(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
前記一段目の燃料電池は、二段目以降の少なくとも一つの燃料電池よりも、燃料と酸化剤とが反応する電極の面積が小さいことを特徴とする請求項1に記載の燃料電池システム。
前記一段目の燃料電池は、二段目以降の少なくとも一つの燃料電池よりも、三相界面を形成する燃料極の厚さが薄いことで、前記メタン反応抑制機能を備えることを特徴とする請求項1または2に記載の燃料電池システム。
前記一段目の燃料電池は、燃料極の材料にプロトン伝導材を用いることで、前記メタン反応抑制機能を備えることを特徴とする請求項1ないし3のいずれか1項に記載の燃料電池システム。
前記一段目の燃料電池は、電解質の材料にプロトン伝導材を用いることで、前記メタン反応抑制機能を備えることを特徴とする請求項1ないし4のいずれか1項に記載の燃料電池システム。
二段目以降の複数の燃料電池は、後段のものほど前記後段メタン反応抑制機能におけるメタンの反応を抑制する機能がより緩和されていることを特徴とする請求項6に記載の燃料電池システム。
前記複数の燃料電池相互間に、前段の燃料電池から排出される排出燃料を改質する排出燃料改質器が設けられていることを特徴とする請求項1ないし7のいずれか1項に記載の燃料電池システム。
前記複数の燃料電池のうち最後段に位置する燃料電池から排出される水を含む燃料を、前記改質器に循環供給するための排出燃料循環機構を備えていることを特徴とする請求項1ないし9のいずれか1項に記載の燃料電池システム。
【発明を実施するための形態】
【0009】
以下、本発明を実施するための形態について、図面を参照して詳細に説明する。
【0010】
図1は、後で説明する各実施形態に共通する燃料電池システムの全体構成図である。燃料電池システムにおける一段目の第1の燃料電池1及び二段目の第2の燃料電池3は、固体酸化物形燃料電池(SOFC)である。第1、第2の燃料電池1,3は、燃料としての水素及び、酸化剤としての空気がそれぞれ供給されて発電する。
【0011】
第1、第2の燃料電池1,3は、複数のセルを積層して構成した燃料電池スタックとしている。一つのセルは、電解質と、燃料極と、酸素極と、燃料流路を形成する燃料極側セパレータと、空気流路を形成する酸素極側セパレータとを含む。
【0012】
第1の燃料電池1は、第2の燃料電池3に比較して発電容量が小さく、小型となっている。第1の燃料電池1を小型化するために、
図2に示すように、第1の燃料電池1の斜線で示す電極の反応(発電)領域S1を、第2の燃料電池3の斜線で示す電極の反応(発電)領域S2よりも、面積を小さくする。燃料電池をスタック化したときには、複数のセルすべての反応領域の総和の面積について、第1の燃料電池1を第2の燃料電池3よりも小さくする。
【0013】
第1の燃料電池1と第2の燃料電池3とは、燃料配管5及び空気配管7によって互いに直列に接続している。すなわち、複数の燃料電池が互いに直列に接続されている。第1の燃料電池1は、第2の燃料電池3に対し、燃料及び空気の流れの上流側に位置する。
【0014】
第1の燃料電池1と燃料タンク9とを接続する燃料供給配管11には、燃料タンク9側から順に、燃料ポンプ13、気化器15、熱交換器17、改質器19をそれぞれ設けている。燃料タンク9内の原燃料は、ガソリン、軽油、灯油などの炭化水素系、または、メタノールやエタノールなどのアルコール系の液体燃料である。
【0015】
燃料ポンプ13は、燃料タンク9内の液体燃料を気化器15に送る。気化器15は、液体燃料を、例えば図示しないノズルにより吐出し、圧力を掛けた液体燃料をノズルの微細孔から吐出することで原燃料を噴霧化する。さらに、気化器15には燃焼器21が、燃焼排気管22により接続されており、噴霧化した原燃料を燃焼器21の排気熱を利用して気化させる。熱交換器17は、気化器15で気化した原燃料を、燃焼器21を利用して熱交換して昇温させる。
【0016】
