特許第6390626号(P6390626)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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特許6390626ジアミノヘテロ環カルボキサミド化合物を有効成分とする医薬組成物
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6390626
(24)【登録日】2018年8月31日
(45)【発行日】2018年9月19日
(54)【発明の名称】ジアミノヘテロ環カルボキサミド化合物を有効成分とする医薬組成物
(51)【国際特許分類】
   A61K 31/497 20060101AFI20180910BHJP
   A61P 35/00 20060101ALI20180910BHJP
   A61K 45/00 20060101ALI20180910BHJP
   A61P 43/00 20060101ALI20180910BHJP
   A61K 31/517 20060101ALI20180910BHJP
   A61K 31/5377 20060101ALI20180910BHJP
【FI】
   A61K31/497
   A61P35/00
   A61K45/00
   A61P43/00 121
   A61K31/517
   A61K31/5377
【請求項の数】7
【全頁数】17
(21)【出願番号】特願2015-560991(P2015-560991)
(86)(22)【出願日】2015年2月3日
(86)【国際出願番号】JP2015053018
(87)【国際公開番号】WO2015119122
(87)【国際公開日】20150813
【審査請求日】2017年11月9日
(31)【優先権主張番号】特願2014-19226(P2014-19226)
(32)【優先日】2014年2月4日
(33)【優先権主張国】JP
(73)【特許権者】
【識別番号】000006677
【氏名又は名称】アステラス製薬株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100163887
【弁理士】
【氏名又は名称】森平 浩一郎
(74)【代理人】
【識別番号】100117846
【弁理士】
【氏名又は名称】鈴木 ▲頼▼子
(74)【代理人】
【識別番号】100137464
【弁理士】
【氏名又は名称】濱井 康丞
(74)【代理人】
【識別番号】100158089
【弁理士】
【氏名又は名称】寺内 輝和
(74)【代理人】
【識別番号】100158252
【弁理士】
【氏名又は名称】飯室 加奈
(74)【代理人】
【識別番号】100172546
【弁理士】
【氏名又は名称】影山 路人
(74)【代理人】
【識別番号】100177482
【弁理士】
【氏名又は名称】川濱 周弥
(74)【代理人】
【識別番号】100191639
【弁理士】
【氏名又は名称】鎌田 啓明
(72)【発明者】
【氏名】江口 朋宏
(72)【発明者】
【氏名】森 政道
(72)【発明者】
【氏名】山木 陽子
【審査官】 伊藤 清子
(56)【参考文献】
【文献】 国際公開第2010/128659(WO,A1)
【文献】 特表2011−515397(JP,A)
【文献】 国際公開第2013/040801(WO,A1)
【文献】 MOLLARD, A. et al,Design, Synthesis and Biological Evaluation of a Series of Novel Axl Kinase Inhibitors,ACS Med. Chem. Lett.,2011年,Vol.2, No.12,p.907-912
【文献】 YAKES, F.M. et al,Cabozantinib (XL184), a novel MET and VEGFR2 inhibitor, simultaneously suppresses metastasis, angiog,Mol. Cancer. Ther.,2011年,Vol.10, No.12,p.2298-2308
【文献】 BYERS, L.A. et al,An epithelial-mesenchymal transition gene signature predicts resistance to EGFR and PI3K inhibitors,Clin. Cancer Res.,2013年,Vol.19, No.1,p.279-290
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A61K 31/497
A61K 31/517
A61K 31/5377
A61K 45/00
A61P 35/00
A61P 43/00
CAplus/MEDLINE/EMBASE/BIOSIS(STN)
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
6-エチル-3-({3-メトキシ-4-[4-(4-メチルピペラジン-1-イル)ピペリジン-1-イル]フェニル}アミノ)-5-(テトラヒドロ-2H-ピラン-4-イルアミノ)ピラジン-2-カルボキサミド又はその製薬学的に許容される塩、及び製薬学的に許容される賦形剤を含有する、抗癌剤治療に対するAXL活性化により抵抗性を獲得した癌の治療用医薬組成物。
【請求項2】
抗癌剤治療に対するAXL活性化により抵抗性を獲得した癌が、EGFRチロシンキナーゼ阻害剤による治療に対する抵抗性を獲得したEGFRの活性化変異を有する非小細胞肺癌である、請求項に記載の医薬組成物。
【請求項3】
EGFRチロシンキナーゼ阻害剤と併用されることを特徴とする医薬組成物である、請求項に記載の医薬組成物。
【請求項4】
EGFRチロシンキナーゼ阻害剤が、エルロチニブ、ゲフィチニブ及びラパチニブからなる群より選択されるEGFRチロシンキナーゼ阻害剤である、請求項に記載の医薬組成物。
【請求項5】
EGFRチロシンキナーゼ阻害剤が、エルロチニブである、請求項に記載の医薬組成物。
【請求項6】
6-エチル-3-({3-メトキシ-4-[4-(4-メチルピペラジン-1-イル)ピペリジン-1-イル]フェニル}アミノ)-5-(テトラヒドロ-2H-ピラン-4-イルアミノ)ピラジン-2-カルボキサミド又はその製薬学的に許容される塩が、6-エチル-3-({3-メトキシ-4-[4-(4-メチルピペラジン-1-イル)ピペリジン-1-イル]フェニル}アミノ)-5-(テトラヒドロ-2H-ピラン-4-イルアミノ)ピラジン-2-カルボキサミドである、請求項1〜請求項のいずれか一項に記載の医薬組成物。
【請求項7】
6-エチル-3-({3-メトキシ-4-[4-(4-メチルピペラジン-1-イル)ピペリジン-1-イル]フェニル}アミノ)-5-(テトラヒドロ-2H-ピラン-4-イルアミノ)ピラジン-2-カルボキサミド又はその製薬学的に許容される塩が、6-エチル-3-({3-メトキシ-4-[4-(4-メチルピペラジン-1-イル)ピペリジン-1-イル]フェニル}アミノ)-5-(テトラヒドロ-2H-ピラン-4-イルアミノ)ピラジン-2-カルボキサミド ヘミフマル酸塩である、請求項1〜請求項のいずれか一項に記載の医薬組成物。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、例えばジアミノヘテロ環カルボキサミド化合物又はその製薬学的に許容される塩を有効成分とするAXLに関連する癌治療用医薬組成物に関する。
【背景技術】
【0002】
