式(10a)及び(10b)において、
151、R152、R153、R154、R155、R156、R157及びR158は、相互に独立に、水素原子、炭素数1〜6のアルキル基又はフェニル基を示す。
sは、相互に独立に、2〜8の整数を示す。
tは、相互に独立に、1〜5の整数を示す。〕
【0082】
上記式(11)で表されるカチオンの代表例としては、例えば、下記式で表されるカチオンを挙げることができる。
【0083】
【化24】
【0084】
キサンテン系発色団としては、下記式(12)で表わされるものが好ましい。
【0085】
【化25】
【0086】
〔式(12)において、
171、R172、R173及びR174は、相互に独立に、水素原子、−R178又は炭素数6〜10の芳香族炭化水素基を示す。但し、該芳香族炭化水素基に含まれる水素原子は、ハロ基、−R178、−OH、−OR178、−SO3H、−SO3M、−CO2H、−CO2178、−SO3178、−SO2NHR179又は−SO2NR179180で置換されていてもよい。
175及びR176は、相互に独立に、水素原子又は炭素数1〜8のアルキル基を示す。
177は、−SO3H、−SO3M、−CO2H、−CO2178、−SO3178、−SO2NHR179又は−SO2NR179180を示す。
uは、0〜5の整数を示し、uが2以上の整数である場合、複数のR177は、同一であっても異なっていてもよい。
178は、炭素数1〜10の飽和炭化水素基を示す。但し、該飽和炭化水素基に含まれる水素原子は、ハロ基で置換されていてもよく、また飽和炭化水素基は、C−C結合間に−O−基、−CO−基又は−NR178−基を有していてもよい。
179及びR180は、相互に独立に、炭素数1〜10の鎖状のアルキル基、炭素数3〜30のシクロアルキル基又は−Xを示すか、あるいはR179及びR180が互いに結合して形成される炭素数1〜10の置換若しくは非置換の複素環基を示す。但し、該アルキル基及びシクロアルキル基に含まれる水素原子は、水酸基、ハロ基、−X、−CH=CH2又は−CH=CHR178で置換されていてもよく、また該アルキル基及びシクロアルキル基は、C−C結合間に−O−基、−CO−基又は−NR178−を有していてもよく、該複素環基に含まれる水素原子は、−R178、−OH又は−Xで置換されていてもよい。
Mは、ナトリウム原子又はカリウム原子を示す。
Xは、炭素数6〜10の芳香族炭化水素基、又は炭素数5〜10の芳香族複素環基を示す。但し、該芳香族炭化水素基及び芳香族複素環基に含まれる水素原子は、−OH、−R178、−OR178、−NO2、−CH=CH2、−CH=CHR178又はハロ基で置換されていてもよい。〕
【0087】
178に係る飽和炭化水素基は、炭素数が1〜10であれば、直鎖、分岐鎖及び環状のいずれでもよく、また橋かけ構造を有していてもよい。具体的には、例えば、飽和脂肪族炭化水素基、飽和脂環式炭化水素基を挙げることができる。飽和脂肪族炭化水素基、飽和脂環式炭化水素基の具体例としては、前述したアルキル基、シクロアルキル基と同様のものを挙げることができる。
【0088】
179及びR180が互いに結合して形成される炭素数1〜10の複素環基としては、ピロリジニル基、ピラゾリニル基、モルホリニル基、テオモルホリニル基、ピペリジル基、ピペリジノ基、ピペラジニル基、ホモピペラジニル基、テトラヒドロピリミジン基、1,3−ジオキソラン−2−イル基、ピリジル基、ピラジニル基、ピリミジル基、ピリダジニル基、キノリル基、イソキノリル基、フタラジニル基、キノキサリニル基、イミダゾリル基、ピラゾリル基、トリアゾリル基、テトラゾリル基、チアゾリル基、ベンゾチアゾリル基、オキサゾリル基、インドリル基、インダゾリル基、ベンゾイミダゾリル基、フタルイミド基等を挙げることができる。複素環基の置換基としては、例えば、ハロ基、水酸基、炭素数1〜6のアルコキシ基、アミノ基、炭素数1〜6のアルキル基等を挙げることができる。また、Xにおける炭素数5〜10の芳香族複素環基としてはフリル基、チエニル基、ピリジル基、ピロリル基、オキサゾリル基、イソオキサゾル基、チアゾリル基、イソチアゾリル基、イミダゾリル基、ピラゾリル基、ピリミジル基等を挙げることができる。
【0089】
171、R172、R173、R174及びXに係る芳香族炭化水素基としては、炭素数が6〜10のアリール基が好ましく、例えば、フェニル基、ナフチル基等を挙げることができる。
171、R172、R173、R174及びR177に係る−SO3178としては、メタンスルホニル基、エタンスルホニル基、ヘキサンスルホニル基、デカンスルホニル基等が挙げられる。また、−CO2178としては、メチルオキシカルボニル基、エチルオキシカルボニル基、プロピルオキシカルボニル基、イソプロピルオキシカルボニル基、ブチルオキシカルボニル基、シクロヘキシルオキシカルボニル基、メトキシプロピルオキシカルボニル基等が挙げられる。更に、−SO2NHR179、−SO2NR179180に係るR179、R180としては、炭素数6〜8の分枝アルキル基、炭素数5〜7の脂環式炭化水素基、炭素数8〜10のアラルキル基、水酸基又はアルコキシ基で置換された炭素数2〜8のアルキル基、アリール基が好ましい。
【0090】
171、R172、R173及びR174としては、炭素数が1〜6のアルキル基が好ましく、炭素数が1〜4のアルキル基がより好ましく、メチル基又はエチル基が更に好ましい。
175及びR176としては、水素原子又は炭素数が1〜6のアルキル基が好ましく、該アルキル基の炭素数は1〜4がより好ましく、メチル基又はエチル基が更に好ましい。
177としては、−SO3H、−SO3M、−CO2H、又は−CO2178が好ましく、−CO2H、又は−CO2178がより好ましい。−CO2178におけるR178は、炭素数が1〜6のアルキル基が好ましく、炭素数が1〜4のアルキル基がより好ましく、メチル基又はエチル基が更に好ましい。
uは、1又は2が好ましく、1がより好ましい。
【0091】
上記式(12)で表されるカチオンの代表例としては、例えば、下記式で表されるカチオンを挙げることができる。
【0092】
【化26】
【0093】
その他カチオン性発色団としては、例えば、下記式で表されるカチオンを挙げることができる。
【0094】
【化27】
【0095】
本着色剤は、式(1)で表される構造単位以外の構造単位(以下、「他の構造単位」とも称する。)を有していてもよく、このような構造単位の例としては、例えば、1個以上のカルボキシル基を有するエチレン性不飽和単量体に由来する構造単位、N−位置換マレイミドに由来する構造単位、芳香族ビニル化合物に由来する構造単位、(メタ)アクリル酸エステルに由来する構造単位、ビニルエーテルに由来する構造単位、重合体分子鎖の末端にモノ(メタ)アクリロイル基を有するマクロモノマーに由来する構造単位、下記式(2)で表される構造単位等を挙げることができる。
【0096】
【化28】
【0097】
〔式(2)において、
は、水素原子、メチル基又はトリフルオロメチル基を示し、
及びRは、相互に独立に、水素原子、ハロ基、又は置換若しくは非置換の炭化水素基を示す。但し、R及びRのうち少なくとも1つは、ハロ基又はハロ基置換炭化水素基である。
は、2価の基を示し、
は、2価の炭化水素基又は単結合を示す。但し、2価の炭化水素基は、C−C結合間に−O−基、−S−基、−CO−基、−NR8−基から選ばれる連結基を有していてもよい。R8は、水素原子、又は置換若しくは非置換の炭化水素基を示す。
n+は、プロトン、金属カチオン又はオニウムカチオン(但しZm+で表されるカチオン性発色団を除く。)を示し、
nは、1〜3の自然数を示し、
qは、1〜8の自然数を示す。〕
【0098】
は、式(1)におけるR1と同義であり、
及びRは、式(1)におけるR2及びR3と同義であり、
は、式(1)におけるAと同義であり、
は、式(1)におけるGと同義であり、
8は、式(1)におけるR7と同義である。
n+における金属カチオンとしては、リチウムイオン、ナトリウムイオン、カリウムイオン、セシウムイオン等の1価の金属カチオン、マグネシウムイオン、カルシウムイオン、バリウムイオン等の2価の金属カチオン、アルミニウムイオン等の3価の金属カチオンを挙げることができる。
n+におけるオニウムカチオンとしては、アンモニウムイオン、ホスホニウムイオン等を挙げることができる。
【0099】
前記1個以上のカルボキシル基を有するエチレン性不飽和単量体に由来する構造単位は、例えば、(メタ)アクリル酸、マレイン酸、無水マレイン酸、こはく酸モノ〔2−(メタ)アクリロイロキシエチル〕、ω−カルボキシポリカプロラクトンモノ(メタ)アクリレート、p−ビニル安息香酸の如きカルボキシル基を有するエチレン性不飽和単量体により得ることができる。
【0100】
また、N−位置換マレイミドに由来する構造単位は、例えば、N−フェニルマレイミド、N−シクロヘキシルマレイミドの如きN−位置換マレイミドにより得ることができる。