燃焼器21と第2の燃料電池3とは、燃料排出管23及び空気排出管25によりそれぞれ接続している。すなわち、第2の燃料電池3から排出される排出燃料が、燃料排出管23を通って燃焼器21に供給され、第2の燃料電池3から排出される排出空気が、空気排出管25を通って燃焼器21に供給される。燃焼器21では、供給された排出燃料及び排出空気を原料として燃焼する。
【0017】
第1の燃料電池1とエアコンプレッサ27とを接続する空気供給配管29には、エアコンプレッサ27側から順に、第1空気熱交換器31、起動燃焼器33をそれぞれ設けている。エアコンプレッサ27は外気(空気)を第1空気熱交換器31に送る。第1空気熱交換器31は、エアコンプレッサ27から送られた空気を、前述した燃焼排気管22を経て供給される燃焼ガスと熱交換させて昇温させる。第1空気熱交換器31から排出される排気は、排気マフラ35を経て外部に排出される。
【0018】
起動燃焼器33は、図示しない燃料配管によって燃料タンク9に接続され、燃料タンク9内の液体燃料が燃料ポンプ37により供給されて燃焼する。第1空気熱交換器31から起動燃焼器33に送られる空気は、起動燃焼器33の燃焼熱によって加熱されて昇温する。
【0019】
エアコンプレッサ27と第1空気熱交換器31との間の空気供給配管29には、空気分岐管39が分岐して接続されている。空気分岐管39は、さらに第2空気供給配管41と空気混合管43とに分岐している。
【0020】
第2空気供給配管41は、途中に第2空気熱交換器45を備え、空気配管7に接続されている。第2空気熱交換器45は、燃焼排気管22を流れる排気の熱によって空気が加熱されて温度上昇し、温度上昇した空気が第2の燃料電池3に供給される。空気混合管43は、気化器15と熱交換器17との間の燃料供給配管11に接続され、エアコンプレッサ27から送られる空気を、燃料供給配管11を流れる原燃料に混入させる。
【0021】
このように構成された燃料電池システムは、次のようにして作動する。
【0022】
燃料タンク9内の液体燃料が燃料ポンプ13によって気化器15に送られ、さらに気化した原燃料が、熱交換器17を経て改質器19に送られる。このとき、エアコンプレッサ27から送られる空気の一部が、空気分岐管39及び空気混合管43から燃料供給配管11内の原燃料中に混入され、熱交換器17を経て改質器19に送られる。
【0023】
改質器19では、原燃料及び、原燃料に混入されている水や空気を高温で分解してH
2,CH
4,CO,CO
2,H
2Oなどの組成に改質し、改質された燃料は、第1の燃料電池1に供給される。一方、エアコンプレッサ27から送られる空気は、第1空気熱交換器31及び起動燃焼器33を経て昇温されて第1の燃料電池1に供給される。
【0024】
第1の燃料電池1は、供給された改質燃料と空気中の酸化剤である酸素とが反応して発電する。第1の燃料電池1は、第2の燃料電池3に比較して発電容量が小さく、小型としているので、より短時間で起動する。第1の燃料電池1の発電後には、余剰の燃料及び空気が、それぞれ燃料配管5及び空気配管7を通って第2の燃料電池3に供給される。このとき、エアコンプレッサ27からの空気の一部が、空気分岐管39及び第2空気供給配管41を通って、第2の燃料電池3に供給される。
【0025】
第2の燃料電池3は、供給された燃料と空気中の酸化剤である酸素とが反応して発電する。第2の燃料電池3の発電後には、余剰の燃料及び空気が、それぞれ燃料排出管23及び空気排出管25を通って燃焼器21に供給され、燃焼に供される。
【0026】
移動体の中でも、自動車用に適用する際には、急速起動性と大出力の両立が必要となる。このため、一段目の第1の燃料電池1の総反応面積を、二段目の第2の燃料電池3の総反応面積より小さくして、一段目の第1の燃料電池1を低熱容量化している。低熱容量化した第1の燃料電池1によって急速起動性を実現しつつ、第2の燃料電池3を起動させた後には,二つの燃料電池1,3の発電によって大きな出力が得られる。これにより、自動車に適した燃料システムとすることができる。
【0027】
