(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
【発明を実施するための形態】
【0011】
(第1実施形態)
本発明の各実施形態に係るリニアガイド装置用給油装置を備えたリニアガイド装置を添付図面に基づいて説明する。
本明細書においては、リニアガイド装置の案内レールを水平にした状態において、案内レールの長手方向に対して水平方向へ直角に交差する方向を幅方向とし、長手方向及び幅方向に対して垂直に交差する方向を上下方向とする。また、案内レールの長手方向へ延在する上側の面、下側の面及び幅方向側の面をそれぞれ上面、下面及び側面とし、長手方向の端部側の面を端面とする。
【0012】
はじめに、本実施形態に係るリニアガイド装置用給油装置を備えたリニアガイド装置の全体的な構成について
図1を参照して説明する。
図1に示す本実施形態のリニアガイド装置101は、数値制御工作機や数値制御測定機等に好適なものであり、案内レール2と、案内レール2に沿って移動可能なスライダ31とからなる。
案内レール2は、略四角型の部材からなり、その両側面には長手方向へ延びる転動溝2aが2本ずつ形成されている。
スライダ31は、スライダ本体4と、スライダ本体4の長手方向、即ち
図1Bの左右方向の両端部に、スライダ本体4側から順に取り付けられたエンドキャップ5、潤滑剤容器7、及びサイドシール8とからなる。
【0013】
スライダ本体4は、
図1A及び
図7に示すように、案内レール2の長手方向へ延在し断面が略コ字状をした金属製部材からなり、案内レール2に跨嵌されている。
図7Bに示すように、スライダ本体4において案内レール2の両側面に対向する部分、即ち両側の脚部の内側面には、案内レール2の転動溝2aと対向して長手方向へ延びる転動溝4aが2本ずつ形成されている。
斯かるスライダ本体4の転動溝4aと案内レール2の転動溝2aとは、不図示の転動体の転動路を形成している。なお、この転動路には転動体として複数のボールが装填されている。
図7Bに示すように、スライダ本体4の両側の脚部には、スライダ本体4の長手方向、即ち
図7Bの紙面垂直方向へ貫通しており、断面が円形の戻し路4bが2本ずつ形成されている。また、スライダ本体4の両端面にはネジ穴11、12が2箇所ずつ形成されている。
【0014】
エンドキャップ5は、樹脂製の部材であって、
図2に示すように略コ字状をしている。エンドキャップ5の正面、即ちスライダ本体4側の面には、
図2Aに示すように、断面が円形の方向転換路5aが両側の脚部に2箇所ずつ形成されている。方向転換路5aは、上記転動路と戻し路4bとを連通するものであり、
図6Aに示すように半円弧状をしている。また、エンドキャップ5には、スライダ本体4のネジ穴11、12に対向する位置に、円形の貫通穴13、14がそれぞれ形成されている。なお、エンドキャップ5は樹脂製に限らず、金属製でもよい。
【0015】
上記構成により、スライダ31は複数の転動体が上記転動路内を転動することによって案内レール2上を直線運動することができる。なお、複数の転動体は転動路、方向転換路5a、及び戻し路4bを循環することが可能である。
サイドシール8は、
図8に示すように略コ字状をした樹脂製又はゴム製の板部材であって、案内レール2の両側面及び上面に跨嵌する形状をしている。斯かる形状のサイドシール8により、スライダ31を案内レール2上で直線運動させた際に、案内レール2の両側面や上面に付着している塵、埃、ゴミ等の異物を除去することができる。なお、サイドシール8には、スライダ本体4のネジ穴12に対向する位置に、円形の貫通穴9がそれぞれ形成されている。
【0016】
次に、本実施形態において最も特徴的なリニアガイド装置用給油装置の構成について説明する。
本実施形態に係るリニアガイド装置用給油装置は、スライダ31内へ潤滑剤を給油するものであり、エンドキャップ5と、潤滑剤容器7と、後述する潤滑部材40とによって構成されている。
エンドキャップ5の方向転換路5aには、
図6Aに示すように、スライダ31の長手方向、即ち
図6Aの左右方向へ延びる円形の貫通孔16が形成されている、即ち
図2Aも参照。
【0017】
潤滑剤容器7は、潤滑部材40を保持するためのものであり、エンドキャップ5と略同じ外形をした樹脂製の厚板部材であって、
図3に示すように略コ字状をしている。
図4Aに示すように、潤滑剤容器7の背面、即ちスライダ31の長手方向外側の面には、エンドキャップ5の4つの貫通孔16に対向する位置に、略立方体形状の空間を形成する凹部18がそれぞれ設けられている。
潤滑剤容器7の正面には、
図3Aに示すように、4つの凹部18に対向し、かつエンドキャップ5の4つの貫通孔16に対向する位置に、筒状部19がそれぞれ一体的に形成されている。筒状部19は、
図6Aに示すように、スライダ31の長手方向内側、即ち
図6Aの右方向へ延びており、エンドキャップ5における方向転換路5aの貫通孔16に嵌合する円筒形状をしている。筒状部19内の円形開口、即ち中空部は、対向する凹部18の底面18aを貫通している。
なお、潤滑剤容器7には、スライダ本体4の2つのネジ穴12に対向する位置に、円形の貫通穴20がそれぞれ形成されている。また、潤滑剤容器7の両側の脚部の内側面には、スライダ31内への異物の侵入を防止するために、案内レール2の転動溝2aの形状に合わせて設けられたリップ部7aが備えられている。
【0018】
潤滑剤容器7の凹部18には、
図6Aに示すように、潤滑剤を含浸した潤滑部材40が保持されている。潤滑部材40は、潤滑剤を多量に含んだ多孔質成形体からなる第2潤滑部材42と、第2潤滑部材42よりも高密度の多孔質成形体からなる第1潤滑部材41とで構成されている。第2潤滑部材42は、凹部18に嵌合する略立方体形状をしている。第1潤滑部材41は、凹部18に嵌合する略板形状をしており、凹部18の底面18aに配置されている。第1潤滑部材41には、潤滑剤容器7の筒状部19の円形開口に嵌合する円柱状の突起部43が一体的に形成されている。即ち、潤滑部材40は、全体として凹部18に嵌合する略立方体形状をしており、潤滑剤容器7の凹部18と筒状部19とによって形成される空間内に隙間なく充填されている。
潤滑部材40を保持した凹部18は、
図3Cに示すように、潤滑剤容器7の背面側より蓋22が取り付けられて密封される。蓋22は、
図5に示すように、潤滑剤容器7と同じ樹脂製の板部材からなり、潤滑剤容器7の2つの凹部18を一度に密封するために長方形状をしている。なお、蓋22には、潤滑剤容器7の貫通穴20に対向する位置に円形の貫通穴23が形成されている。
【0019】
上記構成により、
図6Aに示すように、潤滑部材40を保持した潤滑剤容器7をエンドキャップ5に取り付けた際に、エンドキャップ5の方向転換路5aの貫通孔16に潤滑剤容器7の筒状部19を嵌合させることができる。そして、潤滑剤容器7の筒状部19と該筒状部19の円形開口に嵌合した潤滑部材40の突起部43とを方向転換路5a内へ露呈させることができる。