また、芳香族ビニル化合物は、例えば、スチレン、α−メチルスチレン、p−ヒドロキシスチレン、p−ヒドロキシ−α−メチルスチレン、p−ビニルベンジルグリシジルエーテル、アセナフチレンの如き芳香族ビニル化合物により得ることができる。
【0101】
また、(メタ)アクリル酸エステルに由来する構造単位は、例えば、メチル(メタ)アクリレート、n−ブチル(メタ)アクリレート、2−エチルヘキシル(メタ)アクリレート、2−ヒドロキシエチル(メタ)アクリレート、アリル(メタ)アクリレート、ベンジル(メタ)アクリレート、ポリエチレングルコール(重合度2〜10)メチルエーテル(メタ)アクリレート、ポリプロピレングルコール(重合度2〜10)メチルエーテル(メタ)アクリレート、ポリエチレングリコール(重合度2〜10)モノ(メタ)アクリレート、ポリプロピレングリコール(重合度2〜10)モノ(メタ)アクリレート、シクロヘキシル(メタ)アクリレート、イソボルニル(メタ)アクリレート、トリシクロ[5.2.1.02,6]デカン−8−イル(メタ)アクリレート、ジシクロペンテニル(メタ)アクリレート、グリセロールモノ(メタ)アクリレート、4−ヒドロキシフェニル(メタ)アクリレート、パラクミルフェノールのエチレンオキサイド変性(メタ)アクリレート、グリシジル(メタ)アクリレート、3,4−エポキシシクロヘキシルメチル(メタ)アクリレート、3−〔(メタ)アクリロイルオキシメチル〕オキセタン、3−〔(メタ)アクリロイルオキシメチル〕−3−エチルオキセタンの如き(メタ)アクリル酸エステルにより得ることができる。
【0102】
また、ビニルエーテルに由来する構造単位は、例えば、シクロヘキシルビニルエーテル、イソボルニルビニルエーテル、トリシクロ[5.2.1.02,6]デカン−8−イルビニルエーテル、ペンタシクロペンタデカニルビニルエーテル、3−(ビニルオキシメチル)−3−エチルオキセタンの如きビニルエーテルにより得ることができる。
また、重合体分子鎖の末端にモノ(メタ)アクリロイル基を有するマクロモノマーに由来する構造単位は、例えば、ポリスチレン、ポリメチル(メタ)アクリレート、ポリ−n−ブチル(メタ)アクリレート、ポリシロキサンの如き重合体分子鎖の末端にモノ(メタ)アクリロイル基を有するマクロモノマーにより得ることができる。
【0103】
中でも、分散性の観点から、本着色剤は、他の構造単位として(メタ)アクリル酸エステルに由来する構造単位、式(2)で表される構造単位を有することが好ましい。
(メタ)アクリル酸エステルに由来する構造単位の中では、オキシラニル基、オキセタニル基、重合性不飽和基及びブロックイソシアネート基よりなる群から選ばれる少なくとも1種の基を有する(メタ)アクリル酸エステルに由来する構造単位を有することがより好ましい。このような化合物としては、アリル(メタ)アクリレート、グリシジル(メタ)アクリレート、3,4−エポキシシクロヘキシルメチル(メタ)アクリレート、3−〔(メタ)アクリロイルオキシメチル〕オキセタン、3−〔(メタ)アクリロイルオキシメチル〕−3−エチルオキセタン、2−(0−[1'−メチルプロピリデンアミノ]カルボキシアミノ)エチル(メタ)アクリレート等を挙げることができる。
【0104】
本着色剤が他の構造単位を有する場合、他の構造単位の共重合割合は、分散性の観点から、以下の態様が好ましい。
即ち、本着色剤の全構造単位中の式(1)で表される構造単位の合計割合xと、他の構造単位の割合yは、モル比で、x/y=1/0.5〜1/19であることが好ましく、x/y=1/1.5〜1/9がより好ましく、x/y=1/2〜1/7が更に好ましい。
他の構造単位のうち、(メタ)アクリル酸エステルに由来する構造単位の共重合割合は、耐溶剤性の観点から、他の構造単位全体に対して10〜100モル%が好ましく、30〜100モル%がより好ましく、50〜100モル%が更に好ましい。
他の構造単位のうち、式(2)で表される構造単位の共重合割合は、耐溶剤性の観点から、他の構造単位全体に対して10〜100モル%が好ましく、20〜90モル%がより好ましく、30〜80モル%が更に好ましい。
【0105】
本着色剤は、ゲルパーミエーションクロマトグラフィー(以下、GPCと略す。)(溶出溶媒:テトラヒドロフラン)で測定したポリスチレン換算の重量平均分子量(Mw)が、通常、1,000〜100,000、好ましくは3,000〜50,000、より好ましくは3,000〜20,000である。このような態様とすることで、耐熱性、耐溶剤性に加え、被膜特性、電気特性、パターン形状、解像度を良好にすることができる。
【0106】
また、本発明における本着色剤の重量平均分子量(Mw)と、数平均分子量(Mn)との比(Mw/Mn)は、好ましくは1.0〜5.0、より好ましくは1.0〜3.0である。なお、ここでいう、Mnは、GPC(溶出溶媒:テトラヒドロフラン)で測定したポリスチレン換算の数平均分子量である。
【0107】
本着色剤は、公知の方法により製造することが可能であるが、例えば、国際公開第2006−121096号パンフレットの実施例と同様の方法により製造された重合体と、公知の塩基性染料との塩交換反応によりすることができる。このようにして得られた本着色剤は、プロピレングリコールモノメチルエーテルアセテート等を始めとする種々の有機溶媒に可溶であり、また優れた耐溶剤性を有する。
【0108】
本発明において、本着色剤は、単独で又は2種以上を混合して使用することができる。
【0109】
本発明の着色組成物は、(A)着色剤として、更に他の着色剤を含有することができる。この場合、本着色剤の含有割合は、全着色剤中、好ましくは0.1〜99質量%、より好ましくは1〜80質量%、更に好ましくは10〜70質量%であり、特に好ましくは20〜60質量%である。
【0110】
他の着色剤としては、特に限定されるものではなく、用途に応じて色彩や材質を適宜選択することができ、本着色剤以外の顔料、染料及び天然色素の何れをも使用することができるが、輝度及び色純度の高い画素を得るという意味においては、有機顔料、有機染料が好ましく、有機顔料がより好ましい。
【0111】
有機顔料としては、例えば、カラーインデックス(C.I.;The Society of Dyers and Colourists 社発行)においてピグメントに分類されている化合物が挙げられるが、中でも、特開2001−081348号公報、特開2010−026334号公報、特開2010−191304号公報、特開2010−237384号公報、特開2010−237569号公報、特開2011−006602号公報、特開2011−145346号公報等に記載のレーキ顔料、C.I.ピグメントレッド166、C.I.ピグメントレッド177、C.I.ピグメントレッド224、C.I.ピグメントレッド242、C.I.ピグメントレッド254、C.I.ピグメントレッド264、C.I.ピグメントグリーン7、C.I.ピグメントグリーン36、C.I.ピグメントグリーン58、C.I.ピグメントブルー15:6、C.I.ピグメントブルー80、C.I.ピグメントイエロー83、C.I.ピグメントイエロー129、C.I.ピグメントイエロー138、C.I.ピグメントイエロー139、C.I.ピグメントイエロー150、C.I.ピグメントイエロー180、C.I.ピグメントイエロー185、C.I.ピグメントイエロー211、C.I.ピグメントオレンジ38、C.I.ピグメントバイオレット23等のレーキ顔料以外の有機顔料が好ましい。また、レーキ顔料の中では、トリアリールメタン系レーキ顔料、キサンテン系レーキ顔料、アゾ系レーキ顔料が好ましく、トリアリールメタン系レーキ顔料およびキサンテン系レーキ顔料がより好ましい。
【0112】
本発明において、他の着色剤として顔料を使用する場合、顔料を、再結晶法、再沈殿法、溶剤洗浄法、昇華法、真空加熱法又はこれらの組み合わせにより精製して使用することもできる。また、顔料は、所望により、その粒子表面を樹脂で改質して使用してもよい。顔料の粒子表面を改質する樹脂としては、例えば、特開2001−108817号公報に記載のビヒクル樹脂、又は市販の各種の顔料分散用の樹脂が挙げられる。カーボンブラック表面の樹脂被覆方法としては、例えば、特開平9−71733号公報、特開平9−95625号公報、特開平9−124969号公報等に記載の方法を採用することができる。また、有機顔料は、いわゆるソルトミリングにより、一次粒子を微細化して使用してもよい。ソルトミリングの方法としては、例えば、特開平08−179111号公報に開示されている方法を採用することができる。
【0113】
本発明において、他の着色剤として顔料を使用する場合、更に公知の分散剤及び分散助剤を含有せしめることもできる。公知の分散剤としては、例えば、ウレタン系分散剤、ポリエチレンイミン系分散剤、ポリオキシエチレンアルキルエーテル系分散剤、ポリオキシエチレンアルキルフェニルエーテル系分散剤、ポリエチレングリコールジエステル系分散剤、ソルビタン脂肪酸エステル系分散剤、ポリエステル系分散剤、アクリル系分散剤等を、分散助剤としては顔料誘導体等を挙げることができる。
【0114】