低熱容量化した第1の燃料電池1は、発電時の発熱量が少ないので、後述するメタン反応抑制機能を持たせて吸熱量を抑え、吸熱量が発熱量を上回らないようにして温度低下を抑制するのに有効である。
【0028】
次に、一段目の第1の燃料電池1にメタン反応抑制機能を持たせた各実施形態について説明する。
【0029】
図3は、第1の実施形態のメタン反応抑制機能を示す。(a)は、一段目の第1の燃料電池1Aの電解質47A及び燃料極49Aの模式的な断面形状を示し、(b)、は二段目の第2の燃料電池3Aの電解質51A及び燃料極53Aの模式的な断面形状を示している。
【0030】
各燃料電池1A,3A共に、燃料極49A,53Aは、Ni(ニッケル)及びYSZ(イットリア安定化ジルコニア)を含んでいる。電解質47A,51AはYSZを含んでいる。
【0031】
第1の実施形態は、一段目の第1の燃料電池1Aにおける燃料極49Aの厚さT
1を、二段目の第2の燃料電池3Aにおける燃料極53Aの厚さT
2より薄くすることで、第1の燃料電池1Aがメタン反応抑制機能を備えるものとしている。燃料極49A,53Aのそれぞれの厚さT
1,T
2は、水素イオンと電子と燃料ガスとが互いに接する三相界面を形成する部分の厚さに相当する。上記水素イオンは電解質(液相)、電子は燃料極(固相)、燃料ガスは水素(気相)、とそれぞれ置き換えることができる。
【0032】
燃料極の厚さを薄くすると局所的な電流密度が増大し、その際、メタンに比べて水素の反応活性が高くなる傾向があることが知られている。よって、一段目の第1の燃料電池1Aが発電する際に、メタンの反応を抑えることができる。これにより、第1の燃料電池1Aは、改質器19による改質燃料中に多量のメタンが含まれていても、水蒸気改質反応(吸熱反応)での吸熱量を抑制できる。
【0033】
したがって、第1の燃料電池1Aは、発熱量を吸熱量より大きくすることができ、安定した動作に必要な温度を確保することができる。その結果、燃料電池システムにおける発電効率の低下を抑制することができる。
【0034】
この場合、一段目の第1の燃料電池1Aの温度を適正に維持するために、改質時のメタンを減らすべく原燃料に空気を必要以上に導入したり、発電用空気を第1の燃料電池1Aの動作温度以上に加熱する必要がなくなる。その結果、燃料電池システムの発電効率の低下を抑制できる。
【0035】
一段目の第1の燃料電池1Aで反応抑制されたメタンは、燃料極53Aの厚さを厚くしている後段の第2の燃料電池3Aの発電時に反応して利用されることとなり、投入された燃料を有効に利用することができる。
【0036】
図4は、第1の実施形態による第1の燃料電池1Aにメタン反応抑制機能を持たせた場合の投入燃料の発熱量を示し、
図5は、一段目の燃料電池にメタン反応抑制機能を持たせていない場合の投入燃料の発熱量を比較例として示している。
【0037】
比較例として示す
図5では、投入燃料の発熱量が、発電用空気を加熱しているので、ほぼHで示す分(1.4kW)、
図4の本実施形態に比較して多くなっている。これは、一段目の燃料電池での多量のメタン反応による吸熱量(0.58kW)が発熱量(0.32kW)を上回っていることによる。
【0038】
図4の本実施形態は、第1の燃料電池1Aでメタン反応を抑制しているので、
図5のような大きな吸熱反応は抑制され、発熱量(0.37kW)が得られている。また、第2の燃料電池3Aの発電時に、第1の燃料電池1Aで反応抑制されたメタンが内部改質されることによって、吸熱量(0.55kW)が、比較例における一段目の燃料電池発電時の吸熱量(0.58kW)とほぼ同等となる。しかし、第2の燃料電池3Aは、発電容量が大きいことから、発熱量(1.18kW)が吸熱量(0.55kW)を上回るので、安定した動作に必要な温度を確保することができる。
【0039】
本実施形態では、投入燃料の発熱量を低く抑えて、ほぼ同等の発電量を得ることができる。発電効率としては、
図5の比較例が、投入燃料の熱量6.45(5.05+1.4)kWに対して発電量(斜線部)が3.16(0.76+2.4)kWなので、48%である。これに対して本実施形態は、投入燃料の熱量5.03kWに対して発電量(斜線部)が3.11(0.75+2.36)kWなので、62%とより高効率となっている。