AXLは受容体型チロシンキナーゼであり、中央部に細胞膜貫通領域を有し、そのカルボキシル末端側にチロシンキナーゼ領域、アミノ末端側に細胞外領域を有するタンパク質である。これまでに、急性白血病、星状細胞腫、乳癌、大腸癌、食道癌、消化管間質腫瘍、胃癌、肝細胞癌、カポジ肉腫、肺癌、黒色腫、卵巣癌、骨肉腫、膵管腺癌、腎細胞癌、前立腺癌、甲状腺癌、子宮内膜癌においてAXLの過剰発現が報告されている(Mol. Cancer Ther. 2011 Oct;10(10):1763-73.)。
また、近年、抗癌剤治療に対するAXL活性化による抵抗性獲得が報告されている。例えば、EGFRの活性化変異を有する非小細胞肺癌(NSCLC)において、エルロチニブ、ゲフィチニブのようなEGFRチロシンキナーゼ阻害剤(以下、「EGFR阻害剤」と言うことがある。)により腫瘍の抑制が誘導されることが多いが、この効果は持続的でなく、腫瘍が抵抗性を獲得し再増殖を始める。エルロチニブに対し抵抗性を獲得したNSCLCのサンプルを解析した結果、AXLの発現増加と、いくつかのケースでAXLのリガンドであるGAS6の発現増加が観察された(Nat. Genet. 2012 Jul 1;44(8):852-60.)。同様な結果は非臨床試験においても示されており、EGFR変異陽性HCC827肺癌細胞株はエルロチニブ感受性であるが、in vitroにてエルロチニブ暴露によりエルロチニブ耐性HCC827細胞を取得したところ、AXLの過剰発現を示した。この細胞においてAXLを分子生物学的手法で抑制するとエルロチニブに対する感受性が回復した。反対にAXL遺伝子を導入したHCC827 AXL安定発現株はエルロチニブ抵抗性を示した(Nat. Genet. 2012 Jul 1;44(8):852-60.)。
肺癌細胞以外においても、エルロチニブに対して耐性を獲得した頭頸部癌細胞株においてもAXLの発現上昇が見られ、AXL阻害剤、あるいはAXLを分子生物学的手法で抑制することによりエルロチニブに対して感受性を示すことが報告されている(Mol. Cancer Ther. 2013 Nov;12(11):2541-58.)。
エストロゲンホルモン受容体、プロゲステロンホルモン受容体及びHER2受容体陰性である乳癌細胞においてもAXLの発現が高い細胞はEGFR阻害剤に対する抵抗性を示すことが報告されている(Sci. Signal. 2013 Aug 6;6(287):ra66.)。
AXLと、化学療法への抵抗性に関しても各種癌において報告がなされている。急性骨髄性白血病(AML)臨床サンプルにおいても化学療法に対して抵抗性を獲得した細胞ではAXLの過剰発現を示し、AXL安定発現AML細胞株も化学療法抵抗性を示すことから、AXLが治療抵抗性の原因であると考えられている(Cancer Lett. 2008 Sep 18;268(2):314-24.)。星状細胞腫臨床サンプルにおいてもAXL過剰発現が見られ予後不良因子である。また、AXLの高発現を示す星状細胞腫細胞株ではsiRNAによりAXLを阻害することで、第一選択療法であるテモゾロマイド、カルボプラチンに対する感受性の増強が見られる(Mol. Cancer Ther. 2010 May;9(5):1298-307.)。食道癌臨床サンプルでもAXLの高発現が見られ、食道癌細胞株ではsiRNAによりAXLを阻害することでシスプラチンの感受性が亢進し、反対にAXLを過剰発現することでシスプラチン抵抗性になる(Cancer Res. 2013 Jan 1;73(1):331-40.)。EGFR変異陽性以外の肺癌細胞ではシスプラチンが第一選択薬であり全生存期間の延長が見られるが、継続的な投与後には抵抗性癌の出現が見られる。肺癌細胞株においてシスプラチン抵抗性癌を樹立したところAXLの高発現が見られ、siRNAによりAXLを阻害することでシスプラチンの感受性が亢進する(Cancer Sci. 2013 Jul;104(7):904-11.)。
【0003】
6-エチル-3-({3-メトキシ-4-[4-(4-メチルピペラジン-1-イル)ピペリジン-1-イル]フェニル}アミノ)-5-(テトラヒドロ-2H-ピラン-4-イルアミノ)ピラジン-2-カルボキサミド(以下、「化合物A」と言うことがある。)又はその製薬学的に許容される塩は、癌治療用医薬組成物の有効成分として有用であることが知られている(特許文献1)。
化合物A又はその製薬学的に許容される塩は、特許文献1において、実施例547としてそのフリー体が、実施例577としてそのヘミフマル酸塩が開示されており、ALK(試験例1〜試験例4)、RET(試験例5)、ROS(試験例6)、FLT3(試験例7)の各種キナーゼに対する阻害作用が確認されている。さらに、当該文献には、当該文献に記載されたある化合物が、78種類の各種キナーゼのうち、5nMの濃度において、7種類のキナーゼに対して50%以上の阻害作用を示したことが記載されている(試験例8)。しかし、当該78種類の各種キナーゼにAXLが含まれているものの、その化合物がAXLに対する阻害作用を示したことは記載も示唆もされていないし、その化合物が当該文献に記載されたどの化合物であるかについても記載はない。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】国際公開第WO 2010/128659号パンフレット
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
AXLに関連する癌治療用医薬組成物、ある態様としてAXLが高発現した癌治療用医薬組成物、別の態様として抗癌剤治療に対するAXL活性化により抵抗性を獲得した癌治療用医薬組成物を提供する。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明者らは、癌治療用医薬組成物の創製を目的に鋭意検討した結果、6-エチル-3-({3-メトキシ-4-[4-(4-メチルピペラジン-1-イル)ピペリジン-1-イル]フェニル}アミノ)-5-(テトラヒドロ-2H-ピラン-4-イルアミノ)ピラジン-2-カルボキサミド又はその製薬学的に許容される塩に優れたAXL阻害作用があり、この化合物又はその製薬学的に許容される塩を有効成分とする医薬組成物が、AXLに関連する癌治療用医薬組成物、ある態様としてAXLが高発現した癌治療用医薬組成物、別の態様として抗癌剤治療に対するAXL活性化により抵抗性を獲得した癌治療用医薬組成物として有用であることを知見して本発明を完成した。
すなわち、本発明は、6-エチル-3-({3-メトキシ-4-[4-(4-メチルピペラジン-1-イル)ピペリジン-1-イル]フェニル}アミノ)-5-(テトラヒドロ-2H-ピラン-4-イルアミノ)ピラジン-2-カルボキサミド又はその製薬学的に許容される塩、及び製薬学的に許容される賦形剤を含有するAXLに関連する癌治療用医薬組成物、ある態様としてAXLが高発現した癌治療用医薬組成物、別の態様として抗癌剤治療に対するAXL活性化により抵抗性を獲得した癌治療用医薬組成物に関する。
【0007】
また、本発明は、化合物A又はその製薬学的に許容される塩を含有するAXLに関連する癌治療剤、ある態様としてAXLが高発現した癌治療剤、別の態様として抗癌剤治療に対するAXL活性化により抵抗性を獲得した癌治療剤に関する。
【0008】
