(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
【発明を実施するための形態】
【0013】
以下、図面を用いて本発明の実施形態を説明する。以下で説明する形状、材料及び取付位置は、説明のための例示であって、内燃機関の仕様に応じて適宜変更することができる。以下において複数の実施形態や、変形例などが含まれる場合、それらを適宜組み合わせて実施することができる。以下ではすべての図面において同等の要素には同一の符号を付して説明する。また、本文中の説明においては、必要に応じてそれ以前に述べた符号を用いるものとする。また、以下では点火プラグがシリンダヘッドの上部に取り付けられる場合を説明するが、点火プラグが向く方向及び取付位置は限定されるものではない。例えばシリンダが斜め上下方向に沿う場合に、点火プラグはそれに応じて斜め上下方向に向いてシリンダヘッドに取り付けられてもよい。
【0014】
図1は、実施形態の内燃機関10において、点火プラグ14を含む燃焼室50部分を示す図である。
図2は、
図1を右側から左側に見た図である。
【0015】
内燃機関10は、シリンダヘッド12と、シリンダ部材及びピストン(図示せず)とを備える。シリンダヘッド12は、シリンダ部材と組み合わされて内部に燃焼室50を形成する。ピストンは、シリンダ部材に形成されたシリンダ孔の内側において、軸方向に往復移動可能に配置される。
【0016】
内燃機関10は、例えばガソリンエンジンである。このような内燃機関10では、吸気ポート(図示せず)から燃料と空気との混合気が燃焼室に導入され、圧縮され点火されて燃焼した後、排気ポート(図示せず)から燃焼ガスとして排出される。
【0017】
内燃機関10は、混合気が燃焼室50に導入された場合に、燃焼室50内での混合気による吸気流がタンブル流と呼ばれる縦渦を形成するように構成される。そして、吸気工程の後、圧縮工程を経て点火時期に達した場合でも、燃焼室50には縦渦の成分が残存する。
【0018】
一方、シリンダヘッド12の上部には、点火プラグ14が取り付けられる。点火プラグ14は、燃焼室50内に、シリンダヘッド12から下側に向いて突出するように配置される。
【0019】
点火プラグ14は、外側の筒状に形成された金具ハウジング(図示せず)と、金具ハウジングの内側に保持された絶縁碍子15とを含み、絶縁碍子15の先端が、燃焼室50内に突き出している。そしてその突き出した絶縁碍子15の先端には中心電極16が設けられる。中心電極16の中心軸CLは、絶縁碍子15の中心軸と一致する。
【0020】
点火プラグ14は、金具ハウジングの外周面に形成されたおねじ部(図示せず)によって、シリンダヘッド12にねじ結合で取り付けられる。
【0021】
点火プラグ14は、金具ハウジングの下端部から燃焼室50内に延びた接地電極18を含む。点火プラグ14は、放電により中心電極16及び接地電極18の間で火花を発生させるように構成され、混合気に点火するために用いられる。以下では、点火プラグ14が、燃焼室50の上壁面51の中央部付近に配置される場合を説明する。
【0022】
接地電極18は、金具ハウジングから燃焼室50内に延出される延出部19と、延出部19の先端からL字形に屈曲して絶縁碍子15の先端(
図1、
図2の下端)と対面する側に伸びる腕部20とを含む。腕部20の先端部において、絶縁碍子15の先端と対面する部分には円柱状の突起部21が形成される。
【0023】
図2に示すように、接地電極18は、突起部21が中心電極16の先端に対し中心軸CLの方向に対面しないように、中心軸CLとは異なる位置に配置される。接地電極18の突起部21と中心電極16の先端との間に形成された隙間は、放電時に火花が生じる放電ギャップGである。
【0024】
上記のように、内燃機関10では点火時期において燃焼室50内に縦渦成分が残存するので、点火プラグ14の電極近傍には、縦渦の中心よりもやや上方に位置し、比較的流速の高い横向きの気流が生じている。内燃機関10の燃焼サイクルについて、気流のサイクル変動を平均化すると、点火プラグ14の中心電極16及び接地電極18は、吸気ポート側から排気ポート側に向かう気流に曝される。