【0040】
図6は、第2の実施形態のメタン反応抑制機能を示す。(a)は、一段目の第1の燃料電池1Bの電解質47B及び燃料極49Bの模式的な断面形状を示し、(b)、は二段目の第2の燃料電池3Bの電解質51B及び燃料極53Bの模式的な断面形状を示している。
【0041】
第2の実施形態は、一段目の第1の燃料電池1Bの燃料極49Bが、Ni(ニッケル)及びプロトン伝導材であるBCZY(BaCeZrY)を含んでいる。二段目の第2の燃料電池3Bの燃料極53Bは、第1の実施形態と同様にNi及びYSZを含んでいる。電解質47B,51Bは、第1の実施形態と同様にYSZを含む材料で構成している。
【0042】
燃料極49Bの材料にプロトン伝導材を用いると、発電時にメタンや一酸化炭素に比較して水素を選択的に利用するため、メタンの反応を抑えることができる。すなわち、第2の実施形態は、一段目の第1の燃料電池1Bは、燃料極49Bの材料にプロトン伝導材であるBCZYを用いることで、メタン反応抑制機能を備えるものとしている。これにより、第1の燃料電池1Bは、改質器19による改質燃料中に多量のメタンが含まれていても、水蒸気改質反応(吸熱反応)での吸熱量を抑制できる。
【0043】
したがって、第1の燃料電池1Bは、第1の実施形態と同様に、発熱量を吸熱量より大きくすることができ、安定した動作に必要な温度を確保することができる。その結果、燃料電池システムにおける発電効率の低下を抑制することができる。
【0044】
この場合、一段目の第1の燃料電池1Bの温度を適正に維持するために、改質時のメタンを減らすべく原燃料に空気を必要以上に導入したり、発電用空気を第1の燃料電池1Bの動作温度以上に加熱する必要がなくなる。その結果、燃料電池システムの発電効率の低下を抑制できる。
【0045】
図7は、第3の実施形態のメタン反応抑制機能を示す。(a)は、一段目の第1の燃料電池1Cの電解質47C及び燃料極49Cの模式的な断面形状を示し、(b)、は二段目の第2の燃料電池3Cの電解質51C及び燃料極53Cの模式的な断面形状を示している。
【0046】
第3の実施形態は、一段目の第1の燃料電池1Cの電解質47Cが、プロトン伝導材であるBCZYを含んでいる。二段目の第2の燃料電池3Cの電解質51Cは、第1の実施形態と同様にYSZを含んでいる。燃料極49C,53Cは、第1の実施形態と同様にNi及びYSZを含んでいる。
【0047】
電解質47Cの材料にプロトン伝導材を用いると、発電時にメタンや一酸化炭素に比較して水素を選択的に利用するため、メタンの反応を抑えることができる。すなわち、第3の実施形態は、一段目の第1の燃料電池1Cは電解質47Cの材料にプロトン伝導材であるBCZYを用いることで、メタン反応抑制機能を備えるものとしている。これにより、第1の燃料電池1Cは、改質器19による改質燃料中に多量のメタンが含まれていても、水蒸気改質反応(吸熱反応)での吸熱量を抑制できる。
【0048】
したがって、第1の燃料電池1Cは、第1の実施形態と同様に、発熱量を吸熱量より大きくすることができ、安定した動作に必要な温度を確保することができる。その結果、燃料電池システムにおける発電効率の低下を抑制することができる。
【0049】
この場合、一段目の第1の燃料電池1Cの温度を適正に維持するために、改質時のメタンを減らすべく原燃料に空気を必要以上に導入したり、発電用空気を第1の燃料電池1Cの動作温度以上に加熱する必要がなくなる。その結果、燃料電池システムの発電効率の低下を抑制できる。
【0050】
図8は、第4の実施形態のメタン反応抑制機能を示す。第4の実施形態は、
図3に示す第1の実施形態の変形例で、一段目の第1の燃料電池1D、二段目の第2の燃料電池3Dに加え、燃料電池を3個以上のN個を直列に配管接続している。(N−1)段目の燃料電池を第(N−1)の燃料電池55D、N段目の燃料電池を第Nの燃料電池57Dとしている。なお、
図8では、接続配管として