また、本発明は、AXLに関連する癌治療用医薬組成物の製造のための、ある態様としてAXLが高発現した癌治療用医薬組成物の製造のための、別の態様として抗癌剤治療に対するAXL活性化により抵抗性を獲得した癌治療用医薬組成物の製造のための、化合物A又はその製薬学的に許容される塩の使用;AXLに関連する癌治療のための、ある態様としてAXLが高発現した癌治療のための、別の態様として抗癌剤治療に対するAXL活性化により抵抗性を獲得した癌治療のための、化合物A又はその製薬学的に許容される塩の使用;AXLに関連する癌治療のための、ある態様としてAXLが高発現した癌治療のための、別の態様として抗癌剤治療に対するAXL活性化により抵抗性を獲得した癌治療のための、化合物A又はその製薬学的に許容される塩;及び、化合物A又はその製薬学的に許容される塩の有効量を対象に投与することからなるAXLに関連する癌治療方法、ある態様として化合物A又はその製薬学的に許容される塩の有効量を対象に投与することからなるAXLが高発現した癌治療方法、別の態様として化合物A又はその製薬学的に許容される塩の有効量を対象に投与することからなる抗癌剤治療に対するAXL活性化により抵抗性を獲得した癌治療方法、に関する。なお、「対象」とは、その治療を必要とするヒト又はその他の動物であり、ある態様としては、その治療を必要とするヒトである。
【発明の効果】
【0009】
本発明の医薬組成物の有効成分である化合物A又はその製薬学的に許容される塩は、AXL阻害作用を有し、AXLに関連する癌治療用医薬組成物、ある態様としてAXLが高発現した癌治療用医薬組成物、別の態様として抗癌剤治療に対するAXL活性化により抵抗性を獲得した癌治療用医薬組成物の有効成分として使用できる。
【図面の簡単な説明】
【0010】
図1図1はHCC827皮下担癌マウスに対するエルロチニブ投与によるエルロチニブ耐性HCC827皮下担癌モデルマウスの作製の過程、及びその後のエルロチニブ投与群、化合物A投与群、エルロチニブと化合物A併用群のモデル動物の腫瘍体積を示す図である。縦軸が腫瘍体積、横軸が日数を示す。
図2図2はHCC827皮下担癌マウス(抗癌剤未処理)に対するエルロチニブ投与群、化合物A投与群、エルロチニブと化合物A併用群のモデル動物の腫瘍体積を示す図である。縦軸が腫瘍体積、横軸が日数を示す。
【発明を実施するための形態】
【0011】
以下、本発明を詳細に説明する。
上述の通り、化合物Aの化学名は6-エチル-3-({3-メトキシ-4-[4-(4-メチルピペラジン-1-イル)ピペリジン-1-イル]フェニル}アミノ)-5-(テトラヒドロ-2H-ピラン-4-イルアミノ)ピラジン-2-カルボキサミドであり、その化学構造は以下に示すとおりである。
【化1】
【0012】
AXLに関連する癌とは、癌の原因の一つがAXLである癌を意味し、例えば、AXLが高発現した癌、及び、抗癌剤治療に対するAXL活性化により抵抗性を獲得した癌を挙げることができる。AXLが高発現した癌としては、急性白血病、星状細胞腫、乳癌、大腸癌、食道癌、消化管間質腫瘍、胃癌、肝細胞癌、カポジ肉腫、肺癌、黒色腫、卵巣癌、骨肉腫、膵管腺癌、腎細胞癌、前立腺癌、甲状腺癌、子宮内膜癌のうち、正常組織と比較してAXLが過剰発現した癌を挙げることができる。また、抗癌剤治療に対するAXL活性化により抵抗性を獲得した癌としては、EGFR阻害剤による治療に対する抵抗性を獲得したEGFRの活性化変異を有する非小細胞肺癌、頭頸部癌、及びエストロゲンホルモン受容体、プロゲステロンホルモン受容体及びHER2受容体陰性である乳癌(トリプルネガティブ乳癌);化学療法に対して抵抗性を獲得した急性骨髄性白血病及び星状細胞腫;並びに、シスプラチンによる治療に対する抵抗性を獲得したEGFR変異陽性以外の肺癌を挙げることができる。
EGFR阻害剤による治療に対する抵抗性を獲得したEGFRの活性化変異を有する非小細胞肺癌、頭頸部癌及びトリプルネガティブ乳癌で用いられるEGFR阻害剤としては、エルロチニブ、ゲフィチニブ、及びラパチニブ、ある態様としてはエルロチニブ及びゲフィチニブ、別の態様としてはエルロチニブを挙げることができる。化学療法に対して抵抗性を獲得した急性骨髄性白血病及び星状細胞腫で用いられる化学療法剤としては、シダラビン、エノシタビン、イダルビシン、ダウノルビシン、またはこれらの組合せを挙げることができる。
本発明の化合物A又はその製薬学的に許容される塩を含有する医薬組成物を、抗癌剤治療に対するAXL活性化により抵抗性を獲得した癌の治療に用いる場合には、当該抗癌剤と併用することが望ましい。
【0013】
本発明のある態様を以下に示す。
(1−1)化合物A、及び製薬学的に許容される賦形剤を含有するAXLに関連する癌治療用医薬組成物。ある態様として、化合物A、及び製薬学的に許容される賦形剤を含有するAXLが高発現した癌治療用医薬組成物。別の態様として、化合物A、及び製薬学的に許容される賦形剤を含有する抗癌剤治療に対するAXL活性化により抵抗性を獲得した癌治療用医薬組成物。
(1−2)AXLに関連する癌治療用医薬組成物の製造のための、化合物Aの使用。ある態様として、AXLが高発現した癌治療用医薬組成物の製造のための、化合物Aの使用。別の態様として、抗癌剤治療に対するAXL活性化により抵抗性を獲得した癌治療用医薬組成物の製造のための、化合物Aの使用。
(1−3)AXLに関連する癌治療のための、化合物Aの使用。ある態様として、AXLが高発現した癌治療のための、化合物Aの使用。別の態様として、抗癌剤治療に対するAXL活性化により抵抗性を獲得した癌治療のための、化合物Aの使用。
(1−4)AXLに関連する癌治療のための、化合物A。ある態様として、AXLが高発現した癌治療のための、化合物A。別の態様として、抗癌剤治療に対するAXL活性化により抵抗性を獲得した癌治療のための、化合物A。
(1−5)化合物Aの有効量を対象に投与することからなる、AXLに関連する癌治療方法。ある態様として、化合物Aの有効量を対象に投与することからなる、AXLが高発現した癌治療方法。別の態様として、化合物Aの有効量を対象に投与することからなる、抗癌剤治療に対するAXL活性化により抵抗性を獲得した癌治療方法。
【0014】
(2−1)化合物Aヘミフマル酸塩、及び製薬学的に許容される賦形剤を含有するAXLに関連する癌治療用医薬組成物。ある態様として、化合物Aヘミフマル酸塩、及び製薬学的に許容される賦形剤を含有するAXLが高発現した癌治療用医薬組成物。別の態様として、化合物Aヘミフマル酸塩、及び製薬学的に許容される賦形剤を含有する抗癌剤治療に対するAXL活性化により抵抗性を獲得した癌治療用医薬組成物。
(2−2)AXLに関連する癌治療用医薬組成物の製造のための、化合物Aヘミフマル酸塩の使用。ある態様として、AXLが高発現した癌治療用医薬組成物の製造のための、化合物Aヘミフマル酸塩の使用。別の態様として、抗癌剤治療に対するAXL活性化により抵抗性を獲得した癌治療用医薬組成物の製造のための、化合物Aヘミフマル酸塩の使用。
(2−3)AXLに関連する癌治療のための、化合物Aヘミフマル酸塩の使用。ある態様として、AXLが高発現した癌治療のための、化合物Aヘミフマル酸塩の使用。別の態様として、抗癌剤治療に対するAXL活性化により抵抗性を獲得した癌治療のための、化合物Aヘミフマル酸塩の使用。
(2−4)AXLに関連する癌治療のための、化合物Aヘミフマル酸塩。ある態様として、AXLが高発現した癌治療のための、化合物Aヘミフマル酸塩。別の態様として、抗癌剤治療に対するAXL活性化により抵抗性を獲得した癌治療のための、化合物Aヘミフマル酸塩。
(2−5)化合物Aヘミフマル酸塩の有効量を対象に投与することからなる、AXLに関連する癌治療方法。ある態様として、化合物Aヘミフマル酸塩の有効量を対象に投与することからなる、AXLが高発現した癌治療方法。別の態様として、化合物Aヘミフマル酸塩の有効量を対象に投与することからなる、抗癌剤治療に対するAXL活性化により抵抗性を獲得した癌治療方法。
【0015】