ここで、スライダ本体4の長手方向、即ち
図6の左右方向における潤滑剤容器7の筒状部19と潤滑部材40の突起部43の長さは、筒状部19及び突起部43とエンドキャップ5の方向転換路5aの転動溝との間に段差が生じないようにそれぞれ設計されている。そして、潤滑剤容器7の筒状部19の先端面及び潤滑部材40の突起部43の先端面は、
図6Bに示すようにエンドキャップ5の方向転換路5aの転動溝に沿った曲面形状にそれぞれ加工されている。
【0020】
以下、本実施形態におけるスライダ31の組み立て手順について
図9を参照して説明する。
なお、予め潤滑剤容器7は、各凹部18に潤滑部材40を挿入し、背面側より蓋22を取り付けて密封しておく。
【0021】
手順1:
図9Aに示すように、スライダ本体4の長手方向の両端部に、エンドキャップ5を方向転換路5aが形成された面、即ち正面を向けて配置する。そして、ネジ24をエンドキャップ5の貫通穴13を通してスライダ本体4のネジ穴11に固定する。貫通穴13及びネジ穴11は
図9において不図示である。これにより、スライダ本体4に対するエンドキャップ5の取り付けが達成される。
【0022】
手順2:
図9Bに示すように、各エンドキャップ5に対して、スライダ本体4の長手方向外側から、潤滑剤容器7を筒状部19が形成された面、即ち正面を向けて取り付ける。筒状部19は
図9において不図示である。このとき、エンドキャップ5の各貫通孔16に潤滑剤容器7の筒状部19をそれぞれ挿入させる。これにより、エンドキャップ5に対して潤滑剤容器7の位置決めが達成される。
【0023】
手順3:
図9Cに示すように、各潤滑剤容器7に対して、スライダ本体4の長手方向外側からサイドシール8を配置する。そして、ネジ26をサイドシール8の貫通穴9、潤滑剤容器7の蓋22の貫通穴23、潤滑剤容器7の貫通穴20、及びエンドキャップ5の貫通穴14を順に通してスライダ本体4のネジ穴12に固定する。貫通穴9、20及びネジ穴12は
図9において不図示である。これにより、スライダ本体4に対する潤滑剤容器7及びサイドシール8の取り付けが達成される。
【0024】
以上の組み立て手順により、スライダ31を容易に組み立てることができる。特に、手順2において、上述のようにエンドキャップ5の4つの貫通孔16に潤滑剤容器7の筒状部19をそれぞれ挿入することで、エンドキャップ5に対する潤滑剤容器7の位置決めを行うことができる。このため、手順3において、スライダ本体4に対して潤滑剤容器7をサイドシール8とともに共通のネジ26で容易に固定することができる。また、上述のように潤滑剤容器7の4つの凹部18に潤滑部材40がそれぞれ保持される構成であるため、潤滑剤容器7によって4つの潤滑部材40を一度に取り扱うことができる。このため、スライダ31の組み立てが容易になるだけでなく、スライダ31のメンテナンスも容易となる。また、潤滑部材40を個々に扱うことができるため、スライダ31へ偏りなく給油することができる。
【0025】
以上の組み立て手順に基づいて組み立てたスライダ31において、潤滑剤容器7の筒状部19の先端及び潤滑部材40の突起部43の先端は、
図6に示すようにエンドキャップ5の方向転換路5a内に貫通孔16から露呈し、この貫通孔16内に方向転換路5aの転動溝に沿って曲面を形成している。より詳細には、潤滑剤容器7の筒状部19の先端面及び潤滑部材40の突起部43の先端面は、方向転換路5aの転動溝とともに単一の曲面を形成している。
この構成により、スライダ31を案内レール2上で直線運動させた際に、方向転換路5aを転動する転動体が潤滑部材40の突起部43の先端面に接触して潤滑剤を塗布されることにより、スライダ31内へ給油することができる。
【0026】
また、前述のように潤滑剤容器7の筒状部19の先端及び潤滑部材40の突起部43の先端が、方向転換路5aの転動溝に沿って曲面を形成していることにより、転動体が方向転換路5a内をスムーズに転動することができる。このため、上記従来技術のように転動体が潤滑部材40に衝突し、潤滑部材40が破損してその破片が方向転換路5aと転動体との間に異物として入り込んでしまうようなことがない。また、上記従来技術のように方向転換路5aと潤滑部材40との間に段差が生じ、この段差に転動体が衝突してちどり走行するおそれもない。したがって、転動体と方向転換路5aの損傷を防ぎ、スライダ31の故障や動作不良を防止することができる。
【0027】
また、前述のように潤滑部材40は、多孔質成形体からなる第2潤滑部材42と、第2潤滑部材42よりも高密度の多孔質成形体からなる第1潤滑部材41とで構成されている。このため、第1潤滑部材41は、潤滑剤を保持できる単位体積当たりの量が第2潤滑部材42よりも小さい。斯かる構成により、第2潤滑部材42は潤滑剤を保持する保持部として機能することができる。また、第1潤滑部材41は、第2潤滑部材42に保持されている潤滑剤がエンドキャップ5の方向転換路5a内へ流出することを防止しながら、適量の潤滑剤を転動体に塗布する塗布部として機能することができる。したがって、潤滑剤を短期間に大量消費することを抑え、給油を長期間安定して行うことができる。
【0028】
なお、第1、第2潤滑部材41、42の材料は、上述のような密度の異なる多孔質成形体に限られない。第1潤滑部材41が潤滑剤を保持できる単位体積当たりの量が第2潤滑部材42よりも小さければよく、第1、第2潤滑部材41、42を異なる材料で構成してもよい。また、第1潤滑部材41を多孔質成形体で構成し、第2潤滑部材42としてグリースや潤滑油等の潤滑剤そのものを潤滑剤容器7の凹部18に充填する構成とすることもできる。
【0029】
(第2実施形態)
図10に示す第2実施形態に係るリニアガイド装置用給油装置を備えたリニアガイド装置102について、上記第1実施形態と同様の構成については同じ符号を付して説明を省略し、異なる構成について詳細に説明する。
本実施形態に係るリニアガイド装置用給油装置は、エンドキャップ5と、潤滑剤容器70と、潤滑部材400とによって構成されている。
【0030】
本実施形態における潤滑剤容器70には、上記第1実施形態における潤滑剤容器7の筒状部19に代えて、
図11A及び
図12Aに示すように、4つの凹部18に対向し、かつエンドキャップ5の4つの貫通孔16に対向する位置に、該貫通孔16と同径の円形開口25がそれぞれ形成されている。
図13Aに示すように、潤滑剤容器70の凹部18に保持される潤滑部材400は、上記第1実施形態における潤滑剤部材40の突起部43に代えて、スライダ30の長手方向内側、即ち
図13Aの右方向へ延在し潤滑剤容器70の円形開口25から外部へ突き出る突起部430が第1潤滑部材410に一体的に形成されている。突起部430は、
図13Bに示すように、潤滑剤容器70の円形開口25及びエンドキャップ5の貫通孔16に嵌合する円柱形状をしている。