このような分散剤は商業的に入手することができ、例えば、アクリル系分散剤として、Disperbyk−2000、Disperbyk−2001、BYK−LPN6919、BYK−LPN21116、BYK−LPN21324(以上、ビックケミー(BYK)社製)、ウレタン系分散剤として、Disperbyk−161、Disperbyk−162、Disperbyk−165、Disperbyk−167、Disperbyk−170、Disperbyk−182、Disperbyk−2164(以上、ビックケミー(BYK)社製)、ソルスパース76500(ルーブリゾール(株)社製)、ポリエチレンイミン系分散剤として、ソルスパース24000(ルーブリゾール(株)社製)、ポリエステル系分散剤として、アジスパーPB821、アジスパーPB822、アジスパーPB880、アジスパーPB881(以上、味の素ファインテクノ(株)社製)等を挙げることができる。
【0115】
また、顔料誘導体としては、具体的には、銅フタロシアニン、ジケトピロロピロール、キノフタロンのスルホン酸誘導体等を挙げることができる。
【0116】
本発明において他の着色剤は、単独で又は2種以上を混合して使用することができる。
【0117】
(A)着色剤の含有割合は、耐熱性、及び輝度が高く色純度に優れる画素、あるいは遮光性に優れるブラックマトリックス、ブラックスペーサーを形成する点から、通常、着色組成物の固形分中に5〜70質量%、好ましくは5〜60質量%である。また、本着色剤の含有割合は、着色組成物の固形分中に2質量%以上、更に3質量%以上、特に5質量%以上であることが好ましい。ここで固形分とは、後述する溶媒以外の成分である。
【0118】
−(B)重合性化合物−
本発明において重合性化合物とは、2個以上の重合可能な基を有する化合物をいう。重合可能な基としては、例えば、エチレン性不飽和基、オキシラニル基、オキセタニル基、N−アルコキシメチルアミノ基等を挙げることができる。本発明において、重合性化合物としては、2個以上の(メタ)アクリロイル基を有する化合物、又は2個以上のN−アルコキシメチルアミノ基を有する化合物が好ましい。
【0119】
2個以上の(メタ)アクリロイル基を有する化合物の具体例としては、脂肪族ポリヒドロキシ化合物と(メタ)アクリル酸を反応させて得られる多官能(メタ)アクリレート、カプロラクトン変性された多官能(メタ)アクリレート、アルキレンオキサイド変性された多官能(メタ)アクリレート、水酸基を有する(メタ)アクリレートと多官能イソシアネートを反応させて得られる多官能ウレタン(メタ)アクリレート、水酸基を有する(メタ)アクリレートと酸無水物を反応させて得られるカルボキシル基を有する多官能(メタ)アクリレート等を挙げることができる。
【0120】
ここで、脂肪族ポリヒドロキシ化合物としては、例えば、エチレングリコール、プロピレングリコール、ポリエチレングリコール、ポリプロピレングリコールの如き2価の脂肪族ポリヒドロキシ化合物;グリセリン、トリメチロールプロパン、ペンタエリスリトール、ジペンタエリスリトールの如き3価以上の脂肪族ポリヒドロキシ化合物を挙げることができる。水酸基を有する(メタ)アクリレートとしては、例えば、2−ヒドロキシエチル(メタ)アクリレート、トリメチロールプロパンジ(メタ)アクリレート、ペンタエリスリトールトリ(メタ)アクリレート、ジペンタエリスリトールペンタ(メタ)アクリレート、グリセロールジメタクリレート等を挙げることができる。多官能イソシアネートとしては、例えば、トリレンジイソシアネート、ヘキサメチレンジイソシアネート、ジフェニルメチレンジイソシアネート、イソホロンジイソシアネート等を挙げることができる。酸無水物としては、例えば、無水こはく酸、無水マレイン酸、無水グルタル酸、無水イタコン酸、無水フタル酸、ヘキサヒドロ無水フタル酸の如き二塩基酸の無水物、無水ピロメリット酸、ビフェニルテトラカルボン酸二無水物、ベンゾフェノンテトラカルボン酸二無水物の如き四塩基酸二無水物を挙げることができる。
【0121】
また、カプロラクトン変性された多官能(メタ)アクリレートとしては、例えば、特開平11−44955号公報の段落〔0015〕〜〔0018〕に記載されている化合物を挙げることができる。アルキレンオキサイド変性された多官能(メタ)アクリレートとしては、エチレンオキサイド及びプロピレンオキサイドから選ばれる少なくとも1種により変性されたビスフェノールAジ(メタ)アクリレート、エチレンオキサイド及びプロピレンオキサイドから選ばれる少なくとも1種により変性されたイソシアヌル酸トリ(メタ)アクリレート、エチレンオキサイド及びプロピレンオキサイドから選ばれる少なくとも1種により変性されたトリメチロールプロパントリ(メタ)アクリレート、エチレンオキサイド及びプロピレンオキサイドから選ばれる少なくとも1種により変性されたペンタエリスリトールトリ(メタ)アクリレート、エチレンオキサイド及びプロピレンオキサイドから選ばれる少なくとも1種により変性されたペンタエリスリトールテトラ(メタ)アクリレート、エチレンオキサイド及びプロピレンオキサイドから選ばれる少なくとも1種により変性されたジペンタエリスリトールペンタ(メタ)アクリレート、エチレンオキサイド及びプロピレンオキサイドから選ばれる少なくとも1種により変性されたジペンタエリスリトールヘキサ(メタ)アクリレート等を挙げることができる。
【0122】
また、2個以上のN−アルコキシメチルアミノ基を有する化合物としては、例えば、メラミン構造、ベンゾグアナミン構造、ウレア構造を有する化合物等を挙げることができる。なお、メラミン構造、ベンゾグアナミン構造とは、1以上のトリアジン環又はフェニル置換トリアジン環を基本骨格として有する化学構造をいい、メラミン、ベンゾグアナミン又はそれらの縮合物をも含む概念である。2個以上のN−アルコキシメチルアミノ基を有する化合物の具体例としては、N,N,N’,N’,N’’,N’’−ヘキサ(アルコキシメチル)メラミン、N,N,N’,N’−テトラ(アルコキシメチル)ベンゾグアナミン、N,N,N’,N’−テトラ(アルコキシメチル)グリコールウリル等を挙げることができる。
【0123】
これらの重合性化合物のうち、3価以上の脂肪族ポリヒドロキシ化合物と(メタ)アクリル酸を反応させて得られる多官能(メタ)アクリレート、カプロラクトン変性された多官能(メタ)アクリレート、多官能ウレタン(メタ)アクリレート、カルボキシル基を有する多官能(メタ)アクリレート、N,N,N’,N’,N’’,N’’−ヘキサ(アルコキシメチル)メラミン、N,N,N’,N’−テトラ(アルコキシメチル)ベンゾグアナミンが好ましい。3価以上の脂肪族ポリヒドロキシ化合物と(メタ)アクリル酸を反応させて得られる多官能(メタ)アクリレートの中では、トリメチロールプロパントリアクリレート、ペンタエリスリトールトリアクリレート、ジペンタエリスリトールペンタアクリレート、ジペンタエリスリトールヘキサアクリレートが、カルボキシル基を有する多官能(メタ)アクリレートの中では、ペンタエリスリトールトリアクリレートと無水こはく酸を反応させて得られる化合物、ジペンタエリスリトールペンタアクリレートと無水こはく酸を反応させて得られる化合物が、着色層の強度が高く、着色層の表面平滑性に優れ、かつ未露光部の基板上及び遮光層上に地汚れ、膜残り等を発生し難い点で特に好ましい。
本発明において、(B)重合性化合物は、単独で又は2種以上を混合して使用することができる。
【0124】
本発明における(B)重合性化合物の含有量は、(A)着色剤100質量部に対して、10〜1,000質量部が好ましく、更に100〜800質量部、更に200〜700質量部、特に300〜600質量部が好ましい。このような態様とすることで、硬化性、アルカリ現像性を良好にすることができる。
【0125】
−(C)バインダー樹脂−
本発明の着色組成物には、バインダー樹脂を含有せしめることができる。これにより、着色組成物のアルカリ可溶性、基板への結着性、保存安定性等を高めることができる。バインダー樹脂としては、特に限定されるものではないが、カルボキシル基、フェノール性水酸基等の酸性官能基を有する樹脂であることが好ましい。中でも、カルボキシル基を有する重合体(以下、「カルボキシル基含有重合体」という。)が好ましく、例えば、1個以上のカルボキシル基を有するエチレン性不飽和単量体(以下、「不飽和単量体(c1)」という。)と他の共重合可能なエチレン性不飽和単量体(以下、「不飽和単量体(c2)」という。)との共重合体を挙げることができる。
【0126】
不飽和単量体(c1)としては、前記カルボキシル基を有するエチレン性不飽和単量体と同様のものを挙げることができる。また、不飽和単量体(c1)は、単独で又は2種以上を混合して使用することができる。
【0127】
また、不飽和単量体(c2)としては、例えば、N−位置換マレイミド、芳香族ビニル化合物、(メタ)アクリル酸エステル、ビニルエーテル、重合体分子鎖の末端にモノ(メタ)アクリロイル基を有するマクロモノマー等を挙げることができ、これらの具体例としては、前述と同様のものを挙げることができる。また、不飽和単量体(c2)は、単独で又は2種以上を混合して使用することができる。