(3)AXLに関連する癌が、AXLが高発現した癌、又は、抗癌剤治療に対するAXL活性化により抵抗性を獲得した癌である、(1−1)若しくは(2−1)に記載の医薬組成物;(1−2)若しくは(2−2)に記載の使用;(1−3)若しくは(2−3)に記載の使用;(1−4)に記載の化合物A、若しくは(2−4)に記載の化合物Aヘミフマル酸塩;あるいは、(1−5)若しくは(2−5)に記載の治療方法。
【0016】
(4)AXLが高発現した癌が、急性白血病、星状細胞腫、乳癌、大腸癌、食道癌、消化管間質腫瘍、胃癌、肝細胞癌、カポジ肉腫、肺癌、黒色腫、卵巣癌、骨肉腫、膵管腺癌、腎細胞癌、前立腺癌、甲状腺癌、子宮内膜癌のうち、AXLが過剰発現した癌である、(1−1)若しくは(2−1)に記載の医薬組成物;(1−2)若しくは(2−2)に記載の使用;(1−3)若しくは(2−3)に記載の使用;(1−4)に記載の化合物A、若しくは(2−4)に記載の化合物Aヘミフマル酸塩;あるいは、(1−5)若しくは(2−5)に記載の治療方法。
【0017】
(5)抗癌剤治療に対するAXL活性化により抵抗性を獲得した癌が、EGFR阻害剤による治療に対する抵抗性を獲得したEGFRの活性化変異を有する非小細胞肺癌又は頭頸部癌である、(1−1)若しくは(2−1)に記載の医薬組成物;(1−2)若しくは(2−2)に記載の使用;(1−3)若しくは(2−3)に記載の使用;(1−4)に記載の化合物A、若しくは(2−4)に記載の化合物Aヘミフマル酸塩;あるいは、(1−5)若しくは(2−5)に記載の治療方法。ある態様として、抗癌剤治療に対するAXL活性化により抵抗性を獲得した癌が、EGFR阻害剤による治療に対する抵抗性を獲得したEGFRの活性化変異を有する非小細胞肺癌である、(1−1)若しくは(2−1)に記載の医薬組成物;(1−2)若しくは(2−2)に記載の使用;(1−3)若しくは(2−3)に記載の使用;(1−4)に記載の化合物A、若しくは(2−4)に記載の化合物Aヘミフマル酸塩;あるいは、(1−5)若しくは(2−5)に記載の治療方法。
【0018】
(6−1)EGFR阻害剤と併用されることを特徴とする、化合物A又はその製薬学的に許容される塩、及び製薬学的に許容される賦形剤を含有するAXLに関連する癌の治療用医薬組成物。ある態様として、EGFR阻害剤と併用されることを特徴とする、(1−1)に記載の医薬組成物。別の態様として、EGFR阻害剤と併用されることを特徴とする、(2−1)に記載の医薬組成物。さらに別の態様として、EGFR阻害剤と併用されることを特徴とする、(3)に記載の医薬組成物。さらに別の態様として、EGFR阻害剤と併用されることを特徴とする、(4)に記載の医薬組成物。さらに別の態様として、EGFR阻害剤と併用されることを特徴とする、(5)に記載の医薬組成物。さらに別の態様として、EGFR阻害剤と併用されることを特徴とする、(1−1)に記載の抗癌剤治療に対するAXL活性化により抵抗性を獲得した癌治療用医薬組成物。さらに別の態様として、EGFR阻害剤と併用されることを特徴とする、(2−1)に記載の抗癌剤治療に対するAXL活性化により抵抗性を獲得した癌治療用医薬組成物。さらに別の態様として、EGFR阻害剤と併用されることを特徴とする、(3)に記載の抗癌剤治療に対するAXL活性化により抵抗性を獲得した癌治療用医薬組成物。さらに別の態様として、EGFR阻害剤と併用されることを特徴とする、(4)に記載の抗癌剤治療に対するAXL活性化により抵抗性を獲得した癌治療用医薬組成物。またさらに別の態様として、EGFR阻害剤と併用されることを特徴とする、(5)に記載の抗癌剤治療に対するAXL活性化により抵抗性を獲得した癌治療用医薬組成物。
【0019】
(6−2)EGFR阻害剤と併用されることを特徴とする、AXLに関連する癌の治療用医薬組成物の製造のための、化合物A又はその製薬学的に許容される塩の使用。ある態様として、EGFR阻害剤と併用されることを特徴とする、(1−2)に記載の使用。別の態様として、EGFR阻害剤と併用されることを特徴とする、(2−2)に記載の使用。さらに別の態様として、EGFR阻害剤と併用されることを特徴とする、(3)に記載の使用。さらに別の態様として、EGFR阻害剤と併用されることを特徴とする、(4)に記載の使用。さらに別の態様として、EGFR阻害剤と併用されることを特徴とする、(5)に記載の使用。さらに別の態様として、EGFR阻害剤と併用されることを特徴とする、(1−2)に記載の抗癌剤治療に対するAXL活性化により抵抗性を獲得した癌治療用医薬組成物の製造のための使用。さらに別の態様として、EGFR阻害剤と併用されることを特徴とする、(2−2)に記載の抗癌剤治療に対するAXL活性化により抵抗性を獲得した癌治療用医薬組成物の製造のための使用。さらに別の態様として、EGFR阻害剤と併用されることを特徴とする、(3)に記載の抗癌剤治療に対するAXL活性化により抵抗性を獲得した癌治療用医薬組成物の製造のための使用。さらに別の態様として、EGFR阻害剤と併用されることを特徴とする、(4)に記載の抗癌剤治療に対するAXL活性化により抵抗性を獲得した癌治療用医薬組成物の製造のための使用。またさらに別の態様として、EGFR阻害剤と併用されることを特徴とする、(5)に記載の抗癌剤治療に対するAXL活性化により抵抗性を獲得した癌治療用医薬組成物の製造のための使用。
【0020】
(6−3)EGFR阻害剤と併用されることを特徴とする、AXLに関連する癌治療のための、化合物A又はその製薬学的に許容される塩の使用。ある態様として、EGFR阻害剤と併用されることを特徴とする、(1−3)に記載の使用。別の態様として、EGFR阻害剤と併用されることを特徴とする、(2−3)に記載の使用。さらに別の態様として、EGFR阻害剤と併用されることを特徴とする、(3)に記載の使用。さらに別の態様として、EGFR阻害剤と併用されることを特徴とする、(4)に記載の使用。さらに別の態様として、EGFR阻害剤と併用されることを特徴とする、(5)に記載の使用。さらに別の態様として、EGFR阻害剤と併用されることを特徴とする、(1−3)に記載の抗癌剤治療に対するAXL活性化により抵抗性を獲得した癌治療のための使用。さらに別の態様として、EGFR阻害剤と併用されることを特徴とする、(2−3)に記載の抗癌剤治療に対するAXL活性化により抵抗性を獲得した癌治療のための使用。さらに別の態様として、EGFR阻害剤と併用されることを特徴とする、(3)に記載の抗癌剤治療に対するAXL活性化により抵抗性を獲得した癌治療のための使用。さらに別の態様として、EGFR阻害剤と併用されることを特徴とする、(4)に記載の抗癌剤治療に対するAXL活性化により抵抗性を獲得した癌治療のための使用。またさらに別の態様として、EGFR阻害剤と併用されることを特徴とする、(5)に記載の抗癌剤治療に対するAXL活性化により抵抗性を獲得した癌治療のための使用。
【0021】