【0031】
上記構成により、潤滑部材400を保持した潤滑剤容器70をエンドキャップ5に取り付けた際に、
図13Bに示すように、エンドキャップ5の方向転換路5aの貫通孔16に潤滑部材400の突起部430を嵌合させることができる。そして、潤滑部材400の突起部430を方向転換路5a内へ露呈させることができる。
ここで、スライダ本体4の長手方向、即ち
図13Bの左右方向における潤滑部材400の突起部430の長さは、該突起部430とエンドキャップ5の方向転換路5aの転動溝との間に段差が生じないように設計されている。そして、潤滑部材400の突起部430の先端面は、
図13Bに示すようにエンドキャップ5の方向転換路5aの転動溝に沿った曲面形状に加工されている。
【0032】
以下、本実施形態におけるスライダ32の組み立て手順について
図14を参照して説明する。
なお、予め潤滑剤容器70は、各凹部18に潤滑部材400を挿入し、背面側より蓋22を取り付けて密封しておく。
手順1:上記第1実施形態におけるスライダ31の組み立て手順の手順1と同様である。
図14Aを参照。
【0033】
手順2:
図14Bに示すように、各エンドキャップ5に対して、スライダ本体4の長手方向外側から、潤滑剤容器70を円形開口25が形成された面、即ち正面を向けて取り付ける。円形開口25は
図14において不図示である。このとき、エンドキャップ5の各貫通孔16に潤滑部材400の突起部430をそれぞれ挿入させる。これにより、エンドキャップ5に対して潤滑剤容器70の位置決めが達成される。
手順3:上記第1実施形態におけるスライダ31の組み立て手順の手順3と同様である。
図14Cを参照。
【0034】
以上の組み立て手順により、スライダ32を容易に組み立てることができる。特に、手順2において、前述のようにエンドキャップ5の4つの貫通孔16に潤滑部材400の突起部430をそれぞれ挿入することで、エンドキャップ5に対する潤滑剤容器70の位置決めを行うことができる。このため、上記第1実施形態と同様の効果を奏することができる。
【0035】
以上の組み立て手順に基づいて組み立てたスライダ32において、潤滑部材400の突起部430の先端が、
図13Bに示すようにエンドキャップ5の方向転換路5a内に貫通孔16から露呈し、この貫通孔16内に方向転換路5aの転動溝に沿って曲面を形成している。より詳細には、潤滑部材400の突起部430の先端面は、方向転換路5aの転動溝とともに単一の曲面を形成している。この構成により、上記第1実施形態と同様の効果を奏することができる。
【0036】
特に、本実施形態における潤滑剤容器70は、上記第1実施形態における潤滑剤容器7の筒状部19を有していないため、筒状部19の加工精度に起因して筒状部19の先端と方向転換路5aとの間に僅かなガタも生じるおそれがない。これにより、転動体が方向転換路5a内をよりスムーズに転動することができる。したがって、転動体と方向転換路5aの損傷を効果的に防ぎ、スライダ32の故障や動作不良を効果的に防止することができる。
【0037】
本実施形態における潤滑部材400は、上記第1実施形態と同様に、多孔質成形体からなる第2潤滑部材42と、第2潤滑部材42よりも高密度の多孔質成形体からなる第1潤滑部材410とで構成されている。このため、上記第1実施形態と同様に、給油を長期間安定して行うことができる。
【0038】
本実施形態及び上記第1実施形態では、エンドキャップ5の方向転換路5aの貫通孔16は円形であり、これに対応するように、第1実施形態では潤滑剤容器7の筒状部19を円筒形状とし、潤滑部材40の突起部43を円柱形状としている。また、本実施形態では潤滑剤容器70に円形開口25を設け、潤滑部材400の突起部430を円柱形状としている。しかしこれに限られず、方向転換路5aの貫通孔16を例えば矩形とし、これに対応するように潤滑剤容器7、70及び潤滑部材40、400の各部を構成してもよい。
【0039】
また、本実施形態及び上記第1実施形態において潤滑剤容器7、70は、エンドキャップ5の方向転換路5aの4つの貫通孔16に対応して4つの潤滑部材40、400を備えている。しかしながらこれに限られず、例えば突起部43、430を2つ備えた潤滑部材を2つ用意し、この2つの潤滑部材を保持する2つの凹部を備えた潤滑剤容器を構成してもよい。
なお、潤滑剤容器7、70及び蓋22はともに樹脂製であるが、これに限られず金属製としてもよい。
【0040】
(第3実施形態)
図15に示す第3実施形態に係るリニアガイド装置用給油装置を備えたリニアガイド装置103について、上記第2実施形態と同様の構成については同じ符号を付して説明を省略し、異なる構成について詳細に説明する。
本実施形態に係るリニアガイド装置用給油装置は、エンドキャップ5と、潤滑剤容器71と、潤滑部材401とによって構成されている。
【0041】
本実施形態における潤滑剤容器71は、
図16Aに示すように、潤滑剤容器71の正面、即ちスライダ33の長手方向内側の面であって、潤滑剤容器71の胴部71aの中央位置に、後述するエンドキャップ5の2箇所の窪み5cに嵌合可能な略角柱形状の2つの突起71bが設けられている。
また、潤滑剤容器71には、上記第2実施形態における潤滑剤容器70の凹部18に代えて、
図17に示すように2つの凹部180が設けられている。凹部180は、上記第2実施形態における潤滑剤容器70の隣接する2つの凹部18をつなげて胴部の中央位置まで延在させた形状、即ちL字型をしている。
なお、潤滑剤容器71には、上記第2実施形態における潤滑剤容器70と同様の円形開口25が同位置に同数設けられている。
【0042】
図17Cに示すように、潤滑部材401の第2潤滑部材421は、潤滑剤容器71の凹部180に嵌合するように断面がL字型の略角柱形状をしている。不図示の第1潤滑部材は、凹部180に嵌合するL字型の略板形状をしており、凹部180の底面180aに配置されている。なお、第1潤滑部材には、上記第2実施形態における第1潤滑部材410の突起部430と同様の突起部が、潤滑剤容器71の円形開口25に嵌合するように2箇所に設けられている。
斯かる構成の潤滑部材401を保持した凹部180は、
図16Cに示すように、潤滑剤容器71の背面側より蓋220が取り付けられて密封される。なお、本実施形態における蓋220は、潤滑剤容器71の凹部180に合わせてL字型をしている。
【0043】
図2Bに示すように、エンドキャップ5には、胴部の中央位置にグリスニップル挿入用のねじ穴5bが形成されており、ねじ穴5bの周囲に2箇所の窪み5cが形成されている。この2箇所の窪み5cに潤滑剤容器71の2つの突起71bが嵌合することにより、エンドキャップ5に対して潤滑剤容器71の位置決めを行うことができる。
【0044】
以下、本実施形態におけるスライダ33の組み立て手順について
図18を参照して説明する。
なお、予め潤滑剤容器71は、各凹部180に潤滑部材401を挿入し、背面側より蓋220を取り付けて密封しておく。