【0128】
不飽和単量体(c1)と不飽和単量体(c2)の共重合体において、該共重合体中の不飽和単量体(b1)の共重合割合は、好ましくは5〜50質量%、更に好ましくは10〜40質量%である。このような範囲で不飽和単量体(c1)を共重合させることにより、アルカリ現像性及び保存安定性に優れた着色組成物を得ることができる。
【0129】
不飽和単量体(c1)と不飽和単量体(c2)の共重合体の具体例としては、例えば、特開平7−140654号公報、特開平8−259876号公報、特開平10−31308号公報、特開平10−300922号公報、特開平11−174224号公報、特開平11−258415号公報、特開2000−56118号公報、特開2004−101728号公報等に開示されている共重合体を挙げることができる。
【0130】
また、本発明においては、例えば、特開平5−19467号公報、特開平6−230212号公報、特開平7−207211号公報、特開平09−325494号公報、特開平11−140144号公報、特開2008−181095号公報等に開示されているように、側鎖に(メタ)アクリロイル基等の重合性不飽和結合を有するカルボキシル基含有重合体を、バインダー樹脂として使用することもできる。
【0131】
本発明におけるバインダー樹脂は、ゲルパーミエーションクロマトグラフィー(以下、GPCと略す。)(溶出溶媒:テトラヒドロフラン)で測定したポリスチレン換算の重量平均分子量(Mw)が、通常、1,000〜100,000、好ましくは3,000〜50,000である。このような態様とすることで、耐熱性、耐溶剤性、被膜特性、電気特性、パターン形状、解像度をより一層良好にすることができる。
【0132】
また、本発明におけるバインダー樹脂の重量平均分子量(Mw)と、数平均分子量(Mn)との比(Mw/Mn)は、好ましくは1.0〜5.0、より好ましくは1.0〜3.0である。なお、ここでいう、Mnは、GPC(溶出溶媒:テトラヒドロフラン)で測定したポリスチレン換算の数平均分子量である。
【0133】
本発明におけるバインダー樹脂は、公知の方法により製造することができるが、例えば、特開2003−222717号公報、特開2006−259680号公報、国際公開第07/029871号パンフレット等に開示されている方法により、その構造やMw、Mw/Mnを制御することもできる。
【0134】
本発明において、バインダー樹脂は、単独で又は2種以上を混合して使用することができる。
【0135】
本発明において、バインダー樹脂の含有量は、(A)着色剤100質量部に対して、通常、10〜1,000質量部、好ましくは50〜800質量部、より好ましくは100〜650質量部、更に好ましくは200〜500質量部である。このような態様とすることで、耐熱性、耐溶剤性、アルカリ現像性、着色組成物の保存安定性、色度特性をより一層良好にすることができる。
【0136】
−光重合開始剤−
本発明の着色組成物には、光重合開始剤を含有せしめることができる。これにより、着色組成物に感放射線性を付与することができる。本発明に用いる光重合開始剤は、可視光線、紫外線、遠紫外線、電子線、X線等の放射線の露光により、(B)重合性化合物の重合を開始しうる活性種を発生する化合物である。
【0137】
このような光重合開始剤としては、例えば、チオキサントン系化合物、アセトフェノン系化合物、ビイミダゾール系化合物、トリアジン系化合物、O−アシルオキシム系化合物、オニウム塩系化合物、ベンゾイン系化合物、ベンゾフェノン系化合物、α−ジケトン系化合物、多核キノン系化合物、ジアゾ系化合物、イミドスルホナート系化合物等を挙げることができる。
【0138】
本発明において、光重合開始剤は、単独で又は2種以上を混合して使用することができる。光重合開始剤としては、チオキサントン系化合物、アセトフェノン系化合物、ビイミダゾール系化合物、トリアジン系化合物、O−アシルオキシム系化合物の群から選ばれる少なくとも1種が好ましい。
【0139】
本発明における好ましい光重合開始剤のうち、チオキサントン系化合物の具体例としては、チオキサントン、2−クロロチオキサントン、2−メチルチオキサントン、2−イソプロピルチオキサントン、4−イソプロピルチオキサントン、2,4−ジクロロチオキサントン、2,4−ジメチルチオキサントン、2,4−ジエチルチオキサントン、2,4−ジイソプロピルチオキサントン等を挙げることができる。
【0140】
また、アセトフェノン系化合物の具体例としては、2−メチル−1−〔4−(メチルチオ)フェニル〕−2−モルフォリノプロパン−1−オン、2−ベンジル−2−ジメチルアミノ−1−(4−モルフォリノフェニル)ブタン−1−オン、2−(4−メチルベンジル)−2−(ジメチルアミノ)−1−(4−モルフォリノフェニル)ブタン−1−オン等を挙げることができる。
【0141】
また、ビイミダゾール系化合物の具体例としては、2,2'−ビス(2−クロロフェニル)−4,4',5,5'−テトラフェニル−1,2'−ビイミダゾール、2,2'−ビス(2,4−ジクロロフェニル)−4,4',5,5'−テトラフェニル−1,2'−ビイミダゾール、2,2'−ビス(2,4,6−トリクロロフェニル)−4,4',5,5'−テトラフェニル−1,2'−ビイミダゾール等を挙げることができる。
【0142】
なお、光重合開始剤としてビイミダゾール系化合物を用いる場合、水素供与体を併用することが、感度を改良することができる点で好ましい。ここでいう「水素供与体」とは、露光によりビイミダゾール系化合物から発生したラジカルに対して、水素原子を供与することができる化合物を意味する。水素供与体としては、例えば、2−メルカプトベンゾチアゾール、2−メルカプトベンゾオキサゾール等のメルカプタン系水素供与体、4,4'−ビス(ジメチルアミノ)ベンゾフェノン、4,4'−ビス(ジエチルアミノ)ベンゾフェノン等のアミン系水素供与体を挙げることができる。本発明において、水素供与体は、単独で又は2種以上を混合して使用することができるが、1種以上のメルカプタン系水素供与体と1種以上のアミン系水素供与体とを組み合わせて使用することが、さらに感度を改良することができる点で好ましい。
【0143】
また、トリアジン系化合物の具体例としては、2,4,6−トリス(トリクロロメチル)−s−トリアジン、2−メチル−4,6−ビス(トリクロロメチル)−s−トリアジン、2−〔2−(5−メチルフラン−2−イル)エテニル〕−4,6−ビス(トリクロロメチル)−s−トリアジン、2−〔2−(フラン−2−イル)エテニル〕−4,6−ビス(トリクロロメチル)−s−トリアジン、2−〔2−(4−ジエチルアミノ−2−メチルフェニル)エテニル〕−4,6−ビス(トリクロロメチル)−s−トリアジン、2−〔2−(3,4−ジメトキシフェニル)エテニル〕−4,6−ビス(トリクロロメチル)−s−トリアジン、2−(4−メトキシフェニル)−4,6−ビス(トリクロロメチル)−s−トリアジン、2−(4−エトキシスチリル)−4,6−ビス(トリクロロメチル)−s−トリアジン、2−(4−n−ブトキシフェニル)−4,6−ビス(トリクロロメチル)−s−トリアジン等のハロメチル基を有するトリアジン系化合物を挙げることができる。
【0144】
また、O−アシルオキシム系化合物の具体例としては、1,2−オクタンジオン,1−〔4−(フェニルチオ)フェニル〕−,2−(O−ベンゾイルオキシム)、エタノン,1−[9−エチル−6−(2−メチルベンゾイル)−9H−カルバゾール−3−イル]−,1−(O−アセチルオキシム)、エタノン,1−〔9−エチル−6−(2−メチル−4−テトラヒドロフラニルメトキシベンゾイル)−9H−カルバゾール−3−イル〕−,1−(O−アセチルオキシム)、エタノン,1−〔9−エチル−6−{2−メチル−4−(2,2−ジメチル−1,3−ジオキソラニル)メトキシベンゾイル}−9H−カルバゾール−3−イル〕−,1−(O−アセチルオキシム)等を挙げることができる。O−アシルオキシム系化合物の市販品としては、NCI−831、NCI−930(以上、株式会社ADEKA社製)等を使用することもできる。
【0145】
本発明において、アセトフェノン系化合物等のビイミダゾール系化合物以外の光重合開始剤を用いる場合には、増感剤を併用することもできる。このような増感剤としては、例えば、4,4'−ビス(ジメチルアミノ)ベンゾフェノン、4,4'−ビス(ジエチルアミノ)ベンゾフェノン、4−ジエチルアミノアセトフェノン、4−ジメチルアミノプロピオフェノン、4−ジメチルアミノ安息香酸エチル、4−ジメチルアミノ安息香酸2−エチルヘキシル、2,5−ビス(4−ジエチルアミノベンザル)シクロヘキサノン、7−ジエチルアミノ−3−(4−ジエチルアミノベンゾイル)クマリン、4−(ジエチルアミノ)カルコン等を挙げることができる。
【0146】