図2では、この気流の流れ方向を矢印αで示している。
【0025】
そして、接地電極18の先端部である突起部21は、中心電極16の先端部に対して、点火プラグ14の周囲の気流の上流側(
図2の左側)に配置されている。これにより、電極周囲の気流によって、接地電極18の下流側で接地電極18近傍には、
図2に示すような後流渦60,61が形成される。
【0026】
具体的には、接地電極18は、腕部側剥離部22及び突起部側剥離部23を有する。各剥離部22,23は、渦発生部に相当する。より詳しく説明すると、気流方向において、接地電極18の背後である中心電極16側には、放電ギャップGを流れた気流が入り込んで、後流渦60を形成する。このとき、接地電極18の腕部20の上側面において、中心電極16側の端縁が、腕部側剥離部22となる。腕部側剥離部22は、腕部20の後側、すなわち気流の下流側において腕部20の近傍の気流を剥離させて、下流側に後流渦60を発生させる。
【0027】
一方、接地電極18の突起部21の先端面(
図2の上端面)の外周縁において、中心電極16側(
図2の右側)の端縁が、突起部側剥離部23となる。突起部側剥離部23は、突起部21の後側、すなわち気流の下流側において突起部21の近傍の気流を剥離させて、下流側に後流渦61を発生させる。各後流渦60,61は、電極の下流側で電極に沿う流れが剥離するような場合に、電極の下流側に生じる循環流れである。後流渦60,61の内部で混合気が着火されると、後述のように、火炎の一部が後流渦60,61の循環領域内に取り込まれて、高温の燃焼ガスを電極の下流側近傍に安定的に保持することができる。
【0028】
そして、中心電極16及び接地電極18は、電極16,18間を流れる気流によって変形した火花62または火炎、または火花62及び火炎が腕部20の下流側の後流渦60内に進入するように配置される。具体的には、接地電極18及び中心電極16は、電極間、すなわち放電ギャップGを通過する気流が、
図2に矢印βで示すように、燃焼室50の上壁面51から離れる側である斜め下方向に曲げられるように配置される。このとき、接地電極18の突起部21の先端面(
図2の上端面)が、中心電極16の先端面(
図2の下端面)に対し、中心軸CLと平行な方向である上下方向において、ほぼ同じ位置となっている。これにより、気流が電極間を通過しながら斜め下方向に曲げられることにより、その気流が後流渦60に巻き込まれやすくなっている。
【0029】
また、中心電極16及び接地電極18の間で発生した火花62の付近に後流渦60があると、火花62と、その火花62の周囲に生じる火炎(
図3Aの破線γ)とが、後流渦60に巻き込まれて進入する。また、電極間を通過した気流が上記のように斜め下方向に曲げられると、火花62及び火炎も
図2に示すように気流に伴って斜め下方向に中間部が曲げられる。そして、火花62及び火炎が後流渦60に多く巻き込まれて進入して保持される。
【0030】
図3Aは、
図2において、放電開始から火花62が後流渦60内に進入するまでの時間的変化を示す図である。
図3A(a)に示すように、放電開始直後では、火花62は、中心電極16の先端面の接地電極18側端(
図3A(a)の左端)と、接地電極18の突起部の先端面における中心電極16側端(
図3A(a)の右端)とを最短経路で結ぶ略直線状となることがある。このことは、確率的に多く発生する。
【0031】
その後、
図3A(b)に示すように、火花62は気流によって下流側に中間部が流されて変形する。そして、気流によって火花62がさらに変形すると、火花62の一部が接地電極18の腕部20の上面における中心電極16側端に接近する。このとき、火花62は、電気抵抗値が小さい経路を選んで形成されるので、火花62の付け根の位置が接地電極18の突起部21の先端から腕部20の上面の中心電極16側端に移動する(
図3A(c))。
【0032】
その後、