手順1:上記第2実施形態におけるスライダ32の組み立て手順の手順1と同様である。
図18Aを参照。
【0045】
手順2:
図18Bに示すように、各エンドキャップ5に対して、スライダ本体4の長手方向外側から、潤滑剤容器71を円形開口25が形成された面、即ち正面を向けて取り付ける。このとき、エンドキャップ5の各窪み5cに潤滑剤容器71の突起71bをそれぞれ嵌合させるとともに、エンドキャップ5の各貫通孔16に潤滑部材401の突起部をそれぞれ挿入させる。これにより、エンドキャップ5に対して潤滑剤容器71の位置決めが達成される。
手順3:上記第2実施形態におけるスライダ32の組み立て手順の手順3と同様である。
図18Cを参照。
【0046】
以上の組み立て手順により、スライダ33を容易に組み立てることができ、上記第2実施形態と同様の効果を奏することができる。特に、本実施形態では手順2において、潤滑部材401の突起部に加えて、該突起部よりも硬質な潤滑剤容器71の突起71bを用いてエンドキャップ5に対する潤滑剤容器71の位置決めを行う。このため、位置決めを行った後に、エンドキャップ5に対して潤滑剤容器71が位置ずれすることを効果的に防止できる。また、突起71bは潤滑剤容器71の胴部71aの中央位置にまとめて備えられている。このため、手順2において突起71bをエンドキャップ5の窪み5cに嵌合させやすく、エンドキャップ5に対する潤滑剤容器71の位置決めをより容易に行うことができる。
【0047】
以上の組み立て手順に基づいて組み立てたスライダ33は、上記第2実施形態と同様の効果を奏することができる。特に、本実施形態における潤滑剤容器71の凹部180は、潤滑剤容器71の脚部から胴部71aの中央位置にわたってL字型に延在しているため、上記第1、2実施形態に比して多量の潤滑剤を保持した大きな潤滑部材401を保持することができる。このため、給油をより長期間安定して行うことができ、スライダ33の長寿命化を図ることができる。
【0048】
(第4実施形態)
図19に示す第4実施形態に係るリニアガイド装置用給油装置を備えたリニアガイド装置104について、上記第3実施形態と同様の構成については同じ符号を付して説明を省略し、異なる構成について詳細に説明する。
本実施形態に係るリニアガイド装置用給油装置は、エンドキャップ50と、潤滑剤容器72と、潤滑部材402とによって構成されている。
【0049】
図20に示すように、本実施形態におけるエンドキャップ50は、上記第3実施形態のエンドキャップ5において各方向転換路5aにそれぞれ設けられていた貫通孔16を、スライダ本体4側から見て隣り合う2つの方向転換路5aのうちの一方のみに備える構成としたものである。なお、この構成により、エンドキャップ50をスライダ本体4の両端部に取り付ける際に、いずれの端部にも共通して取り付けることが可能である。
詳細には、本実施形態におけるエンドキャップ50は、エンドキャップ50の4つの方向転換路5aのうち、スライダ本体4側から見て対角線上に位置する2つの方向転換路5aに貫通孔16が備えられている。
【0050】
図21に示すように、本実施形態における潤滑剤容器72は、上記第3実施形態の潤滑剤容器71において両側の脚部に2箇所ずつ設けられていた円形開口25を、上記エンドキャップ50の貫通孔16に対向するように各脚部に1箇所ずつ備えたものである。
【0051】
本実施形態における潤滑部材402の不図示の第1潤滑部材は、上記第3実施形態の第1潤滑部材に2箇所ずつ設けられていた突起部を、上記潤滑剤容器72の円形開口25に嵌合するように1箇所ずつ設けたものである。
【0052】
以上の構成の下、本実施形態におけるスライダ34は、上記第3実施形態と同様の組み立て手順によって容易に組み立てることができ、上記第3実施形態と同様の効果を奏することができる。
図23A〜
図23Cを参照。特に、本実施形態では、前述のように第1潤滑部材の突起部を1箇所のみとしている、即ち転動体に潤滑剤を塗布する部分を1つの潤滑部材402につき1箇所に限定している。これにより、給油をより長期間安定して行うことができ、スライダ34の長寿命化を最大限に図ることができる。また、方向転換路5a毎の給油量の偏りを少なくすることもできる。
【0053】
(第5実施形態)
図24に示す第5実施形態に係るリニアガイド装置用給油装置を備えたリニアガイド装置105について、上記第3実施形態と同様の構成については同じ符号を付して説明を省略し、異なる構成について詳細に説明する。
本実施形態に係るリニアガイド装置用給油装置は、エンドキャップ5と、潤滑剤容器73と、潤滑部材401とによって構成されている。
【0054】
本実施形態における潤滑剤容器73は、
図25及び
図26に示すように、潤滑剤容器73の正面、即ちスライダ35の長手方向内側の面であって、各円形開口25に対向する位置に円形凹部73aがそれぞれ設けられている。円形凹部73aは、後述するOリング45を嵌め込むための凹部であって、円形開口25と同芯かつ円形開口25よりも大径である。
【0055】
以下、本実施形態におけるスライダ35の組み立て手順について
図28を参照して説明する。
なお、予め潤滑剤容器73は、各凹部180に潤滑部材401を挿入し、背面側より蓋220を取り付けて密封しておく。
手順1:上記第3実施形態におけるスライダ33の組み立て手順の手順1と同様である。
図28Aを参照。
【0056】
手順2:潤滑剤容器73の各円形凹部73aにOリング45を嵌め込む。
図27を参照。そして、
図28Bに示すように、各エンドキャップ5に対して、スライダ本体4の長手方向外側から、潤滑剤容器73をOリング45が嵌め込まれた面、即ち正面を向けて取り付ける。Oリング45は
図28において不図示である。このとき、エンドキャップ5の各窪み5cに潤滑剤容器73の突起71bをそれぞれ嵌合させるとともに、エンドキャップ5の各貫通孔16に潤滑部材401の突起部430をそれぞれ挿入させる。これにより、エンドキャップ5に対して潤滑剤容器73の位置決めが達成される。
手順3:上記第3実施形態におけるスライダ33の組み立て手順の手順3と同様である。
図28Cを参照。
【0057】
以上の組み立て手順により、スライダ35を容易に組み立てることができ、上記第3実施形態と同様の効果を奏することができる。
また、以上の組み立て手順に基づいて組み立てたスライダ35は、上記第3実施形態と同様の効果を奏することができる。特に、本実施形態では、潤滑剤容器73の各円形凹部73aに嵌め込まれたOリング45により、各円形開口25を取り囲むように、潤滑剤容器73とエンドキャップ5との間を密閉することができる。このため、潤滑剤が潤滑剤容器73とエンドキャップ5の間からスライダ35外へ漏洩することを防止できる。したがって、スライダ35の周辺が潤滑剤で汚染されることを防止できるとともに、潤滑剤を不必要に消費することも防止できる。