図11における燃料供給配管11のみ示し、空気供給配管は省略している。
【0051】
複数の燃料電池1D〜57Dの各燃料極は、
図3の第1の実施形態と同様にNi及びYSZを含んでいる。各電解質も第1の実施形態と同様にYCZを含んでいる。第1の実施形態と同様に、一段目の第1の燃料電池1Dの燃料極の厚さT
1は、二段目の第2の燃料電池3Dにおける燃料極の厚さT
2より薄くしている。
【0052】
燃料極の厚さは、一段目の第1の燃料電池1Dで最も薄く、最後段となるN段目の第Nの燃料電池57Dで最も厚くしており、第1の燃料電池1Dから第Nの燃料電池57Dに向けて徐々に厚くしている。すなわち、第(N−1)の燃料電池55Dの燃料極の厚さをT
N-1、第Nの燃料電池57Dの燃料極の厚さをT
Nとすれば、T
1<T
2<・・・・<T
N-1<T
Nである。
【0053】
図3の第1の実施形態で説明したように、燃料極の厚さを薄くすることは、メタン反応を抑制することになる。このため、複数の燃料電池を直列に接続した場合に、後段に行くに従って燃料極の厚さを厚くすることで、メタン反応を抑制する機能が後段ほど緩和されることになる。
【0054】
すなわち、第4の実施形態は、二段目以降の複数の燃料電池は、後段メタン反応抑制機能を備えており、後段に行くに従って、後段メタン反応抑制機能のメタン反応を抑制する機能が段階的に低くなるよう緩和されている。
【0055】
上段の燃料電池で反応抑制したメタンは、下段の燃料電池へと流れ込むため、下段の燃料電池内部に不均一な温度分布が発生したり、発電量によっては、吸熱反応量が上回る場合が想定される。このため、メタン反応抑制機能を後段の燃料電池で緩和させることで、メタンの吸熱反応量を抑え、燃料電池内部の温度分布をより均一化したり、発電による発熱量に対して吸熱量が上回らないようにする。
【0056】
図9は、第5の実施形態のメタン反応抑制機能を示す。第5の実施形態は、
図7に示す第3の実施形態と
図8に示す第4の実施形態の考え方を組み合わせている。第5の実施形態は、
図8と同様に、一段目の第1の燃料電池1E、二段目の第2の燃料電池3Eに加え、燃料電池を3個以上のN個を直列に配管接続している。(N−1)段目の燃料電池を第(N−1)の燃料電池55E、N段目の燃料電池を第Nの燃料電池57Eとしている。なお、
図9では、接続配管として
図11における燃料供給配管11のみ示し、空気供給配管は省略している。
【0057】
第5の実施形態は、最後段の第Nの燃料電池57Eを除く第1の燃料電池1Eから第(N-1)の燃料電池55Eまでの各電解質が、
図7における第1の燃料電池1Cの電解質47Cと同様なプロトン伝導材であるBCZYを含んでいる。また、一段目の第1の燃料電池1Eを除く二段目の第2の燃料電池3Eから最後段の第Nの燃料電池57Eまでの各電解質が、酸化物伝導材であるYCZを含んでいる。燃料電池1E〜57Eの各燃料極は、
図7と同様にNi及びYSZを含んでいる。
【0058】
一段目の第1の燃料電池1Eの電解質は、YCZを含まず、したがってプロトン伝導材と酸化物伝導材との比をP:Qとすると、P:Q=1:0である。最後段の第Nの燃料電池57Eの電解質は、BCZYを含まず、したがってP:Q=0:1である。以下、二段目の第2の燃料電池3Eの電解質は、P:Q=0.9:0.1で、第(N−1)の燃料電池55Eの電解質は、P:Q=0.1:0.9である。
【0059】
このように、一段目の第1の燃料電池1Eから最後段の第Nの燃料電池57Eまでの各電解質は、プロトン伝導材と酸化物伝導材との構成比を、後段ほどプロトン伝導材が低くなるようにしている。
【0060】
図7の第3の実施形態で説明したように、電解質の材料にプロトン伝導材を用いると、発電時にメタンや一酸化炭素に比較して水素を選択的に利用するため、メタンの反応を抑えることができる。したがって、後段の燃料電池ほどプロトン伝導材の構成比を低くすることで、
図8の第4の実施形態と同様に、メタン反応を抑制する機能が後段ほど緩和されることになる。
【0061】