図3A(d)に示すように、気流によって、さらに火花62の中間部は下流側に曲げられるように変形して、接地電極18の腕部20の背後の後流渦60内に進入して巻き込まれる。このとき、火花62は、後流渦60の内部を通過する。
【0033】
このような放電中において、火花62は周囲に熱を供給して混合気を着火する。着火して発生した火炎も、火花62と同様に気流によって流されて変形する。
図3A(b)(c)(d)では、火花62を囲む破線γにより、火炎を示している。また、放電開始直後において、中心電極16の先端面の中心から接地電極18側端(
図3A(a)の左端)と、接地電極18の腕部20の上面における中心電極16側端(
図3A(a)の右端)とを略直線形状で結ぶ火花が形成されることもある。この場合、上記の
図3A(c)に近い状態から始まり、その後に
図3A(d)の状態となり、火花または火炎が後流渦60内に進入して上記の場合と同様に巻き込まれる。
【0034】
接地電極18の腕部20の背後に後流渦60が発生した場合において、その後流渦60の内部を通過する火花62によって生じた火炎は、そのまま後流渦60の循環流の内部に取り込まれる。これにより、高温の燃焼ガスを、接地電極18の下流側直近部分に安定的に保持することができる。そして、その保持された燃焼ガスの熱により、気流によって流されてくる未燃ガスも継続的に着火させ、火炎を安定的に保持することができる。このような気流がある場での燃焼ガス及び火炎の安定的な保持は「保炎」と呼ばれる。これにより、火花62の放電終了後も点火プラグ14の周囲の未燃ガスを継続的に着火させることが可能になり、燃焼を促進できるとともに、燃焼を安定化することができる。この結果、安定な着火のための必要エネルギも、従来の点火方法に比べて低減できる。
【0035】
さらに、火炎も火花62と同様に、気流によって流されるため、電極間を通過して斜め下方向に流れる気流によって、火炎は接地電極18の腕部20の背後における後流渦60に巻き込まれる。これにより、後流渦60の上流側で着火した火炎の一部によっても保炎を実現することができる。
【0036】
図3Bは、
図2に示す後流渦60の後向き長さの範囲を決定するためのベクトルを示す図である。この範囲を決定するために電極間ベクトルV1及び前側気流単位ベクトルV2を規定する。電極間ベクトルV1は、接地電極18の突起部21の先端面における中心電極16側の端(
図3Bの右端)から、中心電極16の先端面における突起部21側の端(
図3Bの左端)に向かうベクトルである。また、前側気流単位ベクトルV2は、点火プラグ14の上流側である前方の気流の向き(矢印α方向)の単位ベクトルである。
図3Bの例では、燃焼室50の内側において点火プラグ14の前方では、気流方向が中心電極16の中心軸CLの方向に対し傾斜している。
【0037】
そして、電極間ベクトルV1と、前側気流単位ベクトルV2とのなす角度の範囲が、−30°〜+45°に規制されることが好ましい。このとき、接地電極18の突起部21の先端面における中心電極16側の端(
図2の右端)と、中心電極16の先端面における突起部21側の端(
図2の左端)とを結ぶ直線L1を規定する。この場合に、直線L1と、点火プラグ14の前方の気流の向き(矢印α方向)とのなす角度が、−30°〜+45°に規制される。
図2に示す例では、直線L1と気流の向きαとのなす角度は0°である。後述の
図4に示すように、接地電極18の上端から中心電極16の下端に向かう方向が、気流の流れ方向αより下向き、すなわち上壁面51より離れる側(例えば
図4の斜め下側)である場合には、直線L1と気流の向きαとのなす角度が負である。一方、後述の
図5に示すように、接地電極18の上端から中心電極16の下端に向かう方向が、気流の流れ方向αより上向き、すなわち上壁面51に近づく側(例えば
図5の斜め上側)である場合には、直線L1と気流の向きαとのなす角度が正である。
【0038】
さらに、
図2に戻って、接地電極18の腕部20の背後における後流渦60の後向き(
図2の中心電極16の中心軸に対し直交する方向であり、