【0058】
(第6実施形態)
図29に示す第6実施形態に係るリニアガイド装置用給油装置を備えたリニアガイド装置106について、上記第3実施形態と同様の構成については同じ符号を付して説明を省略し、異なる構成について詳細に説明する。
本実施形態に係るリニアガイド装置用給油装置は、エンドキャップ5と、潤滑剤容器74と、潤滑部材401とによって構成されている。
【0059】
図30に示すように、本実施形態における潤滑剤容器74は、上記第3実施形態における潤滑剤容器71において両側の脚部のリップ部7aを排除したものである。即ち、潤滑剤容器74における両側の脚部の内側面74aは、凹凸のない平面となっている。この構成により、潤滑剤容器74を案内レール2に対して、該案内レール2の上面側から挿入して跨嵌させることができる。
【0060】
以上の構成の下、本実施形態におけるスライダ36は、上記第3実施形態と同様の組み立て手順によって容易に組み立てることができ、上記第3実施形態と同様の効果を奏することができる。
図31A〜
図31Cを参照。特に、本実施形態では、前述のように潤滑剤容器74が両側の脚部の内側面74aにリップ部を有していないため、案内レール2に上面側から挿脱することができる。このため、スライダ36のメンテナンス等に際して、潤滑剤容器74のみを案内レール2から取り外して潤滑部材401の交換等を容易に行い、再度案内レール2に跨嵌させることができる。
【0061】
また、上記各実施形態では、潤滑剤容器7、70〜74の各凹部18、180に、潤滑剤を含浸した多孔質成形体からなる潤滑部材40、400〜402を保持する構成である。しかしながらこれに限られず、潤滑剤容器7、70〜74の各凹部18、180に、グリースや潤滑油等の潤滑剤そのものを保持する構成としてもよい。例えば、第1実施形態では、潤滑剤容器7の凹部18と筒状部19とによって形成される空間内に潤滑剤を充填する構成としてもよい。また、第2実施形態では、潤滑剤容器70の凹部18、円形開口25、及びエンドキャップ5における方向転換路5aの貫通孔16によって形成される空間内に潤滑剤を充填する構成としてもよい。
【0062】
また、上記各実施形態では、潤滑部材40、400〜402として潤滑剤を含浸した多孔質成形体を用いているが、これに限られず、潤滑部材40、400〜402として弾性変形可能な多孔質成形体(以下、「多孔質弾性体」という)に潤滑剤を含浸したものを用いることもできる。これにより、方向転換路5aを走行する転動体が潤滑部材40、400〜402に接触した際に、潤滑部材40、400〜402が弾性変形することができる。このため、潤滑部材40、400〜402の磨耗や方向転換路5a内への脱落を防止し、スライダ31〜36の作動性の悪化や寿命の低下を防止することができる。
【0063】
上記各実施形態では、潤滑剤容器7、70〜74の材料として合成樹脂、具体的には耐薬品性の高いポリエチレン(PE)、ポリプロピレン(PP)、ポリアミド(PA)、ポリアセタール(POM)を用いることが好ましい。なお、エンドキャップ5、50は、スライダ本体4へ取り付けやすいように弾性のあるPOMを材料として用いることが好ましい。このため、潤滑剤容器7、70〜74も、エンドキャップ5、50へ取り付けやすく、かつスライダ31〜36が案内レール2と案内レール2との継ぎ目を通過する際に断続的に発生する微小振動を吸収できるようにPOMを材料として用いることが特に好ましい。
【0064】
また、上記各実施形態では、潤滑部材40、400〜402の材料として高分子材料、特にポリプロピレンやポリエチレン等のポリオレフィンを用いることが好ましい。
ポリオレフィンは比重が1以下で軽量である。したがって、潤滑部材40、400〜402をポリオレフィンで構成することにより、潤滑部材40、400〜402から潤滑剤容器7、70〜74へかかる負荷が小さくなるため、潤滑剤容器7、70〜74に対して有効である。
また、ポリオレフィンは絶縁性が高い。したがって、スライダ31〜36が案内レール2上を走行した時にエンドキャップ5、50の方向転換路5aと転動体との摩擦により静電気が生じた場合でも、ポリオレフィンで構成した潤滑部材40、400〜402で絶縁することができる。このため、静電気によって潤滑剤容器7、70〜74が破損してしまうことを防止することができる。
【0065】
図6Bに示したように上記第1実施形態では、エンドキャップ5の方向転換路5aに露呈した潤滑剤容器7の筒状部19と潤滑部材40の突起部43は、方向転換路5aの転動溝と面一になっている。このため、潤滑部材40の突起部43は転動体が衝突しても破壊されることはない。POMは前述のように弾性があるため、潤滑部材40をPOMで構成すれば斯かる効果を最大限に発揮し、潤滑部材40を良好に保護することができる。なお、このことは第1実施形態以外の上記各実施形態においても同様である。
また、
図6Bに示したように潤滑剤容器7の筒状部19と潤滑部材40の突起部43とを嵌合させる構成の場合、軟質であるPEを潤滑部材40の材料に用いることで、筒状部19に突起部43を嵌めやすくなるので好ましい。なお、PEに剛性をもたせるために、PEにPPをコンパウンドすることがより好ましい。
【0066】
また、潤滑部材40、400〜402のその他の材料として羊毛等の動物の毛、アラミド、ガラス、セルロース、ナイロン、ポリエステル、ポリエーテル、ポリオレフィン、レーヨン等を用いることもできる。なお、潤滑部材40、400〜402はフェルトにして使用することも可能である。
【0067】
(第7実施形態)
図32に示す第7実施形態に係るリニアガイド装置用給油装置を備えたリニアガイド装置107について、上記第1実施形態と同様の構成については同じ符号を付して説明を省略し、異なる構成について詳細に説明する。
本実施形態に係るリニアガイド装置用給油装置は、
図33Aに示すように、エンドキャップ5と、潤滑剤容器7と、潤滑部材151とによって構成されている。
【0068】
本実施形態における潤滑部材151は、
図33Aに示すように、潤滑剤容器7の凹部18の底面に嵌合する厚板部151aと、厚板部151aに一体的に形成されており、潤滑剤容器7の筒状部19の中空部に嵌合する突起部211とからなる。厚板部151a及び突起部211は、潤滑剤を含浸した多孔質弾性体からなる。なお、突起部211の長さや形状は上記第1実施形態における潤滑部材40の突起部43と同様である。
【0069】
潤滑部材151は、
図33Aに示すように、潤滑剤容器7の凹部18に挿入された後、押さえ部品51がさらに挿入されることで凹部18内での位置が固定される。押さえ部品51は、
図34に示すように凹部18の側壁に内嵌する略角型の筒状部材であって、多孔質成形体からなる。潤滑部材151と押さえ部品51が挿入された凹部18には、潤滑剤49が隙間なく充填され、潤滑剤容器7の背面側より蓋22が取り付けられて密封される。なお、押さえ部品51の材料は多孔質成形体に限られない。