本発明において、光重合開始剤の含有量は、(B)重合性化合物100質量部に対して、0.01〜120質量部が好ましく、特に1〜100質量部が好ましい。このような態様とすることで、硬化性、被膜特性を良好にすることができる。
【0147】
−溶媒−
本発明の着色組成物は、(A)及び(B)成分、並びに任意的に加えられる他の成分を含有するものであるが、通常、溶媒を配合して液状組成物として調製される。
溶媒としては、着色組成物を構成する(A)及び(B)成分や他の成分を分散又は溶解し、かつこれらの成分と反応せず、適度の揮発性を有するものである限り、適宜に選択して使用することができる。
【0148】
このような溶媒のうち、例えば、
エチレングリコールモノメチルエーテル、エチレングリコールモノエチルエーテル、エチレングリコールモノ−n−プロピルエーテル、エチレングリコールモノ−n−ブチルエーテル、ジエチレングリコールモノメチルエーテル、ジエチレングリコールモノエチルエーテル、ジエチレングリコールモノ−n−プロピルエーテル、ジエチレングリコールモノ−n−ブチルエーテル、トリエチレングリコールモノメチルエーテル、トリエチレングリコールモノエチルエーテル、プロピレングリコールモノメチルエーテル、プロピレングリコールモノエチルエーテル、プロピレングリコールモノ−n−プロピルエーテル、プロピレングリコールモノ−n−ブチルエーテル、ジプロピレングリコールモノメチルエーテル、ジプロピレングリコールモノエチルエーテル、ジプロピレングリコールモノ−n−プロピルエーテル、ジプロピレングリコールモノ−n−ブチルエーテル、トリプロピレングリコールモノメチルエーテル、トリプロピレングリコールモノエチルエーテル等の(ポリ)アルキレングリコールモノアルキルエーテル類;
【0149】
乳酸メチル、乳酸エチル等の乳酸アルキルエステル類;
メタノール、エタノール、プロパノール、ブタノール、イソプロパノール、イソブタノール、t−ブタノール、オクタノール、2−エチルヘキサノール、シクロヘキサノール等の(シクロ)アルキルアルコール類;
ジアセトンアルコール等のケトアルコール類;
【0150】
エチレングリコールモノメチルエーテルアセテート、エチレングリコールモノエチルエーテルアセテート、ジエチレングリコールモノメチルエーテルアセテート、ジエチレングリコールモノエチルエーテルアセテート、プロピレングリコールモノメチルエーテルアセテート、プロピレングリコールモノエチルエーテルアセテート、ジプロピレングリコールモノメチルエーテルアセテート、3−メトキシブチルアセテート、3−メチル−3−メトキシブチルアセテート等の(ポリ)アルキレングリコールモノアルキルエーテルアセテート類;
ジエチレングリコールジメチルエーテル、ジエチレングリコールメチルエチルエーテル、ジエチレングリコールジエチルエーテル、テトラヒドロフラン等の他のエーテル類;
メチルエチルケトン、シクロヘキサノン、2−ヘプタノン、3−ヘプタノン等のケトン類;
【0151】
プロピレングリコールジアセテート、1,3−ブチレングリコールジアセテート、1,6−ヘキサンジオールジアセテート等のジアセテート類;
3−メトキシプロピオン酸メチル、3−メトキシプロピオン酸エチル、3−エトキシプロピオン酸メチル、3−エトキシプロピオン酸エチル、エトキシ酢酸エチル、3−メチル−3−メトキシブチルプロピオネート等のアルコキシカルボン酸エステル類;
酢酸エチル、酢酸n−プロピル、酢酸i−プロピル、酢酸n−ブチル、酢酸i−ブチル、ぎ酸n−アミル、酢酸i−アミル、プロピオン酸n−ブチル、酪酸エチル、酪酸n−プロピル、酪酸i−プロピル、酪酸n−ブチル、ピルビン酸メチル、ピルビン酸エチル、ピルビン酸n−プロピル、アセト酢酸メチル、アセト酢酸エチル、2−オキソブタン酸エチル等の他のエステル類;
トルエン、キシレン等の芳香族炭化水素類;
N,N−ジメチルホルムアミド、N,N−ジメチルアセトアミド、N−メチルピロリドン等のアミド又はラクタム類
等を挙げることができる。
【0152】
これらの溶媒のうち、溶解性、顔料分散性、塗布性等の観点から、プロピレングリコールモノメチルエーテル、プロピレングリコールモノエチルエーテル、エチレングリコールモノメチルエーテルアセテート、プロピレングリコールモノメチルエーテルアセテート、プロピレングリコールモノエチルエーテルアセテート、3−メトキシブチルアセテート、ジエチレングリコールジメチルエーテル、ジエチレングリコールメチルエチルエーテル、シクロヘキサノン、2−ヘプタノン、3−ヘプタノン、1,3−ブチレングリコールジアセテート、1,6−ヘキサンジオールジアセテート、乳酸エチル、3−メトキシプロピオン酸エチル、3−エトキシプロピオン酸メチル、3−エトキシプロピオン酸エチル、3−メチル−3−メトキシブチルプロピオネート、酢酸n−ブチル、酢酸i−ブチル、ぎ酸n−アミル、酢酸i−アミル、プロピオン酸n−ブチル、酪酸エチル、酪酸i−プロピル、酪酸n−ブチル、ピルビン酸エチル等が好ましい。
本発明において、溶媒は、単独で又は2種以上を混合して使用することができる。
【0153】
溶媒の含有量は、特に限定されるものではないが、着色組成物中の溶媒を除いた各成分の合計濃度が、5〜50質量%となる量が好ましく、10〜40質量%となる量がより好ましい。このような態様とすることにより、分散性、安定性の良好な着色剤分散液、並びに塗布性、安定性の良好な着色組成物を得ることができる。
【0154】
−添加剤−
本発明の着色組成物は、必要に応じて、種々の添加剤を含有することもできる。
添加剤としては、例えば、ガラス、アルミナ等の充填剤;ポリビニルアルコール、ポリ(フロオロアルキルアクリレート)類等の高分子化合物;フッ素系界面活性剤、シリコン系界面活性剤等の界面活性剤;ビニルトリメトキシシラン、ビニルトリエトキシシラン、ビニルトリス(2−メトキシエトキシ)シラン、N−(2−アミノエチル)−3−アミノプロピルメチルジメトキシシラン、N−(2−アミノエチル)−3−アミノプロピルトリメトキシシラン、3−アミノプロピルトリエトキシシラン、3−グリシドキシプロピルトリメトキシシラン、3−グリシドキシプロピルメチルジメトキシシラン、2−(3,4−エポキシシクロヘキシル)エチルトリメトキシシラン、3−クロロプロピルメチルジメトキシシラン、3−クロロプロピルトリメトキシシラン、3−メタクリロイロキシプロピルトリメトキシシラン、3−メルカプトプロピルトリメトキシシラン等の密着促進剤;2,2−チオビス(4−メチル−6−t−ブチルフェノール)、2,6−ジ−t−ブチルフェノール等の酸化防止剤;2−(3−t−ブチル−5−メチル−2−ヒドロキシフェニル)−5−クロロベンゾトリアゾール、アルコキシベンゾフェノン類等の紫外線吸収剤;ポリアクリル酸ナトリウム等の凝集防止剤;マロン酸、アジピン酸、イタコン酸、シトラコン酸、フマル酸、メサコン酸、2−アミノエタノール、3−アミノ−1−プロパノール、5−アミノ−1−ペンタノール、3−アミノ−1,2−プロパンジオール、2−アミノ−1,3−プロパンジオール、4−アミノ−1,2−ブタンジオール等の残渣改善剤;こはく酸モノ〔2−(メタ)アクリロイロキシエチル〕、フタル酸モノ〔2−(メタ)アクリロイロキシエチル〕、ω−カルボキシポリカプロラクトンモノ(メタ)アクリレート等の現像性改善剤等を挙げることができる。
【0155】
着色硬化膜及びその形成方法
本発明の着色硬化膜は、本発明の着色組成物を用いて形成されたものであり、具体的には、カラーフィルタを構成する各色画素、ブラックマトリックス、ブラックスペーサー等を意味する。
【0156】
以下、表示素子や固体撮像素子を構成するカラーフィルタに用いられる着色硬化膜及びその形成方法について説明する。
カラーフィルタを製造する方法としては、第一に次の方法が挙げられる。まず、基板の表面上に、必要に応じて、画素を形成する部分を区画するように遮光層(ブラックマトリックス)を形成する。次いで、この基板上に、例えば、青色の本発明の感放射線性着色組成物の液状組成物を塗布したのち、プレベークを行って溶媒を蒸発させ、塗膜を形成する。次いで、この塗膜にフォトマスクを介して露光したのち、アルカリ現像液を用いて現像して、塗膜の未露光部を溶解除去する。その後、ポストベークすることにより、青色の画素パターン(着色硬化膜)が所定の配列で配置された画素アレイを形成する。
【0157】
次いで、緑色又は赤色の各感放射線性着色組成物を用い、上記と同様にして、各感放射線性着色組成物の塗布、プレベーク、露光、現像及びポストベークを行って、緑色の画素アレイ及び赤色の画素アレイを同一基板上に順次形成する。これにより、青色、緑色及び赤色の三原色の画素アレイが基板上に配置されたカラーフィルタが得られる。但し、本発明においては、各色の画素を形成する順序は、上記のものに限定されない。
【0158】
ブラックマトリックスは、スパッタや蒸着により成膜したクロム等の金属薄膜を、フォトリソグラフィー法を利用して所望のパターンとすることにより形成することができるが、黒色の着色剤が分散された感放射線性着色組成物を用いて、上記画素の形成の場合と同様にして形成することもできる。
【0159】