図2の右側)に流れる部分の長さを、「後流渦60の後向き長さ」と規定する。そして、この後流渦60の後ろ向き長さの最小値は、電極間ベクトルV1(
図3B)の始点を起点とする、電極間ベクトルV1と前側気流単位ベクトルV2(
図3B)との内積とする。
図2では、後ろ向き長さが最小である後流渦63も示している。また、後流渦60の後ろ向き長さの最大値は、突起部21の先端面における中心電極16側の端 (
図3Bの右端)、及び気流により変形した火花62の最長到達点を結ぶ最長火花ベクトルV3(
図3B)の始点を起点とする、最長火花ベクトルV3と、前側気流単位ベクトルV2(
図3B)との内積とする。
【0039】
上記の内燃機関10によれば、気流の高流速、希薄燃焼(リーンA/F、EGR希釈)等の難燃条件の下でも、着火の安定化、燃焼の促進、及び燃焼の安定化を、従来技術に対して同等以下のエネルギーで実現できる。
【0040】
また、接地電極18の腕部20の背後における後流渦60の後向き長さの最小値及び最大値を、上記の範囲に規制したので、火花62及びその周りの火炎を後流渦60に取り込んで、燃焼の促進及び燃焼の安定化を図れる構成を容易に実現できる。
【0041】
図4、
図5は、実施形態の内燃機関10の別例の2例を示している
図2に対応する図である。
図4の例では、接地電極18の先端部である突起部21の上端が、中心電極16の先端部の下端よりも上方に配置される。また、直線L1と、直線L2に沿う点火プラグ14の前方の気流方向αとのなす角度が、−30°である。上記の構成では、接地電極18の突起部21の先端が絶縁碍子15の先端(
図4の下端)に大きく接近するので、電極間を通過する気流は斜め下側に急激に曲げられる。このような構成では、点火プラグ14において、燃焼室50の内側に配置される部分の上下方向長さを小さくできる。
【0042】
また、
図5の例では、接地電極18の先端部である突起部21の上端が、中心電極16の先端部の下端よりも下方に配置される。また、直線L1と、直線L2に沿う点火プラグ14の前方の気流方向αとのなす角度が、+45°である。上記の構成では、
図5の左側から中心電極16に衝突するように流れる気流が矢印δで示すように斜め下側に曲げられるので、その下側で電極間を通過する気流も斜め下側に曲げられる。
【0043】
図6は、実施形態の効果を確認するために行ったシミュレーション結果を示す図である。シミュレーションでは、
図1、
図2に示した実施形態と同様の構成を用いて行った。シミュレーションでは、株式会社CD−adapco製の汎用流体解析ソフト「STAR−CD」により、火花点火から混合気への着火にかけての現象を計算した。
図6に示すシミュレーション結果から理解されるように、気流の流れ方向αについて、接地電極18の背後(
図6の右側)で保炎が行われてその背後から連続して火炎64が広がっている。これにより、燃焼の安定化を図れることを確認できた。
【0044】
図7Aは、比較例の内燃機関10に対応する模擬的なモデルにおいて、放電後、火炎64が燃焼室50aに広がる場合での時間的変化のシミュレーション結果を示す図である。このモデルでは、燃焼室50aが円板状の容器状であり、点火プラグ14aが内側に突出している。そして、この燃焼室50aの内部に
図7A(1)に矢印Pで示す方向に循環する気流が発生している。
図7Aに示す比較例では、点火プラグ14aは従来から一般的に知られている構造であり、
図1、
図2に示す実施形態において、中心電極の軸方向に接地電極の突起部が面する。
【0045】
図7Aでは、比較例において、火花点火から着火して火炎64が広がる状態を時間経過で示しており、矢印Q方向、すなわち(1)(2)・・・(10)の順に時間が経過している。
図7Aのシミュレーション結果から理解されるように、比較例では、火花点火後、矢印P方向に火炎64が点火プラグ14aから広がって成長しているが、点火プラグ14aの下流側近傍で保炎されずに、点火プラグ14aから火炎64が離れて成長している。これにより、比較例では、燃焼の進行が遅くなり、かつ、燃焼が不安定になることが考えられる。
【0046】
一方、