【0070】
以上の構成の下、本実施形態のリニアガイド装置107は、上記第1実施形態と同様の組み立て手順によってスライダ37を容易に組み立てることができ、上記第1実施形態と同様の効果を奏することができる。
図35A〜
図35Cを参照。
【0071】
前述のように、潤滑部材151は多孔質弾性体からなる。このため、
図33Aに示すように方向転換路5aを走行する転動体52が潤滑部材151の突起部211の先端面に接触し、当該先端面が転動体52から力を受けた際に、潤滑部材151は
図33Bに示すように弾性変形することができる。詳細には、潤滑部材151の厚板部151aがスライダ37の長手方向外側、即ち
図33Bの左方向へ撓み、突起部211が潤滑剤容器7の筒状部19内へ押し込まれる。このとき、潤滑部材151は潤滑剤容器7の凹部18内で押さえ部品51によって位置が固定されているため、位置ずれが生じることはない。斯かる構成により、潤滑部材151、特に突起部211の磨耗、損傷、及び方向転換路5a内への脱落を防止することができ、スライダ37の作動性の悪化や寿命の低下を効果的に防止することができる。なお、方向転換路5aを走行する転動体52が潤滑部材151の突起部211の先端面を通過した後は、潤滑部材151は
図33Cに示すように元の形状に復元する。
【0072】
また、前述のように、押さえ部品51は多孔質成形体からなる。このため、スライダ37への給油に伴い潤滑剤容器7の凹部18内の潤滑剤49が減少し、潤滑剤49と潤滑部材151が直接接触できない状態になった場合でも、スライダ37の姿勢にかかわらず押さえ部品51を介して潤滑剤49を潤滑部材151へ導くことができる。このため、凹部18内の潤滑剤49がなくなるまで、スライダ37への給油をより長期間安定して続けることができる。
【0073】
なお、本実施形態における潤滑部材151、押さえ部品51及び潤滑剤49は、上記第2実施形態のリニアガイド装置102に適用することもできる。
図36A〜
図36Cを参照。
また、本実施形態では潤滑剤容器7の凹部18に潤滑部材151と押さえ部品51が挿入された後、潤滑剤49が隙間なく充填される。しかしこれに限られず、潤滑剤49の代わりに潤滑剤を含浸した多孔質成形体や潤滑剤を含浸した多孔質弾性体を凹部18に隙間なく配置する構成としてもよい。なおこのことは、後述する第8実施形態においても同様である。
【0074】
(第8実施形態)
図37に示す第8実施形態に係るリニアガイド装置用給油装置を備えたリニアガイド装置108について、上記第2、第7実施形態と同様の構成については同じ符号を付して説明を省略し、異なる構成について詳細に説明する。
本実施形態に係るリニアガイド装置用給油装置は、
図38Aに示すように、エンドキャップ5と、潤滑剤容器70と、潤滑部材152とによって構成されている。
【0075】
本実施形態における潤滑部材152は、
図38Aに示すように、潤滑剤容器70の凹部18の底面に嵌合する厚板部152aと、スライダ32の長手方向内側、即ち
図38Aの右方向へ延在し潤滑剤容器70の円形開口25から外部へ突き出る突起部212とからなる。厚板部152aは潤滑剤を含浸した多孔質弾性体からなり、突起部212は厚板部152aよりも空孔率の小さい多孔質弾性体からなる。なお、突起部212の長さや形状は上記第2実施形態における潤滑部材400の突起部430と同様である。
【0076】
潤滑部材152は、
図38Aに示すように、潤滑剤容器70の凹部18に挿入された後、押さえ部品51がさらに挿入されることで凹部18内での位置が固定される。そして、潤滑部材152と押さえ部品51が挿入された凹部18には、潤滑剤49が隙間なく充填され、潤滑剤容器70の背面側より蓋22が取り付けられて密封される。
【0077】
以上の構成の下、本実施形態のリニアガイド装置108は、上記第2実施形態と同様の組み立て手順によってスライダ38を容易に組み立てることができ、上記第2、第7実施形態と同様の効果を奏することができる。
図39A〜
図39Cを参照。
【0078】
前述のように、潤滑部材152の厚板部152aは潤滑剤を含浸した多孔質弾性体からなり、突起部212は厚板部152aよりも空孔率の小さな多孔質弾性体からなる。このため、突起部212は潤滑剤を保持できる単位体積当たりの量が厚板部152aよりも小さい。この構成により、厚板部152aは潤滑剤を保持する保持部として機能することができる。また、突起部212は、厚板部152aに保持されている潤滑剤がエンドキャップ5の方向転換路5a内へ流出することを防止しながら、適量の潤滑剤を転動体に塗布する塗布部として機能することができる。したがって、潤滑剤を短期間に大量消費することを抑え、給油を長期間安定して行うことができる。
【0079】
なお、本実施形態における潤滑部材152、押さえ部品51及び潤滑剤49は、上記第1実施形態のリニアガイド装置101に適用することもできる。
図40A〜
図40Cを参照。また、突起部212の材料は多孔質弾性体に限られず、厚板部152aよりも空孔率の小さな多孔質成形体としてもよい。
【0080】
(第9実施形態)
図41に示す第9実施形態に係るリニアガイド装置用給油装置を備えたリニアガイド装置109について、上記第1実施形態と同様の構成については同じ符号を付して説明を省略し、異なる構成について詳細に説明する。
本実施形態に係るリニアガイド装置用給油装置は、
図42に示すように、エンドキャップ5と、潤滑剤容器56と、潤滑部材153とによって構成されている。
【0081】
本実施形態における潤滑部材153は、
図42に示すように、上記第1実施形態における第1潤滑部材41を潤滑剤容器56の凹部18に嵌合する略立方体形状とし、さらに突起部43をテーパー形状にしたものである。即ち、潤滑部材153の突起部213は、根元から先端へ向かって直径が小さくなっている。
潤滑剤容器56は、
図42に示すように、上記第1実施形態における潤滑剤容器7の筒状部19内の中空部を、潤滑部材153の突起部213が嵌合できるようにテーパー形状にしたものである。
【0082】
斯かる構成の下、本実施形態のリニアガイド装置109は、上記第1実施形態と同様の組み立て手順によってスライダ39を容易に組み立てることができ、上記第1実施形態と同様の効果を奏することができる。
図43A〜
図43Cを参照。
【0083】
前述のように、潤滑部材153は突起部213がテーパー形状をしている。このため、潤滑剤がエンドキャップ5の方向転換路5a内へ流出することを防止しながら、適量の潤滑剤を転動体に塗布することができる。したがって、潤滑剤を短期間に大量消費することを抑え、給油を長期間安定して行うことができる。
【0084】
なお、潤滑部材153の材料は多孔質成形体に限られず、多孔質弾性体としてもよい。これにより、上記第7実施形態のリニアガイド装置107と同様に、潤滑部材153、特に突起部213の磨耗や損傷を防止し、スライダ39の作動性の悪化や寿命の低下を効果的に防止することができる。