(6−4)EGFR阻害剤と併用されることを特徴とする、AXLに関連する癌治療のための、化合物A又はその製薬学的に許容される塩。ある態様として、EGFR阻害剤と併用されることを特徴とする、(1−4)に記載の化合物A、又は(2−4)に記載の化合物Aヘミフマル酸塩。別の態様として、EGFR阻害剤と併用されることを特徴とする、(3)に記載の化合物A若しくは化合物Aヘミフマル酸塩。さらに別の態様として、EGFR阻害剤と併用されることを特徴とする、(4)に記載の化合物A若しくは化合物Aヘミフマル酸塩。さらに別の態様として、EGFR阻害剤と併用されることを特徴とする、(5)に記載の化合物A若しくは化合物Aヘミフマル酸塩。さらに別の態様として、EGFR阻害剤と併用されることを特徴とする、(1−4)に記載の抗癌剤治療に対するAXL活性化により抵抗性を獲得した癌治療のための化合物A、若しくは(2−4)に記載の抗癌剤治療に対するAXL活性化により抵抗性を獲得した癌治療のための化合物Aヘミフマル酸塩。さらに別の態様として、EGFR阻害剤と併用されることを特徴とする、(3)に記載の抗癌剤治療に対するAXL活性化により抵抗性を獲得した癌治療のための化合物A若しくは化合物Aヘミフマル酸塩。さらに別の態様として、EGFR阻害剤と併用されることを特徴とする、(4)に記載の抗癌剤治療に対するAXL活性化により抵抗性を獲得した癌治療のための化合物A若しくは化合物Aヘミフマル酸塩。またさらに別の態様として、EGFR阻害剤と併用されることを特徴とする、(5)に記載の抗癌剤治療に対するAXL活性化により抵抗性を獲得した癌治療のための化合物A若しくは化合物Aヘミフマル酸塩。
【0022】
(6−5)EGFR阻害剤と併用されることを特徴とする、化合物A又はその製薬学的に許容される塩の有効量を対象に投与することからなる、AXLに関連する癌治療方法。ある態様として、EGFR阻害剤と併用されることを特徴とする、(1−5)に記載の治療方法。別の態様として、EGFR阻害剤と併用されることを特徴とする、(2−5)に記載の治療方法。さらに別の態様として、EGFR阻害剤と併用されることを特徴とする、(3)に記載の治療方法。さらに別の態様として、EGFR阻害剤と併用されることを特徴とする、(4)に記載の治療方法。さらに別の態様として、EGFR阻害剤と併用されることを特徴とする、(5)に記載の治療方法。さらに別の態様として、EGFR阻害剤と併用されることを特徴とする、(1−5)に記載の抗癌剤治療に対するAXL活性化により抵抗性を獲得した癌治療方法。さらに別の態様として、EGFR阻害剤と併用されることを特徴とする、(2−5)に記載の抗癌剤治療に対するAXL活性化により抵抗性を獲得した癌治療方法。さらに別の態様として、EGFR阻害剤と併用されることを特徴とする、(3)に記載の抗癌剤治療に対するAXL活性化により抵抗性を獲得した癌治療方法。さらに別の態様として、EGFR阻害剤と併用されることを特徴とする、(4)に記載の抗癌剤治療に対するAXL活性化により抵抗性を獲得した癌治療方法。またさらに別の態様として、EGFR阻害剤と併用されることを特徴とする、(5)に記載の抗癌剤治療に対するAXL活性化により抵抗性を獲得した癌治療方法。
【0023】
(7−1)併用されるEGFR阻害剤が、エルロチニブ、ゲフィチニブ、又はラパチニブである、(6−1)に記載の医薬組成物。ある態様として、併用されるEGFR阻害剤が、エルロチニブ、又はゲフィチニブである、(6−1)に記載の医薬組成物。別の態様として、併用されるEGFR阻害剤が、エルロチニブである、(6−1)に記載の医薬組成物。
【0024】
(7−2)併用されるEGFR阻害剤が、エルロチニブ、ゲフィチニブ、又はラパチニブである、(6−2)に記載の使用。ある態様として、併用されるEGFR阻害剤が、エルロチニブ、又はゲフィチニブである、(6−2)に記載の使用。別の態様として、併用されるEGFR阻害剤が、エルロチニブである、(6−2)に記載の使用。
【0025】
(7−3)併用されるEGFR阻害剤が、エルロチニブ、ゲフィチニブ、又はラパチニブである、(6−3)に記載の使用。ある態様として、併用されるEGFR阻害剤が、エルロチニブ、又はゲフィチニブである、(6−3)に記載の使用。別の態様として、併用されるEGFR阻害剤が、エルロチニブである、(6−3)に記載の使用。
【0026】
(7−4)併用されるEGFR阻害剤が、エルロチニブ、ゲフィチニブ、又はラパチニブである、(6−4)に記載の化合物A若しくは化合物Aヘミフマル酸塩。ある態様として、併用されるEGFR阻害剤が、エルロチニブ、又はゲフィチニブである、(6−4)に記載の化合物A若しくは化合物Aヘミフマル酸塩。別の態様として、併用されるEGFR阻害剤が、エルロチニブである、(6−4)に記載の化合物A若しくは化合物Aヘミフマル酸塩。
【0027】
(7−5)併用されるEGFR阻害剤が、エルロチニブ、ゲフィチニブ、又はラパチニブである、(6−5)に記載の治療方法。ある態様として、併用されるEGFR阻害剤が、エルロチニブ、又はゲフィチニブである、(6−5)に記載の治療方法。別の態様として、併用されるEGFR阻害剤が、エルロチニブである、(6−5)に記載の治療方法。
【0028】
(8−1)化合物A又はその製薬学的に許容される塩、及び製薬学的に許容される賦形剤を含有する抗癌剤治療に対するAXL活性化により抵抗性を獲得した癌の治療用医薬組成物であって、当該抗癌剤と併用されることを特徴とする医薬組成物。
【0029】
(8−2)化合物A又はその製薬学的に許容される塩、及び製薬学的に許容される賦形剤を含有するEGFR阻害剤による治療に対する抵抗性を獲得したEGFRの活性化変異を有する非小細胞肺癌、頭頸部癌又はトリプルネガティブ乳癌の治療用医薬組成物であって、EGFR阻害剤と併用されることを特徴とする医薬組成物。
【0030】
(8−3)化合物A又はその製薬学的に許容される塩、及び製薬学的に許容される賦形剤を含有する化学療法に対して抵抗性を獲得した急性骨髄性白血病又は星状細胞腫の治療用医薬組成物であって、当該化学療法剤と併用されることを特徴とする医薬組成物。
【0031】
(8−4)化合物A又はその製薬学的に許容される塩、及び製薬学的に許容される賦形剤を含有するシスプラチンによる治療に対する抵抗性を獲得したEGFR変異陽性以外の肺癌の治療用医薬組成物であって、シスプラチンと併用されることを特徴とする医薬組成物。
【0032】
(9−1)抗癌剤と併用されることを特徴とする、抗癌剤治療に対するAXL活性化により抵抗性を獲得した癌治療用医薬組成物の製造のための、化合物A又はその製薬学的に許容される塩の使用。
【0033】
(9−2)EGFR阻害剤と併用されることを特徴とする、EGFR阻害剤による治療に対する抵抗性を獲得したEGFRの活性化変異を有する非小細胞肺癌、頭頸部癌又はトリプルネガティブ乳癌の治療用医薬組成物の製造のための化合物A又はその製薬学的に許容される塩の使用。
【0034】
(9−3)化学療法剤と併用されることを特徴とする、化学療法に対して抵抗性を獲得した急性骨髄性白血病又は星状細胞腫の治療用医薬組成物の製造のための化合物A又はその製薬学的に許容される塩の使用。
【0035】
(9−4)シスプラチンと併用されることを特徴とする、シスプラチンによる治療に対する抵抗性を獲得したEGFR変異陽性以外の肺癌の治療用医薬組成物の製造のための化合物A又はその製薬学的に許容される塩の使用。
【0036】
(10−1)抗癌剤と併用されることを特徴とする、抗癌剤治療に対するAXL活性化により抵抗性を獲得した癌治療のための、化合物A又はその製薬学的に許容される塩の使用。
【0037】
(10−2)EGFR阻害剤と併用されることを特徴とする、EGFR阻害剤による治療に対する抵抗性を獲得したEGFRの活性化変異を有する非小細胞肺癌、頭頸部癌又はトリプルネガティブ乳癌の治療のための化合物A又はその製薬学的に許容される塩の使用。
【0038】
(10−3)化学療法剤と併用されることを特徴とする、化学療法に対して抵抗性を獲得した急性骨髄性白血病又は星状細胞腫の治療のための化合物A又はその製薬学的に許容される塩の使用。
【0039】
(10−4)シスプラチンと併用されることを特徴とする、シスプラチンによる治療に対する抵抗性を獲得したEGFR変異陽性以外の肺癌の治療のための化合物A又はその製薬学的に許容される塩の使用。
【0040】