図7Bは、実施形態の内燃機関10に対応する模擬的なモデルにおいて、放電後、火炎が燃焼室50aに広がる場合での時間的変化のシミュレーション結果を示す図である。このモデルでも、
図7Aの比較例と同様に点火プラグ14が円板状の燃焼室50aの内側に突出している。
図7Bの実施形態では、点火プラグ14は、
図1、
図2に示した実施形態と同様の構成である。また、
図7Bで結果を示すシミュレーションでは、
図7Aで結果を示すシミュレーションの場合と、点火プラグ14の形状以外の条件はすべて同一である。具体的には、燃焼室内部の温度、圧力、流速、混合気濃度、及び点火エネルギは、
図7A、
図7Bで結果を示す両方のシミュレーションで同一である。
【0047】
図7Bの場合も、
図7Aと同様に、火花点火から着火して火炎が広がる状態を時間経過で示しており、矢印Q方向、すなわち(1)(2)・・・(10)の順に時間が経過している。
図7Bのシミュレーション結果から理解されるように、実施形態では、(4)から(7)で示すように、点火プラグ14の下流側近傍から火炎64が連続して広がっており、点火プラグ14の下流側近傍で保炎されている。特に、
図7B(6)において、枠Rで囲んだ部分によって、狙い通りの保炎が行われていることを確認できた。これにより、実施形態では、高速流等の難燃条件の下でも、着火の安定化、燃焼の促進、及び燃焼の安定化を、従来技術に対して同等以下のエネルギーで実現できることを確認できた。
【0048】
図8Aは、実施形態の内燃機関10の別例において、
図2に対応する図である。
図8Bは、
図8Aに示す構成において、接地電極18のうち、中心電極16と中心軸CLの方向に面する部分の斜視図である。
【0049】
図8Aに示す別例では、点火プラグ14の接地電極18は、
図8Bに示すように直方体状の腕部20の上側面において、気流の流れ方向(
図8Aの矢印α方向)における上流側端部に、直方体状の突起部24が突出形成される。突起部24は、ほぼ腕部20の
図8Aの紙面の表裏方向の全長にわたって配置される。これにより、腕部20の上側面には段差部25が形成される。そして、突起部24が、中心電極16の先端部に対し、点火プラグ14の周囲の気流の流れ方向αの上流側(
図8Aの左側)に配置される。突起部24は、接地電極18の先端部に相当する。
図8Aに矢印βで示すように、電極間を通過する気流は斜め下方向に曲げられる。これにより、突起部24の先端面(
図8Aの上側面)の下流側端縁が、突起部24の後側に後流渦61を発生させる突起部側剥離部26となる。また、腕部20の上側面の下流側端縁が、腕部20の後側に後流渦60を発生させる腕部側剥離部27となる。
【0050】
上記の構成によれば、突起部24の後流側で突起部24の近傍において、バックステップ流れによる後流渦61が発生する。また、突起部24の先端面(
図8A、
図8Bの上側面)の下流側端縁と中心電極16との間には火花62が発生し、その火花62の中間部が矢印方向αに流れる気流によって、
図8Aの斜め下側に曲げられるように変形する。そして、
図8Aに示すように、火花62、及び破線γで示す火炎が後流渦61に巻き込まれて保持される。これにより、着火の安定化、燃焼の促進、及び燃焼の安定化を、従来技術に対して同等以下のエネルギーで実現できる。その他の構成及び作用は、
図1から
図5に示す構成と同様である。
【0051】
図9は、実施形態の内燃機関10の別例において、
図2に対応する図である。
図9に示す別例の構成では、
図8A、
図8Bに示した構成において、接地電極18の腕部20において、気流の流れ方向α上流側の端部(
図9の左端部)が、中心電極16から大きく離れるように上流側に延出されている。そして、腕部20の上流側端部の上面に直方体状の上流側突起部28が形成されることにより、段差部25が形成されている。
図9に矢印βで示すように、電極間を通過する気流は斜め下方向に曲げられる。これにより、上流側突起部28の先端面の下流側端縁が、上流側突起部28の後側に後流渦61を発生させる突起部側剥離部26となる。また、腕部20の上側面の下流側端縁が、腕部20の後側に後流渦60を発生させる腕部側剥離部27となる。