また、本実施形態における潤滑部材153は、上記第2実施形態のリニアガイド装置102に適用することもできる。
図44を参照。この場合、第2実施形態における潤滑剤容器70の円形開口25及びエンドキャップ5の貫通孔16を潤滑部材153の突起部213が嵌合できるようにテーパー形状とする。
【0085】
(第10実施形態)
図45に示す第10実施形態に係るリニアガイド装置用給油装置を備えたリニアガイド装置110について、上記第2実施形態と同様の構成については同じ符号を付して説明を省略し、異なる構成について詳細に説明する。
本実施形態に係るリニアガイド装置用給油装置は、
図46に示すように、エンドキャップ54と、潤滑剤容器57と、潤滑部材154とによって構成されている。
【0086】
本実施形態におけるエンドキャップ54は、
図46及び
図47に示すように、方向転換路5aにスライダ40の長手方向、即ち
図46の左右方向へ延びる円形の貫通孔164が3つ並んで形成されている。なお、3つの貫通孔164の直径はいずれも同じ大きさである。また、3つの貫通孔164が並ぶ方向、即ち
図47A中のC方向は、
図47Aにおいて方向転換路5aが延びる方向、即ち
図47A中のD方向に対して傾いている。なお、エンドキャップ54の4つの方向転換路5aに貫通孔164が3つずつ形成されているため、貫通孔164の合計数は12である。
【0087】
潤滑剤容器57は、上記第2実施形態における潤滑剤容器70の円形開口25に代えて、
図46及び
図48に示すように、エンドキャップ54の12個の貫通孔164に対向する位置に、該貫通孔164と同径の円形開口254がそれぞれ形成されている。そして、潤滑剤容器57は、
図46及び
図48Aに示すように、潤滑剤容器57の正面、即ちスライダ40の長手方向内側の面であって、各円形開口254に対向する位置に円形凹部44がそれぞれ設けられている。円形凹部44は、後述するOリング58を嵌め込むための凹部であって、円形開口254と同芯かつ円形開口254よりも大径である。斯かる構成の潤滑剤容器57の凹部18には、潤滑剤49が隙間なく充填され、背面側より蓋22が取り付けられる。
【0088】
潤滑部材154は、
図46に示すように、エンドキャップ54の貫通孔164に嵌合可能な円柱形状をしており、潤滑剤を含浸した多孔質成形体からなる。潤滑部材154の一方の先端面は、上記第2実施形態における潤滑部材400の突起部430の先端面と同様に、エンドキャップ54の方向転換路5aの転動溝に沿った曲面形状に加工されている。
なお、潤滑部材154の長さは、後述するように潤滑部材154にOリング58を装着してエンドキャップ54の貫通孔164に挿入した際に、潤滑部材154とエンドキャップ54の方向転換路5aの転動溝との間に段差が生じないように設計されている。具体的には、潤滑部材154の長さは、エンドキャップ54の貫通孔164の長さよりもOリング58の厚み分だけ大きく設計されている。
【0089】
以下、本実施形態におけるスライダ40の組み立て手順について
図49及び
図50を参照して説明する。
なお、予め潤滑剤容器57は、各凹部18に潤滑剤49を充填し、背面側より蓋22を取り付けておく。
手順1:
図49Aに示すように、樹脂製で断面が円形のOリング58に潤滑部材154を挿入する。そして、潤滑部材154の上述した曲面形状に加工された先端面と反対側の端部にOリング58を配置する。
【0090】
手順2:
図49Bに示すように、Oリング58を装着した潤滑部材154をエンドキャップ54の各貫通孔164に挿入する。これにより、潤滑部材154の先端は、エンドキャップ54の方向転換路5a内に貫通孔164から露呈し、この貫通孔164内に方向転換路5aの転動溝に沿って曲面を形成する。即ち、潤滑部材154の先端面は、方向転換路5aの転動溝とともに単一の曲面を形成する。
手順3:上記第2実施形態におけるスライダ32の組み立て手順の手順1と同様である。
図50Aを参照。
【0091】
手順4:
図50Bに示すように、各エンドキャップ54に対して、スライダ本体4の長手方向外側から、潤滑剤容器57を円形凹部44が形成された面、即ち正面を向けて取り付ける。円形凹部44は
図50において不図示である。このとき、
図49Cに示すように、潤滑剤容器57の各円形凹部44に、エンドキャップ54の各貫通孔164に挿入された潤滑部材154のOリング58を嵌め込む。これにより、エンドキャップ54に対して潤滑剤容器57の位置決めが達成される。
手順5:上記第2実施形態におけるスライダ32の組み立て手順の手順3と同様である。
図50Cを参照。
【0092】
本実施形態のリニアガイド装置110は、以上の組み立て手順によってスライダ40を容易に組み立てることができ、上記第2実施形態と同様の効果を奏することができる。
【0093】
前述のように、エンドキャップ54の各方向転換路5aに貫通孔164が3つずつ設けられている。このため、方向転換路5aを走行するそれぞれの転動体に対して3箇所ずつ潤滑剤を塗布することができ、スライダ40内への給油を安定して行うことができる。
【0094】
特に、
図47に示し前述したように、エンドキャップ54の方向転換路5aの3つの貫通孔164が並ぶ方向、即ち
図47A中のC方向は、
図47Aにおいて方向転換路5aが延びる方向、即ち
図47A中のD方向に対して傾いている。このため、方向転換路5aを走行する転動体に対して、方向転換路5aが延びる方向、即ち
図47A中のD方向に垂直な方向において位置が異なる3箇所に潤滑剤を塗布することができ、スライダ40内への給油をより安定して行うことができる。
【0095】
なお、エンドキャップ54の方向転換路5aの貫通孔164の数は3つに限られない。例えば、各方向転換路5aに2つ又は4つ以上の貫通孔164を設け、潤滑部材154と潤滑剤容器57を当該貫通孔164の数に対応した構成としてもよい。
【0096】
また、前述のように、潤滑剤容器57の各円形凹部44にはOリング58が嵌め込まれている。このため、エンドキャップ54の方向転換路5aを走行する転動体が潤滑部材154の先端面に接触し、当該先端面が転動体から力を受けた際に、この力をOリング58の弾性によって解消することができる。この構成により、潤滑部材154の磨耗、損傷、及び方向転換路5a内への脱落を防止することができ、スライダ40の作動性の悪化や寿命の低下を効果的に防止することができる。
【0097】
また、潤滑剤容器57の各円形凹部44に嵌め込まれたOリング58により、潤滑剤容器57の円形開口254とエンドキャップ54の貫通孔164の繋ぎ目部分から潤滑剤が漏洩することを防止できる。したがって、当該繋ぎ目部分から漏洩した潤滑剤がスライダ40やその周辺を汚染することを防止できるとともに、潤滑剤を不必要に消費することも防止できる。
【0098】