すなわち、第5の実施形態は、第4の実施形態と同様に、二段目以降の複数の燃料電池は、後段メタン反応抑制機能を備えており、後段に行くに従って、後段メタン反応抑制機能のメタン反応を抑制する機能が段階的に低くなるよう緩和されている。よって、第5の実施形態は、第4の実施形態と同様の作用効果が得られる。
【0062】
図10は、第6の実施形態のメタン反応抑制機能を示す。第6の実施形態は、
図8の第4の実施形態や
図9の第5の実施形態と同様に、第1の燃料電池1Fから第Nの燃料電池57Fまで複数の燃料電池を直列に配管接続している。第6の実施形態は、上記複数の燃料電池における互いに隣接するもの相互間に、排出燃料改質器59を設けている。各排出燃料改質器59は、前段(上流)の燃料電池から排出される排出燃料を改質する。
【0063】
前段の燃料電池では,反応抑制されたメタンが多量存在し、かつ発電により水や二酸化炭素の含有比率も高くなるような熱力学的非平衡組成となっている。そこで、燃料電池間の燃料供給配管11に排出燃料改質器59を設けることで、熱力学的平衡な組成へ改質させる。
【0064】
改質の際、メタンの水蒸気改質反応(吸熱反応)が発生するため、改質燃料は、周囲の燃料電池温度より低くなるが、高温となっている燃料供給配管11と熱交換することで温度上昇する。改質燃料が温度上昇することで、後段の燃料電池での温度分布の不均一や、発電による発熱量に対して吸熱量が上回らないようになる。
【0065】
図11は、本発明の第7の実施形態を示す。第7の実施形態は、
図1の第1の実施形態に対し、最後段に位置する二段目の第2の燃料電池3から排出される水を含む排出燃料の一部を、改質器19に循環供給するための排出燃料循環機構61を追加している。その他の構成は
図1と同様である。
【0066】
排出燃料循環機構61は、燃料排出管23に設けた燃料循環ブロア63及び、燃料循環ブロア63と改質器19とを接続する燃料循環配管65を備えている。燃料循環ブロア63は、第2の燃料電池3から排出される水を含む排出燃料を、改質器19と燃焼器21との双方に分流させて送り込むものとする。
【0067】
燃料を改質する際には、燃料と酸素とで部分酸化改質(発熱反応)させるよりも、燃料と水とで水蒸気改質(吸熱反応)させる方が、改質効率が高くなる。そこで、発電によって燃料ガス中に生成する水を、改質器19に循環供給して水蒸気改質を行う。これにより、改質効率が向上し、システムの燃料利用率も向上する。
【0068】
上記した各実施形態で使用する原燃料は、炭化水素系またはアルコール系の液体燃料である。特に、自動車などの移動体用途においては、エネルギ密度が高い液体燃料が適し、その中でも炭化水素系燃料としてガソリン、軽油、灯油や、アルコール系燃料としてメタノール、エタノールなどは入手しやすく利便性が向上する。
【0069】
上記したアルコール系燃料は、水を含むものとしてもよい。水含有のアルコール燃料の場合は、改質前の原燃料を温める燃焼器21の燃焼ガス温度が比較的低くて済むことから、加熱後の燃料温度もそれほど高くならない。このため、水含有のアルコール燃料は、改質後の改質燃料温度は低く、改質燃料中のメタン濃度が高くなる。そのため、メタン反応抑制機機能を備えた多段の燃料電池システムに好適となる
【0070】
また、改質器19で燃料を改質するための水を、
図11の第7の実施形態で使用した排出燃料循環機構61を用いて改質器19に供給する必要がなく、水蒸気改質(吸熱反応)を行うにあたり、第7の実施形態に比較してシステム構成を簡素化できる。
【0071】
以上、実施形態に沿って本発明の内容を説明したが、本発明はこれらの記載に限定されるものではなく、種々の変形及び改良が可能であることは、当業者には自明である。
【0072】
例えば、
図3における第1の燃料電池1Aの燃料極49Aの厚さを薄くする構成と、
図6における第1の燃料電池1Bの燃料極49Bがプロトン伝導材を含む構成と、
図7における第1の燃料電池1Cの電解質47Cがプロトン伝導材を含む構成とを適宜組み合わせてもよい。また、
図8、
図9、
図10の各実施形態を適宜組み合わせることもできる。