(11−1)抗癌剤と併用されることを特徴とする、抗癌剤治療に対するAXL活性化により抵抗性を獲得した癌治療のための、化合物A又はその製薬学的に許容される塩。
【0041】
(11−2)EGFR阻害剤と併用されることを特徴とする、EGFR阻害剤による治療に対する抵抗性を獲得したEGFRの活性化変異を有する非小細胞肺癌、頭頸部癌又はトリプルネガティブ乳癌の治療のための化合物A又はその製薬学的に許容される塩。
【0042】
(11−3)化学療法剤と併用されることを特徴とする、化学療法に対して抵抗性を獲得した急性骨髄性白血病又は星状細胞腫の治療のための化合物A又はその製薬学的に許容される塩。
【0043】
(11−4)シスプラチンと併用されることを特徴とする、シスプラチンによる治療に対する抵抗性を獲得したEGFR変異陽性以外の肺癌の治療のための化合物A又はその製薬学的に許容される塩。
【0044】
(12−1)抗癌剤と併用されることを特徴とする、化合物A又はその製薬学的に許容される塩の有効量を対象に投与することからなる、抗癌剤治療に対するAXL活性化により抵抗性を獲得した癌治療方法。
【0045】
(12−2)EGFR阻害剤と併用されることを特徴とする、化合物A又はその製薬学的に許容される塩の有効量を対象に投与することからなる、EGFR阻害剤による治療に対する抵抗性を獲得したEGFRの活性化変異を有する非小細胞肺癌、頭頸部癌又はトリプルネガティブ乳癌の治療方法。
【0046】
(12−3)化学療法剤と併用されることを特徴とする、化合物A又はその製薬学的に許容される塩の有効量を対象に投与することからなる、化学療法に対して抵抗性を獲得した急性骨髄性白血病又は星状細胞腫の治療方法。
【0047】
(12−4)シスプラチンと併用されることを特徴とする、化合物A又はその製薬学的に許容される塩の有効量を対象に投与することからなる、シスプラチンによる治療に対する抵抗性を獲得したEGFR変異陽性以外の肺癌の治療方法。
【0048】
(13−1)化合物A又はその製薬学的に許容される塩を含有する抗癌剤治療に対するAXL活性化により抵抗性を獲得した癌の治療剤であって、当該抗癌剤と併用されることを特徴とする剤。
【0049】
(13−2)化合物A又はその製薬学的に許容される塩を含有するEGFR阻害剤による治療に対する抵抗性を獲得したEGFRの活性化変異を有する非小細胞肺癌、頭頸部癌又はトリプルネガティブ乳癌の治療剤であって、EGFR阻害剤と併用されることを特徴とする剤。
【0050】
(13−3)化合物A又はその製薬学的に許容される塩を含有する化学療法に対して抵抗性を獲得した急性骨髄性白血病又は星状細胞腫の治療剤であって、当該化学療法剤と併用されることを特徴とする剤。
【0051】
(13−4)化合物A又はその製薬学的に許容される塩を含有するシスプラチンによる治療に対する抵抗性を獲得したEGFR変異陽性以外の肺癌の治療剤であって、シスプラチンと併用されることを特徴とする剤。
【0052】
(14−1)化合物A又はその製薬学的に許容される塩、及び製薬学的に許容される賦形剤を含有するEGFR変異陽性の非小細胞肺癌の治療用医薬組成物であって、EGFR阻害剤と併用されることを特徴とする医薬組成物。
【0053】
(14−2)EGFR阻害剤と併用されることを特徴とする、EGFR変異陽性の非小細胞肺癌の治療用医薬組成物の製造のための化合物A又はその製薬学的に許容される塩の使用。
【0054】
(14−3)EGFR阻害剤と併用されることを特徴とする、EGFR変異陽性の非小細胞肺癌の治療のための化合物A又はその製薬学的に許容される塩の使用。
【0055】
(14−4)EGFR阻害剤と併用されることを特徴とする、EGFR変異陽性の非小細胞肺癌の治療のための化合物A又はその製薬学的に許容される塩。
【0056】
(14−5)EGFR阻害剤と併用されることを特徴とする、化合物A又はその製薬学的に許容される塩の有効量を対象に投与することからなる、EGFR変異陽性の非小細胞肺癌の治療方法。
【0057】
(14−6)化合物A又はその製薬学的に許容される塩を含有するEGFR変異陽性の非小細胞肺癌の治療剤であって、EGFR阻害剤と併用されることを特徴とする剤。
【0058】
(15−1)化合物A又はその製薬学的に許容される塩、及び製薬学的に許容される賦形剤を含有するAXLに関連する癌の治療用医薬組成物。
【0059】
(15−2)AXLに関連する癌が、AXLが高発現した癌である(15−1)に記載の医薬組成物。
【0060】
(15−3)AXLに関連する癌が、抗癌剤治療に対するAXL活性化により抵抗性を獲得した癌である、(15−1)に記載の医薬組成物。
【0061】
(15−4)抗癌剤治療に対するAXL活性化により抵抗性を獲得した癌が、EGFRチロシンキナーゼ阻害剤による治療に対する抵抗性を獲得したEGFRの活性化変異を有する非小細胞肺癌である、(15−3)に記載の医薬組成物。
【0062】
(15−5)EGFRチロシンキナーゼ阻害剤と併用されることを特徴とする医薬組成物である、(15−4)に記載の医薬組成物。
【0063】
(15−6)EGFRチロシンキナーゼ阻害剤が、エルロチニブ、ゲフィチニブ及びラパチニブからなる群より選択されるEGFRチロシンキナーゼ阻害剤である、(15−5)に記載の医薬組成物。
【0064】
(15−7)EGFRチロシンキナーゼ阻害剤が、エルロチニブである、(15−6)に記載の医薬組成物。
【0065】
(15−8)化合物A又はその製薬学的に許容される塩が、化合物Aである、(15−1)から(15−7)のいずれかに記載の医薬組成物。
【0066】
(15−9)化合物A又はその製薬学的に許容される塩が、化合物Aヘミフマル酸塩である、(15−1)から(15−7)のいずれかに記載の医薬組成物。
【0067】
(16−1)化合物A又はその製薬学的に許容される塩、及びEGFRチロシンキナーゼ阻害剤、並びに製薬学的に許容される賦形剤を含有するAXLに関連する癌の治療用医薬組成物。
【0068】
(16−2)AXLに関連する癌が、AXLが高発現した癌である(16−1)に記載の医薬組成物。
【0069】
(16−3)AXLに関連する癌が、抗癌剤治療に対するAXL活性化により抵抗性を獲得した癌である、(16−1)に記載の医薬組成物。
【0070】
(16−4)抗癌剤治療に対するAXL活性化により抵抗性を獲得した癌が、EGFRチロシンキナーゼ阻害剤による治療に対する抵抗性を獲得したEGFRの活性化変異を有する非小細胞肺癌である、(16−3)に記載の医薬組成物
【0071】
(16−5)EGFRチロシンキナーゼ阻害剤が、エルロチニブ、ゲフィチニブ及びラパチニブからなる群より選択されるEGFRチロシンキナーゼ阻害剤である、(16−4)に記載の医薬組成物。
【0072】
(16−6)EGFRチロシンキナーゼ阻害剤が、エルロチニブである、(16−5)に記載の医薬組成物。
【0073】
(16−7)医薬組成物が経口投与製剤である(16−6)記載の医薬組成物。
【0074】
(16−8)医薬組成物が注射用液剤である(16−6)記載の医薬組成物。
【0075】
化合物A又はその製薬学的に許容される塩は、上記特許文献1(国際公開第WO 2010/128659号パンフレット)に記載の方法に従って、あるいはその変法によって入手することができる。
【0076】
また、「化合物Aの製薬学的に許容される塩」とは、化合物Aの酸付加塩を意味し、具体的には、塩酸、臭化水素酸、ヨウ化水素酸、硫酸、硝酸、リン酸等の無機酸や、ギ酸、酢酸、プロピオン酸、シュウ酸、マロン酸、コハク酸、フマル酸、マレイン酸、乳酸、リンゴ酸、マンデル酸、酒石酸、ジベンゾイル酒石酸、ジトルオイル酒石酸、クエン酸、メタンスルホン酸、エタンスルホン酸、ベンゼンスルホン酸、p-トルエンスルホン酸、アスパラギン酸、グルタミン酸等の有機酸との酸付加塩が挙げられる。なお、「化合物Aの製薬学的に許容される塩」には、化合物Aの溶媒和物、具体的には、例えば水和物やエタノール和物を含み、さらに、化合物Aの溶媒和物の酸付加塩を含む。