(第11実施形態)
図51に示す第11実施形態に係るリニアガイド装置用給油装置を備えたリニアガイド装置111について、上記第10実施形態と同様の構成については同じ符号を付して説明を省略し、異なる構成について詳細に説明する。
本実施形態に係るリニアガイド装置用給油装置は、
図52Aに示すように、エンドキャップ55と、潤滑剤容器75と、潤滑部材155とによって構成されている。
【0099】
本実施形態における潤滑剤容器75は、
図52A及び
図54に示すように、上記第10実施形態における潤滑剤容器57から円形凹部44を排除したものである。
【0100】
エンドキャップ55は、
図52A、
図53及び
図55Bに示すように、上記第10実施形態のエンドキャップ54において、各貫通孔164の方向転換路5a側の端部に大径部46を設けたものである。大径部46は、後述するチューブ47を収納するための円形の凹部であって、貫通孔164と同芯かつ貫通孔164よりも大径である。
【0101】
潤滑部材155は、
図52に示すように、潤滑剤容器75の円形開口254及びエンドキャップ55の貫通孔164に嵌合可能な円柱形状をしており、潤滑剤を含浸した多孔質成形体からなる。潤滑部材155は、潤滑剤容器75の凹部18の底面からエンドキャップ55の大径部46内まで延在する長さに設計されている。
【0102】
潤滑部材155の先端には、
図52及び
図55Bに示すように円筒状のチューブ47が外嵌されている。チューブ47は、潤滑部材155を構成する多孔質成形体と同様に潤滑剤を含浸可能で、かつ弾性変形可能な高分子材料からなる。チューブ47の先端は、エンドキャップ55の方向転換路5aの転動溝に沿った形状に加工されている。なお、チューブ47の長さは、エンドキャップ55の大径部46の長さよりもわずかに長く設計されている。本実施形態では斯かる構成のチューブ47が、潤滑部材75に保持されている潤滑剤49をエンドキャップ55の方向転換路5aを走行する転動体に塗布する塗布部として機能する。
【0103】
以下、本実施形態におけるスライダ48の組み立て手順について
図55及び
図56を参照して説明する。
なお、予め潤滑剤容器75は、各凹部18に潤滑剤49を充填し、背面側より蓋22を取り付けておく。
手順1:
図55Aに示すように、潤滑部材155の一端にチューブ47を装着する。
【0104】
手順2:
図55Bに示すように、チューブ47を装着した潤滑部材155をエンドキャップ55の各貫通孔164に背面側より挿入する。これにより、チューブ47が貫通孔164の大径部46に収納されるとともに、チューブ47の先端がエンドキャップ55の方向転換路5a内にわずかに突出する。このとき、チューブ47の先端は、上述のように方向転換路5aの転動溝に沿った形状であるため、転動溝に沿ってわずかに方向転換路5a内に突出した状態となる。
手順3:上記第10実施形態におけるスライダ40の組み立て手順の手順3、即ち上記第2実施形態におけるスライダ32の組み立て手順の手順1と同様である。
図56Aを参照。
【0105】
手順4:
図56Bに示すように、各エンドキャップ55に対して、スライダ本体4の長手方向外側から、潤滑剤容器75を円形開口254が形成された面、即ち正面を向けて取り付ける。円形開口254は
図56において不図示である。このとき、潤滑剤容器75の各円形開口254に、エンドキャップ55の各貫通孔164に取り付けられた潤滑部材155を挿入する。これにより、エンドキャップ55に対して潤滑剤容器75の位置決めが達成される。
手順5:上記第10実施形態におけるスライダ40の組み立て手順の手順5、即ち上記第2実施形態におけるスライダ32の組み立て手順の手順3と同様である。
図56Cを参照。
【0106】
本実施形態のリニアガイド装置111は、以上の組み立て手順によってスライダ48を容易に組み立てることができ、上記第10実施形態と同様の効果を奏することができる。
【0107】
前述のように、チューブ47は弾性変形可能な高分子材料からなり柔軟性が高い。このため、上記手順2においてチューブ47を装着した潤滑部材155を、エンドキャップ55に設けられた径の小さな貫通孔164に対して、チューブ47を弾性変形させながら簡単に挿入することができる。
【0108】
また、本実施形態においてチューブ47の先端は、
図52Bに示すようにエンドキャップ55の方向転換路5aの転動溝に沿いながらわずかに方向転換路5a内に突出している。この構成により、エンドキャップ55の方向転換路5aを走行する転動体に対して、転動体の走行を妨げることなく潤滑剤を確実に塗布することができる。なお、チューブ47は、前述のように柔軟性が高く弾性変形可能であるため、エンドキャップ55の方向転換路5aを走行する転動体が衝突した際に、衝撃を吸収することができ破損もしにくい。
【0109】
また、前述のように本実施形態はエンドキャップ55の方向転換路5aを走行する転動体に円筒状のチューブ47を接触させて潤滑剤を塗布する構成である。このため、潤滑剤がエンドキャップ55の方向転換路5a内へ流出することを防止しながら、適量の潤滑剤を転動体に塗布することができる。したがって、潤滑剤を短期間に大量消費することを抑え、給油を長期間安定して行うことができる。
【0110】
なお、チューブ47の材料には、ポリオレフィン、ウレタン、フッ素樹脂、塩化ビニル等の高分子材料、中でもポリオレフィンを用いることが好ましい。ポリオレフィンは上述のように比重が1以下で軽量である。したがって、チューブ47をポリオレフィンで構成することにより、潤滑部材155から潤滑剤容器75へかかる負荷が小さくなるため、潤滑剤容器75に対して有効である。
【0111】
また、ポリオレフィンは上述のように絶縁性が高い。したがって、スライダ48が案内レール2上を走行した時にエンドキャップ55の方向転換路5aと転動体との摩擦により静電気が生じた場合でも、ポリオレフィンで構成したチューブ47と潤滑部材155で絶縁することができる。このため、静電気によって潤滑剤容器75が破損してしまうことを防止することができる。
【0112】
また、ポリオレフィンのうち、ポリエチレンは軟質である。このため、チューブ47の材料にポリエチレンを用いれば、上記手順2においてチューブ47を装着した潤滑部材155をエンドキャップ55の貫通孔164により簡単に挿入することができる。なお、ポリエチレンに剛性をもたせるために、ポリエチレンにポリプロピレンをコンパウンドすることがより好ましい。
【0113】
また、上記各実施形態のリニアガイド装置用給油装置は、スライダ本体4の両端部に備えられているが、これに限られず上記第1〜3及び5〜11実施形態ではスライダ本体4の一方の端部のみに備える構成としてもよい。
また、上記各実施形態では、転動体としてボールを備えたリニアガイド装置101〜111を示しているが、これに限られず、転動体としてころを備えたリニアガイド装置を構成することもできる。