カラーフィルタを形成する際に使用される基板としては、例えば、ガラス、シリコン、ポリカーボネート、ポリエステル、芳香族ポリアミド、ポリアミドイミド、ポリイミド等を挙げることができる。
また、これらの基板には、所望により、シランカップリング剤等による薬品処理、プラズマ処理、イオンプレーティング、スパッタリング、気相反応法、真空蒸着等の適宜の前処理を施しておくこともできる。
【0160】
感放射線性着色組成物を基板に塗布する際には、スプレー法、ロールコート法、回転塗布法(スピンコート法)、スリットダイ塗布法(スリット塗布法)、バー塗布法等の適宜の塗布法を採用することができるが、特に、スピンコート法、スリットダイ塗布法を採用することが好ましい。
【0161】
プレベークは、通常、減圧乾燥と加熱乾燥を組み合わせて行われる。減圧乾燥は、通常50〜200Paに到達するまで行う。また、加熱乾燥の条件は、通常70〜110℃で1〜10分程度である。
【0162】
塗布厚さは、乾燥後の膜厚として、通常、0.6〜8μm、好ましくは1.2〜5μmである。
【0163】
画素及びブラックマトリックスから選ばれる少なくとも1種を形成する際に使用される放射線の光源としては、例えば、キセノンランプ、ハロゲンランプ、タングステンランプ、高圧水銀灯、超高圧水銀灯、メタルハライドランプ、中圧水銀灯、低圧水銀灯等のランプ光源やアルゴンイオンレーザー、YAGレーザー、XeClエキシマーレーザー、窒素レーザー等のレーザー光源等を挙げることができる。露光光源として、紫外線LEDを使用することもできる。波長は、190〜450nmの範囲にある放射線が好ましい。
【0164】
放射線の露光量は、一般的には10〜10,000J/m2が好ましい。
また、アルカリ現像液としては、例えば、炭酸ナトリウム、炭酸水素ナトリウム、水酸化ナトリウム、水酸化カリウム、テトラメチルアンモニウムハイドロオキサイド、コリン、1,8−ジアザビシクロ−[5.4.0]−7−ウンデセン、1,5−ジアザビシクロ−[4.3.0]−5−ノネン等の水溶液が好ましい。
【0165】
アルカリ現像液には、例えば、メタノール、エタノール等の水溶性有機溶剤や界面活性剤等を適量添加することもできる。なお、アルカリ現像後は、通常、水洗する。
現像処理法としては、シャワー現像法、スプレー現像法、ディップ(浸漬)現像法、パドル(液盛り)現像法等を適用することができる。現像条件は、常温で5〜300秒が好ましい。
【0166】
ポストベークの条件は、通常180〜280℃で10〜60分程度である。
このようにして形成された画素の膜厚は、通常0.5〜5μm、好ましくは1.0〜3μmである。
【0167】
また、カラーフィルタを製造する第二の方法として、特開平7−318723号公報、特開2000−310706号公報等に開示されている、インクジェット方式により各色の画素を得る方法を採用することができる。この方法においては、まず、基板の表面上に、遮光機能も兼ねた隔壁を形成する。次いで、形成された隔壁内に、例えば、青色の熱硬化性着色組成物の液状組成物を、インクジェット装置により吐出したのち、プレベークを行って溶媒を蒸発させる。次いで、この塗膜を必要に応じて露光したのち、ポストベークすることにより硬化させ、青色の画素パターンを形成する。
【0168】
次いで、緑色又は赤色の各熱硬化性着色組成物を用い、上記と同様にして、緑色の画素パターン及び赤色の画素パターンを同一基板上に順次形成する。これにより、青色、緑色及び赤色の三原色の画素パターンが基板上に配置されたカラーフィルタが得られる。但し、本発明においては、各色の画素を形成する順序は、上記のものに限定されない。
【0169】
なお、隔壁は、遮光機能のみならず、区画内に吐出された各色の熱硬化性着色組成物が混色しないための機能も果たしているため、上記した第一の方法で使用されるブラックマトリックスに比べ、膜厚が厚い。したがって、隔壁は、通常、黒色感放射線性組成物を用いて形成される。
カラーフィルタを形成する際に使用される基板や放射線の光源、また、プレベークやポストベークの方法や条件は、上記した第一の方法と同様である。このようにして、インクジェット方式により形成された画素の膜厚は、隔壁の高さと同程度である。
【0170】
このようにして得られた画素パターン上に、必要に応じて保護膜を形成した後、透明導電膜をスパッタリングにより形成する。透明導電膜を形成した後、更にスペーサーを形成してカラーフィルタとすることもできる。スペーサーは、通常、感放射線性組成物を用いて形成されるが、遮光性を有するスペーサー(ブラックスペーサー)とすることもできる。この場合、黒色の着色剤が分散された感放射線性着色組成物が用いられるが、本発明の着色組成物は、かかるブラックスペーサーの形成にも好適に使用することができる。
【0171】
本発明の感放射線性着色組成物は、上記カラーフィルタに用いられる各色画素、ブラックマトリックス、ブラックスペーサー等のいずれの着色硬化膜の形成においても、好適に用いることができる。
このようにして形成された本発明の着色硬化膜を含むカラーフィルタは、輝度及び色純度が極めて高いため、カラー液晶表示素子、カラー撮像管素子、カラーセンサー、有機EL表示素子、電子ペーパー等に極めて有用である。なお、後述する表示素子は、本発明の感放射線性着色組成物を用いて形成された着色硬化膜を少なくとも1以上具備するものであればよい。
【0172】
表示素子
本発明の表示素子は、本発明の着色硬化膜を具備するものである。表示素子としては、カラー液晶表示素子、有機EL表示素子、電子ペーパー等を挙げることができる。
本発明の着色硬化膜を具備するカラー液晶表示素子は、透過型でも反射型でもよく、適宜の構造を採ることができる。例えば、カラーフィルタを、薄膜トランジスター(TFT)が配置された駆動用基板とは別の基板上に形成して、駆動用基板とカラーフィルタを形成した基板とが、液晶層を介して対向した構造を採ることができる。また、薄膜トランジスター(TFT)が配置された駆動用基板の表面上にカラーフィルタを形成した基板と、ITO(錫をドープした酸化インジュウム)電極を形成した基板とが、液晶層を介して対向した構造を採ることもできる。後者の構造は、開口率を格段に向上させることができ、明るく高精細な液晶表示素子が得られるという利点を有する。なお、後者の構造を採用する場合、ブラックマトリックスやブラックスペーサーは、カラーフィルタを形成した基板側、並びにITO電極あるいはIZO電極を形成した基板側のどちらに形成されていても良い。
【0173】
本発明の着色硬化膜を具備するカラー液晶表示素子は、冷陰極蛍光管(CCFL:Cold Cathode Fluorescent Lamp)の他、白色LEDを光源とするバックライトユニットを具備することができる。白色LEDとしては、例えば、赤色LEDと緑色LEDと青色LEDを組み合わせて混色により白色光を得る白色LED、青色LEDと赤色LEDと緑色蛍光体を組み合わせて混色により白色光を得る白色LED、青色LEDと赤色発光蛍光体と緑色発光蛍光体を組み合わせて混色により白色光を得る白色LED、青色LEDとYAG系蛍光体の混色により白色光を得る白色LED、青色LEDと橙色発光蛍光体と緑色発光蛍光体を組み合わせて混色により白色光を得る白色LED、紫外線LEDと赤色発光蛍光体と緑色発光蛍光体と青色発光蛍光体を組み合わせて混色により白色光を得る白色LED等を挙げることができる。
【0174】
本発明の着色硬化膜を具備するカラー液晶表示素子には、TN(Twisted Nematic)型、STN(Super Twisted Nematic)型、IPS(In−Planes Switching)型、VA(Vertical Alignment)型、OCB(Optically Compensated Birefringence)型等の適宜の液晶モードが適用できる。
【0175】
また、本発明の着色硬化膜を具備する有機EL表示素子は、適宜の構造をとることが可能であり、例えば、特開平11−307242号公報に開示されている構造を挙げることができる。
また、本発明の着色硬化膜を具備する電子ペーパーは、適宜の構造をとることが可能であり、例えば、特開2007−41169号公報に開示されている構造を挙げることができる。
【実施例】
【0176】
以下、実施例を挙げて、本発明の実施の形態をさらに具体的に説明する。但し、本発明は、下記実施例に限定されるものではない。
【0177】
<本着色剤の合成>
合成例1
〔単量体(1)の合成〕
下記スキームにしたがって、下記の手順により単量体(1)を合成した。
【0178】
【化29】
【0179】