なお、「化合物A又はその製薬学的に許容される塩」のある態様としては、化合物Aが挙げられ、別の態様としては、化合物Aとフマル酸との酸付加塩が挙げられ、さらに別の態様としては、化合物Aヘミフマル酸塩が挙げられる。
【0077】
化合物A又はその製薬学的に許容される塩を含有する医薬組成物は、当分野において通常用いられている賦形剤、即ち、薬剤用賦形剤や薬剤用担体等を用いて、通常使用されている方法によって調製することができる。
投与は錠剤、丸剤、カプセル剤、顆粒剤、散剤、液剤等による経口投与、又は、関節内、静脈内、筋肉内等の注射剤、坐剤、経皮用液剤、軟膏剤、経皮用貼付剤、経粘膜液剤、経粘膜貼付剤、吸入剤等による非経口投与のいずれの形態であってもよい。
【0078】
経口投与のための固体組成物としては、錠剤、散剤、顆粒剤等が用いられる。このような固体組成物においては、1種又は2種以上の有効成分が、少なくとも1種の不活性な賦形剤と混合される。組成物は、常法に従って、不活性な添加剤、例えば滑沢剤や崩壊剤、安定化剤、溶解補助剤を含有していてもよい。錠剤又は丸剤は必要により糖衣又は胃溶性若しくは腸溶性物質のフィルムで被膜してもよい。
経口投与のための液体組成物は、薬剤的に許容される乳濁剤、溶液剤、懸濁剤、シロップ剤又はエリキシル剤等を含み、一般的に用いられる不活性な希釈剤、例えば精製水又はエタノールを含む。当該液体組成物は不活性な希釈剤以外に可溶化剤、湿潤剤、懸濁剤のような補助剤、甘味剤、風味剤、芳香剤、防腐剤を含有していてもよい。
【0079】
非経口投与のための注射剤は、無菌の水性又は非水性の溶液剤、懸濁剤又は乳濁剤を含有する。水性の溶剤としては、例えば注射用蒸留水又は生理食塩液が含まれる。非水性の溶剤としては、例えばエタノールのようなアルコール類がある。このような組成物は、さらに等張化剤、防腐剤、湿潤剤、乳化剤、分散剤、安定化剤、又は溶解補助剤を含んでもよい。これらは例えばバクテリア保留フィルターを通す濾過、殺菌剤の配合又は照射によって無菌化される。また、これらは無菌の固体組成物を製造し、使用前に無菌水又は無菌の注射用溶媒に溶解又は懸濁して使用することもできる。
【0080】
通常経口投与の場合、1日の投与量は、体重当たり約0.001〜100 mg/kg、好ましくは0.01〜30 mg/kg、更に好ましくは0.1〜10 mg/kgが適当であり、これを1回であるいは2回〜4回に分けて投与する。静脈内投与される場合は、1日の投与量は、体重当たり約0.0001〜10 mg/kgが適当で、1日1回〜複数回に分けて投与する。また、経粘膜剤としては、体重当たり約0.001〜100 mg/kgを1日1回〜複数回に分けて投与する。投与量は症状、年令、性別等を考慮して個々の場合に応じて適宜決定される。
【0081】
投与経路、剤形、投与部位、賦形剤や添加剤の種類によって異なるが、本発明の医薬組成物は0.01〜99重量%、ある態様としては0.01〜50重量%の化合物A又はその製薬学的に許容される塩を有効成分として含有する。
【0082】
本発明の医薬組成物は、癌、とりわけAXLに関連する癌に有効性を示すと考えられる種々の治療剤と併用することができる。当該併用は、同時投与、あるいは別個に連続して、若しくは所望の時間間隔をおいて投与してもよい。同時投与の場合には、配合剤であっても別個に製剤化されていてもよい。特に併用することができる薬剤として、エルロチニブ、ゲフィチニブ、及びラパチニブのようなEGFRチロシンキナーゼ阻害剤、トラスツズマブのようなHER2キナーゼ阻害剤、シスプラチン、及びカルボプラチンのようなプラチナ製剤が挙げられる。
【実施例】
【0083】
本発明の医薬組成物の薬理的効果は、以下の実施例により確認した。
【0084】
実施例1 化合物AのAXLキナーゼ阻害活性評価
化合物Aをジメチルスルホキシド(DMSO)に溶解し、試験濃度の100倍濃度の溶液を調製した。その溶液をさらにアッセイバッファー(20mM HEPES、0.01% Triton X-100、2mM DTT、pH7.5)にて25倍希釈して被験物質溶液とした。反応に用いる酵素は、キナーゼドメインを含む領域をバキュロウイルスにて発現、精製したものを用いた。
アッセイバッファー(20mM HEPES, 0.01% Triton X-100, 2mM DTT, pH7.5)にて調製した5μLの4倍濃度被験物質溶液、5μLの4倍濃度基質/ATP/金属溶液及び10μLの2倍濃度キナーゼ溶液をポリプロピレン製384ウェルプレートのウェル内で混合し、室温にて1時間反応させた。基質はCSKtideを終濃度1000nM、ATPは終濃度50μM、Mgは終濃度5mMにて使用した。その後、60μLのターミネーションバッファー(QuickScout Screening Assist MSA(Carna Biosciences))を添加して反応を停止させた。反応溶液中の基質ペプチドとリン酸化ペプチドを、LabChip3000 system(Caliper Life Science)にて分離、定量した。キナーゼ反応は基質ペプチドピーク高さ(S)とリン酸化ペプチドピーク高さ(P)から計算される生成物比(P/(P+S))にて評価した。
データ解析は、全ての反応コンポーネントを含むコントロールウェルの平均シグナルを0%阻害、酵素以外の全ての反応コンポーネントを含むバックグランドウェルの平均シグナルを100%阻害とし、各被験物質試験ウェルの平均シグナルから阻害率を計算した。IC50値は被験物質濃度と阻害率によるプロットを非線形最小二乗法により4パラメータのロジスティック曲線に近似させて求めた。
【0085】
その結果、化合物AはIC50値として、0.70nMの濃度でAXLキナーゼ活性を阻害した。
【0086】
実施例2 ヒト非小細胞肺癌細胞株PC9細胞(活性変異型EGFR発現細胞)より樹立したAXL強制発現細胞を用いた増殖抑制評価(in vitro)
AXL ORF全長(Gene Bank accession no.: NM_001699)を含むpMXsベクター(AXL/pMXsと命名した。)4μgを、パッケージング用プラスミドVSV-G 1μg(タカラバイオ)と共に、トランスフェクション試薬(LipofectAmine2000(ライフテクノロジーズ))を用いて、GP2-293パッケージング細胞(ライフテクノロジーズ)に導入した。導入2日後の培養上清を、レトロウイルスとして回収し、ポリブレン(polybrene(Sigma))を終濃度6μg/mLの濃度で添加した後、ヒト非小細胞肺癌細胞株PC9細胞に添加した。2日後にPC9細胞の培養上清を、RPMI1640培地(sigma)に10%牛血清(インビトロジェン)及びpuromycin(invitrogen)を終濃度0.1μg/mLにて添加したものに交換し、1週間培養を続け薬剤セレクションを行った。コントロール用細胞としてpMXsを同様な操作により導入した細胞を作成し、PC9 vec.と命名した。AXL/pMXs導入細胞に関しては、さらにAXL高発現細胞を濃縮するために、終濃度300nMのエルロチニブを培地中に添加し3日間処理することで、AXLを安定発現するPC9細胞を取得した(PC9/AXLと命名した)。