【0052】
また、腕部20の上面には、中心電極16の先端面と中心軸CL方向に先端面が対面するように、円柱状の下流側突起部29が形成される。
【0053】
このような構成では、接地電極18の上流側突起部28によって、上流側突起部28の背後にはバックステップ流れ状の循環流である後流渦61が形成される。そして、放電開始時には、中心電極16の先端面と接地電極18の下流側突起部29の先端面との間で火花62が発生する。この火花62は、発生した瞬間からバックステップ流れ状の後流渦61を貫通するように形成される。これにより、接地電極18及び中心電極16は、後流渦61の内部に火花62が貫通するように配置される。このため、後流渦61の内部を火花放電で直接着火させて火炎を後流渦61の内部に取り込むことができる。そして、後流渦61に取り込んだ火炎によって接地電極18の近傍で保炎して、周囲の未燃ガスを継続的に着火することができる。その他の構成及び作用は、
図1から
図5の構成と同様である。
【0054】
図9の構成の場合も、
図1から
図5の構成と同様に、接地電極18の上流側突起部28の先端面における中心電極16側の端(
図9の右端)と、中心電極16の先端面における上流側突起部28側の端(
図9の左端)とを結ぶ直線L1を規定する。そして、この直線L1と、直線L2に沿う、点火プラグ14の前方の気流の向き(矢印α方向)とのなす角度θが、−30°〜+45°に規制されることが好ましい。
図9では、角度θが
図5の場合と同様に、正の値となる場合を示している。
【0055】
図10は、実施形態の内燃機関10の別例において、
図2に対応する図である。
図10に示す別例の構成では、
図1から
図5の構成において、接地電極18の腕部20が、延出部19の下端部において、気流の流れ方向αの上流側(
図10の左側)にのみ接続されている。そして、腕部20の上下方向長さが
図1から
図5の構成よりも大きくなっている。
【0056】
また、腕部20において、中心電極16側(
図10の右側)の側面には円柱状の突起部21が突出形成される。突起部21の軸方向は、中心電極16の中心軸CLの方向に対し直交する。この突起部21は、中心電極16との間で放電による火花62を発生する。
【0057】
腕部20は、接地電極18の先端部に相当する。この腕部20は、中心電極16の先端部に対し点火プラグ14の周囲の気流の流れ方向αの上流側(
図10の左側)に配置される。腕部20の上側面は、中心電極16の先端面に対し上下方向においてほぼ同じ位置に位置する。
図10に矢印βで示すように、電極間を通過する気流は斜め下方向に曲げられる。これにより、腕部20の上側面の下流側端縁が、腕部20の後側に後流渦60を発生させる剥離部30となる。
【0058】
上記の構成によれば、接地電極18の腕部20によって、腕部20の背後に後流渦60を形成できる。そして、放電開始時には、中心電極16の先端面と接地電極18の突起部の先端面との間で火花62が発生する。この火花62は、発生した瞬間から後流渦60を貫通するように形成される。これにより、接地電極18及び中心電極16は、後流渦60の内部に火花62が貫通するように配置される。その他の構成及び作用は、
図1から
図5に示す構成、または
図9に示す構成と同様である。
【0059】
図10の構成の場合も、
図1から
図5の構成と同様に、接地電極18の腕部20の上端面における中心電極16側の端(
図10の右端)と、中心電極16の先端面における腕部20側の端(
図10の左端)とを結ぶ直線L1を規定する。そして、この直線L1と、直線L2に沿う、点火プラグ14の前方の気流の向き(矢印α方向)とのなす角度θが、−30°〜+45°に規制されることが好ましい。
図10では、角度θが
図4の場合と同様に、負の値となる場合を示している。
【0060】
図11は、実施形態の内燃機関10の別例において、
図1に対応する図である。
図12は、
図11に示す構成において、接地電極40の斜視図である。
図13は、