攪拌子を入れた300mLの4つ口フラスコに攪拌機、温度計、滴下漏斗、還流冷却管を取り付け、水100g、亜二チオン酸ナトリウム14g(0.080モル)、トリエチルアミン12.1g(0.12モル)を入れた。次に、攪拌しながら、滴下漏斗から、5−ブロモ−4,4,5,5−テトラフルオロペンタン−1−オール9.56g(0.040モル)をアセトニトリル80gに溶かした溶液を15分で滴下した。次に、オイルバスで加熱し、窒素気流下内温60℃で5時間反応させた。反応終了後25℃まで冷却し、15分間静置したところ反応液は二層に分離した。有機層を分取し、さらに水層にアセトニトリル100gを加えて有機層を分取して先の有機層と合わせ、減圧下濃縮した。得られた残渣を40℃で減圧乾燥することにより、粘稠なオイル状物質を11.4g(0.0350モル、収率:88%)得た。1H及び19F−NMRスペクトル(溶剤:重水素化メタノール)測定により、得られた化合物は上記式(1−a)で表わされる化合物であることを確認した。
【0180】
次いで、上記で得られた化合物(1−a)に水80mLとタングステン酸ナトリウム二水和物60mg、30質量%過酸化水素水4.5gを加えて60℃で1時間加熱した。反応終了後、25℃まで冷却し、亜硫酸ナトリウムを加えて過剰の過酸化水素を分解して検圧濃縮した。残渣をメタノールに溶解し不溶物を濾別して得られた溶液を減圧下で濃縮した。得られた残渣を50℃で減圧乾燥することにより、粘稠なオイル状物質を9.90g(0.0290モル、収率:83%)得た。1H及び19F−NMRスペクトル(溶剤:重水素化メタノール)測定により、得られた化合物は上記式(1−b)で表わされる化合物であることを確認した。
【0181】
300mLの3つ口フラスコに攪拌機、温度計、滴下漏斗を取り付け、上記で得られた化合物(1−b)とジクロロメタン50mLを加え、窒素気流下5℃に冷却し攪拌した。その後、トリエチルアミン4.33g(0.043モル)を加えしばらく攪拌し、メタクリル酸クロリド3.58g(0.034モル)を15分で滴下した。その後、内温を25℃まで加熱し6時間攪拌した。その後、反応混合物を水100gに注いで有機層を分離し、水層をジクロロメタン100gで抽出した。有機層を合わせ、水150gを用いて3回洗浄し、減圧下濃縮した。得られた残渣をカラムクロマトグラフィーにより精製して粘稠なオイル状物質を10.1g(0.0247モル、収率:85%)得た。1H及び19F−NMRスペクトル(溶剤:重水素化クロロホルム)測定により、得られた化合物は上記式で表わされる化合物であることを確認した。これを単量体(1)とする。
【0182】
〔重合体(1)の合成〕
【0183】
【化30】
【0184】
単量体(1)4.50g、メタクリル酸メチル5.50g、α−チオグリセロール0.713g、シクロヘキサノン20gを混合して均一に溶解させた。この溶液を窒素気流下、撹拌しながら100℃に加熱した。同温度で撹拌しながら、α, α'−アゾビスイソブチロニトリル0.541gをシクロヘキサノン10.4gに溶解させた溶液を30分かけて滴下し、滴下終了後さらに同温度で3時間撹拌を続けた。反応溶液を室温まで冷却した後、アセトン60gを加えて均一な溶液とし、これをヘキサン1.1Lに滴下した。生成した析出物を濾取し、ヘキサンで洗浄した。得られた固体を50℃にて減圧乾燥して、上記構造式で表わされる重合体を8.90g得た。得られた重合体はMwが7,900、Mnが3,600であり、1H−NMRスペクトル(溶剤:重水素化アセトン)測定によりxとyの割合がモル比(x/y)で1/4.91であることを確認した。これを重合体(1)とする。
【0185】
〔化合物Aの合成〕
下記スキームにしたがって、下記の手順により化合物Aを合成した。
【0186】
【化31】
【0187】
前記の重合体(1)2.0gをアセトン40mLに溶解した。次に、重合体(1)の共重合比より算出される、単量体(1)由来の構成単位のモル数に対して当モル量の化合物(1−c)を加え、室温で1時間撹拌した。その後、反応溶液をイオン交換水400mLに滴下し、生じた析出物を濾取して十分に水洗した。得られた固体を60℃で12時間減圧乾燥して着色固体を2.83g得た。1H及び19F−NMRスペクトル(溶剤:重水素化アセトン)測定により、得られた固体は上記式で表わされる化合物であることを確認した。これを化合物Aとする。
【0188】
合成例2
〔単量体(2)の合成〕
下記スキームにしたがって、下記の手順により単量体(2)を合成した。
【0189】
【化32】
【0190】
撹拌子を入れた300mLの3つ口フラスコに温度計及び滴下ロートを取り付け、窒素雰囲気下、メタクリル酸クロリド23.0g(0.220モル)とジクロロメタン160mLとを加えて均一に溶解させた。この溶液を0℃に冷却し、30.4g(0.300モル)のトリエチルアミンを加えさらに攪拌した。次いで、34.4g(0.200モル)の2−ヨウ化エタノールを30分かけて滴下した後、反応溶液を室温まで昇温して2時間攪拌した。その後、反応溶液を300mLの飽和塩化アンモニウム水溶液に注いで有機層を分離し、水層をジクロロメタン200mLで2回抽出した。有機層を合わせ、飽和炭酸水素ナトリウム水溶液500g、飽和食塩水500gで順次洗浄後、減圧下濃縮した。得られた残渣を30℃で減圧乾燥して粘稠なオイル状物質を44.6g(0.186モル、収率:93%)得た。1H−NMRスペクトル(溶剤:重水素化クロロホルム)測定により、得られた化合物は上記式(2−a)で表わされる化合物であることを確認した。
【0191】
撹拌子を入れた300mLの3つ口フラスコに温度計および滴下ロートを取り付け、化合物(1−b)8.53g(0.0250モル)、ジクロロメタン40mLを加えた。これを20℃に冷却して攪拌した。次いで、トリエチルアミン3.79g(0.0375モル)を加えしばらく攪拌した。次に、化合物(2−a)9.60g(0.0400モル)を15分かけて滴下した後、内温を25℃まで加熱し6時間攪拌した。反応終了後、反応溶液を水100gに注いで有機層を分離し、水層をジクロロメタン100gで抽出した。有機層を合わせ、水150gを用いて3回洗浄後、減圧下濃縮した。得られた残渣をカラムクロマトグラフィーにより精製して粘稠なオイル状物質を8.84g(0.0195モル、収率:78%)得た。1H及び19F−NMRスペクトル(溶剤:重水素化クロロホルム)測定により、得られた化合物は上記式で表わされる化合物であることを確認した。これを単量体(2)とする。
【0192】
〔重合体(2)の合成〕
【0193】
【化33】
【0194】
重合体(1)の合成において、単量体(1)に代えて単量体(2)を4.98g用いたこと以外は合成例1と同様にして、上記構造式で表される重合体(2)を9.21g得た。得られた重合体(2)はMwが7,100、Mnが3,300であり、1H−NMRスペクトル(溶剤:重水素化アセトン)測定により、xとyの割合がモル比(x/y)で1/4.45であることを確認した。
【0195】
〔化合物Bの合成〕
【0196】
【化34】
【0197】
化合物Aの合成において、重合体(1)に代えて重合体(2)を用いたこと以外は合成例1と同様にして、上記構造式で表される化合物Bを2.80g得た。
【0198】
合成例3
〔重合体(3)の合成〕
【0199】
【化35】
【0200】
重合体(1)の合成において、単量体(1)に代えてビニルスルホン酸トリエチルアミン塩を2.39g用いたこと以外は合成例1と同様にして、上記構造式で表される重合体(3)を7.51g得た。得られた重合体(3)はMwが8,200、Mnが3,800であり、1H−NMRスペクトル(溶剤:重水素化アセトン)測定により、xとyの割合がモル比(x/y)で1/4.66であることを確認した。
【0201】
〔化合物Cの合成〕
下記スキームにしたがって、下記の手順により化合物Cを合成した。
【0202】
【化36】
【0203】
化合物Aの合成において、重合体(1)に代えて重合体(3)を用いたこと以外は合成例1と同様にして、上記構造式で表される化合物Cを3.06g得た。化合物Cは本着色剤ではないが、形式的に<本着色剤の合成>の項に記載した。
【0204】
合成例4
〔重合体(4)の合成〕
【0205】
【化37】
【0206】
重合体(1)の合成において、メタクリル酸メチルに代えてメタクリル酸グリシジルを用いたこと以外は合成例1と同様にして、上記構造式で表される重合体(4)を9.34g得た。得られた重合体(4)はMwが7,500、Mnが3,400であり、H−NMRスペクトル(溶剤:重水素化アセトン)測定により、xとyの割合がモル比(x/y)で1/3.47であることを確認した。
【0207】
〔化合物Dの合成〕
【0208】
【化38】
【0209】
化合物Aの合成において、重合体(1)に代えて重合体(4)を用いたこと以外は合成例1と同様にして、上記構造式で表される化合物Dを2.81g得た。
【0210】
合成例5
〔重合体(5)の合成〕
【0211】
【化39】
【0212】
重合体(1)の合成において、メタクリル酸メチルに代えてメタクリル酸 2−(0−[1'−メチルプロピリデンアミノ]カルボキシアミノ)エチル(昭和電工株式会社製;カレンズMOI−BM)を用いたこと以外は合成例1と同様にして、上記構造式で表される重合体(5)を9.48g得た。得られた重合体(5)はMwが7,800、Mnが3,500であり、H−NMRスペクトル(溶剤:重水素化アセトン)測定により、xとyの割合がモル比(x/y)で1/2.03であることを確認した。