取得したPC9/AXL細胞とPC9 vec.細胞を、それぞれRPMI1640培地(sigma)を用いて、384ウェルプレートに播種した。同日に試験濃度に応じた被験化合物のDMSO溶液、またはDMSOのみを添加し、5%CO2存在下、37℃にて4日間培養した。その後、細胞数測定試薬(CellTiter-Glo(TM) Luminescent Cell Viability Assay(Promega))を用いて細胞数を測定した。DMSO群での測定値を0%抑制、細胞を播種していない培地のみのウェルでの測定値を100%抑制として被験化合物の抑制率を算出した。被験化合物として、100nM化合物A、及びエルロチニブを用いた。
【0087】
その結果、エルロチニブはPC9 vec.細胞の増殖を抑制し、そのIC50値は108nMであった。また、AXL/PC9細胞に対しては、エルロチニブはその増殖を50%以上抑制することはなく、最高濃度である3000nMにおいても細胞の生存率は73%であった。その一方、化合物Aとエルロチニブとの併用による増殖抑制作用については、AXL/PC9細胞の増殖を50%以上抑制し、100nMの化合物Aの存在下でエルロチニブは56nMのIC50値にてAXL/PC9細胞株の増殖を阻害した。
この時、AXL/PC9細胞におけるリン酸化AXLを、phospho-AXL抗体(R&D社)を用いたウエスタンブロットにより確認したところ、100nMの化合物Aの存在下では完全にAXLリン酸化が抑制されており、AXL活性が抑制されているものと考えられた。
以上のことから、化合物Aは、AXL/PC9細胞株において、AXL活性化抑制を介してエルロチニブに対する耐性を解除して細胞増殖抑制作用を示すことが確認された。
【0088】
実施例3 エルロチニブ耐性HCC827皮下担癌マウスモデルに対する化合物Aとエルロチニブ併用による抗腫瘍評価(in vivo)
免疫不全マウス(CB17/Icr-Prkdcscid/CrlCrlj、雄、4週齢(日本チャ−ルスリバー))の背部にHCC827細胞(EGFR変異陽性の肺癌細胞株)を皮下移植し、HCC827皮下担癌マウスを作成した。腫瘍生着後、エルロチニブを12.5mg/kg/dayの用量で1日1回40日間経口投与することにより、エルロチニブ耐性HCC827皮下担癌マウスモデルを構築した。なお、HCC827細胞株はエルロチニブ感受性であるが、エルロチニブ暴露によりエルロチニブに対する耐性を獲得し、その細胞株はAXLの過剰発現を示すことが知られている。また、この細胞においてAXLを分子生物学的手法で抑制するとエルロチニブに対する感受性が回復すること、及び、AXL遺伝子を導入したHCC827のAXL安定発現株がエルロチニブ抵抗性を示すことが知られている(Nat. Genet. 2012 Jul 1;44(8):852-60.)。
エルロチニブ耐性HCC827皮下担癌マウスモデルに対して、エルロチニブ(エルロチニブ単独投与群:12.5mg/kg/day、QD、po (n=8))、化合物A(化合物A単独投与群:30mg/kg/day、QD、po (n=8))、又は、エルロチニブ(12.5mg/kg/day)及び化合物A(30mg/kg/day)(エルロチニブと化合物Aとの併用群、QD、po (n=7))を投与し、腫瘍体積の変化を経時的に測定した。構築したエルロチニブ耐性HCC827皮下担癌マウスモデルに対する投与開始日の前日に測定した腫瘍体積を、構築したエルロチニブ耐性HCC827皮下担癌マウスモデルに対する投与開始日の値として使用した。
【0089】
結果を図1に示す。
構築したエルロチニブ耐性HCC827皮下担癌マウスモデルに対する投与開始日と12日後の腫瘍体積を比較すると、エルロチニブ単独投与群では335.8mm3から484.1mm3への腫瘍体積の増加、化合物A単独投与群では339.2mm3から739.2mm3への腫瘍体積の増加が見られた。一方、エルロチニブと化合物Aとの併用群においては341.9mm3から184.7mm3への腫瘍体積の縮小が見られた。
この結果は、EGFR阻害剤であるエルロチニブの投与に対して抵抗性を獲得した癌に対して、エルロチニブ単独投与群、又は化合物A単独投与群ではその腫瘍縮小効果が見られない一方で、エルロチニブと化合物Aとの併用群では、その腫瘍縮小効果が発現することを示した。
以上のことから、エルロチニブ耐性HCC827皮下担癌マウスモデルにおいて、化合物Aはエルロチニブとの併用により腫瘍体積の縮小を誘導することが確認された。
【0090】
実施例4 抗癌剤未処理のHCC827皮下担癌マウスに対する化合物Aとエルロチニブ併用による抗腫瘍評価(in vivo)
実施例3と同様にして、HCC827皮下担癌マウスを作成した。腫瘍生着後、HCC827皮下担癌マウスに対して、vehicle、エルロチニブ(エルロチニブ単独投与群:
12.5 mg/kg/day、QD、po (n=5))、化合物A(化合物A単独投与群:30 mg/kg/day、QD、po (n=5))、又は、エルロチニブ(12.5 mg/kg/day)及び化合物A(10 mg/kg/day又は 30 mg/kg/day)(エルロチニブと化合物Aとの併用群:QD、po (n=5))を投与し、腫瘍体積の変化を経時的に測定した。
【0091】
結果を図2に示す。
エルロチニブ単独投与群では一旦腫瘍体積の減少が見られたが、投与開始後1か月程度より腫瘍の再増殖が見られた。一方、エルロチニブと化合物Aとの併用群においては化合物Aの用量依存的にエルロチニブ単独投与群と比較して強い腫瘍の退縮作用を示し、また、エルロチニブと化合物A 30mg/kg/dayとの併用群においては投与後1か月を過ぎても腫瘍の再増殖は観察されなかった。
以上のことから、エルロチニブ単独投与群の効果と比較して、EGFR変異陽性の肺癌細胞株であるHCC827皮下担癌マウスモデルにおいて、化合物Aはエルロチニブとの併用により腫瘍の退縮作用の増強と持続を示すことが確認された。
【0092】
上記実施例3及び4により、エルロチニブと化合物Aとの併用投与における抗腫瘍作用を評価することができ、エルロチニブ単独投与群の効果と比較してEGFR変異陽性の肺癌細胞株であるHCC827皮下担癌マウスにおける、化合物Aとエルロチニブとの併用による腫瘍の退縮作用の増強と持続が確認された。即ち、化合物Aは、例えば、EGFR阻害剤治療によりAXLの発現が亢進し、その結果EGFR阻害剤に対する抵抗性を獲得した癌の治療用医薬組成物の有効成分として使用できる。
【0093】
上記試験により、化合物A又はその製薬学的に許容される塩がAXL阻害作用を有することが確認された。また、化合物A又はその製薬学的に許容される塩がAXLの高発現した癌細胞の増殖を抑制した。さらにはAXLが高発現した癌細胞を担持させた動物モデルにおいて、エルロチニブとの併用により癌の増殖を抑制することが確認された。つまり、EGFR阻害剤の投与によりAXLの発現が亢進することでAXLが高発現した癌の増殖が、化合物A又はその製薬学的に許容される塩とEGFR阻害剤との併用により抑制されることが確認された。
以上から、化合物A又はその製薬学的に許容される塩は、AXLが関連する癌、AXLが高発現した癌、抗癌剤治療に対するAXL活性化により抵抗性を獲得した癌の治療用医薬組成物の有効成分として使用できる。とりわけ、化合物A又はその製薬学的に許容される塩は、抗癌剤治療に対するAXL活性化により抵抗性を獲得した癌を、当該抗癌剤との併用により治療することができる。
【産業上の利用可能性】
【0094】
本発明の医薬組成物の有効成分である、化合物A又はその製薬学的に許容される塩はAXL阻害作用を有し、AXLに関連する癌治療用医薬組成物、別の態様としてAXLが高発現した癌治療用医薬組成物、さらに別の態様として抗癌剤治療に対するAXL活性化により抵抗性を獲得した癌治療用医薬組成物の有効成分として使用できる。
図1
図2