図11を右側から左側に見た図である。
【0061】
図11から
図13に示す別例の構成では、
図1から
図5の構成において、接地電極40は、金具ハウジング(図示せず)から燃焼室50内に延出される2本の延出部41と、2本の延出部41に結合された円筒状のリング部43とを含む。各延出部41は、先端部が、絶縁碍子15の先端と対面する側にL字形に屈曲している。2本の延出部41の先端は、リング部43の直径方向に関して一方側半部の外周面に結合される。
【0062】
さらに、中心電極16の先端部は、リング部43の内側の中心付近に上側から挿入されている。リング部43は、接地電極18の先端部に相当する。リング部43の内周面と中心電極16の先端部との間で放電による火花62が発生する。
【0063】
図13に示すように、リング部43の周方向一部(
図13の左端部)は、中心電極16の先端部に対し点火プラグ14の周囲の気流の流れ方向αの上流側(
図13の左側)に配置される。リング部43の上端面は、中心電極16の先端面に対し上下方向においてほぼ同じ位置に位置する。
図13に矢印βで示すように、電極間を通過する気流は斜め下方向に曲げられる。これにより、リング部43の上端面の内周縁において、気流の上流側に位置する一方側半部(
図13の左側半部)が、リング部43の内側に後流渦65を発生させる接地電極側剥離部44となる。接地電極側剥離部44は、接地電極40の近傍の気流を剥離させて下流側に後流渦65を発生させる第1渦発生部に相当する。
【0064】
上記の構成によれば、接地電極40のリング部43によって、リング部43の内側に後流渦65を形成できる。そして、放電開始時には、中心電極16の先端面とリング部43の内周面との間で火花62が発生する。このとき、リング部43の内周面のうち、気流の流れ方向上流側部分と中心電極16との間で火花62が発生すると、その火花62は、発生した瞬間から後流渦65を貫通するように形成される。これにより、接地電極40及び中心電極16は、後流渦65の内部に火花62が貫通するように配置される。
【0065】
また、本例の構成では、リング部43の内側において、中心電極16の先端面の気流下流側である背後でも後流渦66が発生する。このとき、中心電極16の先端面の外周縁において、気流下流側である一方側(
図13の右側)の半部が、後流渦66を発生させる中心電極側剥離部17となる。中心電極側剥離部17は、中心電極16の近傍の気流を剥離させて下流側に後流渦66を発生させる第2渦発生部に相当する。
【0066】
そして、リング部43の内周面のうち、気流下流側(
図13の右側)部分と、中心電極16との間で火花が発生した場合でも、その火花を、中心電極16の後側の後流渦66を貫通するように形成できる。これにより、後流渦66の内部で混合気を着火させることができ、安定的に保炎することができる。なお、
図13の例では、リング部43の外側(
図13の下側)でも後流渦67が発生している。
【0067】
さらに、点火プラグ14の周囲における気流の向きについて、燃焼サイクル毎にばらつきが生じてもリング部43の周辺で安定的に保炎することができる。例えば、点火プラグ14の周囲の気流の向きが、
図13の矢印方向αとは逆方向になる場合が考えられる。この場合には、気流が
図13の右側から左側に点火プラグ14の周囲に流れる。この場合でも、リング部43の内側において、気流の下流側に位置する部分に後流渦が発生するので、リング部43と中心電極16との間で発生する火花をその後流渦に貫通させて、安定的に保炎することができる。その他の構成及び作用は、
図1から
図5、または
図9、または
図10に示す構成と同様である。
【0068】
図11から
図13の構成の場合には、接地電極40の剥離部と、中心電極16の先端面における接地電極40の剥離部側の端とを結ぶ直線L1を規定する。そして、この直線L1と、直線L2に沿う、点火プラグ14の前方の気流の向き(矢印α方向)とのなす角度θが、−30°〜0°に規制されることが好ましい。
図13では、角度θが
図4の場合と同様に、負の値となる場合を示している。