【0213】
〔化合物Eの合成〕
【0214】
【化40】
【0215】
化合物Aの合成において、重合体(1)に代えて重合体(5)を用いたこと以外は合成例1と同様にして、上記構造式で表される化合物Eを2.83g得た。
【0216】
合成例6
〔化合物Fの合成〕
【0217】
【化41】
【0218】
化合物Aの合成において、単量体(1)由来の構成単位のモル数に対して当モル量の化合物(1−c)に代えて、単量体(1)由来の構成単位のモル数に対して0.5モル当量の化合物(1−d)を用いたこと以外は合成例1と同様にして、上記構造式で表される化合物Fを2.71g得た。
【0219】
合成例7
〔化合物Gの合成〕
【0220】
【化42】
【0221】
化合物Aの合成において、化合物(1−c)に代え化合物(1−e)を用いたこと以外は合成例1と同様にして、上記構造式で表される化合物Gを2.50g得た。
【0222】
比較合成例1
下記スキームにしたがって、下記の手順により染料Aを合成した。
【0223】
【化43】
【0224】
撹拌子を入れた100mL三角フラスコに、化合物(1−c)6.92g(0.0100モル)、ビス(トリフルオロメタンスルホニル)イミドリチウム3.45g(0.0120モル)を仕込み、クロロホルム50mL、イオン交換水25mLを添加して室温にて2時間撹拌した。その後水層を分離除去し、有機層をイオン交換水で2回洗浄した。有機層を減圧下にて濃縮後、残渣を50℃にて12時間減圧乾燥することにより、固体を7.27g(0.00950モル、収率:95%)を得た。1H及び19F−NMRスペクトル(溶剤:重水素化クロロホルム)測定により、得られた化合物は上記式で表わされる化合物であることを確認した。これを染料Aとする。
【0225】
<着色剤溶液の調製>
調製例1
化合物Aを10質量部と、プロピレングリコールモノメチルエーテルアセテート90質量部とを混合し、着色剤溶液(A−1)を調製した。
【0226】
調製例2
化合物Bを10質量部と、プロピレングリコールモノメチルエーテルアセテート90質量部とを混合し、着色剤溶液(A−2)を調製した。
【0227】
調製例3
化合物Cを10質量部と、プロピレングリコールモノメチルエーテルアセテート90質量部とを混合し、着色剤溶液(A−3)を調製した。
【0228】
調製例4
重合体Dを10質量部と、プロピレングリコールモノメチルエーテルアセテート90質量部とを混合し、重合体溶液(A−4)を調製した。
【0229】
調製例5
重合体Eを10質量部と、プロピレングリコールモノメチルエーテルアセテート90質量部とを混合し、重合体溶液(A−5)を調製した。
【0230】
調製例6
重合体Fを10質量部と、プロピレングリコールモノメチルエーテルアセテート90質量部とを混合し、重合体溶液(A−6)を調製した。
【0231】
調製例7
重合体Gを10質量部と、プロピレングリコールモノメチルエーテルアセテート90質量部とを混合し、重合体溶液(A−7)を調製した。
【0232】
調製例8
染料Aを10質量部と、プロピレングリコールモノメチルエーテルアセテート90質量部とを混合し、染料溶液(A)を調製した。
【0233】
<バインダー樹脂の合成>
合成例8
冷却管と攪拌機を備えたフラスコに、プロピレングリコールモノメチルエーテルアセテート100質量部を仕込んで窒素置換した。80℃に加熱して、同温度で、プロピレングリコールモノメチルエーテルアセテート100質量部、メタクリル酸20質量部、スチレン10質量部、ベンジルメタクリレート5質量部、2−ヒドロキシエチルメタクリレート15質量部、2−エチルヘキシルメタクリレート23質量部、N−フェニルマレイミド12質量部、こはく酸モノ(2−アクリロイロキシエチル)15質量部及び2,2'−アゾビス(2,4−ジメチルバレロニトリル)6質量部の混合溶液を1時間かけて滴下し、この温度を保持して2時間重合した。その後、反応溶液の温度を100℃に昇温させ、さらに1時間重合することにより、バインダー樹脂溶液(固形分濃度33質量%)を得た。得られたバインダー樹脂は、Mwが12,200、Mnが6,500であった。このバインダー樹脂を「バインダー樹脂(C1)」とする。
【0234】
<顔料分散液の調製>
調製例9
着色剤としてC.I.ピグメントブルー15:6/C.I.ピグメントバイオレット23=80/20(質量比)の混合物12質量部、分散剤としてBYK2001(Disperbyk :ビックケミー(BYK)社製)3.8質量部(固形分換算)、ソルスパース12000:0.8質量部、及び溶媒としてプロピレングリコールモノメチルエーテルアセテート83.4質量部を、ビーズミルにより処理して顔料分散液(a−1)を調製した。
【0235】
<着色組成物の調製及び評価>
実施例1
着色剤として顔料分散液(a−1)13.5質量部及び着色剤溶液(A−1)7.2質量部、(C)バインダー樹脂としてバインダー樹脂(C1)溶液30.0質量部、(B)重合性化合物としてジペンタエリスリトールヘキサアクリレートとジペンタエリスリトールペンタアクリレートの混合物(日本化薬株式会社製、商品名KAYARAD DPHA)を13.7質量部、光重合開始剤として2−ベンジル−2−ジメチルアミノ−1−(4−モルフォリノフェニル)ブタン−1−オン(商品名イルガキュア369、チバ・スペシャルティー・ケミカルズ社製)を1.8質量部及びNCI−930(株式会社ADEKA社製)0.1質量部、フッ素系界面活性剤としてメガファックF−554(DIC株式会社製)0.05質量部、及び溶媒としてプロピレングリコールモノメチルエーテルアセテートを混合して、固形分濃度20質量%の着色組成物(S−1)を調製した。
【0236】
耐熱性の評価
着色組成物(S−1)を、ナトリウムイオンの溶出を防止するSiO2膜が表面に形成されたソーダガラス基板上に、スピンコーターを用いて塗布した後、90℃のホットプレートで2分間プレベークを行って、膜厚2.5μmの塗膜を形成した。
次いで、この基板を室温に冷却したのち、高圧水銀ランプを用い、フォトマスクを介して、各塗膜に365nm、405nm及び436nmの各波長を含む放射線を400J/m2の露光量で露光した。その後、これらの基板に対して、23℃の0.04質量%水酸化カリウム水溶液からなる現像液を現像圧1kgf/cm2(ノズル径1mm)で吐出することにより、90秒間シャワー現像を行った。その後、この基板を超純水で洗浄し、風乾した後、更に200℃のクリーンオーブン内で30分間ポストベークを行うことにより、基板上にドットパターンを形成した。
得られたドットパターンについて、カラーアナライザー(大塚電子(株)製MCPD2000)を用い、C光源、2度視野にて、CIE表色系における色度座標値(x,y)及び刺激値(Y)を測定した。
次いで、上記基板を230℃で90分間追加ベークをした後に、色度座標値(x,y)及び刺激値(Y)を測定し、追加ベーク前後での色変化、即ちΔE*abを評価した。その結果、ΔE*abの値が3.0未満の場合を「○」、3.0以上5.0未満の場合を「△」、5.0以上の場合を「×」として評価した。評価結果を表1に示す。なお、ΔE*ab値が小さい程、耐熱性が良好であると言える。
【0237】
耐溶剤性の評価
着色組成物(S−1)を、ナトリウムイオンの溶出を防止するSiO2膜が表面に形成されたソーダガラス基板上に、スピンコーターを用いて塗布した後、90℃のホットプレートで2分間プレベークを行って、膜厚2.5μmの塗膜を形成した。
次いで、この基板を室温に冷却したのち、高圧水銀ランプを用い、フォトマスクを介して、各塗膜に365nm、405nm及び436nmの各波長を含む放射線を400J/m2の露光量で露光した。その後、これらの基板に対して、23℃の0.04質量%水酸化カリウム水溶液からなる現像液を現像圧1kgf/cm2(ノズル径1mm)で吐出することにより、90秒間シャワー現像を行った。その後、この基板を超純水で洗浄し、風乾した後、更に230℃のクリーンオーブン内で30分間ポストベークを行うことにより、基板上にドットパターンを形成した。その後、上記基板を、80℃のプロピレングリコールモノメチルエーテルアセテートに40分浸漬した。
浸漬前後の色度座標値(x、y)及び刺激値(Y)を測定し、浸漬前後での色変化、即ちΔE*abを評価した。その結果、ΔE*abの値が1.5未満の場合を「◎」、1.5以上3.0未満の場合を「○」、3.0以上5.0未満の場合を「△」、5.0以上の場合を「×」として評価した。評価結果を表1に示す。なお、ΔE*ab値が小さい程、耐溶剤性が良好であると言える。
【0238】
実施例2〜6及び比較例1〜2
実施例1において、着色剤並びにバインダー樹脂溶液の種類及び量を表1に示すように変更した以外は、実施例1と同様にして着色組成物を調製した。そして、得られた着色組成物について実施例1と同様にして評価を行った。評価結果を表1に示す。
【0239】
【表1】